説明

好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)に対する単離されたヒト自己抗体、ならびにNGALに対するヒト自己抗体の検出のための方法およびキット

患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することおよび、任意に、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを更に含むことが可能である、単独でまたはNGALの濃度を決定する方法と更に組み合わせて、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定する方法、NGALと反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分、およびアッセイのための指示書を含むキット、NGALと反応する自己抗体を単離する方法、NGALと反応する単離された自己抗体、ならびにNGALアッセイの結果の信頼性を決定するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、単離されたヒト自己抗体、ならびにNGALまたはこの断片に対するヒト自己抗体を検出するための、およびNGALアッセイの結果の信頼性を決定するための関連するキットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)は、ヒト好中球リポカリン(HNL)、N−ホルミルペプチド結合タンパク質および25kDaのα2−ミクログロブリン関連タンパク質としても知られており、モノマーとして、ホモダイマーとしてまたはゼラチナーゼBやマトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)等のタンパク質とのヘテロダイマーとして存在し得る24kDaのタンパク質である。NGALは、感染症に伴うもの等の炎症を含む、多くの疾患(例えば、Xuら、Biochim.et Biophys.Acta1482:298−307(2000)を参照されたい。)、障害および状態の診断および/または予測におけるマーカーである。NGALは、とりわけ、過敏性腸症候群(例えば、米国特許出願公開第2008/0166719号および米国特許出願公開第2008/0085524号を参照されたい。)、腎障害、腎疾患および腎傷害(例えば、米国特許出願公開第2008/0090304号、米国特許出願公開第2008/0014644号、米国特許出願公開第2008/0014604号、米国特許出願公開第2007/0254370号および米国特許出願公開第2007/0037232号を参照されたい。)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、重症の敗血症、敗血症性ショックおよび多臓器不全症候群(MODS)(例えば、米国特許出願公開第2008/0050832号および米国特許出願公開第2007/0092911号を参照、また、米国特許第6,136,526号も参照されたい。)、歯周疾患(例えば、米国特許第5,866,432号を参照されたい。)および静脈血栓塞栓性疾患(例えば、米国特許出願公開第2007/0269836号を参照されたい。)に対するマーカーである。その遊離型、非複合体型形態において、NGALは、卵巣癌、浸潤性および非浸潤性乳癌、ならびに乳癌の主要なリスク因子である異型乳管過形成に対するマーカーである(例えば、米国特許出願公開第2007/0196876号を参照、また、癌の増殖状況を評価することに関して、米国特許第5,627,034号および米国特許第5,846,739号も参照されたい。)。また、NGALは、MMP−9と複合体を形成する場合、組織再造に関連する状態に対するマーカーでもある(例えば、米国特許出願公開第2007/0105166号および米国特許第7,153,660号を参照されたい。)。また、高レベルのNGAL(例えば、約350μg/L(Xuら、Scand.J.Clin.Lab.Invest.55:125−131(1995))は、ウイルス感染症と対立するものとして、細菌感染症の指標となることもできる(例えば、米国特許出願公開第2004/0115728号を参照されたい。)。
【0003】
健康なヒトの血清中のNGALのレベルは、約50μg/Lから約100μg/Lの範囲に及ぶ(Xuら、J.Immunol.Methods171:245−252(1994)およびBlaserら、Clinica Chimica Acta235:137−145(1995))。NGALについての現在利用可能なアッセイ、例えば、治療的または予防的有効性の診断、予測および評価において使用されるものは、試験試料中の、例えば液体試料中の、特に患者の血清、血漿または尿の試料中のNGALのレベルを評価する。かかるアッセイは、試験試料中のNGALのレベルを、正常であると考えられるもの、所定の状態、障害もしくは疾患状態を示すと考えられるもの、または事前に患者から採取された試験試料中のNGALのレベルと比較する。かかる比較に基づいて、診断、予測および治療的/予防的処置レジメン(例えば、使用する活性薬剤、または所定の活性薬剤の投与量)が決定される。不都合なことに、かかるアッセイによって得られた結果は、これまでに知られていなかった内在性抗NGAL抗体の存在によって、例えば偽陰性、偽陽性、不正確な定量化等の異常な結果につながり得る干渉を受けやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0166719号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0085524号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0090304号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0014644号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0014604号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0254370号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0037232号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0050832号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0092911号明細書
【特許文献10】米国特許第6,136,526号明細書
【特許文献11】米国特許第5,866,432号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2007/0269836号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2007/0196876号明細書
【特許文献14】米国特許第5,627,034号明細書
【特許文献15】米国特許第5,846,739号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2007/0105166号明細書
【特許文献17】米国特許第7,153,660号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2004/0115728号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Xuら、Biochim.et Biophys.Acta1482:298−307(2000)
【非特許文献2】Xuら、Scand.J.Clin.Lab.Invest.55:125−131(1995)
【非特許文献3】Xuら、J.Immunol.Methods171:245−252(1994)
【非特許文献4】Blaserら、Clinica Chimica Acta235:137−145(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述に鑑みて、NGALに対する単離されたヒト自己抗体を提供することは、本発明の開示の目的である。試験試料中のNGALに対する自己抗体を検出するための方法およびキットを提供することは、本発明の開示の別の目的である。かかる方法およびキットは、試験試料中のNGAL自己抗体の存在による異常な結果を最小限に抑え、それによって治療的/予防的有効性の診断、予測および評価を向上させるように、NGALおよび/または別のタンパク質と複合体を形成したNGALの検出のための方法およびキットとともに使用することができる。これらのおよび他の目的および利点、ならびに更なる本発明の特徴は、本明細書において提供される詳細な説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
試験試料中の、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)またはこの断片と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定する方法が提供される。この方法は、NGAL(またはこの断片)および少なくとも1種の検出可能な標識を用い、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度の直接的または間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または較正物質中の、NGAL(またはこの断片)と反応する抗体の存在、量または濃度の直接的または間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含むアッセイによって、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイすることを含む。較正物質は、任意に、較正物質の各々の、NGAL(またはこの断片)と反応する抗体の濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる、一連の較正物質の一部である。この方法は、自動化システムまたは半自動化システムにおける使用のために適合させることが可能である。
【0008】
方法は、(i)検出可能な標識を含み、少なくとも1種の自己抗体に結合するNGAL(またはこの断片)に試験試料を接触させて、NGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を形成させること、および(ii)(i)において形成されたNGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体において検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出または測定することによって、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定することを含むことができる。
【0009】
方法は、(i)NGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を形成するように、少なくとも1種の自己抗体に結合する、固相上に任意に固定されたNGAL(またはこの断片)に試験試料を接触させること、(ii)検出可能な標識を含み、自己抗体に結合している少なくとも1種の検出抗体にNGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を接触させて、NGAL(またはこの断片)/自己抗体/検出抗体複合体を形成させること、および(iii)(ii)において形成されたNGAL(またはこの断片)/自己抗体/検出抗体複合体中において検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出または測定することによって、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する自己抗体の存在、量または濃度を決定することを含むことができる。方法は、段階(i)の後で非結合の少なくとも1種の自己抗体を除去すること、および段階(ii)の後で非結合の少なくとも1種の検出抗体を除去することを任意に更に含む。
【0010】
方法は、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度を、事前に、同時にまたは事後に決定することを更に含むことができる。方法は、NGAL(またはこの断片)に対する少なくとも1種の特異的結合パートナーおよび少なくとも1種の検出可能な標識を用い、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度の直接的または間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または較正物質中のNGALの濃度の直接的または間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含むアッセイによってNGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイすることを含むことができる。較正物質は、任意に、較正物質の各々のNGAL濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる、一連の較正物質の一部である。
【0011】
方法は、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断すること、予測することまたは評価することを更に含むことができる。方法が、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、方法は、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む。
【0012】
また、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度について試験試料をアッセイするためのキットも提供される。キットは、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分、およびNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための指示書を含む。NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分は、固相上に任意に固定されたNGAL(またはこの断片)を含む組成物および/またはNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体に結合することができる抗体を含む組成物を含み、NGAL(またはこの断片)または抗体は、任意に検出可能であるように標識されている。
【0013】
NGALと反応する自己抗体を単離する方法が、更に提供される。この方法は、(i)NGALが生物試料との接触の前または後に固相上に任意に固定される、NGALと反応する自己抗体を含むことが知られている生物試料にNGAL(またはこの断片)を接触させること、(ii)自己抗体が結合しているNGALを単離すること、および(iii)NGALから自己抗体を単離することを含む。NGALと反応する単離された自己抗体が、なお更に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本発明の開示は、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)と反応するヒト血清および血漿中の内在性抗体、すなわち自己抗体の驚くべき予想外の発見に少なくとも部分的に基づく。
【0015】
定義
(a)「好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)」は、ヒト好中球リポカリン(HNL)、N−ホルミルペプチド結合タンパク質および25kDaのα2−ミクログロブリン関連タンパク質としても知られており、モノマーとして、ホモダイマーとしてまたはゼラチナーゼBやマトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)等のタンパク質とのヘテロダイマーとして存在し得る24kDaのタンパク質である。例示的なアミノ酸配列については、例えば、Kjeldsenら、J.Biol.Chem.268(14):10425−10432(1993)を参照されたい。一般に、シグナルペプチドは、存在する場合、アミノ酸1−20を含む。本明細書において適用される番号付与は、かかるシグナルペプチドが存在する場合も存在しない場合もあるという理解の下で、残基1−20のシグナルペプチドを考慮している。
【0016】
NGALポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、例えば、Genbank受託番号Genpept CAA58127(配列番号1)、AAB26529、XP_862322、XP_548441、P80108、P11672、X83006.1、X99133.1、CAA67574.1、BC033089.1、AAH33089.1、S75256.1、AD14168.1、JC2339、1DFVA、1DFVB、1L6MA、1L6MB、1L6MC、1NGLA、1QQSA、1X71A、1X71B、1X71C、1X89A、1X89B、1X89C、1X8UA、1X8UBおよび1X8UCとして記載されているものを含む任意のNGAL配列であり得る。NGALポリヌクレオチドおよびポリペプチド(例えば、ポリアミノ酸)配列は、天然に見出されるもの、天然に見出された配列に基づくもの、単離されたもの、合成のもの、半合成のもの、組換えのものまたはその他である。一実施形態において、NGALは、ヒトNGAL(「hNGAL」としても知られている。)である。NGALポリペプチド配列は、成熟ヒトNGAL配列(典型的には天然に見出される20残基のアミノ酸シグナルペプチドを含まない、および/または他のあらゆるシグナルペプチド配列を差し引いた配列)であり得る。シグナルペプチドが存在する場合、それは、例えば、残基1から20として番号付与され、同様の番号付与が、コードポリヌクレオチド配列について適用される。
【0017】
同様に、NGALのN末端における開始Met残基は、原核生物(例えば、E.コリ(E.coli))において産生されたNGALまたは(半合成を含む)合成のもしくは誘導された配列中のみに存在し、真核生物(例えば、ヒトを含む哺乳動物細胞および酵母細胞)において産生されたNGAL中には存在しない。従って、開始Met残基は、存在する場合、典型的には負の数として、例えば、残基−1としてカウントされるが、原核生物および真核生物の両バックグラウンドにおいてポリヌクレオチド配列が同じように複製および転写され、翻訳のレベルにおいて差異があるので、真核生物に対して原核生物のバックグラウンドまたは発現系においてポリヌクレオチド配列について同様の番号付与の調整は為されない。
【0018】
従って、本明細書における開示は、原核生物および/または真核生物バックグラウンドにおいて存在するおよび/または産生される多数の異なるNGALポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列(例えば、結果としての、コドン認識に対する最適化を伴って)を包含する。要するに、配列は、(a)シグナルペプチド、(b)成熟NGAL配列中のN末端において存在する開始Met残基、(c)成熟NGALタンパク質より前にあるシグナルペプチドの開始点に存在する開始Met残基、および(d)当業者にとって明らかなもの等の他の変形物を保有もしくはコードしてもよく、または保有もしくはコードしなくてもよい。
【0019】
例示的な配列としては、本明細書において記載されているもの、すなわち、配列番号1(シグナルペプチドを含むNGAL野生型ポリペプチド)、配列番号2(原核生物において産生されMet開始コドンが存在する場合にはMet開始残基の後にあり得るが、Met開始コドンが存在するかどうかに関わらず、真核生物において産生される場合にはMet開始残基が存在しない、シグナルペプチドを1つも含まないNGAL野生型ポリペプチド)および配列番号3(シグナルペプチドをコードするものを含むNGAL野生型ポリヌクレオチド配列)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な配列としては、全て2007年10月19日に出願された米国仮出願第60/981,470号、米国仮出願第60/981,471号および米国仮出願第60/981,473号、ならびに全て2008年4月16日に出願された米国特許出願第12/104,408号、米国特許出願第12/104,410号および米国特許出願第12/104,413号(それらの各々は、上記に関するそれらの教示について参照により完全に組み込まれている。)の内のいずれか1つ以上において記載されている任意の変異配列が更に挙げられる。
