説明

子孫の免疫応答を調節するための母体投与のための全細菌細胞(放線菌目)の使用

レシピエントの免疫応答を調節するための医薬の製造における放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、該レシピエントを、該レシピエントが幼児である間に該被験体の体液に曝露する、前記使用。好ましくは、前記医薬を、該レシピエントにおける感染、アレルギー、自己免疫に基づく疾患および新生物のうちの1種以上の予防および/または治療に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母体の免疫調節に関する。特に、本発明は、レシピエントを免疫調節するための、被験体への放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の投与に関する。さらに、本発明は、被験体にレシピエントを免疫調節する能力を提供するための、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幼児の免疫系は未成熟であり、かくして、幼児はたとえば、感染症により罹患しやすい。さらに、新生児期の間に、ワクチン接種などにより直接的に防御免疫を誘導することは難しい。
【0003】
Davila HOら(Am. J. Trop. Hyg., 50(4), 1994, pp506-511)および(Am. J. Trop. Hyg., 54(6), 1996, pp660-664)は、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)による感染および/または妊娠中のインターフェロンγが、子孫におけるトリパノソーマ・クルージ(T.cruzi)に対する防御を与えることを開示している。
【0004】
Lundin BSら(Scand. J. Immunol. 1999; 50, 651-656)は、新生児期に与えられた1つの細菌成分に対するモノクローナル抗体が、2世代に渡ってその成分を含む細菌に対する体液性免疫応答に影響し得ることを開示している。
【0005】
細菌細胞の個々の成分を用いてアジュバント効果を引き出すことができることが提言されており、また、ロドコッカス属(Rhodococcus)、ゴルドナ属(Gordona)、ノカルディア属(Nocardia)、ディエトジア属(Dietzia)、ツカムレラ属(Tsukamurella)およびノカルジオイデス属(Nocardioides)に由来する細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物が教示されている(WO204/022903および英国特許出願第0404102.6号(両方とも参照により本明細書に組み入れられるものとする))。しかしながら、現在まで、被験体への放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の投与が、例えば、被験体の体液に幼児の免疫系を曝露することにより、幼児の免疫系を調節することができることは教示も提言もされていない。
【発明の開示】
【0006】
本発明の独創性に富む知見は、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を投与する場合、被験体が、レシピエントが幼児である間に、被験体の体液に、該レシピエントを曝露した後、該レシピエントの免疫系を調節する、好ましくは、増強する能力を有することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明の詳細な態様
一態様においては、本発明は、レシピエントの免疫応答を調節、好ましくは、増強するための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞(ならびに必要に応じて、それと共に製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤)を含む組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する前記使用に関する。
【0008】
別の態様においては、本発明は、レシピエントにおける感染、アレルギー、自己免疫に基づく疾患および新生物からなる群より選択される1種以上の疾患または障害の治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞(ならびに必要に応じて、それと共に製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤)を含む組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する前記使用に関する。
【0009】
別の態様においては、本発明は、レシピエントにおける感染(例えば、細菌感染、HIV、PMWSおよびPDNSなどのウイルス感染、ウマサルコイドなどのパピローマウイルスにより引き起こされる感染、頸部の癌腫に先行する子宮頸部の生殖器疣および形成異常、またはマラリアなどの寄生虫感染、およびリーシュマニア症などの内臓感染);感染に伴う免疫学的異常;自己免疫疾患(例えば、閉塞性血管障害などの血管障害、ならびに筋血管内膜(myointimal)過形成および/またはアテローム形成(さもなければ、動脈硬化症として知られる)の原因となる免疫学的態様、糖尿病、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主要な外傷性ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレス);アレルギー(例えば、アレルギー性喘息などの喘息、花粉症、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、植物接触もしくは摂取、イラクサおよび昆虫による刺し傷などの刺し傷に対するアレルギー、ならびにクリコイデス(Culicoides)(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)およびノミなどの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギー);肺気腫(heaves);COPD;自閉症;SIPH(EIPHなど);癌(例えば、白血病、子供の稀な固形腫瘍、メラノーマ、癌腫、肉腫または腺癌);免疫系の不均衡(例えば、子供における免疫系の不均衡);ならびに術後のストレスおよび感染からなる群より選択される1種以上の疾患または障害の治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞(ならびに必要に応じて、それと共に製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤)を含む組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する前記使用に関する。
【0010】
好適には、前記医薬は、レシピエントにおける感染の治療または予防(好ましくは、予防)のためのものであってよい。好適には、前記感染を、細菌感染、ウイルス感染(好ましくは、HIV)または寄生虫感染(好ましくは、マラリアおよび/もしくは内臓感染(リーシュマニア症など))からなる群より選択することができる。好ましくは、前記感染はHIV、マラリアおよび/または内臓感染である。
【0011】
好適には、前記医薬は、レシピエントにおける自己免疫疾患の治療または予防(好ましくは、予防)のためのものであってよい。好適には、自己免疫疾患を、糖尿病、閉塞性血管障害などの血管障害ならびに筋血管内膜過形成および/またはアテローム形成(さもなければ、動脈硬化症として知られる)の原因となる免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶からなる群より選択することができる。好ましくは、自己免疫疾患は、糖尿病および/または関節炎であってよい。
【0012】
好適には、前記医薬は、アレルギーの治療または予防(好ましくは、予防)のためのものであってよい。好適には、アレルギーを、喘息(アレルギー性喘息など)、花粉症、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、植物接触もしくは摂取、イラクサおよび昆虫による刺し傷などの刺し傷に対するアレルギー、ならびにクリコイデス(Culicoides)(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)およびノミなどの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギーからなる群より選択することができる。好ましくは、前記アレルギーは、食物アレルギー(例えば、ナッツアレルギー)および/または昆虫による咬み傷に対するアレルギー(例えば、ノミアレルギー)である。
【0013】
好適には、前記医薬は、癌の治療または予防(好ましくは、予防)のためのものであってよい。好適には、癌を、白血病、子供の稀な固形腫瘍、メラノーマ、癌腫、腺癌および肉腫からなる群より選択することができる。好ましくは、癌は腺癌および/または肉腫である。
【0014】
好適には、前記医薬は、免疫系の不均衡の治療または予防(好ましくは、予防)のためのものであってよい。好適には、免疫系の不均衡は、子供におけるものであってよい。
【0015】
さらなる態様においては、本発明は、被験体にレシピエントの免疫応答を調節、好ましくは、増強する能力を提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を含む組成物(ならびに必要に応じて、製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤)を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む前記方法に関する。
【0016】
一態様においては、本発明は、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む組成物の有効量を含む組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、レシピエントの免疫応答を調節する方法に関する。
【0017】
別の態様においては、本発明は、レシピエントの免疫が調節される(好ましくは、増強される)ように、該レシピエントを妊娠する前および/または妊娠中に、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量(ならびに必要に応じて、製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤)を含む組成物を被験体に投与することを含む、レシピエントの免疫応答を調節する(好ましくは、増強する)方法に関する。
【0018】
さらなる態様においては、本発明は、レシピエントの免疫が調節される(好ましくは、増強される)ように、授乳前に、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量(ならびに必要に応じて、製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤)を含む組成物を被験体に投与し、該レシピエントが幼児である間に、該レシピエントにミルクを与えることを含む、レシピエントの免疫応答を調節する(好ましくは、増強する)方法に関する。
【0019】
別の態様においては、本発明は、感染、アレルギー、自己免疫に基づく疾患および新生物からなる群より選択される1種以上の疾患または障害からのレシピエントの母体由来防御のための方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞(ならびに必要に応じて、製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤)を含む組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法に関する。
【0020】
さらに別の態様においては、本発明は、感染(例えば、細菌感染、HIV、PMWSおよびPDNSなどのウイルス感染、ウマサルコイドなどのパピローマウイルスにより引き起こされる感染、頸部の癌腫に先行する子宮頸部の生殖器疣および形成異常、またはマラリアなどの寄生虫感染、およびリーシュマニア症などの内臓感染);感染に伴う免疫学的異常;自己免疫疾患(例えば、閉塞性血管障害などの血管障害、ならびに筋血管内膜過形成および/またはアテローム形成(さもなければ、動脈硬化症として知られる)の原因となる免疫学的態様、糖尿病、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主要な外傷性ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレス);アレルギー(例えば、アレルギー性喘息などの喘息、花粉症、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、植物接触もしくは摂取、イラクサおよび昆虫による刺し傷などの刺し傷に対するアレルギー、ならびにクリコイデス(Culicoides)(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)およびノミなどの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギー);肺気腫;COPD;自閉症;SIPH(EIPHなど);癌(例えば、白血病、子供の稀な固形腫瘍、メラノーマ、癌腫、肉腫または腺癌);免疫系の不均衡(例えば、子供における免疫系の不均衡);ならびに術後のストレス(例えば、麻酔剤の投与に関連するストレスなど)および術後感染からなる群より選択される1種以上の疾患または障害からのレシピエントの母体由来防御のための方法に関する。
