説明

媒体送り出し装置

【課題】小切手を押し付け部材によって繰り出しローラに押し付けて確実に搬送路に送り出すことのできる小切手送り出し装置を提案すること。
【解決手段】小切手送り出し装置の小切手送り出し機構は、小切手挿入部9に積層状態で挿入された小切手4を旋回式の第1押し付け部材72により繰り出しローラ71に押し付け、当該第1押し付け部材72の旋回動作に連動して旋回する第2押し付け部材73により、小切手4の先端側の部分を繰り出しローラ71側の第1ガイド面14に押し付ける。先端部分に折り目が付いている小切手4が直交ガイド面部分15bに当って送り出されることなく小切手挿入部9内に詰まってしまうことを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小切手、記録用紙などのシート状媒体を分離して一枚ずつ送り出すために、小切手処理装置、プリンタ、スキャナ、磁気読取装置などの媒体処理装置に搭載される媒体送り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行などの金融機関においては、持ち込まれた小切手、手形などの小切手類(有価証券類)を小切手処理装置に掛けて、それらの表面画像および磁気インク文字を読み取り、読取結果に応じて小切手類の仕分け作業などを行っている。また、近年においては電子決済の普及に伴って、読み取った画像データ、磁気インク文字をコンピュータ処理して、小切手類をコンピュータにより管理することも行われている。特許文献1にはこのような小切手処理装置が開示されている。
【0003】
小切手処理装置では、小切手が積層状態で小切手挿入部に挿入され、媒体分離機構に配置されている繰り出しローラによって小切手が搬送路に送り出される。繰り出しローラで小切手を送り出すために、媒体分離機構には、小切手を繰り出しローラに押し付けるための押し付け部材が配置されている。
【0004】
押し付け部材としては、一般に、その一端を中心として旋回することにより、その他端で小切手を繰り出しローラ側に押し付け可能な旋回式のものが採用されている。旋回式の押し付け部材は、平行移動式の押し付け部材に比べて、機構が簡単であり、動作の信頼性も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
旋回式の押し付け部材は、繰り出しローラの位置において小切手を押し付けており、それ以外の位置においては小切手が積層方向には拘束されていない状態となる。この結果、送り出し方向の先端部分に折り目などが付いている小切手が送り出されずに媒体分離機構内に詰まった状態に陥るおそれがある。
【0007】
すなわち、小切手を案内するガイド面形状は、その送り出し口に向けて幅が狭くなっており、細幅の送り出し口から一枚ずつ小切手が送り出されるように、媒体分離機構の送り出し口の近傍においては、左右のガイド面が傾斜あるいは屈曲して相互に接近している。媒体分離機構内に積層状態で収納されている小切手の先端部分に折り目などが付いていると、そのような小切手の先端部分が傾斜あるいは屈曲しているガイド面部分に引掛り、送り出し口に送り出されることなく、そこに詰まってしまうおそれがある。
【0008】
平行移動式の押し付け部材を用いて媒体分離機構内の小切手を全体的に押し付けるようにすれば、このような弊害を回避できる。しかしながら、平行移動式の押し付け部材は、その移動機構が旋回式のものに比べて複雑となり、また、部品点数も多くなるので、製造コストが高く、信頼性も低い。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、旋回式の押し付け部材を用いて小切手などのシート状媒体を媒体挿入部から確実に送り出すことのできる媒体送り出し装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の媒体送り出し装置は、
送り出し対象の小切手などのシート状媒体が積層状態で挿入される媒体挿入部と、
当該媒体挿入部に挿入されたシート状媒体を送り出すための媒体送り出し口と、
当該媒体送り出し口に向けてシート状媒体を案内するために対向配置されている第1および第2媒体ガイド面と、
前記第1媒体ガイド面の側に配置され、前記媒体挿入部に入れたシート状媒体を媒体送り出し口に向けて送り出すための繰り出しローラと、
前記媒体挿入部に挿入されたシート状媒体を、前記第2媒体ガイド面の側から前記繰り出しローラに押し付けるための第1押し付け部材と、
前記媒体挿入部に挿入されたシート状媒体を、前記繰り出しローラから外れた位置において、前記第2媒体ガイド面の側から前記第1ガイド面に押し付けるための第2押し付け部材と、
前記第1押し付け部材を、前記繰り出しローラに対して接近および離間する方向に動作させる駆動機構と、
前記第2押し付け部材を、前記第1押し付け部材の動作に連動して、前記第1ガイド面に対して接近および離間する方向に移動させる連動機構とを有していることを特徴としている。
