失禁パンツ
【課題】吸収部材の着脱が容易で、洗濯の際等の手間も掛からない失禁パンツを提供する。
【解決手段】この失禁パンツ1は、布製のパンツ本体11と、パンツ本体11の肌面側に固定された不透液性の防水シート12と、透液性を有し、防水シート12との間に吸収部材17を挟み込んで保持する表面シート13と、保持部14と、第1及び第2の止着部15,16を備えている。表面シート13の後側の外縁13aに沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分13bが防水シート12の肌面側における後側に位置する部分に固定されており、表面シート13の前側の部分が開閉可能となっている。表面シート13の後側保持部14は、表面シート13の後側固定部分13bによって構成され、吸収部材17の後側の部分17aを受け入れて保持する略ポケット状の構造を有する。
【解決手段】この失禁パンツ1は、布製のパンツ本体11と、パンツ本体11の肌面側に固定された不透液性の防水シート12と、透液性を有し、防水シート12との間に吸収部材17を挟み込んで保持する表面シート13と、保持部14と、第1及び第2の止着部15,16を備えている。表面シート13の後側の外縁13aに沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分13bが防水シート12の肌面側における後側に位置する部分に固定されており、表面シート13の前側の部分が開閉可能となっている。表面シート13の後側保持部14は、表面シート13の後側固定部分13bによって構成され、吸収部材17の後側の部分17aを受け入れて保持する略ポケット状の構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿を吸収する吸収部材が着脱自在に装着される失禁パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の失禁パンツとしては、特許文献1に記載のものがある。この失禁パンツでは、パンツ本体(1)の内面に、吸水性ポリマーシート(5)を着脱自在とする挿脱口(6)を裏面に設けた吸収パッド(4)が止着部材(7,8)により着脱自在に設けられている(要約、図2、図4、図5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3010579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来の失禁パンツでは、吸水性ポリマーシート(5)を吸収パッド(4)の狭い挿脱口(6)から挿脱する構成であるため、吸収性ポリマー(5)の着脱がやり難いという問題がある。また、パンツ本体(1)と吸収パッド(4)とが分離するため、洗濯、乾燥、保管等の際のに手間が増えるという問題もある。
【0005】
そこで、本発明の解決すべき課題は、吸収部材の着脱が容易で、洗濯の際等の手間も掛からない失禁パンツを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、尿を吸収する吸収部材が着脱自在に装着される失禁パンツであって、左右の脚孔及びウエスト開口を有し、当該失禁パンツの外形を構成する布製のパンツ本体と、前記パンツ本体の肌面側における股下部を含む領域に固定された不透液性の防水シートと、透液性を有するシート材によって形成され、前記防水シートの肌面側における当該失禁パンツの後側に位置する部分に、前記シート材の前記後側の外縁に沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分が固定されるとともに、前記シート材における前記後側固定部分よりも当該失禁パンツの前側に位置する部分が前記防水シートに対して近接、離反可能となっており、前記防水シートとの間で前記吸収部材を挟み込む表面シートと、前記表面シートの前記後側固定部分によって構成された略ポケット状の構造を有し、前記吸収部材の前記後側の部分を受け入れて保持する保持部と、前記表面シートの外面側における前記前側の部分に設けられた第1の止着部と、前記防水シートの肌面側に設けられ、前記第1の止着部が着脱自在に止着される第2の止着部とを備える。
【0007】
また、請求項2の発明では、請求項1の発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、その厚み方向に弾性を有する。
【0008】
また、請求項3の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、前記パンツ本体を形成する素材のこわさよりも大きなこわさを有する。
【0009】
また、請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、メッシュ構造を有する。
【0010】
また、請求項5の発明では、請求項4の発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、当該シート材の厚み方向に間隔をあけて配置されたメッシュ状の複数の編地と、前記編地間に編み渡され、前記編地間を連結する連結糸とを有する。
【0011】
また、請求項6の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、撥水性を有する。
【0012】
また、請求項7の発明では、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか一方は、複数のループ構造が設けられたループ部材であり、前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか他方は、前記ループ部材の前記ループ構造に着脱自在に係合する複数のフック構造が設けられたフック部材である。
【0013】
また、請求項8の発明では、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートにおける前記パンツ本体の股下部に位置する部分の左右両側に設けられ、前記パンツ本体の前記股下部の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出す張り出し部をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明に係る失禁パンツによれば、パンツ本体の肌面側に防水シートが設けられ、その防水シートと防水シートの肌面側に設けられた表面シートとの間に吸収部材が挟み込まれて保持される。表面シートはその後側固定部分が防水シートの肌面側における当該失禁パンツの後側に位置する部分に固定されているとともに、表面シートの後側固定部分よりも前側に位置する部分が防水シートに対して近接、離反可能となっている。それ故、吸収部材の着脱時は、表面シートの後側固定部分よりも前側に位置する部分を防水シートから離反する方向にめくり上げることにより、吸収部材の着脱を容易に行える。
【0015】
また、表面シートの外面側における前側の部分に設けられた第1の止着部と、防水シートの肌面側に設けられた第2の止着部とによって、表面シートの前側の部分を防水シートに対して着脱自在に固定できる。これにより、吸収部材をパンツ本体に装着したときに、表面シートの前側の部分及び吸収部材が不安的になることもない。
【0016】
また、表面シートの防水シートと固定される後側固定部分が、表面シートの後側の外縁に沿った略U字状又は略円弧状の形状を有し、その後側固定部分によって略ポケット状の保持部が構成されている。そして、その保持部が吸収部材の後側の部分を受け入れて保持する。このため、吸収部材をパンツ本体に装着したときに、吸収部材の位置ずれ又は脱落等が生じるのを確実に防止できる。
【0017】
また、防水シート及び表面シートはパンツ本体に固定されているため、洗濯時等にそれらをパンツ本体から取り外す必要がなく、失禁パンツの洗濯、乾燥、管理際等の手間が掛からない。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材がその厚み方向に弾性を有しているため、吸収部材による着用者の肌への当たりを表面シートによって緩和することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材がパンツ本体を形成する素材のこわさよりも大きなこわさを有するため、表面シートの開閉等の操作が行い易い。例えば、吸収部材が尿を吸収している状態においても、表面シートを吸収部材及び防水シートから容易に引き離すことができ、吸収部材の着脱を容易に行える。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材がメッシュ構造を有するため、着用者の尿が迅速に表面シートを透過して吸収部材に吸収される。その結果、尿が表面シートの肌面側表面に沿って外部に流れ出しまう等の尿漏れを抑制できる。
【0021】
