説明

女性用コート

【課題】妊娠前、妊娠中、出産後の育児期、及びその後の時期を通して、ファッション性を損なうこと無く快適かつお洒落に着用できる女性用コートを提供する。
【解決手段】前身頃の中央又は中央付近に前身頃を左右に分割して開閉させる第1の開閉手段を有するコート本体と、第1の端部から第2の端部に向かって幅が広くなる帯形状であって、第1の開閉手段によってコート本体の前身頃に開口した開口部分を、前身頃に装着されて覆うダッカーとを備え、ダッカーは、コート本体のすそ側に第1の端部を向けて装着することも第2の端部を向けて装着することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性用コートに関し、より特定的には、妊娠前、妊娠中、出産後の育児期及びその後の時期を通して着用できる女性用コートに関する。
【背景技術】
【0002】
抱っこ紐等を用いて子供を抱っこ又はおんぶした状態で、子供の上から着用するコートがある。このコートは、一般に、ママコートと呼ばれ、例えば、特許文献1に記載されている。図5は、特許文献1に記載された従来のママコート300を示す図である。図5に示すように、従来のママコート300は、コート本体301とダッカー302とを備える。ダッカー302は、帯状の布であり、例えば子供を抱っこする場合、コート本体301の前開き部分に装着される。このことによって、ママコート300の胴回りのサイズは大きくなるので、ユーザは、抱っこした子供と共に、ママコート300を着用できる。また、ユーザは、子供を抱っこ等していない通常状態では、ママコート300をコート本体301単体で着用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−130914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のママコート300は、妊娠中のユーザの使用を想定していない。
【0005】
妊娠中のユーザが従来のママコート300のコート本体301単体を着用した場合、コート本体301の胴回りは小さいために、お腹が締め付けられる又はコート本体301の前開き部分を閉じることができないためにお腹を冷やしてしまうこととなる。
【0006】
また、妊娠中のユーザがダッカー302を装着した従来のママコート300を着用した場合、図5から解るように従来のママコート300の下腹部の胴回りはあまり大きくはないので、ユーザのお腹(下腹部)が締め付けられて好ましくない。また、ダッカー302の存在によってママコート300の襟刳りが極端に大きくなるので、保温性が著しく低下してお腹も身体も冷やしてしまうこととなる。また、着心地もよくない。
【0007】
更に、妊娠中のユーザがダッカー302を装着した従来のママコート300を着用した場合、見栄えが悪くファッション性を著しく損なう。具体的には、ダッカー302を装着した従来のママコート300は、図5から解るように、妊娠中のユーザの下腹位置のみならず胴全体に亘って胴回りのサイズが大きいために、ファッション性を損なう。しかし、一般に、ユーザである女性にとって、妊娠期間であってもファッション性の高いお洒落な服装をすることは大変重要である。
【0008】
以上のことから、妊娠中のユーザは、従来のママコート300を着用することが困難であった。
【0009】
それ故に、本発明の目的は、上記した問題を解決するものであり、妊娠前、妊娠中、出産後の育児期、及びその後の時期を通して、ファッション性を損なうこと無く快適かつお洒落に着用できる女性用コートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、女性用コートに向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明の女性用コートは、前身頃と後身頃とを含み、当該前身頃の中央又は中央付近に当該前身頃を左右に分割して開閉させる第1の開閉手段を有するコート本体と、第1の端部から第2の端部に向かって幅が広くなる帯形状であって、第1の開閉手段によってコート本体の前身頃に開口した開口部分を、当該前身頃に装着されて覆うダッカーとを備え、ダッカーは、コート本体のすそ側に第1の端部を向けて装着することも第2の端部を向けて装着することも可能であることを特徴とする。
【0011】
これにより、本発明の女性用コートは、通常時、妊娠中、子供を抱っこした時において、快適かつお洒落に着用できる。
【0012】
また、ダッカーは、第1の着脱手段を含み、ダッカーは、第1の着脱手段と第1の開閉手段とが連結されることによって、コート本体の前身頃に装着されてもよい。
【0013】
また、第1の着脱手段は、線ファスナーであり、第1の開閉手段は、線ファスナーであってもよい。
【0014】
また、ダッカーは、第1の着脱手段を含み、コート本体は、更に、コート本体の前身頃に開口した開口部分付近に第2の着脱手段を含み、ダッカーは、第1の着脱手段と第2の着脱手段とが連結されることによって、コート本体の前身頃に装着されてもよい。
