説明

媒体処理装置

【課題】 カード状媒体の形態が多少変形していたとしても、搬送負荷にバラツキが生じるのを防ぐことが可能な媒体処理装置を提供する。
【解決手段】 ICカード20に対して情報の読み取り又は書き込みを行う媒体処理装置(カードリーダ1)において、ICカード20の上面及び下面の少なくとも一部を覆って、ICカード20を収容する収容部材11と、収容部材11に駆動力を伝達する駆動機構12と、を備え、収容部材11は、駆動機構12によって、ICカード20が収容される収容位置から、ICカード20に対して情報の読み取り又は書き込みが行われる処理位置との間を移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銀行カードやクレジットカードなどのカード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みを行う媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金融機関などで使用され、キャッシュレスや個人認証などを実現するカードとして、プラスチック基板表面に磁気ストライプが形成された磁気カードや、プラスチック基板内部に集積回路チップ(ICチップ)が埋設されるとともに、表面にIC端子が配置されたICカードがある。そして、これら磁気カードやICカードに対する情報の記録又は再生は、磁気ヘッドやIC接点を備えたカードリーダによって行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたカードリーダは、磁気カード表面上の磁気ストライプに磁気ヘッドを接触・摺動させることで、磁気カードに格納された磁気情報を読み取ったり、磁気カードに対して新たな磁気情報を書き込んだりする。また、ICカード表面上の金属端子(外部端子)にIC接点を接触・当接させることで、ICカードに格納された電子情報を読み取ったり、ICカードに対して新たな電子情報を書き込んだりする。
【0004】
ここで、特許文献1に開示されたカードリーダは、カード挿入口から挿入された磁気カード又はICカードを、磁気情報又は電子情報の読み取り又は書き込みを行うことが可能な位置まで搬送するために、複数の搬送ローラと、これらに掛け渡されたベルトとを有している。そして、これら複数の搬送ローラのうちの1つを駆動モータに連結することによって、磁気カード又はICカードを、複数のローラで挟みつつ、カードリーダの奥まで搬送することができるようになっている。
【0005】
このように、特許文献1に開示されたカードリーダでは、カード搬送を行うにあたって、複数の搬送ローラ(例えばゴムローラなど)が用いられている。なお、搬送ローラ以外にも、例えば、ベルトによって直接カード搬送を行ったり、或いは、カードをトレイに載せてカード搬送を行ったりする場合もある。
【0006】
【特許文献1】特開2006−031432号公報(段落番号[0033])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した各種カード搬送では、カードリーダに挿入されるカードの形態如何によって、搬送負荷にバラツキが生じる、という問題がある。
【0008】
具体的に説明すると、カードリーダに挿入されるカードの中には、平らで真っ直ぐなカードだけでなく、湾曲したり一部が曲がったりしているカードもある。そして、後者のカードが挿入された場合には、そのカードの湾曲部分から搬送路に対して圧力が加わるため、そのカードが搬送路内を移動する際に、前者のカードが挿入された場合と比べて、より大きな摩擦が生じる。その結果、後者のカードが挿入された場合には、前者のカードが挿入された場合と比べて、カード搬送の負荷が増大する。
【0009】
このようなカードの形態に起因した搬送負荷のバラツキは、上述した搬送ローラやベルトによるカード搬送であっても、カードをトレイに載せて行うカード搬送であっても、防ぐことは困難である。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カード状媒体の形態が多少変形していたとしても、搬送負荷にバラツキが生じるのを防ぐことが可能な媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1) カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みを行う媒体処理装置において、前記カード状媒体の上面及び下面の少なくとも一部を覆って、前記カード状媒体を収容する収容部材と、前記収容部材に駆動力を伝達する駆動機構と、を備え、前記収容部材は、前記駆動機構によって、前記カード状媒体が収容される収容位置から、前記カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みが行われる処理位置との間を移動することを特徴とする媒体処理装置。
