説明

媒体搬送装置

【課題】表裏を反転するために反転路に搬送した媒体を確実に共通搬送路に搬送するための手段を提供する。
【解決手段】共通搬送路2と、共通搬送路2から分岐させた湾曲した形状の分岐搬送路3と、分岐搬送路3の終端から上方に向かって傾斜して延びるように設けられた反転路6と、反転路6の分岐搬送路3との接続部分から分岐して分岐搬送路3の下方で共通搬送路2に繋がる合流搬送路7とを有し、反転路6は少なくとも乗車券の下面を支持する下ガイド板15により構成され、分岐搬送路3から反転路6に搬送した乗車券を、下ガイド板15に沿って自重により滑らせて合流搬送路7に落下させ、合流搬送路7により共通搬送路2に搬送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗車券等の媒体を搬送する媒体搬送装置に関し、特に媒体の寸法に関わらず媒体の表裏を反転させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体搬送装置は、表裏を反転させる紙幣を反転前搬送路によって反転プール部に搬送することで、その紙幣が縦向きの状態で反転プール部に突入し、反転アーム部を回動させることでその先端部に取り付けた反転ローラによって縦向きとなっている紙幣の上端部を搬送ローラに押し付け、当該搬送ローラを回転させることにより紙幣を反転後搬送路に繰り出し、これによって紙幣の表裏を反転させた状態で、その第3搬送路へと送り出している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−18888号公報(段落「0015」−段落「0017」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、本装置を搭載する自動取引装置に規格よりも短い長さの券が投入され、その券を反転プール部に搬送してしまったとき反転プール部に突入した券の上端部に反転ローラが接触できないと、そのまま券が反転プール部に残留し、搬送エラーが発生してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、媒体を搬送する共通搬送路と、表裏を反転させる媒体を搬送するために前記共通搬送路から分岐させた湾曲した形状の分岐搬送路と、前記分岐搬送路の終端から上方に向かって傾斜して延びるように設けられた反転路と、該反転路の前記分岐搬送路との接続部分から分岐して前記分岐搬送路の下方で前記共通搬送路に繋がる合流搬送路とを有し、前記反転路は少なくとも媒体の下面を支持するガイド板により構成され、前記分岐搬送路から前記反転路に搬送した媒体を、前記ガイド板に沿って自重により滑らせて前記合流搬送路に落下させ、該合流搬送路により前記共通搬送路に搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
これにより、本発明は、表裏を反転させた媒体を確実に共通搬送路に戻してその先の部位へと搬送できるので、表裏を反転させるために分岐搬送路に搬送した媒体が途中で残留することによる搬送エラーの発生を防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の媒体搬送装置を示す説明図
【図2】舌片ローラと対向ローラとを正面から見た様子を示す説明図
【図3】実施例1の分岐搬送路に乗車券が進入した様子を示す説明図
【図4】実施例1の合流搬送路に乗車券が進入した様子を示す説明図
【図5】実施例2の媒体搬送装置を示す説明図
【図6】実施例2の上ガイド板と下ガイド板との間に進入した乗車券を示す説明図
【図7】実施例2の券落下孔に短券を落下させた様子を示す説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明による媒体搬送装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は実施例1の媒体搬送装置を示す説明図である。
【0011】
図1において、1は媒体としての鉄道の乗車券を取り扱う自動改札機等に搭載される媒体搬送装置であり、特に乗車券の表裏を反転させるための表裏反転機構を示し、図示しない表裏判定部によって判定した乗車券の表裏を揃え、図示しないその先の部位に搬送する。
【0012】
なお乗車券は、普通乗車券、定期乗車券、特急券等、各々規定のサイズが異なるものであり、従って本発明の媒体搬送装置1はサイズが異なる媒体を取り扱うものである。
【0013】
