説明

婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤およびその調製

【解決課題】本発明は、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤およびその調製に関する。
【解決手段】その調製は下記工程から成る:婦人科薬剤、アルギン酸ナトリウム、および塩化バリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどの溶液を順番に調製する工程;婦人科薬剤溶液およびアルギン酸ナトリウム溶液を混合する工程、および次にそれらを塩化バリウムまたは塩化カルシウムおよびその他同種の硬化液と混合する工程。そして得られたものは婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤である。本発明に記載の血管塞栓剤の担体材料は、天然抽出物で、十分な生体適合性および生物分解性を有する;それらにより投薬された調合薬の副作用は最小であり、子宮筋層腺および子宮筋腫に対して特に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤およびその調製に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮筋腫および子宮腺筋症は女性生殖系の共通の良性の疾患である。これらの疾患の高い罹患率は、女性の生活の質に明確に影響を及ぼす。投薬および手術は現在の主要な治療法の選択肢である。子宮摘出は主要な手術方法であり、重篤な症状の者および妊娠を望まない年長者に対して採用できる。ダナゾール、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)、ミフェプリストン(Ru486)、アンドロゲン、ゲストリノンなどを含む投薬は、妊娠を望む若い女性、軽症の者または閉経に近い人に対してふさわしい。
【0003】
ダナゾールは、穏やかなアンドロゲン様機能をともなう人工的に合成された17-アセチレンテストステロンの誘導体である。生体外における研究によって、ダナゾールが以下の様式で直接作用するだろうことが確認された: (1) 視床下部-脳下垂体-卵巣軸に直接作用し、ゴナドトロピン放出ホルモンの放出を阻害する、 (2)卵巣に直接作用し、卵巣ホルモンの合成を阻害する、 (3)子宮膜に直接作用し、膜の萎縮および偽閉経をもたらす、および(4)異所性膜に直接作用し、シトクロムP450(芳香酵素)の発現を低減させる。しかしながら、ダナゾールの肝毒性のような副作用は、臨床的実践での長期的な適用を限定する。
【0004】
ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)は、人工的に合成されたデカペプチド化合物の一種であり、脳下垂体中のGnRHa受容体を抑制することによってゴナドトロピンおよび卵巣ホルモンの分泌を減少させることが可能であり、子宮膜の萎縮を導く。GnRHaによって引き起こされたエストロゲンの低濃度は、血管腔を減少させることによって子宮の動脈血供給を低減させ、そして筋腫の大きさを間接的に減少させる。GnRHaは、子宮膜への直接作用も有する。GnRHaは、腺筋症によって引き起こされた症状を軽減するように人工閉経に導き、著しく子宮の大きさを減少させ、妊娠の可能性を増すだろう。GnRHaは、筋腫の増殖を抑制することができ、術前の適用(すなわち、3-6か月以前)により、術中出血を減少させることが可能である。GnRHaの主要な副作用は、減少した性ホルモンによって引き起こされた閉経症状および骨粗鬆症であり、GnRHaは長期的な有効性に欠ける。GnRHaを中止した場合、より高い再発率が生ずる。
【0005】
アンドロゲン、ゲストリノンおよびミフェプリストン(Ru486)は、非競合的抗エストロゲンによって、視床下部-脳下垂体-卵巣軸に作用し、排卵停止、プロゲストゲンレベルの減少、 子宮の動脈血供給の減少 および筋腫の萎縮をもたらす。ゲストリノンはメチルテストステロンの誘導体であり、そのメカニズムはダナゾールのメカニズムに類似する。アンドロゲンおよびその他の各々には同様の治療上の機能がある。上述された薬剤の肝毒性のような副作用は、日常の臨床的実践における広範囲な適用を限定する。
【0006】
介入的放射線医学は急速な発展により、近代医療で重要な役割を果たしている。その結果、筋腫および腺筋症を持った患者に対して、子宮摘出および投薬に加えて、以下の追加の選択肢が利用可能である:介入的微小侵襲性治療。
【0007】
筋腫および腺筋症の治療のための介入的経動脈塞栓療法の特性および利点は、以下を含む:
1.開腹手術を最小限の侵襲的技術に置き換えることで、患者を肉体的にだけでなく心理的に和らげるだろう;