【0021】
本明細書で用いられる用語「曝露された」、「曝露すること」、および「曝露」とは、幼児としてのレシピエントを、被験体の体液またはその一部と接触させる動作を意味する。好ましくは、この曝露は、経口であり(すなわち、幼児としてのレシピエントが体液を摂取する)、および/または経胎盤である(すなわち、曝露が胎盤を横切って起こる)。
【0022】
被験体の体液を摂取する幼児としてのレシピエントにより曝露を行う場合、好ましくは、この体液は授乳する被験体のミルクである。
【0023】
曝露を経胎盤で行う場合、被験体(すなわち、親)の体液は胎盤に進入し、その1種以上の成分は胎盤を横切って移動することができる。本出願においては、これを、体液またはその一部が該レシピエントと直接接触するようにならない場合でも、レシピエントが被験体の体液に曝露されるものと考えることができる。
【0024】
好ましい態様
前記組成物は、免疫調節組成物および/または医薬組成物であってよい。医薬組成物は製薬上許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明はさらに、レシピエントにおける細菌感染の治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0026】
本発明はさらに、レシピエントにおける、例えば、マラリアなどの寄生虫感染の予防または治療(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0027】
本発明はさらに、レシピエントにおけるHIVなどのウイルス感染の治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0028】
この方法で、母親のHIV感染に対する防御を、レシピエントに提供することができる。
【0029】
本発明はさらに、レシピエントにおけるアレルギー(例えば、アレルギー性喘息などの喘息)、花粉症、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、植物接触もしくは摂取、イラクサおよび昆虫による刺し傷などの刺し傷に対するアレルギー、ならびに例えば、クリコイデス(Culicoides)(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)などの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギーの治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0030】
本発明はさらに、幼児における1種以上の肺気腫および/またはCOPDの治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。好ましくは、前記レシピエントはウマである。好適には、前記医薬は獣医薬であってよい。
【0031】
本発明はさらに、レシピエントにおける1種以上のPMWSおよび/またはPDNSの治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0032】
本発明はさらに、レシピエントにおける癌の治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。好適には、癌は、レシピエントにおける白血病、稀な固形腫瘍、メラノーマおよび/または腺癌であってよい。
【0033】
本発明はさらに、レシピエントにおける免疫系の不均衡の治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0034】
本発明はさらに、レシピエントにおける免疫系を増強させるための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0035】
例えば、レシピエントの免疫系を増強する場合、これは、成長の増強または誕生前後の幼児としてのレシピエントにおける、食物利用の効率の増加をもたらし得る。成長の増強および/または食物利用の効率の増加は、ブタおよび/またはウシなどの家畜において特に重要であり、また、子豚および/または子牛において特に重要であり得る。
【0036】
典型的には、本発明のこの態様に従う免疫調節組成物または医薬組成物は、免疫増強剤であってよい。
【0037】
有利には、本発明の免疫調節組成物または医薬組成物を用いて、家畜の成長を促進するのに現在用いられている抗生物質に取って代わることができる。
【0038】
好適には、本発明の免疫調節組成物を、単独で、または他の治療と組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明はさらに、レシピエントにおける百日咳ワクチン接種および現在のMMRワクチン接種などの子供用ワクチンに対する有害反応ならびに/またはその結果の治療または予防(好ましくは、予防)のための医薬の製造における、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む免疫調節組成物または医薬組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露する、前記使用を提供する。
【0040】
本明細書で用いられる用語「有害反応」とは、典型的には、短時間の枠内で起こるが、遅延させることができる(例えば、6ヶ月まで)、ワクチンもしくはその投与により引き起こされるか、またはプライミングされる局所的な、もしくは一般化された不利益な応答を意味する。「有害反応」は子供の死亡を含んでもよい。この有害反応は、別の事象、ワクチンまたはその投与により負にプライミングされた応答の結果として引き起こされる場合がある。一実施形態においては、ワクチン接種に対する有害反応は、同時に組織損傷を誘導するTh1およびTh2の両方の産生などの細胞性免疫の不利な提示を引き起こすワクチン中に存在するアジュバントにより誘導される場合がある。
【0041】
本発明はさらに、レシピエントにおける1種以上の細菌感染を治療または予防(好ましくは、予防)する能力を被験体に提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0042】
本発明はさらに、レシピエントにおける、例えば、マラリアなどの1種以上の寄生虫感染を治療または予防(好ましくは、予防)する能力を被験体に提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0043】
本発明はさらに、レシピエントにおけるHIVなどのウイルス感染を治療または予防(好ましくは、予防)する能力を被験体に提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0044】
本発明はさらに、レシピエントにおける1種以上のアレルギー(例えば、アレルギー性喘息などの喘息)、花粉症、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、植物接触もしくは摂取、イラクサおよび昆虫による刺し傷などの刺し傷に対するアレルギー、ならびに例えば、クリコイデス(Culicoides)(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)などの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギーを治療または予防(好ましくは、予防)する能力を被験体に提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0045】
好ましくは、前記方法を用いて、アレルギー性喘息などの喘息、および例えば、クリコイデス(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)またはノミなどの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギーを治療または予防(好ましくは、予防)する。
【0046】
本発明はさらに、被験体(例えば、ウマ)に、レシピエント(例えば、別のウマ)における1種以上の肺気腫および/またはCOPDを予防する能力を提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児(例えば、子馬)である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0047】
本発明はさらに、被験体(例えば、ブタ)に、レシピエント(例えば、別のブタ)における1種以上のPMWSおよび/またはPDNSを予防する能力を提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児(例えば、子豚)である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0048】
本発明はさらに、被験体に、レシピエントにおける1種以上の癌(白血病、腺癌、メラノーマまたは稀な固形癌)を治療または予防(好ましくは、予防)する能力を提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0049】
本発明はさらに、被験体に、幼児における免疫系の不均衡を治療または予防(好ましくは、予防)する能力を提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該幼児を該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0050】
本発明はさらに、被験体に、レシピエントにおける免疫系を増強する能力を提供する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の有効量を被験体に投与し、レシピエントが幼児である間に、該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法を提供する。
【0051】
そのような免疫系の増強は、例えば、誕生前後の前記レシピエントにおける成長の増強または食物利用の効率の増加をもたらしてもよい。
【0052】
有利には、本発明の方法を用いて、家畜の成長を促進するのに現在用いられている抗生物質に取って代わることができる。
【0053】
好適には、本発明の方法を、単独で、または他の治療と組み合わせて用いることができる。
【0054】
本明細書で用いられる用語「母体由来防御」および/または「母体免疫調節」とは、レシピエント(幼児として)が、母親がレシピエントの実際の母親、代理母、または乳母(すなわち、別の被験体の幼児に授乳させるのに用いられる被験体)であろうとなかろうと、「母親」を介して防御を獲得することを意味する。好適には、本明細書で用いられる用語「母親」とは、レシピエントの実際の母親または少なくとも最近妊娠し、および/もしくは依然として授乳している被験体を指すが、レシピエントの実際の母親でなくてもよい。用語「母親」は、特に指摘しない限り、母親が、親/子供の様式において、本明細書で言及されるレシピエントと関連することを示唆しない。
【0055】
本明細書で用いられる疾患に関する用語「予防」および「予防する」とは、疾患もしくは障害の有害作用の低下、軽減および/もしくは改善、または疾患もしくは障害が発生するのを完全に停止させることを意味する。いくつかの実施形態においては、本明細書で用いられる用語「予防」および「予防する」とは、疾患または障害が発生するのを停止させることを意味してもよい。
【0056】
いくつかの態様においては、本発明の組成物および方法は、幼児期を超えたレシピエントにおける特定の疾患の予防を誘導し、該レシピエントにおける特定の疾患の生涯予防さえ誘導することができる。
【0057】
本発明の一態様においては、好ましくは、免疫調節組成物および/または医薬組成物はさらに、ウシパピローマウイルスのウイルス抗原である、少なくとも1種の抗原または抗原決定基を含む。
【0058】
典型的には、本発明の免疫調節組成物または医薬組成物は、免疫増強剤であってよい。
【0059】
上記の疾患に代わって、またはそれらに加えて、本発明の組成物を、幼児における、多くの疾患に関連する「自己に対する有害な応答」、すなわち、自己免疫応答を予防、軽減および/もしくは低下させ、ならびに一次性糖尿病、乾癬、子供の慢性関節リウマチおよび精神分裂病-うつ病軸の精神病などの特定の自己免疫疾患に対する罹患性を低下させるための医薬の製造において用いることができる。
【0060】
免疫調節剤
本明細書で用いられる用語「免疫調節剤」とは、レシピエントの細胞性免疫系を調節する物質を意味する。
【0061】
好適には、「免疫調節剤」は、レシピエントの細胞性免疫系を増強することができる。
【0062】
同様に、本明細書で用いられる用語「免疫応答を調節すること」は、幼児により引き出された免疫応答に対する、増加または減少であってよい変化を意味する。好ましくは、この免疫応答は増加する(すなわち、増強される)。用語「免疫応答を調節する」は、それに応じて解釈されるべきである。
【0063】
好適には、そのような調節は、免疫応答の潜在的な調節不全を補正することができる。
【0064】
本明細書で用いられる用語「免疫応答を増強する」とは、幼児の免疫応答が増加すること、例えば、幼児の健康および/または成長に対する利益をもたらすことを意味する。好ましくは、増強された免疫応答は、増強された細胞性免疫応答である。
【0065】
