説明

媒体温度調整システム

【課題】工場における排熱等を有効利用して空冷ヒートポンプの効率を向上することで、極めてエネルギー効率の良い状態で工場に係る媒体温度の調整が可能な媒体温度調整システムを提供する。
【解決手段】媒体温度調整システム1は、塗装工場Fで用いられる脱脂液を加温する温水を加温する空冷ヒートポンプ4を備えており、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に、塗装工場Fに属する乾燥炉Dからの熱(乾燥炉Dの暖気H)が当たるように、空冷ヒートポンプ4を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理電着塗装工程における前処理液の加温や、洗浄工程における洗浄液の加温、あるいは工場における空気の加温(空調や乾燥等)や蒸気生成のための水の加温等に用いられる媒体温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場における媒体温度調整の具体例として、加工水の液温調整を考える。従来、加工水の加温においては、加工水につき、都市ガスやLPG、重油、灯油等の化石燃料を燃焼させて得たエネルギーにより加温していたため、二酸化炭素(CO)の排出量やエネルギー使用量が比較的に多くなってしまっていた。
【0003】
そこで、加工水の加温において、下記特許文献1,2に記載されるような、ヒートポンプを用いた液温調整装置が提案された。この液温調整装置では、ヒートポンプにより効率的な加工水の加温が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−30169号公報
【特許文献2】特開2005−199119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この装置では、単にヒートポンプによって各液を加温するに過ぎないため、エネルギー効率の向上度合に限界がある。又、このような装置におけるヒートポンプは実際には屋外設置されるところ、外気温により加熱能力や効率が左右されるためにメリットが少なくなっている面もある。
【0006】
そこで、請求項1〜3,11に記載の発明は、工場における排熱等を有効利用して空冷ヒートポンプの効率を向上することで、極めてエネルギー効率の良い状態で工場に係る媒体温度の調整が可能な媒体温度調整システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工場で用いられる媒体を加温する加温媒体を加温する空冷ヒートポンプを備えており、前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に、工場に属する熱源からの熱が当たるように、前記空冷ヒートポンプが配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、工場で用いられる媒体を加温する加温媒体を加温する空冷ヒートポンプと、工場に属する熱源からの熱を、前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に導く熱案内手段とを有することを特徴とするものである。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、前記工場に属する熱源からの熱は、工場に属する排温水、及び/又は 工場に属する排温水から生成した加温空気であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記目的に加えて、夏季等において空冷ヒートポンプによる効率の良好な工場における媒体の加温を継続する目的を達成するため、上記発明にあって、更に、前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に冷気を導く冷気案内手段を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記目的に加えて、季節等を問わず効率を良好とする目的を達成するため、上記発明にあって、前記空冷ヒートポンプは、暖房運転及び冷房運転可能であり、前記暖房運転時に、前記冷気案内手段により冷気を前記空気熱交換機に当て、前記冷房運転時に、前記熱を前記空気熱交換機に当てることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、上記目的に加えて、一般に工場に存在しながら有効活用されていない熱を用いて効率の良好化を図る目的を達成するため、上記発明にあって、前記熱源は、工場上部の空気であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、上記目的に加えて、夏季等において空冷ヒートポンプによる効率の良好な工場における媒体の加温を継続する目的を達成するため、上記発明にあって、更に、前記熱を冷却可能な冷却手段を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、上記目的に加えて、空冷ヒートポンプの空気熱交換機の洗浄も行うことでより一層効率の良い工場における媒体の加温を行う目的を達成するため、上記発明にあって、前記冷却手段は、前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に散水を行う自動散水装置であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9,10に記載の発明は、上記目的に加えて、詰まりや死に水等を防止する目的を達成するため、上記発明にあって、前記自動散水装置が定期的に前記散水を行ったり、前記自動散水装置は、前記空冷ヒートポンプの暖房運転時に、前記空気熱交換機に当たる空気を冷却するために前記散水を行ったりすることを特徴とするものである。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項11に記載の発明は、工場で用いられる媒体を加温する加温媒体を加温するヒートポンプと、前記媒体及び/又は加温媒体の温度に応じて、前記媒体を加温する加温媒体の熱量を調整する熱量調節手段を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項12,13に記載の発明は、上記目的に加えて、シンプルに熱量調整をする目的を達成するため、上記発明にあって、前記熱量調節手段は、インバーター制御により前記加温媒体の流量を調整する流量調節手段であったり、前記媒体の加温に用いないで戻す前記加温媒体の分岐流量を調整することで、前記媒体の加温に用いる前記加温媒体の流量を調整する流量調節手段であったりすることを特徴とするものである。
【0018】
請求項14に記載の発明は、上記目的に加えて、シンプルに熱量調整をする目的を達成するため、上記発明にあって、前記媒体は、補給媒体であり、当該補給媒体を加温して補給対象に供給する管に、加温せずに前記補給媒体を補給対象へ補給する分岐管が設けられており、前記熱量調節手段は、加温媒体の前記分岐管への流量を調整する流量調節手段であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項15に記載の発明は、上記目的に加えて、様々な規模や設定温度に対応可能であり、運転の継続を可能としながら効率も一層良好にする目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプは、複数設けられており、当該複数のヒートポンプは、互いに異なる温度設定を有するような複数のグループに分けられており、前記熱量調節手段は、当該グループ毎に運転状態を切替えることによって、加熱媒体の熱量を調整するものであることを特徴とするものである。
【0020】
請求項16,17に記載の発明は、上記目的に加えて、低コストで良好に動作させる目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプは、空冷ヒートポンプであったり、ヒートポンプ給湯器であったりすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、工場で用いられる媒体を加温する空冷ヒートポンプの空気熱交換機に、工場に係る熱(暖気等)が当たる。従って、空気熱交換機に熱を作用させない場合と比べ、空冷ヒートポンプの加温に関する運転効率を向上することができ、従来捨てられていた熱の有効利用が可能になると共に、極めて効率の良い空冷ヒートポンプの動作を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の第1形態に係る媒体温度調整システムのブロック図であり、(b)は比較例に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図2】本発明の第2形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図3】図2の媒体温度調整システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図5】本発明の第4形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図6】図5の媒体温度調整システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第5形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図8】本発明の第6形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図9】本発明の第7形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図10】本発明の第8形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図11】図10の媒体温度調整システムや比較例としての従来方式ないし屋外設置方式のエネルギー使用量等を示す表である。
