説明

太陽電池電極を提供するための無電解めっき溶液

【課題】SiNx及びSiのパターン化された構造を含む、太陽電池電極のための無電解ニッケルめっき溶液を提供する。
【解決手段】無電解めっき溶液は、ニッケルイオン;還元剤;第一キレート剤;第二キレート剤;及び水を含む。
【効果】無電解めっき溶液は、Si及びSiNxの間の高い選択性を有し、かつアルミニウム系の層に対して無害である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、35USC第119条(e)(1)項の下で2010年2月5日に出願された「太陽電池電極用の無電解ニッケルめっき溶液及びそれを使用した方法」という名称の米国仮出願番号61/282,420の出願日の優先権を請求する。
【0002】
本発明は、無電解ニッケルめっき溶液に関し、特に、太陽電池電極用の無電解ニッケルめっき溶液に関する。
【背景技術】
【0003】
工業技術の発展に伴い、今日、全世界が直面する深刻な問題は、エネルギー危機及び環境汚染である。世界的なエネルギー危機を解決するために、そして環境汚染を低減するために、化石燃料源を代替するための、風力及び太陽エネルギー等のグリーンエネルギーに関する多くの努力が払われている。特に、太陽電池は、太陽エネルギーを電気に変換することができる効果的な手段の一つである。
【0004】
図1A〜1Cを参照すれば、従来の太陽電池の電極を提供するプロセスフローチャートが示されている。第一に、シリコン基板1の半製品が提供され、ここでシリコン基板1は、n−型シリコン層11及びp−型シリコン層12を含み、そして窒化ケイ素層13がn−型シリコン層11の上に形成される。さらに、凹部19が窒化ケイ素層13及びn−型シリコン層11の表面において形成され、ここで凹部19が窒化ケイ素層13を貫通する。次いで、図1Bに示されるように、印刷法によって、銀ペースト層15がn−型シリコン層11の凹部19において形成され、そしてアルミニウムペースト層14がp−型シリコン層12上に形成される。最後に、図1Cに示されるように、電気めっき法又は無電解めっき法によって、ニッケル層17及び16が各々銀ペースト層15及びアルミニウムペースト層14上に形成される。従来技術において、銀ペースト層15及びアルミニウムペースト層14を形成する二つの転写プリント工程、及び電気めっき工程又は無電解工程が通常、正/負電極の形成において含まれている。
【0005】
太陽電池の電極の作成に関して、特許文献1では、銀ペーストが使用される、太陽電池の負電極の製作方法が提案されている。また、特許文献2では、電気めっき法によって銀層が銀ペースト層上に形成され、従って負電極が形成される、電気めっき法による太陽電池電極の製作方法が使用されている。特許文献3では、太陽電池のパターン化された正電極構造が開示されている。
【0006】
特許文献4では、シリコン基板をナノ粒子でコーティングすることによる太陽電池の製作方法が提案されており、ここでは、電極がシリコン基板の表面上に無電解めっきを適用することによって作られる代わりに、銀ペーストで作られている。
【0007】
銀ペースト、アルミニウムペースト、又は銀−アルミニウムペーストが太陽電池の製造に適用することができることは良く知られている。例えば、特許文献5、特許文献6及び特許文献7では、銀ペースト、アルミニウムペースト、又は銀アルミニウムペーストの使用及び組成物が詳細に述べられている。しかしながら、銀ペーストのコストは高く、そして銀ペースト中に含まれるガラス粉末及びポリマーの抵抗が共に高い(その結果、太陽電池の電極の抵抗が高くなる)ため、太陽電池の効率が低下し、そしてその経済的効果が低下する。従って、ニッケルの低い抵抗のおかげで、太陽電池の抵抗を下げそして効率を上げるために、電極の形成において銀ペーストを代替するために、ニッケルが使用することができること提案されている。
【0008】
太陽電池の製造のためにニッケルを使用する考えが、特許文献8においてもっと早く見ることができ、ここでは640g/Lの塩化ニッケル及び40g/Lのフッ化アンモニウムが、電極を形成するために、窒化ケイ素を含まない太陽電池のシリコン基板の表面のためのニッケル電気めっきプロセスにおいて使用される。
【0009】
特許文献9では、シリコン基板の活性化工程及び塩基性無電解ニッケルめっき工程を含む、太陽電池の電極の製作方法が提案されている。
【0010】
特許文献10では、太陽電池の電極を形成するためのニッケル電気めっき用に使用される照明方法が提案されているが、これは光源において制限があり、従って無電解めっき法に比べて不便でかつ遅い。
【0011】
従来技術によると、如何なる種類の酸性無電解めっき溶液(高温で運転される酸性無電解めっき溶液又は低温で運転される酸性無電解めっき溶液)が使用されても、酸性無電解めっき溶液は窒化ケイ素及びシリコンの間の選択性を有しないが、一方、塩基性無電解めっき溶液は窒化ケイ素及びシリコンの間の選択性を有することが可能である。
【0012】
無電解めっき溶液に対して窒化ケイ素及びシリコンの間の高い選択性を有することは、太陽電池の製作を通じて重要なことである。もし、無電解めっき溶液の窒化ケイ素及びシリコンの間の選択性が低いと、窒化ケイ素層上にニッケルが形成されるであろうし、従って、活性領域の低減及び光電変換効率の低減という結果になる。
【0013】
従来の塩基性無電解めっき溶液が、太陽電池のシリコン及び窒化ケイ素のパターン化された構造のシリコン上にニッケルを形成するために使用されるとき、シリコン層の損傷及び/又は窒化ケイ素上でのニッケルの望まれない形成等の幾つかの問題が生じ得る。
【0014】
さらに、塩基性無電解めっき溶液の有効性及び寿命を保つために、従来の塩基性無電解めっき溶液が作用するには、85℃のような高温が必要である。しかしながら、太陽電池の電極を製作するために従来の塩基性無電解めっき溶液のために適用される高温は、窒化ケイ素の表面に対して有害である。同様に、適用される高温に起因する塩基性無電解めっき溶液の還元力の増大は、窒化ケイ素及びシリコンの間の選択性を低減させ得て、その結果、窒化ケイ素層及びシリコン層の両方の上にニッケルが形成される。
【0015】
もし、窒化ケイ素の表面が損傷されて水素原子が損失することになれば、窒化ケイ素の(欠陥を有する電子部品及び電子部品の表面に関する)不動態化機能が乱され、そして太陽電池の光電変換効率が低減され得る。特許文献11では、水素原子を有する窒化ケイ素を製造するための機能及び方法が詳細に述べられている。窒化ケイ素の幾らかの表面がニッケルで望ましくなくめっきされるとき、太陽電池の受光領域が減少され得るため、太陽電池全体の変換効率が低下し得る。
【0016】
従って、従来の無電解めっき溶液は、窒化ケイ素及びシリコンの間の十分な選択性を満たすことができないため、従来の無電解めっき溶液を使用することによって、シリコンの表面がニッケルで無電解めっきされながら、窒化ケイ素の表面上にはニッケルが全くめっきされないという、太陽電池の要求される構造を得ることは困難である。従って、従来技術においては、銀ペーストが低い操作性(すなわち、加工性)を有し、かつコスト高になるものの、太陽電池の製作において負電極を形成することが選択の余地なく選ばれる。
【0017】
