夾雑物捕集装置及びその設置方法
【課題】枝管の長さに関係なく、簡便にその埋設作業を行う。
【解決手段】水道水中の夾雑物Xを沈殿して溜めておく枝管3の下端に掘削部4を設ける。この掘削部4には、その先端に先端バイト12と、その側面に螺旋羽根13とが設けられている。枝管3の埋設作業において、枝管3をその軸周りに回転させると、先端バイト12でその先端側の土砂がほぐされるとともに、その土砂が螺旋羽根13で上方に排出される。このように枝管3自体が掘削機能を有するため、その埋設工事において、枝管3を埋設するための穴を予め掘削しておく必要がない。このため掘削作業に要するコストと時間を大幅に抑制することができる。
【解決手段】水道水中の夾雑物Xを沈殿して溜めておく枝管3の下端に掘削部4を設ける。この掘削部4には、その先端に先端バイト12と、その側面に螺旋羽根13とが設けられている。枝管3の埋設作業において、枝管3をその軸周りに回転させると、先端バイト12でその先端側の土砂がほぐされるとともに、その土砂が螺旋羽根13で上方に排出される。このように枝管3自体が掘削機能を有するため、その埋設工事において、枝管3を埋設するための穴を予め掘削しておく必要がない。このため掘削作業に要するコストと時間を大幅に抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道水に含まれる夾雑物を沈殿させる夾雑物捕集装置と、その夾雑物捕集装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夾雑物捕集装置は、水道管の本管の途中に、下方に分岐する枝管を形成して、その枝管内に、水道水に含まれる土砂や錆等の夾雑物を沈殿させ、水道管内からこれを除去するためのものである(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332719号公報
【0004】
一般的な夾雑物捕集装置の構成を図11に示す。この夾雑物捕集装置は、水道管の本管1の途中に、T字管18を介して枝管3が下向きに接続されている。T字管18と枝管3及又は本管1との接続は、メカニカル継手(一方の管体の受口に、他方の管体の挿し口を挿し込むタイプの継手)によってなされている。枝管3は下端が閉塞されていて、その底部が夾雑物Xのトラップ部10となっている。トラップ部10に沈殿した夾雑物Xは、枝管3内に挿入された排水管5のバルブ11を定期的に開放することによって排出される。
【0005】
夾雑物捕集装置の他の構成を図12に示す。この夾雑物捕集装置は、図11に示したT字管18の代わりに十字管2を採用したものである。この十字管2を介して下向きに接続された枝管3のトラップ部10に、上記と同様に夾雑物Xが沈殿する。この構成では、枝管3内に挿入された排水管5は、十字管2の上側の開口を閉塞する栓6を貫通して、この栓6の水密を保ちつつ装置外に引き出されている。
【0006】
一般的な水道管の埋設工事においては、図13(a)に示すように、まず、水道管の本管1の埋設深さよりも若干深い深さで(同図中のd1)、その本管1の両側に、本管1を搬入する際に容易に取り回しができる程度の横幅(同図中のw1)の穴Hを掘削する。そして、その穴Hにクレーン等で本管1を順次搬入して接続する。
【0007】
本管1の埋設深さは、地表面からそれほど深くないことが多く(深くとも2m程度)、穴の掘削作業の際に、穴の側壁が崩落する恐れは低い。このため、崩落防止のための土留め作業が不要か、あるいは簡易矢板等の簡便な土留め作業で十分であり、掘削作業の際に余計な手間を要しない。
【0008】
また、夾雑物捕集装置を設けた本管1の埋設工事の場合、図13(b)に示すように、本管1の埋設深さよりも、下向きに分岐する枝管3の長さ分だけさらに深い穴Hを掘削し、この穴Hに枝管3を埋設した後に本管1を接続する。この埋設工事においても、枝管3の長さがそれほど長くなければ(例えば1m程度)、掘削する穴Hの深さはそれほど深くする必要はない。このため、図13(a)で示した本管1の埋設の場合と同様に、簡易矢板等の簡便な土留め作業で十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この水道管中の夾雑物Xの量が多い場合や、作業コスト等の観点から夾雑物Xの排出作業の作業頻度を減らしたい場合等は、枝管3の長さを適宜延長してその内容積を増やし、より多くの夾雑物Xを溜めておくことができるようにする必要がある。