【0013】
本発明によれば、媒体処理装置に、カード状媒体の上面及び下面の少なくとも一部を覆って、カード状媒体を収容する収容部材と、その収容部材に駆動力を伝達する駆動機構と、を設け、収容部材にカード状媒体が収容される収容位置から、カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みが行われる処理位置までの間を、駆動機構によって収容部材が移動し得るようにしたので、カード状媒体の形態に起因した搬送負荷のバラツキが生じるのを防ぐことができる。
【0014】
すなわち、カード状媒体の形態が多少変形していたとしても、収容部材でその上面及び下面の少なくとも一部を覆うことによって、カード状媒体の湾曲部分からの圧力は、搬送路ではなく収容部材に対して加わることになる(カード状媒体の形態の変形分を、収容部材によって吸収することになる)。そして、上述した駆動機構によって、カード状媒体が収容された収容部材を、媒体処理装置内部(カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みが行われる処理位置)に移動させることから、結果的に、カード状媒体の形態が多少変形していたとしても、そのことを理由として、収容部材の移動に負荷がかかるわけではない。したがって、カード状媒体の形態に起因した搬送負荷のバラツキが生じるのを防ぐことができる。
【0015】
特に、本発明によれば、アクチュエータを小型化し、ひいては媒体処理装置の小型化・コスト削減を図ることもできる。詳細に説明すると、一般的なカードリーダ設計では、カード状媒体の形態が変形して、カード搬送の負荷が増大した場合を考慮して、ある程度余分なパワーをもたせたアクチュエータを使用する。そのため、小型かつ安価のアクチュエータを使用するのは困難になっている。
【0016】
一方で、本発明によれば、カード状媒体の形態に起因した搬送負荷のバラツキを防ぐことによって、カード搬送の負荷が増大した場合を考慮する必要がなくなるので、小型かつ安価のアクチュエータを使用しても適切にカード搬送を行うことができ、ひいては媒体処理装置の小型化・コスト削減を図ることができる。
【0017】
ここで、「収容部材」は、カード状媒体の「上面及び下面の少なくとも一部を覆って」、カード状媒体を収容することとしているが、これは、収容部材が、カード状媒体を完全に覆う場合は勿論のこと、例えば、コの字形状の側断面を有していて、カード状媒体の上面の一部(例えば約半分)と下面の一部(例えば約半分)とを覆う場合も含む趣旨である。すなわち、本発明に係る媒体処理装置では、カード状媒体の全体が、収容部材の内部に収容されていなければならないわけではない。なお、「覆う」とは、収容部材とカード状媒体が接触して覆っている場合は勿論のこと、収容部材とカード状媒体が所定の間隙を隔てて覆っている場合も含む趣旨である。
【0018】
また、「駆動機構」は、例えばアクチュエータなどの所定の駆動源から「収容部材に駆動力を伝達する」ものであるが、伝達方法の如何については問わない。例えば、所定の駆動源から複数の平歯車を介して駆動力を伝達してもよいし、ラックアンドピニオン(小歯車)を介して駆動力を伝達してもよいし、ウォームアンドホイールを介して駆動力を伝達してもよいし、或いは、ベルトやゴムローラ等を介して駆動力を伝達してもよい。
【0019】
さらに、カード状媒体が収容される「収容位置」とは、カード状媒体を収容部材に収容し、収容部材の移動が開始される直前の位置を意味する。そして、カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みが行われる「処理位置」とは、収容部材の移動が完了した直後の位置を意味する。したがって、カード状媒体が媒体処理装置(収容部材)に挿入されると、収容部材は「収容位置」から「処理位置」まで移動し、情報の読み取り又は書き込みが行われる。そして、情報の読み取り又は書き込みが完了すると、収容部材は「処理位置」から「収容位置」まで移動し、カード状媒体の排出が行われる。
【0020】
(2) 前記収容部材は、前記カード状媒体を当該収容部材に収容された状態に保持する保持部材を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【0021】
本発明によれば、上述した収容部材には、カード状媒体を収容部材に収容された状態に保持する保持部材が設けられることとしたので、収容部材が移動する直前に、又は、収容部材が移動している最中に、カード状媒体が収容部材から抜け出るのを防ぐことができる。
【0022】