【図12】本発明の第9形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図13】図12の媒体温度調整システムや比較例としての従来方式ないし屋外設置方式のエネルギー使用量等を示す表である。
【図14】本発明の第10形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図15】本発明の第11形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図16】本発明の第12形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図17】本発明の第13形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図18】本発明の第14形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図19】図18の媒体温度調整システムの動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第15形態に係る媒体温度調整システムの(a)冬季等,(b)夏季等におけるブロック図である。
【図21】本発明の第16形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図22】本発明の第17形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図23】本発明の第18形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図24】本発明の第19形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図25】本発明の第20形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【図26】本発明の第21形態に係る媒体温度調整システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
【0024】
[第1形態]
図1(a)は第1形態に係る媒体温度調整システム1の模式図であって、媒体温度調整システム1は、塗装を施す前に対象物の脱脂を行うための媒体(液体,前処理液)としての脱脂液が入った槽(前処理槽)としての脱脂槽2と、当該脱脂槽2内の脱脂液を加温する空冷ヒートポンプ4とを備えている。なお、対象物としては、自動車(ボディー・パーツ)や、建設土木機械、特殊車両、鋼製家具、鋼製建具、自動販売機、重電機器、農業機械、プレハブ鉄骨、ハードディスクドライブ、マンホール蓋、空調機、あるいはこれらの部品等が挙げられる。又、前処理槽としては、脱脂槽の他、湯洗槽、予備脱脂槽、下地皮膜形成等のための化成槽等あるいはこれらの組合せを挙げることができる。
【0025】
空冷ヒートポンプ4には、塗装工場Fで用いられる脱脂液を加温するため脱脂槽2に加温媒体としての温水を供給する供給パイプ12が接続されていると共に、当該温水を脱脂槽2から空冷ヒートポンプ4へ戻す戻りパイプ14が接続されている。なお、各パイプには、図示しない熱交換機やタンク、温水に係る流量調節弁等の熱量調節手段や熱量調節のための温水に関する温度センサが介装されることがあり、又熱量調節を制御する自動制御手段が設けられることがある。又、パイプを分岐させる等、パイプの配置を適宜変更して良い。更に、空冷ヒートポンプ4は、温水につき、直接加熱しても良いし、あるいは自身の内部に配された内部媒体(冷媒)を加熱し、当該内部媒体と温水とが熱交換されることで温水の加温がなされるようにしても良い。又、内部媒体を加温媒体とし、工場で用いられる媒体を空冷ヒートポンプ4に導入して加温するようにして良い。加えて、温水以外の加温媒体を採用しても良い。
【0026】
そして、媒体温度調整システム1は、塗装工場F内に設置されている。又、塗装工場F内には、対象物を脱脂槽2に浸す脱脂工程の後工程である水切り乾燥工程のための乾燥炉Dが配置されており、塗装工場Fに熱源としての乾燥炉Dが属している。更に、乾燥炉Dあるいは空冷ヒートポンプ4は、乾燥炉Dの暖気H(熱を有する排気、放熱)が空冷ヒートポンプ4の図示しない空気熱交換機に当たるように、配置されている。なお、熱源として、乾燥炉Dの他、焼付け工程に係る焼付け炉や、塗装工場Fに係るコンプレッサー、変圧器(電気室)又はボイラー、あるいはこれらの組合せを用いることができる。
【0027】
一方、図1(b)は媒体温度調整システム1と異なり空冷ヒートポンプを塗装工場Fの外に配置した比較例を示すものであって、空冷ヒートポンプの空気熱交換機には外気が当てられる。なお、当該比較例においては、空冷ヒートポンプによる加温のみでは加温負荷に追従できない事態に備え、図示しないボイラーから供給される蒸気により脱脂槽2を追加的に加温するための回路が設置されている。なお、一般に空冷ヒートポンプは、空気熱交換機における外気の温度が低い場合、温水を加温する効率が悪化して加熱能力も低くなり、温水供給温度が増すと更に効率が悪化し加熱能力が低減する。
【0028】
このような媒体温度調整システム1は、次に説明するように動作する。
【0029】
例えば、図1(a)の媒体温度調整システム1にあって、脱脂槽2の脱脂液を摂氏60度(以下同様)に保温するための加温負荷が73kW(キロワット)であり、塗装工場F内は乾燥炉D(120度)の屋内設置等により25度であったとする。この場合、空冷ヒートポンプ4からは温水73kW(70度)の供給が必要であるが、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に25度の暖気Hが当たっている(暖気Hを吸わせている)ため、空冷ヒートポンプ4のCOP(Coefficient of Performance、効率)は2.7となり、空冷ヒートポンプ4への電気Vの入力は27kWとなる。なお、加温負荷の変動には、空冷ヒートポンプ4の運転状態の変更や熱量調整手段による温水の熱量変更等により対応する。
【0030】
一方、図1(b)の比較例において、上記と同様に加温する場合、空冷ヒートポンプの空気熱交換機に5度の外気が当たっていると、空冷ヒートポンプのCOPは2.1となり、電気入力23kWで温水49kWしか供給できないため、蒸気24kWで追加的に加温し、脱脂槽2の加温負荷に対応する。
【0031】
以上の媒体温度調整システム1は、塗装工場Fで用いられる脱脂液を加温する温水を加温する空冷ヒートポンプ4を備えており、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に、塗装工場Fに属する乾燥炉Dからの熱(乾燥炉Dの暖気H)が当たるように、空冷ヒートポンプ4を配置している。
【0032】
従って、比較例のように空冷ヒートポンプを屋外に設置し、空気熱交換機に外気を当てる場合に比べて、空冷ヒートポンプ4のCOPを良好なものとし、加熱能力の高い状態で運転することができ、電気Vの入力が比較的に少ない状態で多大な加温を施すことができる。
【0033】
[第2形態]
図2は第2形態に係る媒体温度調整システム21の模式図であって、媒体温度調整システム21は、脱脂槽2や乾燥炉Dに関しては第1形態と変更例も含め同様である。
【0034】
媒体温度調整システム21では、空冷ヒートポンプ4は、塗装工場Fの外に設置されている。塗装工場F内は、乾燥炉Dや前処理工程(脱脂・洗浄・化成)等により、およそ25度に保たれ、5度の外気より暖かい25度の暖気H(熱源からの熱)を含んでいる。供給パイプ12や戻りパイプ14は、塗装工場Fの壁を通っており、外部の空冷ヒートポンプ4と内部の脱脂槽2とに接続されている。なお、空調機等は、塗装工場Fの外に位置していても良い。
【0035】
そして、塗装工場Fと空冷ヒートポンプ4との間には、塗装工場F内の暖気Hを通すダクト22と、ダクト22に装着された工場換気ファン24が配置されている。ダクト22は、塗装工場Fの空冷ヒートポンプ4側の壁から設置されており、工場換気ファン24は、ダクト22の空冷ヒートポンプ4側の部分に設置されている。工場換気ファン24が作動すると、塗装工場F内の暖気Hがダクト22に導かれて排温風Bとして外に排出され、その排温風Bが空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に当てられる。
【0036】
又、ダクト22あるいは工場換気ファン24には、暖気H(排温風B)の熱量を調節する熱量制御手段が設置されている。熱量制御手段としては、工場換気ファン24をインバーター制御して風量等を変化させることにより熱量を変化させるものや、図示しないダンパーを制御することによりダクト22内における流量を変化させて熱量を調整するものや、工場換気ファン24の入口部に一部外気を吸わせて暖気Hに外気を(量を調整のうえで)混合することにより暖気Hの温度を調節するもの等を挙げることができ、図示しない自動制御装置等により実行される。なお、ダクト22及び工場換気ファン24、あるいはこれらと熱量制御手段が熱案内手段を構成する。
【0037】
このような媒体温度調整システム21は、第1形態と同様に動作する。
【0038】