【0010】
この場合、図14に示すように、この枝管3の長さに見合う深い穴Hを予め掘削しておく必要がある(深さがd2で、d2>d1)。この深い穴Hの掘削に際しては、穴Hの側壁が作業中に崩落するのを防止するため、鋼矢板19やライナープレート等を用いた土留め工事をしつつ掘削作業を行わなければならず、その作業に多くのコストと時間を要するという問題がある。
【0011】
また、穴Hの深さが深くなると、この穴Hに枝管3をクレーン等で搬入する際の取り回し性を確保するために、穴Hの横幅も拡大する必要がある(横幅がw2で、w2>w1)。このため、掘削作業の際に掻き出す土砂の量が多くなって、その作業に一層多くのコストと時間を要するという問題もある。
【0012】
そこで、この発明は、枝管の長さに関係なく、簡便にその埋設作業を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明は、水道管の本管の途中に、下方に分岐する枝管を接続して、その枝管内に、水道水に含まれる夾雑物を沈殿させる夾雑物捕集装置において、前記枝管の下端に、この枝管を地面に突き立てて管軸周りに回転させた際に地面を掘削する掘削部を設ける構成とした。
【0014】
このように枝管に掘削機能を付与することによって、予めこの枝管を埋設するための穴を掘削する必要がない。すなわち、夾雑物捕集装置を接続しない本管を埋設する程度の比較的浅い穴を掘削すればよいので、この掘削の際に、穴の側壁が崩落するのを防止するために、鋼矢板等で土留め作業を行う必要がない。このため、水道管の敷設に伴う穴の掘削作業が非常に簡便なものとなる。
【0015】
また、穴の深さをそれほど深くする必要がないので、この穴に本管や枝管を搬入する際の取り回しが容易である。このため、この取り回し性を確保するために穴の横幅を拡大する必要がなく、穴の掘削作業に要するコストと時間を削減することができる。これらの効果は、枝管の長さに関係なく発揮されるが、特に、長い枝管(例えば5m程度)を採用する際に顕著なメリットがある。
【0016】
また、枝管による掘削作業に際しては、この枝管の上端側に杭打ち機等の圧入手段を設け、この圧入手段の圧入力を枝管に付与するようにしてもよい。このようにすれば、掘削部による掘削効果が高まって、枝管の埋設を一層スムーズに行うことができる。
【0017】
前記構成においては、前記掘削部の先端に、前記回転に伴ってこの掘削部の先端側の土砂をほぐす先端バイトを、この掘削部の先端方向に突出して設けるのが好ましい。
この先端バイトで土砂をほぐすことによって、圧入力を加えたときの枝管の埋め込みのスムーズ性がさらに向上する。
【0018】
また、前記構成においては、前記掘削部の側面に、前記回転に伴ってこの掘削部の外径側の土砂をほぐす側面バイトを、この掘削部の外径方向に突出して設けるのがさらに好ましい。
この側面バイトで土砂をほぐすことによって、掘削部の側面と土砂との間の摩擦が小さくなるため、この枝管の埋設をさらにスムーズに行うことができる。
【0019】
さらに、前記各構成においては、前記掘削部の側面に、前記各バイトでほぐした土砂を前記枝管の側面に沿って上方に排出する螺旋羽根を設けるのがより好ましい。
この螺旋羽根によって土砂を排出することによって、ほぐした土砂が前記掘削部の先端近傍に溜まったままの状態となって、掘削効率が低下するのを防止することができる。
【0020】
また、この螺旋羽根は枝管の外径方向に突出して土砂中に食い込んでいるので、この螺旋羽根が軸心周りに回転するとその回転力が枝管の埋設方向への推進力に変換される。このため、前記圧入手段で圧入力を与えなくても、この推進力によって枝管の埋め込みがスムーズになされる。また、螺旋羽根の土砂中への食い込みにより、埋設した枝管の直立安定性が向上するというメリットもある。
【0021】
上述した各構成に係る夾雑物捕集装置は、本管の埋設深さよりも深く、かつ埋設する枝管の下端深さよりも浅い穴を地面に掘削する第1工程と、前記穴の底面に、下端に掘削部を設けた枝管を突き立て、この枝管を管軸周りに回転させながら前記掘削部の先端に設けた先端バイトで前記穴の底面を掘削し、この枝管を前記下端深さまで埋設する第2工程と、埋設した前記枝管の上端側に水道管の本管を連結する第3工程とから構成される設置方法によって設置することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、夾雑物捕集装置の埋設作業の際に、枝管の長さに相当する深さの穴を掘削する必要がない。このため、特に長尺の枝管を採用する場合において、深い穴の掘削に伴って穴内壁の崩落防止のための鋼矢板等の土留め作業を必要としない。また、掻き出す土砂の量も少なくてよいので、この埋設作業に要するコストと時間を削減でき、その作業性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る夾雑物捕集装置の一実施形態を示す側面断面図