ここで、「保持部材」としては、例えば後述する押圧部材によって、カード状媒体を収容部材の一面に押さえつけることが考えられるが、その他、例えば2個の押圧部材を用いてカード状媒体を(厚さ方向又は厚さ方向と直交する方向に)挟みこんでもよい。また、例えば予めカード状媒体に係合穴を開けておく一方、収容部材に、その係合穴に係合する係合突起部を設け、カード状媒体の収容完了後、これら係合穴と係合突起部を係合させることによって、カード状媒体が収容部材から抜け出るのを防いでもよい。
【0023】
(3) 前記収容部材は、前記カード状媒体が載置される下面板と、当該下面板に対向して前記カード状媒体の上面を覆う上面板と、を有し、前記保持部材は、前記下面板又は前記上面板のいずれか一方に臨んで、前記カード状媒体を前記下面板又は前記上面板のいずれか他方に押圧する押圧部材であって、前記押圧部材の押圧力は、前記収容部材が前記収容位置から前記処理位置へ移動するにつれて増加することを特徴とする媒体処理装置。
【0024】
本発明によれば、上述した収容部材は、カード状媒体が載置される下面板と、下面板に対向してカード状媒体の上面を覆う上面板と、を有している。また、上述した保持部材は、下面板又は上面板のいずれか一方に臨んで、カード状媒体を下面板又は上面板のいずれか他方に押圧する押圧部材である。そして、この押圧部材の押圧力は、収容部材が収容位置から処理位置へと移動するにつれて増加する。したがって、収容部材が一旦移動し始めた後に、カード状媒体が収容部材から抜け出るのをより確実に防ぐことができる。
【0025】
なお、押圧力の「増加」については、徐々に増加していくものであってもよいし、所定の距離だけ進むと増加し、更に所定の距離だけ進むと増加する、といったように段階的に増加していくものであってもよい。
【0026】
(4) 前記収容部材は、前記カード状媒体が載置される下面板と、当該下面板に対向して前記カード状媒体の上面を覆う上面板と、を有する箱体であって、前記カード状媒体は、前記上面板の開閉により前記収容部材に収容されることを特徴とする媒体処理装置。
【0027】
本発明によれば、上述した収容部材は、カード状媒体が載置される下面体と、下面体に対向してカード状媒体の上面を覆う上面板と、を有する箱体であって、カード状媒体は、上面板の開閉により収容部材に収容されることとしたので、その全体が箱体の収容部材によって覆われることとなり、ひいてはカード状媒体の形態が如何なるものであったとしても(例えば、カード状媒体の角が曲がっていた場合などでも)、その変形分を吸収することができる。
【0028】
なお、「上面板の開閉」については、カード状媒体を収容部材の中に入れることができる程度に開くとともに、収容部材が収容位置から処理位置へ移動する際の邪魔にならない程度に閉まれば足りる。
【0029】
(5) 前記収容部材は、前記カード状媒体の収容完了を検知するとともに、前記駆動機構による駆動を開始させるセンサを備えることを特徴とする媒体処理装置。
【0030】
本発明によれば、上述した収容部材には、カード状媒体の収容完了を検知するとともに、駆動機構による駆動を開始させるセンサが設けられることとしたので、このセンサによって、カード状媒体の収容から収容部材の移動へとスムーズに移行することができ、ひいては迅速な媒体処理に寄与することができる。
【0031】
(6) 前記収容部材は、前記カード状媒体を前記処理位置から前記収容位置に向けて強制排出させる排出部材を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【0032】
本発明によれば、上述した収容部材には、カード状媒体を処理位置から収容位置に向けて強制排出させる排出部材が設けられることとしたので、何らかの原因でカード状媒体が媒体処理装置内部で詰まってしまった場合には、この排出部材を使って、カード状媒体を媒体処理装置から排出することができる。
【0033】
(7) 前記カード状媒体表面に配置されたIC端子に当接して、前記カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みを行うIC接点を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【0034】
本発明によれば、上述した媒体処理装置に、上述したカード状媒体表面に配置されたIC端子に当接して、カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みを行うIC接点を設けることとしたので、ICカードの形態が多少変形していたとしても、それによる搬送負荷のバラツキが生じるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、カード状媒体の形態が多少変形していた場合であっても、搬送負荷にバラツキが生じるのを防ぐことができる。また、アクチュエータを小型化して、媒体処理装置の小型化・コスト削減に寄与することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係るカードリーダ1の機械構成を示す斜視図である。なお、本実施形態では、情報の読み取り又は書き込みを行うカード状媒体として、表面にIC端子20aが配置されたICカード20を考えるが、本発明を適用するに当たってカード状媒体の種類の如何は問わない。