【0020】
本明細書における「NGAL」の使用は、文脈と矛盾しない限り、NGALおよびこの断片を包含することが意図される。
【0021】
本明細書における「NGAL断片」という用語は、本明細書において使用される場合、成熟NGAL(例えば、ヒトNGAL)またはシグナルペプチドを含むNGALの全体より少ない部分を含むポリペプチドを指す。特に、NGAL断片は、配列番号1または2の約5個から約178個までまたは約179個までの連続したアミノ酸を含む。特に、NGAL断片は、配列番号1または2の約5個から約170個までの連続したアミノ酸を含む。特に、NGAL断片は、配列番号1もしくは2の少なくとも約5個の連続したアミノ酸、配列番号1もしくは2の少なくとも約10個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2のアミノ酸の少なくとも約15個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約20個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約25個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2のアミノ酸の少なくとも約30個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約35個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約40個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約45個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約50個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約55個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約60個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約65個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約70個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約75個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約80個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約85個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約90個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約95個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約100個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約105個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約110個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約115個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約120個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約125個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約130の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約135個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約140個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約145個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約150個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約160個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約165個の連続したアミノ酸残基、配列番号1もしくは2の少なくとも約170個の連続したアミノ酸残基または配列番号1もしくは2の少なくとも約175個の連続したアミノ酸残基を含む。
【0022】
NGALの断片は、NGALの連続または非直線状エピトープを含む。かかるエピトープ断片の厳密な境界は、当技術分野における通常の技術を使用して確認することができる。断片は、好ましくは、少なくとも約5個の連続したアミノ酸、例えば約10個の連続したアミノ酸、約15個の連続したアミノ酸または約20個の連続したアミノ酸を含む。(野生型アミノ酸配列に関する。)かかる断片の例としては、アミノ酸
【0023】
【化1】















































を含む断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
(b)「NGAL類似体」は、NGALの生物学的に活性な類似体、例えば、ヒトNGALの生物学的に活性な類似体を指す。類似体は、NGALの生物学的活性を消去しない切断、欠失、挿入、置換、置き換え、側鎖伸長および融合、例えば別のタンパク質との融合、ならびに前述のもののいずれかの組み合わせを含むことができる。例示的なNGAL類似体としては、全て2007年10月19日に出願された米国仮出願第60/981,470号、米国仮出願第60/981,471号および米国仮出願第60/981,473号、ならびに全て2008年4月16日に出願された米国特許出願第12/104,408号、米国特許出願第12/104,410号および米国特許出願第12/104,413号(それらの各々は、上記に関するそれらの教示について参照により完全に組み込まれている。)の内のいずれか1つ以上において記載されている任意の変異NGAL配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
(c)「NGALコンジュゲート」は、少なくとも1つの修飾部分またはそれに結合した少なくとも1つの反応性実体を含むNGALまたはこの断片を指す。修飾部分の例としては、安定性、溶解性および/または生物学的活性に影響を及ぼす部分(例えば、親水性ポリマーまたはオリゴマー、両親媒性ポリマーまたはオリゴマーおよび親油性ポリマーまたはオリゴマー)、親水性部分、ポリエチレングリコール部分、生体適合性水溶性部分、ポリカチオン部分、両親媒性部分、ポリエチレングリコール/アルキル修飾部分等が挙げられるが、これらに限定されない。かかる修飾部分は、NGALまたはこの断片に共有結合することができる。修飾部分は、血液の成分、例えば血液タンパク質と、例えば前記成分に存在しているアミノ基、ヒドロキシル基またはチオール基を介して共有結合を形成することができる。アミノ基は、カルボキシ、ホスホリルまたはアシル等の反応性実体と共有結合を形成することができ、ヒドロキシル基は、活性化エステル等の反応性実体と共有結合を形成することができ、チオール基は、エステルまたは混合無水物等の反応性実体と共有結合を形成することができる。好ましい血液成分は、血清アルブミン、免疫グロブリンまたはこれらの組み合わせ等の移動性血液成分であり、好ましい反応性実体は、マレイミドまたはマレイミド含有基等の無水物を含む。
【0026】
(d)「NGAL誘導体」は、NGAL類似体、NGALコンジュゲートまたはNGALの組換え型を指す。
【0027】
(e)「対照」は、NGALに対する抗体を含まないことが知られている組成物(「陰性対照」)またはNGALに対する抗体を含むことが知られている組成物(「陽性対照」)を指す。陽性対照は、NGAL対する既知濃度の抗体を含むことができる。「対照」および「陽性対照」は、NGALに対する既知濃度の抗体を含む組成物を指すために、本明細書において交換可能に使用され得る。「陽性対照」は、アッセイの性能特性を確立するために使用することができ、試薬(例えば、分析物)の完全性の有用な指標である。
【0028】
(f)「一連の較正組成物」は、既知濃度のNGALに対する抗体を含む複数の組成物(組成物の各々のNGALに対する抗体の濃度は、一連の較正物質中の他の組成物と異なる。)を指す。
【0029】
(g)本明細書において記載されたイムノアッセイおよびキットの関連において、「品質管理試薬」としては、較正物質、対照および感受性パネルが挙げられるが、これらに限定されない。「較正物質」または「標準」は、典型的には、抗体や分析物等の分析物濃度の内挿のための較正(標準)曲線を確立するために(例えば、1種以上(例えば、複数))使用される。代替として、所定の正/負のカットオフ付近の単一の較正物質が使用され得る。多数の較正物質(すなわち、複数の較正物質または様々な量の(1種以上の)較正物質)は、「感受性パネル」を含むように一緒に使用され得る。
【0030】
(h)「所定のカットオフ」および「所定のレベル」は、一般に、所定のカットオフ/レベルに対してアッセイ結果を比較することによって診断/予測/治療効果の結果を評価するために使用されるアッセイカットオフ値を指し、ここで所定のカットオフ/レベルは、既に各種臨床パラメータ(例えば、疾患の重症度、進行/非進行/改善等)と結びつけられているまたは関連づけられている。本発明の開示は、例示的な所定のレベルを提供する。しかし、カットオフ値がイムノアッセイの性質(例えば、用いられる抗体等)に応じて変化し得ることは、周知である。更に、この開示に基づいてそれらの他のイムノアッセイについてのイムノアッセイ特異的カットオフ値を得るために本明細書における開示を他のイムノアッセイに対して適合させることは、当技術分野における通常の技術の十分な範囲内である。所定のカットオフ/レベルの厳密な値はアッセイ間において変化する可能性があるが、本明細書において記載されている相関は一般に適用可能であるべきである。
【0031】
(i)「試料」、「試験試料」および「患者試料」は、本明細書において交換可能に使用され得る。試料(例えば、尿、血清または血漿の試料)は、当技術分野において知られている常法に従う手法を使用して対象または患者から得ることができる。試料は、患者から得られた状態のまま直接使用することができ、または本明細書において考察される何らかの方法もしくはそれ以外の場合当技術分野において知られている何らかの方法において試料の特性を改変するために、例えば、濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活性化および試薬の添加等によって前処理することができる。
【0032】
(j)「患者」および「対象」は、動物、例えば、トリ(例えば、カモまたはガチョウ)、サメ、クジラ、ならびに非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよびヒト)を含む哺乳動物を指すために本明細書において交換可能に使用され得る。好ましくは、患者または対象は、ヒト、例えば、心臓血管疾患のリスクがあるヒト、心臓血管疾患を有するヒト、腎疾患のリスクがあるヒトまたは腎疾患を有するヒトである。
【0033】
(k)「少なくとも1種の成分」、「成分」および「複数の成分」は、一般に、本明細書において記載された方法および当技術分野において知られている他の方法に従って試験試料、例えば、患者の尿、血清または血漿試料のアッセイのためのキット中に含まれ得る捕捉抗体、検出抗体またはコンジュゲート抗体、較正物質、対照、感受性パネル、容器、緩衝液、希釈剤、塩、酵素、酵素用補助因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、(例えば、溶液としての)基質、停止液等を指す。幾つかの成分は、溶液中にあってよく、またはアッセイにおける使用のために再構成するために凍結乾燥されてもよい。
【0034】
(l)「抗体」(Ab)および「複数の抗体」(Abs)は、モノクローナル抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(完全または部分的ヒト化)、動物抗体(例えば、限定されないが、トリ(例えば、カモまたはガチョウ)、サメ、クジラおよび非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス等)または非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー等)を含む哺乳動物、組換え抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(「scFv」)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(「sdFv」)および抗イディオタイプ(「抗Id」)抗体、二重ドメイン抗体(例えば、二重可変ドメイン抗体またはDVD−IgG)、ならびに上記のいずれかの機能的に活性なエピトープ結合断片を指す。特に、抗体としては、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち分析物結合部位を含む分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgA)またはサブクラスのものであってもよい。バイオディスプレイを使用して調製されたコンビナトリアル抗体ライブラリのスクリーニングを介して親和性(すなわち、K、kまたはk)が増大したまたは改善された抗体は、「親和性成熟抗体」と称される。簡素化のために、分析物に対する抗体は、本明細書において、しばしば「抗分析物抗体」または「分析物抗体」(例えば、抗NGAL抗体またはNGAL抗体)と称される。
【0035】
(m)「自己抗体」および「複数の自己抗体」は、抗体が産生される動物において天然に出現する分析物に結合する(または分析物「と反応する」)内在性抗体を指す。本開示の状況において、分析物は、NGALまたはこの断片である。自己抗体に関する「少なくとも1種」および「1種以上」の使用は、少なくとも1つまたは1つ以上の型または集団の自己抗体、すなわち、例えば、NGALまたはこの断片上の異なるエピトープと反応する自己抗体を意味する。簡素化のために、分析物に対する自己抗体は、本明細書において、しばしば「抗分析物自己抗体」または「分析物自己抗体」(例えば、抗NGAL自己抗体またはNGAL自己抗体)と称される。
【0036】
(n)「標識」および「検出可能な標識」は、抗体と分析物の間の反応を検出可能にするために抗体または分析物に結合された部分を意味し、そのように標識された抗体または分析物は、「検出可能であるように標識された」と称される。標識は、視覚的手段または機器的手段によって検出可能なシグナルを生成することができる。各種標識は、シグナル生成物質、例えば、色素原、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性化合物等を含む。標識の代表例としては、光を生成する部分(例えば、アクリジニウム化合物)および蛍光を生成する部分(例えば、フルオレセイン)が挙げられる。他の標識は、本明細書において記載されている。
【0037】
(o)「CPSPアクリジニウム−9−カルボキサミド」は、9−[[(3−カルボキシプロピル)[(4−メチルフェニル)スルホニル]アミノ]−カルボニル]−10−(3−スルホプロピル)アクリジニウム内塩を意味する。
【0038】
(p)「SPSPアクリジニウム−9−カルボキサミド」は、9−[[[[4−(3−カルボキシプロピル)フェニル]スルホニル](3−スルホプロピル)アミノ]カルボニル]−10−(3−スルホプロピル)−アクリジニウム内塩を意味する。
【0039】
(q)「トレーサー」は、標識にコンジュゲートした分析物または分析物断片、例えば、標識(例えば、フルオレセイン部分)にコンジュゲートしたNGAL(またはこの断片)を意味し、ここで標識にコンジュゲートした分析物は、分析物に特異的な抗体上の部位に対して分析物と効果的に競合することができる。
【0040】
(r)「固相」は、不溶であり、または後続反応によって不溶となり得るあらゆる材料を指す。固相は、捕捉剤を誘引および固定するその固有の能力について選択され得る。代替として、固相は、これに、捕捉剤を誘引および固定する能力を有する連結剤を付着することができる。連結剤は、例えば、捕捉剤自体または捕捉剤にコンジュゲートした帯電物質に関して逆帯電した帯電物質を含むことができる。一般に、連結剤は、固相上に固定された(固相に結合した)および結合反応を通じて捕捉剤を固定する能力を有するあらゆる(好ましくは特異的な)結合パートナーであり得る。連結剤によって、アッセイの実施の前またはアッセイの実施の間に、捕捉剤が固相材料に間接的に結合することが可能になる。固相は、例えば、プラスチック、誘導体化されたプラスチック、磁性金属もしくは非磁性金属、ガラスまたはケイ素であり得、例えば、試験管、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップおよび当業者に知られている他の構成等であり得る。
【0041】
(s)「特異的結合パートナー」は、特異的結合ペアのメンバーである。特異的結合ペアは、化学的手段または物理的手段を通じて互いに特異的に結合する2個の異なる分子を含む。故に、一般的なイムノアッセイの抗原および抗体特異的結合ペアの他に、他の特異的結合ペアは、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)、炭水化物およびレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクターおよび受容体分子、補因子および酵素、酵素阻害剤および酵素等を含むことができる。更に、特異的結合ペアは、元の特異的結合メンバーの類似体(例えば、分析物−類似体)であるメンバーを含むことができる。免疫反応性特異的結合メンバーとしては、単離されたものであっても、組換えにより作製されたものであっても、抗原、抗原断片および(モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む)抗体、ならびにこれらの複合体および断片が挙げられる。
【0042】
(t)「過酸化水素生成酵素」は、過酸化水素をすることができる酵素を指す。過酸化水素生成酵素の例は、以下で表1において列挙される。
【0043】
【表1】





【0044】
(u)「心臓血管疾患」は、心臓、血管または循環を含む各種の臨床的な疾患、障害または状態を指す。疾患、障害または状態は、冠動脈、脳動脈または末梢動脈のアテローム硬化性障害に起因し得る。心臓血管疾患としては、冠動脈疾患、末梢血管疾患、アテローム硬化症、高血圧、心筋梗塞(すなわち、心筋の領域が、その領域への酸素の不十分な供給のために死滅するまたは損傷を受ける場合に出現する心臓発作(例えば、原発性または続発性))、心筋炎、急性冠動脈症候群、狭心症(すなわち、心筋の血管(冠状血管)を通る不十分な血流によって引き起こされる胸部不快感)、突然心臓死、脳梗塞、再狭窄、失神、虚血、一過性脳虚血発作、再灌流傷害、血管閉塞、頸動脈閉塞性疾患、心臓血管自己免疫疾患等が挙げられるが、これらに限定されない。「心臓血管自己免疫疾患」によって、典型的な機能を損なう、心臓のまたは心臓に供給を行う血管のあらゆる構造的または機能的異常を含む、基礎自己免疫疾患に起因する、心臓の健康なまたは正常な状態からのあらゆる逸脱が意味される。心臓血管自己免疫疾患の例としては、心筋炎、心筋症および虚血性心疾患が挙げられ、各々は、基礎自己免疫疾患に起因する。「心筋炎」は、心筋の炎症を指す。心筋炎は、種々の状態、例えば、ウイルス感染症、サルコイドーシス、リウマチ熱、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス等)および妊娠によって引き起こされ得る。「心筋症」は、心筋の衰弱または心筋構造の変化を指す。心筋症は、不十分な心臓のポンピングまたは他の心臓機能異常をしばしば伴う。心筋症は、ウイルス感染症、心臓発作、アルコール症、長期の重症高血圧、栄養欠乏(特に、セレン、チアミンおよびL−カルニチン)、全身性エリテマトーデス、セリアック病および末期腎疾患によって引き起こされ得る。心筋症の型としては、拡張型心筋症、肥大型心筋症および拘束型心筋症が挙げられる。「拡張型心筋症」は、左心室の著しい拡張および不十分な機能によって特徴付けられる、全体的な、通常は特発性の心筋障害を指す。拡張型心筋症としては、虚血性心筋症、特発性心筋症、高血圧性心筋症、感染性心筋症、アルコール性心筋症、中毒性心筋症および周産期心筋症が挙げられる。「肥大型心筋症」は、異なる大きさに成長した右心室心筋および左心室心筋から生じた状態を指す。「拘束型心筋症」は、心筋が収縮の間に弛緩できない(十分に充満することを妨げる。)ことによって特徴付けられる状態を指す。「虚血性心疾患」は、多くの場合アテローム硬化症によって引き起こされる、心筋の血液供給の欠如または相対的欠乏のために心筋が損傷を受けるまたは非効率的に働くあらゆる状態を指し、この状態としては、狭心症、急性心筋梗塞症および慢性虚血性心疾患が挙げられる。