2.全身投薬を、塞栓剤/注入と組み合わせたもの/生物分解性の塞栓剤による局所的な塞栓療法に置き換えることで、以下がなされるだろう:
・標的領域における薬剤濃度の増加;
・投薬によって引き起こされる副作用および毒性の減少;
・塞栓術および局所的な薬剤放出によりもたらされる二重効果の提供;
・子宮を温存することによる妊娠の可能性の保有。
3.開腹手術に起因する副作用を減少させる;
4.最小限の侵襲的技術による入院短縮のために財政負担を減少させる;
5.社会的および経済的利点を増す。
【0008】
特に、筋腫を患う患者の年齢はより若い傾向があり、子宮摘出または投薬では子宮温存/妊娠能力の望みを満たすのは難しい。
【0009】
急速に発達した介入的治療技術は、婦人科学および産科学の分野における任意の治療を提供する。介入的治療は、筋腫または標的病変の萎縮/壊死に特有の治療上の有効性を導く、DSAのような放射線のガイダンスの下で標的領域への塞栓剤の超選択的な動脈内の注入として定義される。筋腫および腺筋症のための介入的治療の中でも、子宮動脈塞栓術(UAE)は最も急速に発達しているものである。1979年以来、UAEは、近年の悪性腫瘍だけではなく、生命に関わる分娩後出血、子宮外妊娠および手術後の出血の治療に対して広く使用される。UAEは、20年以上の臨床的実践の間に、標的器官の虚血性壊死がなく、安全および効果的であると多数の研究/出版物により証明されてきた。筋腫および腺筋症の治療のためのUAEは、現在のところ世界中の臨床的実践において使用される。UAEは、子宮の局所虚血および子宮膜の剥離をもたらすことが可能で、症状の緩和および生活の質の改良を導く。さらに、筋腫の37〜85%の縮小が報告されており、患者の95%における症状の改良をもたらす。選択された患者では、UAEは、筋腫のような良性腫瘍による症状の軽減を目的とする患者における投薬/子宮摘出と置き換えることができた。
【0010】
塞栓剤による単純な塞栓術は、標的領域(腫瘍)の血液供給を妨げることができ、萎縮および壊死で代表される治療上の有効性をもたらす。
【0011】
局所的な薬剤注入の短所は以下を含む:均一でない薬剤放出および高度に濃縮された薬剤によってもたらされた組織の壊死/障害。
【0012】
現在のところ、婦人科薬剤を覆う薬剤担体としてアルギン酸ナトリウムを採用し、血管塞栓療法において産婦人科患者で適用する先行例は国内外に無い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的は、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤を提供することであり、この塞栓剤は十分な生物学的耐性、より少ない副作用、塞栓術の治療上の有効性、ならびに同時投薬および一様な放出を有しており、筋腫および腺筋症の治療において改善された有効性をもたらす。
【0014】
本発明の他の目的は、前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤を調製する方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の適用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の前記目的は以下の技術的手順によって達成される。
【0017】
前記アルギン酸ナトリウムによって封入される薬剤担体および婦人科薬剤としてのアルギン酸ナトリウムからなるという点で特徴づけられる、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【0018】
前記アルギン酸ナトリウムおよび前記婦人科薬剤の重量比は、1:1から90:1まで変動する。
【0019】
前記産婦人科薬剤は以下を含む:ダナゾール、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)、ミフェプリストン、ゲストリノンまたはアンドロゲン。
【0020】
前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤は、硬化液中で保存するミクロゲル粒剤またはミクロスフェアでありえる。
【0021】
前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤は、粉状顆粒でもありえる。
【0022】
硬化液中で保存する前記ミクロゲル粒剤またはミクロスフェアの直径は、200〜550μm、400〜750μmまたは600〜950μmにわたる。
【0023】
前記粉状顆粒の直径は100〜350μm、200〜550μmまたは400〜750μmにわたる。
【0024】
