説明

嫌気性処理システム及び嫌気性処理方法

【課題】沈降性が低下したグラニュール汚泥を細粒化することなくその沈降性を回復させることができ、嫌気性処理槽内の嫌気性汚泥の濃度を高く維持し有機性廃水の処理効率の向上が図れる嫌気性処理装置及び方法を提供すること。
【解決手段】本発明の嫌気性処理システム1は、グラニュール汚泥を収容しており有機性廃水を上向きに流動させてグラニュール汚泥と接触させることによって有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性処理槽12と、嫌気性処理槽12内を浮上した浮上グラニュール汚泥を収集する収集装置30と、収集装置30で収集された浮上グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理することによって当該浮上グラニュール汚泥が内包するガスを排出させる脱気処理装置40と、脱気処理されたグラニュール汚泥を嫌気性処理槽12に返送する返送手段L6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水の嫌気性処理システム及び嫌気性処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物を含む有機性廃水の処理方法として、グラニュール状の嫌気性汚泥を用いたUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法やEGSB(Expanded Granular Sludge Bed)法が知られている。これらの方法では、嫌気性処理装置に含まれる上向流式嫌気性処理槽において、高密度で沈降性のよいグラニュール状の嫌気性汚泥(以下、単に「グラニュール汚泥」とも称す)からなる層に、嫌気性処理槽の下部から上部に向かうように有機性廃水を通して有機性廃水を嫌気性処理する。
【0003】
しかしながら、グラニュール汚泥による嫌気性処理にあっては、長期の連続運転やBOD負荷が十数kg/m3/日以上といった高負荷処理を行うと、グラニュール汚泥が過度に大きくなり、その沈降性が低下する場合がある。沈降性が低下する主因は、グラニュール汚泥の内部にガスが溜まってグラニュール汚泥の比重が小さくなるためと考えられる。沈降性の低下したグラニュール汚泥は嫌気性処理槽内の水面に浮上し、処理水とともに嫌気性処理槽から流出する。これにより、嫌気性処理槽内のグラニュール汚泥の量が次第に減少して処理能力が低下する。嫌気性処理槽内のグラニュール汚泥の減少量が大きい場合には、新たにグラニュール汚泥を嫌気性処理槽内に追加しなければならない場合もある。
【0004】
グラニュール汚泥の沈降性を回復させる方法として、例えば、特許文献1〜4に記載の方法が知られている。これらの方法では、浮上したグラニュール汚泥や、浮上しやすくなったグラニュール汚泥をグラインダーポンプやミキサーなどの破砕装置で破砕することによってグラニュール汚泥の内部のガスを放出させた後に嫌気性処理槽に戻している。
【特許文献1】特開平6−182382号公報
【特許文献2】特開平8−103794号公報
【特許文献3】特開平8−103795号公報
【特許文献4】特開平8−132091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の方法は、いずれも破砕装置を使用するものであるため、グラニュール汚泥が過度に破砕されて細粒化してしまうという問題を有している。グラニュール汚泥が細粒化すると、気泡の付着等によってグラニュール汚泥が容易に浮上し、逆に流出しやすくなる場合がある。また、細粒化した汚泥を再び造粒して有機性廃水の処理に適したグラニュール汚泥を得るには一定の時間を要する。
【0006】
そこで、本発明は、沈降性が低下したグラニュール汚泥を細粒化することなく、その沈降性を回復させることができ、嫌気性処理槽内の嫌気性汚泥の濃度を高く維持し有機性廃水の処理効率の向上が図れる嫌気性処理システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の嫌気性処理システムは、嫌気性汚泥が粒状化してなるグラニュール汚泥を収容しており有機性廃水を上向きに流動させてグラニュール汚泥と接触させることによって有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性処理槽と、嫌気性処理槽内を浮上した浮上グラニュール汚泥を収集する収集装置と、収集装置で収集された浮上グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理することによって当該浮上グラニュール汚泥が内包するガスを排出させる脱気処理装置と、脱気処理装置において脱気処理されたグラニュール汚泥を嫌気性処理槽に返送する返送手段と、を備え、脱気処理装置は、清水による洗浄装置であることを特徴とする。