【図2】同実施形態の要部を示す図であって、(a)は枝管の先端と掘削部の側面部分断面図、(b)は枝管と掘削部の接続機構の要部を示す側面部分断面図
【図3】掘削部の一例を示す図であって、(a)は側面部分断面図、(b)は側面断面図、(c)は底面図、(d)は斜視図
【図4】地面に掘削した穴に夾雑物捕集装置の枝管を搬入する様子を示す側面図
【図5】枝管をねじ込んで地面に埋設する様子を示す側面図
【図6】アダプタを設けて枝管をさらに深くねじ込む様子を示す側面図
【図7】夾雑物捕集装置の設置が完了した状態を示す側面図
【図8】この発明に係る夾雑物捕集装置の他実施形態の要部を示す側面部分断面図
【図9】掘削部の他例を示す図であって、(a)は側面部分断面図、(b)は側面断面図、(c)は底面図
【図10】この発明に係る夾雑物捕集装置の他実施形態の要部を示す側面部分断面図
【図11】従来技術に係る夾雑物捕集装置の一実施形態を示す側面断面図
【図12】従来技術に係る夾雑物捕集装置の他実施形態を示す側面断面図
【図13】(a)、(b)夾雑物捕集装置の埋設作業に必要な穴の形状を示す側面断面図
【図14】枝管が長い夾雑物捕集装置の埋設作業に必要な穴の形状を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明に係る夾雑物捕集装置の一実施形態を図1及び2に示す。この夾雑物捕集装置は、水道管の本管1の途中に設けた十字管2と、十字管2から下方に分岐させた枝管3と、枝管3の下端に設けた掘削部4と、枝管3内に設けた排水管5と、十字管2の上側の開口を閉塞する栓6とで構成される。
【0025】
この枝管3は、ダクタイル鋳鉄直管で、その呼び径は150mm、有効長は定尺の5mである。枝管3と掘削部4とはK形のメカニカル継手によって接続されており、T頭ボルト7とナット8によってその固定がなされている。この固定の際に、枝管3側に設けたゴム輪9が両者の隙間に挟み込まれることによって、この接続部の水密性が確保される。
【0026】
また、枝管3の下端は掘削部4によって閉塞されたトラップ部10となっており、このトラップ部10に水道水とともに移動する夾雑物Xを沈殿させて溜めておくことができる。この夾雑物Xは、排水管5に設けられたバルブ11を開放すると、枝管3内の水圧によって夾雑物捕集装置外に排出される。
【0027】
掘削部4には、図3に示すようにその先端方向に突出する先端バイト12と、その側面に螺旋羽根13とが設けられている。この先端バイト12は、後述する夾雑物捕集装置の設置の際に掘削部4の軸心周りに回転して、その先端側の土砂をほぐす役割を有する。そして、ほぐした土砂は螺旋羽根13によって掘削部4及び枝管3の側面に沿って上方に排出される。このため、ほぐした土砂がその先端側に溜まりにくく枝管3の埋設の抵抗とならないため、その埋設作業をスムーズに行うことができる。
【0028】
また、この螺旋羽根13が軸心周りに回転するとその回転力が枝管3の埋設方向への推進力に変換される。このため、枝管3の埋設作業を一層スムーズに行うことができる。この螺旋羽根13の形状は図3のものに限定されず、土砂を掘削部4及び枝管3の上方に排出できるのであれば、螺旋の巻き数、径方向幅等を適宜変更してもよい。
【0029】
次に、上述したダクタイル鋳造直管(有効長5m)を枝管3として採用する場合の夾雑物捕集装置の設置方法を図4乃至7を用いて説明する。
【0030】
まず、地面Gに水道管の本管1の埋設に必要な深さ(d1)及び幅(w1)の穴Hを掘削する。この穴Hの深さは、同図中に破線で示す本管1を埋設できる深さであればよく、本実施例では、穴内での取り回し性を考慮して、この本管1よりも若干深く(本管1の直径分程度)掘削している(図4参照)。
【0031】
次に、車両Tに搭載した回転装置14に、掘削部4を設けた枝管3の上端を固定し、穴Hの底面に枝管3(掘削部4)を突き立て、この枝管3を管軸周りに回転させながら穴Hの底面を掘削する(図5参照)。
【0032】
