説明

嫌気性菌培養キット

【課題】嫌気性菌を容易に検出することができる嫌気性菌培養キットを提供する。
【解決手段】嫌気性菌培養キット1はシャーレ2と下敷シート3と透明袋4と脱酸素剤5と酸素インジケータ6とを有する。シャーレ2は容器と上蓋とを有する。下敷シート3は容器の底面より大きく透明である。透明袋4は開口4aを密閉可能な気密性の袋から成り、下敷シート3の上に容器の底面を載せ、下敷シート3の容器の底面からはみ出した突出部3bを開口4aに向けた状態でシャーレ2および下敷シート3を収容する。透明袋4はシャーレ2の直径および下敷シート3の幅よりやや大きくシャーレ2および下敷シート3の幅方向への移動を拘束する幅を有する。脱酸素剤5および酸素インジケータ6は透明袋4内で下敷シート3の上に載せられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性菌培養キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の嫌気性菌の検査では、試料を添加した寒天培地を、嫌気チャンバーや脱酸素剤とともに嫌気ジャーに入れて培養し、培養により分裂増殖した嫌気性菌を確認することにより、嫌気性菌が試料中に存在しているかどうかを判定している(例えば、特許文献1、2または3参照)。細菌の検出に関し、寒天培地を透過する光による投影像に基づいて、細菌を正確かつ迅速に検出することができる投影検出法が本発明者等により提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−274934号公報
【特許文献2】特開平7−155171号公報
【特許文献3】特許第3075569号公報
【特許文献4】特開2003−85533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2または3に記載の方法では、嫌気性菌を培養するための設備が大型となり、操作も煩雑であるという課題があった。また、嫌気性菌の成長検出を確認するたびに、各寒天培地を嫌気チャンバーや嫌気ジャーから取り出さなければならず、手間がかかり煩雑であるという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、嫌気性菌を容易に検出することができる嫌気性菌培養キットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る嫌気性菌培養キットは、容器と上蓋とを有する透明なシャーレと、前記容器の底面より大きい透明な下敷シートと、開口を密閉可能な気密性の袋から成り、前記下敷シートの上に前記容器の底面を載せ、前記下敷シートの前記容器の底面からはみ出した部分を前記開口に向けた状態で前記シャーレおよび前記下敷シートを収容する透明袋とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る嫌気性菌培養キットは、試料の中の嫌気性菌有無の検査または嫌気性菌の培養・観察のために使用される。嫌気性菌の検査用培地を入れたシャーレとともに下敷シートを透明袋の内部に収容し、下敷シートの上に容器の底面を載せ、下敷シートの容器の底面からはみ出した部分を透明袋の開口に向けた状態にする。開口から透明袋の内部の空気を吸引し、真空にする。このとき、下敷シートの開口側端部とシャーレの上蓋との間に空間が形成されるため、透明袋の内部の空気を吸引しやすく、内部を真空にしやすい。内部の空気を吸引後、透明袋の開口を密封する。
【0008】
嫌気性菌培養キットは、所定の培養温度に保たれる。シャーレ内の検査用培地は、透明な下敷シートおよび透明袋を通して観察しやすく、嫌気性菌を容易に検出することができる。ディジタル顕微鏡方式細菌検出装置を使用した場合、嫌気性菌培養キットに検査用培地を透過する光を照射し、透過した光によるコロニーの投影像を観察することにより、細菌を正確かつ迅速に検出することができる。
【0009】
透明袋は、酸素および空気を通さない気密性の袋から成る。透明袋および下敷シートは、全体が透明のほか、一部のみが透明であってもよい。下敷シートは、透明袋が張り付いたときにも内部の空気を吸引しやすくするため、透明袋の内部で開口側からシャーレ側まで伸びる通気用溝を有していてもよい。
【0010】
本発明に係る嫌気性菌培養キットで、前記透明袋は前記シャーレの直径および前記下敷シートの幅よりやや大きく前記シャーレおよび前記下敷シートの幅方向への移動を拘束する幅を有し、前記下敷シートは前記透明袋内で前記容器の底面を載せる載置部と、前記底面から前記透明袋の開口側に伸びる突出部とを一体的に有することが好ましい。
【0011】
この場合、シャーレおよび下敷シートが透明袋の内部で移動して下敷きシートの上からシャーレがずれるのを防ぎ、検査用培地の観察を容易にすることができる。透明袋は、シャーレを下敷シートの載置部の上に載せて内部に収容した状態で、シャーレの上蓋および下敷シートに密着するようにする。透明袋の上から突出部を持つことにより、嫌気性菌培養キットを持ちやすくなる。
【0012】
本発明に係る嫌気性菌培養キットは、前記透明袋内で前記下敷シートの上に載せられる脱酸素剤および酸素インジケータを有することが好ましい。
この場合、脱酸素剤により透明袋の内部から酸素をさらに除くことができる。また、酸素インジケータにより酸素の除去を確認することができる。脱酸素剤および酸素インジケータは、下敷シートの上に載せられるので、検査用培地の観察を妨げない。酸素インジケータには、色で無酸素環境か有酸素環境かを示す市販のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、嫌気性菌を容易に検出することができる嫌気性菌培養キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の嫌気性菌培養キットを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の嫌気性菌培養キット1を示し、図2はその嫌気性菌培養キット1の下敷シート3を示している。
