説明

孔版印刷装置

【課題】未製版マスタを頻繁に巻装することによるマスタ消費量増加や、更にはドラムスクリーンの長期間剥き出しによる過剰乾燥等の不具合を防ぎつつ、画像異常や文書機密漏洩の元となる、残像現像を抑制することができる孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】本発明は、製版されたマスタ79を、印刷ドラム60の外周面に巻装し、印刷ドラム外周のマスタにインキを供給し、押圧手段66により印刷ドラム外周のマスタに対して印刷用紙56を押し付けて該印刷用紙上に印刷画像を形成する孔版印刷装置において、印刷後の使用済みマスタ79を印刷ドラム60から剥離する手段80と、その剥離した使用済みマスタを印刷ドラム60に再巻装する手段を有する構成とした。これにより、印刷後の使用済みマスタを一旦、印刷ドラムから剥離した後、再巻装することができるので、画像異常や文書機密漏洩の元となる、残像現像の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版された感熱孔版原紙(以下、マスタと言う)を、円筒状版胴(以下、印刷ドラムと言う)の外周面に巻装し、前記印刷ドラム外周の前記マスタにインキを供給し、押圧手段により前記印刷ドラム外周のマスタに対して印刷用紙を押し付けて該印刷用紙上に印刷画像を形成する輪転式の孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
簡便な印刷装置として、感熱デジタル製版式の孔版印刷装置が良く知られている。この孔版印刷装置では、原稿読み取り部(以下、スキャナと言う)によって読み取られた画像信号、あるいはオンライン接続により送られた画像データ等に基づき、熱可塑性樹脂フィルムと多孔質の支持体として、和紙繊維及び合成繊維を混抄した物等を貼り合わせたラミネート構造のマスタを用いて、このマスタのフィルム面を製版手段としてのサーマルヘッドの発熱素子に接触させ、上記画像信号に基づいてサーマルヘッドを作動させることにより、マスタのフィルム面を選択的に熱溶融穿孔して穿孔画像を形成し、プラテンローラ等でマスタを副走査方向に移動させながら、その穿孔された製版済みのマスタを、印刷ドラムの外周面上に自動的に巻装し、版胴内部のインキ供給手段よりインキを供給し、圧胴又はプレスローラ等の押圧手段で印刷ドラムの回転に同調して給紙された印刷用紙を、マスタを介した版胴表面に連続的に押し付けることにより、印刷ドラムの開孔部分、更にはマスタの穿孔部分よりインキを滲み出させ、このインキを印刷用紙表面に適量転移させて印刷を行うようになっている。
【0003】
このような孔版印刷装置では、印刷終了後から次の製版指示動作が行われる迄の間、印刷終了時点の製版済みマスタ(使用済みマスタ)を巻装したまま機械を待機状態とするのが一般的である。これはマスタを剥離した状態で長時間放置した場合に、剥き出しになったドラムスクリーン上に異物が付着したり、インキ表層が空気中に暴露されることによってインキ組成が変化し画像劣化を引き起こす要因となったり、或いは使用者がドラム入れ替え等でドラム抜き差しをした場合に誤って手や服を汚してしまったりすることなどが無いように配慮されているものである。
【0004】
しかしながら、印刷終了時点の製版済みマスタを巻装したままで、或る一定時間以上機械を待機(放置)させた場合に、製版済みマスタ上の穿孔部分と非穿孔部分とではインキの組成変化に違いが起こる。穿孔部分のインキはより多く空気に触れることで、インキ組成中の水相成分の蒸発が顕著となり、インキが緩み易く(粘度低下し易く)なるのに対し、非穿孔部分のインキは表面がマスタにより保護され空気に触れる面積が少ないことでインキ組成の変化が起こり難い。
【0005】
そして、機械の未使用待機時間の経過と共にその現象が顕著に現れ始め、次の製版〜印刷を行った場合に、いわゆる“残像現象”として画像上(特に写真画像部分)に残像画像が出現し、初期の数十枚程度は印刷物としての使用に差し障るばかりか、前回の原稿イメージが推察されてしまうことで、機密保持上も大きな問題を有していた。
【0006】
以上のような孔版印刷装置の不具合に対して、残像現象の回避効果が見込めるものとして、以下のような提案がなされている。
例えば特許文献1(特公昭62−030117号公報)には、孔版式製版印刷装置において、「印刷後の使用済み孔版原紙からの機密漏洩を防ぐために機密保持モードを有し、機密保持モード時には前回の印刷作業済みの孔版印刷原紙を排版し、無製版の孔版印刷用原紙を製版手段を作動させずに着版させる」ことが記載されている。
【0007】
また、特許文献2(特開2001−213039号公報)には、孔版印刷装置において、「穿孔された孔版原紙が版胴に装着された状態で長時間放置されることによるインキの目詰まりを防止するために、最終印刷動作が機密製版でない場合には、最終印刷動作の終了時点から所定の設定時間が経過すると、版胴に装着された孔版原紙を取り外し、且つ無穿孔の孔版原紙を版胴に巻き付け装着する自動機密製版動作を行う」ことが記載されている。
【0008】
さらに、特許文献3(特許第3143281号公報)には、孔版印刷装置において、「使用済マスタを剥離する直前若しくはその後、摺接部材を版胴の外周面に接離しつつ、版胴を所定数回転することにより、版胴の外周表層部のインキと版胴内周側から供給される新しいインキとを混ぜ合わせ均一化し、ゴースト現象の発生を防止する」ことが記載されている。
【0009】
しかしながら、これらの従来技術は以下のような不具合を有している。
特許文献1並びに特許文献2に記載の方式では、その効果は認められるものの、新たに無製版マスタを巻装する動作により、毎回マスタを1版分消費してしまうため、1回の印刷に必要な製版マスタが実質2版分必要となり、マスタの消費コストを増大させてしまうという問題がある。