【0045】
(v)「心不全」は、心臓が身体の残りの部分に血液を効率的にポンピングすることができない状態を指す。心不全は、梗塞、心筋症(原発性もしくは続発性)、高血圧、冠動脈疾患、弁疾患、先天性欠損もしくは感染症による心臓に対する損傷または動脈の狭窄化に起因し得る。心不全は、慢性、うっ血性、急性、非代償性、収縮期または拡張期として更に記載され得る。New York Heart Association(NYHA)分類は、患者の機能的能力に基づいて疾患の重症度を記載しており、NYHAのクラスは、処置または処置に対する応答の欠如に基づいて進行および/または消退し得る。心不全において、心臓血管疾患の「増加した重症度」は、例えばクラスIIIまたはクラスIVへの増加したNYHA分類によって示される疾患の増悪を指し、心臓血管疾患の「低下した重症度」は、例えばクラスIIIまたはIVからクラスIIまたはIへの低下したNYHA分類によって示される疾患の改善を指す。
【0046】
(w)「自己免疫疾患」は、自己抗原に対する免疫寛容の喪失を指す。自己免疫疾患の診断のための幾つかの基準としては、(1)循環自己抗体の存在、(2)罹患した器官において認められた自己抗体、(3)同定された標的抗原、(4)抗原、血清または自己抗体移入による免疫化による動物モデルにおける誘発性および(5)免疫抑制療法または免疫吸着法に対する応答性が挙げられる。自己免疫疾患の他の特徴としては、その(a)女性における増加した有病率、(b)家族内集積(しかし、これは疾患によって異なる。)、(c)無症状のリスク(すなわち、自己抗体が疾患の何年か前に存在し得る。)、(d)周期的性質および(e)慢性的性質が挙げられる。
【0047】
(x)「自己免疫」は、例えば、宿主抗原と反応性の自己抗体またはTリンパ球の存在によって特徴付けられる、宿主抗原に対する1つ以上の免疫応答を指す。
【0048】
(y)「腎疾患」は、例えば、急性腎不全、急性腎炎症候群、鎮痛薬ネフロパシー、アテローム塞栓性腎疾患、慢性腎不全、慢性腎炎、先天性腎炎症候群、末期腎疾患、グッドパスチャー症候群、間質性腎炎、腎癌、腎損傷(renal damange)、腎感染症、腎傷害、腎結石、ループス腎炎、膜性増殖性GN I、膜性増殖性GN II、膜性腎症、微小変化群、壊死性糸球体腎炎、腎芽細胞腫、腎石灰沈着症、腎性尿崩症、腎症−IgA、ネフローゼ(ネフローゼ症候群)、多発性嚢胞腎、連鎖球菌感染後GN、逆流性腎症、腎動脈塞栓症、腎動脈狭窄、腎乳頭壊死、尿細管性アシドーシスI型、尿細管性アシドーシスII型、腎臓灌流低下、腎部血栓症等を含む腎臓のあらゆる疾患、障害または損傷もしくは傷害を指す。
【0049】
(z)「リスク」は、現在出現しているまたは将来のいずれかの時点で出現する特定の事象の可能性または蓋然性を指す。「リスク層別化」は、医師が患者を特定の疾患、障害または状態を発生する低度、中等度、高度または最高度のリスクに分類することを可能にする既知の臨床的リスク因子のアレイを指す。
【0050】
(aa)「約」は、示された値からのおよそ±10%の変動を指す。特定の参照が為されるか否かにかかわらず、かかる変動は、本明細書において提供されているいかなる任意の値にも常に含まれると理解されるべきである。
【0051】
(bb)本明細書において使用される「信頼性」という用語は、所定の結果または値(例えば、イムノアッセイまたは化学発光アッセイ等のアッセイから得られたもの)に対して、前記結果または値が正確であるまたは正しいという少なくとも約90%の確実性(例えば、約90%の確実性から約100%の確実性)があること、好ましくは前記結果または値が正確であるまたは正しいという少なくとも約95%の確実性(例えば、約95%の確実性から約100%の確実性)があることを意味する。
【0052】
上記の用語法は、特定の実施形態を記載する目的のために提供される。この用語法は、限定することを意図するものではない。
【0053】
試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定するための方法
【0054】
本開示は、試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定するための方法を提供する。本明細書において先だって示されているように、試験試料中のNGAL(またはこの断片)に対する自己抗体の存在は、アッセイにおいて得られる偽陰性の結果の生成の一因となる可能性がある。本開示の方法は、NGALについてのアッセイを行う前に、同時にまたはその後で試験試料中の1種以上の自己抗体の存在、量または濃度を決定することを可能にする。NGALについてのアッセイによって事前に得られた結果の精度または信頼性は、本開示に従って、試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定する方法によって評価することができる。
【0055】
方法は、均一フォーマットまたは不均一フォーマットにおいて行うことができる。2つのフォーマットの間に本質的な差異が存在することは、当業者によって認識される。例えば、均一フォーマットは、複合体化していない結合パートナーおよび試験試料の他の成分から、試験試料中の対象となる分析物と対象となる分析物に対する特異的結合パートナーとの複合体を分離する1つ以上の段階を欠く。更に、均一アッセイは、検出可能な標識を用いる。検出可能な標識から生成されるシグナルの1つ以上の特徴は、試験試料中の対象となる分析物(すなわち、NGAL(またはこの断片)に対する自己抗体)と対象となる分析物に対する特異的結合パートナー(例えば、NGAL(またはこの断片))との複合体の形成によって調節される。用いることができるかかる均一なアッセイの例としては、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、酵素増幅イムノアッセイ法(EMIT)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、均一化学発光アッセイ等が挙げられるが、これらに限定されない。均一フォーマットにおいて、試験試料が対象から得られた後、第1の混合物が調製される。混合物は、NGAL(またはこの断片)に対する自己抗体について評価される試験試料、および検出可能な標識によって標識された第1の特異的結合パートナーを含む。第1の特異的結合パートナーは、NGAL(またはこの断片)であり得る。
【0056】
当技術分野において知られている任意の適切な検出可能な標識が使用され得る。例えば、FPIAにおいて、蛍光標識が使用され得る(例えば、(参照により完全に本明細書に組み込まれる。)米国特許第5,593,896号、米国特許第5,573,904号、米国特許第5,496,925号、米国特許第5,359,093号および米国特許第5352803号を参照されたい。)。均一化学発光アッセイにおいて、検出可能な標識としてアクリジニウム化合物が使用され得る(例えば、Adamczykら、Bioorg.Med.Chem.Lett.16:1324−1328(2006)、Adamczykら、Bioorg.Med.Chem.Lett.4:2313−2317(2004)、Adamczykら、Biorg.Med.Chem.Lett.14:3917−3921(2004)およびAdamczykら、Org.Lett.5:3779−3782(2003)を参照されたい。)。好ましくは、アクリジニウム化合物は、アクリジニウム−9−カルボキサミドである。具体的には、アクリジニウム−9−カルボキサミドは、式I
【0057】
【化2】

(式中、RおよびRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、オキソアルキルから成る群から各々独立して選択され、RからR15は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキルおよびオキソアルキルから成る群から各々独立して選択され、更に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルの内のいずれかは、1個以上のヘテロ原子を含有してよく、ならびに、任意に、存在する場合、
【0058】
【化3】

は、アニオンである。)による構造を有する。アクリジニウム−9−カルボキサミドの調製方法は、Mattingly、J.Biolumin.Chemilumin.6:107−114(1991)、Adamczykら、J.Org.Chem.63:5636−5639(1998)、Adamczykら、Tetrahedron 55:10899−10914(1999)、Adamczykら、Org.Lett.1:779−781(1999)、Adamczykら、Bioconjugate Chem.11:714−724(2000)、Mattinglyら、In Luminescence Biotechnology、Instruments and Applications、Dyke,K.V.編、CRC Press、Boca Raton、77−105(2002)、Adamczykら、Org.Lett.5:3779−3782(2003)、ならびに米国特許第5,468,646号、米国特許第5,543,524号および米国特許第5,783,699号(それらの各々は、上記に関するそれらの教示に関して参照により本明細書に完全に組み込まれている。)において記載されている。
【0059】
あるいは、アクリジニウム化合物は、好ましくは、アクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルである。アクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルは、式II
【0060】
【化4】

(式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキルまたはオキソアルキルであり、RからR15は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキルおよびオキソアルキルから成る群から各々独立して選択され、ならびに、任意に、存在する場合、
【0061】
【化5】

は、アニオンである。)による構造を有する。
【0062】
式IIのアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルの例は、10−メチル−9−(フェノキシカルボニル)アクリジニウムフルオロスルホネート(Cayman Chemical、Ann Arbor、MIから入手可能)である。アクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルの調製方法は、McCapraら、Photochem.Photobiol.4:1111−21(1965)、Razaviら、Luminescence 15:245−249(2000)、Razaviら、Luminescence 15:239−244(2000)および米国特許第5,241,070号(各々は、上記に関するそれらの教示に関して参照により本明細書に完全に組み込まれている。)に記載されている。かかるアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルは、シグナルの強度および/またはシグナルの速度に関して、少なくとも1種のオキシダーゼによる分析物の酸化において生成された過酸化水素の効率的な化学発光指標である。アクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルについての化学発光の経過は迅速に、すなわち1秒未満で完了するが、一方でアクリジニウム−9−カルボキサミドの化学発光は2秒を超えて継続する。しかし、アクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルは、タンパク質の存在下でその化学発光性を喪失する。故に、その使用は、シグナルの生成および検出の間にタンパク質が存在しないことを必要とする。試料中のタンパク質を分離するまたは除去するための方法は、当業者に周知であり、それらの方法としては、限外濾過、抽出、沈殿、透析、クロマトグラフィーおよび/または消化が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Wells、High Throughput Bioanalytical Sample Preparation.Methods and Automation Strategies、Elsevier(2003)を参照されたい。)。試験試料から除去されるまたは分離されるタンパク質の量は、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%とすることができる。アクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルに関する更なる詳細およびその使用は、2007年4月9日に出願の米国特許出願第11/697,835号に記載されている。アクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルは、脱気無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)または水性コール酸ナトリウム等の任意の適切な溶媒中において溶解され得る。
【0063】
上記の式に関して、「アルキル」は、1から10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニルおよびn−デシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
「アルケニル」は、2から10個の炭素を含有し、および2個の水素の除去によって形成された少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。アルケニルの代表例としては、エテニル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−メチル−1−ヘプテニルおよび3−デセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
「アルキニル」は、2から10個の炭素原子を含有し、および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。アルキニルの代表例としては、アセチレニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ペンチニルおよび1−ブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
「アリールアルキル(aryalkyl)」は、本明細書において定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された本明細書において定義されるアリール基を意味する。アリールアルキルの代表例としては、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピルおよび2−ナフト−2−イルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
「アリール」は、フェニル基または縮合環の内の1つ以上がフェニル基である二環式もしくは三環式融合環系を意味する。二環式融合環系は、本明細書において定義されるシクロアルケニル基、本明細書において定義されるシクロアルキル基に融合したフェニル基、または別のフェニル基によって例示される。三環式融合環系は、本明細書において定義されるシクロアルケニル基、本明細書において定義されるシクロアルキル基に融合した二環式融合環系、または別のフェニル基によって例示される。アリールの代表例としては、アントラセニル、アズレニル、フルオレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニルおよびテトラヒドロナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のアリール基は、アルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロおよびヒドロキシルから成る群から独立して選択された1個、2個、3個、4個または5個の置換基によって任意に置換され得る。
【0068】
「シクロアルケニル」は、各五員環が1個の二重結合を有し、各六員環が1個または2個の二重結合を有し、各七員環および八員環が1個から3個の二重結合を有し、ならびに各九員環から十員環が1個から4個の二重結合を有する、3個から10個の炭素原子および1個から3個の環を有する非芳香族環式または二環式環系を指す。シクロアルケニル基の代表例としては、シクロヘキセニル、オクタヒドロナフタレニル、ノルボルニレニル等が挙げられる。シクロアルケニル基は、アルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロおよびヒドロキシルから成る群から独立して選択された1個、2個、3個、4個または5個の置換基によって任意に置換され得る。
【0069】
「シクロアルキル」は、3個から12個の炭素原子を有する飽和単環式、二環式または三環式炭化水素環系を指す。シクロアルキル基の代表例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、アダマンチル等が挙げられる。本発明のシクロアルキル基は、アルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロおよびヒドロキシルから成る群から独立して選択された1個、2個、3個、4個または5個の置換基によって任意に置換され得る。
【0070】
「スルホアルキル」は、アルキルが対象となる分子に結合している、スルホネート基が結合したアルキル基を指すが、一方で「カルボキシアルキル」は、1個以上のカルボキシ基によって置換されたアルキル基を指し、「オキソアルキル」は、1個以上のオキシ基によって置換されたアルキル基を指し、「アミノ」は、−NR(式中、RおよびRは、水素、アルキルおよびアルキルカルボニルから成る群から独立して選択される。)を意味し、「アミド」は、−C(O)NR(式中、RおよびRは、水素およびアルキルから成る群から独立して選択される。(を意味し、「アシル」は、RC(O)−を意味し、「アルキルカルボニル」は、カルボニル基を介して親分子部分に結合したアルキル基を意味し、「アルコキシ」または「アルコキシル」は、酸素原子を介して親分子部分に付加された、本明細書において定義されるアルキル基を意味し、その代表例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、「ヒドロキシル」は、−OH基を意味し、「カルボキシ」または「カルボキシル」は、−COHを指し、「ハロゲン」は、−Cl、−Br、−Iまたは−Fを意味し、「ハロゲン化物」は、二元化合物を意味し、その一方の部分はハロゲン原子であり、他方の部分はハロゲンよりも電気陰性度の低い元素または基、例えばアルキル基であり、「ニトロ」は、−NO基を意味し、「スルホ」は、SOHを意味し、および「シアノ」は、−CN基を意味する。
【0071】
