説明

媒体識別装置およびそれに用いる媒体

【課題】紙幣7がスキューしても、磁気センサ2の異常や調整不良となることもなく、確実に紙幣7の真偽判定を行う。
【解決手段】紙幣7の磁気を検出する磁気検出手段と、紙幣7のスキュー角度を検出するスキュー角度検出手段6と、前記検出した磁気と所定の判定基準を比較判定する比較判定手段8とを備え、前記比較判定結果に基づいて紙幣7の真偽判定を行う媒体識別装置1であって、紙幣7は、複数の角度の異なる線を磁気インク7sにより塗付したものであって、前記比較判定手段8は、前記検出したスキュー角度に基づいて前記複数の線のいずれかによる磁気検出出力を選択し、選択した磁気検出出力と前記判定基準とを比較判定し、紙幣7の真偽判定を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の媒体を磁気センサにより識別する媒体識別技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣等の媒体を磁気センサにより識別する媒体識別装置では、媒体のあらかじめ決めた場所に磁気インクを塗付し、この磁気インクの磁気を磁気センサにより測定し、その測定値と所定の基準値とを比較することにより磁気インクの有無を判定し、紙幣等の真偽判定を行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、磁気インクは、特許文献1記載の技術のように、文字等により紙幣に磁気インクを塗付したり、図9に示したように所定の幅のラインを平行に引くようにしたりするものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−242824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9に示したように塗布された磁気インク7sの磁気を検出する場合、上記従来の媒体識別装置でも、図9(a)のように正常な搬送で、搬送方向に略垂直に紙幣7が搬送されるときは磁気インク7sと磁気センサ2は直交するので、同図下側に示したように正常な大きさの磁気センサ出力波形2sを得ることができる。
【0006】
ところが、搬送異常等により図9(b)のようにスキューして搬送されてきた場合では、磁気インク7sと磁気センサ2が斜めになるので、同図下側に示した磁気センサ出力波形2sのように、正常搬送の場合と比較して検出値が小さくなってしまう。このことは、特許文献1のように磁気インクで文字等を塗付した場合も同様である。
【0007】
このように紙幣7がスキューし磁気センサ2の検出出力が小さくなると、あらかじめ設定した基準値以下となって真の媒体であるのに偽の媒体と判定したり、磁気センサ異常や調整不良と判定してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、媒体の磁気を検出する磁気検出手段と、媒体のスキュー角度を検出するスキュー角度検出手段と、前記検出した磁気と所定の判定基準を比較判定する比較判定手段とを備え、前記比較判定結果に基づいて媒体の真偽判定を行う媒体識別装置であって、前記媒体は、複数の角度の異なる線を磁気インクにより塗付したものであって、前記比較判定手段は、前記検出したスキュー角度に基づいて前記複数の線のいずれかによる磁気検出出力を選択し、選択した磁気検出出力と前記判定基準とを比較判定し、媒体の真偽判定を行うようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の媒体識別装置によれば、媒体の磁気を検出する磁気検出手段と、媒体のスキュー角度を検出するスキュー角度検出手段と、前記検出した磁気と所定の判定基準を比較判定する比較判定手段とを備え、前記比較判定結果に基づいて媒体の真偽判定を行う媒体識別装置であって、前記媒体は、複数の角度の異なる線を磁気インクにより塗付したものであって、前記比較判定手段は、前記検出したスキュー角度に基づいて前記複数の線のいずれかによる磁気検出出力を選択し、選択した磁気検出出力と前記判定基準とを比較判定し、媒体の真偽判定を行うようにしたので、紙幣がスキューしても、磁気センサの異常や調整不良となることもなく、確実に真偽判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の媒体識別装置の構成図である。