【0011】
本発明では、繰り出しローラにシート状媒体を押し付けるための第1押し付け部材の動作に連動させて第2押し付け部材を媒体挿入部に挿入されているシート状媒体に押し付けるようにしている。したがって、第2押し付け部材による押し付け位置を適切に設定しておくことにより、折り目などが付いているシート状媒体であっても平らに伸ばした状態で第1ガイド面に押し付けることができるので、繰り出しローラによって送り出されるシート状媒体を送り出し口から確実に送り出すことができる。
【0012】
さらに、連動機構によって、第2押し付け部材は第1押し付け部材が繰り出しローラから離れる方向に退避すると、それに伴って同一方向に退避する。したがって、第2押し付け部材が、媒体挿入部にシート状媒体を挿入する際の障害になることがなく、第2押し付け部材を配置したことによって媒体挿入部の幅が狭くなることもないので、シート状媒体の収納枚数も確保できる。
【0013】
ここで、前記第2押し付け部材によるシート状媒体の押し付け位置を、前記繰り出しローラと前記媒体送り出し口との間の位置としておけばよい。具体的には、前記媒体挿入部は、シート状媒体を挿入するための一定幅の媒体収納部分と、当該媒体収納部分の先端から前記媒体送り出し口に接近するに連れて幅が狭くなっている媒体ガイド部分とを備えた構成とされるので、前記媒体収納部分の先端側の部位を前記第2押し付け部材による前記押し付け位置としておけばよい。
【0014】
また、第2押し付け部材を第1押し付け部材に内蔵した構成とすれば、第2押し付け部材の設置スペースを確保する必要がなく、コンパクトに構成できる。
【0015】
次に、前記駆動機構は、前記第1押し付け部材を旋回可能な状態で支持している旋回軸と、この旋回軸を中心として前記第1押し付け部材を前記媒体挿入部から退避させた退避位置および当該媒体挿入部内に突出した突出位置に旋回させるモータとを備えた構成とすることができる。
【0016】
この場合、前記連動機構は、前記第2押し付け部材を前記第1ガイド面に対して接近および離間する方向に旋回可能な状態で前記第1押し付け部材に取り付けている旋回軸と、当該旋回軸を中心として、前記第2押し付け部材を前記第1ガイド面に接近する方向に付勢しているばね部材と、前記第2押し付け部材に形成した部材側係合部と、前記第2ガイド面の側における定まった位置に形成された固定側係合部とを備え、前記第1押し付け部材が前記退避位置にある状態では、前記部材側係合部が固定側係合部に係合して前記第2押し付け部材が前記媒体挿入部から後退した位置に保持され、前記第1押し付け部材が前記退避位置から前記突出位置に旋回する途中において前記部材側係合部が前記固定側係合部から外れて、前記ばね部材の付勢力によって前記第2押し付け部材が旋回して前記媒体挿入部内に突出するようになった構成とすることができる。
【0017】
かかる構成の連動機構は、単純な構造であるので、動作の信頼性が高く、また、コスト高を招くことがない。
【0018】
また、上述の媒体送り出し装置を、小切手処理装置や、プリンタ、スキャナ、磁気読取装置などの媒体処理装置に搭載することで、信頼性が高く、低コストの媒体処理装置を実現可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、繰り出しローラにシート状媒体を押し付けるための第1押し付け部材に加えて、これに連動して媒体挿入部に挿入されているシート状媒体を第1ガイド面の側に押し付けるための第2押し付け部材を備えている。したがって、第2押し付け部材による押し付け位置を適切に設定しておくことにより、折り目などが付いているシート状媒体であっても平らに伸ばした状態で第1ガイド面に押し付けることができるので、繰り出しローラによって送り出されるシート状媒体を送り出し口から確実に送り出すことができる。また、連動機構によって、第2押し付け部材は第1押し付け部材が退避すると、それに伴って媒体挿入部から退避するので、第2押し付け部材が媒体挿入部にシート状媒体を挿入する際の障害になることがなく、また、媒体挿入部の幅が狭くなることもないので、シート状媒体の収納枚数も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した小切手処理装置の外観斜視図である。
【図2】図1の小切手処理装置の平面図である。
【図3】図1の小切手処理装置の搬送機構を示す説明図である。
【図4】小切手処理装置の小切手送り出し装置の概略構成図である。
【図5】小切手送り機構の動作を示す説明図である。
【図6】小切手送り機構の作用効果を示す説明図である。
【図7】従来の問題点を示す説明図である。
【図8】小切手処理装置の制御系を示す概略ブロック図である。
【図9】小切手処理装置の小切手処理動作を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した媒体送り出し装置を備えた小切手処理装置の実施の形態を説明する。