また、メッシュ構造を有する表面シートが着用者の肌面と吸収部材との間に介在するため、着用者の肌面と吸収部材との間に適度な隙間を形成でき、これによって、吸収部材に含まれる水分による着用者の肌面の湿気感、ベタ付き感等を軽減でき、着用感を向上できる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材が、当該シート材の厚み方向に間隔をあけて配置されたメッシュ状の複数の編地と、その編地間に編み渡され、編地間を連結する連結糸とを有し、メッシュ状の複数の編地が連結糸によって厚み方向に間隔をあけた状態で支持される。これによって、表面シートが言わば立体的に編まれたメッシュ構造を有しているため、厚み方向に良好な弾性を有しするとともに適度なこわさを有する表面シートを実現できる。しかも、表面シートの十分な厚みを確保しながら、表面シートに良好な透液性及び通気性を持たせることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材が撥水性を有しているため、表面シートの保水性を抑制でき、その結果、吸収部材が尿を吸収した状態でにおいても表面シートに含まれる水分を抑制することができ、着用者の感じる湿気感等の不快感を軽減できる。また、表面シートの保水性が抑制されているため、表面シートが乾燥しやすいという利点もある。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、表面シートの前側の部分をパンツ本体側に着脱自在に固定するための第1及び第2の止着部に、ループ部材とフック部材とが用いられているため、表面シートの前側の部分を確実にパンツ本体側に固定することがきるとともに、着脱操作も容易に行うことができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、表面シートにおけるパンツ本体の股下部に位置する部分の左右両側に、パンツ本体の股下部の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出す張り出し部が設けられている。このため、吸収部材が表面シートと防水シートとの間に装着された際に、吸収部材の左右方向の位置ずれが左右の張り出し部によって左右両側から止められ、これによって、吸収部材の位置ずれ又は脱落等を確実に防止できる。例えば、吸収部材がパンツ本体に装着された状態で、表面シートの左右の張り出し部を、張り出し部がパンツ本体の股下部を抱え込むように股下部の外面側に折り曲げるなどすることにより、張り出し部による吸収部材の保持機能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る失禁パンツの斜視図である。
【図2】図1の失禁パンツを左右のサイド部分で切って平面的に展開した図である。
【図3】図2の失禁パンツのA1−A1線に沿った断面の構成を示す断面図である。
【図4】図1の失禁パンツに対する吸収性物品の着脱時の操作を説明するための図である。
【図5】図1の失禁パンツの表面シートに用いられる立体編物の一例の構成を模式的に示す図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は図5の立体編物の断面の構成を模式的に示す断面図であり、(a)は押圧力が作用していない立体編物の自然状態を示し、(b)は押圧力によって立体編物が厚み方向に圧縮された状態を示している。
【図7】図2に示す失禁パンツの構成の変形例を示す図である。
【図8】図7の失禁パンツのA2−A2線に沿った断面の構成を示す断面図であり、表面シートの左右の張り出し部が失禁パンツの股下部の外面側に折り畳まれて止着された状態を示している。
【図9】図1の失禁パンツに一例として用いられる吸収部材の一部を破断した斜視図である。
【図10】図9の吸収部材に備えられる内側袋部材の平面図である。
【図11】図10の内側袋部材のA3−A3線に沿った断面の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る失禁パンツの斜視図である。図2は、図1の失禁パンツを左右のサイド部分(図1の仮想線L1で示す部分)で切って平面的に展開した図である。図3は、図2の失禁パンツのA1−A1線に沿った断面の構成を示す断面図である。図4は図1の失禁パンツに対する吸収性物品の着脱時の操作を説明するための図である。なお、図2において図面に向かって上側が失禁パンツ1の前側に対応している。
【0028】
本実施形態に係る失禁パンツ1は、図1ないし図3に示すように、パンツ本体11と、防水シート12と、表面シート13と、保持部14と、第1及び第2止着部15,16とを備えて構成され、尿を吸収する吸収部材17が着脱自在に装着される。この失禁パンツ1は、洗濯可能であり、何度も再利用できるものである。
【0029】
パンツ本体11は、洗濯可能な1又は複数の布材がパンツの外形を構成するように縫合等により接合されて形成されており、左右の脚孔21及びウエスト開口22を有している。パンツ本体11を構成する布材としては、例えば、綿、化学繊維又はそれらの混合繊維からなる織布が用いられる。
【0030】
防水シート12は、不透液性の素材により形成され、パンツ本体11の肌面側におけるパンツ本体11の股下部23を含む領域を覆うように、縫合又は接着等により固定されている。この簿防水シート12によって、後述する吸収部材17によって吸収された尿が失禁パンツ1の外部にしみ出すのが防止される。
【0031】
表面シート13は、透液性を有するシート材によって形成され、吸収部材17をカバー部材12との間に挟み込んで保持する。表面シート13における失禁パンツ1の後側の外縁13aに沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分13bは、防水シート12の肌面側における後側に位置する部分に、縫合等により固定されている。表面シート13の後側固定部分13bよりも失禁パンツ1の前側に位置する部分は、図4に示すように、防水シート12等と固定されておらず、吸収部材17の着脱時に防水シート12に対して近接、離反できるようになっている。
【0032】
保持部14は、表面シート13の後側固定部分13bと防水シート12とによって囲まれた略ポケット状の空間を有し、吸収部材17の後側の部分17aを受け入れて保持する。なお、吸収部材17は前後の構成の区別があるものであってもよいし、前後の区別がなく前後対称のものであってもよい。
【0033】
第1及び第2の止着部15,16は、表面シート13の前側の部分をパンツ本体11側(具体的には防水シート12)に着脱自在に固定するためのものである。第1の止着部15は、表面シート13の外面側(肌面側と反対側)における前側の部分に縫合又は接着等により固定されている。第2の止着部16は、防水シート12の肌面側における第1の止着部15と対応する位置に縫合又は接着等により固定され、第1の止着部15が着脱自在に止着される。より具体的には、第1の止着部15及び第2の止着部16のいずれか一方は、複数のループ構造が設けられたループ部材であり、第1の止着部15及び第2の止着部16のいずれか他方は、ループ部材のループ構造に着脱自在に係合する複数のフック構造が設けられたフック部材である。本実施形態では、第1の止着部15がフック部材となっており、第2の止着部16がループ部材となっている。
【0034】
吸収部材17としては、交換可能なタイプのものであれば、種々のものが採用できるが、略パット状で薄型のものが好ましい。なお、吸収部材17の具体例については、図9ないし図11を用いて後述する。
【0035】
失禁パンツ1に吸収部材17を装着するときは、図4に示すように、第1及び第2の止着部15,16の止着状態を解除し、表面シート13の前側の部分を防水シート12から引き離すようにしてめくり上げて開く。そして、吸収部材17の後側の部分17aを保持部14内に挿入するようにして、吸収部材17を防水カバー12上に置き、表面シート13の前側の部分を閉じて、第1の止着部15を第2の止着部16に止着する。吸収部材17の交換又は取り外しは、第1及び第2の止着部15,16の止着状態を解除することにより、容易に行える。
【0036】
このような失禁パンツ1の構成により、吸収部材17の着脱時は、表面シート13の前側の部分を防水シート12から離反する方向にめくり上げることにより、吸収部材17の着脱を容易に行える。
【0037】
また、第1及び第2の止着部15,16によって表面シート13の前側の部分を防水シート12に対して着脱自在に固定できるため、吸収部材17をパンツ本体11に装着したときに、表面シート13の前側の部分及び吸収部材17が不安的になることがない。
【0038】
また、本実施形態では、第1及び第2の止着部15,16に、ループ部材とフック部材とが用いられているため、表面シート13の前側の部分を確実にパンツ本体側に固定することがきるとともに、着脱操作も容易に行うことができる。
【0039】