そこで、太陽電池の光電変換効率を増大させ、そしてかつ太陽電池の製作のための製造コストを低減させ、かつ製造工程を簡略化するため、太陽電池の電極を製作するための改善された無電解めっき溶液を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】

【特許文献1】US5,591,565
【特許文献2】US2008/035489
【特許文献3】TW2008/18526
【特許文献4】US2009/239330(WO2009/117007)
【特許文献5】JP2007/251609(TW2009/26210)
【特許文献6】US2009/0126797(TW200937451)
【特許文献7】US2007/0215202(TW200742098)
【特許文献8】US4321283
【特許文献9】US2004/0005468
【特許文献10】WO2009/070945
【特許文献11】US6,746,709(TW561629)
【発明の概要】
【0019】
本発明は、シリコン及び窒化ケイ素を含むパターン化された構造を有する太陽電池の電極を形成するために使用される、低温で運転される塩基性無電解ニッケルメッキ溶液を提供する。本発明の無電解ニッケルめっき溶液は、(a)4.5g/L〜10.0g/Lのニッケルイオン;(b)還元剤;(c)30g/L〜60g/Lの、クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一キレート剤;(d)5g/L〜80g/Lの第二キレート剤;(e)0.0005g/L〜0.002g/Lの安定剤;及び(f)水;を含み、ここで、無電解ニッケルめっき溶液のpH値は7.0〜10.0の範囲にあり;第二キレート剤は、アルキロールアミン(すなわち、アルコールアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれるものである。
【0020】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、窒化ケイ素及びシリコンの間の高い選択性を有する。従って、ニッケルがシリコンの表面上にめっきされることができ、かつ窒化ケイ素の表面上にはめっきされることがない。太陽電池の正電極を提供するために、本発明の無電解ニッケルめっき溶液がアルミニウム層上に適用される場合、無電解ニッケルめっき溶液はアルミニウム層を腐食せず、そしてニッケルがアルミニウム層の表面上にめっきされることができる。従って、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、太陽電池の電極を形成するために非常に適しており、そして太陽電池の正電極及び負電極が別々に又は同時に形成することができる。
【0021】
窒化ケイ素の表面上にはめっきせず、シリコンの表面上へ無電解ニッケルめっきする目的を達成するためには、低温プロセスが必要である。同様に、低温プロセスを行う目的を達成するためには、無電解ニッケルめっき反応を開始するための要求を満たすために、キレート剤の種類及び比率が適切に調整されなければならない。加えるに、キレート剤の種類は、無電解ニッケルめっき溶液の寿命に影響を及ぼし得る。
【0022】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、第一キレート剤は、好ましくは、クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる。第二キレート剤は、好ましくは、アルキロールアミン(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる。
【0023】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、好ましくは、第一キレート剤の含有量は30g/L〜60g/L、そして第二キレート剤の含有量は5g/L〜80g/Lである。
【0024】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、ニッケルイオン源は、好ましくは、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、アミノスルホン酸ニッケル、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる。ニッケルイオンの含有量は、好ましくは、4.5g/L〜10.0g/L、又は硫酸ニッケル六水和物の形においては20〜45g/L、塩化ニッケル六水和物の形においては18〜40g/L、メタンスルホン酸ニッケルの形においては19〜42.5g/L、又はアミノスルホン酸ニッケル(四水和物)の形においては24.5〜55g/L相当である。
【0025】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、還元剤は、好ましくは、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、ヒドラジン、ジメチルアミン・ボラン(DMAB)、水素化ホウ素ナトリウム(SBH)、ジエチルアミン・ボラン、モルホリン・ボラン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる。還元剤がDMAB、SBH、ジエチルアミン・ボラン又はモルホリン・ボランである場合、還元剤の含有量は、好ましくは、0.5g/L〜20g/Lである。還元剤が次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、又はヒドラジンである場合、還元剤の含有量は、好ましくは、5g/L〜40g/Lであり、より好ましくは、5g/L〜30g/Lである。
【0026】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、及びそれらの組合せから成る群から選ぶことができる緩衝剤を更に含み得る。好ましくは、緩衝剤の含有量は1g/L〜20g/Lである。
【0027】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、2g/L〜12g/Lの促進剤を更に含み、それはフッ化水素酸(HF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、及びそれらの組合せから成る群から選ばれ得る。
【0028】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、0.0005g/L〜0.002g/Lの安定剤を更に含み得て、それは、チオ尿素;チオ尿素の誘導体;チオシアネート;Pb2+、Sb3+及びBi3+の酢酸化合物;Pb2+、Sb3+の硝酸化合物;及び‐SH基を有する水溶性有機物質から成る群から選ばれ得る。
【0029】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、界面活性剤を更に含み得る。
【0030】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、サッカリンであり得る応力緩和剤を更に含み得る。