【0022】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係る小切手処理装置の外観斜視図であり、図2はその平面図である。小切手処理装置1は、本体ケース2と、この上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。蓋ケース3には細幅の垂直溝からなる小切手4(シート状媒体)の搬送路5が形成されている。搬送路5は上から見た場合に全体としてU形状をしており、直線状の上流側搬送路部分6と、これに連続する湾曲状搬送路部7と、これに連続する僅かに屈曲した下流側搬送路部分8とを備えている。
【0023】
上流側搬送路部分6の上流端は広幅の垂直溝からなる小切手挿入部9に連通している。下流側搬送路部分8の下流端は、左右に分岐した分岐路10a、10bを介して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1および第2小切手排出部11、12に繋がっている。
【0024】
読取対象の小切手4は、その表面4aの下端部分に磁気インク文字4Aが印刷されている。また、表面4aには、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、裏面4bには裏書き欄などが設けられている。
【0025】
(搬送機構)
図3は小切手処理装置1に組み込まれている搬送機構を中心に示す説明図である。小切手挿入部9には、ここに積層状態で挿入された小切手4を搬送路5に1枚ずつ送り出すための小切手送り出し機構13が配置されている。これら小切手挿入部9および小切手送り出し機構13によって、小切手送り出し装置が構成されている。小切手送り出し機構13の詳細構造については後述する。
【0026】
小切手4を搬送路5に沿って搬送する搬送機構は、搬送モータ21と、この搬送モータ21の回転軸に取り付けた駆動プーリ22と、搬送路5に沿って配置されている搬送ローラ31〜37と、各搬送ローラ31〜37に押し付けられて連れ回りする押えローラ41〜47とを備えている。押えローラ47の回転は、伝達歯車48を介して、排出ローラ49に伝達されるようになっている。また、搬送モータ21の回転を各搬送ローラ31〜37に伝達するための無端ベルト23を備えており、搬送ローラ31〜37に動力を伝達する。
【0027】
搬送ローラ31〜34は、上流側搬送路部分6における上流端、その中程の位置、および湾曲状搬送路部分7との境界位置にそれぞれ配置されている。搬送ローラ35は湾曲状搬送路部分7における下流側の位置に配置されている。搬送ローラ36は、下流側搬送路部分8における中程の位置に配置されており、搬送ローラ37は第2小切手排出部12の排出口部分に配置されている。排出ローラ49は第1小切手排出部11の排出口部分に配置されている。
【0028】
搬送ローラ32、33の間には、表面画像読取手段としての表面側コンタクトイメージスキャナ52および裏面画像読取手段としての裏面側コンタクトイメージスキャナ53が配置されている。搬送ローラ33、34の間には、磁気インク文字読取用の磁気ヘッド54が配置されている。
【0029】
下流側搬送路部分8における搬送ローラ36の下流側には印刷機構56が配置されている。印刷機構56は小切手4に押圧される印刷位置と、この印刷位置から後退した待機位置の間を、駆動用モータ(図示せず)によって移動可能となっている。印刷機構56は、プランジャにより押されて小切手4に印刷するようなスタンプ機構でもよい。
【0030】
次に、搬送路5には、小切手搬送制御のために各種のセンサが配置されている。搬送ローラ31、32の間には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。磁気ヘッド54の対向面には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。搬送ローラ35の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、この検出器63によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。搬送ローラ36の手間側の位置には、印刷機構56によって印刷される小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、搬送路5から第1、第2小切手排出部11、12に分岐している分岐路10a、10bの位置には、これらに排出される小切手を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0031】