本発明に従って、例えば、幼児における免疫系の不均衡の予防のために、または例えば、哺乳動物、特に、家畜もしくはヒトの幼児の免疫系を増強するために、免疫増強剤を用いることができる。
【0066】
前記被験体を、特異的に設計された食物または動物飼料、例えば、本発明の細菌を補給したブタの動物飼料における消費により、免疫増強剤(例えば、本発明の全細胞など)を用いて治療することができる。
【0067】
また、免疫増強剤を他の経路、例えば、直接的注入により投与することもできる。
【0068】
本発明の一実施形態においては、前記被験体を、妊娠前および/または妊娠中に、本発明の細菌の全細胞を用いて治療する。
【0069】
好適には、前記被験体自身が若い場合、例えば、該被験体自身が依然として新生児期にある場合、該被験体を本発明に従って治療することができる。理論によって束縛されることを望むものではないが、依然として幼児である(すなわち、新生児期、すなわち、誕生直後の期間にある)被験体への、本発明に従う組成物の投与は、被験体が母親である幼児に免疫を移動させる被験体の能力を増強することができる。この点で、新生児期の間に、第1世代に対して本発明に従う組成物を投与することは、第2世代の免疫に対する増強作用を有し得る。
【0070】
本発明の一実施形態は、本発明の組成物で治療した被験体の体液に曝露されるレシピエントに関し、ここで、体液へのそのような曝露は、該被験体が該レシピエントを妊娠している間に行う。理論により束縛されることを望むものではないが、妊娠前および/または妊娠中の被験体への本発明に従う組成物の投与は、レシピエントの免疫応答を調節することができる被験体の血液(例えば)中の成分をもたらすであろうと考えられる。妊娠中に、そのような成分は胎盤を横切り、そのような成分へのレシピエントの曝露は、該レシピエントの免疫系の調節をもたらす。好適には、該曝露を、レシピエントの免疫系が発達している間に行うことができる。
【0071】
本発明の別の実施形態は、レシピエントが幼児である間に、本発明に従う組成物を投与された被験体の体液に曝露されるレシピエントに関する。この実施形態においては、「体液」はミルクであってよい。好適には、ミルクまたはミルクの1種以上の成分は、該ミルクを与えられた幼児における免疫応答を調節することができる。理論により束縛されることを望むものではないが、授乳前の被験体への本発明に従う組成物の投与は、該被験体のミルク中の成分をもたらす。レシピエントを、ミルクまたはその一部の摂取により幼児としてそのような成分に曝露し、該レシピエントの免疫系の調節をもたらすことができる。疑いを回避するために、この実施形態においては、前記被験体は該レシピエントの実際の母親である必要はなく、すなわち、該被験体は乳母であってもよい。
【0072】
本発明のさらに別の実施形態においては、レシピエントの免疫系を、妊娠中に、および新生児期における供給を介して、被験体の体液への曝露により調節することができる。
【0073】
好適には、幼児期の間にそのような体液または体液成分に曝露されるレシピエントは、幼児期を超えて、かつ該レシピエントの生涯を通して延長される該レシピエントに対する免疫調節作用を引き起こし得る。
【0074】
例えば、生涯の初期におけるワクシニアを用いるワクチン接種は、悪性メラノーマを有する患者の生存を有意に延長させることができることが示されている(Kolmelら、「ワクシニアまたはBCGを用いる悪性メラノーマを有する患者の予備免疫はより長い生存に関連する(Prior immunisation of patients with malignant melanoma with vaccinia or BCG is associated with better survival.)」、An European Organization for Research and Treatment of Cancer cohort study on 542 patients. European Journal of Cancer, 2005, 41: 118-125)。
【0075】
好ましくは、生きた生成物を維持する困難性を回避するために、細菌を殺傷する。好ましくは、本発明に従う細菌を、その熱処理、例えば、121℃で15分間のオートクレーブ中での熱処理により殺傷する。
【0076】
細菌を殺傷するための他の好適な処理としては、紫外線照射もしくはイオン化照射またはフェノール、アルコールもしくはホルマリンなどの化合物を用いる処理が挙げられる。好適には、Co60源から2.5 Mradへの曝露により、イオン化照射を実行することができる。
【0077】
好ましくは、幼児としてのレシピエントを、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症のうちの1種以上に対して被験体を介して免疫する。
【0078】
一態様においては、本発明の組成物は、レシピエントにおけるTh2応答の下方調節をもたらすことができる。
【0079】
別の態様においては、本発明の組成物は、レシピエントにおけるTh1応答の上方調節をもたらすことができる。
【0080】
好適には、本発明の組成物は、レシピエントにおけるTh2応答の下方調節およびTh1応答の上方調節をもたらすことができる。
【0081】
あるいは、本発明の組成物は、レシピエントにおけるTh2応答に影響することなく、Th1応答の上方調節をもたらすことができる。
【0082】
あるいは、本発明の組成物は、レシピエントにおけるTh2応答の下方調節をもたらすが、Th1応答を下方調節することもできる。
【0083】
あるいは、本発明の組成物は、レシピエントにおけるTh2応答の上方調節をもたらすが、Th1応答を上方調節することもできる。
【0084】
ほんの一例として、以下の生物:ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodocrous)、ディエトジア・マリス(Dietzia maris)およびゴルドナ・テラ(Gordona terrae)のうちのいずれか1種以上を被験体に投与することは、レシピエントにおけるTh2応答を変化させることなく、Th1応答の増強をもたらすことができる。
【0085】
ほんの一例として、以下の生物:ゴルドナ・ブロンキアリス(Gordona bronchialis)、ツカムレラ・インコネンシス(Tsukamurella inchonensis)、ゴルドニア・アマレア(Gordonia amarae)およびノカルディア・アステロイデス(Nocardia asteroides)のうちのいずれか1種以上を被験体に投与することは、レシピエントにおけるTh1応答の増強をもたらすか、またはTh1応答を未変化のままにし、Th2応答を下方調節することができる。
【0086】
ほんの一例として、ロドコッカス・コプロフィルス(Rhodococcus coprophilus)を被験体に投与することは、レシピエントにおけるTh1およびTh2応答の両方の下方調節をもたらすことができ、好適には、ロドコッカス・コプロフィルスを被験体に投与することは、レシピエントにおけるTh1およびTh2応答の両方の強い下方調節をもたらし得る。
【0087】
本発明の一実施形態においては、レシピエントはブタであってよい。好適には、ロドコッカス・コプロフィルスを被験体(例えば、母ブタなどのドナーのブタ)に投与することは、該レシピエント(例えば、別のブタ)を、離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)ならびに/またはブタ皮膚炎およびネフロパシー症候群(PDNS)から予防または防御する体液および/または体液成分をもたらし得る。好適には、レシピエント(例えば、他のブタ)を、幼児期(例えば、子豚として)を通して、およびそれを超えて防御することができる。
【0088】
本明細書で用いられる用語「防御する」とは、レシピエントが、本発明の細菌を投与された被験体の体液もしくは体液成分に曝露されなかった動物と比較して、疾患/障害に罹りにくいこと、ならびに/またはレシピエントが、本発明の細菌を投与された被験体の体液もしくは体液成分に曝露されなかった動物と比較して、より疾患に対抗するか、もしくは疾患を克服することができることを意味する。
【0089】
好ましくは、本発明の細菌を用いて、レシピエント(好ましくは、幼児)における防御免疫応答を調節(好ましくは、増強)する。これにより、本発明者らは、レシピエントを疾患および/または障害に対して防御することができること、すなわち、該疾患および/または障害に罹りにくいことを意味している。あるいは、またはさらに、レシピエントにおいて発生する疾患および/または障害を、未処理の動物における疾患および/または障害と比較して改善することができる。本明細書で用いられる用語「改善される」とは、例えば、該疾患および/または障害があまり損傷を引き起こさず(少ない組織損傷など)、および/または例えば、未処理の動物と比較してレシピエントの血液中の寄生虫および/もしくは細菌および/もしくはウイルスが少ないことを意味してもよい。
【0090】
本発明の細菌
参照を容易にするために、本明細書で用いられる用語「本発明の細菌の全細胞」および「本発明の細菌」は、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞の省略表現である。
【0091】
本明細書で用いられる用語「放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞」は、細菌の1種以上の株の全細胞を包含する。好適には、全細胞が細菌の2種以上の株に由来する場合、該株は1種以上の属に由来するものであってよい。また好適には、前記全細胞が2種以上の属に由来する場合、該属は1種以上の科に由来するものであってよい。かくして、この用語は、特定の株に由来する全細胞(例えば、ツカムレラ・インコネンシスの特定の株の全細胞)および異なる科に由来する好気性生物の属の細菌に由来する全細胞(例えば、ツカムレラセア(Tsukamurellaceae)およびマイコバクテリアセア(Mycobacteriaceae)の科に由来する、ツカムレラ・インコネンシスもしくはマイコバクテリウム・オブエンス(M. obuense)に由来する株の全細胞)を包含する。
【0092】
一実施形態においては、好適には、本発明に従って用いるための放線菌目の好気性生物は、マイコバクテリウム属(マイコバクテリウム・バッカエ(M. vaccae)もしくはマイコバクテリウム・オブエンス(M. obuense)など)に由来するものであってよい。
【0093】
別の実施形態においては、好適には、本発明に従って用いるための放線菌目の好気性生物は、ノカルディオ型の放線菌(Bergy's Manual of Determinative Bacteriology、第9版の22群に記載の細菌など。例えば、ミコール酸を含有する細菌など)であってよい。
【0094】
好ましくは、前記好気性生物は、ミコール酸を含有する細菌(Bergy's Manual of Determinative Bacteriology、第9版の22群のサブグループ1に記載の細菌など。例えば、ゴルドニア、ロドコッカス、ノカルディアおよびツカムレラなど)である。
【0095】
好ましくは、前記好気性生物は、以下の属:ゴルドニア(G. bronchialis、G. amarae、G. sputiおよびG. terraeなど、好ましくは、G. bronchialis);ロドコッカス(ロドコッカス・ルーバー(以前はノカルディア・ルブラ(Nocardia rubra)として知られる)、R. rhodnii、R. coprophilus、R. opacusおよびR. erythopolisなど、好ましくは、R. coprophilus);ノカルディア(ノカルディア・アステロイデスおよびノカルディア・ブラジリエンシス(N. brasiliensis))およびツカムレラ(T. inchonensisおよびT. paurometabolaなど、好ましくは、T. inchonensis)のうちの1種以上に由来するものであってよい。
【0096】
さらに別の実施形態においては、好適には、本発明に従って用いるための放線菌目の好気性生物は、細胞壁の成分としてミコール酸を含む属(複数も可)に由来するものであってよい。そのような属の例としては、ゴルドニア、マイコバクテリウム、ディエトジア、ロドコッカス、ノカルディアおよびツカムレラが挙げられる。
【0097】
好ましくは、本発明に従って用いるための放線菌目の好気性生物は、以下の属:ゴルドニア(G. bronchialis、G. amarae、G. sputiおよびG. terraeなど、好ましくは、G. bronchialis);マイコバクテリウム(M. vaccaeおよびM. obuenseなど、好ましくは、M. obuenseに由来するもの);ディエトジア(D. marisなど);ロドコッカス(ロドコッカス・ルーバー(以前はノカルディア・ルブラとして知られる)、R. rhodnii、R. coprophilus、R. opacusおよびR. erythopolisなどに由来するもの、好ましくは、R. coprophilusに由来するもの);ノカルディア(ノカルディア・アステロイデスおよびノカルディア・ブラジリエンシスに由来するものなど)ならびにツカムレラ(T. inchonensisおよびT. paurometabolaなど、好ましくは、T. inchonensis)のうちの1種以上に由来するものである。
【0098】
好適には、前記好気性生物は、ゴルドニア属に由来するものであってよい。好ましくは、好気性生物は、以下のもの:G. bronchialis、G. amarae、G. sputiおよびG. terraeのうちの1種以上、好ましくは、G. bronchialisに由来するものである。
【0099】