【0031】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、用語「塩基性」は、無電解ニッケルめっき溶液のpH値が7.0〜14.0の範囲、好ましくは、7.0〜10.0の範囲、より好ましくは、7.0〜9.4の範囲、そして最も好ましくは、7.6〜9.0の範囲にあることを意味する。また、用語「低温」は、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液で無電解ニッケルめっきプロセスを行う温度が40℃〜80℃の範囲にあることを意味し、それは従来の無電解ニッケルめっき溶液で無電解ニッケルめっきプロセスを行う温度(85℃)よりも低い。
【0032】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、pH調整剤はアンモニア、水酸化ナトリウム(NaOH),水酸化カリウム(KOH)又はそれらの組合せから成る群から選ばれ得る。
【0033】
如何なる活性化プロセスを行わなくても、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液が太陽電池の電極に対してニッケルをめっきするために使用される場合、ニッケルがシリコンの表面上ではめっきされることができ、窒化ケイ素の表面上にはめっきされることがない。従って、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液は窒化ケイ素及びシリコンの間の優れた選択性を有する。しかしながら、酸性の無電解ニッケルめっき溶液は窒化ケイ素及びシリコンの間のそのような選択性を有しない。
【0034】
もし、10.0を超えるpH値を有する、又は多すぎる塩素イオンを含有する塩基性無電解ニッケルめっき溶液が、太陽電池のためのアルミニウム層(例えば、裏面ファイルド層、BSF層)を含む正電極の無電解めっきのために使用されるならば、正電極のアルミニウム層が腐食され得る。従って、アルミニウム層が腐食されるのを防ぐためには、本発明の無電解ニッケルめっき溶液のpH値は好ましくは7.0〜10.0の範囲にあり、より好ましくは7.0〜9.4の範囲にあり、そして最も好ましくは7.6〜9.0の範囲にあり、そして塩素イオンの含有量は、1000ppm未満である。
【0035】
従って、本発明は更に、アルミニウム層を含む正電極を与えるための無電解めっきに対して低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液を提供し、ここでシリコン及び窒化ケイ素を含むパターン化された構造を有する太陽電池の電極を形成するために塩基性無電解ニッケルめっき溶液が使用される。本発明の無電解ニッケルめっき溶液は、(a)ニッケルイオン;(b)還元剤;(c)クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一キレート剤;(d)第二キレート剤;(e)安定剤;及び(f)水;を含み、ここで、無電解ニッケルめっき溶液のpH値は7.0〜10.0の範囲にあり;塩素イオンの含有量は1000ppm未満であり;第二キレート剤は、アルキロールアミン(すなわち、アルコールアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれるものである。
【0036】
本発明の、塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、窒化ケイ素及びシリコンの間の高い選択性を有する。従って、ニッケルがシリコンの表面上にめっきされることができ、かつ窒化ケイ素の表面上にはめっきされることがない。太陽電池の正電極を提供するために、本発明の無電解ニッケルめっき溶液がアルミニウム層上に適用される場合、無電解ニッケルめっき溶液はアルミニウム層を腐食せず、そしてニッケルがアルミニウム層の表面上にめっきされることができる。従って、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、太陽電池の電極をアルミニウム層上に形成するために非常に適しており、そして太陽電池の正電極及び負電極が別々に又は同時に形成することができる。
【0037】
本発明によると、ニッケルがシリコンの表面上にめっきできるようにして、かつ窒化ケイ素の表面上にはめっきできないようにするためには、めっき温度を下げるが必要である。同様に、低温プロセスを行う目的を達成するためには、無電解ニッケルめっき反応を開始するための要求を満たすために、キレート剤の種類及び比率が適切に調整されなければならない。また、キレート剤の種類は、無電解ニッケルめっき溶液の寿命に影響を及ぼし得る。
【0038】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、アルキロールアミン(すなわち、アルコールアミン)は、好ましくは、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0039】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、ニッケルイオンの含有量は4.5g/L〜10.0g/L、第一キレート剤の含有量は30g/L〜60g/L、第二キレート剤の含有量は5g/L〜80g/L、そして安定剤の含有量は0.0005g/L〜0.002g/Lである。
【0040】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、ニッケルイオン源は、好ましくは、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、アミノスルホン酸ニッケル、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる。ニッケルイオンの含有量は、好ましくは、4.5g/L〜10.0g/L、又は硫酸ニッケル六水和物の形においては20〜45g/L、塩化ニッケル六水和物の形においては18〜40g/L、メタンスルホン酸ニッケルの形においては19〜42.5g/L、又はアミノスルホン酸ニッケル(四水和物)の形においては24.5〜55g/L相当である。
【0041】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、還元剤は、好ましくは、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、ヒドラジン、ジメチルアミン・ボラン(DMAB)、水素化ホウ素ナトリウム(SBH)、ジエチルアミン・ボラン、モルホリン・ボラン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる。還元剤がDMAB、SBH、ジエチルアミン・ボラン又はモルホリン・ボランである場合、還元剤の含有量は、好ましくは、0.5g/L〜20g/Lである。還元剤が次リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、又はヒドラジンである場合、還元剤の含有量は、好ましくは、5g/L〜40g/Lであり、より好ましくは、5g/L〜30g/Lである。
【0042】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、及びそれらの組合せから成る群から選ばれ得る緩衝剤を更に含み得る。好ましくは、緩衝剤の含有量は1g/L〜20g/Lである。
