説明

媒体集積繰出装置

【課題】アクチュエータを必要とすることなく、舌片を媒体繰出し範囲から退避させることにより、低価格を実現した媒体集積繰出装置を提供する。
【解決手段】複数の舌片15を有する舌片ローラ14と同軸上にカバー16を回転自在に設ける。カバー16は周壁部16bを有し、舌片15が周壁部16bに接触することにより舌片15は撓む。紙幣Pの繰出し時において、カバー16は舌片ローラ14の回転により舌片15が接触して回転し、周壁部16bがガイド18に沿った位置に来る。これにより舌片15は紙幣Pの移動起動上へ進入するのを阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動預払機に内蔵される紙幣入出金装置等において、紙幣などの媒体を搬送路から集積部に集積するとともに、集積部から1枚ずつ搬送路に繰出す処理を行う媒体集積繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現金自動預払機に内蔵される紙幣入出金装置においては、入金処理において紙幣を搬送路から集積部に集積し、また出金処理において集積部から紙幣を1枚ずつ繰出している。そして入金処理において複数枚の紙幣を連続して集積する場合、集積部の上部に放出した紙幣に後続の紙幣が衝突するのを防止するために、舌片を備えた回転可能な舌片ローラを設けて、集積部の上部に放出した紙幣を下方に叩き落すようにしている。以下、図を用いて説明する。
【0003】
図16は従来の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。図16において、フィードローラ1は正逆両方向に回転し、紙幣Pを集積するとともに紙幣Pの繰出しを行う。ゲートローラ2は紙幣Pを集積する場合にのみ回転し、紙幣Pを繰出す場合には停止していることにより分離ローラの機能を持つ。舌片ローラ3は放射状に形成された複数の舌片4を有し、舌片4は集積の際に紙幣Pを下方に叩く機能を有する。舌片ローラ3は回転可能であるとともに、図示しないリンク機構により退避可能となっている。
【0004】
紙幣Pを集積する場合には、フィードローラ1は矢印A方向に回転し、ゲートローラ2は矢印B方向に回転する。また舌片ローラ3は矢印B方向に回転する。これにより図中左側の図示しない搬送路から搬送されてくる紙幣Pは、フィードローラ1とゲートローラ2により、図中右側の集積部に紙幣Pを取り込む。紙幣Pがフィードローラ1及びゲートローラ2から離れると、舌片ローラ3の舌片4により下方に叩き落される。これにより後続の紙幣が先行の紙幣に衝突することなく、集積部の上部に放出される。
【0005】
紙幣Pを繰出す場合は、図17に示すように、フィードローラ1は矢印B方向に回転し、ゲートローラ2は回転しない。また舌片ローラ3は、図17に示すように退避位置に退避する。この退避位置は舌片4が繰出される紙幣Pに届かない位置である。図示しないピックアップローラにより最上位の紙幣Pがピックアップされると、紙幣Pはフィードローラ1により矢印C方向に搬送される。このときゲートローラ2は回転せずに、2枚目以降の搬送を阻止する分離ローラとしての働きをする。
【0006】
舌片ローラ3を退避させる手段としては、一般的には、リンク機構により舌片ローラ3を退避位置に退避させている。このように舌片ローラを退避させる構成を有する装置として、例えば、特許2908169号公報に開示されるものがある。
【特許文献1】特許2908169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来の紙幣集積繰出装置においては、舌片ローラを退避させるために、リンク機構を駆動するためのアクチュエータが必要になり、装置コストがかかり、低価格化を実現する上で問題となっている。
【0008】