2は共通搬送路であり、図示しない表裏判定部から続く搬送路であり、ベルト等の搬送機構によって構成され、上方から下方に向かって乗車券を搬送する。
【0014】
3は分岐搬送路であり、共通搬送路2から分岐し、図示しないベルト等の搬送機構によって構成され、略U字状に湾曲した形状の搬送路である。
【0015】
4は切替ブレードであり、共通搬送路2と分岐搬送路3との分岐地点に設けられてソレノイド5に接続してそのソレノイド5の駆動によって乗車券の搬送方向を切り替える。
【0016】
6は反転路であり、分岐搬送路3の終端に接続し、搬送されてきた乗車券の上面と対向する上ガイド板14や、乗車券の下面を支持する下ガイド板15等によって構成され、斜め上方に向かって延びるように設けられている。
【0017】
7は合流搬送路であり、図示しないベルト等の搬送機構によって構成されて分岐搬送路3と反転路6との接続部分から分岐し、分岐搬送路3の下方を通るように下方に傾斜し、共通搬送路2に繋がる搬送路であり、分岐搬送路3を介して反転路6に搬送された乗車券を共通搬送路2に搬送する。
【0018】
8は舌片ローラであり、分岐搬送路3と合流搬送路7との間に配置され、外周面に複数枚の舌片を取り付けている。
【0019】
9a、9bは対向ローラであり、分岐搬送路3を通過する乗車券を舌片ローラ8とで挟む位置に配されているのを対向ローラ9aとし、また合流搬送路7を通過する乗車券を舌片ローラ8とで挟む位置に配されているのを対向ローラ9bとする。
【0020】
ここで、図2は舌片ローラと対向ローラとを正面から見た様子を示す説明図である。
【0021】
図2に示すように、舌片ローラ8はその回転軸と同軸上に複数配されている。
【0022】
また、対向ローラ9a、9bは、互いに舌片ローラ8の外側で対向し、また舌片ローラ8間で対向するように配置されている。
【0023】
さらに、舌片ローラ8の舌片と対向ローラ9a、9bの外周面とがオーバーラップするように、対向ローラ9a、9bの各回転軸の位置関係や舌片の長さが定められている。
【0024】
図1において、10は搬送ローラであり、上記の共通搬送路2の途中に配され、図示しない駆動源によって回転する。
【0025】
11は従動ローラであり、図示しない押圧手段によって搬送ローラ10に押圧され、搬送ローラ10の回転に従動して回転する。
【0026】
搬送ローラ10と従動ローラ11とで一対となっており、搬送ローラ10と従動ローラ11は、搬送方向における切替ブレード4の上流側直近に1組、また共通搬送路2と合流搬送路7とが合流する箇所の下流側直近に1組配している。
【0027】
なお、切替ブレード4の傍に配した搬送ローラを10a、従動ローラを11aとし、共通搬送路2と合流搬送路7とが合流する箇所の傍に配した搬送ローラを10b、従動ローラを11bとして区別する。
【0028】
上記反転路6を構成する上ガイド板14の分岐搬送路3側の一端は、対向ローラ9aの近傍で分岐搬送路3の終端の上方に対向する位置まで延びている。
【0029】
また、前記上ガイド板14の一端に対向する下ガイド板15の一端は、対向ローラ9bの近傍に位置しており、これによって反転路6から合流搬送路7へと乗車券の搬送を案内する。
【0030】
上述した構成の作用について説明する。
【0031】
図示しない搬送路の上流から搬送されてきた乗車券の表裏を表裏判定部で判定し、その判定結果をもとに乗車券の反転有無を判断する。
【0032】
ここで、反転が不要である場合、乗車券を共通搬送路2に沿ってその先の部位へと上方から下方に搬送して通常通りの処理を行う。
【0033】
反転が必要である場合、切替ブレード4を動作させることで、搬送ローラ10aと従動ローラ11aとによって狭持搬送されてきた乗車券を、分岐搬送路3に進入させて搬送する。
【0034】
ここで、図3は実施例1の分岐搬送路に乗車券が進入した様子を示す説明図である。
【0035】
分岐搬送路3を通過してきた乗車券は、図3に示すように、対向ローラ9aと舌片ローラ8との間を通過して反転路6に繰り出される。
【0036】
このとき回転する舌片ローラ8の舌片が乗車券の後端を叩くまで、乗車券は反転路6に沿って押し出される。つまり上ガイド板14と下ガイド板15の間で、斜め上方に向かって押し出されていく。
【0037】
図4は実施例1の合流搬送路に乗車券が進入した様子を示す説明図である。
【0038】
舌片ローラ8と対向ローラ9aとの間を通過した乗車券は、斜め上方に向かって押し出される力が作用しなくなり、自重で下ガイド板15に沿って、つまり反転路6の傾斜に沿って滑り落ちる。