【0043】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、促進剤を更に含み、それはフッ化水素酸(HF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、及びそれらの組合せから成る群から選ばれ得て、そして促進剤の含有量は、2g/L〜12g/Lである。
【0044】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、好ましくは、安定剤は、チオ尿素;チオ尿素の誘導体;チオシアネート;Pb2+、Sb3+及びBi3+の酢酸化合物;Pb2+、Sb3+及びBi3+の硝酸化合物;及び‐SH基を有する水溶性有機物質から成る群、より好ましくは、チオ尿素又はPb2+の化合物から選ばれ得る。さらに、安定剤の含有量は、0.0005g/L〜0.002g/Lであり得る。
【0045】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、界面活性剤を更に含み得る。
【0046】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、サッカリンであり得る応力緩和剤を更に含み得る。
【0047】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、用語「塩基性」は、無電解ニッケルめっき溶液のpH値が7.0〜14.0の範囲、好ましくは、7.0〜10.0の範囲、より好ましくは、7.0〜9.4の範囲、そして最も好ましくは、7.6〜9.0の範囲にあることを意味する。
【0048】
加えて、用語「低温」は、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液を用いる無電解ニッケルめっきプロセスを行うための温度が40℃〜80℃の範囲にあることを意味し、それは従来の無電解ニッケルめっき溶液を用いて無電解ニッケルめっきプロセスを行うための温度(85℃)よりも低い。本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液は好ましくは、40℃〜80℃の範囲の温度で運転される。
【0049】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、塩基性無電解ニッケルめっき溶液のpH値を調整するためにpH調整剤を必要とすることができ、pH調整剤はアンモニア、水酸化ナトリウム(NaOH),水酸化カリウム(KOH)又はそれらの組合せから成る群から選ばれ得る。
【0050】
更に、正電極を与えるために、P−型のシリコン表面が無電解めっきされる場合の別の状況において、本発明の第一及び第二還元剤を含む塩基性無電解ニッケルめっき溶液の使用は(1)窒化ケイ素及びシリコンの間の高い選択性;(2)正電極の高いめっき均一性;及び(3)正及び負電極の同時めっきを満足し得る。もし、従来のニッケルめっき溶液が使用されるならば、(a)窒化ケイ素及びシリコンの間の低い選択性;及び(b)正電極の低いめっき均一性のような幾つかの不利益が生じることがあり、そのため不満足な性能を有する電極が提供されることがある。
【0051】
窒化ケイ素及びシリコンを含むパターン化された構造を有する太陽電池の電極を形成するために使用される、本発明の第一及び第二還元剤を含む塩基性無電解ニッケルめっき溶液は低温で運転することができる。本発明の、無電解ニッケルめっき溶液は、(a)ニッケルイオン;(b)次リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一還元剤;(c)ボランである第二還元剤;(d)クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一キレート剤;(e)第二キレート剤;(f)安定剤;及び(g)水;を含み、ここで、無電解ニッケルめっき溶液のpH値は7.0〜10.0の範囲にあり;第二キレート剤が、アルキロールアミン(すなわち、アルコールアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれるものである。
【0052】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、アルキロールアミン(すなわち、アルコールアミン)は、好ましくはジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0053】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、ニッケルイオン源は、好ましくは、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、アミノスルホン酸ニッケル、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる。ニッケルイオンの含有量は、好ましくは、4.5g/L〜10.0g/L、又は硫酸ニッケル六水和物の形においては20〜45g/L、塩化ニッケル六水和物の形においては18〜40g/L、メタンスルホン酸ニッケルの形においては19〜42.5g/L、又はアミノスルホン酸ニッケル(四水和物)の形においては24.5〜55g/L相当である。
【0054】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、ニッケルイオンの含有量は、好ましくは、4.5g/L〜10.0g/L、第一還元剤の含有量は、好ましくは、5g/L〜30g/L、第二還元剤の含有量は、好ましくは、0.5g/L〜20g/L、第一キレート剤の含有量は、好ましくは、30g/L〜60g/L、第二キレート剤の含有量は、好ましくは、5g/L〜80g/L、そして安定剤の含有量は0.0005g/L〜0.002g/Lである。さらに、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、第二還元剤の含有量は、より好ましくは1g/L〜15g/Lであり得る。
【0055】
本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、第二還元剤は、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム(SBH)、ジメチルアミン・ボラン(DMAB)、ジエチルアミン・ボラン、モルホリン・ボラン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる。
【0056】
好ましくは、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、硫酸アンモニウム、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、及びそれらの組合せから成る群から選ばれ得る緩衝剤を更に含み得る。
【0057】
好ましくは、緩衝剤の含有量は1g/L〜20g/Lである。
【0058】
好ましくは、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、フッ化水素酸(HF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、及びそれらの組合せから成る群から選ばれ得る促進剤を更に含み得る。
【0059】
好ましくは、促進剤の含有量は2g/L〜12g/Lである。