分岐路10a、10bの上流端には、不図示の駆動モータによって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1、第2小切手排出部11、12に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くためのものである。
【0032】
(小切手送り出し装置)
図4は、小切手挿入部9および小切手送り出し機構13からなる小切手送り出し装置を取り出して示す概略構成図である。
【0033】
まず、小切手挿入部9は、図1〜図4から分かるように、基本的に、左右一対の第1ガイド面14および第2ガイド面15と、底面16とによって規定されている。第1ガイド面14は直線状の平坦な垂直面である。第2ガイド面15は、第1ガイド面14に一定の間隔で平行に配置されている平行ガイド面部分15aと、この平行ガイド面部分15aの前端から第1ガイド面14の側に向けて略90度の角度で折れ曲がっている直交ガイド面部分15bと、この直交ガイド面部分15bの端から第1ガイド面14に向けて徐々に接近している傾斜ガイド面部分15cと、この先端に連続して第1ガイド面に対して狭い間隔で平行に対峙している送り出し側平行ガイド面部分15dとを備えている。
【0034】
第2ガイド面15の平行ガイド面部分15aと、これに対峙している第1ガイド面14の部分によって、小切手4を挿入するための広幅の小切手収納部分9aが規定されている。この小切手収納部分9aの先端は直交ガイド面部分15bによって幅が狭くなっている。また、小切手収納部分9aの先には、傾斜ガイド面部分15cと、これに対峙している第1ガイド面14の部分とによって、小切手送り出し方向に開口幅が漸減している小切手ガイド部分9bが規定されている。この小切手ガイド部分9bの先には、送り出し側平行ガイド面部分15dと、これに対峙している第1ガイド面14の部分とによって、一定幅の狭い小切手送り出し通路17が規定されている。この小切手送り出し通路17の先が搬送路5に繋がる小切手送り出し口17aである。
【0035】
次に、図4に示すように、小切手送り出し機構13は、小切手4を送り出すための繰り出しローラ71と、小切手4を繰り出しローラ71の側に押し付けるための第1押し付け部材72と、当該第1押し付け部材72に連動して小切手4を第1ガイド面14の側に押し付けるための第2押し付け部材73を備えている。また、繰り出しローラ71によって小切手送り出し通路17に送り出された小切手4を一枚ずつ搬送路5に送り出すための分離機構74を備えている。
【0036】
繰り出しローラ71は、第1ガイド面14における小切手送り出し方向の中程の部位に配置されており、その外周面71aが僅かに第1ガイド面14から小切手挿入部9に突出した状態となっている。繰り出しローラ71に対峙している他方の第2ガイド面15の平行ガイド面部分15aには開口部15e(図1参照)が形成されている。この開口部15eを介して、第1押し付け部材72が進退可能となっている。また、第2押し付け部材73は第1押し付け部材72の内部に組み込まれている。
【0037】
小切手4の送り出し時には、第1押し付け部材72が小切手挿入部9内の小切手4を繰り出しローラ71の側に押し付け、第2押し付け部材73が小切手4の送り出し方向の先端側の部分を繰り出しローラ71側の第1ガイド面14に押し付ける。この状態で、繰り出しローラ71を回転すると、当該繰り出しローラ71に接触している小切手4が小切手送り出し通路17に送り出され、ここを介して、搬送路5の側に供給される。
【0038】
次に、分離機構74は、小切手送り出し通路17の上流側に配置された分離パッド75と、小切手送り出し通路17の下流側に配置された分離ローラ対76とを備えている。分離パッド75は、装置本体側に取り付けた垂直旋回軸78を中心として旋回自在である。分離パッド75の後端側の腕部77bと、装置本体側の部位との間には、引張りコイルばね79が架け渡されている。この引張りコイルばね79のばね力によって、分離パッド75は先端側の腕部77aが小切手送り出し通路17内に進出する旋回方向に常に付勢されており、分離パッド75の先端が常に小切手送り出し通路17における第1ガイド面14に押し付けられ、小切手送り出し通路17を封鎖した状態に保持されている。
【0039】
ここで、分離パッド75は、第1ガイド面14に押し付けられた状態においては、その分離面75aが、小切手送り出し方向に対して90度未満の傾斜角度に設定されている。換言すると、繰り出しローラ71によって小切手送り出し通路17に送り出された小切手4の先端が、90度未満の角度で当該分離面75aに衝突するように配置されている。例えば、20〜45度の範囲内の角度で衝突するように配置されている。また、分離パッド75の分離面75aは、小切手4との間の摩擦力が、小切手4の相互間の摩擦力よりも大きな素材から形成されている。さらに、繰り出しローラ71によって送り出される小切手4が分離パッド75の分離面75aを押し出しながら、当該分離面75aを通過できるように、引張りコイルばね79の分離パッド75に対する付勢力が設定されている。