前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤を調製方法であって、以下の工程:
1.婦人科薬剤の溶媒での特定の比率の溶解により婦人科薬剤溶液を調製する;
2.アルギン酸ナトリウムを特定の比率の溶解によりアルギン酸ナトリウム溶液を調製する;
3.塩化カルシウム、塩化バリウムまたは塩化マグネシウムの1〜10%濃度での溶解により硬化液を調製する。
4.婦人科薬剤溶液はアルギン酸ナトリウム溶液と混合し、次に混合物を、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアまたはミクロゲル粒剤を形成するために、高電圧静電気複式ミクロスフェア液滴装置により硬化液に滴下により加える。
を含む、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の前記調製方法
【0025】
前記高電圧静電気複式ミクロスフェア液滴装置は静電気装置を含む;前記静電気装置は正電極および負電極を有する。正電極はマイクロシリンジ装置の針と接続されており、負電極は硬化液中に浸漬したステンレス鋼線と接続されている。マイクロシリンジ装置中の婦人科薬剤およびアルギン酸ナトリウムの混合物溶液は、ミクロスフェアを形成するために硬化液中へ滴下される。
【0026】
得られた婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤は、硬化液中で保存するミクロスフェアであり、ウェットミクロスフェアと呼ばれ、直径は200〜550μm、400〜750μmまたは600〜950μmにわたることができる。300〜550μmのウェットミクロスフェアは腺筋症の治療において、500〜750μmのものは子宮筋腫において、 および700〜950μmのものは妊娠を望む患者において適用される。
【0027】
得られた婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の上清を静かに移し、次に下部のミクロゲル粒剤を乾燥器に入れ、密封状態で維持する。得られた粉状顆粒はドライミクロスフェアと呼ばれる。それらの直径はl00〜350μm、200〜550μmまたは400〜750μmにわたるだろう。100〜350μmのウェットミクロスフェアは腺筋症の治療において、200〜550μmのものは子宮筋腫において、 および400〜750μmのものは妊娠を望む患者において適用される。
【0028】
介在放射線療法または介在超音波を取り入れて、動脈造影を行なうために、ミクロカテーテルを標的器官の栄養動脈に挿入する。選択された塞栓剤ミクロスフェアの直径は、動脈造影の印象に従って決定される。無菌的にボトルを開けて、ミクロスフェアがボトルの底に沈降するまで放置する。注射器によって硬化液を除去し、次にミクロスフェアを3回洗浄するために等量の生理食塩水を加える、または注射器によって硬化液を除去し、次に等量の生理食塩水を加え、無菌ボウルの中へ生理食塩水およびミクロスフェアを注ぐ。50〜60 mLの生理食塩水を1回使用して、ミクロスフェアをすすいで洗浄液を廃棄し、次に均一に混合するために適正量または希釈した造影剤を加え(造影剤中で完全に浮かぶようミクロスフェア放置する)、蛍光透視法の下でミクロカテーテルにより (塞栓の過剰投与を抑制する。)、造影剤の流量が明らかに減少する(つまり塞栓が終了する)まで、具体的な条件に依存して造影剤をゆっくり、または複数回でゆっくり注入する。塞栓の影響を判断するために、動脈造影が再び行われる。
【0029】
婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤が粉状顆粒である場合、次に密封容器中に保存したドライミクロスフェアを膨潤させるよう生理食塩水中に溶解し(ウェットミクロスフェア)、次に均一に混合するために適正量または希釈した造影剤を加え(造影剤中で完全に浮かぶようミクロスフェア放置する)、画像ドキュメンテーション装置のモニターの下でミクロカテーテルにより(過剰塞栓術は完全に抑制される。)、塞栓に影響を受けた部分の血管中に超選択的に、造影剤の流量が明らかに減少する(つまり塞栓が終了する)まで、造影剤をゆっくり注ぐ、または複数回でゆっくり注入する。塞栓の影響を判断するために、動脈造影が再び行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明は下記の実施例に関してより具体的に記述されるだろう。以下の実施例は、発明の範囲を限定するようには意図されない。
【実施例1】
【0031】
ダナゾール含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製
1.被覆形成前の調製
・ガラス容器具の処理:
清浄なガラス容器具を乾燥し、次に3時間300℃で乾燥器中に維持する(殺菌されるまで熱源は取り除かれる);
・ダナゾール溶液の調製:
1.5kgの市販のダナゾールを量り、前記ガラス容器具中に入れ、ダナゾール溶液を作るようダナゾールが完全に溶解されるまで、プロピレングリコールを滴下により加える;
・アルギン酸ナトリウム溶液の調製:
2.0kgの市販のアルギン酸ナトリウムを量り、ガラス容器具中に入れ、アルギン酸ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌している間に、生理食塩水を加える;
・1%塩化カルシウム溶液の調製;
・前記ダナゾール溶液をアルギン酸ナトリウム溶液と混合する;
・混合溶液を無菌注射器によって抽出し、高電圧静電気小滴装置の下で塩化カルシウム溶液中へ加える。ダナゾール含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアは200〜550μmの直径であり、ガラス容器の底に沈降する。
【0032】
前記器具の上部の溶液を静かに移し、次に下部のミクロゲル粒剤を乾燥器に入れ、密封状態で維持する。ドライミクロスフェアの直径は100〜350μmである。使用前にドライミクロスフェアを2、3分間生理食塩水により湿らせるべきである。
【0033】
あるいは、ウェットミクロスフェアは、前記器具の上部の溶液を静かに移し、2回洗浄した後に、すぐに使用することができる。
【0034】
子宮筋層腺をともなう患者に関しては、介在放射線療法または介在超音波を取り入れることによって、動脈造影を行うために標的器官の栄養動脈に管を挿入する。200〜550μmにわたる直径のパクリタキセル含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアが、動脈造影の印象に従って選択される。無菌手術で超選択的な塞栓を行なうために微小管を使用しようと試みる。注射器を使用してボトルから塩化カルシウム溶液を抜き取り、ダナゾール含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア(ウエットボール)をすすぐために等容量の生理食塩水を3回加える、またはボトルから上述の塩化カルシウム溶液を抜き取り、等容量の生理食塩水を加え、無菌ボウルの中へ生理食塩水およびミクロスフェアを注ぐ。50〜60 mLの生理食塩水を使用して、ミクロスフェアを1回すすぎ、洗浄液を廃棄し、次に均一に混合するために適正量または希釈した造影剤を加え(造影剤中で完全に浮かぶようミクロスフェア放置する)、蛍光透視法の下でミクロカテーテルにより (塞栓の過剰投与を抑制する。)、病巣へ、造影剤の流量が明らかに減少する(つまり塞栓が終了する)まで、具体的な条件に依存して造影剤をゆっくり、または複数回でゆっくり注入する。塞栓の影響を判断するために、動脈造影が再び行われる。
【実施例2】
【0035】
ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製
1.被覆形成前の調製
・ガラス容器具の処理:
清浄なガラス容器具を乾燥し、次に3時間300℃で乾燥器中に維持する(殺菌されるまで熱源は取り除かれる);
・ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)溶液の調製:
2kgの市販のゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)を量り、前記ガラス容器具中に入れ、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)溶液を作るようゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)が完全に溶解されるまで、生理食塩水を滴下により加える;
・アルギン酸ナトリウム溶液の調製:
20kgの市販のアルギン酸ナトリウムを量り、ガラス容器具中に入れ、アルギン酸ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌している間に、生理食塩水を加える;
・10%塩化マグネシウム溶液の調製;
・ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)をアルギン酸ナトリウム溶液と混合する;
・混合溶液を無菌注射器によって抽出し、高電圧静電気小滴装置の下で塩化マグネシウム溶液中へ加える。ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアは400〜750μmの直径であり、ガラス容器の底に沈降する。
【0036】