「アニオン」は、無機酸または有機酸のアニオンを指す。例としては、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、マンデル酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、リン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸(trifluoromethansulfonic acid)、トリフルオロ酢酸、フルオロスルホン酸およびこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
化学発光アッセイは、Adamczykら、Anal.Chim.Acta 579(1):61−67(2006)において記載されている方法に従って行うことができる。 任意の適切なアッセイフォーマットを用いることができるが、マイクロプレートケミルミノメータ(Mithras LB−940、Berthold Technologies U.S.A.、LLC、Oak Ridge、TN)は、小体積の多数の試料のアッセイを迅速に可能にする。ケミルミノメータは、96ウェル黒色ポリスチレンマイクロプレート(Costar #3792)を用いて多数の試薬注入器を備えることができる。各試料を別々のウェルに加え、その後、用いられるアッセイの種類によって決定される他の試薬の同時/連続の添加を行うことができる。望ましくは、アクリジニウムアリールエステルを用いる中性溶液または塩基性溶液中の擬似塩基の形成は、例えば酸性化によって回避される。次いで、化学発光応答がウェル毎に記録される。この点に関して、化学発光応答を記録するための時間は、用いられた試薬と特定のアクリジニウムの添加の間の遅延に一部依存する。例えば、アクリジニウムカルボキサミドからの発光は、試薬が迅速に連続して、例えば5秒以内に加えられる場合、擬似フラッシュであり得るが、過酸化水素生成酵素とアクリジニウムカルボキサミドの添加の間に20秒等の遅延がある場合、アクリジニウムカルボキサミドからの発光は、長寿命の白熱光であり得る。
【0073】
混合物を形成するために試験試料および検出可能な標識によって標識された第1の特異的結合パートナーを加える順序は重要でない。検出可能な標識によって標識された第1の特異的な結合パートナーおよび試験試料を加えて第1の混合物を形成した後、第1の特異的結合パートナー−自己抗体複合体が形成する。
【0074】
過酸化水素は、上記のアクリジニウム化合物(具体的には、アクリジニウム化合物によって標識された第1の特異的結合パートナー)の添加の前に、同時に、またはその後で、混合物においてインサイチュで生成され得る、または混合物に提供もしくは供給され得る。過酸化水素は、多くの方法においてインサイチュで生成され得る。例えば、1種以上の過酸化水素生成酵素が第1の混合物に加えられ得る。混合物に加えるべき1種以上の過酸化水素生成酵素の量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0075】
また、過酸化水素は、電気化学的にインサイチュで生成することもできる(例えば、Agladzeら、J.Applied Electrochem.37:375−383(2007)およびQiangら、Water Research 36:85−94(2002)を参照されたい。)。また、過酸化水素の光化学的生成もインサイチュで可能である(例えば、Draperら、Archives of Environmental Contamination and Toxicology 12:121−126(1983)を参照されたい。)。
【0076】
代替として、過酸化水素の供給源が単に混合物に加えられてもよい。例えば、過酸化水素の供給源は、過酸化水素を含むことが知られている1種以上の緩衝液または他の溶液であり得る。この点に関して、過酸化水素の溶液は単純に加えることができる。
【0077】
試料への、アクリジニウム、例えばアクリジニウム−9−カルボキサミドまたはアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルの添加、および少なくとも1種の塩基性溶液の同時またはその後の添加の際、自己抗体の存在を示す検出可能シグナル、すなわち化学発光シグナルが生成される。塩基性溶液は、少なくとも1種の塩基を含有し、10以上、好ましくは12以上のpHを有する。塩基性溶液の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび重炭酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。試料に加えられる塩基性溶液の量は、塩基性溶液の濃度に依存する。使用される塩基性溶液の濃度に基づいて、当業者は、試料に加える塩基性溶液の量を容易に決定することができる。
【0078】
生成された化学発光シグナルは、当業者に知られている通常の技術を用いて検出され得る。生成されたシグナルの強度に基づいて、試料中の自己抗体の量が定量され得る。具体的には、試料中の自己抗体の量は、生成されたシグナルの強度に比例する。存在している自己抗体の量は、生成された光の量を抗NGAL抗体、例えばNGAL自己抗体についての標準曲線と比較することによって、または参照標準との比較によって定量することができる。標準曲線は、質量分析、重量法および当技術分野において知られている他の技術によって、既知濃度の抗NGAL抗体、例えばNGAL自己抗体の連続希釈物または溶液を用いて作成され得る。
【0079】
不均一フォーマットにおいて、対象から試験試料が得られた後、第1の混合物が調製される。混合物は、NGAL(またはこの断片)に対する自己抗体について評価される試験試料および第1の特異的結合パートナーを含み、第1の特異的結合パートナーおよび試験試料中に含まれている全ての自己抗体は、第1の特異的結合パートナー−自己抗体複合体を形成する。好ましくは、第1の特異的結合パートナーは、NGALまたはこの断片である。混合物を形成するために試験試料および第1の特異的結合パートナーを加える順序は重要でない。好ましくは、第1の特異的結合パートナーは固相上に固定される。(第1の特異的結合パートナーについての、および、任意に、第2の特異的結合パートナーについての)イムノアッセイにおいて使用される固相は、当技術分野において知られているあらゆる固相、例えば、限定されないが、磁性粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、濾紙、ディスクおよびチップであってもよい。
【0080】
第1の特異的結合パートナー−自己抗体複合体を含有する混合物が形成された後、全ての非結合自己抗体は、当技術分野において知られている任意の技術を用いて複合体から除去される。例えば、非結合自己抗体は、洗浄によって除去され得る。
【0081】
全ての非結合自己抗体が除去された後、第2の特異的結合パートナーを混合物に加えて、第1の特異的結合パートナー−自己抗体−第2の特異的結合パートナー複合体を形成する。第2の特異的結合パートナーは、好ましくは抗ヒト抗体である。更に、また好ましくは、第2の特異的結合パートナーは、検出可能な標識によって標識されている、または検出可能な標識を含有する。検出可能な標識に関して、当技術分野において知られている任意の検出可能な標識が使用され得る。例えば、検出可能な標識は、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14C、32Pおよび33P)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリ性ペルオキシダーゼ、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ等)、化学発光標識(例えば、アクリジニウムエステル、チオエステルまたはスルホンアミド、ルミノール、イソルミノール、フェナントリジニウムエステル等)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン(例えば、5−フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、3’6−カルボキシフルオレセイン、5(6)−カルボキシフルオレセイン、6−ヘキサクロロ−フルオレセイン、6−テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート等))、ローダミン、フィコビリタンパク質、R−フィコエリトリン、量子ドット(例えば、硫化亜鉛でキャップされたセレン化カドミウム)、温度測定標識またはイムノポリメラーゼ連鎖反応標識であり得る。標識への導入、標識化手法および標識の検出は、Polak and Van Noorden、Introduction to Immunocytochemistry、第2版、Springer Verlag、N.Y.(1997)および(Molecular Probes,Inc.、Eugene、Oregonによって出版されたハンドブックとカタログの組み合わせである。)Haugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(1996)において見出される。しかし、好ましくは、検出可能な標識は、化学発光アッセイにおいて使用され得るアクリジニウム化合物である。
【0082】
第1の特異的結合パートナー−自己抗体−第2の特異的結合複合体の形成の後、当技術分野において知られている任意の技術を用いて、(標識されているか標識されていないかにかかわらず)全ての非結合の第2の特異的結合パートナーが複合体から除去される。例えば、非結合の第2の特異的結合パートナーは、洗浄によって除去され得る。
【0083】
過酸化水素は、上記のアクリジニウム化合物(具体的には、アクリジニウム化合物によって標識された第2の特異的結合パートナー)の添加の前に、同時に、またはその後で、混合物においてインサイチュで生成され得る、または混合物に提供もしくは供給され得る。インサイチュで過酸化水素を生成する方法は、上記において記載されている。
【0084】
アクリジニウム化合物(具体的には、アクリジニウム化合物によって標識された第2の特異的結合パートナー)および過酸化水素の、混合物において提供される、または供給される、またはインサイチュで生成されるタイミングおよび順序は重要でない。検出可能な標識によって標識された第2の特異的結合パートナーおよび試験試料を加えて第2の混合物を形成した後、第1の特異的な結合パートナー−自己抗体−第2の特異的結合パートナー複合体が形成する。
【0085】
(上記の)試料への、アクリジニウム、例えばアクリジニウム−9−カルボキサミドまたはアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルの添加、および少なくとも1種の塩基性溶液の同時またはその後の添加の際、自己抗体の存在を示す検出可能シグナル、すなわち化学発光シグナルが生成される。生成された化学発光シグナルは、当業者に知られている常法に従う技術を用いて検出され得る。
【0086】
検出可能な標識によって標識された全ての非結合の第2の特異的結合パートナーが除去された後、検出可能な標識から検出可能シグナルが生成または放出され、次いで測定される。検出可能な標識からシグナルを生成させ、得られた生成シグナルを測定するための方法は、当業者に周知である。例えば、化学発光シグナルは、塩基性溶液の添加の後に生成され得る。生成されたシグナルの強度に基づいて、試験試料中の自己抗体の量が定量され得る。具体的には、試験試料中に含まれている自己抗体の量は、生成されたシグナルの強度に比例する。具体的には、存在している自己抗体の量は、生成された光の量をNGAL(もしくはこの断片)に対する自己抗体についての標準曲線と比較することに基づいて、または参照標準との比較によって定量され得る。標準曲線は、質量分析によって、重量測定によって、および当技術分野において知られている他の技術によって、既知濃度のNGAL(またはこの断片)に対する抗体の連続希釈物または溶液を用いて生成され得る。
【0087】
従って、試験試料中のNGALまたはこの断片と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定する方法が提供される。この方法は、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイすることを含む。このアッセイは、NGAL(またはこの断片)および少なくとも1種の検出可能な標識を用いる。このアッセイは、試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度の直接的もしくは間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または較正物質中の、NGAL(またはこの断片)と反応する抗体の存在、量または濃度の直接的もしくは間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含む。較正物質は、任意に、較正物質の各々のNGAL(またはこの断片)と反応する抗体の濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる、一連の較正物質の一部である。この方法は、自動化システムまたは半自動化システムにおける使用に適合させることが可能である。
【0088】
方法は、(i)検出可能な標識を含み、少なくとも1種の自己抗体に結合するNGAL(またはこの断片)に試験試料を接触させて、NGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を形成させること、および(ii)(i)において形成されたNGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体中において検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出または測定することによって、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定することを含むことができる。好ましくは、検出可能な標識は、アクリジニウム化合物、例えば、アクリジニウム−9−カルボキサミドまたはアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルである。
【0089】
方法は、(i)NGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を形成するように、少なくとも1種の自己抗体に結合し、固相上に任意に固定されたNGAL(またはこの断片)に試験試料を接触させること、(ii)検出可能な標識を含み、自己抗体に結合する少なくとも1種の検出抗体にNGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を接触させて、NGAL(またはこの断片)/自己抗体/検出抗体複合体を形成させること、および(iii)(ii)において形成されたNGAL(またはこの断片)/自己抗体/検出抗体複合体において検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出または測定することによって、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する自己抗体の存在、量または濃度を決定することを含むことができる。任意に、方法は、段階(i)の後で非結合の少なくとも1種の自己抗体を除去すること、および段階(ii)の後で非結合の少なくとも1種の検出抗体を除去することを更に含む。好ましくは、検出可能な標識は、アクリジニウム化合物、例えば、アクリジニウム−9−カルボキサミドまたはアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルである。
【0090】
方法は、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度を決定することを更に含むことができる。方法は、NGALに対する少なくとも1種の特異的結合パートナーおよび少なくとも1種の検出可能な標識を用いる、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度の直接的もしくは間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または(任意に、較正物質の各々のNGALの濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる一連の較正物質の一部である。)較正物質中の、NGALの濃度の直接的もしくは間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含むアッセイによって、NGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイすることを含む。
【0091】
例えば、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度は、NGAL自己抗体に関する上記のアッセイによって、または当技術分野において知られている任意のフォーマットを用いるイムノアッセイ、例えば、限定されないが、サンドイッチイムノアッセイ(例えば、放射性同位体検出(ラジオイムノアッセイ(RIA))および酵素検出(エンザイムイムノアッセイ(EIA)またはELISA(例えば、Quantikine ELISAアッセイ、R&D Systems、Minneapolis、MN))等のモノクローナル−ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ、競合的阻害イムノアッセイ(例えば、フォワードおよびリバース)、ならびに蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)によって決定され得る。化学発光微粒子イムノアッセイ、特にARCHITECT(登録商標)自動分析器(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)を用いるものは、好ましいイムノアッセイの例である。
【0092】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(それぞれmAbおよびpAb)は、当技術分野において知られている方法に従ってイムノアッセイにおける使用のために作製することができる。例えばアジュバントを含む組成物中の、NGAL、例えば、組換えにより作製されたNGAL、特に、組換えにより作製されたヒトNGALは、宿主動物、例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、モルモットまたはウマの、1つ以上の部位に注射され得る。更なる注射を規則的または不規則な間隔で同一または他の部位に行い、その後放血を行って、抗体力価を、最適な力価が達されたと判定されるまで評価する。抗体は、宿主動物を放血させて大量の抗血清を得ることによって、または体細胞ハイブリダイゼーション技術もしくは当技術分野において知られている他の技術によって得られる。例えば、不死化細胞、例えば骨髄腫細胞による標準体細胞融合手法によって抗体産生細胞を融合してハイブリドーマ細胞を得ることができる。かかる技術は当技術分野において周知であり、それらの技術としては、例えば、Kohler and Milstein、Nature 256:495−497(1975))によって最初に開発されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら、Immunology Today 4:72(1983))およびヒトmAbsを作製するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.77−96頁(1985))が挙げられる。mAbハイブリドーマを作製するための技術は、当業者に周知である(例えば、Kenneth,in Monoclonal Antibodies:A New Dimension in Biological Analyses、Plenum Pub.Corp.、New York(1980)を参照されたい。)。代替として、抗NGAL抗体は、多くの供給源の内のいずれか1つ、例えば、とりわけR&D Systems(Minneapolis、MN)から商業的に得ることができる。
【0093】