好適には、本明細書で用いられる属「ゴルドニア」を、「ゴルドナ」と呼ぶ場合がある。これらの属名は、本明細書では互換的に用いられる。
【0100】
好適には、前記好気性生物は、ツカムレラ属に由来するものであってよい。好ましくは、好気性生物は、T. inchonensisおよび/またはT. paurometabola、好ましくは、T. inchonensisに由来するものである。
【0101】
好適には、前記好気性生物は、マイコバクテリウム属に由来するものであってよい。好ましくは、好気性生物は、M. vaccaeおよび/またはM. obuense、好ましくは、M. obuenseに由来するものである。
【0102】
本発明に従う使用のためのM. obuense株は、寄託番号NCTC 13365の下、2005年7月14日に、National Collection of Type Cultures (NCTC)(Central Public Health Laboratory, 61 Colindale Avenue, London, NW9 5HT)に、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の下でBioEos Limited of 67 Lakers Rise, Woodmansterne, Surrey, SM7 3LAにより寄託されている。
【0103】
好適には、前記好気性生物を、ロドコッカス属から選択することができる。好適には、好気性生物を、以下の種:ロドコッカス・ルーバー(以前はノカルディア・ルブラとして知られる)、R. rhodnii、R. coprophilus、R. opacusおよびR. erythopolisのうちのいずれか1種以上、好ましくは、R. coprophilusから選択することができる。
【0104】
好適には、前記好気性生物を、ディエトジア属から選択することができる。好適には、好気性生物を、ディエトジア・マリス種から選択することができる。
【0105】
好適には、前記好気性生物を、ノカルディア属から選択することができる。好適には、好気性生物を、以下の種:ノカルディア・アステロイデスおよび/またはノカルディア・ブラジリエンシスのうちのいずれか1種以上から選択することができる。
【0106】
本明細書で用いられる用語「全細胞」とは、無傷であるか、または実質的に無傷である細菌を意味する。特に、本明細書で用いられる用語「無傷の」とは、全細胞、特に、全部の生細胞中に存在する全ての成分から構成される細菌、および/またはそれから1種以上の成分を除去するために特異的に処理されていない細菌を意味する。本明細書で用いられる用語「実質的に無傷の」とは、細菌を取得するのに用いられる単離および/または精製プロセスが、例えば、細胞に対するわずかな改変および/または該細胞の1種以上の成分の除去をもたらし得るが、そのような改変および/または除去が起こる程度が有意ではないことを意味する。特に、本発明に従う実質的に無傷の細胞は、それから1種以上の成分を除去するために特異的に処理されていない。
【0107】
疑いを回避するために、細菌を使用前に、例えば、熱処理により殺傷する場合、そのような熱処理は細菌の構成要素を不活化するか、または破壊し得る。そのような殺傷された、例えば、熱処理された細菌は依然として、本発明に従う実質的に無傷の全細胞であると考えられる。
【0108】
幼児としてのレシピエントにおける細胞性免疫応答の調節(前記細菌の前記全細胞の被験体への投与により引き起こされる)は、該細菌の個々の成分の被験体への投与により引き出される幼児としての動物における応答と比較して、有利に長く続くものであってよい。
【0109】
好ましくは、本発明に従う細菌の全細胞を含む組成物は、2個以上の全細胞を含み、より好ましくは、複数の全細胞を含む。
【0110】
好適には、本発明における使用のための細菌を、使用前に殺傷することができる。
【0111】
被験体
本明細書で用いられる用語「被験体」とは、本発明に従う組成物を投与されるか、または投与された動物を意味する。好ましくは、被験体は、例えば、家畜およびヒトを含む哺乳動物である。本発明のいくつかの態様においては、被験体は好適にはヒトであってよい。
【0112】
本明細書で用いられる用語「家畜」とは、任意の飼育動物を指す。好ましくは、家畜は、ウマ(レース用のウマなど)、家禽、ブタ(子豚など)、羊(ラムなど)、雌牛または雄牛(子牛など)のうちの1種以上である。より好ましくは、家畜は子豚などのブタを意味する。
【0113】
好適には、本発明の被験体は、レシピエントの親であってよい。
【0114】
別の実施形態においては、好ましくは、被験体に、妊娠前および/または妊娠中に、好ましくは、妊娠中に、本発明の細菌の全細胞を投与する。
【0115】
レシピエント
本明細書で用いられる用語「レシピエント」は、幼児期の間に被験体の体液に曝露される動物(特に記述しない限り、死に対する概念からその生涯を通して)に関する。好ましくは、レシピエントは、例えば、家畜およびヒトなどの哺乳動物である。本発明のいくつかの態様においては、レシピエントは、好適にはヒトであってよい。
【0116】
本発明は、本発明の組成物を投与された被験体の体液または体液成分へのレシピエントの曝露が、生涯に渡る効果を有してもよいレシピエントの免疫応答における調節を誘導するという驚くべき知見に基づくものである。
【0117】
幼児
本明細書で用いられる用語「幼児」とは、妊娠中のレシピエントおよび誕生前のレシピエント(例えば、胎児として)、ならびに新生児期、すなわち、誕生直後の期間の間および/またはその後のレシピエントを指す。
【0118】
本発明に従えば、好ましくは、それは、レシピエントを被験体の体液に曝露する幼児としてである。
【0119】
好ましくは、幼児は若い動物、好ましくは、例えば、家畜またはヒトなどの哺乳動物である。
【0120】
本発明にいくつかの態様においては、幼児は、好適には、ヒトの幼児である。
【0121】
体液
本明細書で用いられる用語「体液」としては、例えば、ミルクおよび/または血液および/またはその成分が挙げられる。本明細書で用いられる用語「体液」の使用は、「体液成分」を包含し、本明細書における「体液」に対する参照は、全体液よりもむしろ体液成分を指す場合がある。体液成分は、幼児の免疫応答における調節を引き出すことができる。好ましくは、そのような成分は、幼児の免疫応答を増強することができる。
【0122】
ほんの一例として、かつ理論により束縛されることを望むものではないが、体液成分は、
1. 本発明の細菌の全細胞;
2. 本発明の細菌の全細胞に対する抗体;
3. 幼児の免疫における調節を引き出すことができる1種以上のさらなる構成要素;
4. 血漿;および/または
5. 血清、
であってよい。
【0123】
好適には、本発明の一実施形態においては、被験体が幼児を妊娠している場合、そのような「体液成分」は胎盤を横切って幼児における免疫応答を引き出すことができる。
【0124】
アジュバント
本明細書で用いられる用語「アジュバント」とは、免疫応答の影響を増加させるか、またはそれに関与することができる実体を意味する。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を援助し、増加させ、下方調節し、改変するか、または多様化させる任意の物質または物質の混合物である。
【0125】
従って、本発明の方法および使用における使用のための本発明の細菌の組成物を、アジュバントとして記載することができる。
【0126】
好適には、本発明の細菌の全細胞を含む組成物を、免疫調節組成物の有効性を増強する1種以上のアジュバントと組み合わせて、被験体に投与することができる。有効であり得るさらなるアジュバントの例としては、限定されるものではないが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ムラミルジペプチド、細菌内毒素、リピドX、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)(プロピオノバクテリウム・アクネス(Propionobacterium acnes))、ボルデテラ・ペルツシス(Bordetella pertussis)、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、インターロイキン2およびインターロイキン-12などのインターロイキン、サポニン、リポソーム、レバミソール、DEAE-デキストラン、ブロックコポリマーまたは他の合成アジュバントが挙げられる。そのようなアジュバントは、様々な供給源から市販されており、例えば、Merck Adjuvant 65 (Merck and Company, inc., Rahway, N.J.)またはFreundの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)が挙げられる。水酸化アルミニウムのみがヒトにおける使用のために認可されている。他のアジュバントのいくつかは臨床試験のために認可されている。
【0127】
好適には、本発明の組成物は、複数のワクチン接種プログラムにおいてアジュバントの不都合な効果を防止することもできる。
【0128】
抗原
本明細書で用いられる「抗原」とは、免疫応答性宿主に導入した場合、実体と組み合わせて、ならびに/またはTh2および/もしくはTh1などの関連するTh応答を改変することができる特異的抗体の産生を改変する実体を意味する。この抗原は、純粋な物質、物質の混合物または可溶性もしくは粒子状の材料(細胞もしくは細胞断片もしくは細胞超音波破砕物など)であってよい。この意味で、前記用語は、任意の好適な抗原性決定基、交差反応抗原、アロ抗原、異種抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテン、および免疫原、またはその一部、ならびにその任意の組合せを含み、またこれらの用語は、本文を通して互換的に用いられる。
【0129】
本明細書で用いられる用語「抗原性決定基またはエピトープ」とは、抗体もしくはT細胞受容体により認識されるか、またはTヘルパー細胞応答を誘発する原因となる抗原上の部位を指す。好ましくは、それはタンパク質抗原から誘導されるか、またはその一部としての短いペプチドである。しかしながら、前記用語は、糖ペプチドおよび炭水化物エピトープを含むことも意図される。この用語はまた、全生物を認識する応答を刺激するアミノ酸または炭水化物の改変された配列を含む。
【0130】
好適には、本発明の細菌の全細胞を含む組成物を、1種以上の抗原および/または抗原性決定基と組み合わせて被験体に投与することができる。
【0131】
抗原性決定基が感染症を引き起こす感染性物質の抗原性決定基である場合が有利である。例えば、レシピエントにおけるシャーガス病の予防および治療においては、本発明の細菌の全細胞と組み合わせて用いることができる抗原または抗原性決定基は、好適には、トリパノソーマ・クルージによるものである。
【0132】
「予防的」または「予防用」ワクチンは、防御免疫を刺激することなどにより、症状の発達を防止するためにナイーブな個体に投与されるワクチンである。
【0133】
投与
典型的には、医師であれば、幼児における免疫調節をもたらすのに最も好適である、被験体に投与すべきワクチン、免疫調節組成物および医薬組成物の実際の用量を決定することができ、それは特定の被験体の年齢、体重および応答に応じて変化するであろう。以下の用量は、平均的な事例の例である。勿論、より高いか、またはより低い用量範囲が有用である個々の例が存在してもよい。
【0134】
用いられる実際の用量は、被験体に対する最少の毒性をもたらすのが好ましい。
【0135】
本発明の方法および使用において用いられる組成物を、直接的注入により被験体に投与することができる。
【0136】
この組成物を、非経口、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、眼球内、皮内または経皮投与のために製剤化することができる。
【0137】
好適には、本発明に従う組成物を、103〜1011個の生物、好ましくは104〜1010個の生物、より好ましくは、106〜10〜5 x 109個の生物、およびさらにより好ましくは、106〜109個の生物の用量で投与することができる。典型的には、本発明に従う組成物を、ヒトおよび動物の使用のために108〜109個の細菌の用量で投与することができる。
【0138】
本発明の組成物を免疫増強剤として投与する場合、ヒトおよび動物の使用のために、用量あたり103〜1011個の生物、好ましくは、用量あたり104〜1010個の生物、より好ましくは、用量あたり106〜10〜5 x 109個の生物、およびさらにより好ましくは、用量あたり106〜109個の生物を、規則的な間隔で投与することができる。
【0139】
当業者であれば容易に理解できるように、投与される用量は、該用量を投与する被験体に依存するであろう。
【0140】
本明細書で用いられる用語「投与すること」とは、医薬を提供する目的のための本発明の細菌の投与を指す。好ましくは、「投与すること」は、レシピエントの免疫系を調節する目的のための被験体への投与に関する。換言すれば、一実施形態においては、用語「投与すること」とは、細菌を(好ましくは医薬として)被験体に与えることを意味し、すなわち、「投与すること」は、被験体自体が細菌を天然に含むか、または獲得し得る状況を包含しない。
【0141】
用語「投与される」は、注入、脂質媒介性トランスフェクション、リポソーム、イムノリポソーム、リポフェクチン、カチオン表面両親媒性物質(CFA)およびその組合せ、またはさらにウイルス送達などの送達機構による送達を含む。そのような送達機構のための経路としては、限定されるものではないが、粘膜、鼻、経口、非経口、胃腸管、局所、または舌下経路が挙げられる。
【0142】