【0040】
分離パッド75の下流側に配置されている分離ローラ対76は、第1ガイド面14の側に配置された分離ローラ81と、他方の側に配置されたリタードローラ82とを備えている。これらのニップ部76aは小切手送り出し通路17の幅方向の中心に位置するように設定されており、リタードローラ82は所定の押圧力で分離ローラ81の外周面に押し付けられている。リタードローラ82は不図示のトルクリミッタによって小切手送り出し方向への回転負荷トルクが与えられている。
【0041】
分離ローラ81は駆動モータ83によって回転駆動される。図4に示すように、駆動モータ83の回転は、駆動側歯車84aから、歯車84b、84cを経由して伝達歯車84dから分離ローラ81に伝達される。駆動モータ83は繰り出しローラ71の回転駆動源としても用いられており、その回転が、駆動側歯車84a、歯車84b、84cおよび伝達歯車84eを経由して繰り出しローラ71に伝達されるようになっている。
【0042】
図5(a)は第1および第2押し付け部材72、73が退避位置にある状態を示す説明図であり、図5(b)はそれらが突出位置に旋回した状態を示す説明図である。これらの図を参照して説明すると、第1押し付け部材72は装置本体側に取り付けた垂直旋回軸85を中心として水平方向に旋回可能であり、図5(a)に示す第2ガイド面15の平行ガイド面部分15aよりも後退した退避位置72Aと、図5(b)に示す小切手挿入部9の小切手収納部分9a内に突出して小切手4が繰り出しローラ71の外周面71aに押し付けられた突出位置72Bとの間を旋回可能である。
【0043】
第2押し付け部材73は、第1押し付け部材72の先端部72bに取り付けた垂直旋回軸86を中心として水平方向に旋回可能であり、図5(a)に示す第1押し付け部材72内に引き込んだ退避位置73Aと、図5(b)に示すように、当該第1押し付け部材72から先端部73aが突出して小切手4を第1ガイド面14に押し付ける突出位置73Bとの間を旋回可能である。
【0044】
第1押し付け部材72は、駆動用モータ(図示せず)によって旋回駆動される。駆動用モータがステッピングモータの場合にはステップ数に基づき第1押し付け部材72の旋回位置を制御することができる。
【0045】
なお、第1押し付け部材72の退避位置72Aは、例えば、装置本体側に取り付けられているメカニカルスイッチなどのセンサ(図示せず)によって検出される。また、第1押し付け部材72を、小切手挿入部9に挿入された小切手4に押し付ける動作は、例えば、小切手挿入部9に取り付けられた透過型の光学センサ(図示せず)によって小切手4が検出されている場合に許可される。小切手4が検出されている場合には、小切手処理装置1の上位機器であるコンピュータシステム103(図8参照)からの指令により、あるいは、手動操作入力指令に基づき、駆動モータ83が駆動され、第1押し付け部材72が退避位置72Aから繰り出しローラ71に向けて旋回して、小切手4を当該繰り出しローラ71に押し付けた状態を形成する。
【0046】
一方、第2押し付け部材73は、第1押し付け部材72の旋回動作に連動して退避位置73Aおよび突出位置73Bに旋回するようになっている。すなわち、第2押し付け部材73は、垂直旋回軸86に取り付けた捻りコイルばね87によって常に突出方向に旋回するように付勢されている。また、第2押し付け部材73における旋回中心よりも後端側には後方に突出している部材側係合突起73bが形成されており、装置本体側には固定側係合突起88が形成されている。図5(a)に示すように、第1押し付け部材72が退避位置にある状態では、部材側係合突起73bは、捻りコイルばね87のばね力によって固定側係合突起88に押し付けられている。したがって、第2押し付け部材73の旋回が拘束されており、当該第2押し付け部材73は固定側係合突起88によって規定される退避位置73Aに保持されている。
【0047】
第1押し付け部材72を繰り出しローラ71の側に旋回すると、そこに組み込まれている第2押し付け部材73も移動する。この結果、その旋回途中において当該第2押し付け部材73の部材側係合突起73bが固定側係合突起88から離れる。これにより、第2押し付け部材73の旋回拘束状態が解除される。この結果、図5(b)に示すように、捻りコイルばね87のばね力によって、第2押し付け部材73は垂直旋回軸86を中心として、その先端部73aが第1押し付け部材72から突出して第1ガイド面14に押し付けられる。
【0048】
ここで、繰り出しローラ71および分離ローラ81の間の距離は、処理対象の小切手4の送り出し方向の長さ寸法よりも短い。したがって、繰り出しローラ71によって繰り出される小切手4は、当該繰り出しローラ71によって繰り出されている間に、その先端部分が分離ローラ81とリタードローラ82のニップ部76aを通って搬送路5の側に送り出される。すなわち、小切手4は、繰り出しローラ71による送り動作と、分離ローラ対76による分離送り動作を同時に受ける。