【0038】
図1に示すカードリーダ1は、主として、ICカード20を約半分ほど収容する収容部材11と、収容部材11を移動させるための駆動力を伝達する駆動機構12と、を有している。
【0039】
収容部材11は、カード挿入口11aを有しており、ICカード20が挿入されると、そのICカード20の上面及び下面の少なくとも一部を覆うことができるように、断面がコの字形状となっている。すなわち、収容部材11は、ICカード20が載置される下面板と、下面板に対向してICカード20の上面を覆う上面板とを有しており、上面板の一部には、情報処理用穴11bが形成されている。
【0040】
情報処理用穴11bは、ICカード20表面のIC端子20aに対してIC接点(ブロック)17(図3参照)を当接させるための穴である。すなわち、この情報処理穴11bによって、IC端子20aとIC接点17との当接(接触)が許容されることになる。なお、図1では視認し得ないが、IC接点17は、バネ部材15の裏側(ICカード20と対向する側)に、IC接点保持部材15aによって保持されている。また、バネ部材15のうち折り曲げ部15dは、カードリーダ1の本体に固定されるようになっている。また、フレキシブル基板26は、柔軟な材質で形成されており、その一端は、IC接点17に取り付けられ、その他端は、収容部材11に取り付けられている。
【0041】
収容部材11の上面板のうち、ICカード20の挿入方向から見て左端部分には、ピニオンギア12fと噛み合うラック14が設けられている。そして、アクチュエータ13からの駆動力は、駆動機構12及びラック14を介して、収容部材11に伝達されることになる。
【0042】
駆動機構12は、複数の連動ギア12a〜12e及びピニオンギア12fから構成され、アクチュエータ13における回転軸の回転に伴って、その駆動力をピニオンギア12fまで伝達し得るようになっている。特に、本実施形態では、減速比率を高く設定している。これにより、ICカード20を収容部材11に収容する途中で、収容部材11がずれ動いてしまうのを防ぐことができる。つまり、例えば曲がったICカード20が収容部材11に押し込まれる際、減速比率の高い駆動機構12は、収容部材11が処理位置へ移動するのを防ぐためのストッパーとして機能することができる。
【0043】
なお、収容部材11の内部には、ICカード20の収容完了を検知するとともに、駆動機構12による駆動を開始させるセンサ18(図4参照)が設けられているが、センサ18の機械構成については、図4を用いて後述する。また、本実施形態では、駆動機構12の一例としてラックアンドピニオンについて説明したが、例えば、ピニオンギア12f及びラック14をゴムローラ及びゴムベルトに代えてもよいし、その他、ワイヤーやリードスクリュー,ウォームアンドホイールを用いるなど、アクチュエータ13からの駆動力を収容部材11に伝達し得る機構であれば如何なるものであっても構わない。
【0044】
一方で、収容部材11の上面板のうち、ICカード20の挿入方向から見て右端部分には、板バネ16が設けられている。この板バネ16は、ICカード20と当接する当接部16aを有しており、この当接部16aは、収容部材11の下面板に臨んで、ICカード20を下面板に押圧する。これにより、ICカード20を収容部材11に収容された状態に保持できるようになっている。また、この当接部16aの押圧力は、収容部材11がカードリーダ1の奥に移動するにつれて増加するようになっている。これにより、収容部材11が一旦移動し始めた後に、ICカード20が収容部材11から抜け出るのをより確実に防ぐことができるようになっている。
【0045】
なお、本実施形態では、当接部16aは、下面板に臨んで、ICカード20を下面板がある方向へ押圧することとしたが、逆に、上面板に臨んで、ICカード20を上面板がある方向へ押圧するものであってもよい。また、本実施形態では、収容部材11の上面板のうち、ICカード20の挿入方向から見て右端部分に板バネ16を設けることとしたが、この設置場所についてはどの場所であってもよい。ただし、図1に示すICカード20の表面には、エンボス20bが形成されており、このエンボス20bは、ICカード20の表面のうちICカード20の挿入方向から見て左端部分に形成されるのが一般的である。したがって、本実施形態のように、収容部材11の上面板のうち、ICカード20の挿入方向から見て右端部分に板バネ16を設けることによって、エンボス20bが板バネ16の当接部16aによって傷付くのを防ぐことができる。仮に、板バネ16の当接部16aがエンボス20bに何回も乗り上がると、板バネ16の早期劣化を惹き起こす可能性があるが、このような問題も解消することができる。