即ち、例えば外気温5度で加温負荷73kWの場合、工場換気ファン24の作動により空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に5度の外気ではなく25度の暖気H(排温風B)が送風され、空冷ヒートポンプ4のCOPが2.1から2.7に向上し、加温能力が49kWから73kWに向上して、加温負荷に追従することができる。
【0039】
又、図3に示すように、熱量制御手段(自動制御装置)や図示しない各種の温度センサにより、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機の空気吸い込み温度が例えば25度以上35度以下になるように制御される。
【0040】
即ち、自動制御手段は、空冷ヒートポンプ4の起動指令を監視し(ステップS1)、当該起動指令がONである場合、空冷ヒートポンプ4の運転を開始する(ステップS2)。更に、自動制御手段は、外気温度が25度未満でないと(ステップS3でNO)、工場換気ファン24を停止すると共に(ステップS4)、空冷ヒートポンプ4の停止指令を監視し(ステップS5)、当該停止指令がONである場合、工場換気ファン24の運転を停止して処理を終了する(ステップS6)。一方、当該停止指令がONでない場合には、ステップS3からの処理を繰り返す。
【0041】
そして、自動制御手段は、外気温度が25度未満であると(ステップS3でYES)、工場換気ファン24における吸い込み温度が外気温度より5度を超えて高いかを判定し(ステップS7)、ステップS7でYESであれば、工場換気ファン24の運転を開始して(ステップS8)、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機の空気吸い込み温度(排温風Bの温度)が25度以下であるか否かを確認する(ステップS9)。一方、自動制御手段は、工場換気ファン24の吸い込み温度が外気温度より5度を超えて高くなければ(ステップS7でNO)、上述のステップS4以降の処理を実行する。
【0042】
自動制御手段は、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度が25度以下である場合(ステップS9でYES)、当該空気吸い込み温度が30度以上となるまで(ステップS10,S12)、工場換気ファン24をインバーターにより風量を徐々に増加させ(ステップS11)、上記のステップS5に移行する。
【0043】
一方、自動制御手段は、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度が25度以下でない場合(ステップS9でNO)、当該温度が35度以上であるか判断する(ステップS13)。自動制御手段は、当該温度が35度以上でない場合(ステップS13でNO)、上記ステップS5に移行する。
【0044】
一方、自動制御手段は、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度が35度以上である場合(ステップS13でYES)、当該空気吸い込み温度が35度以下となるまで(ステップS14,S16)、工場換気ファン24をインバーターにより風量を徐々に低下させ(ステップS15)、上記のステップS5に移行する。
【0045】
このような媒体温度調整システム21は、塗装工場Fで用いられる脱脂液を加温する温水を加温する空冷ヒートポンプ4と、塗装工場Fに属する乾燥炉Dや前処理工程等からの熱を、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導くダクト22ないし工場換気ファン24を有する。
【0046】
従って、第1形態と同様に、空冷ヒートポンプ4のCOPを良好なものとし、加熱能力の高い状態で運転することができ、十分な加熱をしながら効率の良い運転を行うことができる。
【0047】
[第3形態]
図4は第3形態に係る媒体温度調整システム31の模式図であって、媒体温度調整システム31は、外気案内手段が追加される他、第1形態と変更例も含め同様である。
【0048】
即ち、塗装工場Fの外部から内部における空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機の手前にかけて、外気Aを通すダクト32が設置されており、ダクト32にはブロワー34が設けられている。ブロワー34は、ダクト32における空冷ヒートポンプ4側に設置されており、空気熱交換機に外気Aを当てて(暖気Hと共に)吸わせることが可能である。なお、空冷ヒートポンプ4は、温水を供給する(加温を行う)に当たっては、空気熱交換機における空気吸い込み温度が所定温度(例えば40度)以下となっている必要があり、当該所定温度を超えると、空冷ヒートポンプ4の冷媒高圧異常の保護装置が作動して空冷ヒートポンプ4の運転が停止される。なお、ダクト32あるいはブロワー34において、外気Aの流量等を調整する外気熱量調節手段を設置することができる。
【0049】
このような媒体温度調整システム31は、次に説明するように動作する。
【0050】
例えば、脱脂槽2の脱脂液を60度に保温するための加温負荷が73kWであり、塗装工場F内は乾燥炉D(120度)の屋内設置等により60度であり、暖気Hが50度であったとする(夏季等)。この場合、空冷ヒートポンプ4からは温水73kW(70度)の供給が必要であるが、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に50度の暖気Hが当たっており(50度の暖気Hを吸わせており)、空冷ヒートポンプ4への電気Vの入力は27kWで済むものの、そのままでは空冷ヒートポンプ4の運転が停止されることとなる。しかし、ダクト32ないしブロワー34により暖気Hに対して35度の外気Aが混入されるため、空気熱交換機における空気吸い込み温度が40度(所定温度)以下となり、空冷ヒートポンプ4の保護装置を作動させる事態の発生が防止される。
【0051】
なお、外気案内手段又はこれに接続された自動制御装置は、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度(暖気Hの温度)を図示しない温度センサ等により監視して、当該温度が保護装置の作動する所定温度未満の特定温度(例えば35度)以上となると、ブロワー34を起動して外気Aを導入するようにすることができ、又当該特定温度あるいはこれより低い一定温度(例えば30度)未満となると、ブロワー34を停止して外気Aの導入を止めるようにすることができる。なお、自動制御装置は、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度に代えて、あるいはこの温度と共に、空冷ヒートポンプ4の冷媒圧力に基づいて外気案内手段の起動や停止を行うことができる。又、ブロワー34は、インバーターにより風量を制御しても良い。更に、ダクト32を省略する目的のため、工場側面にブロワー24を設置し、ブロワー24から送られた外気が空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸い込まれるように空冷ヒートポンプ4を配置しても良い。
【0052】
以上の第3形態の媒体温度調整システム31は、第1形態と同様に成り、特に空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に外気A(冷気)を(暖気Hに合わせて)導く外気案内手段(冷気案内手段)を備えている。
【0053】
従って、第1形態の媒体温度調整システム31と同様の効果を奏し、更に暖気Hの温度が空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度として高すぎる場合には暖気Hに外気A(冷気)を混合することで空冷ヒートポンプ4の保護装置が作動する事態を防止して、空冷ヒートポンプ4の加温運転を(効率の良い状態で)継続させることができる。
【0054】
[第4形態]
第4形態に係る媒体温度調整システム41は、外気案内手段に代えて冷却手段としての間接散水冷却装置が追加される他、第3形態と変更例も含め同様である。
【0055】
即ち、図5に示すように、乾燥炉Dと空冷ヒートポンプ4との間には、散水により気体を冷却する間接散水冷却装置42が設置されている。間接散水冷却装置42には、水Wの流量(熱量)を調節可能な調節器としての散水弁44を備えた水供給器46が接続されていると共に、水Wを排出する排水ピットPが接続されている。水供給器46は、図示しないタンク等にある水Wを間接散水冷却装置42に供給する。間接散水冷却装置42は、ここではマット状の本体に水供給器46からの水Wを伝わせて流下させるものであり、当該本体に乾燥炉Dからの暖気Hが通るようにして暖気Hを水Wの気化熱等により冷却して冷却エアCとするものである。暖気Hに冷却を施した冷却エアCは、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み口において吸引され、空気熱交換機に当てられる。なお、散水弁44は図示しない自動制御装置に接続されて良い。
【0056】
このような媒体温度調整システム41は、例えば次に説明するように動作する。
【0057】
即ち、図6に示すように、自動制御装置は、空冷ヒートポンプ4の起動指令がONである場合(ステップS41でYES)、空冷ヒートポンプ4の運転を開始する(ステップS42)。そして、自動制御装置は、初期設定として(ステップS43でNO)、散水弁44を所定時間(2分間)全開した後(ステップS44〜S46)、散水弁44を閉止して、ステップS48に移行する。このような動作につき更に詳述すると、工場内に空冷ヒートポンプ4を設置した場合、埃や油分等が間接散水冷却装置42に付くことから、定期的に洗い流すこととし、間接散水冷却装置42の詰まりによる性能低下ないし能力低下を防止するものである。又、定期的な散水を実行することにより、死に水の発生を防止し、サビ等による間接散水冷却装置42の詰まりを防止する。なお、後述の第5,7形態でも、このような動作による同様の作用が現れる。即ち、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に直接定期的に散水することで、空気熱交換機に付着した埃や油分等を洗い流し、性能低下・能力低下が防止される。