【0060】
本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、安定剤は、好ましくは、チオ尿素;チオ尿素の誘導体;チオシアネート;Pb2+、Sb3+及びBi3+の酢酸化合物;Pb2+、Sb3+及びBi3+の硝酸化合物;及び‐SH基を有する水溶性有機物質から成る群から選ばれ得る。
【0061】
好ましくは、本発明の、塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、界面活性剤を更に含み得る。
【0062】
好ましくは、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、サッカリンであり得る応力緩和剤を更に含み得る。
【0063】
本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、用語「塩基性」は、無電解ニッケルめっき溶液のpH値が7.0〜14.0の範囲、好ましくは、7.0〜10.0の範囲、より好ましくは、7.0〜9.4の範囲、そして最も好ましくは、7.6〜9.0の範囲にあることを意味する。加えて、用語「低温」は、本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液を用いる無電解ニッケルめっきプロセスを行うための温度が40℃〜80℃の範囲にあることを意味し、それは従来の無電解ニッケルめっき溶液を用いて無電解ニッケルめっきプロセスを行うための温度(85℃)よりも低い。
【0064】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液によると、塩基性無電解ニッケルめっき溶液のpH値を調整するためにpH調整剤を必要とすることができ、pH調整剤はアンモニア、水酸化ナトリウム(NaOH),水酸化カリウム(KOH)又はそれらの組合せから成る群から選ばれ得る。
【0065】
本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液は、太陽電池を提供するために使用され得て、かつその方法は、
工程1:シリコン基板を提供すること;
工程2:シリコン基板への前処理(任意工程);及び
工程3:本発明の塩基性無電解ニッケルめっき溶液を使うことによって電極を形成すること;を含み得る。
【0066】
本方法において、無電解ニッケルめっきプロセスは、好ましくは40℃〜80℃の範囲で行われる。また、無電解ニッケルめっき溶液のpH値は、好ましくは7.0〜10.0、より好ましくは7.0〜9.4、最も好ましくは7.6〜9.0の範囲にある。アルミニウム層が太陽電池上に配置される場合、塩素イオンの濃度は、好ましくは1000ppm未満であり、そして無電解ニッケルめっき溶液のpHは好ましくは7.6〜9.0の範囲にある。もしpH値が9.0より高いと、無電解ニッケルめっき溶液はアルミニウム層を少し腐食し得る。もし、pH値が10.0より高いと、無電解ニッケルめっき溶液はアルミニウム層をひどく腐食し得る。従って、本発明の本法において、無電解ニッケルめっき溶液は好ましくは7.6〜9.0の範囲にある。この場合、無電解ニッケルめっき溶液は窒化ケイ素及びシリコンの間のその選択性を行い得て、かつアルミニウム層に対して無害である。従って、アルミニウム層の上にNiをめっきすることができる。
【0067】
具体的に、本発明の太陽電池の電極を形成する方法は、以下の1〜3工程を含み得て、ここで工程2は任意工程である。
【0068】
(工程1)シリコン基板が提供され、ここでシリコン基板は第一表面及び第二表面を有し、そして第一表面は、シリコン及び窒化ケイ素を含むパターン化された表面である。パターン化された表面は、シリコン及び窒化ケイ素を含む平面、ミクロスケールにおいてシリコン及び窒化ケイ素を含む高度差を有する表面、又はシリコン及び窒化ケイ素を含む織地表面であり得る。好ましくは、パターン化された表面は、図2Aに示されるような、シリコン及び窒化ケイ素を含むものである。凹部4が窒化ケイ素層3及び第一表面21中に形成し、凹部4は窒化ケイ素層3を通って延び、シリコン層23のシリコン表面25を露出し、そしてアルミニウム層6は第二表面22の上に位置する。また、シリコン表面25は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、非晶質シリコン、ナノサイズの単結晶シリコン、又はナノサイズの多結晶シリコンから成る層であり得る。
【0069】
(工程2)シリコン基板が、無電解ニッケルめっきプロセスの前に前処理される。
【0070】
(工程3)無電解ニッケルめっきが行われる。無電解ニッケルめっきプロセスを行うために、シリコン基板2が無電解ニッケルめっき溶液中に浸漬され、そして凹部4のシリコン表面25上及びアルミニウム層6の上に負電極及び正電極がそれぞれ形成される。
【0071】
図2Bに示されるように、工程1〜3が完了した後、ニッケル層51が凹部4のシリコン表面25上に形成され、そしてニッケル層52がアルミニウム層6の上に形成される。従って、太陽電池の電極が得られる。
【0072】
本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによる、太陽電池の電極を形成する方法によると、好ましくは、第一表面はn−型のシリコン層を有し得て、そして第二表面はp−型のシリコン層を有し得る。
【0073】
本法においては、工程1で、図3Aに示されるように、第二表面22はその上にアルミニウム層が形成されないシリコン表面であり得る。工程2及び3が完了した後、ニッケル層51は第一表面21のシリコン表面25上に形成され、そして、図3Bに示されるように、ニッケル層52が第二表面22のシリコン層26上に形成される。第二表面22は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、非晶質シリコン、ナノサイズの単結晶シリコン、又はナノサイズの多結晶シリコンから成る層であり得る。
【0074】
本法においては、工程1で、第二表面は、シリコン及び酸化シリコン、シリコン及び窒化ケイ素、シリコン及び酸窒化ケイ素、シリコン及び有機ポリマー、又はフォトレジスト層から成る、パターン化された表面である。図4Aに示されるように、凹部5を含む層31は第二表面22上に配置され、そして凹部5は層31を通って延び、凹部5から表面26を露出する。表面26は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、非晶質シリコン、ナノサイズの単結晶シリコン、又はナノサイズの多結晶シリコンから成る層であり得る。工程1〜3が完了した後、図4Bに示されるように、ニッケル層51が凹部4によって露出されたシリコン表面25上に形成され、そしてニッケル層52が凹部5によって曝されたシリコン表面26上に形成される。また、層31は酸化シリコン層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、有機ポリマー層、フォトレジスト層、又はそれらの組合せであってもよい。例えば、有機ポリマー層はポリイミド層であり得る。
【0075】
