説明

太陽電池

本発明は、好ましくは高分子プラスチックから成るフレキシブル基板(10)と前記基板(10)上に被着されて太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する少なくとも1つの光起電力層(26)とを有する太陽電池(1)において、前記基板(10)が面ファスナー要素(12)を一体不可分に有し、前記面ファスナー要素によって前記基板(10)、ひいては前記太陽電池(1)が工具なしにキャリア手段(20)に取付可能であることを特徴とする太陽電池に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのフレキシブル基板とこの基板上に被着されて太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する少なくとも1つの光起電力層とを有する太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
このような太陽電池は、通常、薄膜技術で製造され、例えばモノリシックに単結晶シリコンウェハに一体化され、又は析出した多結晶シリコン層又はアモルファスシリコン層を用いて一体化されている。光起電力の作用原理は、入射した太陽光が光起電力層内で電荷キャリアを遊離させ、これらの電荷キャリアが分離されて各1つの電極へと排出され、これにより電極に電圧が発生する、ことに基づいている。公知の太陽電池の製造も組立も高い投資コスト及び設置コストと結び付いており、これらのコストによって太陽電池の広範な応用がこれまで妨げられてきた。
【0003】
特許文献1には、エネルギー変換層をフレキシブル材料に被着し、このフレキシブル材料に接着剤等の汎用粘着材料を備えることによって製造されたフレキシブル薄膜太陽電池が開示されている。
【0004】
特許文献2には、熱可塑性プラスチックから面ファスナー部品を製造するための効率的な方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、発光手段を備えた面ファスナー部品及びこのような面ファスナー部品を製造するための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10305938号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19646318号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102004003123号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、先行技術の諸欠点を取り除き、特に太陽電池を安価に製造し組立てることによって、ソーラー電流を安価に生成することを可能とする太陽電池を提供することである。1つの実施の形態において、キャリア手段への太陽電池の取付が簡素化され、これにより、本発明に係る太陽電池の機能性及び利用可能性も改善される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に明示された太陽電池によって解決される。本発明の特別な実施の形態は従属請求項に明示されている。
【0009】
1つの実施の形態において、この太陽電池は、フレキシブルで、それゆえにしなやかであり、好ましくは伸縮自在に変形可能である基板を有しており、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するための少なくとも1つの光起電力層が基板上に被着されている。なお、複数の光起電力層を被着しておくこともできる。基本的に、フレキシブル基板は任意の方法で製造しておくことができ、例えば繊維産業で利用されるような、例えば製組、製編又は製織によって製造される基板とすることもできる。1つの実施の形態において、基板は、フラット高分子プラスチック、例えば高分子プラスチックフィルムによって形成されている。例えば、少なくとも片面、好ましくは全面にわたって高分子プラスチックで被覆させて、製組、製織又は製編によって製造される構成要素を有するサンドイッチ構造を用いることも可能である。
【0010】
基板上に例えば薄膜技術又は厚膜技術の通常の製造方法によって単数の又は複数の光起電力層を被着することができる。その際に、有機光起電力層、特に高分子光起電力層を使用すると特別有利である。というのも、これらの光起電力層は特別高い柔軟性を備えており、これにより太陽電池全体が高い柔軟性を有するからである。光起電力吸収層としては、例えばポリ‐3‐アルキルチオフェン、共役低バンドギャップポリマー又はポリフェニレンビニレン等の半導体高分子をp型導電材料として、また例えばC60フラーレン誘導体をn型導電材料として利用することができる。
【0011】
太陽電池は、光起電力層の他になお電極を有しており、これらの電極でもって太陽電池は電気的に接触させることができ、またこれらの電極には光電圧が発生する。好ましくは電極の少なくとも1つは、吸収すべき放射の波長範囲に対して透明又は部分的に透明な材料から製造されている。基板も透明又は部分的に透明とすることができ、吸収すべき放射は基板側面を介しても入射することができる。その他、不透明基板又は反射基板を利用することもでき、又は不透明層又は反射層を基板に被着することができる。