用語「投与される」としては、限定されるものではないが、例えば、吸入のための鼻スプレーもしくはエアロゾルとして、または摂取可能な溶液としての、粘膜経路;送達が、例えば、静脈内、筋肉内、皮内もしくは皮下経路などの注入可能な形態による非経口経路による送達が挙げられる。
【0143】
好ましくは、本発明においては、投与は注入によるものである。より好ましくは、注入は皮内注入である。
【0144】
好ましくは、本発明においては、投与は経口的に許容可能な組成物によるものである。
【0145】
ワクチン接種のためには、前記組成物を、0.1〜0.2 mlの水溶液、好ましくは、緩衝化生理食塩水中で提供し、例えば、皮内接種により非経口投与することができる。本発明に従うワクチンを、皮内注入するのが好ましい。わずかな腫れおよび発赤、時には、掻痒も注入部位に認められる場合がある。投与の様式、用量および投与の回数を、当業者には公知の様式で最適化することができる。
【0146】
感染症
一般的には、レシピエントにおけるT細胞免疫応答を追加または誘導するために、T細胞の増殖および/もしくは分化を調節する、特に、刺激する(すなわち、誘導するか、もしくは増強する)ことができるか、またはレシピエントにおけるT細胞アネルギーの誘導を予防するか、もしくはそれを逆転させることができる組成物を用いることができる。
【0147】
一般的には、レシピエントにおけるウイルスまたは細菌などの感染症を予防するために、本発明の体液成分を用いることができる。好適には、本発明の体液成分は、レシピエントを、レシピエントの生涯を通して感染から防御することができる。好ましくは、本発明の体液成分は、レシピエントを、幼児期を通して感染から防御することができる。
【0148】
好適には、本発明の組成物を用いて、寄生虫感染、例えば、マラリア症、リーシュマニア症、トキソプラズマ症およびトリパノソーマ症を予防することができる。好適には、本発明の組成物を用いて、ウイルス感染、例えば、ウマサルコイド、生殖器疣および頸部の癌腫に先行する子宮頸部の形成異常、HIV、真菌症、クラミジア感染症およびヘルペスなどの、パピローマウイルスにより引き起こされる感染を予防することができる。
【0149】
本発明の一態様においては、感染は、好ましくはHIVである。
【0150】
本発明のさらに別の態様においては、感染は、T. cruziにより引き起こされる。
【0151】
ウマサルコイド
本発明の組成物を用いて、レシピエント(例えば、ウマ)におけるウマサルコイドを予防することもできる。好ましくは、本発明の組成物を用いて、幼児期(例えば、子馬)のレシピエントにおけるウマサルコイドを予防することもできる。
【0152】
ウマサルコイドは、ウマの最も一般的な皮膚新生物であり、ウシパピローマウイルス1および2による感染と関連する(Chambersら、J. Gen. Virol. 2003: 84: 1055-1062)。この症状には現在、有効な治療がないが、外科手術、非特異的免疫治療および細胞傷害性薬剤は全ていくらかの効果を有し得る。
【0153】
本発明の組成物を、病変または新生物と同じリンパ節集積領域中に投与するのが好ましい。
【0154】
PMWSおよびPDNS
離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)は、4〜16週齢(15〜50 kg)の離乳後の子豚を侵す。典型的には、PMWSは、離乳後1〜2週間の子豚を侵し、離乳後に十分に食べるか、または飲むことに失敗する、消耗性の/貧弱な離乳ブタとは全く異なる。PMWS子豚は、成長し始めた後、急速に衰弱し、抗生物質に対する応答が極端に貧弱であることが多い離乳ブタである。
【0155】
ブタ皮膚炎およびネフロパシー症候群(PDNS)は、8〜18週齢のブタを侵し、その最も明らかな兆候は、皮膚上の赤紫色の斑点であり、数日後には褐色になり、かさぶたになる。ブタは不活発であり、脚が腫れることがあり、ネフロパシーをもたらす。この症候群も、抗生物質に対してあまり応答しない。
【0156】
PMWSおよびPDNSの両方の原因となる因子は、現在未知である。両症候群における最も可能性のある被疑者は、広く分布する正常な非病原性の「I型」ブタサーコウイルスとは抗原的に異なる「II型」ブタサーコウイルスである。II型サーコウイルス(PCV II)は、血清学的に英国の農場で同定されている。免疫複合体媒介性疾患であると考えられるPDNSは、その原因論において細菌を含むかもしれないが、それらが果たす部分は明らかではない。
【0157】
好適には、本発明の組成物を、レシピエント、好ましくは、子豚におけるPMWSおよび/またはPDNSの予防のための医薬の製造において用いることができる。かくして、好ましくは、前記組成物を雌ブタに投与する。
【0158】
アレルギー
本発明の組成物を用いて、レシピエントにおけるアレルギー(例えば、ナッツアレルギーなどの食物アレルギー、アレルギー性喘息などの喘息、花粉症、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、植物接触もしくは摂取、イラクサおよび昆虫による刺し傷などの刺し傷に対するアレルギー、ならびにクリコイデス(Culicoides)(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)およびノミなどの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギーを予防することもできる。
【0159】
かくして、アレルギーは、皮膚(アレルギー性皮膚炎)、気管(喘息およびCOPD)、胃腸管(食物不寛容)または結膜嚢(アレルギー性結膜炎)を含んでもよい。
【0160】
好ましくは、本発明の組成物を用いて、食物アレルギーおよび/または喘息を治療することができる。
【0161】
最近の研究は、喘息の発生に対する胎児/母体相互作用の影響を強調してきた。この点で、Limaら(Journal of Immunology, 2005, 175:3554-3559)は、IFN-γ処理された母親マウスの子孫における肺および気道のアレルギーの誘導の調節を開示している。
【0162】
皮膚掻痒は、ウマ、特に野生のウマおよび/またはポニーにおいて認められる最も一般的な皮膚疾患の1つである。英国においては、約3%のウマがある程度罹患している。多くのウマは、1〜4年齢で兆候を示し、症状は一般的には夏の間に悪くなる。特定の品種がこの疾患に特に罹りやすい。Shires、HackneysおよびWelshならびにIcelandicポニーは全て、罹りやすい品種であると提唱されている。皮膚掻痒は、小バエであるクリコイデスの咬み傷に対する過敏により引き起こされる。英国においては、ハエは4月から10月の間に存在するが、5月から9月までがその数のピークである。ハエは、通常はウマの尾の頭部の周囲およびたてがみの下の特定の部位で餌を採る。英国には20種のクリコイデスが存在し、いくらかはウマの腹の下で餌を採る。
【0163】
肺気腫/COPD
本発明の組成物を用いて、幼児における肺気腫および/またはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を予防することもできる。
【0164】
好適には、本発明の組成物を、肺気腫および/またはCOPDの治療または予防(好ましくは、予防)のための獣医薬の製造において用いることができる。
【0165】
肺気腫は、ヒトの喘息およびCOPDとの類似性を有するウマの肺疾患である。ウマにおける臨床兆候は、ある程度の線維症で既に損傷された肺中の干し草の塵の中の粒子に対するアレルギー応答により開始する。それは、冬期に馬小屋に入れられる年老いたウマ(6歳を超える)において最も頻繁に認められる。干し草は、最近および菌類などの微生物ならびに穀物、植物、糞、鱗屑、および花粉の微粒子を含む。これらの微粒子は、干し草の塵の中でエアロゾル化されるようになり、それらが肺気腫を有するウマにより吸入された場合、アレルギー応答および線維症を引き出す。肺気腫の病因に関係すると考えられる主な微生物は、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、サーモアクチノミセス・バルガリス(Thermoactinomyces vulgaris)およびファニア・レクチバルグラ(Faenia rectivirgula)である。喘息の気管支痙攣およびCOPDの線維症の減少は共に、本特許請求の範囲内にある。
【0166】
自己免疫疾患
本発明の組成物を用いて、レシピエントにおける貧弱なT細胞調節および/またはT細胞調節異常に機構的に関連する自己免疫疾患を治療および/または予防することができる。自己免疫疾患の例としては、以下のもの:関節炎、慢性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、血管障害、特に、血管の内膜の炎症が存在する血管障害(血管障害の例は、アテローム形成(さもなければ、動脈硬化症としても知られる)である)、前部ブドウ膜炎および血管形成術後の筋内膜過形成などの望ましくない免疫反応および炎症;甲状腺炎、アテローム動脈硬化性心臓病、再かん流障害、心臓伝導障害、心筋梗塞、習慣流産、網膜色素変性、変性性基底部疾患の免疫および炎症成分、自己免疫疾患または中枢神経系(CNS)もしくは任意の他の器官の両方において、免疫および/もしくは炎症抑制が有益である症状もしくは障害に関連する炎症、パーキンソン病、パーキンソン病の治療に由来する合併症および/もしくは副作用、ギランバレー症候群、重症筋無力症、天然もしくは人工の細胞、組織および器官、例えば、角膜、骨髄、器官、レンズ、ペースメーカー、天然もしくは人工の皮膚組織の移植の場合の移植片拒絶のうちの1つ以上が挙げられる。
【0167】
より詳細には、器官特異的自己免疫疾患としては、例えば、多発性硬化症および炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍)が挙げられる。
【0168】
全身性自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチが挙げられる。
【0169】
血管障害としては、血管の内膜の炎症が存在する血管障害が挙げられる。
【0170】
好適には、本発明に従う血管障害としては、例えば、自己免疫応答により引き起こされるものなどの自己免疫要素を含む任意の血管疾患または障害が挙げられる。
【0171】
好適には、本発明に従う血管障害としては、レイノー病および現象、前部ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、アテローム形成(さもなければ、動脈硬化症として知られる)、動脈炎、筋内膜過形成(天然のもの、もしくは血管形成術後のもの)、血管の内膜および/もしくは筋肉層の炎症および自己免疫性肥厚化、炎症性血管病変、アテローム動脈硬化性心臓病、再かん流障害、心臓伝導障害、心筋梗塞のうちの1種以上が挙げられる。
【0172】
好適には、本発明に従う移植片拒絶は、特に、免疫抑制剤の不在における、慢性移植片拒絶であってよい。かくして、本発明に従う組成物を、移植の前、間および/または後に投与される従来の免疫抑制剤の代替物として用いることができる。本発明に従う組成物を、1種以上の以下のもの:角膜、骨髄、器官(例えば、腎臓、肝臓)、レンズ、ペースメーカー、天然もしくは人工の皮膚組織、島細胞などの天然または人工の細胞、組織および器官を移植する場合に用いることができる。
【0173】
好ましくは、本発明の組成物を用いて、以下の自己免疫疾患:血管障害、関節炎、移植片拒絶ならびに筋内膜過形成およびアテローム形成の基礎をなす免疫学的態様を治療することができる。
【0174】
ストレス
ストレスは、現代生活、高圧で高価な生活様式の徴候として提示されることが多く、その結果は、胃潰瘍、高血圧、心臓病および卒中などの主要な病理学的症状をもたらすものとして広く理解されている。
【0175】
離婚、死別および引越しなどの生活における他の主要なストレスの多い事象は、心臓病の高危険因子として見られる。
【0176】
これらのことは誤解ではなく、農業は、感染に対する罹患性の増加をもたらす過密、監禁状態および輸送などの主要なストレスを家畜にかけることから生じる経済的損失ならびに基礎となる病理の沈降をよく知っている。医師および科学者による研究は、監禁状態などの規定可能なストレスがエンドクライン(ホルモン)活性の有意な変化をもたらし、次いで、身体の免疫機能に影響し得ることを示す発行された研究の量の増加をもたらしている。これを、細胞を介する免疫応答が劇的に麻痺する主要な外傷ストレス(外科手術によるストレスなど)において著しく示すことができる(Faist(1996))。
【0177】
Elenkov IJ(1996)は、ストレス系の最終産物である糖質コルチコイドおよびカテコールアミンならびに活性化された巨細胞の産物であるヒスタミンは、細胞性免疫を選択的に抑制し、体液性免疫応答を好むことを示唆する最近の証拠を報告している。これは、Th1/Th2パターンおよび1型/2型サイトカイン産生に対する、ストレスホルモンおよびヒスタミンの示差的作用により媒介される。かくして、全身的には、ストレスはTh2シフトを誘導し得るが、局所的には、特定の条件下で、それは末梢コルチコトロフィン放出因子-巨細胞-ヒスタミン軸の神経活性化を介して前炎症活性を誘導し得る。
【0178】
Paik(2000)およびKay(2001)は、学問的なストレスの独立研究において、非試験期間と試験期間の間の学生の免疫学的プロフィールを試験した。彼らは、IL-2およびインターフェロンγ産生の有意な低下およびIL-6の増加を報告している。このことは、身体の免疫系は、Th-Iサイトカインの下方調節及びTh2サイトカインの選択的上方調節によりストレスの多い出来事に応答することを示す。
【0179】