【0008】
本発明の嫌気性処理システムでは、収集装置によって収集された浮上グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理することによって、浮上グラニュール汚泥が内包するガス(以下、「内包ガス」とも称す)を当該浮上グラニュール汚泥の外へと排出する。そのため、浮上グラニュール汚泥が細粒化されることなくグラニュール汚泥の沈降性を回復することができる。また、脱気処理が施され沈降性が回復したグラニュール汚泥を嫌気性処理槽に返送して再利用することによって、嫌気性処理槽内の嫌気性汚泥の濃度が高くなり、有機性廃水の処理効率が向上する。なお、内包ガスは、有機性廃水の分解やグラニュール汚泥内部で死滅した微生物汚泥の分解によって生じる炭酸ガス及びメタンガスを主成分とするガスである。
【0009】
本発明の嫌気性処理システムにおいては、脱気処理装置として清水による洗浄装置を採用する。清水による洗浄装置を用いて浮上グラニュール汚泥の脱気処理を行うと、当該浮上グラニュール汚泥を破砕することなく、内包ガスを十分に排出することができる。
【0010】
本発明の嫌気性処理方法は、嫌気性汚泥が粒状化してなるグラニュール汚泥を収容している嫌気性処理槽内において有機性廃水を上向きに流動させてグラニュール汚泥と接触させることによって有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性処理工程と、嫌気性処理槽内を浮上した浮上グラニュール汚泥を収集する収集工程と、収集工程を経て得られた浮上グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理することによって当該浮上グラニュール汚泥の内包ガスを排出させる脱気処理工程と、脱気処理が施されたグラニュール汚泥を嫌気性処理槽に返送する返送工程と、を備え、脱気処理は、清水による洗浄処理であることを特徴とする。
【0011】
本発明の嫌気性処理方法では、収集工程で収集された浮上グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理することによって、浮上グラニュール汚泥の内包ガスを当該浮上グラニュール汚泥の外へと排出する。そのため、浮上グラニュール汚泥が細粒化されることなくグラニュール汚泥の沈降性を回復することができる。また、脱気処理が施され沈降性が回復したグラニュール汚泥を嫌気性処理槽に返送して再利用することによって、嫌気性処理槽内の嫌気性汚泥の濃度が高くなり、有機性廃水の処理効率が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、沈降性が低下したグラニュール汚泥を細粒化することなく、その沈降性を回復させることができ、嫌気性処理槽内の嫌気性汚泥の濃度を高く維持し有機性廃水の処理効率の向上が図れる嫌気性処理システム及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る嫌気性処理システムの一実施形態の構成を示す概略図である。同図に示す嫌気性処理システム1は、有機性廃水を上向きに流動させてグラニュール汚泥に通すことによって有機性廃水を嫌気性処理するための上向流式の嫌気性処理装置10を有する。
【0015】
嫌気性処理装置10は、原水流入管L1を通ってきた有機性廃水を受け入れる酸生成槽11を有している。酸生成槽11は、酸生成菌により有機性廃水に含まれる有機物を酢酸等に分解する。また、酸生成槽11において、中和剤としてアルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム)を添加することも好ましい。酸生成槽11には、送水管L2が接続されており、酸生成槽11内の有機性廃水が上向流式嫌気性処理槽12に流入するようになっている。
【0016】
嫌気性処理槽12は、図2に示すように直方体状の容器からなっており、その下部に、送水管L2に連絡しており有機性廃水を嫌気性処理槽12内に流入させる流入部13が設けられている。流入部13は、例えば、長手方向に均一に穴部が設けられた送水管である。また、嫌気性処理槽12の下部には、有機性廃水を嫌気性処理するためのグラニュール汚泥を含有するスラッジブランケット層14が形成されている。
【0017】
嫌気性処理槽12では、その下部に設けられた流入部13から有機性廃水を内部に導入することによって上向きの流動を生じさせ、スラッジブランケット層14に有機性廃水を通して、有機性廃水を嫌気性処理する。これにより、スラッジブランケット層14の上部には、嫌気性処理された有機性廃水(処理水)を含む液層15が形成されている。液層15の処理水には、スラッジブランケット層14から浮上した浮上グラニュール汚泥や、嫌気性処理によって発生したガス(例えば、メタンガス)が含まれている。なお、浮上グラニュール汚泥は、グラニュール汚泥が浮いたものであり、例えば、グラニュール汚泥にガスが付着したり、ガスが内包されたりなどしたものである。