そこで本発明は、アクチュエータを必要とすることなく、舌片を媒体繰出し範囲から退避させることにより、低価格を実現した媒体集積繰出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために第1の発明は、可撓性を有する複数の舌片を備え回転可能な舌片ローラにより媒体を叩いて集積するとともに、集積された媒体を1枚ずつ繰出す媒体集積繰出装置において、前記舌片が接触可能で、該舌片が接触した状態で前記舌片ローラの回転により移動し、前記舌片が集積時の媒体移動軌跡上に突出するのを許容する第1の停止位置と、繰出し時の媒体移動軌跡上への前記舌片の突出を阻止する第2の停止位置をとる移動部材を設け、媒体集積時は、前記舌片ローラの回転により前記移動部材は前記第1の停止位置に位置付けられ、媒体繰出し時は、前記舌片ローラの回転により前記移動部材は前記第2の停止位置に位置付けられることを特徴とするものである。
【0010】
また第2の発明は、可撓性を有する複数の舌片を備え回転可能な舌片ローラにより媒体を叩いて集積するとともに、集積された媒体を1枚ずつ繰出す媒体集積繰出装置において、前記舌片ローラと同軸上に設けられ、該舌片ローラの媒体集積時の回転方向にのみ回転し、前記舌片ローラの媒体繰出し時の回転時に前記舌片を所定範囲内に撓ませる爪部を有する巻き取り部材を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
さらに第3の発明は、可撓性を有する複数の舌片を備え回転可能な舌片ローラにより媒体を叩いて集積するとともに、集積された媒体を1枚ずつ繰出す媒体集積繰出装置において、前記舌片を、予め、媒体繰出し時に繰出し媒体に影響を及ぼさない程度に所定方向に撓ませておき、媒体集積時に前記舌片を、集積時の媒体の移動軌跡上に進入する方向に起こす爪部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、媒体集積時は、舌片ローラの回転により移動部材は、舌片が集積時の媒体移動軌跡上に突出するのを許容する第1の停止位置に位置付けられ、媒体繰出し時は、舌片ローラの回転により移動部材は、繰出し時の媒体移動軌跡上への舌片の突出を阻止する第2の停止位置に位置付けられるので、アクチュエータを設けることなく、媒体繰出し時に舌片を退避させることができる。
【0013】
第2の発明に拠れば、舌片ローラと同軸上に設けられ、舌片ローラの媒体集積時の回転方向にのみ回転し、舌片ローラの媒体繰出し時の回転時に舌片を所定範囲内に撓ませる爪部を有する巻き取り部材を設けたので、アクチュエータを設けることなく、媒体繰出し時に舌片を退避させることができる。
【0014】
また第3の発明に拠れば、舌片を、予め、媒体繰出し時に繰出し媒体に影響を及ぼさない程度に所定方向に撓ませておき、媒体集積時に舌片を、集積時の媒体の移動軌跡上に進入する方向に起こす爪部を設けたので、アクチュエータを設けることなく、媒体繰出し時に舌片を退避させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。各図面に共通する要素には同一の符号を付す。なお以下に説明する各実施の形態において、媒体集積繰出装置として、現金自動預払機に内蔵される紙幣集積繰出装置を例にして説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。
【0016】
図1において、第1の実施の形態の紙幣集積繰出装置11には、フィードローラ12、ゲートローラ13および舌片ローラ14が設けられている。フィードローラ12は正逆両方向に回転し、紙幣Pを集積するとともに紙幣Pの繰出し搬送を行う。ゲートローラ13は紙幣Pを集積する場合にのみ回転し、紙幣Pを繰出す場合には停止していることにより分離ローラの機能を持つ。舌片ローラ14は放射状に形成された複数の舌片15を有し、舌片15はゴム等の弾性を有する材料で形成され、集積の際に紙幣Pを下方に叩く機能を有する。舌片ローラ14は両方向に回転可能である。
【0017】
図におけるゲートローラ13の右側には集積部20が設けられている。集積部20には昇降可能なステージ20aが設けられ、ステージ20a上に紙幣Pが集積される。紙幣Pを集積する場合はステージ20aは下降し、最上位の紙幣Pとフィードローラ12とゲートローラ13との間の紙幣放出位置との間にある程度の間隔が空けられる。逆に紙幣Pを繰出す場合は、ステージ20aが上昇され、最上位の紙幣Pが図示しないピックアップローラと圧接する。
【0018】