また、特許文献3に記載の方法では、版胴の外周面に接離する摺接部材を新たに設ける必要があり、コストアップは勿論のこと、使用者がカラードラムを入れ替えて使用している場合は、摺接部材の表面上に様々な色のインキが付着し、印刷ドラムのドラムスクリーン上で混色され、画像不具合となってしまうという不具合がある。
【0010】
【特許文献1】特公昭62−030117号公報
【特許文献2】特開2001−213039号公報
【特許文献3】特許第3143281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の従来技術では、残像現象に対し一定の効果は認められるものの、毎回無製版マスタを消費するためにマスタ消費コストを増大させてしまったり、新たに摺接部材を設ける必要からコストアップは勿論のこと、カラードラム併用の際に混色による不具合を発生させてしまったり、毎回頻繁に排版が行われることで追加印刷作業に支障をきたしたり、必要以上にドラムスクリーンが剥き出しになる時間が増加し、更にはその後暫くの間機械が使用されなかった場合には、そのままの状態が長時間に渡って継続され、画質劣化を引き起こす要因となったり、或いは使用者がドラム入れ替え等でドラムを抜き差しした場合に誤って手や服を汚してしまったり等の不具合を有していた。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、マスタを、印刷ドラムの外周面に巻装し、前記印刷ドラム外周の前記マスタにインキを供給し、押圧手段により前記印刷ドラム外周のマスタに対して印刷用紙を押し付けて該印刷用紙上に印刷画像を形成する輪転式の孔版印刷装置において、前回印刷後の使用済みマスタの穿孔部分と非穿孔部分とで、インキ組成中の水相成分蒸発量の差異によって発生する、いわゆるインキ緩み差に起因する残像現象に伴う画像異常発生や、文書機密漏洩を抑制するための制御動作手段を有する孔版印刷装置を提供することを目的としている。
そして本発明では、未製版マスタを頻繁に巻装することによるマスタ消費量増加や、更にはドラムスクリーンの長期間剥き出しによる過剰乾燥等の不具合を防ぎつつ、画像異常や文書機密漏洩の元となる、残像現像を抑制することができる孔版印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の手段は、製版された感熱孔版原紙(以下、マスタと言う)を、円筒状版胴(以下、印刷ドラムと言う)の外周面に巻装し、前記印刷ドラム外周の前記マスタにインキを供給し、押圧手段により前記印刷ドラム外周のマスタに対して印刷用紙を押し付けて該印刷用紙上に印刷画像を形成する輪転式の孔版印刷装置において、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離する手段と、その剥離した使用済みマスタを前記印刷ドラムに再巻装する手段を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の手段は、第1の手段の孔版印刷装置において、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する手段と、前記排版部に一旦排版した使用済みマスタを前記印刷ドラムに再巻装する手段を有することを特徴とする。
また、本発明の第3の手段は、第1の手段の孔版印刷装置において、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する排版時に、前記マスタにテンションを加えた状態で剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版を行う手段を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の手段は、第2または第3の手段の孔版印刷装置において、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する排版時には、剥離位置のマスタにローラを押し付けながら排版を行うことを特徴とする。
また、本発明の第5の手段は、第2または第4の手段の孔版印刷装置において、一定時間、使用済みマスタが排版されなかった場合、該使用済みマスタを前記印刷ドラムから一旦剥離した後、再巻装を行うことを特徴とする。
さらに本発明の第6の手段は、第3または第4の手段の孔版印刷装置において、一定時間、使用済みマスタが排版されなかった場合、前記剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1、第2の手段の孔版印刷装置によれば、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離する手段と、その剥離した使用済みマスタを前記印刷ドラムに再巻装する手段を有しており、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版し、その排版部に一旦排版した使用済みマスタを印刷ドラムに再巻装することができるので、ドラムスクリーンの長期間剥き出しによる過剰乾燥等の不具合を防ぎつつ、画像異常や文書機密漏洩の元となる、残像現像の発生を防止することができる。また、本発明では、一旦剥離した使用済みマスタを再巻装するので、部品追加コストの発生を抑え、新たに無製版マスタを巻装する動作によりマスタ消費コストを増大させてしまうということもなく、残像現象を効果的に抑制することが可能となる。
【0017】