上部の溶液を静かに移し、次に下部のミクロゲル粒剤を乾燥器に入れ、密封状態で維持する。ドライミクロスフェアの直径は200〜550μmである。使用前にドライミクロスフェアを2、3分間生理食塩水により湿らせるべきである。
【0037】
あるいは、ウェットミクロスフェアは、前記器具の上部の溶液を静かに移し2回洗浄した後に、すぐに使用することができる。
【0038】
子宮筋腫をともなう患者に関しては、介在放射線療法または介在超音波を取り入れることによって、動脈造影を行うために標的器官の栄養動脈に管を挿入する。400〜750μmにわたる直径のゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(GnRHa)含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアが、動脈造影の印象に従って選択される。無菌手術で超選択的な塞栓を行なうために微小管を使用しようと試みる。注射器を使用してボトルから塩化マグネシウム溶液を抜き取り、パクリタキセル含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア(ウエットボール)をすすぐために等容量の生理食塩水を3回加える、またはボトルから上述の塩化マグネシウム溶液を抜き取り、等容量の生理食塩水を加え、無菌ボウルの中へ生理食塩水およびミクロスフェアを注ぐ。50〜60 mLの生理食塩水を使用して、ミクロスフェアを1回すすぎ、洗浄液を廃棄し、次に均一に混合するために適正量または希釈した造影剤を加え(造影剤中で完全に浮かぶようミクロスフェアを放置する)、蛍光透視法の下でミクロカテーテルにより (塞栓の過剰投与を抑制する。)、病巣へ、造影剤の流量が明らかに減少する(つまり塞栓が終了する)まで、具体的な条件に依存して造影剤をゆっくり、または複数回でゆっくり注入する。塞栓の影響を判断するために、動脈造影が再び行われる。
【実施例3】
【0039】
アンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製
1.被覆形成前の調製
・ガラス容器具の処理:
清浄なガラス容器具を乾燥し、次に3時間300℃で乾燥器中に維持する(殺菌されるまで熱源は取り除かれる);
・アンドロゲン溶液の調製:
2kgの市販のアンドロゲンを量り、前記ガラス容器具中に入れ、アンドロゲンが完全に溶解されるまで、アセトンを滴下により加える;
・アルギン酸ナトリウム溶液の調製:
50kgの市販のアルギン酸ナトリウムを量り、ガラス容器具中に入れ、アルギン酸ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌している間に、生理食塩水を加える;
・6%塩化マグネシウム溶液の調製;
・前記アンドロゲンをアルギン酸ナトリウム溶液と混合する;
・混合溶液を無菌注射器によって抽出し、高電圧静電気複式ミクロスフェア液滴装置により塩化マグネシウム溶液中へ加える。アンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアは600〜950μmの直径であり、ガラス容器の底に沈降する。
【0040】
上部の溶液を静かに移し、次に下部のミクロゲル粒剤を乾燥器に入れ、密封状態で維持する。ドライミクロスフェアの直径は400〜750μmである。使用前にドライミクロスフェアを2、3分間生理食塩水により湿らせるべきである。
【0041】
子宮筋腫をともなう患者に関しては、介在放射線療法または介在超音波を取り入れることによって、動脈造影を行うために標的器官の栄養動脈にミクロカテーテルを挿入する。600〜750μmにわたる直径のアンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアが、動脈造影の印象に従って選択される。使用中に無菌手術で超選択的な塞栓を行なうために微小管を使用しようと試みる。注射器を使用してボトルから塩化マグネシウム溶液を抜き取り、アンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア(ウエットボール)をすすぐために等容量の生理食塩水を3回加える、またはボトルから上述の塩化マグネシウム溶液を抜き取り、等容量の生理食塩水を加え、無菌ボウルの中へ生理食塩水およびミクロスフェアを注ぐ。50〜60 mLの生理食塩水を使用して、ミクロスフェアを1回すすぎ、洗浄液を廃棄し、次に均一に混合するために適正量または希釈した造影剤を加え(造影剤中で完全に浮かぶようミクロスフェア放置する)、蛍光透視法の下でミクロカテーテルにより (塞栓の過剰投与を抑制する。)、病巣へ、造影剤の流量が明らかに減少する(つまり塞栓が終了する)まで、具体的な条件に依存して造影剤をゆっくり、または複数回でゆっくり注入する。塞栓の影響を判断するために、動脈造影が再び行われる。
【実施例4】