図2は第1の実施の形態の紙幣集積繰出装置の要部を示す斜視図で、舌片ローラ、カバーおよびガイドを示す。図3は第1の実施の形態のカバーを示す斜視図である。図1、図2、図3において、舌片ローラ14の回転軸14aにはカバー16が回転自在に設けられている。カバー16は側面から見て略扇形をしており、図3に示すように、側壁部16aと周壁部16bを有する。なお図2においては左側の側壁部16aは図示省略している。カバー16の回転中心から周壁部16bまでの距離L1は舌片15の長さL2より短く(L1<L2)、図2に示すように、舌片15が周壁部16bに当接する場合には常に撓んだ状態となる。即ち、周壁部16bの内側は舌片15の収納部を構成する。また周壁部16bのない部分は舌片15が突出する切欠部を構成する。カバー16の端部16cには突き当て部17が形成されている。
【0019】
また紙幣Pの搬送方向に沿ってガイド18が設けられている。ガイド18には切り欠き部19が形成され、この切り欠き部19に舌片ローラ14の舌片15およびカバー16の一部が入り込むようになっている。舌片ローラ14の回転中心から切り欠き部19の上端部19aまでの距離、および舌片ローラ14の回転中心から切り欠き部19の下端部19bまでの距離は、舌片15の長さL2より短く、かつ、カバー16の回転中心から周壁部16bまでの距離L1より長く設定されている。またカバー16の端部16cに設けられた突き当て部17は、カバー16の回転により切り欠き部19の上端部19aに当接するように寸法設定されている。ガイド18は図示しない装置フレームに固定されている。
【0020】
次に第1の実施の形態の動作を説明する。まず紙幣の集積動作について説明する。図1において、紙幣Pを集積する場合には、フィードローラ12は矢印A方向に回転され、ゲートローラ13は矢印B方向に回転する。また舌片ローラ14は矢印B方向に回転する。舌片ローラ14の回転により、舌片15が弾性変形してカバー16の周壁部16bの内側に圧接し、この圧接により発生する舌片15と周壁部16bとの間の摩擦抵抗により、カバー16は舌片ローラ14と同方向に回転する。
【0021】
カバー16の矢印B方向への回転は、突き当て部17が、図2に示すガイド18の切り欠き部19の上端部19aに当接するまで行われ、当接した時点で停止する。これ以降も舌片ローラ14は回転し続け、これ以降において舌片15は撓んだ状態で周壁部16bの内側を摺接する。舌片15は周壁部16bを通り過ぎると、ガイド18の切り欠き部19に入り込むとともに、撓んだ状態からまっすぐに伸びた状態になる。即ち、舌片15は、まっすぐに伸びた状態で、集積時の紙幣Pの移動軌跡上に進入する。
【0022】
図1における左側の図示しない搬送路から搬送されてくる紙幣Pは、フィードローラ12とゲートローラ13により、図中右側の集積部に紙幣Pを取り込む。この集積時の紙幣Pの移動軌跡を符号aで示す。紙幣Pがフィードローラ12及びゲートローラ13から放出されると、まっすぐに伸びた舌片ローラ14の舌片15により下方に叩き落される。これにより後続の紙幣が先行の紙幣に衝突することなく、集積部の上部に放出される。舌片15は回転によりガイド18の切り欠き部19の下端部19bに当接すると、再び撓み、撓んだ状態でカバー16の周壁部16bの内側を摺接する。以上の動作を繰り返し、紙幣Pを連続的に集積する。
【0023】
次に図4及び図5にしたがって紙幣を繰出す動作を説明する。図4は第1の実施の形態における紙幣繰出し動作を示す概略側面図、図5は第1の実施の形態における紙幣繰出し動作を示す斜視図である。図4、図5において、紙幣Pを繰出す場合は、フィードローラ12は矢印B方向に回転し、ゲートローラ13は回転しない。また舌片ローラ14は矢印A方向に回転する。舌片ローラ14の回転により、舌片15が弾性変形してカバー16の周壁部16bの内側に圧接し、この圧接により発生する舌片15と周壁部16bとの間の摩擦抵抗により、カバー16は舌片ローラ14と同方向に回転する。
【0024】
カバー16の矢印A方向への回転は、突き当て部17が、ガイド18の切り欠き部19の下端部19bに当接するまで行われ、当接した時点で停止する。このとき、カバー16の周壁部16bは、図5に示すように、ガイド18の切り欠き部19を覆う位置にきており、この位置に停止し続ける。これ以降も舌片ローラ14は回転し続け、これ以降において舌片15は撓んだ状態で周壁部16bの内側を摺接する。舌片15は周壁部16bを通り過ぎると、撓んだ状態からまっすぐに伸びた状態になるが、舌片15は、図4に符合bで示す繰出し時の紙幣Pの移動軌跡上に対しては、カバー16の周壁部16bにより進入を阻止される。