【0015】
また、第1の着脱手段は、線ファスナーであり、第2の着脱手段は、線ファスナーであってもよい。
【0016】
また、コート本体は、後身頃の中央又は中央付近に当該後身頃を左右に分割して開閉させる第2の開閉手段を更に有し、ダッカーは、更に、第2の開閉手段によってコート本体の後身頃に開口した開口部分を、当該コート本体のすそ側に第1の端部を向けて当該後身頃に装着されて覆ってもよい。
【0017】
これにより、本発明の女性用コートは、更に子供を背負った時においても、快適かつお洒落に着用できる。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明した構成によって、本発明の女性用コートは、妊娠前、妊娠中、出産後の育児期、及びその後の時期を通して、ファッション性を損なうこと無く快適かつお洒落に着用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る女性用コート100の通常時の着用状態を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る女性用コート100の妊娠時の着用状態を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る女性用コート100の抱っこ時の着用状態を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態に係る女性用コート100のおんぶ時の着用状態を示す図
【図5】特許文献1に記載された従来のママコート300を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る女性用コート100を説明するための図である。図1に示すように、女性用コート100は、コート本体101とダッカー102とを備える。なお、図1(a)は、妊娠してお腹が大きい状態ではない時(以下、通常時という)のユーザが、コート本体101を単体で着用した場合を示し、図1(b)は、ダッカー102を示す。
【0021】
図1(a)に示すように、コート本体101は一般的な女性用コートと同様の形態であり、コート本体101の前身頃の中央又は中央付近には、前身頃を左右に分割して開口させ、また、開口した前身頃を閉口させる開閉手段104が設けられる。開閉手段104は、典型的には、線ファスナーである。
【0022】
ダッカー102は、衣服に使用される布等の資材から成る。また、ダッカー102は、図1(b)に示すように、帯形状であって、端部Aから端部Bに向かって幅が広くなる形状である。また、ダッカー102は、端部C及び端部Dに、着脱手段103を備える。着脱手段103を用いて、ダッカー102は、コート本体101における前身頃が左右に開口する部分(以下、開口部分という)に装着できる。着脱手段103は、典型的には、線ファスナーである。
【0023】
図1(a)に示すように、女性用コート100によれば、通常時のユーザは、コート本体101を単体で着用することによって、一般の女性用コートと同様に、お洒落な着こなしができる。
【0024】
図2は、妊娠してお腹が大きい時(以下、妊娠時という)のユーザが、第1の実施形態に係る女性用コート100を着用した状態を示す図である。図2に示すように、女性用コート100は、妊娠時に着用される場合、コート本体101の前身頃の開口部分にダッカー102が装着される。この際、ダッカー102の着脱手段103がコート本体101の開閉手段104に連結される。また、この際、図2に示すように、ダッカー102は、女性用コート100のすそ側に端部Bが位置し、女性用コート100の襟刳り側に端部Aが位置する方向で、コート本体101に装着される。このことによって、ダッカー102の装着に起因する女性用コート100の胴回りのサイズ増加は、図2に示すように、ユーザの胸位置及び上腹位置では比較的小さく、ユーザの下腹位置では比較的大きくなる。
【0025】
以上に説明したように、図2の状態の女性用コート100において、妊娠時のユーザの張り出した下腹位置の胴回りのサイズは大きく、一方で、妊娠時のユーザの胸位置及び上腹位置の胴回りのサイズは比較的小さい。つまり、図2の状態の女性用コート100は、妊娠時のユーザの身体に快適にフィットする。
【0026】
図3は、抱っこ紐等を用いて子供を抱っこした時(以下、抱っこ時という)のユーザが、第1の実施形態に係る女性用コート100を着用した状態を示す図である。なお、抱っこ紐は、一般なものであるので、その説明は省略する。図3に示すように、女性用コート100は、抱っこ時に着用される場合、コート本体101の前身頃の開口部分にダッカー102が装着される。この際、ダッカー102の着脱手段103がコート本体101の開閉手段104に連結される(図1を参照)。また、この際、図3に示すように、ダッカー102は、女性用コート100のすそ側に端部Aが位置し、女性用コート100の襟刳り側に端部Bが位置する方向で、コート本体101に装着される。つまり、ダッカー102は、抱っこ時には、図2に示す妊娠時の着用状態に対して上下反対の向きでコート本体101に装着される。このことによって、図3に示す抱っこ時において、ダッカー102の装着に起因する女性用コート100の胴回りのサイズ増加は、ユーザの胸位置及び上腹位置では比較的大きく、ユーザの下腹位置では比較的小さくなる。なお、図3では、抱っこした子供の顔が出るように、ダッカー102を折り返して端部Bを外側に垂らしている。