【0042】
ゲストリノン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製
1.被覆形成前の調製
・ガラス容器具の処理:
清浄なガラス容器具を乾燥し、次に3時間300℃で乾燥器中に維持する(殺菌されるまで熱源は取り除かれる);
・ゲストリノン溶液の調製:
2kgの市販のゲストリノンを量り、前記ガラス容器具中に入れ、ゲストリノンが完全に溶解されるまで、プロピレングリコールを滴下により加える;
・アルギン酸ナトリウム溶液の調製:
150kgの市販のアルギン酸ナトリウムを量り、ガラス容器具中に入れ、アルギン酸ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌している間に、生理食塩水を加える;
・3%の塩化カルシウム溶液の調製;
・前記ゲストリノンをアルギン酸ナトリウム溶液と混合する;
・混合溶液を無菌注射器によって抽出し、高電圧静電気複式ミクロスフェア液滴装置により塩化カルシウム溶液中へ加える。アンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアは500〜750μmの直径であり、ガラス容器の底に沈降する。
【0043】
前記器具の上部の溶液を静かに移し、次に下部のミクロゲル粒剤を乾燥器に入れ、密封状態で維持する。ドライミクロスフェアの直径は300〜500μmである。使用前にドライミクロスフェアを2、3分間生理食塩水により湿らせるべきである。
【0044】
あるいは、ウェットミクロスフェアは、前記器具の上部の溶液を静かに移し、2回洗浄した後に、すぐに使用することができる。
【0045】
子宮筋腫をともなう患者に関しては、介在放射線療法または介在超音波を取り入れることによって、動脈造影を行うために標的器官の栄養動脈に管を挿入する。600〜750μmにわたる直径のゲストリノン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアが、動脈造影の印象に従って選択される。使用中に無菌手術で超選択的な塞栓を行なうために微小管を使用しようと試みる。注射器を使用してボトルから塩化カルシウム溶液を抜き取り、アンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア(ウエットボール)をすすぐために等容量の生理食塩水を3回加える、またはボトルから上述の塩化カルシウム溶液を抜き取り、等容量の生理食塩水を加え、無菌ボウルの中へ生理食塩水およびミクロスフェアを注ぐ。50〜60 mLの生理食塩水を使用して、ミクロスフェアを1回すすぎ、洗浄液を廃棄し、次に均一に混合するために適正量または希釈した造影剤を加え(造影剤中で完全に浮かぶようミクロスフェア放置する)、蛍光透視法の下でミクロカテーテルにより (塞栓の過剰投与を抑制する。)、病巣へ、造影剤の流量が明らかに減少する(つまり塞栓が終了する)まで、具体的な条件に依存して造影剤をゆっくり、または複数回でゆっくり注入する。塞栓の影響を判断するために、動脈造影が再び行われる。
【実施例5】
【0046】
ミフェプリストン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製
1.被覆形成前の調製
・ガラス容器具の処理:
清浄なガラス容器具を乾燥し、次に3時間300℃で乾燥器中に維持する(殺菌されるまで熱源は取り除かれる);
・ミフェプリストン溶液の調製:
2kgの市販のミフェプリストンを量り、前記ガラス容器具中に入れ、ゲストリノンが完全に溶解されるまで、プロピレングリコールを滴下により加える;
・アルギン酸ナトリウム溶液の調製:
10kgの市販のアルギン酸ナトリウムを量り、ガラス容器具中に入れ、アルギン酸ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌している間に、生理食塩水を加える;
・10%塩化マグネシウム溶液の調製;
・ミフェプリストンをアルギン酸ナトリウム溶液と混合する;
・混合溶液を無菌注射器によって抽出し、高電圧静電気複式ミクロスフェア液滴装置により塩化マグネシウム溶液中へ加える。アンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアは550〜700μmの直径であり、ガラス容器の底に沈降する。
【0047】
上部の溶液を静かに移し、次に下部のミクロゲル粒剤を乾燥器に入れ、密封状態で維持する。ドライミクロスフェアの直径は250〜550μmである。使用前にドライミクロスフェアを2、3分間生理食塩水により湿らせるべきである。
【0048】
あるいは、ウェットミクロスフェアは、上部の溶液を静かに移し2回洗浄した後に、すぐに使用することができる。
【0049】