枝管3をある程度の深さまで埋設したら、この枝管3の上端にアダプタ15を取り付ける。このアダプタ15を取り付けるのは、枝管3の埋設深さが深くなると回転装置14がこの枝管3に届きにくくなるため、枝管3の上端側を延長して、回転装置14への取り付けを容易にするためである。このアダプタ15を取り付けた後、さらにこれを軸心周りに回転させて、枝管3を所定の深さまで埋設する(図6参照)。
【0033】
枝管3の埋設後、この枝管3からアダプタ15を取り外し、排水管5及び十字管2を設け、この十字管2に栓6を設けるとともに水道管の本管1を接続し、掘削した土砂を埋め戻して埋設作業を完了する(図7参照)。
【0034】
この埋設作業においては、枝管3に設けた掘削部4の掘削作用によってこの枝管3が埋設される。このため、枝管3の有効長に対応する深さの穴Hを予め掘削する必要がない。この効果は枝管3の長さに関わらず発揮されるが、特に、本実施例のように長い枝管3(例えば5m)を採用する場合に顕著であって、深い穴Hの掘削作業に要するコストと時間を大幅に削減することができる。
【0035】
この掘削部4として、例えば図8及び9に示す形状のものも採用できる。この掘削部4は、上述した掘削部4と同様に、その先端方向に突出する先端バイト12が設けられている。また、螺旋羽根13の代わりに、掘削部4の外径方向に突出する側面バイト16が設けられている。この側面バイト16は、夾雑物捕集装置の設置の際に、掘削部4の軸心周りに回転して、その側面側の土砂をほぐす役割を有する。このため、掘削部4の側面と土砂との間の摩擦が小さくなって、枝管3の埋設をさらにスムーズに行うことができる。
【0036】
この掘削部4においては、側面バイト16とともに螺旋羽根13を設ける構成としてもよい。このようにすると、側面バイト16でほぐした土砂を、螺旋羽根13で効率的に排除することができ、枝管3の埋設を一層スムーズに行うことができるからである。
【0037】
なお、螺旋羽根13を設けない構成とする場合は、その回転に伴う埋設方向への推進力は発生しないので、枝管3に回転力とともに圧入力を付与できる杭打ち機等を用いて埋設作業を行うのが好ましい。
【0038】
枝管3と掘削部4の接続は、上述したメカニカル継手に限定されず、図10に示すように両者にフランジ17を形成し、このフランジ17同士をガスケット20を介在して突き合わせて、ボルト7とナット8で両者を固定し、水密を確保するようにしてもよい。このフランジ型継手は構造が単純で比較的安価であるため、メカニカル継手と比較して作業コストの抑制を図ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 本管
2 十字管
3 枝管
4 掘削部
5 排水管
6 栓
7 ボルト(T頭ボルト)
8 ナット
9 ゴム輪
10 トラップ部
11 バルブ
12 先端バイト
13 螺旋羽根
14 回転装置
15 アダプタ
16 側面バイト
17 フランジ
18 T字管
19 鋼矢板
20 ガスケット
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道水に含まれる夾雑物を沈殿させる夾雑物捕集装置と、その夾雑物捕集装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夾雑物捕集装置は、水道管の本管の途中に、下方に分岐する枝管を形成して、その枝管内に、水道水に含まれる土砂や錆等の夾雑物を沈殿させ、水道管内からこれを除去するためのものである(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332719号公報
【0004】
一般的な夾雑物捕集装置の構成を図11に示す。この夾雑物捕集装置は、水道管の本管1の途中に、T字管18を介して枝管3が下向きに接続されている。T字管18と枝管3及又は本管1との接続は、メカニカル継手(一方の管体の受口に、他方の管体の挿し口を挿し込むタイプの継手)によってなされている。枝管3は下端が閉塞されていて、その底部が夾雑物Xのトラップ部10となっている。トラップ部10に沈殿した夾雑物Xは、枝管3内に挿入された排水管5のバルブ11を定期的に開放することによって排出される。
【0005】
夾雑物捕集装置の他の構成を図12に示す。この夾雑物捕集装置は、図11に示したT字管18の代わりに十字管2を採用したものである。この十字管2を介して下向きに接続された枝管3のトラップ部10に、上記と同様に夾雑物Xが沈殿する。この構成では、枝管3内に挿入された排水管5は、十字管2の上側の開口を閉塞する栓6を貫通して、この栓6の水密を保ちつつ装置外に引き出されている。
