説明

姿勢改善装置

【課題】バランス感覚及び姿勢の改善を効果的に得られるものとする。
【解決手段】使用者が両足を載せて立つ足置き台1に使用者の足裏の複数箇所に対し30Hzから200Hzの範囲内の振動刺激を個別に付与する振動子を配する。使用者の重心位置を検知する重心検知手段と、重心検知手段で求めた重心位置の動揺の左右成分と前後成分の周波数分析を行う周波数分析部とを備える。振動子の個別振動制御を行う振動制御部は、重心位置算出手段により算出された重心位置と対称位置にある振動子を振動させるとともに、上記周波数分析部で求めたパワースペクトルの大きい周波数帯に属する周波数で振動させる振動子を切り替える。使用者の姿勢に応じて振動刺激部位が変化するとともに振動刺激を与える部位の切り替えが重心動揺の周波数に応じた周波数でなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の立位姿勢あるいは歩行姿勢を改善するための姿勢改善装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
立位状態を保ったり歩行を行う時、足裏の接地圧力や三半規管からの姿勢情報のフィードバックによって姿勢を調節していることから、足裏の接地感覚を捕らえる機能が低下すれば、バランスを保つことができずに転倒してしまう虞が高くなる。
【0003】
このために、足裏の接地圧力情報に着目し、その接地圧力情報に加え外部から使用者の足裏に振動による皮膚刺激情報を与えることによって、皮膚刺激情報を与えた部位の接地圧力情報に注意を喚起させて姿勢調節を行わせることで、接地感覚に基づく身体のバランス感覚を訓練して姿勢改善を図るものが特許文献1などに示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に示されたものにおいては、皮膚刺激情報が使用者の実姿勢とは関係なしに足裏における皮膚刺激情報を与える部位を変化させていくものであるために、バランス感覚及び姿勢の改善という点において、さほど有効な結果を得ることができない。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、バランス感覚及び姿勢の改善を効果的に得ることができる姿勢改善装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、使用者が両足を載せて立つ足置き台を備えるとともに、該足置き台に使用者の足裏の複数箇所に対して30Hzから200Hzの範囲内の振動刺激を個別に付与する振動子を配したものであり、使用者の重心位置を検知する重心検知手段と、該重心検知手段で求められる重心位置の動揺の左右成分と前後成分の周波数分析を行う周波数分析部とを備え、上記振動子の個別振動制御を行う振動制御部は、上記重心位置算出手段により算出された重心位置と対称位置にある振動子を振動させるものであるとともに、上記周波数分析部で求めたパワースペクトルの大きい周波数帯に属する周波数で振動させる振動子を切り替えるものであることに特徴を有している。使用者の姿勢に応じて振動刺激が与えられる部位が変化するとともに、この振動刺激を与える部位の切り替えが重心動揺の周波数に応じた周波数でなされるようにしたものである。
【0008】
上記振動制御部は、使用者の足裏の各部に振動を与える振動子の振動強度を各部の触覚感度に応じたものとしていることが、バランス感覚及び姿勢の改善について、より好ましい結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、使用者の姿勢及び重心動揺の周波数に応じて、より好ましい姿勢が得られる結果を導くことができる振動刺激が使用者の足裏に与えられるものであり、このために、バランス感覚及び姿勢の改善を効果的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の一例におけるブロック図である。
【図2】同上の足置き台を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図2に本発明に係る姿勢改善装置における足置き台1の一例を示す。上面が平板状であり、使用者が両足でその上に立つことができる大きさに形成されている図示例の足置き台1は、右足の足裏刺激用の振動子R1〜R3及び左足の足裏刺激用の振動子L1〜L3とを備えた上層部11と、多数の圧力センサー(図示せず)がマトリクス配置されている下層部12とからなるもので、振動子R1,L1は拇指及び拇指球を、振動子R2,L2は小指付け根を、振動子R3,L3は踵中央に振動刺激を与えることができる位置に配されており、これら振動子R1〜R3,L1〜L3は図1に示す制御回路3の出力で振動駆動部4を介して個別に振動させることができるとともにその振動強度を調節することができるものとなっている。
【0012】