【0012】
1つの実施の形態において、電極の少なくとも1つと隣接する光起電力吸収層との間に1つの高分子中間層が配置されており、この中間層はスピンオン堆積又はスピンコーティングによって電極に被着しておくことができ、ドープされたポリエチレンジオキシチオフェンに基づかせることができ、50〜200nm、特に80〜100nmの厚さを有することができる。高分子中間層は平滑層として働いており、電極への電荷キャリア注入の改善に寄与する。
【0013】
1つの実施の形態において、電極は基板上に分散配置しておくことができ、特に基板は互いに電気的に結合された電極面を様々な位置に有することができ、特に規則的パターンで配置された電極面を有することができ、太陽電池は、所定の1箇所だけでなく、様々な位置で電気的に接触可能である。このことは、接続ケーブルの様々な供給ライン又は複数の接続ケーブルとの接触の可能性が有利である中、特に面積の大きい太陽電池にとって有利である。
【0014】
1つの実施の形態において、基板に被着された層の少なくとも一部は、印刷、特にスクリーン印刷又はオフセット印刷によって、気相又は液相からの析出によって、蒸着又は噴霧によって被着されている。層は構造化することなく被着しておくことができる。必要ならば引き続く構造化によって、例えば写真平版工程を利用して被着層の構造化は行うことができる。特にスクリーン印刷の場合、層は既に構造化して被着することもできる。
【0015】
1つの実施の形態において、層の少なくとも一部はインクジェット印刷技術によって被着されており、この印刷技術では被着すべき層が、直接に、又はキャリア材料に溶かして吹付ノズルによって、高分解能で基板に印刷される。この点について、直径数百ナノメートルの微細ノズルを介して基板上に層を生成できる固体物体の分散液又は懸濁液も含む機能性有機インキ、無機インキの広範な選択が利用可能である。こうして電子部品又は電子回路も基板上に被着することができ、これにより太陽電池は電気回路と組合せることが可能であり、又は、電気回路は太陽電池と一体不可分に製造可能である。
【0016】
基板は、基板、さらには太陽電池を、工具なしにキャリア手段に対して取付可能とする面ファスナー要素を一体不可分に有している。面ファスナー要素は、基板とにより1つの構造ユニットを形成する。その際、取付力は、機械的掛合及び/又は化学的結合力によって、もたらすことができる。
【0017】
例えば特許文献2に述べられたような賦形方法によって面ファスナー要素は、特にキャリア手段との機械的掛合を可能とするフラット基板と一体に製造可能である。面ファスナー要素はフック状、マッシュルーム状、ループ状又はその他の好適な掛合形状を有することができ、キャリア手段の対応する面ファスナー要素と協動することができる。フラット基板の面ファスナー要素とキャリア手段の面ファスナー要素とは同一に又は互いに相補的に形成しておくことができ、例えばフック‐フック、マッシュルーム‐マッシュルーム、フック‐ループ、マッシュルーム‐ループ等の結合が可能である。
【0018】
代わりに又は補足的に、化学的結合力、特に例えばファンデワールス力等の粘着力又はダイポール力によっても基板の面ファスナー要素はキャリア手段の表面と協動することができる。このため、例えばフラット基板と一体に形成されたステムは、その自由末端を多数の個別繊維に分割し、例えばステム当り数百本の繊維に分割しておくことができる。
【0019】
ステム末端がキャリア手段表面の方を向くその面に湾曲部を有し、好ましくは凸状湾曲部を有し、好ましくはキャリア手段表面を向く面がそれに続くステム領域に対して幅広にされているように、面ファスナー要素は形成しておくこともできる。これにより、ステム末端が狭くなることによって一種の屈曲予定部が規定されており、この屈曲予定部はキャリア手段表面の方を向く面ファスナー要素面がキャリア手段表面に位置合せされることを可能とし、従って面ファスナー要素がキャリア手段表面に大きな面で当接することを可能とし、及び/又は、面ファスナー要素が僅かな力でキャリア手段から剥離することを可能とする。ステムの端面は粘着力によってキャリア手段の表面と協動しており、これにより基板はキャリア手段に取付可能となる。このような面ファスナー要素用の好適なプラスチック材料は無機エラストマー、有機エラストマー、特にポリビニルシロキサン、付加架橋型シリコーンエラストマー、二成分系の態様のも、そしてアクリレートである。ゴム材料の利用も可能である。
【0020】
本発明の特別な1つの実施の形態において、面ファスナー要素はいずれにしても部分的に成形金型なしに製造されている。関連した方法がDE10065819C1、DE10106705C1に開示されている。その際、プラスチック材料は少なくとも1つの塗布装置によって、連続的に放出される滴として堆積され、滴の堆積箇所はその都度形成すべき面ファスナー要素の形状を考慮して立体的に選択することができる。こうして大きな形状自由度をもって例えばインクジェット印刷法の方式でフック要素、マッシュルーム要素、ループ要素等を製造することができる。