【0018】
また、嫌気性処理槽12の上部には、嫌気性処理槽12を密閉するカバー16が設けられている。カバー16は、液層15の液面よりも上方であって嫌気性処理槽12の側壁17の上端よりも下方に配置されている。カバー16の中央部には、浮上汚泥とガスとを含む処理水からガスを分離するための分離槽18が、その上端部がカバー16から突出し、その下端部が液層15内に含まれるように配置されている。
【0019】
分離槽18の下端部には、処理水を分離槽18の内部に導入する導入口が形成されている。この導入口に処理水を導くために、分離槽18の下方であって導入口の両側には、分離槽18の底部に沿った導入板19が設けられている。導入板19は、鉛直方向に対して互いに逆側に傾斜している。また、導入板19には、導入口の下方において、導入口に導入されなかった処理水を下側に返送するための返送口が形成されている。
【0020】
また、導入板19の下方には、導入板19の返送口を通って返送される処理水の流れを整えるための整流板20が設けられている。
【0021】
上記スラッジブランケット層14を通過し上向きに流動している処理水は、導入板19によって矢印A方向に流されて導入板19と分離槽18との間に形成された導入路21に、液層15の液面側から流入するようになっている。その際に、処理水に含まれるガスは、カバー16と液面との間に出ていくため、分離槽18、カバー16、側壁17及び液面とによって画される空間は、ガス溜り部22として機能する。ガス溜り部22に溜ったガスは、例えば、側壁17側から嫌気性処理槽12外に排出されるようにすればよい。
【0022】
上記導入路21を通った処理水の一部は、矢印B方向に流れて導入口から分離槽18内に流入し、他の部分は、矢印C方向に流れて導入板19の返送口から下側に流れるようになっている。
【0023】
分離槽18内に流入した処理水は、分離槽18の側壁からあふれて、分離槽18、カバー16及び側壁17とによって形成される領域に溜るため、その領域は、処理水溜り部23となっている。処理水溜り部23には処理水の一部を酸生成槽11(図1参照)に返送する処理水返送路L3と、他の部分を排水する排水管L4が接続されている。
【0024】
また、分離槽18内の処理水の液面における導入口の直上部付近には、オーバーフロー式であって、処理水に含まれる浮上汚泥を収集する収集槽(収集装置)30が設けられている。なお、分離槽18において、分離槽18の側壁と収集槽30との間には、導入口から流入した処理水が直接処理水溜り部23に流入しないようにするための隔壁24が設けられている。収集装置としての収集槽30は、断面が逆三角形状になっており、分離槽18内に溜っている処理水の液面近傍の浮上汚泥が収集槽30内に流れ込み収集される。収集槽30は、集められた浮上汚泥を脱気処理装置40に導入する汚泥排出管L5に連絡している。
【0025】
図1を参照すると、脱気処理装置40は、収集槽30で収集された浮上グラニュール汚泥に対して脱気処理を行い、浮上グラニュール汚泥が内包するガスを放出させる。脱気処理装置40としては、浮上グラニュール汚泥から内包ガスを放出させることができるものであれば特に限定されず、種々のものを使用することができる。例えば、浮上グラニュール汚泥が収容された容器を減圧して内包ガスを放出させる減圧装置、遠心力によって内包ガスを放出させる遠心分離装置、浮上グラニュール汚泥を清水と接触させて内包ガスを放出させる洗浄装置、超音波の振動によって内包ガスを放出させる超音波洗浄装置などが挙げられる。なお、これらの装置は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記の装置のなかでも、内包ガスをより効率的かつ十分に放出させる観点から、減圧装置及び遠心分離装置が好ましく、減圧装置がより好ましい。
【0026】
脱気処理装置40には、脱気処理が施されたグラニュール汚泥を嫌気性処理槽12に返送するためのグラニュール汚泥返送管(返送手段)L6が連絡している。このグラニュール汚泥返送管L6の先端は送水管L2に接続されている。
【0027】
次に、上記嫌気性処理システム1を用いた有機性廃水の処理方法について説明する。
【0028】
原水流入管L1を通して、有機性廃水を酸生成槽11に流入させ有機性廃水を酸生成槽11に貯水する。この酸生成槽11に貯水された有機性廃水を酸生成菌により分解する。その際、中和剤を添加しておくことは好ましい。酸生成槽11に貯水されている有機性廃水を、送水管L2を通して流入部13から嫌気性処理槽12内に流入させる。