更に本法においては、工程1で、パターン化された表面は更に、第二表面上に位置し得て、ここでパターン化された表面は、アルミニウム層及び酸化シリコン層、アルミニウム層及び窒化ケイ素層、アルミニウム層及び酸窒化ケイ素層、アルミニウム層及び有機ポリマー層、又はアルミニウム層及びフォトレジスト層から成る。図5Aに示されるように、凹部5及び凹部5において形成されたアルミニウム層を有する層31が、第二表面22上に位置している。工程2〜3が完了した後、図5Bに示されるように、ニッケル層51が凹部4(すなわち、シリコン表面25上)において形成され、そしてニッケル層52がアルミニウム層7上に形成される。また、層31は酸化シリコン層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、有機ポリマー層、フォトレジスト層又はそれらの組合せであってよい。
【0076】
さらに、本法においては、工程1で、もし、(図2Aに示されるように)アルミニウム層6上、又は第二表面22上にNiをめっきすることが望まれないならば、酸化シリコン層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、有機ポリマー層又はフォトレジスト層がアルミニウム層上又は第二表面上に配置される。図6Aに示されるように、アルミニウム層の無いシリコン基板の場合、層32は第二表面22上に配置され、ここで、層32は、酸化シリコン層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、有機ポリマー層、フォトレジスト層又はそれらの組合せであり得る。工程2〜3が完了した後、図6Bに示されるように、ニッケル層51が凹部4において(すなわち、シリコン表面25上に)唯一形成される。次いで、層32が従来の半導体製造プロセスを通して除去される。例えば、図6Cに示されるように、層32が、有機溶媒、ストリッパー、エッチング溶液、イオンプラズマ、又は超臨界流体によって除去することができる。
【0077】
さらに、本方法において、もし第二表面22上に、及びシリコン及び窒化ケイ素から連続して成るパターン化された表面上にNiをめっきすることが望まれるならば、図7Bに示されるように、有機ポリマー層又はフォトレジスト層の層33が、シリコン及び窒化ケイ素から成るパターン化された表面上に最初に形成することができる。次に、図7Cに示されるように、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液を使用して第二表面22がめっきされる。次に、図7Dに示されるように、有機ポリマー層又はフォトレジスト層の層33が、有機溶媒又はストリッパーの使用によって除去され、そして太陽電池の第二表面22上にニッケル層52が形成される。最後に、図7Eに示されるように、工程2及び3を通して、塩基性無電解ニッケルめっき溶液の使用によって、太陽電池上に負電極51が形成される。
【0078】
さらに、本方法において、図8Aに示されるシリコン基板2が工程1において使用することができる。図8Aに示されるように、シリコン基板2が提供され、ここで窒化ケイ素層3及び第一表面21中に凹部4が形成され、そして凹部4は窒化ケイ素層3を通って延び、シリコン層23のシリコン表面25を露出する。同様に、凹部5が酸化シリコン、窒化ケイ素及び酸窒化ケイ素及び第二表面22の層31中に形成され、そして凹部5が層31を突き通してシリコン層24の表面26を露出する。次いで、コーティングプロセス又はインクジェット印刷プロセスを通して、n−型ドーパントを含有するナノサイズのシリコン粒子が凹部4中に形成され、そしてp−型ドーパントを含有するナノサイズのシリコン粒子が凹部5中に形成される。図8Bに示されるように、焼結プロセスの後、n−型のナノサイズシリコン粒子層71及びp−型のナノサイズシリコン粒子層72が凹部4及び凹部5中に各々形成される。最後に、本発明の、低温で運転される塩基性無電解ニッケルめっき溶液を用いて、無電解ニッケルめっきプロセスの工程2及び3が行われ、そしてニッケル層51及び52が、n−型のナノサイズシリコン粒子層71及びp−型のナノサイズシリコン粒子層72の上に、それぞれ形成される。
【0079】
本方法において、無電解ニッケルめっきプロセスの前の前処理は、HFを用いてシリコン基板の表面上の酸化シリコンを除去すること;又はPdCl2溶液又はAuCl2・HCl・nH2O溶液を用いてシリコン基板を活性化することであってよい
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1A〜1Cは、太陽電池の電極を形成するための従来のプロセスを説明している断面図である。
【図2】図2A〜2Bは、本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによって太陽電池の電極を形成する方法の使用によって、太陽電池の電極を形成するためのプロセスを説明している断面図である。
【図3】図3A〜3Bは、本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによって太陽電池の電極を形成する方法の使用によって、太陽電池の電極を形成するためのプロセスを説明している断面図である。
【図4】図4A〜4Bは、本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによって太陽電池の電極を形成する方法の使用によって、太陽電池の電極を形成するためのプロセスを説明している断面図である。
【図5】図5A〜5Bは、本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによって太陽電池の電極を形成する方法の使用によって、太陽電池の電極を形成するためのプロセスを説明している断面図である。
【図6】図6A〜6Cは、本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによって太陽電池の電極を形成する方法の使用によって、太陽電池の電極を形成するためのプロセスを説明している断面図である。
【図7】図7A〜7Eは、本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによって太陽電池の電極を形成する方法の使用によって、太陽電池の電極を形成するためのプロセスを説明している断面図である。
【図8】図8A〜8Cは、本発明の無電解ニッケルめっきプロセスによって太陽電池の電極を形成する方法の使用によって、太陽電池の電極を形成するためのプロセスを説明している断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明の実践を説明している具体的な実施態様のおかげで、当業者は、本明細書に開示された内容を通して、本発明の他の利点及び効率を容易に理解することができる。本発明はまた、他の種々の実施態様によって実践され又は適用することができる。異なる見地及び適用に基づく、本明細書における如何なる詳細事項もの多くの他の可能な修正及び変更が、本発明の精神から逸脱することなくできる。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
34g/Lのニッケル硫酸、18g/Lの次リン酸ナトリウム;50g/Lのクエン酸アンモニウム;8g/Lの塩化アンモニウム;10g/Lのトリエタノールアミン;4g/Lのフッ化ナトリウム;及び0.0009g/Lのチオ尿素;の組成を有する本実施例の無電解ニッケルめっき溶液が調製される。さらに、無電解ニッケルめっき溶液のpHは約7.5〜8.2に調整される。