Iwakabe(1998)は、拘束ストレスのマウスモデルを用いて、Th2優性免疫に対する免疫応答の歪曲を報告している。
【0180】
Th2免疫不均衡に対してスイッチを誘導したこのストレスホルモンは、Australian National Antarctic Research Expedition station(Mehta(2000))で越冬する研究者の間での心理社会的ストレスなどの非主要な慢性ストレス状況においても報告されている。彼らはまた、潜在するウイルス再活性化における関連する増加も報告している。
【0181】
同様のストレスホルモンおよび免疫学的変化が、認知症患者の介護者(Bauer(2000))およびEuromir 95ミッションの間の宇宙飛行士(Norbiato(1998))における慢性ストレスから報告されている。特に関心のあるのは、宇宙飛行士の感染に対する罹患性が増加することであった。
【0182】
身体はストレスから回復するように設計されており、急性ストレスにおいては、明らかに、感染の危険性は主要な外傷からの患者の回復と共に減少する。
【0183】
しかしながら、慢性ストレスは、Th2優性免疫不均衡を維持するようである。これは、引用された著者が全て、おそらく、感染症、炎症性疾患、アレルギー疾患および新生物疾患の開始および/または経過に影響する、上記の機構を介するストレスについてほのめかしているため、非常に重大な結果である。
【0184】
この結果は、Lawrence(2000)によりさらに支持されている。
【0185】
Th1応答を刺激し、Th2を下方調節する、本発明に従う体液組成物は、免疫系の健康な均衡を回復させ、かくして、慢性ストレスに関連する重篤な病気の増加した危険性を低下させることができる。
【0186】
好ましくは、本発明に従う組成物を用いて、幼児におけるストレス、特に、主要な外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレスを治療および/または予防(好ましくは、予防)する。
【0187】
好ましくは、本発明に従う組成物を用いて、レシピエントにおけるストレスを治療および/または予防(好ましくは、予防)し、好適には、そのようなレシピエントはヒトおよび/または家畜であってよい。
【0188】
免疫系の不均衡
上方調節され、下方調節されたか、または不適当に調節された細胞性免疫応答などの免疫系不均衡は、レシピエントの生涯における任意の時間で起こり得る。好適には、本発明の組成物を用いて、レシピエントにおける免疫系の不均衡を調節することができる。すなわち、本発明に従う組成物を用いて、レシピエントにおける免疫系の不均衡を治療および/または予防(好ましくは、予防)することができる。
【0189】
(a)子供における免疫系の不均衡
好適には、前記組成物を用いて、乳児、幼児および年少者などの子供における免疫系の不均衡を調節することができる。上方調節され、下方調節されたか、または不適当に調節された細胞性免疫応答などの免疫系の不均衡は、ワクチン接種後、例えば、幼児期のワクチン接種後の子供において起こり得る。そのような免疫系の不均衡は、アレルギーの開始、すなわち、アレルギー性皮膚炎およびアレルギー性喘息などの症状をもたらし得る。
【0190】
子供を感染から防御する目的で、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、おたふく風邪および風疹に対する反復注射を与える。これらは全て必須であると判断されており、子供は好適な時にワクチン接種を提供されることを確保するように保健当局により圧力がかけられている。しかしながら、若年期に与えられた多くのワクチン接種は、重要な免疫学的結果を有するミョウバンアジュバントを含む。ミョウバンは、Th2パターンの応答に対する強力な刺激原であり、結果として起こる免疫調節異常は、子供が、例えば、アレルギーおよびおそらく癌の発生に対して脆弱になる原因となる。
【0191】
自己および残りの世界の両方に対する適切な認識、調節および応答に対して免疫系を再教育することができる。
【0192】
好適には、前記組成物を、百日咳ワクチン接種および現代のMMRワクチン接種などの子供のワクチンに対する有害反応および/もしくはその結果の治療または予防(好ましくは、予防)のために用いることもできる。
【0193】
好適には、本発明の一態様においては、本発明に従う細菌の全細胞を食品調製物に含有させることができること、および/または「治療」の型として、好ましくは、経口的に供給することができることが想定される。
【0194】
(b)高齢者における免疫系の不均衡
上方調節され、下方調節されたか、または不適当に調節された細胞性免疫応答、特に、下方調節、例えば、免疫機能の低下などの免疫系の不均衡は、一般的には、60歳以上の高齢者において起こり得る。高齢者においては、細胞性免疫応答の下方調節を、一般的には免疫老化と呼ぶ。典型的には、免疫機能の低下は、例えば、感染症および新生物に対する罹患性の増加をもたらし得る。集団の割合としての高齢者の数は劇的に増加しており、高齢者医学は臨床実務の重要な態様になっている。従って、研究は免疫老化の機構および免疫系の健康と長寿との間の関係に焦点を当ててきたことは驚くべきことではない。Goronzy (2001)は、老齢期におけるインフルエンザワクチン接種の変化する効率を試験した。この研究においては、17%の被験体のみが、ワクチン接種の1ヶ月後に、全て3の血球凝集素(ワクチン接種の成功)の力価への上昇を示し、46%が証明可能な応答を全く示さなかった。インフルエンザワクチン接種への応答性は免疫老化の有用な生物学的マーカーであると提唱された。多くの研究者が、老齢期における免疫機能の様々な態様を研究してきた。例えば、Lio(2000)はサイトカイン応答を研究し、Solana(2000)はNKおよびNKt細胞を研究し、Ginaldi(1999)は、Th1からTh2へのサイトカイン産生シフトおよび前炎症サイトカインの産生の増加が、アテローム性動脈硬化症および骨粗鬆症などの年齢に関連する病理学的事象の多くの態様を説明することができることを示唆した。従って、前炎症性Th2から離れてTh1に向かうサイトカイン応答を駆動する免疫系の非病理学的刺激が必要である。好ましくは、そのような免疫調節剤は、急性感染に由来する死亡率を減少させ、年齢に関連する自己免疫疾患の開始に対抗し、その死亡率を低下させ、おそらく、新生物疾患の速度を低下させるが、これらは全て免疫老化と関連する。
【0195】
従って、本発明は、高齢者のレシピエントにおける免疫系の不均衡を減少および/または予防するための、被験体への本発明の組成物の投与を包含してもよい。理論によって束縛されることを望むものではないが、レシピエントが幼児である間に、本発明に従う組成物を投与された被験体の体液成分へのレシピエントの曝露は、該レシピエントの後の生涯において、例えば、一度、レシピエントが高齢者になったら、免疫系の不均衡を減少および/または予防することができる。
【0196】
免疫系の増強
本発明の組成物は、レシピエント、好ましくは、哺乳動物のレシピエント、より好ましくは、家畜のレシピエントにおいて免疫系を増強するためのものであってよく、例えば、レシピエントにおける成長の増強(例えば、促進)ならびに/または食物利用の効率の増加および/もしくは一般的には、健康の増加(すなわち、幼児の全体の健康が改善する)をもたらし得る。レシピエントの全体の健康を、以下のパラメーター、例えば、体重データ(体重の増加は正の決定因子である)、警告(完全な警告は正の決定因子である)、移動(不活発な移動とは反対に活発な移動は正の決定因子である)および病気(減少した量の病気は正の決定因子である)のうちの1個以上により決定することができる。
【0197】
本発明はまた、レシピエントにおける細胞性免疫応答の改変のための、公知のプロバイオティック細菌と組み合わせた、被験体に投与される本発明の細菌も包含する。
【0198】
商業的には、現在、抗生物質は食物増強飼料添加物(または成長促進剤)として一般的に用いられており、動物飼料に組み入れられている。しかしながら、EUは、畜産における抗生物質の非臨床的使用に対する完全な禁止を導入すると期待されている。従って、市場は有効な代替物を必要としている。
【0199】
本発明の利点は、本明細書に記載の使用および方法を、食物増強飼料添加物(または成長促進剤)に対する代替物として使用することができる(必要に応じて、良好な畜産実務と共に)ことである。
【0200】

好適には、本発明に従う組成物を用いて細胞性免疫応答を調節して、幼児における癌を治療および/または予防(好ましくは、予防)する。特に、本発明に従う組成物を用いて、癌の発生および/または進行に対して幼児を防御することができることが想定される。特に、細胞性免疫応答が調節された幼児は、癌の発生に対する罹患性が低い。
【0201】
特に、癌増殖の間に、Th2における未調節の増加が観察される。
【0202】
癌は、多くの人々に影響する疾患であり、その65%が65歳を超えてから生じる。UKにおける平均余命は、19世紀なかば以来、ほぼ2倍になっているが、癌の危険性のある集団は増えている。心臓病などの他の死因に由来する死亡率は近年落ちているが、癌に由来する死亡は比較的安定したままである。その結果は、3分の1の人々が、その人生の間に癌であると診断され、4分の1の人々が癌で死亡するというものである。
【0203】
癌の例としては、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、頸部癌、結腸癌および直腸癌、腺癌、子宮内膜癌、食道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、メラノーマ、ミエローマ、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、軟組織癌ならびに胃癌が挙げられる。
【0204】
さらに、持続的な喫煙、およびより少ない程度の受動喫煙が、煙、中咽頭、気管、肺、食道および胃と直接的に接触する部分の癌腫に関連している。これらと同様、腎臓、膀胱、膵臓、肝臓および骨髄性白血病のものなどの遠位腫瘍は、タバコの煙により増加し得る。本発明においては、本発明に従う組成物を、喫煙に関連する癌腫を発生するレシピエントの危険性を低下させる試みにおいて、喫煙者に投与することができることが想定される。
【0205】
好適には、前記癌は、腺癌、癌腫、白血病またはメラノーマであってよい。好ましくは、癌は腺癌またはメラノーマである。好ましくは、癌は腺癌である。
【0206】
好適には、前記癌は、例えば、頸部癌などのウイルスに関連する癌であってよい。理論によって束縛されることを望むものではないが、いくつかの例においては、子宮頸部の過形成などの、パピローマウイルスにより引き起こされる感染が、頸部の癌腫に先行することが見いだされている。かくして、本明細書では、頸部癌は「ウイルスに関連する癌」であると考えられる。しかしながら、本明細書で用いられる用語「ウイルスに関連する癌」は、ウイルス感染により引き起こされるか、またはそれと関連する任意の癌を意味する。
【0207】
術後の回復、ストレスおよび感染
本発明の組成物を用いて、レシピエントにおける術後のストレスおよび感染を治療または予防(好ましくは、予防)することができる。
【0208】
疑いを回避するために、本明細書で用いられる用語「術後のストレス」は、麻酔剤の投与に関連するストレスを含んでもよい(好ましくは、含む)。
【0209】
任意の主要な手術の後、いくつかの状況が潜在的に生じる。
【0210】
外科手術に関連するストレスとしては、以下のもの:手術前の不安、手術手順に起因する組織へのストレス、通常は修復に伴う疼痛、手術の知見の意義に関する心配のうちの1つ以上が挙げられる。
【0211】
これらの種類のストレスは、Th2に向かうT細胞機能の逸脱に関連する。
【0212】
手術自体の後に数日または数週間持続し得る前投薬および麻酔剤の免疫抑制作用を、本発明の組成物によって低下させることができる。
【0213】
さらに、手術の時点での直接的感染に対する新鮮な切断部の曝露ならびに回復室および退院前の病棟での感染に対する創傷の曝露も問題である。
【0214】
これらの因子の組合せは、前記患者を一連の潜在的な細菌感染に曝露する。
【0215】
患者が入院した場合、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの院内感染を含む。腸に対する手術は、腸の内容物への切断組織の曝露に起因して、グラム陰性感染に患者を曝露する。下肢に対する手術も、正常な数の腸管内菌叢による感染に罹りやすい。
【0216】
創傷の軽微な感染は治癒を遅らせ、より重篤な感染にかかる機会が増える。
【0217】
これらの影響に対抗するために、本発明の適用の結果である、Th1に向かう免疫調節およびTh2の下方調節は、以下のうちの1つ以上を行うべきである:術後の細菌感染に対する非特異的耐性の増加;創傷治癒の援助および/またはストレスの減少。
【0218】
Tヘルパー細胞
本明細書で用いられる用語「Th1」とは、1型Tヘルパー細胞(Th1)を指す。この用語を、そのような細胞型により媒介されるか、またはそれを介する応答を指すために用いることもできる。そのような応答としては、インターロイキン-2(IL-2)の分泌、インターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌、マクロファージの活性化、細胞傷害性T細胞の活性化、または任意の他のTh1関連事象の1つ以上が挙げられる。かくして、用語「Th1」は、Th1細胞ならびにそのような細胞がもたらす免疫応答を含んでもよい。
【0219】