また、表面シート13の後側固定部分13bによって略ポケット状の保持部14が構成され、その保持部14が吸収部材17の後側の部分17aを受け入れて保持する。このため、吸収部材17をパンツ本体11に装着したときに、吸収部材17の位置ずれ又は脱落等が確実に生じるのを防止できる。
【0040】
また、防水シート12及び表面シート13はパンツ本体11に固定されているため、洗濯時等にそれらをパンツ本体11から取り外す必要がなく、失禁パンツ1の洗濯、乾燥、管理際等の手間が掛からない。
【0041】
次に、表面シート13に用いられているシート材について詳しく説明する。表面シート13に用いられるシート材は、その厚み方向に弾性を有するとともに、適度なこわさを有しているのが好ましく、さらにメッシュ構造を有しているのがより好ましい。表面シート13の厚み方向の圧縮弾性率については、例えば20〜200N/m2程度の素材を用いるのが好ましい。また、表面シート13のこわさの程度については、パンツ本体11を形成する素材のこわさよりも大きいことが好ましい。
【0042】
表面シート13に厚み方向の弾性を付与することにより、吸収部材17による着用者の肌への当たりを表面シート13によって緩和することができる。また、表面シート13に適度なこわさを付与することにより、表面シート13の開閉等の操作が行い易くなる。例えば、吸収部材17が尿を吸収している状態においても、表面シート13を吸収部材13及び防水シート12から容易に引き離すことができ、吸収部材17の着脱を容易に行える。
【0043】
また、表面シート13にメッシュ構造を有するシート材を用いることにより、着用者の尿が迅速に表面シート13を透過して吸収部材17に吸収される。その結果、尿が表面シート13の肌面側表面に沿って外部に流れ出しまう等の尿漏れを抑制できる。また、メッシュ構造を有する表面シート13が着用者の肌面と吸収部材17との間に介在するため、着用者の肌面と吸収部材17との間に適度な隙間を形成でき、これによって、吸収部材17に含まれる水分による着用者の肌面の湿気感、ベタ付き感等を軽減でき、着用感を向上できる。
【0044】
このような特性及び構造が要求される表面シート13の素材としては、例えば立体編物と呼ばれるシート材を好適に用いることができる。図5は、表面シートに用いられる立体編物の一例の構成を模式的に示す図である。図6(a)及び図6(b)は図5の立体編物の断面の構成を模式的に示す断面図であり、(a)は押圧力が作用していない立体編物の自然状態を示し、(b)は押圧力によって立体編物が厚み方向に圧縮された状態を示している。
【0045】
この立体編物31は、図5に示すように、第1及び第2の編地32,33と、第1及び第2の編地32,33間に編み渡された連結糸34とを備えて構成されている。第1及び第2の編地32,33は、メッシュ状に編まれた編組であり、立体編物31の厚み方向Dに間隔をあけて配置されている。連結糸34は、第1及び第2の編地32,33間に編み渡され、第1及び第2の編地32,33間を連結する。連結糸34の素材としては、第1及び第2の編地32,33を間隔をあけた状態で支持する必要があるため、適度な剛性を有していることが好ましい。連結糸34は、第1の編地32の編み目と第2の編地33の編み目との間に編み渡される。このとき、連結糸34の編み渡し方としては、編み渡された連結糸34によって、第1の編地32と第2の編地33との間に多数の三角形が連なってなるトラス構造を形成するのがよい。
【0046】
立体編物31に厚み方向Dの押圧力Fが与えられたときには、立体編物31が、図6(a)に示す自然状態から図6(b)に示す状態へ弾性的に変化する。このとき、押圧力により連結糸34が弾性的に撓み変形することにより、第1の編地32と第2の編地33との間が縮まるようにして弾性的に圧縮される。押圧力Fが解除されると、弾性糸34が撓み状態から自律的に復帰するのに伴って、第1の編地32と第2の編地33との間の間隔が元の間隔に戻る。
【0047】
このように、立体編物31は言わば立体的に編まれたメッシュ構造を有しているため、厚み方向Dに良好な弾性を有しするとともに適度なこわさを有する表面シート13を構成できる。しかも、表面シート13の十分な厚みを確保しながら、表面シート13に良好な透液性及び通気性を持たせることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、2層の編地32,33間を連結糸34により連結したが、3層以上の編地を連結糸34で連結してもよい。また、第1の編地32のメッシュパターンと第2の編地33のメッシュパターンとは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、表面シート13を形成するシート材が、撥水性を有する素材により形成されている。なお、素材の材料そのものが撥水性を有するような材料を用いてシート材を形成する構成の他、親水性を有する素材に撥水処理を施した後、その素材を用いて表面シート13を形成する構成が採用可能である。
【0050】
このように表面シート13を撥水性を有する素材により形成することにより、表面シート13の保水性を抑制でき、その結果、吸収部材17が尿を吸収した状態でにおいても表面シート13に含まれる水分を抑制することができ、着用者の感じる湿気感等の不快感を軽減できる。また、表面シート13の保水性が抑制されているため、表面シート13が乾燥しやすいという利点もある。
【0051】
図7は図2に示す失禁パンツの構成の変形例を示す図であり、図8は図7の失禁パンツのA2−A2線に沿った断面の構成を示す断面図であり、表面シートの左右の張り出し部が失禁パンツの股下部の外面側に折り畳まれて止着された状態を示している。この図7及び図8に示す変形例では、表面シート13の左右両側の側縁部から左右方向に張り出す左右の張り出し部36が設けられている。この左右の張り出し部36は、表面シート13におけるパンツ本体11の股下部23に位置する部分の左右両側において、パンツ本体11の股下部23の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出している。
【0052】
左右の張り出し部36の左右方向外方側の端部における外面側には、張り出し部36をパンツ本体11の股下部23の外面側に着脱自在に止着するための第3の止着部37が縫合又は接着等により固定されている。これに対応して、パンツ本体11の股下部23の外面側には、第3の止着部37が着脱自在に止着される第4の止着部38が縫合又は接着等により固定されている。なお、この変形例では第4の止着部38を左右の張り出し部36に設けられた第3の止着部37ごとに設けたが、よりサイズの大きい単一の第4の止着部38を設け、その単一の第4の止着部38に対して左右の第3の止着部37を止着するようにしてもよい。また、第3の止着部37及び第4の止着部38のいずれか一方はループ部材であり、第3の止着部37及び第4の止着部38のいずれか他方はフック部材である。この変形例では、第3の止着部37がフック部材となっており、第4の止着部38がループ部材となっている。なお、フック部材及びループ部材の構成は上述の第1及び第2の止着部15,16の場合とほぼ同様である。
【0053】
失禁パンツ1に吸収部材17を装着するときは、まず上述の如く吸収部材17を表面シート13と防水シート12との間に挟み込む。そして、図8に示すように、表面シート13の左右の張り出し部36をパンツ本体11の股下部23を抱え込むように股下部23の外面側に折り曲げて、第3の止着部37を第4の止着部38に止着し、張り出し部36を折り曲げた状態に固定する。吸収部材17の取り外しの際は、第3の止着部37を第4の止着部38の止着状態を解除して、取り外しを行う。
【0054】
この変形例に係る構成により、吸収部材17を表面シート13と防水シート12との間に装着した際に、吸収部材17の左右方向の位置ずれが左右の張り出し部36によって左右両側から止められる。これによって、吸収部材17の位置ずれ又は脱落等を確実に防止できる。
【0055】
なお、図7及び図8に示す変形例のさらなる変形例として、第3及び第4の止着部37,38を省略してもよい。第3及び第4の止着部37,38を省略しても、失禁パンツ1を装着したときに、表面シート13に設けられた左右の張り出し部36を脚孔21を介してパンツ本体11の股下部23の外面側に引き出しておけば、張り出し部36によって、吸収部材17の左右方向の位置ずれ等を有効に止めることができる。
【0056】
次に、図9ないし図11を参照して、本実施形態に係る失禁パンツ1に用いられる交換可能な吸収部材17の具体例について説明する。なお、この具体例に限らず、失禁パンツ1には種々の吸収部材17を用いることができる。
【0057】