【0039】
滑り落ちた乗車券は、図4に示すように舌片ローラ8と対向ローラ9bとの間から合流搬送路7に落下して進入する。
【0040】
このとき、例えば、搬送ローラ10aと従動ローラ11aとに狭持された乗車券の裏面が搬送ローラ10a側を向いていて表裏の反転を行う場合、その乗車券が分岐搬送路3に進入し、舌片ローラ8と対向ローラ9aとの間に入り込んだ際、乗車券の裏面は対向ローラ9a側を向き、そして上ガイド板14と下ガイド板15との間にあるとき、乗車券の裏面は上ガイド板14側を向く。
【0041】
舌片ローラ8と対向ローラ9bとに挟まれた乗車券は、回転する舌片ローラ8の舌片によって共通搬送路2に向かって送り出され、共通搬送路2に到達するとその搬送ローラ10bと従動ローラ11bによって狭持搬送され、その先の部位へと搬送され通常通りの処理がなされる。
【0042】
このとき、上記したように裏面が上ガイド板14側を向いている乗車券が、舌片ローラ8と対向ローラ9bとの間に進入すると、その裏面は舌片ローラ8側に向く。そして共通搬送路2へと到ったとき、乗車券の裏面は従動ローラ11b側を向くようになり、分岐搬送路3に進入する前と比べてその表裏が反転する。
【0043】
以上説明したように、本実施例では、共通搬送路から分岐した分岐搬送路から延びる反転路と、その反転路から下方に延びて共通搬送路に乗車券を戻す合流搬送路を設けることにより、反転路に送り出した乗車券がその自重によって反転路の下ガイド板に沿って滑らせて合流搬送路に落下させて送り込み、合流搬送路によってその乗車券を共通搬送路へと搬送するので、規定の長さよりも短い券を反転路に搬送してしまった場合でも反転路での残留を防止し、従って反転路での残留による搬送エラーの発生を防止することができる。
【0044】
また、従来技術のように反転アーム部や反転ローラ等の乗車券を分岐搬送路から共通搬送路に送り出すための駆動機構を省くことができるので、その分のコストを低減させると共に、簡易な構成とすることができ、媒体搬送装置の小型化を図ることができる。
【実施例2】
【0045】
本実施例は、上記実施例1に対して下ガイド板15の一部が途切れて規定よりも短い長さの券を落下させるための券落下孔を設け、その孔の下方に券落下孔から落下した短い長さの券を収容する券回収庫を設けた点が相違する。
【0046】
図5は実施例2の媒体搬送装置を示す説明図である。
【0047】
図5において、20は券落下孔であり、下ガイド板15の一部を途切れさせて開放することによって構成される孔である。
【0048】
なお、下ガイド板15の途切れている箇所の端部は券回収庫21側に折れ曲がって延びるガイド片22となっており、このガイド片22によって乗車券が上ガイド板14と下ガイド板15との間から外れ、券落下孔20から下ガイド板15の下方に入りこんでしまうのを防いでいる。
【0049】
また、券落下孔20は、規定の寸法よりも短い長さの券を落下させるためのものであり、従って規定の寸法の乗車券が落下しないように、形成される位置が舌片ローラ8によって反転路6に押し出されて下ガイド板15に沿って滑り落ちる直前の状態で斜め向きになっている乗車券の下側端部(合流搬送路7側の端部)の位置よりも高い箇所で、かつ規定の寸法よりも短い券を確実に落下するようにその短い券の下側端部よりも低い箇所とする。
【0050】
なお、乗車券は落下させずに、短い券のみを確実に落下させるため、短い券を券落下孔20を越える箇所まで確実に押し出す勢いを与えるように舌片ローラ8の回転速度等を調整すると共に、規定の寸法の乗車券が券落下孔20を越えないように乗車券の前端部が当接し、舌片ローラ8によって押し出される乗車券の上方への移動を規制する図示しないストッパを下ガイド板15の途中に設けるようにしてもよい。
【0051】
21は券回収庫であり、券落下孔20の下方に配されており、券落下孔20から落下してきた規定よりも短い券を受け止めて収容する。
【0052】
図6は実施例2の上ガイド板と下ガイド板との間に進入した乗車券を示す説明図である。
【0053】
図6に示すように、分岐搬送路3の途中に配された舌片ローラ8と対向ローラ9aに狭持搬送され、先端部が上ガイド板14と下ガイド板15の間に進入してきた乗車券は、その先端部がガイド片22に当接し、舌片ローラ8の回転によってさらに押し出されると、その先端部がガイド片22を乗り越え、つまり券落下孔20の上方を通過する。
【0054】