第3の手段の孔版印刷装置によれば、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する排版時に、前記マスタにテンションを加えた状態で剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版を行うので、第1、第2の手段と同様の効果に加え、再巻装するときのマスタがよれよれになりにくいので、シワの無い状態で再巻装することが可能であり、より効果的に残像現象を防止することができる。
【0018】
第4の手段の孔版印刷装置によれば、第2または第3の手段の効果に加え、印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する排版時には、剥離位置のマスタにローラを押し付けながら排版を行うので、効果的に残像画像を押しつぶすことが可能になり、より効果的に残像現象を防止することができる。
また、第5、第6の手段の孔版印刷装置によれば、第2、第3、第4のいずれかの手段の効果に加え、最も残像画像が発生し易い条件の時だけ、再巻装動作を行うので、その他のあまり残像画像の影響が少ない時には、通常の排版動作を素早く完了することができるので、作業効率を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す孔版印刷装置の概略構成図であり、一般的な孔版印刷装置の全体構成の一例を示している。まず、この孔版印刷装置の全体構成と孔版印刷プロセスについて簡単に説明する。
【0020】
図1において、符号50は孔版印刷装置の本体フレームを示している。この本体フレーム50内の上部にある符合54で示す部分は原稿画像読取部を構成し、符号55はコンタクトガラス上に置かれた原稿を表わしている。
【0021】
符号60〜65で示す部分は多孔性円筒状印刷ドラムユニットであり、印刷ドラム(版胴)、インキローラ61、ドクタローラ62、インキ量検知センサ63、インキ分配器64、マスタクランパ65等で構成されている。
また、符号66及び67で示す部分は印刷用紙を印刷ドラムに押圧する押圧手段である印圧部であり、圧胴66及び印刷用紙クランパ67で構成されている。なお、押圧手段としては、圧胴の他にプレスローラ等を用いることもできる。
【0022】
符号70〜78で示す部分はマスタ79の製版及び給版部であり、マスタロール70、押えローラ71、プラテンローラ72、サーマルヘッド73、送りローラ74、給版ローラ75、タワミ収容部76、吸引ファン77、カッター78等で構成され、サーマルヘッド73で製版したマスタ79をカッター78で所定の長さにカットし、給版ローラ75で印刷ドラム60に給版する。
【0023】
符号80〜83で示す部分は排版部であり、使用済みマスタの剥離、排版手段である一対の排版ローラ80と、圧縮板81及び排版ボックス82等で構成され、印刷後の使用済みマスタを排版ローラ80で印刷ドラム60から剥離して排版ボックス82に排版し、排版済みマスタ83を圧縮板81で圧縮して排版ボックス82内に収容する。また、排版ローラ80は正転、逆転、停止動作ができるようになっており、印刷ドラム60から剥離した使用済みマスタを、印刷ドラム60に再巻装する際にマスタにテンションをかける機能も有している。なお、印刷後の使用済みマスタ79を印刷ドラム60から剥離し排版する動作と、一旦剥離したマスタを印刷ドラム60に再巻装する動作は、後述するメイン制御部100で排版ローラ80と印刷ドラム60の駆動を制御して行う。
【0024】
符号51,56並びに90〜93で示す部分は印刷用紙56の給紙部であり、印刷用紙56を積載した給紙台51、給紙コロ90、分離コロ91、分離パッド92、フィードローラ93等で構成されている。
また、符号52,53,57並びに94〜99で示す部分は排紙部であり、印刷済みの印刷用紙57が排紙される排紙台52、排紙台後側板53、排紙剥離爪94、吸着排紙入口ローラ95、吸着排紙出口ローラ96、用紙搬送ベルト97、吸着ファン98、エアーナイフユニット99等で構成されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、符号54で示したように原稿画像読取部を設けてあるが、PCオンライン出力専用機等でコントローラを内蔵する場合には、原稿画像読取部を設けない構成としても構わない。
【0026】
次に、図2は図1に示す孔版印刷装置の操作・表示部である操作パネルの一例を示している。そして、この操作パネルには、画像コントラストつまみ200、プリント位置調整キー201、初期設定キー202、プリント位置設定キー203、プリンタ設定キー204、表示部205、設定確認キー206、プログラムキー207、リセットキー208、オンライン製版キー209、製版モード選択キー210、連続キー211、プリントモード選択キー212、主電源ランプ213、試し刷りキー214,221、データイン表示ランプ215、アラーム表示ランプ216、プリントスピードキー217、テンキー219、クリア/ストップキー220、スタートキー222、主電源キー223、液晶表示パネル224等が設けられている。
【0027】
次に、図3は上記構成の孔版印刷装置の制御系の一例を示すブロック図である。制御系のメイン制御部100は、マイクロコンピュータとクロック、タイマー、制御回路等で構成される中央処理装置(CPU)101と、入・出力用のI/Oインターフェイス102と、制御用プログラムや制御情報が記憶されている読み出し専用メモリ(ROM)103と、操作・表示部(図2に示した操作パネル)105からの各種入力・設定情報や装置内に設けた各種センサ(版胴センサ112、用紙サイズセンサ113、用紙センサ114、排紙センサ115、温度センサ116等)からの各種の検知情報が記憶される書き換え可能なメモリ(RAM)104などで構成されており、原稿画像読取部(読取駆動手段)106、製版部(製版駆動手段)107、印刷部(印刷駆動手段)108、給紙部(給紙駆動手段)109、排版部(排版、再巻装駆動手段)110、排紙部(排紙駆動手段)111、エアーナイフユニット99のエアー吐出機構117等の装置各部の駆動手段を、操作・表示部(操作パネル)105からの各種入力・設定情報や各種センサからの各種の検知情報に基づいて制御し、以下に示す排版、製版、印刷動作を制御する。