下層部12に配した多数の圧力センサーは、上記足置き台1上に両足を載せて立つ使用者の重心位置を検知するための図1に示す重心検知手段2を構成するものであり、該重心検知手段2の出力を基に制御回路3中の重心位置算出部31が使用者の重心位置G(x,y)を算出する。なお、上記重心位置G(x,y)は、ここでは上記振動子R1〜R3,L1〜L3を結んだ多角形の重心位置を基準点Go(x0,y0)とするx,y座標上の位置である。x,y軸は、足置き台1に立つ使用者の左右方向と前後方向とに設定していることから、振動子R1,R2と振動子L1,L2と振動子R3と振動子L3が夫々異なる象限に位置することになる。
【0013】
また、上記制御回路3は、上記重心位置算出部31の出力を基に重心動揺における前後成分及び左右成分の周波数のFFT解析を行う周波数分析部32とを備えているとともに、重心位置検知手段31の出力と、周波数分析部32の出力とに基づいて、振動子R1〜R3,L1〜L3の振動を制御する振動制御部33を備えている。
【0014】
この振動制御部33は、基本的に重心位置算出部31で求めた重心位置G(x,y)のGo(x0,y0)に対する点対象の点が位置する象限にある振動子を振動させる。つまり、重心位置G(x,y)が図2において振動子L3が配されている象限内に位置する時、振動子R1,R2を振動させるのである。象限内における重心位置G(x,y)に応じて、振動子R1と振動子R2のうちの重心位置G(x,y)の点対称位置に近い方を振動させるようにしてもよいのはもちろんである。
【0015】
また重心位置G(x,y)の動揺に伴って振動させる振動子R1〜R3,L1〜L3の切り替えは、周波数分析部32で求めたパワースペクトルの大きい周波数帯に属する周波数で行う。すなわち、周波数分析部32では、上述のように重心動揺の左右成分及び前後成分の周波数をFFT解析し、低周波:0.02〜0.2Hz、中周波:0.2〜2.0Hz、高周波:2.0〜10.0Hzの3区分に分けて夫々のパワーを求める。
【0016】
そして振動制御部33は、周波数分析部32で得られた各周波数帯のパワーをテンプレートと比較し、テンプレートに対してパワーの大きい部分の周波数帯を切替の周波数帯として選択する。なお、テンプレートは標準的なデータから、使用者の年齢や性別に応じたものを用いる。振動子R1〜R3,L1〜L3の振動周波数としては、30Hzから200Hzが好ましい。
【0017】
皮膚刺激情報として与える振動の強度は、あらかじめ2点間弁別法やワイヤー法などで足裏感覚の計測ができる場合は計測を行い、右かかと部分の足裏感覚を基準とした比で決定する。振動の強度は、2点間弁別の場合は2点間の距離の比が強度の比として、ワイヤー法では、感覚を荷重に直した値をその強度の比として用いる。
【0018】
振動子L1,R1, L2,R2, L3,R3を順番に強度を変化させて振動させ、同じ感覚が得られた時に強度決定ボタンなどを使用者が操作することで各振動子R1〜R3,L1〜L3の振動強度を設定してもよい。
【0019】
また、 振動子L1,R1, L2,R2, L3,R3を順番(この順番でなくてもよい)に強度を変化させて振動させ、そのときの重心移動量が同じ(例えば移動距離が5mm)になったときにその強度を設定強度としてもよい。
【0020】
振動させる振動子R1〜R3,L1〜L3は、重心位置G(x,y)が属する象限を除く他の象限に位置するものとし、この時、重心位置G(x,y)のGo(x0,y0)に対する点対象の点が位置する象限に属するものを主として振動させるものであってもよい。つまり、重心位置G(x,y)が図2において振動子L3が配されている象限内に位置する時、振動子L3を除く他の振動子を、振動子R1,R2が主として振動するものとした状態で振動させるのである。
【0021】
重心検知手段2は、振動子R1〜R3,L1〜L3が配された足置き台1が上面に配される足置き台1とは別体のものとして形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 足置き台
2 重心検知手段
3 制御回路
31 重心位置検知部
32 周波数分析部
33 振動制御部
R1〜R3 振動子
L1〜L3 振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が両足を載せて立つ足置き台を備えるとともに、該足置き台に使用者の足裏の複数箇所に対して30Hzから200Hzの範囲内の振動刺激を個別に付与する振動子を配したものであり、使用者の重心位置を検知する重心検知手段と、該重心検知手段で求められる重心位置の動揺の左右成分と前後成分の周波数分析を行う周波数分析部とを備え、上記振動子の個別振動制御を行う振動制御部は、上記重心位置算出手段により算出された重心位置と対称位置にある振動子を振動させるものであるとともに、上記周波数分析部で求めたパワースペクトルの大きい周波数帯に属する周波数で振動させる振動子を切り替えるものであることを特徴とする姿勢改善装置。
【請求項2】
上記振動制御部は、使用者の足裏の各部に振動を与える振動子の振動強度を各部の触覚感度に応じたものとしていることを特徴とする請求項1記載の姿勢改善装置。

【図1】
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【図2】
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