この図9ないし図11に示す吸収部材17は、複数の内側袋部材111と、その各内側袋部材111内に入れられた吸収ポリマー112と、複数の内側袋部材111を収容する外側袋部材113とを備えて構成される。この吸収部材17に用いられるすべての素材は、後述するように生分解性の材料により形成されており、使用後は吸収部材17を土壌等に埋却できるようになっている。なお、この図9に示す構成では、外側袋部材113内に3つの内側袋部材111を収容したが、3つに限らず、1つでも、2つでも4つ以上でもよい。例えば、1又は複数の内側袋部材111を縦又は横方向に沿って折り畳んで外側袋部材113内に収容してもよい。
【0058】
内側袋部材111は、薄い略シート状の形態を有し、生分解性及び透液性を有する不織布からなる2枚の第1のシート115,116により形成されている。内側袋部材111の内部には、外部から閉鎖され、かつ互いに互いに分割された複数の収容空間117が形成されている。第1のシート115,116を形成する不織布の材料としては、例えばポリ乳酸が用いられる。
【0059】
第1のシート115,116は、一方向に沿って略長尺状に延びた略矩形の平面形状を有している。2枚の第1のシート115,116の周縁部115a,116a、及び複数の収容空間117間を分割する仕切り部115b,116bが、溶着(加熱溶着又は超音波溶着)によって互いに接合されている(ここでは、加熱溶着が用いられている)。これによって、内側袋部材111内に、外部から遮断されかつ互いに分割された複数の収容空間117が形成される。図10に示す例では、8つの収容空間117が2列に分けて形成されているが、収容空間117の数も8つに限定するものではなく、また収容空間117を3列以上に分けて設けてもよいし、1列だけの構成としてもよい。なお、図10に示す例では、2枚の第1のシート115,116を用いて内側袋部材111を形成したが、1枚の第1のシート115を二つ折りにして接合することにより、内側袋部材111を形成してもよい。
【0060】
吸収ポリマー112は、生分解性を有するとともに略粒状又は略粉状の形態を有し、各内側袋部材111の各収容空間117内に、収容空間117内において自由に移動可能な状態で入れられている。このため、吸収ポリマー112の各収容空間117内への充填量は、各収容空間117内に十分な余剰スペースが確保可能な分量に設定される。吸収ポリマー112の材料としては、例えばポリアスパラギン酸が用いられる。
【0061】
外側袋部材113は、生分解性及び透液性を有する不織布からなる2枚の第2のシート118,119により形成されている。この外側袋部材113の収容空間内に、複数の内側袋部材111が重ね合わされた状態で収容される。第2のシート118,119を形成する不織布の材料としては、例えばポリ乳酸が用いられる。
【0062】
第2のシート118,119は、一方向に沿って略長尺状に延びた略矩形の平面形状を有している。2枚の第2のシート118,119の周縁部118a,119aが、溶着(加熱溶着又は超音波溶着)によって互いに接合されている(ここでは、加熱溶着が用いられている)、これによって、外側袋部材113の袋構造が形成される。なお、図9に示す例では、2枚の第2のシート118,119を用いて外側袋部材113を形成したが、1枚の第2のシート118を二つ折りにして接合することにより、外側袋部材113を形成してもよい。このように構成される吸収部材17は、一方向に沿って延びた薄い略長尺状の形状を有している。
【0063】
また、内側袋部材111を形成する第1のシート115,116の目付は、吸収ポリマー112がシート115,116の不織布繊維の隙間を通り抜けて外部の漏れるの防止するため、外側袋部材113を形成する第2のシート118,119の目付よりも高目付に設定されている。例えば、第1のシート115,116の目付は1平方メートル当たり約30gに設定され、第2のシート118,119の目付は1平方メートル当たり約20gに設定される。
【0064】
このような吸収部材17の構成によれば、内部の収容空間117内に略粒状又は略粉状の形態を有する吸収ポリマー112が入れられた複数の内側袋部材111が、重ね合わされた状態で外側袋部材113によって内包されている。このため、薄型でコンパクトな構成としながら十分な吸収容量が得られるとともに、本実施形態に係る失禁パンツ1に対する着脱時の取扱性も良好な吸収部材17を実現できる。
【0065】
また、内側袋部材111の各収容空間117内に、略粒状又は略粉状の形態を有する吸収ポリマー112が収容空間117内において自由に移動可能な状態で入れられている。このため、排泄液の吸収により吸収ポリマー112が膨潤する際のスペース的な余裕を十分に確保することができ、その結果、吸収ポリマー112の膨潤を阻害することなく、吸収ポリマー112の吸収性能を十分に発揮させることができる。
【0066】
また、内側袋部材111の各収容空間117内において吸収ポリマー112が自由に移動できるため、吸収部材117の装着時における形状変化の自由度も大きい。その結果、吸収部材117の配置場所等に応じて吸収部材117の形状を自由に変化させることができる。
【0067】
また、この吸収部材17は上記の如く薄型でコンパクトな構成となっている。このため、吸収部材17を失禁パンツ1の内側に配置する場合等に、当該吸収部材17の配置により着用者が感じる圧迫感又は異物感等の違和感を軽減できる。
【0068】
また、吸収部材17に含まれる内側袋部材111、外側袋部材113及び吸収ポリマー112を構成する全ての素材が生分解性の素材により形成されているため、使用後は当該吸収部材17を土壌等に埋却して処分できる。しかも、吸収ポリマー112が複数の内側袋部材111に分けて入れられているとともに、各内側袋部材111内においても分割された複数の収容空間117に分けて入れられているため、当該吸収部材17が土壌等に埋却された際に、吸収ポリマー112を塊にならずに分散させて効率よく生分解させることができる。その結果、吸収部材17全体を効率よく生分解させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 失禁パンツ、11 パンツ本体、12 防水シート、13 表面シート、13a 後縁、13b 後側固定部、14 保持部、15 第1の止着部、16 第2の止着部、17 吸収部材、21 脚孔、22 ウエスト開口、23 股下部、31 立体編物、32 第1の編地、33 第2の編地、34 連結糸、36 張り出し部、37 第1の止着部、38 第2の止着部、111 内側袋部材、112 吸収ポリマー、113 外側袋部材部、115,116 第1のシート、117 収容空間、118,119 第2のシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿を吸収する吸収部材が着脱自在に装着される失禁パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の失禁パンツとしては、特許文献1に記載のものがある。この失禁パンツでは、パンツ本体(1)の内面に、吸水性ポリマーシート(5)を着脱自在とする挿脱口(6)を裏面に設けた吸収パッド(4)が止着部材(7,8)により着脱自在に設けられている(要約、図2、図4、図5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3010579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来の失禁パンツでは、吸水性ポリマーシート(5)を吸収パッド(4)の狭い挿脱口(6)から挿脱する構成であるため、吸収性ポリマー(5)の着脱がやり難いという問題がある。また、パンツ本体(1)と吸収パッド(4)とが分離するため、洗濯、乾燥、保管等の際のに手間が増えるという問題もある。
【0005】
そこで、本発明の解決すべき課題は、吸収部材の着脱が容易で、洗濯の際等の手間も掛からない失禁パンツを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、尿を吸収する吸収部材が着脱自在に装着される失禁パンツであって、左右の脚孔及びウエスト開口を有し、当該失禁パンツの外形を構成する布製のパンツ本体と、前記パンツ本体の肌面側における股下部を含む領域に固定された不透液性の防水シートと、透液性を有するシート材によって形成され、前記防水シートの肌面側における当該失禁パンツの後側に位置する部分に、前記シート材の前記後側の外縁に沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分が固定されるとともに、前記シート材における前記後側固定部分よりも当該失禁パンツの前側に位置する部分が前記防水シートに対して近接、離反可能となっており、前記防水シートとの間で前記吸収部材を挟み込む表面シートと、前記表面シートの前記後側固定部分によって構成された略ポケット状の構造を有し、前記吸収部材の前記後側の部分を受け入れて保持する保持部と、前記表面シートの外面側における前記前側の部分に設けられた第1の止着部と、前記防水シートの肌面側に設けられ、前記第1の止着部が着脱自在に止着される第2の止着部とを備える。
【0007】