本明細書で用いられる用語「Th2」とは、2型Tヘルパー細胞(Th2)を指す。この用語を、そのような細胞型により媒介されるか、またはそれを介する応答を指すために用いることもできる。そのような応答としては、インターロイキン-4(IL-4)の分泌、スプライス変異体インターロイキン-4δ2の分泌、インターロイキン-5(IL-5)の分泌、リンパ球上の細胞決定因子30(CD30)のレベルの増加、血中の免疫グロブリンE(IgE)もしくは血中の好酸球の増加、または任意の他のTh2関連事象の1つ以上が挙げられる。かくして、用語「Th2」は、Th2細胞ならびにそのような細胞がもたらす免疫応答を含んでもよい。弱い細胞性応答に伴う過剰の抗体産生は、Th2を介する応答の特徴である。
【0220】
様々な症状が、調節されていないか、もしくは不適当に調節された細胞性免疫応答、特に、Th1および/もしくはTh2の活性化および/もしくは増殖をもたらすか、またはその結果生じ、調節されないか、もしくは不適当に調節されたままである場合、レシピエントに対して1種以上の有害な作用をもたらすことが見出されている。
【0221】
特に、そのような調節されていないか、もしくは不適当に調節された細胞性免疫応答は、ワクチン接種後、例えば、若年期のワクチン接種後に生じることが見出されており、アレルギーの開始、すなわち、アレルギー性皮膚炎およびアレルギー性喘息などの症状をもたらすことが考えられる。一例として、Lewis D, Curr Opin Immunol 2002; 14: 644は、IL-4、IL-5およびIL-13の分泌により媒介されるTh2免疫応答が、アレルゲン誘導性喘息、ライノウイルスによる結膜炎(rhinoconjunctivitis)およびアナフィラキシーなどのアトピー性障害の発症の鍵であると報告している。そのような応答は、従来の特異的免疫治療によってある程度までは下方調節されるが、この手法は部分的にしか有効ではなく、有害作用の実質的な危険性を有する。アトピー性疾患の免疫治療的予防および治療のための多くの戦略が、調節的T細胞活性の誘導、Th2からTh1への免疫の偏り、Th2免疫応答のTh1交差調節、アネルギーおよび免疫抑制サイトカインの誘導によるTh2応答の下方調節などのマウスアレルギーモデルに基づいて考案されている。Choi & Koh, Ann Allergy Asthma Immunol 2002; 88: 584-91は、Th2に関連するアレルギー性疾患である喘息を有する成人患者のBCGワクチン接種が臨床的に有効であるかどうかを試験した。BCGワクチン接種が肺機能を改善し、中程度から重篤な喘息を有する成人における医薬使用を減少させることが示された。この改善は、抑制されたTh2型免疫応答により達成されたが、これはBCGワクチン接種が喘息に対する有効な治療様式になり得ることを示唆している。von Hertzen, J Allergy Clin Immunol 2002; 109: 923-8は、持続的な過剰のコルチゾル分泌に関連する長い母体ストレスが、免疫系の発達、特に、遺伝的に罹りやすい個体における喘息およびアトピーに対する罹患性をさらに増加させ得るTh1/Th2細胞分化に影響し得る可能性を概説した。
【0222】
さらに、調節されていないか、または不適当に調節された細胞性免疫応答が、疾患の進行の間に観察された。特に、癌の増殖の間に、調節されていないTh2の増加が観察される。例えば、Maraveyasら、Ann Oncol 1999; 10: 817-24は、癌、すなわち、進行した段階IV(AJCC)の悪性メラノーマを有する患者におけるSRL 172ワクチンの効果を試験した。これらの患者から得た末梢血リンパ球(PBCL)中の細胞内サイトカイン(IL-2およびIFN-γ)の誘導をアッセイし、臨床転帰と相関させた。SRL 172は、段階IV(AJCC)のメラノーマを有する有意数の患者における細胞内IL-2応答の誘導において有効であることが示された。Stanfordら、International Journal of Pharmaceutical Medicine 1999; 13: 191-195は、有効な抗腫瘍免疫応答が1型サイトカインにより媒介される可能性が高いという証拠が増えていることを報告している。最近の調査により、熱により殺傷されたマイコバクテリウム・バッカエが、信頼できるTh1アジュバントであることが示され、予備臨床試験により、メラノーマ、ならびに前立腺および肺の癌における有益な効果が示された。より広範な制御された試験が、現在これらの知見を確認するために行われている。
【0223】
調節されていないか、または不適当に調節された細胞性免疫応答はまた、感染および特に、慢性感染、例えば、進行性結核、癩腫癩、内臓リーシュマニア症およびHIV感染ならびにアレルギーの間にも観察された。例えば、Clerici & Shearer GM, Immunol Today 1993; 14: 107-11は、Th1からTh2へのスイッチが、HIV感染の病因における重要な段階であると提唱している。Clerici & Shearer, Immunol Lett 1996; 51: 69-73は、HIV特異的細胞媒介性免疫が、HIV感染およびHIV感染のAIDSへの進行に対する防御の主要な相関因子であり得ることを示している。Abbot NCら、European Journal of Vascular and Endovascular Surgery 2002; 24:202-8は、熱により殺傷されたマイコバクテリウム・バッカエの投与により慢性ハンセン病患者における末梢血流を改善する手段として免疫治療を評価した。18ヶ月前に与えられた免疫治療が、完全に治療された慢性ハンセン病患者における血流および温度知覚を有意に改善することが示された。
【0224】
従って、本発明の目的は、調節されていないか、もしくは不適当に調節された細胞性免疫応答の負の作用を克服するような方法で、Th1および/もしくはTh2の調節またはモジュレーションなどの細胞性免疫応答の調節を促進および確立することである。
【0225】
好適には、本発明に従う組成物は、Th1またはTh2応答、すなわち、例えば、組織損傷をもたらすレシピエントにおけるTh1またはTh2応答を調節することができる。
【0226】
好適には、本発明に従う組成物は、Th1応答を減少させ、Th2応答を減少させることができる。例えば、そのような組成物は、例えば、糖尿病の予防および/または治療、好ましくは、予防において有用であり得る。
【0227】
好適には、本発明に従う組成物は、Th2応答に影響することなくTh1応答を増加させることができる。例えば、そのような組成物は、免疫増強剤として有用であり得る。
【0228】
好適には、本発明に従う組成物は、Th1応答を増加させ、Th2応答を減少させることができる。例えば、そのような組成物は、喘息の予防または治療(好ましくは、予防)において有用であり得る。
【0229】
好適には、当業者であれば、本発明に従ってそれぞれの属の特定の種を試験して、その特異的Th1/Th2応答を決定することができる。
【0230】
調節されていないか、または不適当に調節された免疫応答は、いくつかの疾患がTh1および/またはTh2応答のシフトを引き起こすという事実に起因して、疾患の確立に役割を果たし得る。付随するこれらの特殊なTh1およびTh2反応は、組織病理の基礎をなす機構に関与し得る、一連の異常な炎症性応答である。
【0231】
ほんの一例として、本発明に従う組成物は、現代生活に比例した環境的影響(例えば、抗原)との接触が減少した欠点に対抗することができ、レシピエントにおける感染(例えば、細菌感染、HIVなどのウイルス感染、PMWSおよびPDNS、ウマサルコイドなどのパピローマウイルスにより引き起こされる感染、生殖器疣および頸部の癌腫に先行する子宮頸部の形成異常、またはマラリアなどの寄生虫感染、ならびに内臓感染);感染に伴う免疫学的異常;自己免疫疾患(例えば、閉塞性血管障害などの血管障害、ならびに筋内膜過形成および/もしくはアテローム形成(さもなければ、動脈硬化症とも呼ばれる)の基礎をなす免疫学的態様、糖尿病、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主要な外傷ストレス、社会心理的ストレスおよび慢性ストレス);アレルギー(例えば、アレルギー性喘息などの喘息、花粉症、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、植物接触もしくは摂取、イラクサおよび昆虫による刺し傷などの刺し傷に対するアレルギー、ならびに例えば、クリコイデス(Culicoides)(ウマにおける皮膚掻痒を引き起こす)およびノミなどの小昆虫などの昆虫による咬み傷に対するアレルギー);肺気腫;COPD;自閉症;SIPH(EIPHなど);癌(例えば、白血病、子供の稀な固形腫瘍、メラノーマ、癌腫、肉腫もしくは腺癌);免疫系の不均衡(例えば、子供における免疫系の不均衡);ならびに術後のストレスおよび感染の治療の影響に対抗することができる。
【0232】
ワクチン
当業界では、本質的には金粒子に付着させたDNA配列であり、ヘリウムガンにより皮膚中に発射されるDNAワクチンが、有効なワクチン送達系であることが知られている。従来のワクチンとは違って、これらのDNAワクチンは伝統的なアジュバント成分を必要としない。本発明のさらなる態様に従えば、本明細書で定義される免疫調節組成物を、そのようなDNAワクチンと共に好適に用いて、免疫応答の影響を増加させるか、またはそれに参加させることができる。
【0233】
活性成分として1種以上の物質を含むワクチンの調製は、当業者には公知である。典型的には、そのようなワクチンを、注入可能な、液体溶液もしくは懸濁液として調製し、注入前の液体中の溶液または懸濁液にとって好適な固体形態を調製することもできる。この調製物を乳化するか、または活性成分をリポソーム中に含有させることができる。活性成分を、製薬上許容可能であり、該活性成分と共存可能である賦形剤と混合することが多い。好適な賦形剤は、例えば、水、塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組合せである。あるいは、ワクチンを、例えば、経口摂取できるように、および/または吸入することができるように調製することができる。
【0234】
さらに、必要に応じて、前記ワクチンは、湿潤剤もしくは乳化剤およびpH緩衝化剤などの少量の補助剤を含んでもよい。
【0235】
「予防的」または「予防用」ワクチンは、防御免疫を刺激することなどにより、症状の発生を予防するためにナイーブな個体に投与されるワクチンである。
【0236】
「治療的」ワクチンは、症状を減少もしくは最小化するために、または該症状の免疫病理学的結果を無効にするために存在する症状を有する個体に投与されるワクチンである。
【0237】
被験体への細菌の投与を介して幼児における細胞性免疫応答を調節する細菌の同定
別の態様においては、本発明は、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の1個以上の全細胞を含む組成物の被験体への投与後に、レシピエントにおいて免疫応答をもたらす該細胞を同定し、該レシピエントが幼児である間に該被験体の体液に該レシピエントを曝露する方法であって、(a)第1の試験被験体と、免疫刺激剤とを接触させ、幼児レシピエントを該試験被験体の体液に曝露する工程;(b)第2の試験被験体と、細菌と混合した免疫刺激剤とを接触させ、幼児レシピエントを該試験被験体の体液に曝露する工程;(c)試験幼児レシピエントのそれぞれにおける細胞性免疫応答を測定する工程;および(d)該試験レシピエント幼児のそれぞれにおける細胞性免疫応答を比較する工程を含み、免疫刺激剤のみと比較して、細菌と混合した免疫刺激剤と接触させた被験体の体液への曝露に由来するレシピエント幼児におけるより低い細胞性免疫応答が、該被験体への該細菌の投与により得られる幼児レシピエントにおける細胞性免疫応答の調節を示す、前記方法に関する。
【0238】
別の態様においては、本発明は、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の種を含む組成物の被験体への投与後に幼児レシピエントにおけるTh1/Th2応答を決定し、該被験体の体液に該幼児レシピエントを曝露する方法であって、ツベルクリン皮膚試験の利用を含む工程を含む、前記方法に関する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚試験を、脚パッド上で行うのが好ましい。優性Th1反応においては、陽性の脚パッド免疫応答は24時間で最大となり、48時間で低下する。しかしながら、Th2反応性が増加するため、48時間の陽性脚パッド免疫応答は増加し、24時間で脚パッド免疫応答を超えることさえできる。
【0239】
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚試験を用いて良好に実証される。かくして、この試験アッセイを用いて、本発明に従う幼児レシピエントへの免疫調節組成物の導入がBCG細胞免疫応答を調節するかどうかを評価することができる。
【0240】
本明細書で用いられる用語「試験動物」とは、免疫刺激剤に対する細胞性免疫応答を引き出す任意の幼児を指す。好ましくは、この試験動物は、哺乳動物である。より好ましくは、試験動物は、ラット、ハムスター、ウサギ、モルモットまたはマウスである。より好ましくは、試験動物はマウスである。
【0241】
好ましくは、本発明の組成物は、幼児におけるTヘルパー細胞応答を改変する。好適には、本発明の組成物は、Th1およびTh2応答を減少させることにより、Tヘルパー細胞応答を改変することができる。好適には、該組成物は、Th1応答を増加させ、Th2応答を減少させることにより、Tヘルパー細胞応答を改変することができる。好適には、該組成物は、Th2応答に影響することなくTh1応答を増加させることにより、Tヘルパー細胞応答を改変することができる。
【0242】