【0029】
ここで、図2を参照して、嫌気性処理槽12内での嫌気性処理ついて説明する。嫌気性処理槽12の下部に配置された流入部13から流入した有機性廃水は、上向きに流動してスラッジブランケット層14を通過する。これにより、有機性廃水を嫌気性処理する(嫌気性処理工程)。
【0030】
その嫌気性処理された有機性廃水である処理水は、上向きに流動しているため図2の矢印A方向に流れて導入板19と分離槽18との間の導入路21に流入する。その際、嫌気性処理により発生したガスが液面から出ていくので、導入路21に流入する処理水にはガスの含有量が減少している。液面から出てきたガスは、ガス溜り部22に溜り、嫌気性処理槽12から排気される。
【0031】
導入路21を通る処理水の一部は分離槽18の下端部に形成された導入口から分離槽18に流入するが、他の部分は導入板19の返送口を通ってスラッジブランケット層14側に返送される。
【0032】
上記分離槽18に流入した処理水の一部は側壁から処理水溜り部23に排出される。この処理水溜り部23に溜った処理水は、処理水返送路L3を通って酸生成槽11(図1参照)に返送されるとともに、排水管L4を通って排水される。なお、排水管L4を通って排水された処理水に対し、必要に応じて好気性処理等を更に行った後、被処理水を河川等に排水する。
【0033】
図1を参照すると、分離槽18内に溜められた処理水の液面に浮かんでいる浮上グラニュール汚泥を収集槽30に流入させ、収集槽30によって浮上汚泥を収集する(収集工程)。収集槽30で集められた浮上汚泥を、汚泥排出管L5を通して脱気処理装置40(図1参照)に導入する。そして、脱気処理装置40において浮上グラニュール汚泥に対して脱気処理を行う(脱気処理工程)。
【0034】
脱気処理を減圧装置によって実施する場合、収集槽30からの浮上グラニュール汚泥を減圧容器に収容し、この容器に接続された真空ポンプによって容器内を減圧する。容器内の圧力(ゲージ圧)としては、−10kPa以下であることが好ましく、−20〜−100kPaであることがより好ましい。容器内を減圧することによって、浮上グラニュール汚泥の内包ガスは当該汚泥内部に存在する空隙及び表面の孔を通して外部に放出される。また、浮上グラニュール汚泥に付着した気泡は減圧することによって当該グラニュール汚泥から容易に取り除かれる。
【0035】
脱気処理を遠心分離装置によって実施する場合、浮上グラニュール汚泥を遠心分離装置内に投入し、遠心力を付加することで内包ガスの脱気を行う。付加する遠心力は500〜3000Gであることが好ましい。遠心力によって浮上グラニュール汚泥が押し潰されるため内包ガスは外部に放出される。また、グラニュール汚泥とこれに付着している気泡とは受ける遠心力が相違するため、付着した気泡はグラニュール汚泥から分離される。
【0036】
脱気処理を洗浄装置によって実施する場合、浮上グラニュール汚泥を清水とともに洗浄容器に投入し、浮上グラニュール汚泥を清水に接触させることによって内包ガスの脱気を行う。浮上グラニュール汚泥と接触させる清水としては、炭酸ガスやメタンガスなどのガスの溶解量が少ない水(より好ましくは上記ガスを溶解していない水)を使用することが好ましい。このような清水と浮上グラニュール汚泥とを接触させることによって、当該グラニュール汚泥に付着しているガス(炭酸ガスやメタンガスなど)の一部は水に溶解し、他の一部はグラニュール汚泥から気泡のまま取り除かれる。
【0037】
付着しているガスが取り除かれると、グラニュール汚泥表面の気相の分圧が低下するため、内包ガスは当該汚泥内部に存在する空隙を通じて表面に移動する。グラニュール汚泥の表面に移動したガスは清水に溶解したり、気泡となって表面から放出されたりする。この場合、洗浄容器内に攪拌翼などを設けて清水と浮上グラニュール汚泥とを攪拌すると、より効果的に脱気処理を行うことができる。また、浮上グラニュール汚泥からのガスの除去を容易に行うためには、メタン生成菌などが不活化しない50℃前後の清水を使用することが好ましい。
【0038】
浮上グラニュール汚泥が破砕されない程度の攪拌では十分に内包ガスを放出させることは困難であるところ、上記のような減圧装置、遠心分離装置又は洗浄装置による方法を採用することによって浮上グラニュール汚泥の内包ガスを効果的に放出させることができる。それによりグラニュール汚泥の沈降性を回復させることができる。また、回転羽や回転刃を有するポンプや回転翼を有するミキサーなどを利用してグラニュール汚泥を破砕する従来の方法と比較すると穏やかな条件で脱気処理を実施できるので、グラニュール汚泥の微細化を防止することが可能である。
【0039】