サンドイッチイムノアッセイフォーマットにおいて、典型的には少なくとも2種の抗体を用いて、対象となる分析物、この場合はNGAL(またはこの断片)を分離し、定量する。更に具体的には、2種の抗体は、対象となる分析物上の異なるエピトープと結合し、それによって「サンドイッチ」と呼ばれるもの、すなわち、抗体−分析物−抗体を形成する。対象となる分析物に結合し、対象となる分析物との接触の前または後に典型的には基質に結合する1種以上の抗体は、「捕捉抗体」または「複数の捕捉抗体」と呼ばれ、一方、標識され、捕捉抗体が結合した分析物と結合する1種以上の他の抗体は、「検出抗体」、「複数の検出抗体」、「コンジュゲート」または「複数のコンジュゲート」と呼ばれる。好ましくは、分析物への1つの抗体の結合は、分析物へのいずれの他の抗体の結合とも干渉しない。また、好ましくは、少なくとも捕捉抗体は、試料中に存在すると思われる分析物、すなわちNGAL(またはこの断片)の最大量のモル過剰量で存在する。検出抗体は、典型的には分析物−捕捉抗体複合体との接触の前に標識されるが、検出抗体は、分析物−捕捉抗体複合体の形成と同時に、またはその後に続いて標識され得る。
【0094】
一般的に言って、NGALまたはこの断片についてアッセイされる(例えば、NGALまたはこの断片を含有することが推測される。)試験試料に、少なくとも1種の捕捉抗体(または抗体)および(第2の検出抗体または第3の検出抗体のいずれかである。)少なくとも1種の検出抗体を、同時または逐次的に、任意の順序で接触させることができる。例えば、試験試料に、最初に少なくとも1種の捕捉抗体を接触させ、次いで少なくとも1種の検出抗体を(逐次的に)接触させることができる。代替として、試験試料に、最初に少なくとも1種の検出抗体を接触させ、次いで少なくとも1種の捕捉抗体を(逐次的に)接触させることができる。更に別の代替において、試験試料を捕捉抗体および検出抗体に同時に接触させることができる。
【0095】
サンドイッチアッセイフォーマットにおいて、NGALまたはこの断片を含有することが推測される試験試料を、第1の抗体/NGAL(またはこの断片)複合体の形成を可能にする条件下で少なくとも1種の第1の捕捉抗体に最初に接触させる。複数の捕捉抗体が用いられる場合、第1の多重捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)複合体が形成される。サンドイッチアッセイにおいて、抗体、好ましくは少なくとも1種の捕捉抗体は、試験試料中において予想されるNGAL(またはこの断片)の最大量のモル過剰量で使用される。例えば、緩衝液(例えば、微粒子コーティング緩衝液)1mL当たり約5μg/mLから約1mg/mLの抗体が使用され得る。
【0096】
1種の抗体のみによる結合が必要とされるという理由から小さい分析物を測定するために用いられる競合的阻害イムノアッセイは、逐次的および古典的なフォーマットを含む。逐次的な競合的阻害イムノアッセイにおいて、対象となる分析物に対する捕捉mAbは、マイクロタイタープレートのウェル上に被覆される。対象となる分析物を含有する試料がウェルに加えられる場合、対象となる分析物は捕捉mAbに結合する。洗浄後、既知量の標識された(例えば、ビオチンまたはホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP))分析物は、ウェルに加えられる。酵素標識のための基質は、シグナルを生成するために必要である。HRPのための適切な基質の例は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)である。洗浄後、標識された分析物によって生成されたシグナルが測定され、試料中の分析物の量に反比例する。古典的な競合的阻害イムノアッセイにおいて、対象となる分析物に対するmAbは、マイクロタイタープレートのウェル上に被覆される。しかし、逐次的な競合的阻害イムノアッセイと異なり、試料および標識された分析物は、同時にウェルに加えられる。試料中のいかなる分析物も、捕捉mAbへの結合について、標識された分析物と競合する。洗浄後、標識された分析物によって生成されたシグナルが測定され、試料中の分析物の量に反比例する。
【0097】
任意に、試験試料に少なくとも1種の捕捉抗体(例えば、第1の捕捉抗体)を接触させる前に、少なくとも1種の捕捉抗体を、試験試料からの第1の抗体/NGAL(またはこの断片)複合体の分離を容易にする固体支持体に結合させることができる。捕捉抗体が結合する基質は、試料からの捕捉抗体−分析物複合体の分離を容易にする任意の適切な固体支持体または固相であってもよい。例としては、プレートのウェル、例えばマイクロタイタープレート、試験管、多孔性ゲル(例えば、シリカゲル、アガロース、デキストランもしくはゼラチン)、ポリマーフィルム(例えば、ポリアクリルアミド)、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズもしくは磁気ビーズ)、フィルタ/膜片(例えば、ニトロセルロースもしくはナイロン)、微粒子(例えば、ラテックス粒子、磁化可能微粒子(例えば、酸化第二鉄コアもしくは酸化クロムコアを有し、ホモポリマーコートもしくはヘテロポリマーコートを有し、約1−10ミクロンの半径を有する微粒子)、ヒツジ赤血球または(ピルビンアルデヒドおよびホルムアルデヒドによって「固定」された赤血球である。)DURACYTES(登録商標)(Abbott Laboratories))が挙げられる。基質は、抗原に結合するための適切な表面親和性を有し、検出抗体による接触を可能にする十分な多孔性を有する適切な多孔性材料を含むことができる。微孔性材料が一般に好ましいが、水和状態のゼラチン状材料が使用されてもよい。好ましくは、かかる多孔性基質は、約0.01から約0.5mm、好ましくは約0.1mmの厚みを有するシートの形態である。細孔径は非常に様々であってよいが、好ましくは、細孔径は約0.025から約15ミクロン、より好ましくは約0.15から約15ミクロンである。かかる基質の表面は、基質との抗体の共有結合を引き起こす化学プロセスによって活性化され得る。一般に疎水性力を通じた吸着による基質への抗原または抗体の非可逆的結合が起こるが、かかる結合がIL−18に結合する抗体の能力に干渉しないという条件で、代わりに化学カップリング剤または他の手段を用いて抗体を基質に共有結合させることができる。代替として、抗体は、(例えば、Power−Bind(商標)−SA−MPストレプトアビジンによって被覆された微粒子(Seradyn、Indianapolis、IN)を用いて)ストレプトアビジンもしくはビオチンによってまたは抗種特異的mAbsによって予め被覆された微粒子と結合させることができる。必要に応じて、基質を誘導体化させて、抗体上の様々な官能基との反応性を可能にすることができる。かかる誘導体化は、ある種のカップリング剤の使用を必要とするが、それらのカップリング剤の例としては、無水マレイン酸、N−ヒドロキシスクシンイミドおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
NGAL(またはこの断片)についてアッセイされる試験試料を少なくとも1種の捕捉抗体(例えば、第1の捕捉抗体)に接触させた後、混合物は、第1の抗体(または多重抗体)−NGAL(またはこの断片)複合体の形成を可能にするために温置される。温置は、約4.5から約10.0のpH、約2℃から約45℃の温度で、約一(1)分間から約十八(18)時間、好ましくは約1から約24分間、最も好ましくは約4から約18分間の期間実施され得る。本明細書において記載されているイムノアッセイは、1つの段階で(試験試料、少なくとも1種の捕捉抗体および少なくとも1種の検出抗体が全て、逐次的にもしくは同時に反応容器に加えられることを意味する。)または1つを超える段階、例えば2つの段階、3つの段階等で実施され得る。
【0099】
(第1のまたは多重)捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)複合体の形成後、次いで、((第1のまたは多重)捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/第2の抗体検出複合体の形成を可能にする条件下で)複合体を少なくとも1種の検出抗体に接触させる。少なくとも1種の検出抗体は、イムノアッセイにおいて使用される第2、第3、第4等の抗体であり得る。捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)複合体に複数の検出抗体を接触させる場合、次いで、(第1のまたは多重)捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/(多重)検出抗体複合体が形成される。捕捉抗体(例えば、第1の捕捉抗体)と同様に、少なくとも第2の(および後続の)検出抗体を捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)複合体と接触させる場合、(第1のまたは多重)捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/(第2のまたは多重)検出抗体複合体の形成のために、上記の条件と類似の条件下での温置の期間が必要とされる。好ましくは、少なくとも1種の検出抗体は、検出可能な標識を含有する。検出可能な標識は、(第1のまたは多重)捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/(第2のまたは多重)検出抗体複合体の形成の前に、同時にまたはその後に、少なくとも1種の検出抗体(例えば、第2の検出抗体)に結合させることができる。当技術分野において知られているあらゆる検出可能な標識が使用され得る(Polak and Van Noorden(1997)およびHaugland(1996)を含む上記考察を参照されたい。)。
【0100】
検出可能な標識は、直接またはカップリング剤を介して抗体に結合させることができる。使用され得るカップリング剤の例は、Sigma−Aldrich、St.Louis、MOから商業的に入手可能なEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、塩酸塩)である。使用され得る他のカップリング剤は、当技術分野において知られている。検出可能な標識を抗体に結合するための方法は、当技術分野において知られている。更に、CPSP−アクリジニウムエステルまたはSPSP−アクリジニウムエステル等、抗体への検出可能な標識のカップリングを容易にする末端基を既に含有する多くの検出可能な標識を購入または合成することができる。
【0101】
(第1のまたは多重)捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/(第2のまたは多重)検出抗体複合体は、標識の定量の前に試験試料の残部から分離され得るが、そうしなければならないというわけではない。例えば、少なくとも1種の捕捉抗体(例えば、第1の捕捉抗体)を固体支持体、例えばウェルまたはビーズに結合させる場合、固体支持体との接触から(試験試料の)液体を除去することによって分離が達成され得る。代替として、少なくとも第1の捕捉抗体を固体支持体に結合させる場合、それにNGAL(またはこの断片)含有試料および少なくとも1種の第2の検出抗体を同時に接触させて、第1の(多重)抗体/NGAL(またはこの断片)/第2の(多重)抗体複合体を形成し、その後、固体支持体との接触からの液体(試験試料)の除去を行うことができる。少なくとも1種の第1の捕捉抗体を固体支持体に結合させない場合、(第1のまたは多重)捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/(第2のまたは多重)検出抗体複合体は、標識の量の定量のために試験試料から除去する必要はない。
【0102】
標識捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/検出抗体複合体(例えば、第1の捕捉抗体/NGAL(またはこの断片)/第2の検出抗体複合体)の形成の後、複合体の標識の量は、当技術分野において知られている技術を用いて定量される。例えば、酵素標識を用いる場合、標識複合体を、発色等の定量可能な反応を与えるその標識用の基質と反応させる。標識が放射性標識である場合、その標識は、シンチレーションカウンタを用いて定量される。標識が蛍光標識である場合、その標識は、(「励起波長」として知られている。)1つの色の光によって標識を刺激し、その刺激に応答して標識によって放出された(「発光波長」として知られている。)別の色を検出することによって定量される。その標識が化学発光標識である場合、その標識は、視覚的にまたはルミノメータ、X線用フィルム、高速写真フィルム、CCDカメラ等を用いることによって、放出された光を検出して定量される。一旦、複合体中の標識の量が定量化されると、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度は、既知濃度のNGAL(またはこの断片)の連続希釈物を用いて生成された標準曲線を用いることによって決定される。NGAL(またはこの断片)の連続希釈物を用いる以外に、標準曲線は、重量測定によって、質量分析によって、および当技術分野において知られている他の技術によって生成され得る。
【0103】
NGALアッセイは、遊離NGALのみに結合し、メタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)またはゼラチナーゼBに結合したNGAL等の結合したNGALを含まない捕捉抗体を利用するモノクローナル抗体(mAb)サンドイッチを用いることができる。捕捉された遊離NGALの量は、アクリジニル化抗NGAL mAbによって検出され得る。
【0104】
FPIAは、競合的結合イムノアッセイの原理に基づく。蛍光標識された化合物は、直線偏光によって励起される際、その回転速度に反比例した偏光度を有する蛍光を放出する。
【0105】
蛍光標識トレーサー−抗体複合体が直線偏光によって励起する場合、発蛍光団は、光を吸収する時間および光を放出する時間の間に回転を余儀なくされるので、放出光は高度に偏光したままである。「遊離」トレーサー化合物(すなわち、抗体に結合していない化合物)が、直線偏光によって励起する場合、その回転は、競合的結合イムノアッセイにおいて生成された対応するトレーサー−抗体コンジュゲートよりずっと速い。FPIAは、特別な操作および廃棄を必要とする放射性物質がないので、RIAより有利である。更に、FPIAは、容易におよび迅速に実施され得る均一アッセイである。
【0106】
方法は、試験試料を得た患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することを更に含むことができる。方法が、試験試料を得た患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、方法は、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む。
【0107】
本明細書において記載されている方法は、対象から得られた試験試料中のNGALの量を検出するためのまたは定量するためのアッセイ(例えば、すなわち、事前に、同時にまたは事後に実施されたアッセイ)から得られた結果の信頼性を決定するために用いられ得る。具体的には、かかる方法は、同じ対象から試験試料を得ること(単一の試験試料が、対象から得られ、自己抗体アッセイとNGALアッセイ間で分割され得る。)および本明細書において記載されているアッセイの内のいずれかまたは当技術分野において知られている自己抗体についての(イムノアッセイであってもなくてもよい。)任意の代替のアッセイを用いてNGALと反応する少なくとも1種の自己抗体の存在または濃度を決定することを含む。少なくとも1種の自己抗体の濃度が所定のレベルと比較して高い場合、別々のアッセイによって決定されたNGALの濃度は信頼できないと考えられる。しかし、少なくとも1種の自己抗体の濃度が所定のレベル以下である場合、別々のアッセイによって決定されたNGALの濃度は信頼できると考えられる。
【0108】
一般に、所定のレベルは、NGALまたはこの断片と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイした際に得られた結果を評価するための基準として用いられ得る。一般に、かかる比較を行う際、所定のレベルは、疾患、障害もしくは状態(例えば、心臓血管疾患または腎疾患)の特定のステージもしくはエンドポイントと、または特定の臨床的徴候と、分析物(例えば、自己抗体)の存在、量もしくは濃度との連関または関連が為され得るように十分な数の回数および適切な条件下で特定のアッセイを行うことによって得られる。典型的には、所定のレベルは、参照対象(または対象の集団)のアッセイによって得られる。
【0109】
NGAL(またはこの断片)と反応性の少なくとも1種の自己抗体に関して、かかる自己抗体は、NGALが何らかの機能または影響を有する心臓血管系または他の主要な器官系、例えば排出系(例えば、腎臓)に関連付けられた種々のインビボでの標的を対象とすることができることが想定される。従って、特定の自己抗体は、所定のレベルに対して増加または減少し得る。
【0110】
特に、疾患の進行および/または処置をモニタするために用いられる所定のレベルに関して、NGALまたはこの断片と反応性の自己抗体の濃度または量は、「不変である」、「好ましい」(または「好ましく変更される」)または「好ましくない」(または「不利に変更される」)。一般に、本明細書において記載されている自己抗体は、NGALに特異的な心臓生理学的病状を伴うと考えられ、いわゆる正常母集団の低い割合(例えば、約5%未満、とりわけ約0.5%から約5%)において上昇し、NGALの存在に対して陽性反応を示している集団のより高い割合(約15%未満、とりわけ約10から約15%)において上昇するので、ほとんどの場合、各場合において所定のレベルまたは以前の測定値に対して、「好ましくない」(「不利に変更される」)は、自己抗体の量または濃度の増加または上昇に対応し、「好ましい」(「好ましく変更される」)は、自己抗体の量または濃度の減少または低下に対応し得る。
【0111】
本明細書において使用されている「上昇」または「増加」という用語は、典型的なもしくは正常なレベルもしくは範囲(例えば、所定のレベル)より高い、または別の参照レベルもしくは範囲(例えば、以前のまたはベースライン時の試料)より高い試験試料中の濃度または量を指す。「下降」または「低下」という用語は、典型的なもしくは正常なレベルもしくは範囲(例えば、所定のレベル)より高い、または別の参照レベルもしくは範囲(例えば、以前のまたはベースライン時の試料)より高い試験試料中の濃度または量を指す。「変更」という用語は、典型的なもしくは正常なレベルもしくは範囲(例えば、所定のレベル)を超えて、または別の参照レベルもしくは範囲(例えば、以前のもしくはベースライン時の試料)を超えて変更(増加または減少)された試料の濃度または量を指す。
【0112】
NGALおよびこれと反応性の自己抗体のための典型的なまたは正常なレベルまたは範囲は、標準的技法に従って定義される。幾つかの例における自己抗体のレベルが非常に低いので、実験誤差または標本分散によって説明することができない、典型的なもしくは正常なレベルもしくは範囲または参照レベルもしくは範囲と比較した何らかの正味の変化がある場合、いわゆる変更されたレベルまたは変更が生じたと考えることができる。従って、特定の試料中において測定されたレベルは、いわゆる正常な対象の類似の試料中において決定されたレベルまたはレベルの範囲と比較される。この状況において、「正常な対象」は、例えば、検出可能な心臓血管の病状または腎臓の病状のない個体であり、(「対照」と称されることもある。)「正常な」患者または集団は、例えば、検出可能な心臓血管または腎臓の病状を示さない患者または集団(複数可)である。更に、NGALに対する1種以上の自己抗体が、ヒト集団の大部分において高いレベルで通常見出されない場合、「正常な対象」は、実質的な検出可能な増加または上昇した濃度または量のNGAL自己抗体のない個体であると考えることができ、(「対照」と称されることもある。)「正常な」患者または集団は、NGAL自己抗体の実質的な検出可能な増加または上昇した濃度または量を示さない患者または集団(複数可)である。「見かけ上正常な対象」は、自己抗体が評価されなかった、または評価されないでいる対象である。分析物が一般に検知されない(例えば、正常レベルがゼロであり、または正規母集団の約25から約75パーセント点の範囲内である。)が、試験試料中において検出される場合、ならびに分析物が正常レベルより高く試験試料中において存在する場合、分析物のレベルは「上昇する」と言われる。
【0113】
前述のように、本明細書において記載されているNGALまたはこの断片と反応性の1種以上の自己抗体は、NGALが何らかの機能または影響を有する心臓血管系または他の主要な器官系(例えば、排出系、特に腎臓)に関連付けられた種々のインビボでの標的を対象とすることができると考えられる。従って、とりわけ、本開示は、例えば、本明細書において定義されている心臓血管疾患もしくは腎疾患を有する、または心臓血管疾患もしくは腎疾患を有するリスクがある対象についてのスクリーニングの方法を提供するものである。