【0028】
次に、本発明に係る孔版印刷装置の動作について、その概略構成も含めて図1並びに図2、図3を参照しながら以下に説明する。
先ずオペレータが原稿画像読取部54の上部に配置された原稿受け台(コンタクトガラス面)上に印刷すべき画像を持つ原稿55をセットし、図2に示す操作パネル上のプリントスピードキー217及びテンキー219等により所望の印刷条件を設定する。
その後。操作パネル上のスタートキー222を押下するとメイン制御部100は排版部(排版、再巻装駆動手段)110の駆動を制御し、排版工程が開始される。すなわち印刷部108の印刷ドラム60が図1中の矢印方向へ回転し、印刷ドラム60の外周面に巻装された使用済みマスタ79の先端部が排版ローラ80に近づくと、マスタクランパ65が開放されると共に排版部110が駆動し、排版ローラ80が回転しつつマスタ端部をすくい上げ、排版ボックス82内へと送り込みはじめる。
【0029】
排版工程と平行して原稿画像読取部54の読取駆動手段106が作動して原稿読取りが開始される。原稿画像読取部54の構成及び動作は公知の「縮小光学系による原稿読取方式」で行われる。すなわち光源により照射された原稿55表面からの反射光をミラー群で反射させ、レンズを通してCCD(光電変換素子)等から成る画像センサに入射し、センサ内で光電変換された電気信号をA/D(アナログ/デジタル)変換し、デジタル信号として処理する。
【0030】
一方、このような原稿走査及び画像読取動作と平行して、メイン制御部100は製版部(製版駆動手段)107の駆動を制御し、デジタル信号化された画像情報に基づき製版及び給版工程が行われる。
製版部においてマスタロール70から引き出された未製版マスタは、プラテンローラ72と送りローラ74により、初期時に所定位置にセットされている。製版及び給版動作が開始されると、デジタル信号化された画像情報に基づき、サーマルヘッド73上にある発熱素子が各々選択的に発熱すると共に、マスタが所定速度で順次送り出され、発熱素子に接触しているマスタの熱可塑性樹脂フィルム面が溶融穿孔されながら吸引ファンに吸引されることでタワミ収容部76に収容される。このようにして画像情報に応じたマスタフィルム面の位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。
【0031】
画像情報が書き込まれて製版された製版済みマスタの先端は給版ローラ75により印刷ドラム60の外周部側へ向かって送り出され、ガイド板により給版位置状態にある印刷ドラム60上のマスタクランパ65へ向かって垂れ下がり、所定のタイミングでマスタクランパ65により挟持されると、印刷ドラム60は図1中の矢印方向(時計回り方向)へ回転しつつ外周面に製版済みのマスタを徐々に巻き付けていく。マスタ後端部は製版終了後にカッタ78により所定の長さにカットされ、一版の製版済みマスタ79が印刷ドラム60の外周面上に完全に巻装されると、いわゆる給版工程が終了する。
【0032】
次に上記の製版済みマスタの巻装と同時にメイン制御部100は印刷部(印刷駆動手段)108、給紙部(給紙駆動手段)109、排紙部(排紙駆動手段)111、エアー吐出機構117等の駆動を制御し、印刷工程が開始される。
【0033】
先ず、給紙台51上に積載された印刷用紙56内の最上位の1枚が、給紙コロ90と分離コロ91及び用紙分離パッド92により、フィードローラ対93に向けて図1中の矢印で示す用紙搬送方向に給送され、フィードローラ対93により印刷ドラム60の回転に同期した所定のタイミングで印刷ドラム60と圧胴66間に向けて送り出される。圧胴66は図示しない印圧カム等の変位手段により、印刷ドラム60の外周面に接離自在になっており、印刷ドラム60に対して給送されてきた印刷用紙56を押し付けて印刷画像を印刷用紙56上に形成する押圧手段としての機能を有している。
【0034】
そして給送されてきた印刷用紙56の先端が圧胴66上の印刷用紙クランパ67に挟持されると、印刷ドラム60の外周面の下方に離間されていた圧胴66が図示しない印圧カムにより上昇されることにより、印刷ドラム60の外周面上に巻装されている製版済みマスタ79に押し付けられる。このようして印刷ドラム60の多孔部を介して製版済みマスタ79の穿孔パターン部から滲み出たインキが印刷用紙56に転移されて印刷画像が形成される。
【0035】
なお、印刷用紙の1枚目は通常版付け(試し刷り)と呼ばれ、新たに巻装されたマスタが印刷ドラム上に馴染みインキが十分に行き渡るように、所定の印刷速度よりもさらに遅い速度で印刷されて排紙される。
また、図2に示す操作パネル上の連続キー211が押下されていない場合は、版付け(試し刷り)の用紙が排紙された時点で機械は停止する。その時点でオペレータが印刷物の画像位置を適正化するために、プリント位置設定キー203を用いて画像位置調整をし、試し刷りキー214若しくは221により、再度画像位置の確認を行う場合もある。
【0036】
一方、印刷ドラム60の内部では、インキ分配器64からインキローラ61とドクタローラ62とのギャップ部分にインキが供給され、インキ量検知センサ63により所定量のインキ溜まりが形成される。
そして印刷ドラム60が回転すると、その回転方向と同期してインキローラ61とドクタローラ62が回転し、インキが印刷ドラム60の内周面にづ随時供給される。
【0037】