このとき乗車券は、下ガイド板15に摺接しながら搬送されていく。
【0055】
そして、後端部が舌片ローラ8と対向ローラ9aの間を通過した乗車券は、下ガイド板15との摺接による摩擦によって後端部が券落下孔20に到る手前で止まるように繰り出される。
【0056】
その後乗車券は、上記実施例1と同様にして下ガイド板15に沿って滑り落ちて舌片ローラ8と対向ローラ9bとの間に進入し、合流搬送路7から共通搬送路2へと搬送され、通常通りの処理が行われる。
【0057】
乗車券の規定の長さよりも短い長さの券(短券という。)が媒体搬送装置を搭載する改札機に投入され、その短券を搬送した場合について説明する。
【0058】
ここで図7は実施例2の券落下孔に短券を落下させた様子を示す説明図である。
【0059】
短券を分岐搬送路3に搬送し、舌片ローラ8と対向ローラ9aとによって上ガイド板14と下ガイド板15の間に送り出したとき、短券は下ガイド板15と接触面積が小さいために、通常の乗車券と比較して勢いがついた状態で繰り出される。
【0060】
そのため、繰り出された短券は、正常な乗車券よりも上ガイド板14と下ガイド板15間の奥へと進入し、その後端部が図7に示すように券落下孔20の上方に位置することから、短券が下ガイド板15に沿って滑り落ちるときに当該後端部が券落下孔20側に傾き、そのまま券落下孔20からその下方の券回収庫21内に落下して収容される。
【0061】
以上説明したように、本実施例では、上記実施例1の効果に加え、下ガイド板の舌片ローラによって反転路に押し出された乗車券の舌片ローラ側の端部が持ち上がってくる位置よりも上側一部を開口させて券落下孔を形成し、その券落下孔の下方に券回収庫を配置したことで、規定長さよりも短い券が分岐搬送路を介して反転路に押し出されてきたときに、その短い券を券落下孔からその下の券回収庫に落下させ収容することができる。
【0062】
なお、上述した各実施例においては、鉄道の乗車券を取り扱う媒体搬送装置を例に説明したが、これに限らず媒体としての紙幣の表裏を反転させる部位を有する媒体搬送装置に適用しても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 媒体搬送装置
2 共通搬送路
3 分岐搬送路
4 切替ブレード
5 ソレノイド
6 反転路
7 合流搬送路
8 舌片ローラ
9a、9b 対向ローラ
10 搬送ローラ
11 従動ローラ
14 上ガイド板
15 下ガイド板
20 券落下孔
21 券回収庫
22 ガイド片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する共通搬送路と、表裏を反転させる媒体を搬送するために前記共通搬送路から分岐させた湾曲した形状の分岐搬送路と、前記分岐搬送路の終端から上方に向かって傾斜して延びるように設けられた反転路と、該反転路の前記分岐搬送路との接続部分から分岐して前記分岐搬送路の下方で前記共通搬送路に繋がる合流搬送路とを有し、
前記反転路は少なくとも媒体の下面を支持するガイド板により構成され、
前記分岐搬送路から前記反転路に搬送した媒体を、前記ガイド板に沿って自重により滑らせて前記合流搬送路に落下させ、該合流搬送路により前記共通搬送路に搬送することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記分岐搬送路と前記合流搬送路の間に配した複数枚の舌片を有する舌片ローラと、前記合流搬送路を通過する媒体を前記舌片ローラとで挟むように配した対向ローラとを設けたことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、
前記ガイド板の一部を開放して形成した孔と、前記孔の下方に設けた回収庫を備え、
前記孔は、前記反転路に搬送されてきた規定の長さよりも短い寸法の媒体の後端が前記舌片ローラの舌片により前記ガイド板に沿って押上げられる高さよりも低い位置に形成したことを特徴とする媒体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−236037(P2011−236037A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110480(P2010−110480)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591089556)株式会社 沖情報システムズ (276)
【Fターム(参考)】