脱気処理装置40にて内包ガスが放出されたグラニュール汚泥を、グラニュール汚泥返送管L6を通して送水管L2に返送する(返送工程)。送水管L2は流入部13に連絡しているため、送水管L2に返送することによって嫌気性処理槽12にグラニュール汚泥が返送される。
【0040】
本実施形態の嫌気性処理システム1によれば、嫌気性処理槽12から流出した浮上グラニュール汚泥の内包ガスの放出を、当該グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理によって実施することができる。そのため、脱気処理後においてもグラニュール汚泥はその大きさを十分に維持している。したがって、グラニュール汚泥の沈降性は十分に高いものであるため、これを嫌気性処理槽12内に返送することによって当該槽のグラニュール汚泥の濃度が高くなり、有機性廃水の処理効率が向上する。また、脱気処理後のグラニュール汚泥がその大きさを十分に維持していることから、再度汚泥を造粒する必要がなく、そのための装置及び工程を省くことができる。
【0041】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の嫌気性処理システム2の構成の概略説明図である。同図に示す嫌気性処理システム2は、分離槽18内に収集槽を有さず、嫌気性処理槽12の後段であって、脱気処理装置40の前段に収集装置としての固液分離装置50が配置されている点で嫌気性処理システム1と相違する。
【0042】
固液分離装置50は、処理水溜り部23から送水管L8を通って流入する処理水に含まれる浮上グラニュール汚泥と処理水とを分離する。固液分離装置50は、送水管L8からの処理水を収容する浮上分離槽52と、この浮上分離槽52の液面に浮上した浮上グラニュール汚泥を掻き寄せるスキマー55とを備えている。スキマー55は、図3に示す矢印D方向に回転し、浮上グラニュール汚泥を掻き寄せることができるようになっている。なお、スキマー55としては、液面に浮上したスカムやオイルを掻き寄せることができるものであれば、従来公知のものを使用できる。
【0043】
浮上分離槽52には、スキマー55によって掻き寄せられた浮上グラニュール汚泥を脱気処理装置40に導入するための浮上グラニュール汚泥排出管L10が接続されている。また、浮上分離槽52には浮上グラニュール汚泥が分離された処理水を排水するための排水管L9が接続されている。
【0044】
嫌気性処理システム2を用いた有機性排水の嫌気性処理方法は、処理水溜り部23から送水管L8に流れた処理水を固液分離装置50で固液分離する点で嫌気性処理システム1を用いた場合と相違する。嫌気性処理システム2において、嫌気性処理槽12内で嫌気性処理された処理水は、分離槽18の下端部に形成された導入口から分離槽18内に流入した後、処理水溜り部23に流入する。この処理水溜り部23の処理水の一部は、処理水返送路L3を通って酸生成槽11に返送される。
【0045】
そして、処理水のうち酸生成槽11に返送されなかった処理水は、送水管L8を通って固液分離装置50に導入され、その処理水に含まれる浮上グラニュール汚泥がスキマー55によって掻き寄せられ、分離される。固液分離装置50によって分離された浮上グラニュール汚泥に対し、脱気処理装置40において脱気処理を行う。そして、嫌気性処理システム1と同様にグラニュール汚泥返送管L6及び送水管L2を通してグラニュール汚泥を嫌気性処理槽12に返送する。脱気処理が施されたグラニュール汚泥を返送することによって、嫌気性処理槽12内のグラニュール汚泥の濃度が高くなり、有機性廃水の処理効率が向上するのは第1の実施形態の場合と同様である。
【0046】
固液分離装置50としては、上記のような浮上分離槽52を備えるものに限らず、ろ過槽、膜分離槽又は液体サイクロンなどを備えるものであってもよい。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、嫌気性処理装置は、酸生成槽を含んでいるとしたが、必ずしも酸生成槽を有していなくてもよい。また、上記実施形態では、脱気処理が施されたグラニュール汚泥は、グラニュール汚泥返送管L6を通って送水管L2に導入するようになっているが、嫌気性処理槽12に直接導入してもよい。更に、第1の実施形態では、収集装置としてオーバーフロー式の収集槽を例示したが、第2の実施形態で例示したようなスキマーを備えるものを使用してもよい。
【0048】
以下、沈降性が低下したグラニュール汚泥に対する脱気処理について実験例を挙げて具体的に説明する。
【0049】
(実験例1)
第1の実施形態の嫌気性処理システム1を用いて化学的酸素要求量(CODcr)が約25000mg/Lであるビール工場廃水をCODcr負荷20kg−CODcr/m3/日、及び、当初のグラニュール汚泥の濃度約40000mg−VSS/Lの条件で処理を行った。上記の条件での処理中に嫌気性処理槽の水面に浮上したグラニュール汚泥を分離槽で収集した。