【0049】
(小切手送り出し動作)
次に、図6を参照して小切手送り出し機構13による小切手送り出し動作を説明する。
【0050】
まず、小切手挿入部9に小切手4を積層状態で挿入すると、不図示のセンサによって小切手4が挿入されたことが検出される。上位機器からの指令あるいは手動操作入力によって駆動モータ83を駆動すると、第1押し付け部材72が小切手挿入部9内に旋回して、小切手4を繰り出しローラ71の側に押し付ける。
【0051】
この結果、図6に示すように、小切手挿入部9に束になって挿入されている小切手4は、その中程の部位において第1押し付け部材72の先端面72aによって繰り出しローラ71の側に押し付けられた状態となる。また、小切手4は、その送り出し方向の先端側の部位において第2押し付け部材73の先端部73aによって第1ガイド面14の側に押し付けられた状態になる。
【0052】
小切手4の先端側の部分が第2押し付け部材73によって第1ガイド面14の側に押し付けられているので、小切手4の先端部分に折り目などが付いていた場合であっても、小切手4の先端部分が第1ガイド面14の側に押し付けられ、第2ガイド面15における直交ガイド面部分15b等に当った状態のままになることがない。よって、繰り出しローラ71によって小切手4が確実に小切手送り出し通路17に送り出される。
【0053】
これに対して、従来のように第1押し付け部材72のみによって小切手4を繰り出しローラ71の側に押し付けている場合には、図7に示すように、押し付け部材72による小切手押し付け部分から直交ガイド面部分15bまでの間に、三角形の隙間が出来た状態になる。このため、先端部分401に折り目などが付いている小切手4(n)は、当該先端部分401が直交ガイド面部分15bに当った状態のままとなる。この状態のままで繰り出しローラ71によって小切手4(n)を送り出そうとすると、折り目の付いた先端部分401が小切手送り出し通路17に送り出されずに当該直交ガイド面部分15bに当ったまま詰まった状態になってしまう。本例では、このような三角形の隙間が第2押し付け部材73によって無くなるので、小切手4が小切手挿入部9内に詰まって送り出されないという弊害を確実に防止できる。
【0054】
(小切手送り出し機構による作用効果)
以上説明したように、本例の小切手送り出し機構13では、小切手4の先端側の部分が第2押し付け部材73によって第1ガイド面14の側に押し付けられているので、小切手4の先端部分に折り目などが付いていた場合であっても、小切手4の先端部分が第1ガイド面14の側に押し付けられ、第2ガイド面15における直交ガイド面部分15b等に当った状態のままになることがない。よって、繰り出しローラ71によって小切手4が確実に小切手送り出し通路17に送り出される。
【0055】
また、第2押し付け部材73は第1押し付け部材72内に組み込まれているので、第2押し付け部材73を設置するためのスペースが不要である。さらに、第1押し付け部材72に連動して第2押し付け部材73を旋回させる連動機構は、捻りコイルばね87と、部材側係合突起73bと、固定側係合突起88から構成される簡単な構造のものである。したがって、機構の大型化、複雑化、あるいはコスト高を招くことなく、旋回式の押し付け部材72、73を用いて確実に小切手4を送り出すことのできる小切手送り出し機構を実現できる。
【0056】
なお、以上の説明は、本発明を小切手処理装置における小切手送り出し装置として用いた例である。本発明の媒体送り出し装置は、プリンタ、スキャナ、磁気読取装置など小切手処理装置以外のシート状媒体を処理するための装置にも同様に適用可能である。
【0057】
(制御系)
図8は小切手処理装置1の制御系を示す概略ブロック図である。小切手処理装置1の制御系は、ROM、RAMを備え、CPUを中心に構成された制御部101を有している。制御部101は通信ケーブル102を介して上位のコンピュータシステム103に接続される。コンピュータシステム103は表示器103a、キーボード、マウスなどの操作部103bなどの入出力機器を備えており、当該コンピュータシステム103の側から小切手読取動作の開始指令などが制御部101に入力される。
【0058】
制御部101は読取動作の開始指令を受け取ると、駆動モータ83、搬送モータ21を駆動して小切手4を一枚づつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部101には、表面側コンタクトイメージスキャナ52、裏面側コンタクトイメージスキャナ53および磁気ヘッド54によって読み取られた小切手4の表面画像情報、裏面画像情報および磁気インク文字情報が入力される。これらの情報は、コンピュータシステム103に供給され、画像処理、文字認識処理などが行われ、読取が正常に行われたか否かが判断され、判断結果が制御部101に供給される。制御部101は判断結果に基づき印刷機構56および切り替え板66の駆動を制御する。