【0021】
本発明に係る太陽電池のキャリア手段への取付は、好ましくはキャリア手段からの太陽電池の剥離についても、簡単に、工具なしに可能である。取付手段は面ファスナーの態様で簡単に、大きな面で、及び/又はごく大量に、それゆえに安価に製造可能であり、面積の大きな太陽電池でも持続的で確実な取付を可能とする。
【0022】
1つの実施の形態においてフラット基板はプラスチック、特に熱可塑性プラスチックから製造されている。それに代えて平面的な第1基板は、特に成形金型なしに製造される面ファスナー要素の場合、熱硬化性プラスチックから製造しておくこともできる。好ましくは面ファスナー要素は、平面的第1基板と同じ材料から成る。特にポリエチレンとポリプロピレンが基本的に考慮に値する。さらに、ポリメタクリレート等のアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリメチルペンテン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6(登録商標)、ナイロン66(登録商標)及びポリブテンの群から選択したプラスチック材料を選択することができる。その代わりに、基板は無機エラストマー、有機エラストマー、特にポビニルシロキサン又は付加架橋型シリコーンエラストマーから製造されている。
【0023】
1つの実施の形態において、面ファスナー要素は光起電力層とは反対側の基板側面に配置されている。特に基板が入射光に対して透明又は部分的に透明である場合、面ファスナー要素は基板の両方の側面に配置しておくこともでき、又は面ファスナー要素をそれぞれに有する2つの基板を互いに結合しておくことができ、面ファスナー要素は基板複合体の両方の外面で突出することができ、両方の基板の間に光起電力層を配置しておくことができる。
【0024】
1つの実施の形態において、本発明に係る太陽電池は、例えば自動車ボデー、建物正面又は庭園用家具のほぼ任意に成形されたキャリア手段に対して工具なしに取付可能であるだけでなく、キャリア手段への太陽電池の取付も、キャリア手段からの太陽電池の剥離も、工具なしに行うことができる。個別の結合手段、特に接着剤又はその他の取付手段を省くことによって、取付は簡単に、特にキャリア手段への介入なしに可能である。取付が粘着力に基づいている限り、例えばガラス板等の平滑表面への取付は特別簡単確実に可能である。
【0025】
1つの実施の形態において、本発明に係る太陽電池は、特別安価なロールツーロール製造方法で生産可能である。これにより太陽電池は大きな面で、同時に僅かな費用で製造することができ、接続電極を好適に配置した場合、特に接続電極を基板上に分散配置して互いに電気的に接続した場合、太陽電池はキャリア手段上に被着後に適切に裁断することができる。
【0026】
1つの実施の形態において、面ファスナー要素は、例えば相応する面ファスナー要素を有するフィルムを太陽電池のフレキシブル基板と積層することによって基板と一体不可分に結合されているだけでなく、面ファスナー要素は光起電力層を担持する基板と一体に形成されている。その場合、太陽電池は、特にロールツーロール製造方法の枠内で、面ファスナー要素を有するフィルム状フレキシブル基板上で電極及び光起電力層の析出によって構成することができる。
【0027】
1つの実施の形態において、基板は少なくとも1つの取付面に、好ましくは全面にわたって多数の面ファスナー要素をcm当り面ファスナー要素100個以上の密度で有する。これは、面ファスナー要素を規則的に配置した場合1mm未満の格子寸法に一致する。好ましくは、基板はcm当り面ファスナー要素2500個以上の密度を有する。これは、面ファスナー要素を規則的に配置した場合0.2mm未満の格子寸法に一致する。好ましくはさらに、基板はcm当り面ファスナー要素10000個以上の密度を有する。これは0.1mm未満の格子寸法に一致する。太陽電池は特にcm当り、50μm未満の格子寸法に一致する40000個以上の面ファスナー要素を有する。特別な1つの実施の形態において、太陽電池はcm当り、20μm未満の格子寸法に一致する250000個以上の面ファスナー要素を有する。多数の面ファスナー要素によって取付も剥離も容易とすることができ、同時に高い保持力を生成することができる。
【0028】
1つの実施の形態において、面ファスナー要素の少なくとも一部は基板から離間した取付区域を有し、この取付区域は太陽電池に作用する重力に基づいて、及び/又は、手で加えることのできる押付力に基づいて、発生する粘着力が太陽電池をキャリア手段に取付するのに十分となるように、キャリア手段に平面的に当接可能である。この取付区域は好ましくは弾力的に撓み可能であり、僅かな力を加えるだけでも大きな面でキャリア手段への当接、従って高い取付力が粘着力のみによって達成可能である。
【0029】