また、請求項2の発明では、請求項1の発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、その厚み方向に弾性を有する。
【0008】
また、請求項3の発明では、請求項1又は請求項2の発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、前記パンツ本体を形成する素材のこわさよりも大きなこわさを有する。
【0009】
また、請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、メッシュ構造を有する。
【0010】
また、請求項5の発明では、請求項4の発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、当該シート材の厚み方向に間隔をあけて配置されたメッシュ状の複数の編地と、前記編地間に編み渡され、前記編地間を連結する連結糸とを有する。
【0011】
また、請求項6の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートを形成する前記シート材は、撥水性を有する。
【0012】
また、請求項7の発明では、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか一方は、複数のループ構造が設けられたループ部材であり、前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか他方は、前記ループ部材の前記ループ構造に着脱自在に係合する複数のフック構造が設けられたフック部材である。
【0013】
また、請求項8の発明では、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明に係る失禁パンツにおいて、前記表面シートにおける前記パンツ本体の股下部に位置する部分の左右両側に設けられ、前記パンツ本体の前記股下部の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出す張り出し部をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明に係る失禁パンツによれば、パンツ本体の肌面側に防水シートが設けられ、その防水シートと防水シートの肌面側に設けられた表面シートとの間に吸収部材が挟み込まれて保持される。表面シートはその後側固定部分が防水シートの肌面側における当該失禁パンツの後側に位置する部分に固定されているとともに、表面シートの後側固定部分よりも前側に位置する部分が防水シートに対して近接、離反可能となっている。それ故、吸収部材の着脱時は、表面シートの後側固定部分よりも前側に位置する部分を防水シートから離反する方向にめくり上げることにより、吸収部材の着脱を容易に行える。
【0015】
また、表面シートの外面側における前側の部分に設けられた第1の止着部と、防水シートの肌面側に設けられた第2の止着部とによって、表面シートの前側の部分を防水シートに対して着脱自在に固定できる。これにより、吸収部材をパンツ本体に装着したときに、表面シートの前側の部分及び吸収部材が不安的になることもない。
【0016】
また、表面シートの防水シートと固定される後側固定部分が、表面シートの後側の外縁に沿った略U字状又は略円弧状の形状を有し、その後側固定部分によって略ポケット状の保持部が構成されている。そして、その保持部が吸収部材の後側の部分を受け入れて保持する。このため、吸収部材をパンツ本体に装着したときに、吸収部材の位置ずれ又は脱落等が生じるのを確実に防止できる。
【0017】
また、防水シート及び表面シートはパンツ本体に固定されているため、洗濯時等にそれらをパンツ本体から取り外す必要がなく、失禁パンツの洗濯、乾燥、管理際等の手間が掛からない。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材がその厚み方向に弾性を有しているため、吸収部材による着用者の肌への当たりを表面シートによって緩和することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材がパンツ本体を形成する素材のこわさよりも大きなこわさを有するため、表面シートの開閉等の操作が行い易い。例えば、吸収部材が尿を吸収している状態においても、表面シートを吸収部材及び防水シートから容易に引き離すことができ、吸収部材の着脱を容易に行える。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材がメッシュ構造を有するため、着用者の尿が迅速に表面シートを透過して吸収部材に吸収される。その結果、尿が表面シートの肌面側表面に沿って外部に流れ出しまう等の尿漏れを抑制できる。
【0021】
また、メッシュ構造を有する表面シートが着用者の肌面と吸収部材との間に介在するため、着用者の肌面と吸収部材との間に適度な隙間を形成でき、これによって、吸収部材に含まれる水分による着用者の肌面の湿気感、ベタ付き感等を軽減でき、着用感を向上できる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材が、当該シート材の厚み方向に間隔をあけて配置されたメッシュ状の複数の編地と、その編地間に編み渡され、編地間を連結する連結糸とを有し、メッシュ状の複数の編地が連結糸によって厚み方向に間隔をあけた状態で支持される。これによって、表面シートが言わば立体的に編まれたメッシュ構造を有しているため、厚み方向に良好な弾性を有しするとともに適度なこわさを有する表面シートを実現できる。しかも、表面シートの十分な厚みを確保しながら、表面シートに良好な透液性及び通気性を持たせることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、表面シートを形成するシート材が撥水性を有しているため、表面シートの保水性を抑制でき、その結果、吸収部材が尿を吸収した状態でにおいても表面シートに含まれる水分を抑制することができ、着用者の感じる湿気感等の不快感を軽減できる。また、表面シートの保水性が抑制されているため、表面シートが乾燥しやすいという利点もある。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、表面シートの前側の部分をパンツ本体側に着脱自在に固定するための第1及び第2の止着部に、ループ部材とフック部材とが用いられているため、表面シートの前側の部分を確実にパンツ本体側に固定することがきるとともに、着脱操作も容易に行うことができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、表面シートにおけるパンツ本体の股下部に位置する部分の左右両側に、パンツ本体の股下部の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出す張り出し部が設けられている。このため、吸収部材が表面シートと防水シートとの間に装着された際に、吸収部材の左右方向の位置ずれが左右の張り出し部によって左右両側から止められ、これによって、吸収部材の位置ずれ又は脱落等を確実に防止できる。例えば、吸収部材がパンツ本体に装着された状態で、表面シートの左右の張り出し部を、張り出し部がパンツ本体の股下部を抱え込むように股下部の外面側に折り曲げるなどすることにより、張り出し部による吸収部材の保持機能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る失禁パンツの斜視図である。
【図2】図1の失禁パンツを左右のサイド部分で切って平面的に展開した図である。
【図3】図2の失禁パンツのA1−A1線に沿った断面の構成を示す断面図である。
【図4】図1の失禁パンツに対する吸収性物品の着脱時の操作を説明するための図である。
【図5】図1の失禁パンツの表面シートに用いられる立体編物の一例の構成を模式的に示す図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は図5の立体編物の断面の構成を模式的に示す断面図であり、(a)は押圧力が作用していない立体編物の自然状態を示し、(b)は押圧力によって立体編物が厚み方向に圧縮された状態を示している。
【図7】図2に示す失禁パンツの構成の変形例を示す図である。
【図8】図7の失禁パンツのA2−A2線に沿った断面の構成を示す断面図であり、表面シートの左右の張り出し部が失禁パンツの股下部の外面側に折り畳まれて止着された状態を示している。
【図9】図1の失禁パンツに一例として用いられる吸収部材の一部を破断した斜視図である。
【図10】図9の吸収部材に備えられる内側袋部材の平面図である。
【図11】図10の内側袋部材のA3−A3線に沿った断面の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る失禁パンツの斜視図である。図2は、図1の失禁パンツを左右のサイド部分(図1の仮想線L1で示す部分)で切って平面的に展開した図である。図3は、図2の失禁パンツのA1−A1線に沿った断面の構成を示す断面図である。図4は図1の失禁パンツに対する吸収性物品の着脱時の操作を説明するための図である。なお、図2において図面に向かって上側が失禁パンツ1の前側に対応している。