【0059】
制御部101による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64および排出検出器65からの検出信号に基づき行われる。なお、制御部101には、本体ケース2に形成された電源スイッチなどの操作スイッチを含む操作部105が接続されている。
【0060】
(小切手処理動作)
図9は小切手処理装置1の処理動作を示す概略フローチャートである。まず、操作者が上位のコンピュータシステム103の操作部103bから読み取り開始指令を入力すると、センサが小切手4の挿入を検出すると、駆動モータ83によって繰り出しローラ71が回転し、押し付け部材72が移動して小切手4を繰り出しローラ71に押し付ける。この結果、小切手4が繰り出しローラ71によって送り出される。また、搬送モータ21が駆動して、各搬送ローラ31〜37が回転駆動される。送り出し通路17に繰り出された小切手4は、送り出し通路17に配置されている分離機構74によって一枚ずつに分離されて搬送路5に送り出される(ステップST1、ST2)。
【0061】
送り出された小切手4は、搬送ローラ31〜36に順次に引き渡されながら搬送路5に沿って搬送される(ステップST3)。搬送される小切手4の表面画像および裏面画像、並びに磁気インク文字が、それぞれ、表面側コンタクトイメージスキャナ52、裏面側コンタクトイメージスキャナ53および磁気ヘッド54によって読み取られる(ステップST4)。
【0062】
読み取られた情報は、通信ケーブル102を介して上位のコンピュータシステム103に送信される(ステップST5)。コンピュータシステム103の側において読み取られた表面画像、裏面画像、および磁気インク文字情報を処理して、読取が正常に行われたか否かを判断する。小切手4が上下逆の状態で搬送された場合には、磁気インク文字を認識できないので、読取不良であると判断される。小切手4が表裏逆の状態で搬送された場合には、磁気インク文字情報が得られないので、読取不能であると判断される。また、小切手4が折れていたり、ちぎれていたり、搬送時にスキューするなどで、磁気インク文字の一部が読取不能の場合にも読取不良であると判断される。さらに、表裏の画像情報から、小切手4が折れていたり、ちぎれていたり、搬送時にスキューするなどで、金額情報などの所定の情報が認識できない場合などにおいても読取不良であると判断される。
【0063】
正常な読取であると判断されている場合には、印刷機構56を印刷位置に移動する(ステップST8、ST10)。小切手4は印刷機構56によって「電子決済済み」などの印刷が行われながら搬送され、切り替え板66によって第1小切手排出部11の側に排出される(ステップST10)。排出検出器65によって小切手4の後端が検出された後は、搬送動作を止める(ステップST11、ST12)。
【0064】
これに対して、読取不良、読取不能などの判断結果が出た場合には(ステップST8)、切り替え板66の切り替え動作を行う(ステップST14)。印刷機構56は待機位置に保持し、小切手4への印刷は行わない。小切手4は切り替え板66によって第2小切手排出部12に振り分けられ、そこに排出される(ステップST14)。排出検出器65によって小切手4の後端が検出された後は搬送動作を止める(ステップST11、ST12)。
【0065】
なお、重送検出器62によって小切手の重送状態が検出された場合には、割り込み処理が行われ、搬送を直ちに停止し、例えば、操作部105に配置されている警告ランプなどを介して異常搬送が発生した旨の警告を行い、小切手が搬送路5から取り除かれて初期状態に戻されるのを待つ。同様に、ジャム検出器63によって小切手が搬送路5に詰まった状態に陥ったことが検出された場合にも同様な割り込み処理が発生する。
【符号の説明】
【0066】
1 小切手処理装置、2 本体ケース、3 蓋ケース、4,4(1),4(2),4(3),4(n) 小切手、5 搬送路、6 上流側搬送路部分、7 湾曲状搬送路部分、8 下流側搬送路部分、9 小切手挿入部、9a 小切手収納部分、9b 小切手ガイド部分、10a,10b 分岐通路、11 第1小切手排出部、12 第2小切手排出部、13 小切手送り出し機構、14 第1ガイド面、15 第2ガイド面、15a 平行ガイド面部分、15b 直交ガイド面部分、15c 傾斜ガイド面部分、15d 送り出し側平行ガイド面部分、17 小切手送り出し通路、17a 小切手送り出し口、21 搬送モータ、22 駆動ローラ、23 無端ベルト、31〜37 搬送ローラ、41〜47 押えローラ、51 磁石、52 表面側コンタクトイメージスキャナ、53 裏面側コンタクトイメージスキャナ、54 磁気ヘッド、56 印字機構、71 繰り出しローラ、72 第1押し付け部材、72a 先端面、72b 先端部、73 第2押し付け部材、73a 先端部、73b 部材側係合突起、74 分離機構、75 分離パッド、75a 分離面、76 分離ローラ対、76a ニップ部、77 旋回部材、78 旋回軸、81 分離ローラ、81a 外周面、82 リタードローラ、83 駆動モータ、84a〜84e 歯車、85,86 旋回軸、87 捻りコイルばね、88 固定側係合突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り出し対象の小切手などのシート状媒体が積層状態で挿入される媒体挿入部と、