印刷画像が形成された印刷用紙57は、圧胴66の印刷用紙クランパ67から開放され、印刷ドラム60自身の曲率と排紙剥離爪94及びエアーナイフユニット99により印刷ドラム60から剥がされ、吸着排紙入口ローラ95、吸着排紙出口ローラ96、用紙搬送ベルト97、吸着ファン98から成る吸着搬送ユニットにより排紙部へ向けて搬送され、排紙台52上に排紙されて積載される。
そして、給紙、印刷、排紙の各工程が、操作パネル上で予め設定した印刷枚数分繰り返し行われ、孔版印刷の全工程が終了する。
【0038】
以上、本発明に係る孔版印刷装置の構成、動作の一実施形態を説明したが、本発明では、マスタ79を、印刷ドラム60の外周面に巻装し、印刷ドラム外周のマスタにインキを供給し、押圧手段(圧胴)66により印刷ドラム外周のマスタに対して印刷用紙56を押し付けて該印刷用紙上に印刷画像を形成する輪転式の孔版印刷装置において、前回印刷後の使用済みマスタの穿孔部分と非穿孔部分とで、インキ組成中の水相成分蒸発量の差異によって発生する、いわゆるインキ緩み差に起因する残像現象に伴う画像異常発生や、文書機密漏洩を抑制するための制御動作手段を有する孔版印刷装置を提供するものである。
すなわち本発明では、前述の従来技術のように未製版マスタを頻繁に巻装することによるマスタ消費量増加や、更にはドラムスクリーンの長期間剥き出しによる過剰乾燥等の不具合を防ぎつつ、画像異常や文書機密漏洩の元となる、残像現像を抑制することができる孔版印刷装置を提供するものである。
【0039】
そして本発明の孔版印刷装置では、その具体的な手段として、以下のような構成を採っている。
(1):印刷後の使用済みマスタ79を印刷ドラム60から剥離する手段と、その剥離した使用済みマスタ79を印刷ドラム60に再巻装する手段を有する構成とする。
(2):(1)の構成に加え、印刷後の使用済みマスタ79を印刷ドラム60から剥離し排版部の排版ボックス82に排版する手段と、排版部の排版ボックス82に一旦排版した使用済みマスタ79を印刷ドラム60に再巻装する手段を有する構成とする。
(3):(1)の構成に加え、印刷後の使用済みマスタ79を印刷ドラム60から剥離し排版部の排版ボックス82に排版する排版時に、マスタにテンションを加えた状態で剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版を行う手段を有する構成とする。
(4):(2)または(3)の構成に加え、印刷後の使用済みマスタ79を印刷ドラム60から剥離し排版部の排版ボックス82に排版する排版時には、剥離位置のマスタに排版ローラを押し付けながら排版を行う構成とする。
(5):(2)または(4)の構成に加え、一定時間、使用済みマスタ79が排版されなかった場合、該使用済みマスタ79を印刷ドラム60から一旦剥離した後、再巻装を行う構成とする。
(6):(3)または(4)の構成に加え、一定時間、使用済みマスタ79が排版されなかった場合、剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版する構成とする。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施例を図4〜図11を参照して説明する。なお、孔版印刷装置の基本的な構成、動作は図1〜図3を参照して説明した通りであり、図4〜図11は本発明の実施例の特徴的な動作(特に、使用済みマスタの剥離、排版、再巻装の動作)を説明するための図である。従って各図においては図面の簡略化を図るために、印刷ドラム60とマスタ79及び排版部のみを図示してあり、その他の部分は図示を省略している。
【0041】
[実施例1]
先ず、図4、図5を参照して第1の実施例の動作を説明する。
現在、孔版印刷装置に限らず、消費電力の低減のために、いわゆる“省電力モード”動作機能が付加されているのが一般的となっており、本実施例における孔版印刷装置においても同様の機能が付随している。ここで、省電力モードとは、操作パネル表示の消灯あるいは主電源OFF動作等を行うことにより、待機時の電力消費を抑制する機能のことを指している。
【0042】
前述の実施形態の印刷工程で所定枚数の印刷を行い、印刷終了後に次の動作の指示が何も無い状態が続くと、機械本体内のメイン制御部100の中央処理装置(CPU)101に備えられているタイマーのカウントが開始され、予め設定された所定時間に到達すると、省電力モードへ自動的に移行して機械待機状態となる(図4の(I−1)の状態)。
【0043】
次に、オペレータが原稿画像読取部54の上部に配置された原稿受け台(コンタクトガラス面)上に印刷すべき画像を持つ原稿55をセットし、図2に示す操作パネル上のプリントスピードキー217及びテンキー219等により所望の印刷条件を設定する。
その後、操作パネル上のスタートキー222を押下すると前述の排版工程が開始される。すなわち印刷ドラム60が図1中の矢印方向(時計回り方向)へ回転した後、停止する。そして、印刷ドラム60の外周面に巻装された使用済みマスタ79の後端部が、剥離、排版手段である一対の排版ローラ80からなるローラユニットに近づくと、排版ローラ80が回転しつつマスタ後端部をすくい上げ、マスタ79の後端が排版ローラ80に咥え込まれる(図4の(I−2)の状態)。
【0044】
マスタ79の後端が排版ローラ80に咥え込まれた後、印刷ドラム60は逆方向(反時計回り方向)に回転し、使用済みのマスタ79は排版ローラ80の回転により印刷ドラム60から剥離され排版ボックス82内に送り込まれる。
マスタ79の所定量が排版ボックス82内に送り込まれると、印刷ドラム60及び排版ローラ80の回転が停止する(図5の(I−3)の状態)。なお、この状態では、再巻装を行うために、印刷ドラム60のマスタクランパ65はマスタ先端を挟持したままである。
【0045】