【0114】
本明細書において記載されている試験方法の内のいずれかは、理学的検査を含むが限定されない1つ以上の他の試験および/または心臓血管疾患もしくは腎疾患の鑑別診断を可能にするための病歴の取得と共に実施され得る。これらの障害を診断する際に用いられる様々な試験およびパラメータは、当業者に周知である。更に、上記方法の内のいずれかは、無症状の対象、または心臓血管疾患もしくは腎疾患に関連する1つ以上のリスク因子を有する、またはそれらの疾患の症状を有する対象の試料において実施され得る。
【0115】
特定の実施形態において、対象が、NGALに対する好ましくないレベルの1種以上の自己抗体を有すると判定される場合、対象は、心臓血管疾患の1つ以上の更なる指標、例えば、ミオグロビン、CK−MB(クレアチンキナーゼ筋肉−脳)、BNP(脳ナトリウム排泄増加性ペプチド)、CRP(C反応性タンパク質)、心筋トロポニンI(cTnI)、心筋トロポニンT(cTnT)、血液酸素レベル、心臓イメージング、心電図検査および当技術分野において知られている任意の他の指標について任意に評価される。代替としてまたはさらには、対象は、腎疾患の1つ以上の更なる指標、例えば、蛋白尿、血尿、血清クレアチン、シスタチンC、S−アデノシルホモシステイン、ホモシステイン、異常に高度なボディマスインデックス(BMI)、肥満および当技術分野において知られている他の指標について任意に評価される。
【0116】
しかし、NGAL(またはこの断片)に対する好ましくないレベルの1種以上の自己抗体の以前の検出がなかった場合でも、かかる試験は任意に実施され得る。例えば、NGAL(またはこの断片)と反応性の少なくとも1種の自己抗体の検出がない場合でも、心臓血管疾患または腎疾患に関連する1種以上のマーカーの測定と共に本明細書において記載されている方法の内のいずれかを用いることができる。心臓血管疾患に対するマーカーとしては、とりわけ、ナトリウム利尿ペプチドまたはこの断片(例えば、コンビネーション抗原/抗体アッセイまたは独立試験)ならびに(限定されないが)妊娠関連血漿タンパク質A(PAPP−A)、インターロイキン8(IL−8)、IL−10、インターロイキン−18(IL−18/IL−18b)、虚血修飾アルブミン(IMA)、ICAM−1(細胞間細胞接着分子−1)、VCAM−1(血管細胞接着分子−1)、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、E−セレクチン、P−セレクチン、フィブリノゲン、血清アミロイドA(SAA)、MPO(ミエロペルオキシダーゼ)、LpPLA2(リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2)、GP−BB(グリコーゲンホスホリラーゼアイソザイムBB)、IL1RA、TAFI(トロンビン活性化線溶阻害因子)、可溶性フィブリン、抗oxLDL(酸化低密度リポタンパク質に対する抗体)、MCP−1(単球走化性タンパク質−1)、凝血促進組織因子(TF)、MMP−9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)、Ang−2(アンギオポエチン−2)、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)、VLDL(極低密度リポタンパク質)およびPAI−1(プラスミノーゲン活性化因子抑制因子−1)が挙げられる。
【0117】
従って、一実施形態において、
(a)NGALと反応する少なくとも1種の自己抗体の、試験試料中の量または濃度を決定すること、および
(b)前記量または濃度が所定のレベルと比較して高い場合、別々のアッセイによって決定されたNGALの量または濃度が信頼できないと考えられ、(a)における量または濃度が所定のレベル以下である場合、別々のアッセイによって決定されたNGALの量または濃度が信頼できると考えられる、(a)における量または濃度を所定のレベルと比較すること
を含む、対象から得られた試験試料中のNGALの量または濃度を検出または定量するために、事前に、同時にまたは事後に行われた別々のアッセイから得られた結果の信頼性を決定するための方法が、本明細書において提供される。
【0118】
従って、対象が、心臓血管疾患もしくは腎疾患を有するか否か、または心臓血管疾患もしくは腎疾患を発生するリスクがあるか否かを決定するために、本明細書において記載されている方法を用いることもできる。具体的には、かかる方法は、
(a)(例えば、本明細書において記載されている方法または当技術分野において知られている方法を用いて)NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の、対象の試験試料中の濃度または量を決定する段階、および
(b)段階(a)において決定されたヒトNGALと反応性の1種以上の自己抗体の濃度もしくは量が所定のレベルに対して好ましい場合、対象が、心臓血管疾患もしくは腎疾患を有さない、または心臓血管疾患もしくは腎疾患のリスクがないと判定される、段階(a)において決定されたNGAL(もしくはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の濃度もしくは量を所定のレベルと比較する段階
を含むことができる。しかし、段階(a)において決定されたNGALと反応性の1種以上の自己抗体の濃度もしくは量が所定のレベルに対して好ましくない場合、対象は、心臓血管疾患もしくは腎疾患を有する、または心臓血管疾患もしくは腎疾患のリスクがあると判定される。
【0119】
更に、対象における疾患の進行をモニタする方法が、本明細書において提供される。最適には、方法は、
(a)NGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の、対象の試験試料中の濃度または量を決定する段階、
(b)NGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の、対象の後の試験試料中の濃度または量を決定する段階、および
(c)段階(a)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度もしくは量と比較した際に段階(b)において決定された濃度もしくは量が変化しない、または好ましくない場合、対象における疾患が継続した、進行したもしくは悪化したと判定される、段階(b)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度もしくは量を、段階(a)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度もしくは量と比較する段階
を含む。比較によって、段階(a)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量と比較した際に、段階(b)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が好ましい場合、対象における疾患は、中断した、消退したまたは改善したと決定される。
【0120】
任意に、方法は、段階(b)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量を、例えば所定のレベルと比較することを更に含む。更に、任意に、方法は、比較が、段階(b)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が例えば所定のレベルに対して不利に変更されることを示す場合、ある期間にわたって1種以上の医薬組成物によって対象を処置することを含む。
【0121】
なお更に、方法を用いて、1種以上の医薬組成物による処置を受けている対象における処置をモニタすることができる。具体的には、かかる方法は、1種以上の医薬組成物を対象に投与する前に対象から第1の試験試料を提供することを含む。次に、(例えば、本明細書において記載されている方法または当技術分野において知られている方法を用いて)NGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の、対象の第1の試験試料中の濃度または量が決定される。NGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が決定された後、次いで、任意に、NGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が所定のレベルと比較される。第1の試験試料中において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が所定のレベルより低い場合、対象は、1種以上の医薬組成物で処置されない。しかし、第1の試験試料中において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が所定のレベルより高い場合、対象は、ある期間にわたって1種以上の医薬組成物で処置される。対象が1種以上の医薬組成物で処置される期間は、当業者によって決定され得る(例えば、この期間は、約七(7)日間から約二年間、好ましくは約十四(14)日間から約一(1)年間であり得る。)。
【0122】
1種以上の医薬組成物による処置中に、次いで第2のおよび後続の試験試料が対象から得られる。試験試料の数および前記試験試料が対象から得られた時間は、重要でない。例えば、対象に1種以上の医薬組成物を最初に投与した七(7)日後に第2の試験試料を得ることができ、対象に1種以上の医薬組成物を最初に投与した二(2)週間後に第3の試験試料を得ることができ、対象に1種以上の医薬組成物を最初に投与した三(3)週間後に第4の試験試料を得ることができ、対象に1種以上の医薬組成物を最初に投与した四(4)週間後に第5の試験試料を得ることができる、等である。
【0123】
各第2のまたは後続の試験試料が対象から得られた後、NGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が、(例えば、本明細書において記載されている方法または当技術分野において知られている方法を用いて)第2のまたは後続の試験試料において決定される。次いで、第2のおよび後続の試験試料の内の各々において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が、第1の試験試料(例えば、最初に、任意に所定のレベルと比較された試験試料)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量と比較される。段階(a)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量と比較した際に段階(c)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量が好ましい場合、対象における疾患は、中断した、消退したまたは改善したと判定され、対象に段階(b)の1種以上の医薬組成物を投与することを継続するべきである。しかし、段階(a)において決定されたNGALと反応性の少なくとも1種の自己抗体の濃度または量と比較した際に段階(c)において決定された濃度もしくは量が変化しない、または好ましくない場合、対象における疾患は、継続した、進行したもしくは悪化したと決定され、より高濃度の、段階(b)において対象に投与された1種以上の医薬組成物によって対象を処置するべきであり、または段階(b)において対象に投与された1種以上の医薬組成物と異なる1種以上の医薬組成物によって対象を処置するべきである。具体的には、対象は、対象がその対象のNGAL自己抗体レベルを低下または下降させるために事前に受けた1種以上の医薬組成物と異なる1種以上の医薬組成物によって処置され得る。
【0124】
一般に、反復試験(例えば、疾患進行および/または処置に対する応答のモニタリング)を行うことができるアッセイのために、第2のまたは後続の試験試料は、対象から第1の試験試料を得た後の適時において得られる。具体的には、対象の第2の試験試料は、対象から第1の試験試料を得た数分後、数時間後、数日後、数週間後または数年後に得ることができる。例えば、第2の試験試料は、対象から第1の試験試料を得た約1分後、約5分後、約10分後、約15分後、約30分後、約45分後、約60分後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約13時間後、約14時間後、約15時間後、約16時間後、約17時間後、約18時間後、19時間後、約20時間後、約21時間後、約22時間後、約23時間後、約24時間後、約2日後、約3日後、約4日後、約5日後、約6日後、約7日後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、約6週間後、約7週間後、約8週間後、約9週間後、約10週間後、約11週間後、約12週間後、約13週間後、約14週間後、約15週間後、約16週間後、約17週間後、約18週間後、約19週間後、約20週間後、約21週間後、約22週間後、約23週間後、約24週間後、約25週間後、約26週間後、約27週間後、約28週間後、約29週間後、約30週間後、約31週間後、約32週間後、約33週間後、約34週間後、約35週間後、約36週間後、約37週間後、約38週間後、約39週間後、約40週間後、約41週間後、約42週間後、約43週間後、約44週間後、約45週間後、約46週間後、約47週間後、約48週間後、約49週間後、約50週間後、約51週間後、約52週間後、約1.5年後、約2年後、約2.5年後、約3.0年後、約3.5年後、約4.0年後、約4.5年後、約5.0年後、約5.5年後、約6.0年後、約6.5年後、約7.0年後、約7.5年後、約8.0年後、約8.5年後、約9.0年後、約9.5年後または約10.0年後の時点において対象から得ることができる。上記のアッセイは、疾患進行をモニタするために用いられる場合、急性状態を患っている対象における疾患の進行をモニタするために用いられ得る。救急状態としても知られている急性状態は、例えば心臓血管系または排出系を含む急性の生命を脅かす疾患または他の危険な医学的状態を指す。典型的には、救急状態は、(救急室、集中治療部、外傷センターまたは他の緊急治療環境を含むが、これらに限定されない。)病院をベースとする環境における緊急の医学的介入または医療補助者もしくは他の分野をベースとする医療従事者による管理を必要とするそれらの状態を指す。救急状態に対して、反復モニタリングが、一般に、より短い時間枠、すなわち、数分間、数時間または数日間(例えば、約1分間、約5分間、約10分間、約15分間、約30分間、約45分間、約60分間、約2時間、約3時間、約4時間、4約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間または約7日間)の中で行われ、同様の最初のアッセイが、一般に、より短い時間枠、例えば、疾患または状態の発症の約数分間、数時間または数日間の中で行われる。
【0125】
また、アッセイは、慢性状態または非急性状態を患っている対象における疾患の進行をモニタするために用いることもできる。非救急状態または非急性状態は、例えば心臓血管系および/または排出系を含む急性の生命を脅かす疾患または他の危険な医学的状態以外の状態を指す。典型的には、非急性状態としては、より長期のまたは慢性の状態が挙げられる。非急性状態に対して、反復モニタリングが、一般に、より長い時間枠、例えば、数時間、数日間、数週間、数カ月間または数年間(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約21週間、約22週間、約23週間、約24週間、約25週間、約26週間、約27週間、約28週間、約29週間、約30週間、約31週間、約32週間、約33週間、約34週間、約35週間、約36週間、約37週間、約38週間、約39週間、約40週間、約41週間、約42週間、約43週間、約44週間、約45週間、約46週間、約47週間、約48週間、約49週間、約50週間、約51週間、約52週間、約1.5年間、約2年間、約2.5年間、約3.0年間、約3.5年間、約4.0年間、約4.5年間、約5.0年間、約5.5年間、約6.0年間、約6.5年間、約7.0年間、約7.5年間、約8.0年間、約8.5年間、約9.0年間、約9.5年間または約10.0年間)で行われ、同様の最初のアッセイが、一般に、より長い時間枠、例えば、疾患または状態の発症の約数時間、数日間、数カ月間または数年間の中で行われる。
【0126】
更に、上記のアッセイは、全血、血清または血漿である、対象から得られた第1の試験試料を用いて実施され得る。次いで、上記のアッセイは、全血、血清または血漿(例えば、尿)以外のものである対象から得られた第2の試験試料を用いて反復され得る。第1の試験試料および第2の試験試料を用いたアッセイから得られた結果が比較され得る。その比較を用いて、対象における疾患または状態の状況を評価することができる。
【0127】
更に、本発明の開示は、疾患(例えば、心臓血管疾患または腎疾患)に罹患しやすい、または疾患を患っている対象にとって処置が有利であり得るかどうかを決定する方法にも関する。特に、本開示は、NGALコンパニオン診断方法および製品に関する。従って、本明細書において記載されている「対象における疾患の処置をモニタする」方法は、更に最適には、治療のための候補を選択または同定することを包含することもできる。
【0128】
従って、特定の実施形態において、本開示はまた、心臓血管疾患もしくは腎疾患を有する、または心臓血管疾患もしくは腎疾患のリスクがある対象が治療のための候補であるかどうかを決定する方法をも提供する。一般に、その対象は、心臓血管疾患の何らかの症状を経験している対象、または心臓血管疾患もしくは腎疾患を有するまたは心臓血管疾患もしくは腎疾患のリスクがあると実際に診断されている対象、および/または本明細書において記載されているNGALもしくはこの断片と反応性の少なくとも1種の自己抗体の好ましくない濃度もしくは量を示す対象である。
【0129】
方法は、本明細書において記載されているアッセイを任意に含み、分析物は1種以上の医薬組成物による(例えば、特にNGALを含む作用機序に関連した医薬品による。)、免疫抑制療法を用いるまたは免疫吸着療法による対象の処置の前および後に評価され、または分析物はかかる処置の後に評価され、分析物の濃度または量は所定のレベルに対して比較される。処置の後に認められた分析物の量の好ましくない濃度によって、更なるまたは継続した処置を受けることが対象に有利ではないことが確認され、一方、処置の後で認められた分析物の好ましい濃度または量によって、更なるまたは継続した処置を受けることが対象に有利であることが確認される。この確認は、臨床試験の管理および改善された患者ケアの提供の助けとなる。
【0130】
本明細書におけるある種の実施形態は、心臓血管疾患または腎疾患を評価するために用いられる際に有利であるが、一方でアッセイおよびキットを、他の疾患、障害および状態、例えば、癌、敗血症、ならびにNGALまたはそれに対する自己抗体の評価を伴う可能性があるあらゆる疾患、障害または状態におけるNGAL自己抗体を評価するために任意に用いることもできることは、言うまでもない。
【0131】
より詳しくは、腎障害、腎疾患および腎傷害の評価(例えば、米国特許出願公開第2008/0090304号、米国特許出願公開第2008/0014644号、米国特許出願公開第2008/0014604号、米国特許出願公開第2007/0254370号および米国特許出願公開第2007/0037232号を参照されたい。)の他に、本明細書において記載されているアッセイおよびアッセイ成分を、任意の他のNGALもしくはNGAL自己抗体アッセイまたはNGALレベルもしくは濃度の評価が有益であることを証明することができる任意の他の状況、とりわけ、例えば、癌関連アッセイ(例えば、一般に、またはより具体的には、膵癌、乳癌、卵巣/子宮癌、白血病、大腸癌および脳癌が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、米国特許出願公開第2007/0196876号を参照、また、米国特許第5,627,034号および米国特許第5,846,739号も参照されたい。)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックおよび多臓器不全症候群(MODS)の診断(例えば、米国特許出願公開第2008/0050832号および米国特許出願公開第2007/0092911号参照、また、米国特許第6,136,526号を参照されたい。)、血液学的適用(例えば、細胞型の推定)、子癇前症、肥満(代謝症候群)、インスリン抵抗性、高血糖、組織リモデリング((MMP−9と複合体を形成する場合)、例えば、米国特許出願公開第2007/0105166号および米国特許第7,153,660号を参照されたい。)、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症)、過敏性腸症候群(例えば、米国特許出願公開第2008/0166719号および米国特許出願公開第2008/0085524号を参照されたい。)、神経変性疾患、呼吸器疾患、炎症、感染症、歯周疾患(例えば、米国特許第5,866,432号を参照されたい。)および静脈血栓塞栓性疾患等の心臓血管疾患(例えば、米国特許出願公開第2007/0269836を参照されたい。)の評価において、任意に用いることもできる。