好ましくは、前記免疫刺激剤は、公知のTh1およびTh2応答を有するであろう。例えば、免疫刺激剤であるBCGについて、前記反応は通常、それがTh1応答の指示因子である場合、24時間で最大になる;48時間での反応は通常、低いが、Th2の寄与を含む。BCGはTh1応答を優先的に刺激することが知られている。
【0243】
そのような免疫刺激剤の使用により、試験細菌のTh1/Th2応答を決定することができ、かくして、レシピエントにおいて所望のTh1/Th2応答を有する体液を生じる1種以上の細菌を同定して、特定の疾患および/または障害を治療および/または予防(好ましくは、予防)することができる。
【0244】
好ましくは、細胞性免疫応答を、ツベルクリン皮膚試験を用いて測定する。BCGなどの免疫刺激剤を用いるワクチン接種は、後に試験した場合、ツベルクリン(ツベルクル・バシリ(Tubercle bacilli)の可溶性調製物)による皮膚試験に対する応答を誘導する。局所反応を、様々な間隔、例えば、ツベルクリンの注入後24時間、48時間および72時間で測定する。簡単に述べると、ツベルクリンに対する陽性の免疫応答を誘導する免疫刺激剤(例えば、BCG)を用いる。試験動物においては、ツベルクリン皮膚試験を脚パッド上で行うのが好ましい。優性Th1応答においては、陽性の脚パッド免疫応答は通常、24時間で最大となり、48時間で減少する。しかしながら、Th2反応性が増加するため、48時間の陽性脚パッド免疫応答は増加し、24時間で脚パッド免疫応答を超えることさえできる。かくして、このアッセイを用いて、本発明に従う免疫調節組成物の導入が細胞性免疫応答を調節するかどうかを評価することができる。
【0245】
好ましくは、免疫刺激剤はBCGである。
【0246】
ここで、本発明を実施例によりさらに説明するが、これは本発明の実施において当業者を援助するために役立つことを意味し、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0247】
実施例1:ゴルドナを用いるラットの免疫化およびその後のT.cruziからの子孫の防御
プロトコル
雌のラットを、雄と交尾させる1週間前およびその1週間後に、BE-G101(0.1 ml、すなわち、10 mg/ml保存懸濁液の1/10希釈物中のゴルドナ・ブロンキアリスの細菌質量0.1 mg)または偽薬で免疫した。
【0248】
この実験において用いたゴルドナ・ブロンキアリスの株は、National Collection of Type Culture (Health Protection agency, 61 Colindale Avenue, London, NW9 5HT)から得たNCTC 10667である。この株は、公共的に利用可能である。
【0249】
母親の半分を、異なる部位で、交尾後1週間で(免疫治療剤の2回目の注入を受けた時)、T.cruziに感染させた。BE-G101の最後の注入を1週間後に与えた。
【0250】
子孫を、離乳持の21日齢で106個のT.cruziの皮下注入により感染させた。
【0251】
T.cruziの寄生虫血症を、感染後8および15日に測定した。
【0252】
結果
【表1】

【0253】
【表2】

【0254】
寄生虫血症は正規分布から偏差しているため、非パラメーター試験により統計学的分析を行った。用いた試験は、分散のKruskall-Wallis分析、次いでMann-Whitney U検定であった。
【0255】
認められるように、ゴルドナ・ブロンキアリスの全細胞の被験体への投与により、T.cruziによる感染に関する寄生虫血症に対する幼児の防御が得られた。これは、G.bronchialisがアジュバントとして振る舞い、母親の免疫応答を改善し、かくして、母親における抗T.cruzi応答を改善し、幼児にさらに移動するためであるかもしれないと推測される。
【0256】
実施例2:BE-G101で免疫したラットの体液成分への幼児の経胎盤および/または経口曝露が幼児におけるT.cruziに対する防御をもたらすことを証明するための実験
幼児における防御が、妊娠中(例えば、経胎盤曝露)および/または給餌中(例えば、経口曝露)の体液成分への曝露を介して起こるかどうかを試験するために、実験を設計した。
【0257】
プロトコル
雌のラットを、雄と交尾させる1週間前およびその1週間後に、BE-G101(0.1 ml、すなわち、10 mg/ml保存懸濁液の1/10希釈物中のゴルドナ・ブロンキアリスの細菌質量0.1 mg)または偽薬で免疫した。
【0258】
BE-G101で免疫した雌ラットの子孫の半分を、誕生時にその母親から引き離し、BE-101で免疫されなかった対照雌ラットのミルク上で離乳させる。
【0259】
同様に、対照雌ラットの子孫の半分を、誕生時にその母親から引き離し、BE-G101で免疫したラットのミルク上で離乳させる。
【0260】
子孫を、離乳時の21日齢で106個のT.cruziの皮下注入により感染させた。
【0261】
T.cruziの寄生虫血症を、感染後8および15日に測定した。
【0262】
対照ラット上で離乳させたBE-G101ラットの子孫はT.cruzi感染から防御されると予想されるが、これはT.cruziから幼児を防御することができる体液成分が、妊娠中に胎盤を横切ることができることを示唆している。
【0263】
さらに、BE-G101ラット上で離乳された対照ラットの子孫もT.cruzi感染から防御することができると予想されるが、これは、T.cruziから幼児を防御することができる体液成分が、BE-G101で免疫された授乳ラットのミルク中に存在することを示唆している。
【0264】
上記の明細書中で言及された全ての刊行物は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。本発明の記載された方法および系の様々な改変および変更は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態と関連させて説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明はそのような特定の実施形態に不当に制限されるべきではないと理解されるべきである。実際、生化学、免疫学およびバイオテクノロジーまたは関連する分野における当業者には明らかである本発明を実施するための記載された様式の様々な改変は、特許請求の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシピエントの免疫応答を調節するための医薬の製造における放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む組成物の使用であって、該組成物を被験体に投与し、該レシピエントを、該レシピエントが幼児である間に該被験体の体液に曝露する、前記使用。
【請求項2】
前記医薬が感染、アレルギー、自己免疫に基づく疾患および新生物のうちの1種以上の予防および/または治療のためのものである、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
前記細菌が、以下の属:ゴルドニア、ロドコッカス、ディエトジア、ノカルディア、ツカムレラ、およびマイコバクテリウムのうちの1以上に由来するものである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記細菌が、ゴルドニア属に由来するものである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記細菌が、G.bronchialisである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記被験体が哺乳動物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬が前記レシピエントにおける感染の予防または治療のためのものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記感染がトリパノソーマ・クルージによるものである、請求項2または7に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物を、前記被験体の妊娠の前、その間および/またはその後に該被験体に投与する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記体液がミルクまたはその成分である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記体液が血液またはその成分である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物を、前記レシピエントの免疫が調節されるように、該レシピエントを妊娠する前に、および/またはその間に前記被験体に投与する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記幼児を、胎盤を介して前記被験体の体液に曝露する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記レシピエントの免疫が調節されるように、前記組成物を、授乳前に前記被験体に投与し、前記レシピエントにミルクを与える、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
防御免疫応答が増強される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記被験体が前記レシピエントの親である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
レシピエントの免疫応答を調節する方法であって、放線菌目の好気性生物属に由来する細菌の全細胞を含む有効量の組成物を被験体に投与し、該レシピエントが幼児である間に該レシピエントを該被験体の体液に曝露することを含む、前記方法。
【請求項18】
前記組成物を、前記被験体の妊娠の前、その間および/またはその後に該被験体に投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記体液がミルクまたはその成分である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記体液が血液またはその成分である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記幼児の免疫が調節されるように、前記組成物を、該幼児を妊娠する前に、および/またはその間に前記被験体に投与する、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記幼児を、胎盤を介して前記被験体の体液に曝露する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記幼児の免疫が調節されるように、前記組成物を、授乳前に前記被験体に投与し、該幼児にミルクを与える、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
感染、アレルギー、自己免疫に基づく疾患および新生物からなる群より選択される1種以上の疾患または障害を予防および/または治療するために前記組成物を投与する、請求項17〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記細菌が、以下の属:ゴルドニア、ロドコッカス、ノカルディア、ディエトジア、ツカムレラ、およびマイコバクテリウムのうちの1以上に由来する、請求項17〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細菌が、ゴルドニア属に由来するものである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細菌が、G.bronchialisである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体が哺乳動物である、請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物を、前記レシピエントにおける感染の予防または治療のために投与する、請求項17〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記感染がトリパノソーマ・クルージによるものである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
免疫応答が増強される、請求項17〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記被験体が、前記レシピエントの親である、請求項17〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
実施例を参照して実質的に以前に記載された使用。
【請求項34】
実施例を参照して実質的に以前に記載された方法。

【公表番号】特表2009−520789(P2009−520789A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546600(P2008−546600)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004793
【国際公開番号】WO2007/071986
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508178375)バイオイオス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】