【図2】実施例1の媒体識別装置の構成図である。
【図3】実施例1の媒体識別装置の機能構成図である。
【図4】実施例1の媒体識別装置の動作説明図である。
【図5】実施例2の媒体識別装置の動作説明図である。
【図6】実施例2の媒体識別装置の動作説明図である。
【図7】実施例2の媒体識別装置の機能構成図である。
【図8】実施例3の媒体識別装置の動作フローチャート図である。
【図9】従来の媒体識別装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。なお、以下の実施例の説明では、便宜上、媒体として紙幣を例として説明するが、磁気インクを塗付して真偽を判定するものであれば、証券でもカードでも本発明を適用することができる。
【実施例1】
【0012】
(構成)
図1は実施例1の媒体識別装置1の構成を示す側面図であり、図2はその上面図である。同図に示したように、実施例1の媒体識別装置は、磁気インクの磁気を検出する磁気検出手段としての磁気センサ2が搬送方向に略垂直に複数配置され、紙幣7の文字や図形を読取るイメージセンサ3が搬送路4の幅方向を覆うように配置されている。
【0013】
駆動ローラと従動ローラからなる搬送ローラ5は、矢印Xinのように搬入されてきた紙幣7をイメージセンサ3、磁気センサ2へと搬送する。
【0014】
センサデータ処理部6は、イメージセンサ3や磁気センサ2のセンサ出力データに所定の処理を行い、紙幣7の判別等を行う機能を有する。紙幣7の磁気インク7sは、図2のように磁性体のラインを角度を変えて数本塗布するように構成されている。
【0015】
図3は、実施例1の媒体識別装置1の機能ブロック図であり、同図に示したように、複数の磁気センサ2の出力およびイメージセンサ3の出力がセンサデータ処理部6に接続され、センサデータ処理部6の出力と判定基準を設定する判定基準値設定部9が比較判定手段としての比較判定部8に接続されている。そして、センサデータ処理部6の出力と設定した判定基準を比較判定部8にて比較し紙幣の真偽を判定し、当該判定結果を図示しない制御部等に出力するようになっている。
【0016】
(動作)
以上の構成により実施例1の媒体識別装置は、以下のように動作する。この動作を図4の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0017】
まず、前述の図1、図2のように矢印Xinのように搬入されてきた紙幣7をイメージセンサ3によりスキャンし、読取ったスキャンデータに基づいてスキュー角度検出手段としてのセンサデータ処理部6にて紙幣7のスキュー角度を算出する。例えば、紙幣7の端部となる黒から白に変化する座標をトレースしてスキュー角度を算出するようにすればよい。
【0018】
次に、複数の磁気センサ2により磁気インクの磁気を読取る。例えば、図4(a)にように時計方向にスキューした場合は、磁気インク7sの最初のラインが磁気センサ2と略平行に通過し、次のラインが斜めに通過し、最後のラインはさらに斜めに通過するので、同図下側に示したように、最初のラインによる磁気センサ出力が最も検出波形が高く正常な出力であり、順に小さくなった出力波形2sが取得される。
【0019】
また、図4(b)にように正常に搬送されてきた場合は、磁気インク7sの最初のラインが磁気センサ2と斜めに通過し、次のラインが略平行に通過し、最後のラインは斜めに通過するので、同図下側に示したように、2番目のラインによる磁気センサ出力が最も高く正常な出力となる。
【0020】
そして、図4(c)にように反時計方向にスキューして搬送されてきた場合は、磁気インク7sの最初のラインが磁気センサ2と斜めに通過し、次のラインがやや斜めに通過し、最後のラインが略平行に通過するので、同図下側に示したように、3番目のラインによる磁気センサ出力が最も高く正常な出力となる。
【0021】
次に、前述のセンサデータ処理部6により算出した紙幣7のスキュー角度により、各ラインによる磁気センサ出力波形2sのうちいずれのラインによる検出出力により紙幣7の真偽判定を行うかを決定する。
【0022】