【0006】
一般的な水道管の埋設工事においては、図13(a)に示すように、まず、水道管の本管1の埋設深さよりも若干深い深さで(同図中のd1)、その本管1の両側に、本管1を搬入する際に容易に取り回しができる程度の横幅(同図中のw1)の穴Hを掘削する。そして、その穴Hにクレーン等で本管1を順次搬入して接続する。
【0007】
本管1の埋設深さは、地表面からそれほど深くないことが多く(深くとも2m程度)、穴の掘削作業の際に、穴の側壁が崩落する恐れは低い。このため、崩落防止のための土留め作業が不要か、あるいは簡易矢板等の簡便な土留め作業で十分であり、掘削作業の際に余計な手間を要しない。
【0008】
また、夾雑物捕集装置を設けた本管1の埋設工事の場合、図13(b)に示すように、本管1の埋設深さよりも、下向きに分岐する枝管3の長さ分だけさらに深い穴Hを掘削し、この穴Hに枝管3を埋設した後に本管1を接続する。この埋設工事においても、枝管3の長さがそれほど長くなければ(例えば1m程度)、掘削する穴Hの深さはそれほど深くする必要はない。このため、図13(a)で示した本管1の埋設の場合と同様に、簡易矢板等の簡便な土留め作業で十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この水道管中の夾雑物Xの量が多い場合や、作業コスト等の観点から夾雑物Xの排出作業の作業頻度を減らしたい場合等は、枝管3の長さを適宜延長してその内容積を増やし、より多くの夾雑物Xを溜めておくことができるようにする必要がある。
【0010】
この場合、図14に示すように、この枝管3の長さに見合う深い穴Hを予め掘削しておく必要がある(深さがd2で、d2>d1)。この深い穴Hの掘削に際しては、穴Hの側壁が作業中に崩落するのを防止するため、鋼矢板19やライナープレート等を用いた土留め工事をしつつ掘削作業を行わなければならず、その作業に多くのコストと時間を要するという問題がある。
【0011】
また、穴Hの深さが深くなると、この穴Hに枝管3をクレーン等で搬入する際の取り回し性を確保するために、穴Hの横幅も拡大する必要がある(横幅がw2で、w2>w1)。このため、掘削作業の際に掻き出す土砂の量が多くなって、その作業に一層多くのコストと時間を要するという問題もある。
【0012】
そこで、この発明は、枝管の長さに関係なく、簡便にその埋設作業を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明は、水道管の本管の途中に、下方に分岐する枝管を接続して、その枝管内に、水道水に含まれる夾雑物を沈殿させる夾雑物捕集装置において、前記枝管の下端に、この枝管を地面に突き立てて管軸周りに回転させた際に地面を掘削する掘削部を設ける構成とした。
【0014】
このように枝管に掘削機能を付与することによって、予めこの枝管を埋設するための穴を掘削する必要がない。すなわち、夾雑物捕集装置を接続しない本管を埋設する程度の比較的浅い穴を掘削すればよいので、この掘削の際に、穴の側壁が崩落するのを防止するために、鋼矢板等で土留め作業を行う必要がない。このため、水道管の敷設に伴う穴の掘削作業が非常に簡便なものとなる。
【0015】
また、穴の深さをそれほど深くする必要がないので、この穴に本管や枝管を搬入する際の取り回しが容易である。このため、この取り回し性を確保するために穴の横幅を拡大する必要がなく、穴の掘削作業に要するコストと時間を削減することができる。これらの効果は、枝管の長さに関係なく発揮されるが、特に、長い枝管(例えば5m程度)を採用する際に顕著なメリットがある。
【0016】
また、枝管による掘削作業に際しては、この枝管の上端側に杭打ち機等の圧入手段を設け、この圧入手段の圧入力を枝管に付与するようにしてもよい。このようにすれば、掘削部による掘削効果が高まって、枝管の埋設を一層スムーズに行うことができる。
【0017】
前記構成においては、前記掘削部の先端に、前記回転に伴ってこの掘削部の先端側の土砂をほぐす先端バイトを、この掘削部の先端方向に突出して設けるのが好ましい。
この先端バイトで土砂をほぐすことによって、圧入力を加えたときの枝管の埋め込みのスムーズ性がさらに向上する。
【0018】
また、前記構成においては、前記掘削部の側面に、前記回転に伴ってこの掘削部の外径側の土砂をほぐす側面バイトを、この掘削部の外径方向に突出して設けるのがさらに好ましい。