【0025】
図示しないピックアップローラにより最上位の紙幣Pがピックアップされると、紙幣Pは、舌片15により邪魔されることなく、フィードローラ12により矢印C方向に搬送される。このときゲートローラ13は回転せずに、2枚目以降の搬送を阻止する分離ローラとしての働きをする。
【0026】
以上のように第1の実施の形態によれば、紙幣の繰出し時に舌片15の紙幣移動軌跡上への伸長を阻止するカバー16を設けたので、アクチュエータを設けることなく、媒体繰出し時に舌片を退避させることができる。なおカバー16の形状は上記実施の形態のように、周壁部16bの湾曲形状に限定されるものではなく、例えば、周壁部が多角形形状のものでもよい。
【0027】
次に第2の実施の形態を説明する。図6は第2の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図、図7は第2の実施の形態の要部を示す斜視図である。図6、図7において、第2の実施の形態の紙幣集積繰出装置21には、第1の実施の形態と同様に、フィードローラ12、ゲートローラ13および舌片ローラ14が設けられている。また紙幣Pの搬送経路に沿って、ガイド18が設けられている。
【0028】
第2の実施の形態のガイド18には切り欠き部19が設けられ、切り欠き部19の下部にシャッター22がガイド18に対して摺動可能に設けられている。シャッター22は、この位置を待機位置とし、複数の板材23を多少の間隔をあけて連べた構成となっている。したがってシャッター22は湾曲状に移動可能である。ガイド18には図示していないが、シャッター22がガイド18に沿って移動できるようにガイド部が設けられ、切り欠き部18の上部にはシャッター22を位置決めするためのストッパ24が設けられている。
【0029】
待機位置におけるシャッター22の上端部から舌片ローラ14の回転中心までの距離L3は、舌片15の長さL2より短く(L3<L2)、また切り欠き部19の下端部19bから舌片ローラ14の回転中心までの距離L4も舌片15の長さL2より短く(L4<L2)設定されている。さらに距離L3は距離L4より長く(L3>L4)設定されている。
【0030】
次に第2の実施の形態の動作を説明する。まず紙幣を集積する場合を説明するが、集積する場合は、シャッター22が予め図6および図7に示す待機位置に位置している。紙幣Pを集積する場合、フィードローラ12は図6に示す矢印A方向に回転され、ゲートローラ13は矢印B方向に回転する。また舌片ローラ14は矢印B方向に回転する。
【0031】
このとき舌片15は、その先端部がガイド18の切り欠き部19の下端部19bに衝突して多少の弾性変形をするが、待機位置にあるシャッター22には接触することなく回転する。即ち、舌片15は、切り欠き部19の上端部19a及び下端部19bに接触するとき以外は、まっすぐに伸びた状態となり、集積時の紙幣Pの移動軌跡a上に進入している。
【0032】
図中左側の図示しない搬送路から搬送されてくる紙幣Pは、フィードローラ12とゲートローラ13により、図中右側の集積部に紙幣Pを取り込む。紙幣Pがフィードローラ12及びゲートローラ13から放出されると、まっすぐに伸びた舌片ローラ14の舌片15により下方に叩き落される。これにより後続の紙幣が先行の紙幣に衝突することなく、集積部の上部に放出される。舌片15は回転によりガイド18の切り欠き部19の下端部19bに当接すると、再び撓むが、その後再び伸びた状態で回転する。以上の動作を繰り返し、紙幣Pを連続的に集積する。
【0033】
次に紙幣を繰出す動作を図8および図9にしたがって説明する。図8は第2の実施の形態の繰り出し動作を示す概略側面図、図9は第2の実施の形態の繰出し動作を示す斜視図である。紙幣Pを繰出す場合は、フィードローラ12は矢印B方向に回転し、ゲートローラ13は回転しない。また舌片ローラ14は矢印A方向に回転する。舌片ローラ14の回転により、舌片15の先端部がシャッター22の上部に圧接し、この圧接により発生する舌片15とシャッター22との間の摩擦抵抗により、シャッター22はガイド18に設けられている図示しないガイド部により切り欠き部18に沿って上方に移動する。