【0046】
また、本実施形態では、ICカード20を収容部材11に収容された状態に保持する保持部材の一例として、板バネ16を挙げたが、本発明はこれに限られず、例えば、2枚の板バネ16を用いて、ICカード20の厚さ方向(又はこれと直交する方向)に、ICカード20を挟みこんで保持してもよい。
【0047】
図2は、駆動機構12によって収容部材11が移動する様子を説明するための斜視図である。図3は、駆動機構12によって収容部材11が移動する様子を説明するための断面図である。なお、図2(a)及び図3(a)は、ICカード20がカードリーダ1に挿入される前の状態を示している。また、図3において、一点鎖線Xは、カードリーダ1が組み込まれた機器の外枠(フロントパネル)を示す。すなわち、一点鎖線Xよりもカードリーダ1側は、外部からは視認し得ないようになっている。
【0048】
まず、ICカード20は、カードリーダ1(収容部材11)のカード挿入口11aに差し込まれる。そして、ICカード20が収容部材11の奥まで差し込まれると、ICカード20の差し込みが完了する(図2(b)及び図3(b)参照)。図2(b)及び図3(b)に示す収容部材11の位置は、ICカード20が収容される「収容位置」となる。すなわち、収容部材11の移動が開始される直前の位置である。
【0049】
ここで、収容部材11の奥には、駆動機構12による駆動を開始させるセンサ18が設けられている。このセンサ14の機械構成について、図4を用いて詳述する。
【0050】
図4は、収容部材11の奥にセンサ18が設けられている様子を示す図である。なお、図4(b)及び図4(c)は、図4(a)に示す四角枠を拡大した図である。
【0051】
収容部材11の奥には、センサ18としてプッシュスイッチが設けられており(図4(b)参照)、このセンサ18にICカード20の挿入方向先端が衝突すると(図4(c)参照)、ICカード収容完了信号がセンサ18からカードリーダ1の情報処理ユニット(図示せず)に送られる。これを受信した情報処理ユニットは、アクチュエータ13に対して駆動信号を送信する。その結果、アクチュエータ13の回転軸が回転し始め、その駆動力が駆動機構12を介して収容部材11に伝達され、収容部材11は移動を開始する。
【0052】
なお、本実施形態では、センサ18を収容部材11の奥に配置することとしたが、本発明はこれに限られず、収容部材11のどこに配置しても構わない。また、本実施形態ではセンサ18の一例としてプッシュスイッチを用いたが、その他、発光素子及び受光素子による光スイッチを用いることもできる。
【0053】
収容部材11が「収容位置」から移動を開始した後、ICカード20に対して情報の読み取り又は書き込みが行われる位置まで移動したとき、収容部材11の移動は停止する(図2(c)及び図3(c)参照)。図2(c)及び図3(c)に示す収容部材11の位置は、IC接点17を介して、ICカード20に対する情報の読み取り又は書き込みが行われる「処理位置」となる。すなわち、収容部材11の移動が完了した直後の位置を意味する。
【0054】
ICカード20に対する情報の読み取り又は書き込みが行われるまでについて、より具体的に説明する。まず、ICカード20が収容部材11に挿入され、センサ18によって収容部材11の移動が開始される(図3(b)参照)。その後、収容部材11の先端が、IC接点保持部材15aの度当たり15cに当接する。すると、更に収容部材11が装置奥側(図3中右側)へ移動するとともに、ガイドピン15bによって支持されたIC接点保持部材15a(IC接点17)は、収容部材11に接近する方向に移動する。IC接点保持部材15aは、ストッパー25によって装置奥側への移動を停止する。このとき、IC接点保持部材15aが収容部材11へ接近する方向に移動しているので、IC接点17と、ICカード20のIC端子20aとが接触し、IC通信が行われる。収容部材11が収容位置に戻るときには、逆の動作が行われる。なお、本実施形態では、ガイドピン15bを通じてIC接点保持部材15aをICカード20に接近させることとしたが、本発明はこれに限られず、例えば一又は複数のリンク機構を用いて、IC接点保持部材15aをICカード20に接触或いは接離(離反)させてもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係るカードリーダ1では、収容部材11は、駆動機構12を介してアクチュエータ13からの駆動力を受け、ICカードの挿入方向又はその反対方向に前後移動(スライド移動)する(図2,図3)。
【0056】
ここで、ICカード20の形態に多少変形が生じている場合を考える。図5は、湾曲しているICカード20がカードリーダ1に挿入される様子を示す断面図である。
【0057】