この側面バイトで土砂をほぐすことによって、掘削部の側面と土砂との間の摩擦が小さくなるため、この枝管の埋設をさらにスムーズに行うことができる。
【0019】
さらに、前記各構成においては、前記掘削部の側面に、前記各バイトでほぐした土砂を前記枝管の側面に沿って上方に排出する螺旋羽根を設けるのがより好ましい。
この螺旋羽根によって土砂を排出することによって、ほぐした土砂が前記掘削部の先端近傍に溜まったままの状態となって、掘削効率が低下するのを防止することができる。
【0020】
また、この螺旋羽根は枝管の外径方向に突出して土砂中に食い込んでいるので、この螺旋羽根が軸心周りに回転するとその回転力が枝管の埋設方向への推進力に変換される。このため、前記圧入手段で圧入力を与えなくても、この推進力によって枝管の埋め込みがスムーズになされる。また、螺旋羽根の土砂中への食い込みにより、埋設した枝管の直立安定性が向上するというメリットもある。
【0021】
上述した各構成に係る夾雑物捕集装置は、本管の埋設深さよりも深く、かつ埋設する枝管の下端深さよりも浅い穴を地面に掘削する第1工程と、前記穴の底面に、下端に掘削部を設けた枝管を突き立て、この枝管を管軸周りに回転させながら前記掘削部の先端に設けた先端バイトで前記穴の底面を掘削し、この枝管を前記下端深さまで埋設する第2工程と、埋設した前記枝管の上端側に水道管の本管を連結する第3工程とから構成される設置方法によって設置することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、夾雑物捕集装置の埋設作業の際に、枝管の長さに相当する深さの穴を掘削する必要がない。このため、特に長尺の枝管を採用する場合において、深い穴の掘削に伴って穴内壁の崩落防止のための鋼矢板等の土留め作業を必要としない。また、掻き出す土砂の量も少なくてよいので、この埋設作業に要するコストと時間を削減でき、その作業性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る夾雑物捕集装置の一実施形態を示す側面断面図
【図2】同実施形態の要部を示す図であって、(a)は枝管の先端と掘削部の側面部分断面図、(b)は枝管と掘削部の接続機構の要部を示す側面部分断面図
【図3】掘削部の一例を示す図であって、(a)は側面部分断面図、(b)は側面断面図、(c)は底面図、(d)は斜視図
【図4】地面に掘削した穴に夾雑物捕集装置の枝管を搬入する様子を示す側面図
【図5】枝管をねじ込んで地面に埋設する様子を示す側面図
【図6】アダプタを設けて枝管をさらに深くねじ込む様子を示す側面図
【図7】夾雑物捕集装置の設置が完了した状態を示す側面図
【図8】この発明に係る夾雑物捕集装置の他実施形態の要部を示す側面部分断面図
【図9】掘削部の他例を示す図であって、(a)は側面部分断面図、(b)は側面断面図、(c)は底面図
【図10】この発明に係る夾雑物捕集装置の他実施形態の要部を示す側面部分断面図
【図11】従来技術に係る夾雑物捕集装置の一実施形態を示す側面断面図
【図12】従来技術に係る夾雑物捕集装置の他実施形態を示す側面断面図
【図13】(a)、(b)夾雑物捕集装置の埋設作業に必要な穴の形状を示す側面断面図
【図14】枝管が長い夾雑物捕集装置の埋設作業に必要な穴の形状を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明に係る夾雑物捕集装置の一実施形態を図1及び2に示す。この夾雑物捕集装置は、水道管の本管1の途中に設けた十字管2と、十字管2から下方に分岐させた枝管3と、枝管3の下端に設けた掘削部4と、枝管3内に設けた排水管5と、十字管2の上側の開口を閉塞する栓6とで構成される。
【0025】
この枝管3は、ダクタイル鋳鉄直管で、その呼び径は150mm、有効長は定尺の5mである。枝管3と掘削部4とはK形のメカニカル継手によって接続されており、T頭ボルト7とナット8によってその固定がなされている。この固定の際に、枝管3側に設けたゴム輪9が両者の隙間に挟み込まれることによって、この接続部の水密性が確保される。
【0026】
また、枝管3の下端は掘削部4によって閉塞されたトラップ部10となっており、このトラップ部10に水道水とともに移動する夾雑物Xを沈殿させて溜めておくことができる。この夾雑物Xは、排水管5に設けられたバルブ11を開放すると、枝管3内の水圧によって夾雑物捕集装置外に排出される。