【0058】
自動制御装置は、ステップS48において、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機における空気吸い込み温度が特定温度(38度)以上であるか否かを確認する。自動制御装置は、空気吸い込み温度が特定温度以上でなければ(ステップS48でNO)、後述のステップS53に移行する。
【0059】
一方、自動制御装置は、空気吸い込み温度が特定温度以上であれば(ステップS48でYES)、空気吸い込み温度が特定温度あるいはこれより低い所定温度(ここでは35度)以下となるまで、散水弁44を全開する(ステップS49〜S51)。そして、自動制御装置は、空気吸い込み温度が所定温度等となると、散水弁44を閉止して、ステップS53に移行する。
【0060】
自動制御装置は、ステップS53において、空冷ヒートポンプ4の停止指令を監視し、指令が「ON」であれば処理を終了し、そうでなければステップS43以降の処理を継続する。
【0061】
以上の第4形態の媒体温度調整システム41は、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導かれる乾燥炉Dからの暖気Hを冷却可能な間接散水冷却装置42を有するので、第3形態と同様に、暖気Hを空冷ヒートポンプ4の保護装置が働かない状態まで冷却することができ、空冷ヒートポンプ4による効率の良好な脱脂槽2の加温を夏季等において継続することができる。
【0062】
なお、暖気Hに係る冷却手段を間接散水冷却装置42としているため、冷却のための水W(冷媒)が塗装工場F内に飛散する事態を防止することができ、水Wを無駄なく利用して効率の良い冷却に寄与することができる。
【0063】
[第5形態]
図7は第5形態に係る媒体温度調整システム51の模式図であって、媒体温度調整システム51は、乾燥炉Dからの暖気Hを冷却する冷却手段が自動散水装置52となっている他は、第4形態と変更例も含め同様である。
【0064】
即ち、媒体温度調整システム51は、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に対して水Wを散水する自動散水装置52を備えている。自動散水装置52には、水Wの流量(熱量)を調節可能な調節器としての散水弁54を備えた水供給器56が接続されている。水供給器46は、図示しない水道配管・工業用水配管・散水タンク等にある水Wを自動散水装置52に供給する。なお、空冷ヒートポンプ4による脱脂液の加温に代えて、又はこれと共に、空調のための加温や乾燥工程における温風発生用の加温又はこれらの組合せ等を行うことができる。
【0065】
このような媒体温度調整システム51は、第4形態と同様に動作し、例えば空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機における空気吸い込み温度が特定温度以上である場合に、所定温度となるまで自動散水装置52により当該空気熱交換機に対して水Wを吹き付けることで、当該空気熱交換機において吸い込まれる暖気Hを気化熱等により冷却し、保護装置の作動による空冷ヒートポンプ4の自動停止を回避してその運転が継続される。
【0066】
以上の第5形態の媒体温度調整システム51では、第4形態と同様、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度を調節して空冷ヒートポンプ4の運転を継続させ、効率の良好な脱脂槽2の加温を持続させることができる。又、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に水W(媒体)を吹き付けることで当該空気熱交換機の汚れ等を落とすことができ、夏季等はもちろん、冬季等においても一時的に散水することで当該空気熱交換機に付着した埃を洗浄し、空冷ヒートポンプ4における熱交換の効率低下や故障を防止することができる。そして、夏季等においては、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度の低下と空気熱交換機の洗浄とを同時に行うことができ、空冷ヒートポンプ4による加温を極めて効率良く実行することができる。
【0067】
なお、第5形態の変更例として、次に説明するものがある。即ち、中間季においても暖房を要する空調の場合等に、業務用パッケージエアコン(空冷ヒートポンプ4)に散水装置を取り付ける。一般的な業務用パッケージエアコン(空調用の空冷ヒートポンプ4)は、外気温度(空気熱交換機の吸い込み温度)が規定温度(例えば15度)を超えるとヒートポンプサイクルが成り立たずに運転不能となる。そこで、空気熱交換機の吸い込み空気温度を規定温度以下に冷やして業務用パッケージエアコンを運転可能とするため、散水装置を取り付け、散水により吸い込み空気を冷却する。このような散水装置の設置により、外気温度が規定温度を超えていても、業務用パッケージエアコン(空冷ヒートポンプ4)の運転を継続することができる。例えば、28度等の特定温度に年中保持する恒温室における空調においては、外気温度15度以上の中間季でも暖房が必要であるところ、一般的な業務用パッケージエアコンをそのまま設置したのではこのような空調が行えない(中間季に運転が停止してしまう)。そこで散水装置により空気熱交換機の導入空気温度を下げ、外気温度15度以上の中間季でも(散水量ないし冷却量の調整により)吸い込み空気温度を15度以下とし、一般的な業務用パッケージエアコンでも運転可能として、コストに配慮しつつ恒温室の空調を的確に継続して行うことが可能となる。
【0068】
[第6形態]
図8は第6形態に係る媒体温度調整システム61の模式図であって、媒体温度調整システム61は、第2形態及び第4形態を組み合わせるようにして成る。
【0069】
即ち、媒体温度調整システム61は、塗装工場Fに属する暖気Hを排温風Bとして空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導くダクト22及び工場換気ファン24を備えていると共に、工場換気ファン24と空気熱交換機の間に、排温風Bを冷却可能な間接散水冷却装置42を備えている。
【0070】
このような媒体温度調整システム61は、第2形態や第4形態と同様に動作する。即ち、塗装工場Fの暖気Hを排温風Bとして空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に案内することで空冷ヒートポンプ4の効率良い運転を可能とすると共に、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機のための保護装置が作動し得る程に排温風Bが高温であるにもかかわらず工場換気ファン24のインバーター制御の追従遅れ発生時等により風量調整が上手くいかない場合等に、間接散水冷却装置42を作動して排温風Bを保護装置が作動しない温度まで冷却し、空冷ヒートポンプ4の運転を継続する。
【0071】
[第7形態]
図9は第7形態に係る媒体温度調整システム71の模式図であって、媒体温度調整システム61は、第2形態及び第5形態を組み合わせるようにして成る。
【0072】
即ち、媒体温度調整システム71は、塗装工場Fに属する暖気Hを排温風Bとして空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導くダクト22及び工場換気ファン24を備えていると共に、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に対して水Wを散水する自動散水装置52を備えている。
【0073】
このような媒体温度調整システム71は、第2形態や第5形態と同様に動作する。即ち、塗装工場Fの暖気Hを排温風Bとして空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に案内することで空冷ヒートポンプ4の効率良い運転を可能とすると共に、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機のための保護装置が作動し得る程に排温風Bが高温であるにもかかわらず工場換気ファン24のインバーター制御の追従遅れ発生時等により風量調整が上手くいかない場合等に、自動散水装置52を作動して排温風Bを保護装置が作動しない温度まで冷却し、空冷ヒートポンプ4の運転を継続する。又、媒体温度調整システム61では、自動散水装置52を作動することにより空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に付着した埃の洗浄を実施することができ、空冷ヒートポンプ4の効率低下や故障の防止をすることができる。
【0074】
[第8形態]
図10は第8形態に係る媒体温度調整システム81の模式図であって、媒体温度調整システム61は、部品工場F2における洗浄工程に配置され、空冷ヒートポンプ4が部品洗浄のための洗浄液の入った洗浄槽82を加温する他は、第1形態と同様に成る。
【0075】
即ち、媒体温度調整システム81では、部品工場F2に属する乾燥炉Dからの暖気Hが空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に適用され、空冷ヒートポンプ4は、供給パイプ12や戻りパイプ14を介して温水を循環させることにより洗浄槽82を加温する。