【0132】
更に、アッセイ希少試薬NGAL抗原、抗NGAL抗体およびNGALアッセイに関する、全て2007年10月19日に出願された米国仮特許出願第60/981,470号、米国仮特許出願第60/981,471号および米国仮特許出願第60/981,473号、ならびに全て2008年4月16日に出願された米国特許出願第12/104,408号、米国特許出願第12/104,410号および米国特許出願第12/104,413号の教示の内のいずれも、本明細書において記載されている方法およびキットにおいて適用することができ、上記に関するそれらの教示に関して参照により完全に各々組み込まれている。
【0133】
ヒトNGALまたはこの断片と反応性の単離された自己抗体
【0134】
また、単離されたヒトNGAL自己抗体も提供される。単離されたヒトNGAL自己抗体は、IgG抗体、IgA抗体またはIgM抗体であり得る。好ましくは、単離された自己抗体はIgG抗体である。自己抗体は、当技術分野において知られている常法に従う技術を用いて得ることができる。例えば、自己抗体は、かかる自己抗体をそれらの環境から、例えばヒトNGAL自己抗体を含有する混合物から分離することによって得ることができる。かかる混合物は、通常の供血中に1以上の対象から得ることができる。更に、かかる混合物は、ヒトNGAL(またはこの断片もしくは誘導体)による処置を受けている1以上の対象から得ることができる。代替として、混合物は、心臓血管疾患もしくは腎疾患の臨床徴候または正常集団についての臨床的に許容し得る値より高いNGALの内在濃度を有する1以上の対象から得ることができる。かかる自己抗体を含有する混合物は、かかる対象からの新たに回収されたもしくは保存された血液、血漿または血清から得られ得、本明細書において記載されている方法を用いて容易に同定され得る。自己抗体は、通常の免疫グロブリン手法、例えば、塩分別(例えば、硫安沈殿)、免疫沈降、固相上のアフィニティーキャプチャー、ゲル電気泳動、透析またはクロマトグラフィー(例えば、プロテインA−セファロースクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィー(immunoffinity chromatography)、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等)を用いて単離され得る。
【0135】
特に、本明細書において記載されている特異的結合パートナーは、自己抗体の単離および/または単離された自己抗体の同定の確認における標準技術を用いて用いられ得る。かかる自己抗体のアミノ酸配列は、当技術分野において知られている通常の技術を用いて、例えば自動エドマン分解によって決定され得る。代替として、かかる抗体のアミノ酸配列は、Adamczykら、J.Immunol.Methods 260:235−49(2002)、Adamczykら、Rapid Comm.Mass Spectrom.14:999−1007(2000)、Adamczykら、J.Immunol.Methods 237:95−104(2000)、Adamczykら、Rapid Comm.Mass Spectrom.14:49−51(2000)、Adamczykら、Rapid Comm.Mass Spectrom.13:1813−1817(1999)およびAdamczykら、Rapid Comm.Mass Spectrom.13:1413−22(1999)において記載されている質量分析の方法および技術を用いて決定され得る。
【0136】
一旦、自己抗体のアミノ酸配列が決定されると、当技術分野において知られている常法に従う技術を用いて自己抗体の核酸配列を決定することもできる。このように得られた核酸配列は、抗体工学の当業者に周知のように、ヒト細胞系もしくは非ヒト細胞系または非ヒト対象において自己抗体または自己抗体断片を発現させるために使用され得る。
【0137】
更に、一旦、単離されたNGAL自己抗体のアミノ酸配列および核酸配列が得られたら、アミノ酸配列および核酸配列は、様々な固相法(例えば、Robergeら、Science 269:202−204(1995)を参照されたい。)を用いて直接合成され得、自動合成は、例えば、ABI 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を使用して、その製造業者によって提供された指示書に従って達成され得る。更に、本明細書において記載されている単離された自己抗体から得ることができるアミノ酸配列を、他のサブユニットからの配列またはそのいずれかの部分による化学的方法を用いて、直接合成中に変更しておよび/または組み合わせて、変異体配列を作製することができ、故に変異体ヒトNGAL自己抗体を作製することができる。
【0138】
本明細書において記載されているヒトNGAL自己抗体は、種々の異なる目的のために使用され得る。例えば、これらの単離された自己抗体は、少なくとも1種のヒト抗NGAL自己抗体へのヒトNGALまたはこの断片の結合を阻害する際に有用な作用物質を同定するためのスクリーニング方法において使用され得る。具体的には、かかるスクリーニング方法は、単離されたヒトNGAL自己抗体を含む混合物を調製することを含む。かかる混合物を調製した後、この方法は、ヒトNGALまたはこの断片および試験すべき少なくとも1種の薬剤(例えば、医薬組成物等)を、同時にまたは逐次的に、任意の順序において、混合物に加えることを含む。最終段階は、試験される薬剤がヒトNGAL自己抗体へのNGALまたはこの断片の結合を阻害するかどうかを判定することを含む。かかる方法は、一度に多数の薬剤のスクリーニングを可能にするために部分的にまたは完全に自動化され得ると考えられる。ヒトNGAL自己抗体へのNGALまたはこの断片の結合を阻害すると判定された薬剤は、ヒトにおける心臓血管疾患または腎疾患を処置する際における潜在的治療剤としての使用のための更なる試験のために選択される。更に、本明細書において記載されている単離された自己抗体を、心臓血管疾患または腎疾患を処置するために使用され得る医薬組成物において用いることもできる。かかる医薬組成物は、本明細書において記載されている単離された自己抗体および1種以上の医薬的に許容し得る賦形剤を含有する。
【0139】
上記に鑑みて、NGALまたはこの断片と反応する自己抗体を単離する方法が提供される。この方法は、(i)NGALが生物学的試料との接触の前または後に固相上に任意に固定される、NGAL(またはこの断片)をNGALと反応する自己抗体を含有することが分かっている生物学的試料に接触させる段階、(ii)自己抗体が結合したNGALを単離する段階、および(iii)NGALから自己抗体を単離する段階を含む。また、NGALまたはこの断片と反応する単離された自己抗体も提供される。
【0140】
アッセイキット
【0141】
また、試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度について試験試料をアッセイするためのキットも提供される。キットは、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分およびNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための指示書を含む。NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分は、固相上に任意に固定されたNGAL(またはこの断片)を含む組成物および/またはNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体と結合することができる抗体を含む組成物を含み、この抗体は、検出可能であるように任意に標識される。また、指示書は、自己抗体を定量するための標準曲線または参照標準を作製するための指示書を含むこともできる。かかる指示書は、任意に、印刷形態であることができ、またはCD、DVDもしくは他のフォーマットの記録媒体であることができる。
【0142】
キットは、NGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分およびNGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイするための指示書を更に含むことができる。NGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイするための前記少なくとも1種の成分は、NGAL(またはこの断片)に結合することができる抗体を含む組成物を含み、この抗体は、検出可能であるように任意に標識される。
【0143】
代替としてまたはさらには、キットは、較正物質もしくは対照、例えば、単離されたもしくは精製されたNGAL抗体および/またはアッセイを行うための少なくとも1つの容器(例えば、既にNGALで被覆されていてもよいチューブ、マイクロタイタープレートもしくはストリップ)および/または緩衝液、例えば、アッセイ緩衝液または洗浄緩衝液(それらの内のいずれか1つは、濃縮溶液、検出可能な標識(例えば、酵素標識)用基質溶液または停止液として提供され得る。)を含むことができる。好ましくは、キットは、アッセイを実施するために必要な全ての成分、すなわち、試薬、標準、緩衝液、希釈剤等を含む。
【0144】
キット中において提供されるあらゆる抗体、例えばNGALに特異的な抗体は、検出可能な標識、例えば、発蛍光団、放射性部分、酵素、ビオチン/アビジン標識、発色団、化学発光標識等を組み込むことができ、またはキットは、抗体を標識するための試薬もしくは抗体を検出するための試薬(例えば、検出抗体)および/または分析物を検出するための試薬もしくは分析物を標識するための試薬を含むことができる。抗体、較正物質および/または対照は、別々の容器中において提供され得、または適切なアッセイフォーマット中に、例えばマイクロタイタープレート中に予め分注され得る。
【0145】
任意に、キットは、品質管理成分(例えば、感受性パネル、較正物質および陽性対照)を含む。品質管理試薬の調製は、当技術分野において周知であり、種々の免疫診断製品のための添付文書上において記載される。感受性パネルのメンバーは、アッセイ性能特性を確立するために任意に使用され、更に任意に、イムノアッセイキット試薬の完全性およびアッセイの標準化の有用な指標である。
【0146】
また、キットは、診断アッセイを行うためまたは品質管理評価を容易にするために必要とされる他の試薬、例えば、緩衝液、塩、酵素、酵素補助因子、基質、検出試薬等を任意に含むこともできる。また、他の成分、例えば、試験試料の単離および/または処置のための緩衝液および溶液(例えば、前処置試薬)をキット中に含むこともできる。キットは、1種以上の他の対照を更に含むことができる。キットの成分の内の1種以上を凍結乾燥することができ、その場合、キットは、凍結乾燥された成分の再構成に適切な試薬を更に含むことができる。
【0147】
キットの様々な成分は、任意に、必要に応じて適切な容器、例えばマイクロタイタープレート中において提供される。キットは、試料を保持するまたは保存するための容器(例えば、尿試料のための容器またはカートリッジ)を更に含むことができる。適切な場合、キットは、任意に、反応容器、混合容器および試薬または試験試料の調製を容易にする他の成分を含むこともできる。キットは、試験試料を得ることを助けるための1つ以上の器具、例えば、注射器、ピペット、鉗子、測定用スプーン等を含むこともできる。
【0148】
好ましくは、検出可能な標識は、本明細書において記載されている少なくとも1種のアクリジニウム化合物である。キットは、少なくとも1種のアクリジニウム−9−カルボキサミド、少なくとも1種のアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルまたは任意のそれらの組み合わせを含むことができる。検出可能な標識が少なくとも1種のアクリジニウム化合物である場合、キットはまた、過酸化水素の源、例えば、緩衝液、溶液、少なくとも1種の過酸化水素生成酵素を含む組成物またはインサイチュで過酸化水素を生成する別の手段、および/または少なくとも1種の塩基性溶液を含むこともできる。所望により、キットは、固相、例えば、磁性粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、濾紙、ディスクまたはチップを含むことができる。
【0149】
方法およびアッセイキットの適合
【0150】
キット(またはこの成分)、ならびに下記のアッセイによって試験試料中のNGAL自己抗体の濃度を決定する方法は、例えば米国特許第5,089,424号および米国特許第5,006,309号において記載されている、ならびに例えばARCHITECT(登録商標)としてAbbott Laboratories(Abbott Park、IL)により商業的に販売されている(固相が微粒子を含むものを含む)種々の自動化系および半自動化系における使用のために適合させることができる。
【0151】
非自動化系(例えば、ELISA)と比較した自動化系または半自動化系間との間の差異の一部としては、(サンドイッチ形成および分析物の反応性に影響を及ぼし得る。)第1の特異的結合パートナー(例えばNGAL)が結合する基質、ならびに捕捉段階、検出段階および/または任意の洗浄段階の長さおよびタイミングが挙げられる。ELISA等の非自動化フォーマットが、試料および捕捉試薬による相対的に長い温置時間(例えば、約2時間)を必要とする可能性があるのに対して、自動化フォーマットまたは半自動化フォーマット(例えば、ARCHITECT(登録商標)、Abbott Laboratories)は、相対的に短い温置時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)についてはおよそ18分間)を有する可能性がある。同様に、ELISA等の非自動化フォーマットは、コンジュゲート試薬等の検出抗体を相対的に長い温置時間(例えば、約2時間)温置する可能性があるのに対して、自動化フォーマットまたは半自動化フォーマット(例えば、ARCHITECT(登録商標))は、相対的に短い温置時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)についておよそ4分間)を有する可能性がある。
【0152】
Abbott Laboratoriesから入手可能な他のプラットフォームとしては、限定されないが、AxSYM(登録商標)、IMx(登録商標)(例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれている米国特許第5,294,404号を参照されたい。)、PRISM(登録商標)、EIA(ビーズ)およびQuantum(商標)II、ならびに他のプラットフォームが挙げられる。更に、アッセイ、キットおよびキット成分は、他のフォーマット中において、例えば、電気化学的アッセイ系または他のハンドヘルドアッセイ系もしくはポイントオブケアアッセイ系において用いられ得る。本発明の開示は、例えば、サンドイッチイムノアッセイを行う商業的なAbbott Point of Care(i−STAT(登録商標)、Abbott Laboratories)電気化学的イムノアッセイ系に適用可能である。免疫センサ、ならびに使い捨て試験器具におけるそれらの製造方法および操作方法は、例えば、米国特許第5,063,081号、米国特許出願公開第2003/0170881号、米国特許出願公開第2004/0018577号、米国特許出願公開第2005/0054078号および米国特許出願公開第2006/0160164号(それらは、同じことに関するそれらの教示のための参照により完全に組み込まれている。)において記載されている。
【0153】
特に、I−STAT(登録商標)系に対する自己抗体アッセイの適合に関して、以下の構成が好ましい。微小加工されたシリコンチップは、一対の金電流測定作用電極および銀−塩化銀参照電極を用いて製造される。作用電極の内の1つにおいて、固定化された捕捉抗体を有するポリスチレンビーズ(直径0.2mm)が、その電極の上にパターン化されたポリビニルアルコールのポリマーコーティングに接着される。このチップは、イムノアッセイに適切なフルイディクスフォーマットを有するI−STAT(登録商標)カートリッジ中に組み立てられる。カートリッジの試料保持チャンバの壁の一部に、アルカリホスファターゼ(または他の標識)によって標識された第2の検出抗体を含む層が存在する。カートリッジの液ポーチ内に、p−アミノフェノールリン酸塩を含む水性試薬がある。
【0154】
操作時に、NGAL自己抗体を含有すると推測された試料は、試験カートリッジの保持チャンバに加えられ、カートリッジは、I−STAT(登録商標)リーダ中に挿入される。第2の抗体(検出抗体)が試料中に溶解した後、カートリッジ内のポンプ要素が、チップを含有する管路内に試料を押し出す。ここで、ポンプ要素が振動して、NGAL、NGAL自己抗体および標識された検出抗体の間でのサンドイッチの形成を促進する。アッセイの最後から2番目の段階において、液体はポーチから管路の中に押し出されて、試料をチップから廃物チャンバの中に洗浄する。アッセイの最後の段階において、アルカリホスファターゼ標識は、p−アミノフェノールリン酸塩と反応してリン酸基を切断し、遊離したp−アミノフェノールを作用電極において電気化学的に酸化させる。測定された電流に基づいて、リーダは、埋め込まれたアルゴリズムおよび工場で決定された較正曲線によって試料中のNGAL自己抗体の量を計算することができる。
【0155】
更に、本明細書において記載されている方法およびキットは、イムノアッセイを実施するための他の試薬および方法を必ず包含することは言うまでもない。例えば、コンジュゲート希釈剤および/または較正物質希釈剤として、例えば洗浄のために、当技術分野において知られている緩衝液および/または用いるために容易に調製され得るもしくは最適化され得る緩衝液等の様々な緩衝液が包含される。例示的なコンジュゲート希釈剤は、ある種のキット(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)において用いられ、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、塩、タンパク質遮断剤、抗微生物剤および洗浄剤を含有するARCHITECT(登録商標)コンジュゲート希釈剤である。例示的な較正物質希釈剤は、MES、他の塩、タンパク質遮断剤および抗微生物剤を含有する緩衝液を含む、ある種のキット(Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)において用いられているARCHITECT(登録商標)ヒト較正物質希釈剤である。
【実施例】
【0156】
以下の実施例は、本開示を例示する役目をする。実施例は、いかなる形であれ主張された本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0157】
(実施例1)
本実施例は、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)を被覆したマイクロプレートの調製および特性評価について記載する。
【0158】
組換えNGAL(R&D Systems、Minneapolis、MN)を4μg/mLの濃度にリン酸緩衝液(0.2M、pH8.0)中に溶解させた。NGAL溶液(100μL/ウェル)を、280rpmで混合しながら38℃で2時間マイクロプレート(Costar、Corning Life Sciences、Lowell、MA)に被覆した。それらのプレートを排液し、NGAL溶液を熱不活化ウシ血清アルブミンの溶液(BSA、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)中の2%w/v、300μL/ウェル)と置き換えた。それらのプレートを280rpmで混合しながら38℃で1時間温置し、次いで排液した。次いで、それらのプレートをスクロースの溶液(PBS中の2%w/v、300μL/ウェル)で洗浄し(3×)、排液し、乾燥窒素流下で乾燥した。