【0027】
掘削部4には、図3に示すようにその先端方向に突出する先端バイト12と、その側面に螺旋羽根13とが設けられている。この先端バイト12は、後述する夾雑物捕集装置の設置の際に掘削部4の軸心周りに回転して、その先端側の土砂をほぐす役割を有する。そして、ほぐした土砂は螺旋羽根13によって掘削部4及び枝管3の側面に沿って上方に排出される。このため、ほぐした土砂がその先端側に溜まりにくく枝管3の埋設の抵抗とならないため、その埋設作業をスムーズに行うことができる。
【0028】
また、この螺旋羽根13が軸心周りに回転するとその回転力が枝管3の埋設方向への推進力に変換される。このため、枝管3の埋設作業を一層スムーズに行うことができる。この螺旋羽根13の形状は図3のものに限定されず、土砂を掘削部4及び枝管3の上方に排出できるのであれば、螺旋の巻き数、径方向幅等を適宜変更してもよい。
【0029】
次に、上述したダクタイル鋳造直管(有効長5m)を枝管3として採用する場合の夾雑物捕集装置の設置方法を図4乃至7を用いて説明する。
【0030】
まず、地面Gに水道管の本管1の埋設に必要な深さ(d1)及び幅(w1)の穴Hを掘削する。この穴Hの深さは、同図中に破線で示す本管1を埋設できる深さであればよく、本実施例では、穴内での取り回し性を考慮して、この本管1よりも若干深く(本管1の直径分程度)掘削している(図4参照)。
【0031】
次に、車両Tに搭載した回転装置14に、掘削部4を設けた枝管3の上端を固定し、穴Hの底面に枝管3(掘削部4)を突き立て、この枝管3を管軸周りに回転させながら穴Hの底面を掘削する(図5参照)。
【0032】
枝管3をある程度の深さまで埋設したら、この枝管3の上端にアダプタ15を取り付ける。このアダプタ15を取り付けるのは、枝管3の埋設深さが深くなると回転装置14がこの枝管3に届きにくくなるため、枝管3の上端側を延長して、回転装置14への取り付けを容易にするためである。このアダプタ15を取り付けた後、さらにこれを軸心周りに回転させて、枝管3を所定の深さまで埋設する(図6参照)。
【0033】
枝管3の埋設後、この枝管3からアダプタ15を取り外し、排水管5及び十字管2を設け、この十字管2に栓6を設けるとともに水道管の本管1を接続し、掘削した土砂を埋め戻して埋設作業を完了する(図7参照)。
【0034】
この埋設作業においては、枝管3に設けた掘削部4の掘削作用によってこの枝管3が埋設される。このため、枝管3の有効長に対応する深さの穴Hを予め掘削する必要がない。この効果は枝管3の長さに関わらず発揮されるが、特に、本実施例のように長い枝管3(例えば5m)を採用する場合に顕著であって、深い穴Hの掘削作業に要するコストと時間を大幅に削減することができる。
【0035】
この掘削部4として、例えば図8及び9に示す形状のものも採用できる。この掘削部4は、上述した掘削部4と同様に、その先端方向に突出する先端バイト12が設けられている。また、螺旋羽根13の代わりに、掘削部4の外径方向に突出する側面バイト16が設けられている。この側面バイト16は、夾雑物捕集装置の設置の際に、掘削部4の軸心周りに回転して、その側面側の土砂をほぐす役割を有する。このため、掘削部4の側面と土砂との間の摩擦が小さくなって、枝管3の埋設をさらにスムーズに行うことができる。
【0036】
この掘削部4においては、側面バイト16とともに螺旋羽根13を設ける構成としてもよい。このようにすると、側面バイト16でほぐした土砂を、螺旋羽根13で効率的に排除することができ、枝管3の埋設を一層スムーズに行うことができるからである。
【0037】
なお、螺旋羽根13を設けない構成とする場合は、その回転に伴う埋設方向への推進力は発生しないので、枝管3に回転力とともに圧入力を付与できる杭打ち機等を用いて埋設作業を行うのが好ましい。
【0038】
枝管3と掘削部4の接続は、上述したメカニカル継手に限定されず、図10に示すように両者にフランジ17を形成し、このフランジ17同士をガスケット20を介在して突き合わせて、ボルト7とナット8で両者を固定し、水密を確保するようにしてもよい。このフランジ型継手は構造が単純で比較的安価であるため、メカニカル継手と比較して作業コストの抑制を図ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 本管
2 十字管
3 枝管
4 掘削部
5 排水管
6 栓
7 ボルト(T頭ボルト)
8 ナット