【0028】
本実施形態に係る失禁パンツ1は、図1ないし図3に示すように、パンツ本体11と、防水シート12と、表面シート13と、保持部14と、第1及び第2止着部15,16とを備えて構成され、尿を吸収する吸収部材17が着脱自在に装着される。この失禁パンツ1は、洗濯可能であり、何度も再利用できるものである。
【0029】
パンツ本体11は、洗濯可能な1又は複数の布材がパンツの外形を構成するように縫合等により接合されて形成されており、左右の脚孔21及びウエスト開口22を有している。パンツ本体11を構成する布材としては、例えば、綿、化学繊維又はそれらの混合繊維からなる織布が用いられる。
【0030】
防水シート12は、不透液性の素材により形成され、パンツ本体11の肌面側におけるパンツ本体11の股下部23を含む領域を覆うように、縫合又は接着等により固定されている。この簿防水シート12によって、後述する吸収部材17によって吸収された尿が失禁パンツ1の外部にしみ出すのが防止される。
【0031】
表面シート13は、透液性を有するシート材によって形成され、吸収部材17をカバー部材12との間に挟み込んで保持する。表面シート13における失禁パンツ1の後側の外縁13aに沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分13bは、防水シート12の肌面側における後側に位置する部分に、縫合等により固定されている。表面シート13の後側固定部分13bよりも失禁パンツ1の前側に位置する部分は、図4に示すように、防水シート12等と固定されておらず、吸収部材17の着脱時に防水シート12に対して近接、離反できるようになっている。
【0032】
保持部14は、表面シート13の後側固定部分13bと防水シート12とによって囲まれた略ポケット状の空間を有し、吸収部材17の後側の部分17aを受け入れて保持する。なお、吸収部材17は前後の構成の区別があるものであってもよいし、前後の区別がなく前後対称のものであってもよい。
【0033】
第1及び第2の止着部15,16は、表面シート13の前側の部分をパンツ本体11側(具体的には防水シート12)に着脱自在に固定するためのものである。第1の止着部15は、表面シート13の外面側(肌面側と反対側)における前側の部分に縫合又は接着等により固定されている。第2の止着部16は、防水シート12の肌面側における第1の止着部15と対応する位置に縫合又は接着等により固定され、第1の止着部15が着脱自在に止着される。より具体的には、第1の止着部15及び第2の止着部16のいずれか一方は、複数のループ構造が設けられたループ部材であり、第1の止着部15及び第2の止着部16のいずれか他方は、ループ部材のループ構造に着脱自在に係合する複数のフック構造が設けられたフック部材である。本実施形態では、第1の止着部15がフック部材となっており、第2の止着部16がループ部材となっている。
【0034】
吸収部材17としては、交換可能なタイプのものであれば、種々のものが採用できるが、略パット状で薄型のものが好ましい。なお、吸収部材17の具体例については、図9ないし図11を用いて後述する。
【0035】
失禁パンツ1に吸収部材17を装着するときは、図4に示すように、第1及び第2の止着部15,16の止着状態を解除し、表面シート13の前側の部分を防水シート12から引き離すようにしてめくり上げて開く。そして、吸収部材17の後側の部分17aを保持部14内に挿入するようにして、吸収部材17を防水カバー12上に置き、表面シート13の前側の部分を閉じて、第1の止着部15を第2の止着部16に止着する。吸収部材17の交換又は取り外しは、第1及び第2の止着部15,16の止着状態を解除することにより、容易に行える。
【0036】
このような失禁パンツ1の構成により、吸収部材17の着脱時は、表面シート13の前側の部分を防水シート12から離反する方向にめくり上げることにより、吸収部材17の着脱を容易に行える。
【0037】
また、第1及び第2の止着部15,16によって表面シート13の前側の部分を防水シート12に対して着脱自在に固定できるため、吸収部材17をパンツ本体11に装着したときに、表面シート13の前側の部分及び吸収部材17が不安的になることがない。
【0038】
また、本実施形態では、第1及び第2の止着部15,16に、ループ部材とフック部材とが用いられているため、表面シート13の前側の部分を確実にパンツ本体側に固定することがきるとともに、着脱操作も容易に行うことができる。
【0039】
また、表面シート13の後側固定部分13bによって略ポケット状の保持部14が構成され、その保持部14が吸収部材17の後側の部分17aを受け入れて保持する。このため、吸収部材17をパンツ本体11に装着したときに、吸収部材17の位置ずれ又は脱落等が確実に生じるのを防止できる。
【0040】
また、防水シート12及び表面シート13はパンツ本体11に固定されているため、洗濯時等にそれらをパンツ本体11から取り外す必要がなく、失禁パンツ1の洗濯、乾燥、管理際等の手間が掛からない。
【0041】
次に、表面シート13に用いられているシート材について詳しく説明する。表面シート13に用いられるシート材は、その厚み方向に弾性を有するとともに、適度なこわさを有しているのが好ましく、さらにメッシュ構造を有しているのがより好ましい。表面シート13の厚み方向の圧縮弾性率については、例えば20〜200N/m2程度の素材を用いるのが好ましい。また、表面シート13のこわさの程度については、パンツ本体11を形成する素材のこわさよりも大きいことが好ましい。
【0042】
表面シート13に厚み方向の弾性を付与することにより、吸収部材17による着用者の肌への当たりを表面シート13によって緩和することができる。また、表面シート13に適度なこわさを付与することにより、表面シート13の開閉等の操作が行い易くなる。例えば、吸収部材17が尿を吸収している状態においても、表面シート13を吸収部材13及び防水シート12から容易に引き離すことができ、吸収部材17の着脱を容易に行える。
【0043】
また、表面シート13にメッシュ構造を有するシート材を用いることにより、着用者の尿が迅速に表面シート13を透過して吸収部材17に吸収される。その結果、尿が表面シート13の肌面側表面に沿って外部に流れ出しまう等の尿漏れを抑制できる。また、メッシュ構造を有する表面シート13が着用者の肌面と吸収部材17との間に介在するため、着用者の肌面と吸収部材17との間に適度な隙間を形成でき、これによって、吸収部材17に含まれる水分による着用者の肌面の湿気感、ベタ付き感等を軽減でき、着用感を向上できる。
【0044】
このような特性及び構造が要求される表面シート13の素材としては、例えば立体編物と呼ばれるシート材を好適に用いることができる。図5は、表面シートに用いられる立体編物の一例の構成を模式的に示す図である。図6(a)及び図6(b)は図5の立体編物の断面の構成を模式的に示す断面図であり、(a)は押圧力が作用していない立体編物の自然状態を示し、(b)は押圧力によって立体編物が厚み方向に圧縮された状態を示している。
【0045】
この立体編物31は、図5に示すように、第1及び第2の編地32,33と、第1及び第2の編地32,33間に編み渡された連結糸34とを備えて構成されている。第1及び第2の編地32,33は、メッシュ状に編まれた編組であり、立体編物31の厚み方向Dに間隔をあけて配置されている。連結糸34は、第1及び第2の編地32,33間に編み渡され、第1及び第2の編地32,33間を連結する。連結糸34の素材としては、第1及び第2の編地32,33を間隔をあけた状態で支持する必要があるため、適度な剛性を有していることが好ましい。連結糸34は、第1の編地32の編み目と第2の編地33の編み目との間に編み渡される。このとき、連結糸34の編み渡し方としては、編み渡された連結糸34によって、第1の編地32と第2の編地33との間に多数の三角形が連なってなるトラス構造を形成するのがよい。
【0046】
立体編物31に厚み方向Dの押圧力Fが与えられたときには、立体編物31が、図6(a)に示す自然状態から図6(b)に示す状態へ弾性的に変化する。このとき、押圧力により連結糸34が弾性的に撓み変形することにより、第1の編地32と第2の編地33との間が縮まるようにして弾性的に圧縮される。押圧力Fが解除されると、弾性糸34が撓み状態から自律的に復帰するのに伴って、第1の編地32と第2の編地33との間の間隔が元の間隔に戻る。
【0047】