【0034】
シャッター22の上方への移動は、先頭の板材23が、ガイド18に設けられたストッパ24に当接するまで行われ、当接した時点で停止する。これ以降も舌片ローラ14は回転し続け、これ以降において舌片15は撓んだ状態でシャッター22の内側を摺接する。舌片15はシャッター22を通り過ぎると、撓んだ状態からまっすぐに伸びた状態になる。即ち、舌片15は、シャッター22により、繰出し時の紙幣Pの移動軌跡b上への進入を阻止される。
【0035】
図示しないピックアップローラにより最上位の紙幣Pがピックアップされると、紙幣Pは、舌片15により邪魔されることなく、フィードローラ12により矢印C方向に搬送される。このときゲートローラ13は回転せずに、2枚目以降の搬送を阻止する分離ローラとしての働きをする。
【0036】
以上のように第2の実施の形態においては、紙幣の繰出し時に舌片15の伸長を阻止するシャッター22を設けたので、アクチュエータを設けることなく、媒体繰出し時に舌片を退避させることができる。
【0037】
次に第3の実施の形態を説明する。図10は第3の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図、図11は第3の実施の形態の要部を示す斜視図である。図10、図11において、第3の実施の形態の紙幣集積繰出装置31には、第1の実施の形態と同様に、フィードローラ12、ゲートローラ13および舌片ローラ14が設けられている。また紙幣Pの搬送経路に沿って、ガイド18が設けられている。
【0038】
第3の実施の形態の舌片ローラ14は軸32に取り付けられ、軸32はモータ33により回転駆動される。軸32にはまた、巻き取り部材35およびワンウェイクラッチ36が取付けられている。巻き取り部材35とワンウェイクラッチ36は互いに固定されており、両者は一体に回転する。ワンウェイクラッチ36は図11に示す矢印D方向にのみ回転する。
【0039】
巻き取り部材35の舌片ローラ14側には爪部37が4箇所に形成されている。爪部37は舌片ローラ14の舌片15を係止可能な位置に形成され、回転時に舌片15は爪部37に突き当たることにより、湾曲状に撓む。なお爪部37は舌片15の数に対応させて8箇所に形成してもよい。
【0040】
次に第3の実施の形態の動作を説明する。まず紙幣を集積する場合を説明するが、紙幣Pを集積する場合、フィードローラ12は図10に示す矢印A方向に回転され、ゲートローラ13は矢印B方向に回転する。また舌片ローラ14はモータ33により軸32を介して矢印B方向に回転する。軸32が回転することにより、ワンウェイクラッチ35および巻き取り部材36が同方向に回転する。したがって舌片15は、まっすぐに伸びた状態で、集積時の紙幣Pの移動軌跡a上に進入して回転する。
【0041】
図中左側の図示しない搬送路から搬送されてくる紙幣Pは、フィードローラ12とゲートローラ13により、図中右側の集積部に紙幣Pを取り込む。紙幣Pがフィードローラ12及びゲートローラ13から放出されると、まっすぐに伸びた舌片ローラ14の舌片15により下方に叩き落される。これにより後続の紙幣が先行の紙幣に衝突することなく、集積部の上部に放出される。以上の動作を繰り返し、紙幣Pを連続的に集積する。
【0042】
次に紙幣を繰出す動作を図12にしたがって説明する。図12は第3の実施の形態の繰り出し動作を示す概略側面図である。紙幣Pを繰出す場合は、フィードローラ12は矢印B方向に回転し、ゲートローラ13は回転しない。また舌片ローラ14はモータ33により軸32を介して矢印A方向に回転する。このときワンウェイクラッチ35および巻き取り部材36は回転せず、そのため舌片ローラ14の舌片15は、図12に示すように、巻き取り部材36の爪部37に突き当たり、爪部37の内側に撓み、巻き取り部材36の範囲内に収納された状態となる。このため舌片15は、繰出し時の紙幣Pの移動軌跡b上への進入を阻止される。
【0043】
図示しないピックアップローラにより最上位の紙幣Pがピックアップされると、紙幣Pは、舌片15により邪魔されることなく、フィードローラ12により矢印C方向に搬送される。このときゲートローラ13は回転せずに、2枚目以降の搬送を阻止する分離ローラとしての働きをする。