9 ゴム輪
10 トラップ部
11 バルブ
12 先端バイト
13 螺旋羽根
14 回転装置
15 アダプタ
16 側面バイト
17 フランジ
18 T字管
19 鋼矢板
20 ガスケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管の本管(1)の途中に、下方に分岐する枝管(3)を接続して、その枝管(3)内に、水道水に含まれる夾雑物(X)を沈殿させる夾雑物捕集装置において、
前記枝管(3)の下端に、この枝管(3)を地面に突き立てて管軸周りに回転させた際に地面を掘削する掘削部(4)を設けたことを特徴とする夾雑物捕集装置。
【請求項2】
前記掘削部(4)の先端に、前記回転に伴ってこの掘削部(4)の先端側の土砂をほぐす先端バイト(12)を、この掘削部(4)の先端方向に突出して設けたことを特徴とする請求項1に記載の夾雑物捕集装置。
【請求項3】
前記掘削部(4)の側面に、前記回転に伴ってこの掘削部(4)の外径側の土砂をほぐす側面バイト(16)を、この掘削部(4)の外径方向に突出して設けたことを特徴とする請求項2に記載の夾雑物捕集装置。
【請求項4】
前記掘削部(4)の側面に、前記各バイト(12、16)でほぐした土砂を前記枝管(3)の側面に沿って上方に排出する螺旋羽根(13)を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の夾雑物捕集装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の夾雑物捕集装置の設置方法であって、
本管(1)の埋設深さよりも深く、かつ埋設する枝管(3)の下端深さよりも浅い穴(H)を地面に掘削する第1工程と、
前記穴(H)の底面に、下端に掘削部(4)を設けた枝管(3)を突き立て、この枝管(3)を管軸周りに回転させながら前記穴(H)の底面を掘削し、この枝管(3)を前記下端深さまで埋設する第2工程と、
埋設した前記枝管(3)の上端側に水道管の本管(1)を連結する第3工程と、
から構成されることを特徴とする夾雑物捕集装置の設置方法。
【請求項1】
水道管の本管(1)の途中に、下方に分岐する枝管(3)を接続して、その枝管(3)内に、水道水に含まれる夾雑物(X)を沈殿させる夾雑物捕集装置において、
前記枝管(3)の下端に、この枝管(3)を地面に突き立てて管軸周りに回転させた際に地面を掘削する掘削部(4)を設けたことを特徴とする夾雑物捕集装置。
【請求項2】
前記掘削部(4)の先端に、前記回転に伴ってこの掘削部(4)の先端側の土砂をほぐす先端バイト(12)を、この掘削部(4)の先端方向に突出して設けたことを特徴とする請求項1に記載の夾雑物捕集装置。
【請求項3】
前記掘削部(4)の側面に、前記回転に伴ってこの掘削部(4)の外径側の土砂をほぐす側面バイト(16)を、この掘削部(4)の外径方向に突出して設けたことを特徴とする請求項2に記載の夾雑物捕集装置。
【請求項4】
前記掘削部(4)の側面に、前記各バイト(12、16)でほぐした土砂を前記枝管(3)の側面に沿って上方に排出する螺旋羽根(13)を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の夾雑物捕集装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の夾雑物捕集装置の設置方法であって、
本管(1)の埋設深さよりも深く、かつ埋設する枝管(3)の下端深さよりも浅い穴(H)を地面に掘削する第1工程と、
前記穴(H)の底面に、下端に掘削部(4)を設けた枝管(3)を突き立て、この枝管(3)を管軸周りに回転させながら前記穴(H)の底面を掘削し、この枝管(3)を前記下端深さまで埋設する第2工程と、
埋設した前記枝管(3)の上端側に水道管の本管(1)を連結する第3工程と、
から構成されることを特徴とする夾雑物捕集装置の設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−189893(P2010−189893A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33976(P2009−33976)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
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