子宮筋腫をともなう患者に関しては、介在放射線療法または介在超音波を取り入れることによって、動脈造影を行うために標的器官の栄養動脈に管を挿入する。600〜750μmにわたる直径のミフェプリストン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアが、動脈造影の印象に従って選択される。使用中に無菌手術で超選択的な塞栓を行なうために微小管を使用しようと試みる。注射器を使用してボトルから塩化マグネシウム溶液を抜き取り、アンドロゲン含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア(ウエットボール)をすすぐために等容量の生理食塩水を3回加える、またはボトルから上述の塩化マグネシウム溶液を抜き取り、等容量の生理食塩水を加え、無菌ボウルの中へ生理食塩水およびミクロスフェアを注ぐ。50〜60 mLの生理食塩水を使用して、ミクロスフェアを1回すすぎ、洗浄液を廃棄し、次に均一に混合するために適正量または希釈した造影剤を加え(造影剤中で完全に浮かぶようミクロスフェア放置する)、蛍光透視法の下でミクロカテーテルにより (塞栓の過剰投与を抑制する。)、病巣へ、造影剤の流量が明らかに減少する(つまり塞栓が終了する)まで、具体的な条件に依存して造影剤をゆっくり、または複数回でゆっくり注入する。塞栓の影響を判断するために、動脈造影が再び行われる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明中で薬剤担体として使用されたアルギン酸ナトリウムは天然抽出物であり、天然褐藻類から抽出されたβ-D-マンニトールおよびα-L-グロースで構成された多糖ナトリウム塩の一種である。線状高分剤の一種として、分剤量は50,000〜100,000ダルトンである。高い親水性を有しており、水中に容易に溶解することが可能で粘性コロイドを形成する。巨大分剤結合中で、架橋および凝固がカルシウムイオン作用の下で生じるかもしれない。臨床的必要に応じて、固体球形またはミクロスフェアのような球形へ異なる大きさで加工することができる。この種のミクロスフェアには十分な生体適合性がある。生物の生体内で、カルシウムイオンは徐々に遊離され、ミクロスフェアは分剤鎖切断のために3〜6か月以内に無毒に分解される。分解中には残屑は生成されず、したがって治療目的を達成するために、さらに標的器官中に永久血管塞をもたらすだろう(塞栓剤が2か月間血管中に残る場合、血管内血栓を形成し永久塞栓の目的を達成するだろう。)。実際的な手術において、治療部分付近の物理的な妨げとなる腫瘍または小動脈血管での、この種の「生物学的多機能ミクロスフェア」塞栓材料の使用は、その部分に組織の血管閉鎖、血液供給および栄養物質の阻害をもたらし、したがって虚血および低酸素のために萎縮および壊死を誘導する。その間に標的器官の血液供給の減少によって手術に対して有利な条件を提供するだろう。したがって、婦人科疾患の治療において、時間的、位置的および方向づけされた方法で、局所的病巣組織への徐放性薬剤担体としてこのミクロスフェアを採用することにより、塞栓および医薬品の二重の治療効果を示し、したがって特に子宮筋層腺および子宮筋腫の治療上の有効性を大幅に改善する。
【0051】
本発明は、薬剤の局所的放出および血液供給の中断によって、筋腫および腺筋症を治療する子宮動脈塞栓術(UAE)のための、一連の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤を含む。本発明は、放射線のガイダンスの下で得られた子宮動脈の超選択的動脈内塞栓術による、ダナゾール、GnRHa、ミフェプリストン、ゲストリノン、アンドロゲンのような直接的な治療上の有効性がある婦人科薬剤と、筋腫および腺筋症の治療のための塞栓剤としての生物分解性の薬剤含んでいるミクロスフェアのアルギン酸ナトリウム(KMG)の組合せにより特徴づけられる。薬剤の放出は約2か月の間続き、局所的な投薬および虚血により治療上の二重の有効性を導く。薬剤の徐放は、薬剤の最初の効果により局所的な薬剤濃度を増すことができただけでなく、副作用も低減することができた。その間に、循環系中へ放出された薬剤のいくつかは、性腺軸を調節することにより長時間効果を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸ミクロスフェア血管塞栓剤は薬剤担体および婦人科薬剤としてアルギン酸ナトリウムを含み、前記アルギン酸ナトリウムは前記婦人科薬剤を含む、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【請求項2】
前記アルギン酸ナトリウムおよび前記婦人科薬剤の重量比は、1:1から90:1まで変動する、請求項1に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【請求項3】