【0076】
このような媒体温度調整システム81は、例えば洗浄液を60度に保持するため空冷ヒートポンプ4から70度の温水を供給する一方、120度の乾燥炉Dから発生する25度の暖気Hを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせる場合、図11の表における「第8形態」の欄に示すような動作を行い、後述する「従来方式」や「屋外設置方式」と比較して効率の良い動作を行う。
【0077】
即ち、洗浄槽82を60度に保持するための加温負荷を夏季(6〜9月)15kW/時(kW/h)、中間季(4,5,10,11月)30kW/h、冬季(12〜3月)60kW/hとする。又、都市ガスで加温する蒸気ボイラのみで洗浄槽82を加温する方式を従来方式とし、単に屋外設置した空冷ヒートポンプ4で洗浄槽82を加温し、加温能力不足時に都市ガスで加温する蒸気ボイラを併用する方式(図1(b)に対応する方式)を屋外設置方式とする。更に、屋外設置方式の空冷ヒートポンプや第8形態の空冷ヒートポンプ4の加熱能力(加温能力)やCOPは、最高出湯温度が70度程度である高温出湯型ヒートポンプ給湯器に係るものとしている。加えて、当該蒸気ボイラーの効率を85%とし、CO排出係数は、都市ガスについて、地球温暖化対策の推進に関する法律施行令及び特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令を基に環境省が作成した「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」からの計算値(11000キロカロリー毎ノルマル立方メートル(kcal/Nm),2.3300キログラム(CO)毎ノルマル立方メートル(kg−CO/Nm))を用い、電気について、中部電力株式会社の08年度実績値(860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh),0.4550kg−CO/kWh)を用いる。
【0078】
そして、夏季の1時間内で、従来方式では蒸気ボイラの運転のため1.4Nmの都市ガスを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が35度となるのでCOPが2.7となり5.6kWhの電力を消費し、第8形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に暖気Hを導入せずとも空気吸い込み温度が35度であるため屋外設置方式と同様になる。
【0079】
又、中間季の1時間内で、従来方式では蒸気ボイラの運転のため2.8Nmの都市ガスを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が15度となるのでCOPが2.4となり12.5kWhの電力を消費し、第8形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に暖気Hを導入して空気吸い込み温度を15度から25度へ昇温してCOPが2.7となり、消費電力量が11.1kWhとなる。
【0080】
加えて、冬季の1時間内で、従来方式では、蒸気ボイラの運転のため5.5Nmの都市ガスを使用し、屋外設置方式では、空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が5度となるのでCOPが2.1となり23.3kWhの電力を消費すると共に、空冷ヒートポンプのみでは全ての加熱負荷を賄えないため蒸気ボイラーを運転して1.0Nmの都市ガスを使用し、第8形態では、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に暖気Hを導入して空気吸い込み温度を5度から15度へ昇温してCOPが2.4となり、消費電力は25.0kWhとなって、1台の空冷ヒートポンプ4で全ての加熱負荷が賄える。
【0081】
更に、1日当たりの運転時間や季節毎の運転日数を考慮して季節毎にエネルギー使用量やCO排出量を通算すると、夏季では従来方式でガスが1788Nm・COが4.2トン(ton)、屋外設置方式及び第8形態で電気が7200kWh・COが3.3トン、中間季では従来方式でガスが3664Nm・COが8.5トン、屋外設置方式で電気が16600kWh・COが7.6トン、第8形態で電気が14756kWh・COが6.7トン、冬季では従来方式でガスが7064Nm・COが16.5トン、屋外設置方式でガスが1295Nm・電気が29867kWh・COが電気の13.6トン及びガスの3.0トンを合わせて16.6トン、第8形態で電気が32000kWh・COが14.6トンとなる。
【0082】
そして、各季を合計して年間のエネルギー使用量やCO排出量を割り出すと、CO排出量は従来方式の29.2トンと比較して屋外設置方式で6%削減され(27.4トン)、本発明の第8形態で16%削減される(24.5トン)。又、エネルギー使用量は従来方式の都市ガス12516Nm(原油換算14.9キロリットル)と原油換算量で比較して屋外設置方式では3%増加してしまうが(電気53667kWh・ガス1295Nm・原油換算合計15.3キロリットル)、第8形態で7%削減される(電気53956kWh・原油換算13.9キロリットル)。
【0083】
このように、第8形態に係る媒体温度調整システム81にあっても、第1形態と同様、適宜暖気Hを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入することで、空冷ヒートポンプ4のCOPを良好なものとし、加熱能力の高い状態で運転することができ、エネルギー使用量が比較的に少ない状態で多大な加温を施すことができる。しかも、部品工場F2における洗浄工程において洗浄液を加温することに用いることができる。更に、屋外設置方式のように単に空冷ヒートポンプを屋外設置する場合と異なり、蒸気ボイラーを併用する必要が殆どないし、蒸気ボイラーの代わりに2台目の空冷ヒートポンプを設ける必要もなく、初期コストを抑えることができる。
【0084】
[第9形態]
図12は第9形態に係る媒体温度調整システム91の模式図であって、媒体温度調整システム91は、塗装工場Fに配置され、空冷ヒートポンプ4が脱脂槽2と合わせて化成液の入った化成槽92を加温する他は、第5形態と同様に成る。
【0085】
即ち、媒体温度調整システム91では、供給パイプ12から分岐する脱脂液加温用の分岐供給パイプ92を備えると共に、戻りパイプ14から分岐する、脱脂液を熱交換により加温した温水を戻すための分岐戻りパイプ94を備えており、更に空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に対して水Wを散水する自動散水装置52等を備えている。
【0086】
このような媒体温度調整システム91は、例えば脱脂液ないし洗浄液を45度に保持するため空冷ヒートポンプ4から55度の温水を供給する一方、120度の乾燥炉Dから発生する25度の暖気Hを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせる場合、図13の表における「第9形態」の欄に示すような動作を行い、第8形態と同様の「従来方式」や「屋外設置方式」と比較して効率の良い動作を行う。
【0087】
即ち、脱脂槽2及び化成槽92を45度に保持するための加温負荷を夏季45kW/h・中間季90kW/h・冬季180kW/hとし、屋外設置方式の空冷ヒートポンプや第9形態の空冷ヒートポンプ4の加熱能力やCOPを高外気温度仕様空冷ヒートポンプチラーに係るものとする他は、第8形態と同様にそれぞれの動作を考えることができる。
【0088】
そして、夏季の1時間で、従来方式ではガス4.1Nmを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が35度となるのでCOPが3.7となり12.2kWhの電力を消費し、第9形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に暖気Hを導入せずとも空気吸い込み温度が35度であるため屋外設置方式と同様になる。
【0089】
又、中間季の1時間で、従来方式ではガス8.3Nmを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が15度となるのでCOPが3.7となり24.3kWhの電力を消費し、第9形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に暖気Hを導入して空気吸い込み温度を15度から25度へ昇温するもののCOPは屋外設置方式における3.7と変わらず、消費電力量も同等となる。
【0090】
加えて、冬季の1時間で、従来方式ではガス16.6Nmを使用し、屋外設置方式では空気吸い込み温度が5度でCOPが2.9となり50.7kWhの電力を消費すると共に蒸気ボイラーで3.0Nmの都市ガスを使用し、第8形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に暖気Hを導入し空気吸い込み温度を5度から15度へ昇温してCOPが3.7となり、消費電力は48.6kWhとなって、1台の空冷ヒートポンプ4で全ての加熱負荷が賄える。
【0091】
更に、1日当たりの運転時間や季節毎の運転日数を考慮して季節毎にエネルギー使用量やCO排出量を通算すると、夏季では従来方式でガスが5364Nm・COが12.5トン、屋外設置方式及び第9形態で電気が15762kWh・COが7.2トン、中間季では従来方式でガスが10933Nm・COが25.6トン、屋外設置方式及び第9形態で電気が32303kWh・COが14.7トン、冬季では従来方式でガスが21192Nm・COが49.4トン、屋外設置方式でガスが3885Nm・電気が64883kWh・COが電気の29.5トン及びガスの9.1トンを合わせて38.6トン、第9形態で電気が62270kWh・COが28.3トンとなる。