続いて、印刷ドラム60が正転方向(時計回り方向)に回転すると、排版ボックス82内のマスタを引き出しつつ、使用済みマスタ79を再び印刷ドラム60上に巻き付ける(再巻装動作)(図5の(I−4)の状態)。
【0046】
以上のようにして、印刷ドラム60から一旦剥離した使用済みマスタ79を、再び印刷ドラム60に巻き付ける(再巻装する)ことにより、印刷ドラム60上の残像画像を押し潰したり、マスタ79に付着していたインキと混ぜることで、残像画像を判らなくすることができる。
さらに、この時、排版ローラ80の回転駆動は停止し、引き出されるマスタ79に対して弱いテンションを加える状態とし、マスタ79を印刷ドラム60上に弱いテンションをかけた状態で再巻装する。
【0047】
以上のようにして使用済みマスタ79を印刷ドラム60に巻き付けた後、再度、排版動作を行う。この再度の排版動作では、マスタクランパ65が開放されると共に排版部110が駆動し、排版ローラ80が回転しつつマスタ後端部を排版ボックス82内へと送り込みはじめる。この時、排版ローラ80の周速を印刷ドラム60よりも速い設定とし、ラフに巻かれたマスタ79を引っ張りながら剥離し、マスタ79と印刷ドラム60との間で滑りを生じさせる。これにより、残像画像をより効果的に消去できる。
なお、使用済みマスタ79の排版ボックス82への排版後は、前述したように製版済みマスタの給版を行う。
【0048】
[実施例2]
次に、図6、図7を参照して第2の実施例の動作を説明する。本実施例では、実施例1と構成は同じだが、排版動作の仕方が異なる。
現在、孔版印刷装置に限らず、消費電力の低減のために、いわゆる“省電力モード”動作機能が付加されているのが一般的となっており、本実施例における孔版印刷装置においても同様の機能が付随している。ここで、省電力モードとは、操作パネル表示の消灯あるいは主電源OFF動作等を行うことにより、待機時の電力消費を抑制する機能のことを指している。
【0049】
前述の実施形態の印刷工程で所定枚数の印刷を行い、印刷終了後に次の動作の指示が何も無い状態が続くと、機械本体内のメイン制御部100の中央処理装置(CPU)101に備えられているタイマーのカウントが開始され、予め設定された所定時間に到達すると、省電力モードへ自動的に移行して機械待機状態となる(図6の(II−1)の状態)。
【0050】
次に、オペレータが原稿画像読取部54の上部に配置された原稿受け台(コンタクトガラス面)上に印刷すべき画像を持つ原稿55をセットし、図2に示す操作パネル上のプリントスピードキー217及びテンキー219等により所望の印刷条件を設定する。
その後、操作パネル上のスタートキー222を押下すると前述の排版工程が開始される。すなわち印刷ドラム60が図1中の矢印方向(時計回り方向)へ回転した後、停止する。そして、印刷ドラム60の外周面に巻装された使用済みマスタ79の後端部が、剥離、排版手段である一対の排版ローラ80からなるローラユニットに近づくと、排版ローラ80が回転しつつマスタ後端部をすくい上げ、マスタ79の後端が排版ローラ80に咥え込まれる(図6の(II−2)の状態)。
【0051】
マスタ79の後端が排版ローラ80に咥え込まれた後、印刷ドラム60は逆方向(反時計回り方向)に回転し、使用済みのマスタ79は排版ローラ80の回転により印刷ドラム60から剥離され排版ボックス82内に所定量送り込まれる(ここでは、例えば、約20mm程度が排版ボックス82内に送り込まれるとする)。
マスタ79の所定の量が排版ボックス82内に送り込まれると、印刷ドラム60及び排版ローラ80の回転が停止する(図7の(II−3)の状態)。なお、この状態では、再巻装を行うために、印刷ドラム60のマスタクランパ65はマスタ先端を挟持したままである。
【0052】
続いて、印刷ドラム60が停止した後、印刷ドラム60が正転方向(時計回り方向)に回転を開始し、排版ボックス82内のマスタを引き出し、所定量(例えば、約20mm程度)の使用済みマスタ79の再巻装を行う(図7の(II−4)の状態)。
そして本実施例では、上記のような使用済みマスタ79の剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら、マスタを排版ボックス82内に徐々に送り込み、排版を行う。
【0053】
このように、本実施例では、印刷後の使用済みマスタ79を印刷ドラム60から剥離し排版部の排版ボックス82に排版する排版時に、マスタ79にテンションを加えた状態で剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版を行う。そして、使用済みマスタ79を印刷ドラム60に繰り返し巻き付ける動作を行うことで、印刷ドラム上の残像画像を押し潰したり、マスタに付着していたインキと混ぜることで、残像画像を判らなくすることができる。
【0054】
また、本実施例の方式では、排版ボックス82内からマスタを引き出すときに、引き出されるマスタ79に対して排版ローラ80で弱いテンションを加える状態としており、排版ボックス内でマスタがごちゃごちゃになりにくいので、マスタの再巻き付けが容易に行える。更に、排版ローラ80によってテンションを加えながら使用済みマスタ79の巻装を行うことにより、マスタを印刷ドラムの外周面に強く押し付けることができ、より効果的に残像画像の防止が行える。
なお、使用済みマスタ79の排版ボックス82への排版後は、前述したように製版済みマスタの給版を行う。
【0055】
[実施例3]
次に、図8〜図11を参照して第3の実施例を説明する。本実施例では、実施例1,2と基本的な構成は同じだが、排版ローラ80の代わりに、印刷ドラムに接離可能な排版ローラ20を用いた点が異なる。
【0056】