1つの実施の形態において、面ファスナー要素当接面の弾性率は隣接する面ファスナー要素区域に比べて低下している。このため面ファスナー要素は、キャリア手段に向き合うその末端に、好適な材料による被覆を有することができる。この被覆は例えば面ファスナー要素に印刷しておくことができ、又は面ファスナー要素の製造時に既に被着することができ、例えばこのために使用される成形ローラに導入しておくことができる。又は、製造された面ファスナー要素は好適な材料から成るように浸漬することができる。
【0030】
1つの実施の形態において、面ファスナー要素の少なくとも一部は導電性である。これにより光起電力層の電気的接触が可能である。面ファスナー要素はその際接続電極として役立ち、例えば金属電極、例えば金被覆電極での粘着によって電極と電気的に接触させることができる。
【0031】
1つの実施の形態において、面ファスナー要素の少なくとも一部は、それらの表面の少なくとも一部に、導電性材料による被覆を有する。この被覆は例えば印刷又は浸漬によって被着することができる。
【0032】
1つの実施の形態において、基板は、面ファスナー要素を有するその側面が被覆されており、特に導電性材料又は半導体材料で被覆されており、例えば印刷されている。被覆は全面で行うことができ、必要なら引き続き構造化することができる。又は、被覆は既に構造化して行うことができ、例えばスクリーン印刷法による印刷又はインクジェット技術で行うことができる。面ファスナー要素を有する側面の被覆によって付加的な配線平面が得られる。例えば、結合線は基板の裏面に被着することができる。例えば基板高分子材料の局所的な変性又は導電性粒子の局所的導入によって部分的に導電性とされた基板と合せて、面ファスナー要素を有する基板裏面から光起電力層を有する基板前面への貫通接触もこうして用意することができる。これにより太陽電池の裏面接触が可能である。
【0033】
本発明のその他の利点、特徴及び詳細は従属請求項と、図面を参考に複数の実施例を詳細に述べる以下の明細書とから明らかとなる。特許請求の範囲及び明細書で触れられた特徴はそれぞれ個々にそれ自体として又は任意に組合せて発明上重要たり得る。理解し易い図示を目的に図面は寸法どおりではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る太陽電池の第1実施例の横断面図である。
【図2】面ファスナー要素の選択的実施の形態の横断面図である。
【図3】本発明に係る太陽電池を面ファスナー要素によってキャリア手段に取付した状態を示す。
【図4】本発明に係る太陽電池の第2実施例の横断面図である。
【図5】本発明に係る太陽電池の第3実施例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は本発明に係る太陽電池1の第1実施例の横断面図である。この太陽電池1は、行と列とに規則的に配置された多数の面ファスナー要素12を備えたフレキシブル基板10を有する。面ファスナー要素12と基板10とは一体に形成されている。基板10は高分子プラスチック、例えばポリアミド又はポリプロピレン等の熱可塑性プラスチック、又はポリビニルシロキサン等の熱硬化性プラスチックから製造されている。面ファスナー要素12は第1表面14から斜めに、好ましくは直角に突出している。面ファスナー要素12は実質円筒形とすることができ、又は双曲面の形状を有することができる。面ファスナー要素は特に、面ファスナー要素12の中心を延びて第1表面14とで直角を成す軸線に対して軸対称とすることができる。第1表面14から離間したその末端に面ファスナー要素は凹状湾曲表面42を有する。
【0036】
太陽電池1は基板10と実質同一に構成されたキャリア手段20と接合することができる。特に、面ファスナー要素12は同一に構成された他の面ファスナー要素18と脱離可能に係合させることができ、太陽電池10は脱離可能にキャリア手段20に取付可能である。掛合する面ファスナー要素12、18によって太陽電池1を取付する代わりに、基板10の面ファスナー要素12は繊維製面ファスナー要素と接合し、例えばフリース材料又はループ材料と接合し、又は直接に繊維製外被片と接合し、又は繊維製表面を有するキャリア手段と接合することもできる。
【0037】
第1表面14とは反対側の第2表面16で基板10に層系列22が被着されており、この層系列は基板10に隣接して、又は基板10に取付けられた中間層に隣接して第1電極24、光起電力層26及び第2電極28を含む。光起電力層26内で入射光30が吸収され、その際に電荷キャリア、特に電子‐正孔対が発生する。こうして発生した電荷キャリアは分離され、光起電力層26に隣接する両方の電極24、28へと転送され、これらの電極24、28に電圧が発生する。
【0038】
図1には第2電極28を介した光30の入射が示してある。このため第2電極28は、入射光30の波長範囲に対して透明又は部分的に透明な材料で構成しなければならない。このために適しているのは、例えばインジウムスズ酸化物等の導電性酸化物又は半導体酸化物である。電極の厚さは50〜500nm、好ましくは100〜300nm、特に150〜250nmとすることができる。1つの実施の形態において、基板10の材料も、入射光30に対して透明又は部分的に透明である。その場合、光入射は、代わりに又は補足的に、基板10を介して行うこともできる。電極24、28は完全に平滑にし又は構造化しておくことができる。電極24、28の1つを不透明としなければならない場合、例えばアルミニウム等の金属を材料として利用することができる。