【0159】
アクリジニウム−9−カルボキサミドによって標識したマウス抗NGAL抗体(R&D Systems、100ng/mL)をNGAL被覆マイクロプレート(100μL/ウェル)に加え、それを続いて37℃で1時間温置し、次いでARCHITECT(登録商標)洗浄緩衝液(6×、350μL)によって洗浄した。マイクロプレートを、28℃で平衡化したMithrasマイクロプレートリーダ(Berthold Technologies Inc、Oak Ridge、TN)中に装入した。各ウェルの化学発光シグナルを、ARCHITECT(登録商標)プレトリガー溶液(100μL)およびARCHITECT(登録商標)トリガー溶液(100μL)の逐次的な添加の後2秒間記録した。NGAL反応性マウスモノクローナル抗体コンジュゲートは、1,763,268相対発光量(RLU)および1.2%(CV)の平均シグナルで特異的にNGAL被覆ウェルに結合した。
【0160】
(実施例2)
本実施例は、NGALと反応する自己抗体についてのヒト血漿の試験試料の分析について記載する。
【0161】
凍結した正常ドナー血漿試料を、Abbott Laboratories(Abbott Park、IL)標本バンクから入手し、使用前に2−8℃で解凍した。実施例1において記載したようにマイクロプレートを調製した。マウス抗ヒトIgG(亜型IgG2b、カッパ)を化学発光アクリジニウム−9−カルボキサミドによって標識した。この抗体は、ヒトIgMもしくはIgA、またはウサギ、ヒツジもしくはヤギIgGに対する著しい反応性を有さないのに対して、全てのヒトIgG亜型を認識した。試料(5μL)を、マイクロプレートウェル中においてAxSYM(登録商標)トロポニン−I ADVプレ温置希釈剤(95μL)によって希釈した。37℃で2時間温置した後、ARCHITECT(登録商標)洗浄緩衝液(6×、350μL)によってプレートを洗浄した。次いで、マウス抗ヒトIgG特異的モノクローナル抗体−アクリジニウムコンジュゲート(100μL)を加え、プレートを37℃で1時間温置し、その後、ARCHITECT(登録商標)洗浄緩衝液(6×、350μL)によって最終の洗浄を行った。マイクロプレートを、28℃で平衡化したMithrasマイクロプレートリーダ(Berthold Technologies Inc、Oak Ridge、TN)中に装入した。各ウェルからの化学発光シグナルを、ARCHITECT(登録商標)プレトリガー溶液(100μL)およびARCHITECT(登録商標)トリガー溶液(100μL)の逐次的な添加の後2秒間記録した。試験した集団についての一般的な統計量を表2および3において示す。
【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

192の試料についての箱髭図を作成し、その中において25パーセント点および75パーセント点の間の差は885.0であり、それによって、離れ値が≧3,227.5(17の離れ値、8.9%)であり、飛び離れ値が≧4,555.0(11の離れ値、5.7%)であることが明らかになった。これらの結果によって、驚くべきことに、また予想外に、NGALと反応性の1種以上の自己抗体がヒト試料中において見出されることが確認される。
【0164】
明細書中において挙げられた全ての特許、特許出願刊行物、雑誌論文、教科書および他の刊行物は、本開示が関係する当業者の熟練度を示す。全てのかかる刊行物は、各個別の刊行物が具体的におよび個別に参照により組み込まれていることが示されているのと同じように、同程度に参照により本明細書に組み込まれている。
【0165】
本明細書において例示的に記載されている本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の要素(複数可)または限定(複数可)の非存在下で、適切に実施され得る。従って、例えば、「含む」、「から実質的に成る」および「から成る」という用語のいずれかの本明細書における各例は、他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。同様に、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈によって明らかに表されない限り、複数の参照を含む。従って、例えば、「方法(the method)」に対する参照は、(本明細書において記載され、および/または、本開示を読んだ際に当業者に明らかとなる。)その型の1つ以上の方法および/または段階を含む。
【0166】
用いられた用語および表現は、説明の用語として用いられるものであって、限定の用語として用いられるものではない。この点に関して、ある種の用語は、「定義」の下で定義され、それ以外の場合、「詳細な説明」における他の場所で定義、記載または考察され、全てのかかる定義、記載および考察は、かかる用語に帰することが意図される。また、かかる用語および表現の使用において、示されたおよび記載された特徴またはそれらの一部のいかなる均等物も除外することを意図するものでもない。更に、小見出し、例えば「定義」が「詳細な説明」において使用されているが、かかる使用は、参照を容易にするためのものに過ぎず、ある見出し内において行われた任意の開示をその見出しのみに限定することを意図するものではなく、1つの小見出しの下に為された任意の開示は、それぞれの全ての他の小見出し下における開示を構成することが意図される。
【0167】
主張された本発明の範囲内で、様々な修飾が可能であることが認識される。従って、本発明は好ましい実施形態および任意の特徴の状況において具体的に開示されているが、本明細書に開示されている概念の修飾および変更を当業者が行使し得ることを理解すべきである。かかる修飾および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲内にあると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験試料中の、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)またはこの断片と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定する方法であって、NGAL(またはこの断片)および少なくとも1種の検出可能な標識を用い、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度の直接的または間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または較正物質(任意に、較正物質の各々のNGAL(またはこの断片)と反応する抗体の濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる一連の較正物質の一部である。)中の、NGAL(またはこの断片)と反応する抗体の存在、量または濃度の直接的または間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含むアッセイによって、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイすることを含み、その結果、試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度が決定される、方法。
【請求項2】
下記の段落:
(i)検出可能な標識を含み、少なくとも1種の自己抗体に結合するNGAL(またはこの断片)に試験試料を接触させて、NGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を形成させる段階、および
(ii)(i)において形成されたNGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体において検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出または測定することによって、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度を決定し、その結果、試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度が決定される段階
を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
下記の段落:
(i)NGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を形成するように、少なくとも1種の自己抗体に結合し、固相上に任意に固定されたNGAL(またはこの断片)に試験試料を接触させる段階、
(ii)検出可能な標識を含み、自己抗体に結合している少なくとも1種の検出抗体にNGAL(またはこの断片)/自己抗体複合体を接触させて、NGAL(またはこの断片)/自己抗体/検出抗体複合体を形成させる段階、および
(iii)(ii)において形成されたNGAL(またはこの断片)/自己抗体/検出抗体複合体中において検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出または測定することによって、試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する自己抗体の存在、量または濃度を決定し、その結果、試験試料中のNGAL(またはこの断片)と反応する自己抗体の存在、量または濃度が決定される段階
を含み、段階(i)の後で非結合の少なくとも1種の自己抗体を除去すること、および段階(ii)の後で非結合の少なくとも1種の検出抗体を除去することを任意に更に含む、請求項1の方法。
【請求項4】
検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項1の方法。
【請求項5】
アクリジニウム化合物がアクリジニウム−9−カルボキサミドまたはアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルである、請求項4の方法。
【請求項6】
検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項2の方法。
【請求項7】
アクリジニウム化合物がアクリジニウム−9−カルボキサミドまたはアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルである、請求項6の方法。
【請求項8】
検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項3の方法。
【請求項9】
アクリジニウム化合物がアクリジニウム−9−カルボキサミドまたはアクリジニウム−9−カルボン酸アリールエステルである、請求項8の方法。
【請求項10】
試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度を、事前に、同時にまたは事後に決定することを更に含み、NGAL(またはこの断片)に対する少なくとも1種の特異的結合パートナーおよび少なくとも1種の検出可能な標識を用い、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度の直接的または間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または(任意に、較正物質の各々のNGAL濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる一連の較正物質の一部である。)較正物質中のNGALの濃度の直接的または間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含むアッセイによってNGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイすることを含み、その結果、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度が決定される、請求項1、4または5のいずれかの方法。
【請求項11】
試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度を、事前に、同時にまたは事後に決定することを更に含み、NGAL(またはこの断片)に対する少なくとも1種の特異的結合パートナーおよび少なくとも1種の検出可能な標識を用い、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度の直接的または間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または(任意に、較正物質の各々のNGAL濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる一連の較正物質の一部である。)較正物質中のNGALの濃度の直接的または間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含むアッセイによってNGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイすることを含み、その結果、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度が決定される、請求項2、6または7のいずれかの方法。
【請求項12】
試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度を、事前に、同時にまたは事後に決定することを更に含み、NGAL(またはこの断片)に対する少なくとも1種の特異的結合パートナーおよび少なくとも1種の検出可能な標識を用い、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度の直接的または間接的な指標として検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照または(任意に、較正物質の各々のNGAL濃度が一連の較正物質中の他の較正物質と異なる一連の較正物質の一部である。)較正物質中のNGALの濃度の直接的または間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含むアッセイによってNGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイすることを含み、その結果、試験試料中のNGAL(またはこの断片)の濃度が決定される、請求項3、8または9のいずれかの方法。
【請求項13】
試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することを更に含み、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む、請求項1、4、5または10のいずれかの方法。
【請求項14】
試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することを更に含み、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む、請求項2、6、7または11のいずれかの方法。
【請求項15】
試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することを更に含み、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む、請求項3、8、9または12のいずれかの方法。
【請求項16】
試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することを更に含み、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む、請求項10の方法。
【請求項17】
試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することを更に含み、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む、請求項11の方法。
【請求項18】
試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断、予測または評価することを更に含み、試験試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することを更に含む場合、必要に応じて有効性を向上させるために患者の治療的/予防的処置を改変することを任意に更に含む、請求項12の方法。
【請求項19】
自動化システムまたは半自動化システムにおける使用のために適合されている、請求項1、4、5、10、13または16のいずれかの方法。
【請求項20】
自動化システムまたは半自動化システムにおける使用のために適合されている、請求項2、6、7、11、14または17のいずれかの方法。
【請求項21】
自動化システムまたは半自動化システムにおける使用のために適合されている、請求項3、8、9、12、15または18のいずれかの方法。
【請求項22】
試験試料中の、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体の存在、量または濃度について試験試料をアッセイするためのキットであって、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分、およびNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための指示書を含み、NGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分が、固相上に任意に固定されたNGAL(またはこの断片)を含む組成物および/またはNGAL(またはこの断片)と反応する少なくとも1種の自己抗体に結合することができる抗体を含む組成物を含み、NGAL(またはこの断片)または前記抗体が、任意に検出可能であるように標識されている、キット。
【請求項23】
NGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分、およびNGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイするための指示書を含み、NGAL(またはこの断片)について試験試料をアッセイするための少なくとも1種の成分が、NGAL(またはこの断片)に対する特異的結合パートナーを含む組成物を含み、NGALに対する特異的結合パートナーが、検出可能であるように任意に標識されている、請求項22のキット。
【請求項24】
NGALと反応する自己抗体を単離する方法であって、
(i)NGAL(またはこの断片)が生物試料との接触の前または後に固相上に任意に固定されるNGAL(またはこの断片)と反応する自己抗体を含むことが知られている生物試料にNGAL(またはこの断片)を接触させる段階、
(ii)自己抗体が結合しているNGAL(またはこの断片)を単離する段階、および
(iii)NGAL(またはこの断片)から自己抗体を単離しその結果、NGAL(またはこの断片)と反応する自己抗体が単離される段階
を含む、方法。
【請求項25】
NGALまたはこの断片と反応する単離された自己抗体。
【請求項26】
対象から得られた試験試料中のNGALの量または濃度を検出または定量するために、事前に、同時にまたは事後に行われた別々のアッセイから得られた結果の信頼性を決定するための方法であって、
(a)NGALと反応する少なくとも1種の自己抗体の、試験試料中の量もしくは濃度を決定する段階、および
(b)段階(a)における量または濃度を所定のレベルと比較する段階であって、段階(a)における量または濃度が所定のレベルと比較して高い場合、別々のアッセイによって決定されたNGALの量または濃度が信頼できないと考えられ、前記量または濃度が所定のレベル以下である場合、別々のアッセイによって決定されたNGALの量または濃度が信頼できると考えられる段階
を含む、方法。

【公表番号】特表2012−507005(P2012−507005A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533314(P2011−533314)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061580
【国際公開番号】WO2010/048354
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】