なお舌15は、通常時(舌片14が何れの方向にも回転していないとき)には、図10に示すように、撓んでいない状態に戻る構造になっている。
【0044】
以上のように第3の実施の形態によれば、紙幣の繰出し時に舌片15の伸長を阻止する爪部37を有する巻き取り部材36を設けたので、アクチュエータを設けることなく、媒体繰出し時に舌片を退避させることができる。
【0045】
次に第4の実施の形態を説明する。図13は第4の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。図13において、第4の実施の形態の紙幣集積繰出装置41には、第1の実施の形態と同様に、フィードローラ12、ゲートローラ13および舌片ローラ14が設けられている。また紙幣Pの搬送経路に沿って、ガイド18が設けられている。
【0046】
第4の実施の形態の舌片ローラ14には、図14に示すように、舌片15が予め撓んだ形状に変形させてある。舌片15はゴム等の弾性部材で形成されており、力が加えられると変形するが、力が除去された状態では、図14に示す形状を成している。
【0047】
舌片15の撓んでいる方向は、紙幣繰出し時に舌片15を撓ませる方向である。また撓んだ状態における舌片15は、繰出される紙幣Pの移動軌跡b(図15に示す)上には達しない長さに設定されている。ガイド18には、舌片15の接触する位置に、爪部42が設けられている。爪部42は舌片15の回転範囲内に設けられ、舌片ローラ14の回転時に舌片15に接触する。
【0048】
次に第4の実施の形態の動作を説明する。まず紙幣を集積する場合を説明する。紙幣Pを集積する場合、フィードローラ12は図13に示す矢印A方向に回転され、ゲートローラ13は矢印B方向に回転する。また舌片ローラ14は矢印B方向に回転する。舌片ローラ14の回転すると、舌片15の先端部が爪部42に引っ掛かり、このため舌片15は撓み方向の逆方向に起こされ、これにより伸びた状態で紙幣の移動軌跡a上に進入する。
【0049】
図中左側の図示しない搬送路から搬送されてくる紙幣Pは、フィードローラ12とゲートローラ13により、図中右側の集積部に紙幣Pを取り込む。紙幣Pがフィードローラ12及びゲートローラ13から放出されると、伸ばされた舌片ローラ14の舌片15により下方に叩き落される。これにより後続の紙幣が先行の紙幣に衝突することなく、集積部の上部に放出される。以上の動作を繰り返し、紙幣Pを連続的に集積する。
【0050】
次に紙幣を繰出す動作を図15にしたがって説明する。図15は第4の実施の形態の繰り出し動作を示す概略側面図である。紙幣Pを繰出す場合は、フィードローラ12は矢印B方向に回転し、ゲートローラ13は回転しない。また舌片ローラ14は矢印A方向に回転する。舌片ローラ14の回転により、舌片15は、図15に示すように、爪部42に突き当たり、爪部42に押さえられてその内側に撓む。このため舌片15は、繰出し時の紙幣Pの移動軌跡b上への進入を阻止された状態となる。
【0051】
図示しないピックアップローラにより最上位の紙幣Pがピックアップされると、紙幣Pは、舌片15により邪魔されることなく、フィードローラ12により矢印C方向に搬送される。このときゲートローラ13は回転せずに、2枚目以降の搬送を阻止する分離ローラとしての働きをする。
【0052】
以上のように第4の実施の形態によれば、紙幣の繰出し時に、予め撓んでいる舌片15を押さえる爪部42を設けたので、アクチュエータを設けることなく、媒体繰出し時に舌片を退避させることができる。なお第4の実施の形態では、爪部42で舌片15を押さえなくても紙幣Pの繰出しの邪魔にはならないが、舌片ローラ14の回転時の遠心力で舌片15が広がる可能性があるので、爪部42で確実に押さえるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。
【図2】第1の実施の形態の紙幣集積繰出装置の要部を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態のカバーを示す斜視図である。
【図4】第1の実施の形態における紙幣繰出し動作を示す概略側面図である。
【図5】第1の実施の形態における紙幣繰出し動作を示す斜視図である。
【図6】第2の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。