図5(a)に示すように、カードリーダ1に挿入されるICカード20は、湾曲して反った形態となっている。しかし、このような形態のICカード20であっても、収容部材11のカード挿入口11aに差し込まれると、図5(b)に示すように、収容部材11の内部で平らで真っ直ぐな形態に近い形態となる。すなわち、ICカード20の湾曲部分20cは、収容部材11によって、その曲率が小さくなる。そして、この状態で、ICカード20が収容された収容部材11は、上述した所定の位置まで移動する(図5(c))。このように、たとえICカード20の形態に多少変形が生じている場合であっても、カード搬送の際(図5(b)→図5(c))、ICカード20の湾曲部分20cからの圧力が、搬送路ではなく収容部材11に対して加わるようにし、ICカード20の形態の変形分を収容部材11で吸収することによって、カード搬送の負荷が増大するのを防ぐことができる。
【0058】
[実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るカードリーダ1によれば、ICカード20が平らで真っ直ぐの形態であったとしても、或いは、ICカード20が湾曲したり一部が曲がったりした形態であったとしても、収容部材11の移動自体は駆動機構12によって行われるので、ICカード20の形態に起因した搬送負荷のバラツキが生じるのを防ぐことができる。そして、搬送負荷のバラツキを抑えることで、小型かつ安価のアクチュエータを使用して、適切にカード搬送を行うことができる。
【0059】
また、収容部材11に収容されたICカード20を、板バネ16の当接部16aによって押さえつけることで、ICカード20が収容部材から抜け出るのを防ぐことができる。特に、本実施形態に係るカードリーダ1では、ICカード20が収容部材11の奥に挿入されればされるほど、板バネ16の当接部16aの押圧力は増大する。これにより、収容部材11が収容位置から処理位置へと移動するにつれて、ICカード20の保持力が増し、ICカード20が収容部材11から抜け出るのをより確実に防ぐことができる。
【0060】
さらに、収容部材11の奥底にはセンサ18が設けられ、ICカード20の収容が完了すると、スムーズに収容部材11の移動へと移行するので、迅速な媒体処理に寄与することができる。
【0061】
なお、本実施形態に係るカードリーダ1では、図1及び図6に示すように、ICカード20を、収容部材11の「処理位置」から「収容位置」向けて強制排出させる排出部材19が設けられている。
【0062】
図6は、排出部材19の強制排出機能について説明するための説明図である。
【0063】
図6(a)に示すように、排出部材19は、作業者がつまんで引っ張るつまみ部19aと、つまみ部19aと連結し、ICカード20を引っかき出す引っかき部19bと、から構成されている。排出部材19を使用しないときは、図1に示すように、つまみ部19aは、その長手方向がカード挿入方向と直交するようになっている。そして、収容部材11が「処理位置」にある場合において、仮に、何らかのトラブルで収容部材11を「収容位置」に戻せなくなったとき、作業者は、つまみ部19aの一部を起こし(図6(a))、そのままつまみ部19aを手前に引く。そうすると、引っかき部19bの折れ曲がった一端は、ICカード20の端部に引っ掛かっていることから、つまみ部19aを引くにつれてICカード20が強制排出されることになる(図6(b))。
【0064】
このように、ICカード20がカードリーダ1内で詰まってしまった場合であっても、排出部材19を使ってICカード20をカードリーダ1から排出することができる。
【0065】
[変形例]
図7は、収容部材11の形態に関する変形例を示す収容部材11Aの概略図である。なお、図7(a)は、上述した実施形態における収容部材11の形態を示している(ただし、上面板の一部に設けられた情報処理穴11bについては、図示を省略している)。
【0066】
図7(b)に示すように、収容部材11Aは、カード挿入口11a付近に切欠部11cが設けられている。これにより、カードを収容部材11Aから取り出すときに、取り出しやすくすることができる。
【0067】
図8は、収容部材11の形態に関する変形例を示す収容部材11Bの概略図である。
【0068】
図8に示す収容部材11Bは、ICカード20が載置される下面板11Bbと、この下面板11Bbに対向してICカード20の上面を覆う上面板11Baと、を有する箱体であって、上面板11Baは開閉可能となっている。
【0069】
ICカード20を収容部材11Bに収容するときには、上面板11Baを開き、開いた隙間からICカード20を収容する(図8(a)参照)。そして、収容部材11Bは、ベルトやワイヤーなどによって、支持板31の上を摺動しつつ、カードリーダ1の内部に移動していく(図8(b)参照)。収容部材11Bの末端(手前側端)が支持板31の先端部まで移動すると、支持板31は収容部材11Bとともにカードリーダ1の内部に移動していく(図8(c)参照)。