【0092】
そして、各季を合計して年間のエネルギー使用量やCO排出量を割り出すと、CO排出量は従来方式の87.5トンと比較して屋外設置方式で31%削減され(60.4トン)、本発明の第9形態で43%削減される(50.2トン)。又、エネルギー使用量は従来方式の都市ガス37549Nm(原油換算44.7キロリットル)と原油換算量で比較して屋外設置方式で25%削減され(電気112948kWh・ガス3885Nm・原油換算合計33.7キロリットル)、第9形態で36%削減される(電気110335kWh・原油換算28.4キロリットル)。
【0093】
このように、第9形態に係る媒体温度調整システム91にあっても、第5形態と同様、適宜暖気Hを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入することで、空冷ヒートポンプ4のCOPを良好なものとし、加熱能力の高い状態で運転することができ、エネルギー使用量が比較的に少ない状態で多大な加熱を施すことができ、特にCO排出量は従来方式を基準としておよそ半減され、エネルギー使用量は36%も削減される。又、第8形態と同様に、蒸気ボイラーを併用する必要が殆どないし、蒸気ボイラーの代わりに2台目の空冷ヒートポンプを設ける必要もなく、初期コストを抑えることができる。
【0094】
[第10形態]
図14は第10形態に係る媒体温度調整システム101の模式図であって、媒体温度調整システム101は、媒体温度調整システム101の空冷ヒートポンプ4がコンプレッサー室F3に配置され、コンプレッサー室F3内の空気圧縮機Rが熱源となりコンプレッサー室F3内の暖気Hがダクト22ないし工場換気ファン24に導かれて排温風Bとなる他は、第2形態と同様に成る。
【0095】
このように、媒体温度調整システム101においては、塗装工場から離れた、別の工場としてのあるいは塗装工場に属するコンプレッサー室F3からの暖気Hについても塗装工場に係る空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排温風Bとして導入することができ、第2形態と同様に、空冷ヒートポンプ4の運転効率を向上することができる。
【0096】
[第11形態]
図15は第11形態に係る媒体温度調整システム111の模式図であって、媒体温度調整システム111は、空冷ヒートポンプ4が工場F4の暖房を行うため、工場F4内の空気を熱交換により加温する温水を供給することの他は、第10形態と同様に成る。
【0097】
このように、媒体温度調整システム111においては、コンプレッサー室F3における暖気Hを、工場F4を暖房する空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせることができ、第10形態と同様に、空冷ヒートポンプ4の運転効率を向上することができる。
【0098】
[第12形態]
図16は第12形態に係る媒体温度調整システム121の模式図であって、媒体温度調整システム111は、暖気Hをダクト22ないし工場換気ファン24により空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導く点で、第2形態と共通する。
【0099】
媒体温度調整システム121において、暖気Hは、ボイラー室F5内に有り、蒸気供給パイプ122を介して蒸気Tを供給する蒸気ボイラーJが運転中発する熱を熱源とする。空冷ヒートポンプ4は、水道配管・工業用水配管・散水タンク等にある水Wを給水パイプ124を介し受け付け、これを加温し供給パイプ126を介して蒸気ボイラーJに供給する。
【0100】
第12形態に係る媒体温度調整システム121においても、暖気Hを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせることができ、第2形態と同様に、空冷ヒートポンプ4の運転効率を向上することができる。又、蒸気ボイラーJの余熱を有効利用して蒸気ボイラーJに加温した水Wを供給することができ、蒸気ボイラーJの効率を向上してエネルギー使用量を低減することができる。更に、蒸気ボイラーJの給水系統に空冷ヒートポンプ4を介装してダクト22・工場換気ファン24を設置するだけで媒体温度調整システム121を構成することができ、コストが少なくて済む。
【0101】
[第13形態]
図17は第13形態に係る媒体温度調整システム131の模式図であって、媒体温度調整システム131は、第5形態と第12形態の特徴を併せ持つ。
【0102】
即ち、媒体温度調整システム131は、水Wを温水で(あるいは直接熱交換で)加温して蒸気ボイラーJに供給する空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機にボイラー室F5の暖気Hを導入可能であり、更に当該空気熱交換機に対して散水可能な自動散水装置52を備えている。
【0103】
第13形態に係る媒体温度調整システム131においても、暖気Hを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせることができ、第5形態と同様に、空冷ヒートポンプ4の運転効率を向上すると共に運転継続を図ることができ、空気熱交換機の埃等を除去することができる。又、第12形態と同様に、コストを低減しつつ、蒸気ボイラーJの効率を向上してエネルギー使用量を低減することができる。
【0104】
[第14形態]
図18は第14形態に係る媒体温度調整システム141の模式図であって、媒体温度調整システム141は、ワークを洗浄する洗浄液を蓄える洗浄槽142を備えており、洗浄液(補給対象)に係る補給水143(補給媒体、ここでは純水であるが井戸水や工業用水であっても良い)の温度を調整して洗浄液の温度を調整するものである。なお、洗浄液(の補給水)に代えて、又はこれと共に、脱脂液や化成液あるいはこれらの組合せ等の温度を調整するようにして良い。
【0105】
補給水を通す補給水管143aには、補給水の供給量を調整する補給水供給弁143bが設けられると共に、補給水を温水により加熱するための補給水熱交換機144(ここでは対向流)が設けられ、更に洗浄槽142加熱用の蒸気Tの分岐管145とも接続される熱交換機146が設けられる。補給水熱交換機144には、ヒートポンプ給湯器147からの温水供給管147aとヒートポンプ給湯器147への温水戻り管147bが接続される。温水戻り管147bには、温水循環ポンプ147cが設けられる。なお、分岐管145には熱量調節弁145aが設けられる。又、ヒートポンプ給湯器147は、業務用であっても良いし、家庭用であっても良い。
【0106】
媒体温度調整システム141では、ヒートポンプ給湯器147の入口温度(温水戻り管147bから戻った温水温度)が規定温度(40度)以上となるとヒートポンプサイクルが成り立たずヒートポンプ給湯器147が運転不能となり停止してしまうことに鑑み、例えば次のように動作する。
【0107】
即ち、15度の補給水が補給水熱交換機144及び熱交換機146(蒸気150度)を通過して設定温度(60度)で洗浄槽142に至る。ヒートポンプ給湯器147は、所定温度(65度)の温水を補給水熱交換機144に供給し、熱交換後の温水は温水戻り管147bを通って戻る。戻り温水は、自動制御装置による制御された温水循環ポンプ147cにより、規定温度未満となるような流量とされる。
【0108】
このような動作の詳細を図19に沿い説明すると、自動制御装置は、洗浄槽142の属する洗浄装置が運転中であるか否かを判断し(ステップS61)、運転中でなければ(No)、温水循環ポンプ147cを停止して(ステップS62)、ヒートポンプ給湯器147を停止する(ステップS63)。
【0109】
一方、自動制御装置は、ステップS61で運転中(Yes)と判断すると、補給水供給弁143bが開いているか否かを確認する(ステップS64)。開いていなければ(No)、温水循環ポンプ147cを停止して(ステップS65)、ステップS61へ戻る。一方、開いていれば(ステップS64でYes)、ヒートポンプ給湯器147が自動運転中でない場合のみ自動運転を開始し(ステップS66,S67)、温水循環ポンプ147cが運転中でない場合のみ運転を開始して(ステップS68,S69)、温水戻り温度が補給水143の温度より特定値(8度)だけ大きい値を超えたか否かを判定する(ステップS70)。
【0110】
自動制御装置は、温水戻り温度が補給水温度プラス特定値を超えた場合(Yes)、温水循環ポンプ147cのインバーター制御により温水の流量を減じる(ステップS71)。一方、温水戻り温度が補給水温度プラス特定値以下である場合(No)、補給水熱交換器144の温水出口温度(補給水管143a)が温水供給温度(温水供給管147a)より所定値(10度)だけ小さい値未満であるか否かを把握し、そうである場合のみ温水循環ポンプ147cのインバーター制御により温水の流量を増やす(ステップS72,S73)。そして自動制御装置は処理をステップS61に戻す。
【0111】
第14形態に係る媒体温度調整システム141では、ヒートポンプ給湯器147の温水を用いて補給水を加熱し、温水循環ポンプ147cを用いた流量調整により温水入口温度を既定値以下とするので、極めて効率の良好なヒートポンプ給湯器147による温水供給を媒体温度調整に利用可能とし、その運転を継続することが可能となる。
【0112】
[第15形態]