図8は本実施例における排版ローラ20の構成、動作の説明図である。この排版ローラ20は、一対の排版ローラ(排版ローラ下25、排版ローラ上36)を有し、排版ローラ下25の軸23を中心に左右に揺動し、排版ローラ上26が、印刷ドラム60の外面に接離可能になっている。
排版ローラ下25の中心軸23は、回転可能に図示しない本体側板に支持され、更に軸23の片端には図示しないギヤやモータ等からなる駆動部が設けられ、排版ローラ下25を回転駆動している。
排版ローラ上26は、軸24を介して板状のブラクット27に回転自在に支持されつつ、排版ローラ下25に押圧され、排版ローラ下25の回転駆動に従動して回転する。
【0057】
ブラケット27は、軸23の手前と奥側に回転可能に支持されている。ブラケット27には、可動ロッドと電磁コイルを有する電磁式のソレノイド(SOL)21が設置され、このソレノイド21は、図示しない本体側板に固定してある。
通常は、ソレノイド21とブラケット27の間に介在させた圧縮ばね22によって、ブラケット27は図8(b)の実線の位置(退避位置)にあり、排版動作時には、ソレノイド21をONにし、破線位置にソレノイド21の電磁吸引力でブラケット27を移動し、剥離位置で排版ローラ上26をマスタを介して印刷ドラム60に押圧するようになっている。
【0058】
次に、上記の排版ローラ20を用いた時の剥離、排版、再巻装動作について説明する。
前述の実施形態の印刷工程で所定枚数の印刷を行い、印刷終了後に次の動作の指示が何も無い状態が続くと、機械本体内のメイン制御部100の中央処理装置(CPU)101に備えられているタイマーのカウントが開始され、予め設定された所定時間に到達すると、省電力モードへ自動的に移行して機械待機状態となる(図9の(III−1)の状態)。
【0059】
次に、オペレータが原稿画像読取部54の上部に配置された原稿受け台(コンタクトガラス面)上に印刷すべき画像を持つ原稿55をセットし、図2に示す操作パネル上のプリントスピードキー217及びテンキー219等により所望の印刷条件を設定する。
その後、操作パネル上のスタートキー222を押下すると前述の排版工程が開始される。すなわち印刷ドラム60が図1中の矢印方向(時計回り方向)へ回転した後、停止する。そして、印刷ドラム60の外周面に巻装された使用済みマスタ79の後端部が、剥離、排版手段である一対の排版ローラ20からなるローラユニットに近づくと、排版ローラ20が回転しつつマスタ端部をすくい上げ、マスタ79の後端が排版ローラ20に咥え込まれる(図9の(III−2)の状態)。
この状態で排版ローラ20のソレノイド21に通電され、マスタの剥離位置で排版ローラ上26が、マスタ79を介して印刷ドラム60に押圧される(図10の(III−3)の状態)。
【0060】
マスタ79の後端が排版ローラ20に咥え込まれた後、印刷ドラム60は逆方向(反時計回り方向)に回転し、使用済みのマスタ79は排版ローラ20の回転により印刷ドラム60から剥離され排版ボックス82内に所定量送り込まれる。
マスタ79の所定の量が排版ボックス82内に送り込まれると、印刷ドラム60及び排版ローラ20の回転が停止する(図10の(III−4)の状態)。なお、この状態では、再巻装を行うために、印刷ドラム60のマスタクランパ65はマスタ先端を挟持したままである。
【0061】
続いて、印刷ドラム60が逆方向(時計回り方向)に回転を開始し、排版ボックス82内のマスタを引き出しつつ、使用済みマスタ79を再び印刷ドラム60上に巻き付ける(再巻装動作)(図11の(III−5)の状態)。
【0062】
以上のようにして、印刷ドラム60から一旦剥離した使用済みマスタ79を、再び印刷ドラム60に巻き付ける(再巻装する)ことにより、印刷ドラム60上の残像画像を押し潰したり、マスタ79に付着していたインキと混ぜることで、残像画像を判らなくすることができる。
さらに、本実施例では、剥離、排版、再巻装動作時に、剥離位置のマスタ79に排版ローラ上26を押し付けながら排版、再巻装を行うので、より効果的に残像画像を押し潰すことが可能になる。
【0063】
以上のようにして使用済みマスタ79を印刷ドラム60に巻き付けた後、ソレノイド21への通電がOFFされ、排版ローラ上26が解除される。
そして、再度、排版動作を行う。この再度の排版動作では、マスタクランパ65が開放されると共に排版部110が駆動し、排版ローラ20が回転しつつマスタ後端部を排版ボックス82内へと送り込みはじめる。この時も上記と同様に、排版ローラ20のソレノイド21に通電し、排版ローラ上26を、マスタ79を介して印刷ドラム60に押圧しても良く、残像画像をより効果的に消去できるが、この場合には、マスタ79の先端側(マスタクランパ側の端部)が排紙ローラ上26を通過する前にソレノイド21への通電をOFFにし、排版ローラ上26の押圧を解除する。
なお、使用済みマスタ79の排版ボックス82への排版後は、前述したように製版済みマスタの給版を行う。
【0064】
本実施例では、実施例1と同じように、使用済みマスタ79の略全量を剥離、排版してから印刷ドラム60に再巻装を行うようにしているが、実施例2のように、所定量づつの剥離、排版と、再巻装を間欠的に行うような構成としてもよい。
【0065】
以上に説明した本発明の実施例では、印刷終了後の一定時間が過ぎた後での印刷動作(排版動作)のときに、本発明の動作(剥離、排版、最巻装動作)を行うようにしたが、一定時間過ぎない、直ぐの排版動作の時にも行うようにしてもよい。
また、印刷中にも、若干ではあるが、画像部と非画像部とでインキの物性に変化が生じている。これは印刷枚数が多いと、その影響が大きくなる。従って、印刷枚数によって、剥離、排版、最巻装動作の実施の有無を判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態を示す孔版印刷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す孔版印刷装置の操作・表示部である操作パネルの一例を示す平面図である。