このように、立体編物31は言わば立体的に編まれたメッシュ構造を有しているため、厚み方向Dに良好な弾性を有しするとともに適度なこわさを有する表面シート13を構成できる。しかも、表面シート13の十分な厚みを確保しながら、表面シート13に良好な透液性及び通気性を持たせることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、2層の編地32,33間を連結糸34により連結したが、3層以上の編地を連結糸34で連結してもよい。また、第1の編地32のメッシュパターンと第2の編地33のメッシュパターンとは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、表面シート13を形成するシート材が、撥水性を有する素材により形成されている。なお、素材の材料そのものが撥水性を有するような材料を用いてシート材を形成する構成の他、親水性を有する素材に撥水処理を施した後、その素材を用いて表面シート13を形成する構成が採用可能である。
【0050】
このように表面シート13を撥水性を有する素材により形成することにより、表面シート13の保水性を抑制でき、その結果、吸収部材17が尿を吸収した状態でにおいても表面シート13に含まれる水分を抑制することができ、着用者の感じる湿気感等の不快感を軽減できる。また、表面シート13の保水性が抑制されているため、表面シート13が乾燥しやすいという利点もある。
【0051】
図7は図2に示す失禁パンツの構成の変形例を示す図であり、図8は図7の失禁パンツのA2−A2線に沿った断面の構成を示す断面図であり、表面シートの左右の張り出し部が失禁パンツの股下部の外面側に折り畳まれて止着された状態を示している。この図7及び図8に示す変形例では、表面シート13の左右両側の側縁部から左右方向に張り出す左右の張り出し部36が設けられている。この左右の張り出し部36は、表面シート13におけるパンツ本体11の股下部23に位置する部分の左右両側において、パンツ本体11の股下部23の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出している。
【0052】
左右の張り出し部36の左右方向外方側の端部における外面側には、張り出し部36をパンツ本体11の股下部23の外面側に着脱自在に止着するための第3の止着部37が縫合又は接着等により固定されている。これに対応して、パンツ本体11の股下部23の外面側には、第3の止着部37が着脱自在に止着される第4の止着部38が縫合又は接着等により固定されている。なお、この変形例では第4の止着部38を左右の張り出し部36に設けられた第3の止着部37ごとに設けたが、よりサイズの大きい単一の第4の止着部38を設け、その単一の第4の止着部38に対して左右の第3の止着部37を止着するようにしてもよい。また、第3の止着部37及び第4の止着部38のいずれか一方はループ部材であり、第3の止着部37及び第4の止着部38のいずれか他方はフック部材である。この変形例では、第3の止着部37がフック部材となっており、第4の止着部38がループ部材となっている。なお、フック部材及びループ部材の構成は上述の第1及び第2の止着部15,16の場合とほぼ同様である。
【0053】
失禁パンツ1に吸収部材17を装着するときは、まず上述の如く吸収部材17を表面シート13と防水シート12との間に挟み込む。そして、図8に示すように、表面シート13の左右の張り出し部36をパンツ本体11の股下部23を抱え込むように股下部23の外面側に折り曲げて、第3の止着部37を第4の止着部38に止着し、張り出し部36を折り曲げた状態に固定する。吸収部材17の取り外しの際は、第3の止着部37を第4の止着部38の止着状態を解除して、取り外しを行う。
【0054】
この変形例に係る構成により、吸収部材17を表面シート13と防水シート12との間に装着した際に、吸収部材17の左右方向の位置ずれが左右の張り出し部36によって左右両側から止められる。これによって、吸収部材17の位置ずれ又は脱落等を確実に防止できる。
【0055】
なお、図7及び図8に示す変形例のさらなる変形例として、第3及び第4の止着部37,38を省略してもよい。第3及び第4の止着部37,38を省略しても、失禁パンツ1を装着したときに、表面シート13に設けられた左右の張り出し部36を脚孔21を介してパンツ本体11の股下部23の外面側に引き出しておけば、張り出し部36によって、吸収部材17の左右方向の位置ずれ等を有効に止めることができる。
【0056】
次に、図9ないし図11を参照して、本実施形態に係る失禁パンツ1に用いられる交換可能な吸収部材17の具体例について説明する。なお、この具体例に限らず、失禁パンツ1には種々の吸収部材17を用いることができる。
【0057】
この図9ないし図11に示す吸収部材17は、複数の内側袋部材111と、その各内側袋部材111内に入れられた吸収ポリマー112と、複数の内側袋部材111を収容する外側袋部材113とを備えて構成される。この吸収部材17に用いられるすべての素材は、後述するように生分解性の材料により形成されており、使用後は吸収部材17を土壌等に埋却できるようになっている。なお、この図9に示す構成では、外側袋部材113内に3つの内側袋部材111を収容したが、3つに限らず、1つでも、2つでも4つ以上でもよい。例えば、1又は複数の内側袋部材111を縦又は横方向に沿って折り畳んで外側袋部材113内に収容してもよい。
【0058】
内側袋部材111は、薄い略シート状の形態を有し、生分解性及び透液性を有する不織布からなる2枚の第1のシート115,116により形成されている。内側袋部材111の内部には、外部から閉鎖され、かつ互いに互いに分割された複数の収容空間117が形成されている。第1のシート115,116を形成する不織布の材料としては、例えばポリ乳酸が用いられる。
【0059】
第1のシート115,116は、一方向に沿って略長尺状に延びた略矩形の平面形状を有している。2枚の第1のシート115,116の周縁部115a,116a、及び複数の収容空間117間を分割する仕切り部115b,116bが、溶着(加熱溶着又は超音波溶着)によって互いに接合されている(ここでは、加熱溶着が用いられている)。これによって、内側袋部材111内に、外部から遮断されかつ互いに分割された複数の収容空間117が形成される。図10に示す例では、8つの収容空間117が2列に分けて形成されているが、収容空間117の数も8つに限定するものではなく、また収容空間117を3列以上に分けて設けてもよいし、1列だけの構成としてもよい。なお、図10に示す例では、2枚の第1のシート115,116を用いて内側袋部材111を形成したが、1枚の第1のシート115を二つ折りにして接合することにより、内側袋部材111を形成してもよい。
【0060】
吸収ポリマー112は、生分解性を有するとともに略粒状又は略粉状の形態を有し、各内側袋部材111の各収容空間117内に、収容空間117内において自由に移動可能な状態で入れられている。このため、吸収ポリマー112の各収容空間117内への充填量は、各収容空間117内に十分な余剰スペースが確保可能な分量に設定される。吸収ポリマー112の材料としては、例えばポリアスパラギン酸が用いられる。
【0061】
外側袋部材113は、生分解性及び透液性を有する不織布からなる2枚の第2のシート118,119により形成されている。この外側袋部材113の収容空間内に、複数の内側袋部材111が重ね合わされた状態で収容される。第2のシート118,119を形成する不織布の材料としては、例えばポリ乳酸が用いられる。
【0062】
第2のシート118,119は、一方向に沿って略長尺状に延びた略矩形の平面形状を有している。2枚の第2のシート118,119の周縁部118a,119aが、溶着(加熱溶着又は超音波溶着)によって互いに接合されている(ここでは、加熱溶着が用いられている)、これによって、外側袋部材113の袋構造が形成される。なお、図9に示す例では、2枚の第2のシート118,119を用いて外側袋部材113を形成したが、1枚の第2のシート118を二つ折りにして接合することにより、外側袋部材113を形成してもよい。このように構成される吸収部材17は、一方向に沿って延びた薄い略長尺状の形状を有している。
【0063】
また、内側袋部材111を形成する第1のシート115,116の目付は、吸収ポリマー112がシート115,116の不織布繊維の隙間を通り抜けて外部の漏れるの防止するため、外側袋部材113を形成する第2のシート118,119の目付よりも高目付に設定されている。例えば、第1のシート115,116の目付は1平方メートル当たり約30gに設定され、第2のシート118,119の目付は1平方メートル当たり約20gに設定される。
【0064】
このような吸収部材17の構成によれば、内部の収容空間117内に略粒状又は略粉状の形態を有する吸収ポリマー112が入れられた複数の内側袋部材111が、重ね合わされた状態で外側袋部材113によって内包されている。このため、薄型でコンパクトな構成としながら十分な吸収容量が得られるとともに、本実施形態に係る失禁パンツ1に対する着脱時の取扱性も良好な吸収部材17を実現できる。
【0065】