【0070】
このように、収容部材の一例として、図8に示すような箱型の収容部材11Bであっても構わない。収容部材11Bであっても、ICカード20の上面及び、下面を覆うことができるので、ICカード20の形態の変形分を吸収することが可能である。なお、収容部材11Bにおいて、収容部材11と同様に、センサ18を取り付けたり(図4参照)、排出部材19を取り付けたり(図6参照)、IC端子20aに対してIC接点17を当接させるための情報処理用穴11bを形成したりしてもよい(図1参照)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る媒体処理装置は、カード状媒体の形態に起因した搬送負荷のバラツキが生じるのを防ぐことが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態に係るカードリーダの機械構成を示す斜視図である。
【図2】駆動機構によって収容部材が移動する様子を説明するための斜視図である。
【図3】駆動機構によって収容部材が移動する様子を説明するための断面図である。
【図4】収容部材の奥にセンサが設けられている様子を示す図である。
【図5】湾曲しているICカードがカードリーダに挿入される様子を示す断面図である。
【図6】排出部材の強制排出機能について説明するための説明図である。
【図7】収容部材の形態に関する変形例を示す収容部材の概略図である。
【図8】収容部材の形態に関する変形例を示す収容部材の概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1 カードリーダ
11 収容部材
12 駆動機構
12a〜12e 連動ギア
12f ピニオンギア
13 アクチュエータ
14 ラック
15 バネ部材
15a IC接点保持部材
16 板バネ
17 IC接点
18 センサ
19 排出部材
20 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みを行う媒体処理装置において、
前記カード状媒体の上面及び下面の少なくとも一部を覆って、前記カード状媒体を収容する収容部材と、
前記収容部材に駆動力を伝達する駆動機構と、を備え、
前記収容部材は、前記駆動機構によって、前記カード状媒体が収容される収容位置から、前記カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みが行われる処理位置との間を移動することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記収容部材は、前記カード状媒体を当該収容部材に収容された状態に保持する保持部材を備えることを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記収容部材は、前記カード状媒体が載置される下面板と、当該下面板に対向して前記カード状媒体の上面を覆う上面板と、を有し、
前記保持部材は、前記下面板又は前記上面板のいずれか一方に臨んで、前記カード状媒体を前記下面板又は前記上面板のいずれか他方に押圧する押圧部材であって、
前記押圧部材の押圧力は、前記収容部材が前記収容位置から前記処理位置へ移動するにつれて増加することを特徴とする請求項2記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記収容部材は、前記カード状媒体が載置される下面板と、当該下面板に対向して前記カード状媒体の上面を覆う上面板と、を有する箱体であって、
前記カード状媒体は、前記上面板の開閉により前記収容部材に収容されることを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記収容部材は、前記カード状媒体の収容完了を検知するとともに、前記駆動機構による駆動を開始させるセンサを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記収容部材は、前記カード状媒体を前記処理位置から前記収容位置に向けて強制排出させる排出部材を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記カード状媒体表面に配置されたIC端子に当接して、前記カード状媒体に対して情報の読み取り又は書き込みを行うIC接点を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の媒体処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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