【図7】第2の実施の形態の要部を示す斜視図である。
【図8】第2の実施の形態の繰り出し動作を示す概略側面図である。
【図9】第2の実施の形態の繰出し動作を示す斜視図である。
【図10】第3の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。
【図11】第3の実施の形態の要部を示す斜視図である。
【図12】第3の実施の形態の繰り出し動作を示す概略側面図である。
【図13】第4の実施の形態の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。
【図14】第4の実施の形態の舌片ローラを示す側面図である。
【図15】第4の実施の形態の繰り出し動作を示す概略側面図である。
【図16】従来の紙幣集積繰出装置を示す概略側面図である。
【図17】従来の紙幣繰出し動作を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0054】
11、21、31、41 紙幣集積繰出装置
12 フィードローラ
13 ゲートローラ
14 舌片ローラ
15 舌片
16 カバー
18 ガイド
22 シャッター
35 ワンウェイクラッチ
36 巻き取り部材
37 爪部
42 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する複数の舌片を備え回転可能な舌片ローラにより媒体を叩いて集積するとともに、集積された媒体を1枚ずつ繰出す媒体集積繰出装置において、
前記舌片が接触可能で、該舌片が接触した状態で前記舌片ローラの回転により移動し、前記舌片が集積時の媒体移動軌跡上に突出するのを許容する第1の停止位置と、繰出し時の媒体移動軌跡上への前記舌片の突出を阻止する第2の停止位置をとる移動部材を設け、
媒体集積時は、前記舌片ローラの回転により前記移動部材は前記第1の停止位置に位置付けられ、
媒体繰出し時は、前記舌片ローラの回転により前記移動部材は前記第2の停止位置に位置付けられることを特徴とする媒体集積繰出装置。
【請求項2】
前記移動部材は、
前記舌片ローラの回転軸と同軸上に回転自在に設けられ、回転軸方向に直交する方向に前記舌片が突出する切欠き部と、前記舌片を撓ませて所定範囲内に収納する収納部とを有するカバー部材であり、
前記第1の停止位置は、前記カバー部材の前記切欠き部が前記集積時の媒体移動軌跡に対向する位置であり、
前記第2の停止位置は、前記カバー部材の前記収納部が前記繰出し時の媒体移動軌跡に対向する位置である請求項1記載の媒体集積繰出装置。
【請求項3】
前記移動部材は、
媒体の集積方向に沿って配設されたガイド部材に沿って移動するシャッター部材であり、
前記第1の停止位置は、前記シャッター部材が前記集積時の媒体移動軌跡に対向する位置から退避した待機位置であり、
前記第2の停止位置は、前記シャッター部材が前記繰出し時の媒体移動軌跡に対向する位置である請求項1記載の媒体集積繰出装置。
【請求項4】
可撓性を有する複数の舌片を備え回転可能な舌片ローラにより媒体を叩いて集積するとともに、集積された媒体を1枚ずつ繰出す媒体集積繰出装置において、
前記舌片ローラと同軸上に設けられ、該舌片ローラの媒体集積時の回転方向にのみ回転し、前記舌片ローラの媒体繰出し時の回転時に前記舌片を所定範囲内に撓ませる爪部を有する巻き取り部材を設けたことを特徴とする媒体集積繰出装置。
【請求項5】
可撓性を有する複数の舌片を備え回転可能な舌片ローラにより媒体を叩いて集積するとともに、集積された媒体を1枚ずつ繰出す媒体集積繰出装置において、
前記舌片を、予め、媒体繰出し時に繰出し媒体に影響を及ぼさない程度に所定方向に撓ませておき、
媒体集積時に前記舌片を、集積時の媒体の移動軌跡上に進入する方向に起こす爪部を設けたことを特徴とする媒体集積繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−308324(P2008−308324A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160314(P2007−160314)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】