また、内側袋部材111の各収容空間117内に、略粒状又は略粉状の形態を有する吸収ポリマー112が収容空間117内において自由に移動可能な状態で入れられている。このため、排泄液の吸収により吸収ポリマー112が膨潤する際のスペース的な余裕を十分に確保することができ、その結果、吸収ポリマー112の膨潤を阻害することなく、吸収ポリマー112の吸収性能を十分に発揮させることができる。
【0066】
また、内側袋部材111の各収容空間117内において吸収ポリマー112が自由に移動できるため、吸収部材117の装着時における形状変化の自由度も大きい。その結果、吸収部材117の配置場所等に応じて吸収部材117の形状を自由に変化させることができる。
【0067】
また、この吸収部材17は上記の如く薄型でコンパクトな構成となっている。このため、吸収部材17を失禁パンツ1の内側に配置する場合等に、当該吸収部材17の配置により着用者が感じる圧迫感又は異物感等の違和感を軽減できる。
【0068】
また、吸収部材17に含まれる内側袋部材111、外側袋部材113及び吸収ポリマー112を構成する全ての素材が生分解性の素材により形成されているため、使用後は当該吸収部材17を土壌等に埋却して処分できる。しかも、吸収ポリマー112が複数の内側袋部材111に分けて入れられているとともに、各内側袋部材111内においても分割された複数の収容空間117に分けて入れられているため、当該吸収部材17が土壌等に埋却された際に、吸収ポリマー112を塊にならずに分散させて効率よく生分解させることができる。その結果、吸収部材17全体を効率よく生分解させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 失禁パンツ、11 パンツ本体、12 防水シート、13 表面シート、13a 後縁、13b 後側固定部、14 保持部、15 第1の止着部、16 第2の止着部、17 吸収部材、21 脚孔、22 ウエスト開口、23 股下部、31 立体編物、32 第1の編地、33 第2の編地、34 連結糸、36 張り出し部、37 第1の止着部、38 第2の止着部、111 内側袋部材、112 吸収ポリマー、113 外側袋部材部、115,116 第1のシート、117 収容空間、118,119 第2のシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を吸収する吸収部材が着脱自在に装着される失禁パンツであって、
左右の脚孔及びウエスト開口を有し、当該失禁パンツの外形を構成する布製のパンツ本体と、
前記パンツ本体の肌面側における股下部を含む領域に固定された不透液性の防水シートと、
透液性を有するシート材によって形成され、前記防水シートの肌面側における当該失禁パンツの後側に位置する部分に、前記シート材の前記後側の外縁に沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分が固定されるとともに、前記シート材における前記後側固定部分よりも当該失禁パンツの前側に位置する部分が前記防水シートに対して近接、離反可能となっており、前記防水シートとの間で前記吸収部材を挟み込む表面シートと、
前記表面シートの前記後側固定部分によって構成された略ポケット状の構造を有し、前記吸収部材の前記後側の部分を受け入れて保持する保持部と、
前記表面シートの外面側における前記前側の部分に設けられた第1の止着部と、
前記防水シートの肌面側に設けられ、前記第1の止着部が着脱自在に止着される第2の止着部と、
を備えることを特徴とする失禁パンツ。
【請求項2】
請求項1に記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、その厚み方向に弾性を有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、前記パンツ本体を形成する素材のこわさよりも大きなこわさを有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、メッシュ構造を有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項5】
請求項4に記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、
当該シート材の厚み方向に間隔をあけて配置されたメッシュ状の複数の編地と、前記編地間に編み渡され、前記編地間を連結する連結糸とを有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、撥水性を有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか一方は、複数のループ構造が設けられたループ部材であり、前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか他方は、前記ループ部材の前記ループ構造に着脱自在に係合する複数のフック構造が設けられたフック部材であることを特徴とする尿失禁パンツ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートにおける前記パンツ本体の股下部に位置する部分の左右両側に設けられ、前記パンツ本体の前記股下部の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出す張り出し部をさらに備えることを特徴とする失禁パンツ。
【請求項1】
尿を吸収する吸収部材が着脱自在に装着される失禁パンツであって、
左右の脚孔及びウエスト開口を有し、当該失禁パンツの外形を構成する布製のパンツ本体と、
前記パンツ本体の肌面側における股下部を含む領域に固定された不透液性の防水シートと、
透液性を有するシート材によって形成され、前記防水シートの肌面側における当該失禁パンツの後側に位置する部分に、前記シート材の前記後側の外縁に沿った略U字状又は略円弧状の後側固定部分が固定されるとともに、前記シート材における前記後側固定部分よりも当該失禁パンツの前側に位置する部分が前記防水シートに対して近接、離反可能となっており、前記防水シートとの間で前記吸収部材を挟み込む表面シートと、
前記表面シートの前記後側固定部分によって構成された略ポケット状の構造を有し、前記吸収部材の前記後側の部分を受け入れて保持する保持部と、
前記表面シートの外面側における前記前側の部分に設けられた第1の止着部と、
前記防水シートの肌面側に設けられ、前記第1の止着部が着脱自在に止着される第2の止着部と、
を備えることを特徴とする失禁パンツ。
【請求項2】
請求項1に記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、その厚み方向に弾性を有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、前記パンツ本体を形成する素材のこわさよりも大きなこわさを有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、メッシュ構造を有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項5】
請求項4に記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、
当該シート材の厚み方向に間隔をあけて配置されたメッシュ状の複数の編地と、前記編地間に編み渡され、前記編地間を連結する連結糸とを有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートを形成する前記シート材は、撥水性を有することを特徴とする失禁パンツ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか一方は、複数のループ構造が設けられたループ部材であり、前記第1の止着部及び前記第2の止着部のいずれか他方は、前記ループ部材の前記ループ構造に着脱自在に係合する複数のフック構造が設けられたフック部材であることを特徴とする尿失禁パンツ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の失禁パンツにおいて、
前記表面シートにおける前記パンツ本体の股下部に位置する部分の左右両側に設けられ、前記パンツ本体の前記股下部の左右両側の縁部を超えて左右方向外方に張り出す張り出し部をさらに備えることを特徴とする失禁パンツ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−233602(P2010−233602A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81943(P2009−81943)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】
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