前記婦人科薬剤はダナゾール、GnRHa、ミフェプリストン、ゲストリノンまたはアンドロゲンである、請求項1に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【請求項4】
前記ミクロゲルアルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤は硬化液中で保存するミクロゲル粒子またはミクロスフェアである、請求項1に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【請求項5】
前記ミクロゲルアルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓子は粉状微粒子である、請求項1に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【請求項6】
硬化液中で保存する前記ミクロゲル粒子またはミクロスフェアの直径は、300から550μmまで、500から750μmまで、または700から950μmまでそれぞれ変動する、請求項4に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【請求項7】
前記粉状微粒子の直径は、100から350μmまで、200から550μmまで、または400から750μmまでそれぞれ変動する、請求項5に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤。
【請求項8】
前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製方法であって、以下の工程:
(1)婦人科薬剤の特定比率の溶解によって婦人科薬剤溶液を調製する;
(2)アルギン酸ナトリウムの特定比率の溶解によってアルギン酸ナトリウム溶液を調製する;
(3)塩化カルシウム、塩化バリウムまたは塩化マグネシウムの1〜10%濃度の溶解によって硬化液を調製する;
(4)婦人科薬剤溶液をアルギン酸ナトリウム溶液と混合し、次に高電圧静電気複式ミクロスフェア液滴発生装置により前記硬化液に混合することによって婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤を得る方法を含む、婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の前記調製方法。
【請求項9】
前記高電圧静電気複式ミクロスフェア液滴発生装置は静電気装置を含み、前記静電気装置は正電極および負電極を有し、正電極はマイクロシリンジ装置の針と接続されており、負電極は硬化液中に浸漬したステンレス鋼線と接続されており、マイクロシリンジ装置中の婦人科薬剤およびアルギン酸ナトリウムの混合物溶液はミクロスフェアを形成するために硬化液の中へ滴下される、請求項8に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製方法。
【請求項10】
前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェアは粉状の微粒子を得るために乾燥される、請求項8または9に記載の婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の調製方法。
【請求項11】
前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤は、血管造影装置の下でミクロカテーテルの使用により、疾患部分の静脈で超選択的に塞栓化する、請求項1から7のいずれか一項に記載の前記婦人科薬剤含有アルギン酸ナトリウムミクロスフェア血管塞栓剤の応用。

【公表番号】特表2008−535870(P2008−535870A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505713(P2008−505713)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000506
【国際公開番号】WO2006/108324
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507339995)ベイジン シェンギュイヤオ サイエンス アンド テクノロジー ディブロプメント コー.,エルティーディ (1)
【出願人】(507340005)オブステトリックス アンド ジェネコロジー ホスピタル オブ フダン ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】