【0050】
本実験例では、収集したグラニュール汚泥を減圧装置による減圧法によって脱気処理した。すなわち、1Lの減圧容器に浮上グラニュール汚泥100ml(固形分:約10g/L)を収容した。その後、この容器内を真空ポンプで−300mmHg(ゲージ圧)に減圧し、この圧力条件にて浮上グラニュール汚泥を10分間脱気処理した。
【0051】
(実験例2)
実験例1と同様の嫌気性処理条件下にて浮上したグラニュール汚泥に対し、遠心分離機による遠心分離法によって脱気処理を行った。すなわち、浮上グラニュール汚泥50ml(固形分:約10g/L)を遠沈管に採取し、この遠沈管を遠心分離機(株式会社コクサン製)に装着した。遠心分離機を1600Gの遠心力の条件で1分間運転し、浮上グラニュール汚泥を脱気処理した。
【0052】
(実験例3)
実験例1と同様の嫌気性処理条件下にて浮上したグラニュール汚泥に対し、当該浮上グラニュール汚泥と清水とを接触させる洗浄法によって脱気処理を行った。すなわち、1Lのビーカーに浮上グラニュール汚泥100ml(固形分:約10g/L)と水500mlとを入れ、これを約10分間軽く攪拌することによって浮上グラニュール汚泥を脱気処理した。
【0053】
(脱気処理後の沈降性評価)
減圧法(実験例1)、遠心分離法(実験例2)、洗浄法(実験例3)によって脱気処理された各グラニュール汚泥を、嫌気性処理槽から採取したメタン発酵処理水を入れたメスシリンダーにそれぞれ投入し、グラニュール汚泥の沈降性を目視により観察した。その結果、減圧法が最もグラニュール汚泥の沈降性を回復させる効果が高く、以下、遠心分離法、洗浄法の順序であることが分かった。なお、目視による観察では、いずれの脱気処理方法においてもグラニュール汚泥の破砕や細粒化は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態の嫌気性処理システムの構成の概略説明図である。
【図2】嫌気性処理槽の構成の概略説明図である。
【図3】第2の実施形態の嫌気性処理システムの構成の概略説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1,2…嫌気性処理システム、10…嫌気性処理装置、12…嫌気性処理槽、30…分離槽(収集装置)、40…脱気処理装置、50…固液分離装置(収集装置)、L6…グラニュール汚泥返送管(返送手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気性汚泥が粒状化してなるグラニュール汚泥を収容しており有機性廃水を上向きに流動させて前記グラニュール汚泥と接触させることによって前記有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性処理槽と、
前記嫌気性処理槽内を浮上した浮上グラニュール汚泥を収集する収集装置と、
前記収集装置で収集された浮上グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理することによって当該浮上グラニュール汚泥が内包するガスを排出させる脱気処理装置と、
前記脱気処理装置において脱気処理されたグラニュール汚泥を前記嫌気性処理槽に返送する返送手段と、を備え、
前記脱気処理装置は、清水による洗浄装置であることを特徴とする嫌気性処理システム。
【請求項2】
嫌気性汚泥が粒状化してなるグラニュール汚泥を収容している嫌気性処理槽内において、有機性廃水を上向きに流動させて前記グラニュール汚泥と接触させることによって前記有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性処理工程と、
前記嫌気性処理槽内を浮上した浮上グラニュール汚泥を収集する収集工程と、
前記収集工程を経て得られた浮上グラニュール汚泥を破砕することなく脱気処理することによって当該浮上グラニュール汚泥が内包するガスを排出させる脱気処理工程と、
前記脱気処理が施されたグラニュール汚泥を前記嫌気性処理槽に返送する返送工程と、を備え、
前記脱気処理は、清水による洗浄処理であることを特徴とする嫌気性処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−67821(P2011−67821A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4814(P2011−4814)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【分割の表示】特願2007−23337(P2007−23337)の分割
【原出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】