【0083】
[実施例2]
34g/Lの塩化ニッケル;7g/LのDMAB(ジメチルアミン・ボラン);50g/Lのクエン酸アンモニム;8g/Lの塩化アンモニウム;60g/Lのトリエタノールアミン;8g/Lのフッ化ナトリウム;0.001g/Lのチオ尿素;及び1g/Lのサッカリン;の組成を有する本実施例の無電解ニッケルめっき溶液が調製される。さらに、無電解ニッケルめっき溶液のpHは約8.0〜9.0に調整される。
【0084】
[実施例3]
35g/Lの硫酸ニッケル;15g/Lの次亜リン酸ナトリウム;5g/LのDMAB(ジメチルアミン・ボラン);40g/Lのクエン酸アンモニム;5g/Lの硫酸アンモニウム;20g/Lのトリエタノールアミン;6g/Lのフッ化ナトリウム;及び0.001g/LのPb2+;の組成を有する本実施例の無電解ニッケルめっき溶液が調製される。さらに、無電解ニッケルめっき溶液のpHは約8.0〜8.5に調整される。
【0085】
[実施例4]
35g/Lの硫酸ニッケル;25g/Lの次亜リン酸ナトリウム;1.25g/LのDMAB(ジメチルアミン・ボラン);55g/Lのクエン酸アンモニム;(13g/Lの硫酸アンモニウム;40g/Lのトリエタノールアミン;5g/Lのフッ化ナトリウム;及び0.001g/LのPb2+の組成を有する本実施例の無電解ニッケルめっき溶液が調製される。なお、無電解ニッケルめっき溶液のpHは約8.5〜9.3に調整される。
【0086】
実験結果から、実施例1〜4の無電解ニッケルめっき溶液の運転温度が50℃〜70℃であることが示される。本発明の無電解ニッケルめっき溶液は窒化ケイ素及びシリコンの間の高い選択性を有し、従ってシリコンの表面をニッケルでめっきできるが、窒化ケイ素の表面上はめっきされることはない。従って、本発明の無電解ニッケルめっき溶液は太陽電池の電極の製作において使用されるのに適している。
【0087】
[比較例1]
30g/Lの硫酸ニッケル;10g/Lの次亜リン酸ナトリウム;65g/Lのクエン酸アンモニム;50g/Lの塩化アンモニウム;及び0.001g/LのPb2+;の組成を有する本実施例の無電解ニッケルめっき溶液が調製される。さらに、無電解ニッケルめっき溶液のpHは約8.2〜8.8に調整される。
【0088】
本比較例の無電解ニッケルめっき溶液は、86℃未満ではシリコンの表面上でのニッケルめっきの処理が開始することができない従来の無電解ニッケルめっき溶液である。
【0089】
実験結果から、比較例1の無電解ニッケルめっき溶液は、実施例1〜4よりも低い窒化ケイ素及びシリコンの間の選択性を有することが示される。更に、比較例1の無電解ニッケルめっき溶液は、アルミニウム層に対して有害である。比較例1の無電解ニッケルめっき溶液を用いて処理された後のアルミニウム層の表面は粗くなり、そして無電解ニッケルめっき溶液に起因する幾らかの腐食の痕跡を示す。
【0090】
本発明が、その好ましい実施態様に関して説明されてきたが、多くの他の可能な修正及び変更が、以後に請求される通りの本発明の精神及び範囲から逸脱することなくすることができると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン及び窒化ケイ素を含むパターン化された構造を有する太陽電池の電極を形成するための塩基性無電解ニッケルめっき溶液であって、
(a)4.5g/L〜10.0g/Lのニッケルイオン;
(b)還元剤;
(c)30g/L〜60g/Lの、クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一キレート剤;
(d)5g/L〜80g/Lの第二キレート剤;
(e)0.0005g/L〜0.002g/Lの安定剤;及び
(f)水;を含み、
ここで、無電解ニッケルめっき溶液のpH値が7.0〜10.0の範囲にあり;第二キレート剤が、アルキロールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれるものである、
塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項2】
アルキロールアミンが、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項1に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項3】
還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミン・ボラン、ジエチルアミン・ボラン、モルホリン・ボラン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれ、かつ還元剤の含有量が0.5〜20g/Lである、請求項1に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項4】
還元剤が、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、ヒドラジンから成る群から選ばれ、かつ還元剤の含有量が5〜40g/Lである、請求項1に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項5】
塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる緩衝剤を更に含む、請求項1に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項6】
緩衝剤の含有量が1g/L〜20g/Lである、請求項5に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項7】
フッ化水素酸、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる促進剤を更に含む、請求項1に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項8】
促進剤の含有量が2g/L〜12g/Lである、請求項7に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項9】
安定剤が、チオ尿素;チオ尿素の誘導体;チオシアネート;Pb2+、Sb3+及びBi3+の酢酸化合物;Pb2+、Sb3+及びBi3+の硝酸化合物;並びに‐SH基を有する水溶性有機物質から成る群から選ばれる、請求項1に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項10】
シリコン及び窒化ケイ素を含むパターン化された構造を有する太陽電池の電極を形成するための塩基性無電解ニッケルめっき溶液であって、
(a)ニッケルイオン;
(b)還元剤;
(c)クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一キレート剤;
(d)第二キレート剤;
(e)安定剤;及び
(f)水;を含み、
ここで、無電解ニッケルめっき溶液のpH値が7.0〜10.0の範囲にあり;塩素イオンの含有量が1000ppm未満であり;第二キレート剤が、アルキロールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれるものである、
塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項11】
アルキロールアミンが、好ましくは、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項10に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項12】
ニッケルイオンの含有量が4.5g/L〜10.0g/L、第一キレート剤の含有量が30g/L〜60g/L、第二キレート剤の含有量が5g/L〜80g/L、かつ安定剤の含有量が0.0005g/L〜0.002g/Lである、請求項10に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項13】
還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミン・ボラン、ジエチルアミン・ボラン、モルホリン・ボラン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれ、かつ還元剤の含有量が0.5〜20g/Lである、請求項10に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項14】
還元剤が、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、ヒドラジンから成る群から選ばれ、かつ還元剤の含有量が5〜40g/Lである、請求項10に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項15】
塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる緩衝剤を更に含む、請求項10に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項16】
緩衝剤の含有量が1g/L〜20g/Lである、請求項15に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項17】
フッ化水素酸、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる促進剤を更に含む、請求項10に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項18】
促進剤の含有量が2g/L〜12g/Lである、請求項17に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項19】
安定剤が、チオ尿素;チオ尿素の誘導体;チオシアネート;Pb2+、Sb3+及びBi3+の酢酸化合物;Pb2+、Sb3+及びBi3+の硝酸化合物;並びに‐SH基を有する水溶性有機物質から成る群から選ばれる、請求項10に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項20】
シリコン及び窒化ケイ素を含むパターン化された構造を有する太陽電池の電極を形成するための塩基性無電解ニッケルめっき溶液であって、
(a)ニッケルイオン;
(b)次リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム、ホスフィン酸、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一還元剤;
(c)ボランである第二還元剤;
(d)クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる第一キレート剤;
(e)第二キレート剤;
(f)安定剤;及び
(g)水;を含み、
ここで、無電解ニッケルめっき溶液のpH値が7.0〜10.0の範囲にあり;第二キレート剤が、アルキロールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれるものである、
塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項21】
アルキロールアミンが、好ましくはジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項20に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液
【請求項22】
ニッケルイオンの含有量が4.5g/L〜10.0g/L、第一還元剤の含有量が5g/L〜30g/L、第二還元剤の含有量が0.5g/L〜20g/L、第一キレート剤の含有量が30g/L〜60g/L、第二キレート剤の含有量が5g/L〜80g/L、かつ安定剤の含有量が0.0005g/L〜0.002g/Lである、請求項20に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項23】
第二還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミン・ボラン、ジエチルアミン・ボラン、モルホリン・ボラン、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる、請求項20に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項24】
硫酸アンモニウム、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる緩衝剤を更に含む、請求項20に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項25】
緩衝剤の含有量が1g/L〜20g/Lである、請求項24に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項26】
フッ化水素酸、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、及びそれらの組合せから成る群から選ばれる促進剤を更に含む、請求項20に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項27】
促進剤の含有量が2g/L〜12g/Lである、請求項26に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項28】
安定剤が、チオ尿素;チオシアネート;Pb2+、Sb3+及びBi3+の酢酸化合物;Pb2+、Sb3+及びBi3+の硝酸化合物;並びに‐SH基を有する水溶性有機物質から成る群から選ばれる、請求項20に記載の塩基性無電解ニッケルめっき溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−174180(P2011−174180A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−22036(P2011−22036)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(511030921)イーケム エンタープライズ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】