【0039】
1つの実施の形態において、光起電力層26はそれ自体が多層系であり、特に2つの層を含み、例えばp型半導体高分子、例えばポリ‐3‐アルキルチオフェン、共役低バンドギャップポリマー又はポリフェニレンビニレン、そしてn型導体として有機アクセプタ、例えばC60フラーレン誘導体を含むことができる。
【0040】
電極24、28及び/又は光起電力層26は、例えば液相のスピンオン堆積又はスピンコーティングによって、構造化し又は構造化することなく基板10に被着しておくことができる。そうする代わりに層の少なくとも一部はインクジェット印刷技術によって被着しておくこともでき、この技術によって高分解能の電極ジオメトリを実現することができ、又は光起電力層26の組成は層厚にわたって変更することができる。
【0041】
図1の第1実施例の代わりに、太陽電池1の取付は、面ファスナー要素12とキャリア手段20との掛合によって行われるのでなく、又は、いずれにしてもそれのみによって行われるのでなく、代わりに又は補足的に、キャリア手段20のほぼ任意に形成された表面での面ファスナー要素12の粘着によって行うことができる。その場合、面ファスナー要素12のキャリア手段20に向き合う末端が弾力的に変形可能であると有利であり、これにより面ファスナー要素12の末端は僅かな押付力で、好ましくは太陽電池10に作用する重力のみに基づいて、又は、手で加えられる押付力に基づいて、キャリア手段20に極力大きな面で当接することになる。このため、面ファスナー要素12は、その末端がプラズマ照射又はプラズマ暴露によって僅かな弾性率を有するように変性させることができ、又は、面ファスナー要素12の末端に被覆を被着することができる。粘着力によって取付可能な太陽電池1は、好ましくは、熱硬化性プラスチック、特に熱硬化性エラストマー、例えばポリビニルシロキサンから成る基板10を有する。
【0042】
図2は面ファスナー要素112の選択的実施の形態の横断面図であり、面ファスナー要素の基板110から離れる方を向いてキャリア手段20に向き合う末端区域132は、いずれにしてもその表面146がそれに続く面ファスナー要素112区域に比べて低下した弾性率を有するように変性しておくことができる。表面区域132は、キャリア手段20への当接時にキャリア手段20の極力大きな面での接触を保証するためにその自由末端が凸状に湾曲している。さらに末端区域132は面ファスナー要素112の結合区域113の、末端区域132に隣接する区域よりも大きな半径方向の広がりを有する。面ファスナー要素112の結合区域113から末端区域132への移行部を胴状に狭めることによって、僅かな力で変位可能なヒンジ部を形成しておくこともでき、このヒンジ部によってキャリア手段20の大きな面での接触が保証される。
【0043】
選択的な1実施例において末端区域132の大きな半径方向の広がりは1方向でのみ行うこともでき、しかしながら、その場合好ましくは結合区域113の末端区域132に隣接する区域の直径の少なくとも20%の値だけ広げることができる。末端区域132は面ファスナー要素112の材料の局所的な変性によって形成しておくことができ、又は末端区域132を形成する好適な材料を結合区域113に片側で被着しておくことができ、又は末端区域132は面ファスナー要素112の製造時に例えば面ファスナー要素112のカレンダリングによって形成しておくことができ、又は製造後に好適な溶液に面ファスナー要素112を浸漬することによって形成しておくことができる。
【0044】
図3は、本発明に係る太陽電池1を面ファスナー要素12によってキャリア手段20に取付した状態を示す。結合手段又は結合層を付加的に必要とすることなく、太陽電池1は基板10及びそれに被着された層系列22の柔軟性に基づいてキャリア手段20の表面輪郭に相応して大きな面で被着させることができ、例えば太陽の位置変化に相応して様々な方向からの光30も、太陽電池1によって電気エネルギーに変換することができる。
【0045】
図4は、本発明に係る太陽電池201の第2実施例の横断面図である。好ましくは熱可塑性プラスチックから製造される基板210は少なくとも1領域234において、この領域234に配置される面ファスナー要素212と同様に、クロスハッチングで示唆したように、プラスチックの変性によって、例えば導電性粒子の埋込みによって導電性とされる。これらの領域234で、基板210は第2表面216に配置される層系列222に接触し、特に第1電極224に接触する。こうして第1電極224は太陽電池201の裏面から、例えば外部接触電極236を介して、電気的に接触させることができる。
【0046】