図1に示すように、嫌気性菌培養キット1は、シャーレ2と、下敷シート3と、透明袋4と、脱酸素剤5と、酸素インジケータ6とを有している。
【0016】
シャーレ2は、ガラス製または硬質プラスチック製の透明な容器と透明な上蓋とから成っている。容器は、円筒状の側面と円形の底面とを一体的に有している。上蓋は、円筒状の側面と円形の上面とを一体的に有している。上蓋は、容器を被覆して容器の開口4aを閉じるようになっている。シャーレ2の容器の内部には、嫌気性菌の検査用培地が入れられる。検査用培地には、寒天培地が適している。
【0017】
下敷シート3は、容器の底面より大きい透明な硬質塩化ビニル樹脂の薄いシートから成っている。下敷シート3は、載置部3aと突出部3bとから一体的に成っている。載置部3aは、容器の底面よりやや大きく、透明袋4内で容器の底面を載せる部分である。突出部3bは、透明袋4の内部で容器の底面から透明袋4の開口4a側に伸びている。突出部3bは、載置部3aの半円状の縁部3cに連続し、その半円の弦を1辺とする長方形の3辺に対応する縁部3dを有している。
【0018】
透明袋4は、可撓性かつ気密性の透明な軟質塩化ビニル樹脂の袋から成り、開口4aを密閉可能である。透明袋4は、下敷シート3の上に容器の底面を載せ、下敷シート3の容器の底面からはみ出した突出部3bを開口4aに向けた状態でシャーレ2および下敷シート3を収容可能である。透明袋4は、長方形状で、シャーレ2の直径および下敷シート3の幅よりやや大きくシャーレ2および下敷シート3の幅方向への移動を拘束する幅を有している。透明袋4は、シャーレ2を下敷シート3の載置部3aの上に載せて内部に収容した状態で、シャーレ2の上蓋および下敷シート3に密着する。
【0019】
脱酸素剤5および酸素インジケータ6は、透明袋4内で下敷シート3の上に載せられる。脱酸素剤5は、鉄の酸化を利用して酸素を吸収する薬剤から成る。酸素インジケータ6には、袋内の酸素が所定量以上のときに青色、所定量以下のときに桃色を示す市販製品を用いることができる。
【0020】
嫌気性菌培養キット1は、試料の中の嫌気性菌有無の検査または嫌気性菌の培養・観察のために使用される。検査用培地を入れたシャーレ2とともに下敷シート3を透明袋4の内部に収容し、下敷シート3の上に容器の底面を載せ、下敷シート3の容器の底面からはみ出した突出部3bを透明袋4の開口4aに向けた状態にする。透明袋4の内部に、脱酸素剤5と酸素インジケータ6を入れる。
【0021】
開口4aから透明袋4の内部の空気を吸引し、真空にする。このとき、下敷シート3の開口4a側端部とシャーレ2の上蓋との間に空間が形成されるため、透明袋4の内部の空気を吸引しやすく、内部を真空にしやすい。内部の空気を吸引後、透明袋4の開口4aを密封する。
【0022】
透明袋4は、シャーレ2の直径および下敷シート3の幅よりやや大きく、シャーレ2および下敷シート3の幅方向への移動を拘束する幅を有するので、シャーレ2および下敷シート3が透明袋4の内部で移動して下敷きシート3の上からシャーレ2がずれるのを防ぎ、検査用培地の観察を容易にすることができる。また、透明袋4は、シャーレ2の上蓋および下敷シート3に密着し、検査用培地を観察しやすくなる。透明袋4の上から突出部3bを持つことにより、嫌気性菌培養キット1を持ちやすくなる。
【0023】
嫌気性菌培養キット1を所定の培養温度で保つ。シャーレ2内の検査用培地は、透明な下敷シート3および透明袋4を通して観察しやすく、嫌気性菌を容易に検出することができる。ディジタル顕微鏡方式細菌検出装置を使用した場合、嫌気性菌培養キット1に検査用培地を透過する光を照射し、透過した光によるコロニーの投影像を観察することにより、細菌を正確かつ迅速に検出することができる。
【0024】
嫌気性菌培養キット1は、脱酸素剤5を有するので、脱酸素剤5により透明袋4の内部から酸素をさらに除くことができる。また、酸素インジケータ6により酸素の除去を確認することができる。脱酸素剤5および酸素インジケータ6は、下敷シート3の上に載せられるので、検査用培地の観察を妨げない。
【符号の説明】
【0025】
1 嫌気性菌培養キット
2 シャーレ
3 下敷シート
4 透明袋
5 脱酸素剤
6 酸素インジケータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と上蓋とを有する透明なシャーレと、
前記容器の底面より大きい透明な下敷シートと、
開口を密閉可能な気密性の袋から成り、前記下敷シートの上に前記容器の底面を載せ、前記下敷シートの前記容器の底面からはみ出した部分を前記開口に向けた状態で前記シャーレおよび前記下敷シートを収容する透明袋とを、
有することを特徴とする嫌気性菌培養キット。
【請求項2】
前記透明袋は前記シャーレの直径および前記下敷シートの幅よりやや大きく前記シャーレおよび前記下敷シートの幅方向への移動を拘束する幅を有し、前記下敷シートは前記透明袋内で前記容器の底面を載せる載置部と、前記底面から前記透明袋の開口側に伸びる突出部とを一体的に有することを、特徴とする請求項1記載の嫌気性菌培養キット。
【請求項3】
前記透明袋内で前記下敷シートの上に載せられる脱酸素剤および酸素インジケータを有することを、特徴とする請求項2記載の嫌気性菌培養キット。




【図1】
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