【0027】
ここで、抱っこ紐等を用いて子供を抱っこする場合、ユーザは、一般に、ユーザの身体の比較的高い位置で子供を抱っこする。ユーザが子供を比較的高い位置で抱っこした場合、図3に示すように、ユーザの胸位置から上腹位置に子供の頭及び胴体が位置し、ユーザの下腹位置以下に子供の足が位置する。
【0028】
このことから、抱っこ時にユーザが女性用コート100を着用する場合、女性用コート100の胴回りのサイズは、ユーザの胸位置から上腹位置にかけては大きなゆとりが必要であり、一方で、ユーザの下腹位置以下では大きなゆとりは必要ない。この結果として、図3に示すように、女性用コート100は、抱っこされた子供及びユーザに快適にフィットする。
【0029】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る女性用コート100は、図1に示す通常時には一般の女性用コートと同様にお洒落に着用できる。また、女性用コート100は、図2に示す妊娠時には、ユーザの身体に快適にフィットするので、高い保温性を保ってお腹を冷やすことはなく、また、ファッション性の高いデザインにすることができる。また、女性用コート100は、図3に示す抱っこ時には、抱っこされた子供及びユーザに快適にフィットするので、高い保温性を保って子供及びユーザを冷やすことはなく、また、ファッション性の高いデザインにすることができる。つまり、第1の実施形態に係る女性用コート100は、妊娠前、妊娠中、出産後の育児期、及びその後の時期を通して、ファッション性を損なうこと無く快適かつお洒落に着用できる。
【0030】
なお、着脱手段103及び開閉手段104が共に線ファスナーから成る場合、開閉手段104である線ファスナーのセットの一方が連結する相手の線ファスナーのセットの一方(即ち、着脱手段103である線ファスナーのセットの一方)は、図2の妊娠時の状態と図3の抱っこ時の状態とで、入れ替わることとなる。このことから、着脱手段103及び開閉手段104を構成する線ファスナーは、ダッカー102の装着方向に関わらず互いに連結できるタイプである必要がある。
【0031】
また、ダッカー102の着脱手段103及びコート本体101の開閉手段104は、線ファスナーに限らず、点ファスナー、面ファスナー、ボタン等であってもよい。
【0032】
また、以上では、ダッカー102の着脱手段103が、コート本体101の開閉手段104に連結される場合を説明した。しかし、ダッカー102の着脱手段103は、コート本体101の開閉手段104には連結されず、コート本体101に設けられたダッカー102装着用の着脱手段(図示せず)と連結されてもよい。
【0033】
また、女性用コート100の丈は、ユーザの下腹を覆うことができる長さであることが好ましい。また、女性用コート100は、ジャケットタイプ、ブルゾンタイプ等であってもよく、また、フード等を備えてもよい。
【0034】
また、ダッカー102の端部A〜Dは、図1(b)に示すような直線形状でなくてもよく、例えば、曲線形状であってもよい。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、おんぶ紐等を用いて子供を背負った時(以下、おんぶ時という)のユーザが、第2の実施形態に係る女性用コート200を着用した状態を示す図である。なお、おんぶ紐は、一般なものであるので、その説明は省略する。図4に示すように、第2の実施形態に係る女性用コート200は、図1〜図3を用いて説明した第1の実施形態に係る女性用コート100に対して、コート本体101の後身頃の中央又は中央付近に、後身頃を左右に分割して開口させ、また、開口した後身頃を閉口させる開閉手段204を更に設ける構成である。開閉手段204は、典型的には、線ファスナーである。以下では、説明の便宜のため、第2の実施形態に係る女性用コート200を構成するコート本体をコート本体201という。
【0036】
図4に示すように、女性用コート200は、おんぶ時に着用される場合、コート本体201の後身頃の開口部分にダッカー102が装着される。この際、ダッカー102の着脱手段103(図1(b)を参照)がコート本体201の開閉手段204に連結される。また、この際、図4に示すように、ダッカー102は、女性用コート200のすそ側に端部Aが位置し、女性用コート200の襟刳り側に端部Bが位置する方向で、コート本体201に装着される。このことによって、図4に示すおんぶ時において、ダッカー102の装着に起因する女性用コート200の胴回りのサイズ増加は、ユーザの胸位置及び上腹位置では比較的大きく、ユーザの下腹位置では比較的小さくなる。