図20は第15形態に係る媒体温度調整システム151の模式図であって、媒体温度調整システム151にあっては、工場F6内に、冷房又は暖房モードで切替運転可能な空調あるいは温度調整用の空冷ヒートポンプ4が配置される。又、工場F6上部の暖気Hを通すダクト22と、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に隣接する工場ファン152が設けられている。更に、冷気としての外気Aを通すダクト32と、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に隣接するブロワー34が設けられている。
【0113】
動作例として、図20(a)に示すように、冬季等で室温が比較的に低いものの暖房により工場F6の上部に暖気Hが滞留する(15度・上部40度)場合、工場ファン152を作動させ、工場F6上部の暖気Hを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に当て(吸わせ)、暖房運転される空冷ヒートポンプ4の効率・能力を向上させる。
【0114】
一方、夏季等で室温が高い(38度)場合、ブロワー34を作動させて外気Aを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に当て、冷房運転される空冷ヒートポンプ4の運転停止を防止し、効率・能力を向上させる。
【0115】
媒体温度調整システム151では、暖気H発生源が工場F6に無く、あるいは空冷ヒートポンプ4から遠くても、暖房運転時においてもダクト32で暖気Hを搬送することで空冷ヒートポンプ4の効率・能力が向上して大幅に省エネルギー化する。なお、空冷ヒートポンプ4として空冷式排熱回収型ヒートポンプ(冷熱と温熱を同時供給し、空気熱源で冷温熱のヒートポンプバランスを保つ機器)を採用した場合、冷熱供給が温熱供給より大きいと、大気(空気)へ余った熱を放出するため、冷気(外気)を空気熱交換機に当てる。一方、冷熱供給が温熱供給より小さいと、大気(空気)から熱を奪うため、暖気H(工場に属する熱)を空気熱交換機に当てることで効率を上げることができる。
【0116】
[第16形態]
図21は第16形態に係る媒体温度調整システム161の模式図であって、媒体温度調整システム161にあっては、ヒートポンプが空冷ヒートポンプ4であると共に分岐管145や熱交換器146が省略されることを除き、第14形態と同様に成る。媒体温度調整システム161は、洗浄槽142の洗浄液温度を測定する洗浄液温センサ162を備えており、洗浄液温センサ162は自動制御装置Mと接続されている。
【0117】
動作例として、洗浄液を目標温度(65度プラスマイナス2度)に制御する場合、補給水熱交換器144につき補給水を55度から85度まで制御可能とし、空冷ヒートポンプ4を温水温度60〜90度で供給可能とし、自動制御装置Mは、洗浄液温センサ162から逐次得た洗浄液温度に基づいて補給水143の温度を適宜上げたり下げたりする。
【0118】
即ち、自動制御装置Mは、洗浄液温度が所定上値(67度)以上となった場合、空冷ヒートポンプ4の温水供給温度を90度から70度とする。一方、自動制御装置Mは、洗浄液温度が所定下値(63度)以下となった場合、空冷ヒートポンプ4の温水供給温度を70度から90度とする。補給水143(15度)は、温水との熱交換により設定温度(85度)となり、洗浄液温度が目標温度に保たれる。
【0119】
なお、温水供給温度につき更に段階を細かくして徐々に上げ下げしても良い。又、洗浄液温度に代えて、あるいはこれと共に、補給水143の温度に基づいて温水供給温度を変更して良い。更に、外気温度センサを自動制御装置Mに接続して、外気温度に応じ温水供給温度の上限を上げ下げし、空冷ヒートポンプ4の効率が低下する温水温度の運転を避けるようにしても良い。例えば、冬季等で外気温度7度の場合、空冷ヒートポンプ4の効率は、90度の温水供給時でCOP3.0である一方、65度でCOP3.7であり、効率化のため上限を65度に下げる。この場合において洗浄液の補給水143の加温の熱量が不足するときには、他熱源としての蒸気T(150度)の供給量増加により洗浄液の加温をバックアップする。
【0120】
媒体温度調整システム161では、媒体温度に応じて補給媒体に対する加熱量を変更するため、空冷ヒートポンプ4の効率的な運転を継続可能とすることができる。
【0121】
[第17形態]
図22は第17形態に係る媒体温度調整システム171の模式図であって、媒体温度調整システム171にあっては、空冷ヒートポンプ4が補給水管143aに接続されていて補給水143を導入可能とされており、温水回路が省略されていることを除き、第16形態と同様に成る。媒体温度調整システム171は、第16形態と同様に動作し、補給水143を導入して加熱し、洗浄槽142へ供給する。媒体温度調整システム171にあっても、媒体温度に応じて補給媒体に対する加熱量を変更するため、空冷ヒートポンプ4の効率的な運転を継続可能とすることができる。
【0122】
[第18形態]
図23は第18形態に係る媒体温度調整システム181の模式図であって、媒体温度調整システム181にあっては、補給水管143a(の空冷ヒートポンプ4より補給源側)に、三方弁143d(流量調節手段・熱量調節手段)を介して洗浄槽142への分岐管143eが接続され、自動制御装置Mが三方弁143dと接続されることを除き、第17形態と同様に成る。なお、分岐管143は、補給媒体である補給水143を加温せずに直接補給対象である洗浄槽142(洗浄液)へ補給する。
【0123】
媒体温度調整システム181は、第17形態と同様に動作する。即ち、空冷ヒートポンプ4は、三方弁143d通過後の補給水143を導入して加熱し、洗浄槽142へ供給する。自動制御装置Mは、洗浄水温度を監視し、例えば67度になったら、三方弁143dの分岐管143e側を全開(空冷ヒートポンプ4側を全閉)して補給水を全量分岐管143eへ流す一方、64度となったら、三方弁143dの分岐管143e側を閉止(空冷ヒートポンプ4側を全開)して補給水を全量空冷ヒートポンプ4へ流す。なお、三方弁143dにつき分岐管143e側(あるいは空冷ヒートポンプ4側)の開度(流量・熱量)を段階的にしても良い。
【0124】
媒体温度調整システム181にあっても、媒体温度に応じて補給媒体に対する加熱量を補給媒体の分岐量調整により変更するため、空冷ヒートポンプ4の効率的な運転を継続可能とすることができる。
【0125】
[第19形態]
図24は第19形態に係る媒体温度調整システム191の模式図であって、媒体温度調整システム191は、空冷ヒートポンプ4の温水回路に三方弁147d(補給水温度調節弁・補給水加熱用温水熱交換量調節弁)と分岐管147eが設けられる他、第16形態と同様に成る。三方弁147dは、温水供給管147a(補給水熱交換機144の手前)に配置され、分岐管147eは、三方弁147dと温水戻り管147bの間に設置される(分岐すると補給水熱交換機144を通過せずに空冷ヒートポンプ4へ戻る)。自動制御装置Mは三方弁147dと接続されている。
【0126】
媒体温度調整システム191は、第16形態と同様に動作し、自動制御装置Mは、洗浄液温度に応じ、三方弁147dを制御して温水分岐量を調節して、補給水143の加熱量を制御する。例えば、45度の洗浄液に対し、15度の補給水を55度とするため、空冷ヒートポンプ4は60度の温水を供給し、適宜分岐のうえで30度の戻り温水を受ける。
【0127】
媒体温度調整システム191にあっても、媒体温度に応じて補給媒体に対する加熱量を温水分岐量の調整により変更するため、空冷ヒートポンプ4の効率的な運転を継続可能とすることができる。
【0128】
[第20形態]
図25は第20形態に係る媒体温度調整システム201の模式図であって、媒体温度調整システム201は、空冷ヒートポンプ4が複数台(直列に)設けられる他、第16形態と同様に成る。空冷ヒートポンプ4は、温水戻り管147b側から順に設定温度を設けて設置される。自動制御装置Mは、各空冷ヒートポンプ4を制御可能である。
【0129】
例えば、6台の空冷ヒートポンプ4が設けられ、最前の空冷ヒートポンプ4の受け入れ温水設定温度30度・往き(供給)設定温度35度、次いで順に35度・40度,40度・45度,45度・50度,50度・55度,55度・60度と設定されている。最終的に60度前後に加温された温水は補給水熱交換機144に達し、15度の補給水143を55度に加温して、洗浄液を45度前後に保つ。なお、6台の内2台を30度・40度に設定する等、同じ設定温度に属するグループを作り、そのようなグループを複数設けても良いし、温度や設定幅を適宜変更しても良い。温度設定の同じグループに属する空冷ヒートポンプは、1台でも良い。
【0130】
自動制御装置Mは、洗浄液温度を監視し、洗浄液温度が(目標温度より)高い場合、まず最後の(55度・60度に設定された)空冷ヒートポンプ4のみを停止し、温水供給温度を60度から55度へ下げる。又、最後の空冷ヒートポンプ4の運転停止によっても洗浄液温度が下がらない場合、最後から2番目の空冷ヒートポンプ4を停止し、以下同様とする。一方、洗浄液温度が(目標温度より)低い場合、停止された(最前のものに近い)空冷ヒートポンプ4を運転し、温水温度を上げて補給水温度を上げる。
【0131】
以下単独の空冷ヒートポンプ4との比較を含めた具体例につき2例説明する。
【0132】
まず、洗浄槽142の洗浄液を50度に保持するために補給水143を20度から50度にする場合であるが、単独の空冷ヒートポンプ4では、加熱負荷に対応すべく、60度の温水525kcal/分(0.61kW/分)を送る(戻り温度55度)ために、0.23kW/分の電力が消費され、COPが2.6となる(外気温即ち排温風温度16度)。一方、媒体温度調整システム201のように複数のヒートポンプ4を用いる場合では、同様の加熱負荷(戻り温水温度30度・外気温16度)において、最前のものから順にCOP4.1,3.9,3.7,3.3,3.0,2.6となり、総合ではCOP3.4(消費電力0.18kW/分)となって、単独の空冷ヒートポンプ4の場合のCOP2.6(0.23kW/分)より良好となる。