例えば、スキュー角度が略"0度"で正常に搬送されてきたと判定したとき、すなわち図4(b)であると判定したときは、中央の磁気センサ出力波形2sを用いて、紙幣の真偽判定を行う。同様に、スキュー角度が時計方向にスキューしていると判定したとき、すなわち図4(a)であると判定したときは、最初の磁気センサ出力波形2sを用いて、紙幣の真偽判定を行い、スキュー角度が反時計方向にスキューしていると判定したとき、すなわち図4(c)であると判定したときは、最後の磁気センサ出力波形2sを用いて、紙幣の真偽判定を行う。
【0023】
なお、以上の実施例1の説明では、磁気インク7sを3本塗付した例を説明したが、4本以上としてもよいし、逆に2本としてもよい。
【0024】
(実施例1の効果)
以上のように実施例1の媒体識別装置によれば、紙幣の磁気を検出する磁気検出手段と、紙幣のスキュー角度を検出するスキュー角度検出手段と、前記検出した磁気と所定の判定基準を比較判定する比較判定手段とを備え、前記比較判定結果に基づいて紙幣の真偽判定を行う媒体識別装置であって、前記紙幣は、複数の角度の異なる線を磁気インクにより塗付したものであって、前記比較判定手段は、前記検出したスキュー角度に基づいて前記複数の線のいずれかによる磁気検出出力を選択し、選択した磁気検出出力と前記判定基準とを比較判定し、紙幣の真偽判定を行うようにしたので、紙幣がスキューしても、磁気センサの異常や調整不良となることもなく、確実に真偽判定を行うことができる。
【実施例2】
【0025】
(構成)
実施例2の媒体識別装置の構成は、紙幣7に塗付する磁気インクのパターンが異なるがその他の構成は実施例1の構成と同様であるので、簡略化のためにその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0026】
前述のように、実施例2の媒体識別装置1では、図5(a)に示したように磁気インク7sを円状に塗り潰して塗付する構成となっており、或いは図5(b)に示したように磁気インク7sを円状の輪郭のみに塗付する構成となっている。
【0027】
以上のような構成とすることにより、図5(a)のように塗り潰したときは、同図下側に示したような略台形の磁気センサ出力波形2sが得られ、また、図5(b)にように円の輪郭のみに塗付したときは輪郭の位置で磁気センサ出力波形2sが得られる。
【0028】
(動作)
以上の構成により実施例2の媒体識別装置は、以下のように動作する。この動作を、図6の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0029】
まず、図6(b)のように紙幣7が正常に搬送されてきた場合、中央部の磁気センサ2は、同図下側に示したように円の輪郭のあたりで磁気センサ出力波形2sが得られる波形となる。
【0030】
また、図6(a)のように紙幣7が時計方向にスキューして搬送されてきた場合、中央部の磁気センサ2は上記正常な搬送のときと同じように円の輪郭のあたりで磁気センサ出力波形2sが得られる。
【0031】
また、図6(c)のように紙幣7が反時計方向にスキューして搬送されてきた場合も、中央部の磁気センサ2は上記正常な搬送のときと同じように円の輪郭のあたりで磁気センサ出力波形2sが得られる。
【0032】
従って、紙幣7がスキューしても、あらかじめ設定した判定基準値にて磁気センサ出力波形2sを比較することにより、確実に紙幣7の真偽判定を行うことができる。
【0033】
(実施例2の効果)
以上のように実施例2の媒体識別装置によれば、紙幣を、磁気インクを円状に塗付する構成としたので、紙幣がスキューしてもほぼ同様の磁気センサ出力を得ることができ、所定の基準値に基づいて紙幣の真偽判定を確実に行うことができる。
【実施例3】
【0034】
(構成)
実施例3の媒体識別装置の構成は、機能構成の他は実施例1の構成と同様であるので、簡略化のためにその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0035】
図7は、実施例3の媒体識別装置1の機能ブロック図であり、同図に示したように、複数の磁気センサ2の出力およびイメージセンサ3の出力がセンサデータ処理部16に接続され、センサデータ処理部16は、イメージセンサ3の出力からスキュー角度を算出し当該スキュー角度に基づいて判定基準値を補正する機能を新たに備え、当該補正した判定基準値に基づいて比較判定部8にて紙幣の真偽を判定し、当該判定結果を図示しない制御部等に出力するようになっている。なお、この場合、紙幣7は、磁気インク7sを1本または複数本平行に塗付したものでよい。