【0037】
ここで、おんぶ紐等を用いて子供を背負う場合、ユーザは、一般に、ユーザの身体の比較的高い位置で子供を背負う。ユーザが子供を比較的高い位置で背負った場合、図4に示すように、ユーザの胸位置から上腹位置に子供の頭及び胴体が位置し、ユーザの下腹位置以下に子供の足が位置する。
【0038】
このことから、おんぶ時にユーザが女性用コート200を着用する場合、女性用コート200の胴回りのサイズは、ユーザの胸位置から上腹位置にかけては大きなゆとりが必要であり、一方で、ユーザの下腹位置以下では大きなゆとりは必要ない。この結果として、図4に示すように、女性用コート200は、抱っこされた子供及びユーザに快適にフィットする。
【0039】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る女性用コート200は、第1の実施形態に係る女性用コート100と同様の効果を奏し、加えて、子供を背負う場合にも使用できる。また、女性用コート200は、図4に示すおんぶ時において、おんぶされた子供及びユーザに快適にフィットするので、高い保温性を保って子供及びユーザを冷やすことはなく、また、ファッション性の高いデザインにすることができる。
【0040】
なお、コート本体201の開閉手段204は、線ファスナーに限らず、点ファスナー、面ファスナー、ボタン等であってもよい。
【0041】
また、第2の実施形態では、ダッカー102の着脱手段103は、コート本体201の後身頃の開閉手段204に連結される場合を説明した。しかし、ダッカー102の着脱手段103は、コート本体201の後身頃の開閉手段204には連結されず、コート本体201の後身頃に設けられたダッカー102装着用の着脱手段(図示せず)と連結されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、女性用コート等に利用可能であり、特に、女性用コートを、妊娠前、妊娠中、出産後の育児期、及びその後の時期を通して使用したい場合等に有用である。
【符号の説明】
【0043】
100、200 女性用コート
101、201 コート本体
102、302 ダッカー
103 着脱手段
104、204 開閉手段
300 ママコート
301 コート本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性用コートであって、
前身頃と後身頃とを含み、当該前身頃の中央又は中央付近に当該前身頃を左右に分割して開閉させる第1の開閉手段を有するコート本体と、
第1の端部から第2の端部に向かって幅が広くなる帯形状であって、前記第1の開閉手段によって前記コート本体の前身頃に開口した開口部分を、当該前身頃に装着されて覆うダッカーとを備え、
前記ダッカーは、前記コート本体のすそ側に前記第1の端部を向けて装着することも前記第2の端部を向けて装着することも可能であることを特徴とする、女性用コート。
【請求項2】
前記ダッカーは、第1の着脱手段を含み、
前記ダッカーは、前記第1の着脱手段と前記第1の開閉手段とが連結されることによって、前記コート本体の前身頃に装着されることを特徴とする、請求項1に記載の女性用コート。
【請求項3】
前記第1の着脱手段は、線ファスナーであり、
前記第1の開閉手段は、線ファスナーであることを特徴とする、請求項2に記載の女性用コート。
【請求項4】
前記ダッカーは、第1の着脱手段を含み、
前記コート本体は、更に、前記コート本体の前身頃に開口した開口部分付近に第2の着脱手段を含み、
前記ダッカーは、前記第1の着脱手段と前記第2の着脱手段とが連結されることによって、前記コート本体の前身頃に装着されることを特徴とする、請求項1に記載の女性用コート。
【請求項5】
前記第1の着脱手段は、線ファスナーであり、
前記第2の着脱手段は、線ファスナーであることを特徴とする、請求項4に記載の女性用コート。
【請求項6】
前記コート本体は、前記後身頃の中央又は中央付近に当該後身頃を左右に分割して開閉させる第2の開閉手段を更に有し、
前記ダッカーは、更に、前記第2の開閉手段によって前記コート本体の後身頃に開口した開口部分を、当該コート本体のすそ側に前記第1の端部を向けて当該後身頃に装着されて覆うことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載の女性用コート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−255131(P2010−255131A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104300(P2009−104300)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(593196078)株式会社犬印本舗 (4)
【Fターム(参考)】