【0133】
次に、洗浄槽142の補給水ではなく、図示しない乾燥炉のエアを加温する場合である(条件や各種値につき特開平5−31417を適宜参照)。エアは20度で導入され、空冷ヒートポンプ4の温水を入れた熱交換機(補給水熱交換機144に相当)による501kcal/分(0.58kW/分)の加熱を受け50度の温風となり、更に乾燥炉からの70度の循環温風と混合され68度の温風となり、更に他熱源としての図示しない都市ガスボイラーによる加熱(1830kcal/分・2.13kW/分)を受けて80度の温風として乾燥炉に供給される。単独の空冷ヒートポンプ4では、供給温水温度60度・戻り温水温度55度でCOP2.6・消費電力0.22kW/分となる(外気16度)。一方、媒体温度調整システム201のように複数のヒートポンプ4を用いる場合(設定温度10度減)では、供給温水温度50度・戻り温水温度20度で各COPが4.1,3.9,3.7,3.3,3.0,2.6となり、総合COP3.4・消費電力0.18kW/分となる(外気16度)。なお、乾燥炉からは70度・65m/分の排気がなされる。
【0134】
以上の媒体温度調整システム201では、複数の空冷ヒートポンプ4を用いているため、温度設定をグループ分けすることで加温量を効率良くあるいはきめ細かに調整することができるし、全体負荷が大きい場合にも対応可能となるし、単独の場合に比べて小型のものを導入することができて、組合せによって初期コストを低減することができ、又総合しても効率を更に良好にすることが可能となって、極めて省エネルギー性の高い媒体温度調整を継続することができる。
【0135】
[第21形態]
図26は第21形態に係る媒体温度調整システム211の模式図であって、媒体温度調整システム201は、第10形態と同様、空気圧縮機Rを備える。空気圧縮機Rには、その排温水が通る排温水管212を介して、当該排温水を冷却するクーリングタワー213が接続されており、クーリングタワー213から空気圧縮機Rへは、冷却水ポンプ214を有する処理後排温水管215が接続されている。又、排温水管212は、第1分岐管216を有しており、第1分岐管216は、第2分岐管217とも接続された三方弁218と、空冷ヒートポンプ4に隣接配置されたラジエター219を備えている。ラジエター219は、工場における送風Uを通し、暖気に変えて空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせる。三方弁218は、自動制御装置により制御され、分岐量を調整することでラジエター219への排温水量(熱量)を調節し、もって送風Uに付与する熱量を調整する(流量調節手段・熱量調節手段)。第2分岐管217は第1分岐管216に合流し、第1分岐管216は空冷ヒートポンプ4に接続される。なお、ラジエター219への熱量調節手段として、排温水の流量調整が可能なインバーター制御されたポンプ等を採用して良い。
【0136】
このように工場に属する排温水から温風(暖気)を生成し、工場に属する熱として空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせることも可能であり、直接工場で発生する暖気を空気熱交換機に当てる場合と同様に、空冷ヒートポンプ4の能力や効率を向上することができる。なお、ラジエターの代わりに、排温水(の一部)を空気熱交換機へ噴射する噴射装置を設け、排温水を空気熱交換機に当てることで、空気熱交換機が吸い込む空気を暖めても良い。又、当該噴射装置を、排温水で加熱した温水を空気熱交換機へ噴射するものとして良い。
【0137】
なお、各形態の変更例は、適宜他の形態にも適用可能である。又、空冷ヒートポンプには、空冷式熱回収型ヒートポンプ(冷熱と温熱を同時供給し、空気熱源で冷温熱のヒートポンプバランスを保つ機器)が含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1,21,31,41,51,61,71,81,91,101,111,121,131,141,151,161,171,181,191,201,211 媒体温度調整システム
2 脱脂槽
4 空冷ヒートポンプ
22 ダクト(熱案内手段)
24 工場換気ファン(熱案内手段)
32 ダクト(外気案内手段)
34 ブロワー(外気案内手段)
42 間接散水冷却装置(冷却手段)
52 自動散水装置(冷却手段)
82,142 洗浄槽
92 化成槽
147 ヒートポンプ給湯器
147c 温水循環ポンプ
A 外気
B 排温風(熱)
D 乾燥炉(熱源)
F 塗装工場(工場)
F2 部品工場(工場)
H 暖気(熱)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場で用いられる媒体を加温する加温媒体を加温する空冷ヒートポンプを備えており、
前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に、工場に属する熱源からの熱が当たるように、前記空冷ヒートポンプが配置されている
ことを特徴とする媒体温度調整システム。
【請求項2】
工場で用いられる媒体を加温する加温媒体を加温する空冷ヒートポンプと、
工場に属する熱源からの熱を、前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に導く熱案内手段と
を有することを特徴とする媒体温度調整システム。
【請求項3】
前記工場に属する熱源からの熱は、工場に属する排温水、及び/又は 工場に属する排温水から生成した加温空気である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の媒体温度調整システム。
【請求項4】
更に、前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に冷気を導く冷気案内手段を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の媒体温度調整システム。
【請求項5】
前記空冷ヒートポンプは、暖房運転及び冷房運転可能であり、
前記冷房運転時に、前記冷気案内手段により冷気を前記空気熱交換機に当て、
前記暖房運転時に、前記工場に属する熱源からの熱を前記空気熱交換機に当てる
ことを特徴とする請求項4に記載の媒体温度調整システム。
【請求項6】
前記熱源は、工場上部の空気である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の媒体温度調整システム。
【請求項7】
更に、前記熱を冷却可能な冷却手段を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の媒体温度調整システム。
【請求項8】
前記冷却手段は、前記空冷ヒートポンプの空気熱交換機に散水を行う自動散水装置である
ことを特徴とする請求項7に記載の媒体温度調整システム。
【請求項9】
前記自動散水装置は、定期的に前記散水を行う
ことを特徴とする請求項8に記載の媒体温度調整システム。
【請求項10】
前記自動散水装置は、前記空冷ヒートポンプの暖房運転時に、前記空気熱交換機に当たる空気を冷却するために前記散水を行う
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の媒体温度調整システム。
【請求項11】
工場で用いられる媒体を加温する加温媒体を加温するヒートポンプと、
前記媒体及び/又は加温媒体の温度に応じて、前記媒体を加温する加温媒体の熱量を調整する熱量調節手段
を備えていることを特徴とする媒体温度調整システム。
【請求項12】
前記熱量調節手段は、インバーター制御により前記加温媒体の流量を調整する流量調節手段である
ことを特徴とする請求項11に記載の媒体温度調整システム。
【請求項13】
前記熱量調節手段は、前記媒体の加温に用いないで戻す前記加温媒体の分岐流量を調整することで、前記媒体の加温に用いる前記加温媒体の流量を調整する流量調節手段である
ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の媒体温度調整システム。
【請求項14】
前記媒体は、補給媒体であり、
当該補給媒体を加温して補給対象に供給する管に、加温せずに前記補給媒体を補給対象へ補給する分岐管が設けられており、
前記熱量調節手段は、加温媒体の前記分岐管への流量を調整する流量調節手段である
ことを特徴とする請求項11ないし請求項13の何れかに記載の媒体温度調整システム。
【請求項15】
前記ヒートポンプは、複数設けられており、
当該複数のヒートポンプは、互いに異なる温度設定を有するような複数のグループに分けられており、
前記熱量調節手段は、当該グループ毎に運転状態を切替えることによって、加熱媒体の熱量を調整するものである
ことを特徴とする請求項11ないし請求項14の何れかに記載の媒体温度調整システム。
【請求項16】
前記ヒートポンプは、空冷ヒートポンプである
ことを特徴とする請求項11ないし請求項15の何れかに記載の媒体温度調整システム。
【請求項17】
前記ヒートポンプは、ヒートポンプ給湯器である
ことを特徴とする請求項11ないし請求項16の何れかに記載の媒体温度調整システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2010−266191(P2010−266191A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95331(P2010−95331)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】