図5は、本発明に係る太陽電池301の第3実施例の横断面図である。層系列322の両方の側面に各1つのフレキシブル基板310、310aが配置されており、この基板はそれぞれ層系列322から離れた方の側面に面ファスナー要素312、312aを一体に有する。一方又は両方の基板310、310aは入射光に対して透明又は部分的に透明であり、入射は一方又は両方の基板310、310aを介して行うことができる。キャリア手段20での取付は選択的に一方の基板310又は他方の基板310aを介して行うことができる。電極324、328の電気的接触、つまり太陽電池301の電気的接触は、図5に示す区域の外側の無基板区域で行うことができ、又は、図4の第2実施例の接触に相応してそれぞれに付設された基板310、310aを介して行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは高分子プラスチックから成るフレキシブル基板(10)と前記基板(10)上に被着されて太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する少なくとも1つの光起電力層(26)とを有する太陽電池(1)において、
前記基板(10)は、面ファスナー要素(12)を一体不可分に有し、当該面ファスナー要素によって、前記基板(10)ひいては前記太陽電池(1)が工具なしにキャリア手段(20)に取付可能であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記面ファスナー要素(12)は、前記光起電力層(26)を担持する前記基板(10)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池(1)。
【請求項3】
前記基板(10)は、少なくとも1つの取付面に、好ましくは全面にわたって、多数の前記面ファスナー要素(12)を、cm当り面ファスナー要素100個以上の密度、特にcm当り面ファスナー要素2500個以上の密度で有することを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。
【請求項4】
前記基板(10)は、少なくとも1つの取付面に、好ましくは全面にわたって、多数の前記面ファスナー要素(12)をcm当り面ファスナー要素10000個以上、特にcm当り面ファスナー要素40000個以上、好ましくはcm当り面ファスナー要素250000個以上の密度で有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。
【請求項5】
前記面ファスナー要素(12)の少なくとも一部は、前記基板(10)から離間して取付区域を有し、
前記取付区域は、前記太陽電池(1)に作用する重力及び/又は手で加えることのできる押付力の結果として、発生する粘着力が前記太陽電池(1)を前記キャリア手段(20)に取り付けるのに十分となるように、前記キャリア手段(20)に対して平面的に当接可能であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。
【請求項6】
前記面ファスナー要素(12)は、前記基板(10)から離間して配置され、前記面ファスナー要素(12)の弾性率よりも小さな弾性率の材料による被覆を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。
【請求項7】
前記面ファスナー要素(12)の少なくとも一部は、導電性であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。
【請求項8】
前記面ファスナー要素(12)の少なくとも一部は、それらの表面の少なくとも一区域に導電性材料による被覆を有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。
【請求項9】
前記基板(10)は、前記面ファスナー要素(12)を有するその側面が印刷されており、特に導電性材料又は半導体材料で印刷されていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。
【請求項10】
前記基板(10)は、前記面ファスナー要素(12)を有するその側面が印刷して構造化されており、好ましくはインクジェット印刷法で印刷されており、特に導電性材料又は半導体材料で印刷されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の太陽電池(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−503854(P2011−503854A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532483(P2010−532483)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009282
【国際公開番号】WO2009/059738
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(500009857)ゴットリープ ビンダー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】