当該媒体挿入部に挿入されたシート状媒体を送り出すための媒体送り出し口と、
当該媒体送り出し口に向けてシート状媒体を案内するために対向配置されている第1および第2媒体ガイド面と、
前記第1媒体ガイド面の側に配置され、前記媒体挿入部に挿入されたシート状媒体を媒体送り出し口に向けて送り出すための繰り出しローラと、
前記媒体挿入部に挿入されたシート状媒体を、前記第2媒体ガイド面の側から前記繰り出しローラに押し付けるための第1押し付け部材と、
前記媒体挿入部に挿入されたシート状媒体を、前記繰り出しローラから外れた位置において、前記第2媒体ガイド面の側から前記第1ガイド面に押し付けるための第2押し付け部材と、
前記第1押し付け部材を、前記繰り出しローラに対して接近および離間する方向に動作させる駆動機構と、
前記第2押し付け部材を、前記第1押し付け部材の動作に連動させて、前記第2ガイド面に対して接近および離間する方向に移動させる連動機構とを有していることを特徴とする媒体送り出し装置。
【請求項2】
前記第2押し付け部材によるシート状媒体の押し付け位置は、前記繰り出しローラと前記媒体送り出し口との間の位置であることを特徴とする請求項1に記載の媒体送り出し装置。
【請求項3】
前記媒体挿入部は、シート状媒体を挿入するための一定幅の媒体収納部分と、当該媒体収納部分の先端から前記媒体送り出し口に接近するに連れて幅が狭くなっている媒体ガイド部分とを備えており、
前記媒体収納部分の先端側の部位が前記第2押し付け部材による前記押し付け位置であることを特徴とする請求項2に記載の媒体送り出し装置。
【請求項4】
前記第2押し付け部材は、前記第1押し付け部材に内蔵されており、前記連動機構によって当該第1押し付け部材内から突出して前記第1ガイド面に接近する方向に移動するようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載の媒体送り出し装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記第1押し付け部材を旋回可能な状態で支持している旋回軸と、この旋回軸を中心として前記第1押し付け部材を前記媒体挿入部から退避させた退避位置および当該媒体挿入部内に突出した突出位置に旋回させるモータとを備えていることを特徴とする請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の媒体送り出し装置。
【請求項6】
前記連動機構は、
前記第2押し付け部材を前記第1ガイド面に対して接近および離間する方向に旋回可能な状態で前記第1押し付け部材に取り付けている旋回軸と、
当該旋回軸を中心として、前記第2押し付け部材を前記第1ガイド面に接近する方向に付勢しているばね部材と、
前記第2押し付け部材に形成した部材側係合部と、
前記第2ガイド面の側における定まった位置に形成された固定側係合部とを備え、
前記第1押し付け部材が前記退避位置にある状態では、前記部材側係合部が固定側係合部に係合して前記第2押し付け部材が前記媒体挿入部から後退した位置に保持され、前記第1押し付け部材が前記退避位置から前記突出位置に旋回する途中において前記部材側係合部が前記固定側係合部から外れて、前記ばね部材の付勢力によって前記第2押し付け部材が旋回して前記媒体挿入部内に突出するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の媒体送り出し装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載の媒体送り出し装置を搭載したことを特徴とする媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−225378(P2011−225378A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151723(P2011−151723)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2007−37451(P2007−37451)の分割
【原出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】