【0036】
(動作)
以上の構成により実施例3の媒体識別装置は、以下のように動作する。この動作を、図8の動作フローチャート図を用いて以下詳細に説明する。
【0037】
まず、搬入されてきた紙幣7をイメージセンサ3によりスキャンするとともに、複数の磁気センサ2により磁気インクの磁気を読取る。そして、イメージセンサ7により読取ったスキャンデータに基づいてセンサデータ処理部6により紙幣7のスキュー角度を算出する(ステップS01)。
【0038】
次に、センサデータ処理部6により算出した紙幣7のスキュー角度により、判定基準値を補正する(ステップS02)。例えば、時計方向または反時計方向にθスキューしていたときは、磁気インクの磁気は、角度θに応じて低下するので、角度による低下率βをあらかじめ測定しておき、判定基準値にβ値を乗算して判定基準値を補正する。
【0039】
次に、すべての磁気センサ2の出力値が判定基準より小さいかどうかを判定する(ステップS03)。そして、すべての磁気センサ2の出力値が判定基準値より小さいときは、磁気インク7sが塗付されておらず、真の紙幣ではないと判定し(ステップS04)、一方、いずれかの磁気センサ2の出力値が判定基準値以上のときは、磁気インク7sが塗付されており、真の紙幣であると判定する(ステップS05)。
【0040】
なお、ステップS03にて、すべての磁気センサ出力値が前記補正後の判定基準値より小さいか否かで、紙幣の真偽を判定するように説明したが、すべての磁気センサの出力値を加算し、当該加算した出力値と前記補正後の判定基準値を比較するようにしてもよい。
【0041】
(実施例3の効果)
以上のように実施例3の媒体識別装置によれば、紙幣は平行線を磁気インクにより塗付したものであって、検出した磁気と比較判定する判定基準値はスキュー角度検出手段により検出されたスキュー角度に基づいて補正するようにしたので、紙幣がスキューした場合であっても補正した基準値に基づいて紙幣の真偽判定を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上述べたように、本発明は、紙幣等の媒体を磁気センサにより識別する媒体識別装置を備える自動取引装置などに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 媒体識別装置
2 磁気センサ
2s 磁気センサ出力
3 イメージセンサ
6 センサデータ処理部
7 紙幣
7s 磁気インク
8 比較判定部
9 判定基準値設定部
6、16 センサデータ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の磁気を検出する磁気検出手段と、媒体のスキュー角度を検出するスキュー角度検出手段と、前記検出した磁気を所定の判定基準により比較判定する比較判定手段とを備え、前記比較判定結果に基づいて媒体の真偽判定を行う媒体識別装置であって、
前記媒体は、複数の角度の異なる線を磁気インクにより塗付したものであって、
前記比較判定手段は、前記検出したスキュー角度に基づいて前記複数の線のいずれかによる磁気検出出力を選択し、選択した磁気検出出力を前記判定基準にて比較し、媒体の真偽判定を行うようにしたことを特徴とする媒体識別装置。
【請求項2】
前記媒体は、磁気インクを円形状に塗付するようにしたものであって、
前記比較判定手段は、前記検出した磁気を所定の判定基準により比較判定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の媒体識別装置。
【請求項3】
前記媒体は、平行線を磁気インクにより塗付したものであって、
前記判定基準値は、前記検出されたスキュー角度に基づいて補正するようにしたことを特徴とする媒体識別装置。
【請求項4】
磁気インクを、複数の角度の異なる線状、または円形状に塗付したことを特徴とする媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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