【図3】図1に示す孔版印刷装置の制御系の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施例の孔版印刷装置の動作の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施例の孔版印刷装置の動作の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施例の孔版印刷装置の動作の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施例の孔版印刷装置の動作の説明図である。
【図8】本発明の第3の実施例の孔版印刷装置に用いる排版ローラの構成、動作の説明図である。
【図9】本発明の第3の実施例の孔版印刷装置の動作の説明図である。
【図10】本発明の第3の実施例の孔版印刷装置の動作の説明図である。
【図11】本発明の第3の実施例の孔版印刷装置の動作の説明図である。
【符号の説明】
【0067】
20:排版ローラ
21:ソレノイド(SOL)
22:圧縮ばね
23:排版ローラ下の軸
24:排版ローラ上の軸
25:排版ローラ下
26:排版ローラ上
27:ブラケット
50:本体フレーム
51:給紙台
52:排紙台
53:排紙台後側板
54:原稿画像読取部
55:原稿
56:印刷用紙(給紙側)
57:印刷用紙(排紙側)
60:印刷ドラム(版胴)
61:インキローラ
62:ドクタローラ
63:インキ量検知センサ
64:インキ分配器
65:マスタクランパ
66:圧胴(押圧手段)
67:印刷用紙クランパ
70:マスターロール
71:押えローラ
72:プラテンローラ
73:サーマルヘッド
74:送りローラ
75:給版ローラ
76:タワミ収容部
77:吸引ファン
78:カッター
79:製版済みマスタ(使用済みマスタ)
80:排版ローラ
81:圧縮板
82:排版ボックス
83:排版済みマスタ
90:給紙コロ
91:分離コロ
92:分離パッド
93:フィードローラ
94:排紙剥離爪
95:吸着排紙入口ローラ
96:吸着排紙出口ローラ
97:用紙搬送ベルト
98:吸着ファン
99:エアーナイフユニット
100:メイン制御部
101:中央処理装置(CPU)
102:I/Oインターフェイス
103:ROM
104:RAM
105:操作・表示部(操作パネル)
106:画像読取部(読取駆動手段)
107:製版部(製版駆動手段)
108:印刷部(印刷駆動手段)
109:給紙部(給紙駆動手段)
110:排版部(排版、再巻装駆動手段)
111:排紙部(排紙駆動手段)
200:画像コントラストつまみ
201:プリント位置調整キー
202:初期設定キー
203:プリント位置設定キー
204:プリンタ設定キー
205:表示部
206:設定確認キー
207:プログラムキー
208:リセットキー
209:オンライン製版キー
210:製版モード選択キー
211:連続キー
212:プリントモード選択キー
213:主電源ランプ
214,221:試し刷りキー
215:データイン表示ランプ
216:アラーム表示ランプ
217:プリントスピードキー
219:テンキー
220:クリア/ストップキー
222:スタートキー
223:主電源キー
224:液晶表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版された感熱孔版原紙(以下、マスタと言う)を、円筒状版胴(以下、印刷ドラムと言う)の外周面に巻装し、前記印刷ドラム外周の前記マスタにインキを供給し、押圧手段により前記印刷ドラム外周のマスタに対して印刷用紙を押し付けて該印刷用紙上に印刷画像を形成する輪転式の孔版印刷装置において、
印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離する手段と、その剥離した使用済みマスタを前記印刷ドラムに再巻装する手段を有することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の孔版印刷装置において、
印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する手段と、前記排版部に一旦排版した使用済みマスタを前記印刷ドラムに再巻装する手段を有することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項3】
請求項1記載の孔版印刷装置において、
印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する排版時に、前記マスタにテンションを加えた状態で剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版を行う手段を有することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の孔版印刷装置において、
印刷後の使用済みマスタを前記印刷ドラムから剥離し排版部に排版する排版時には、剥離位置のマスタにローラを押し付けながら排版を行うことを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項5】
請求項2または4に記載の孔版印刷装置において、
一定時間、使用済みマスタが排版されなかった場合、該使用済みマスタを前記印刷ドラムから一旦剥離した後、再巻装を行うことを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の孔版印刷装置において、
一定時間、使用済みマスタが排版されなかった場合、前記剥離と再巻装の動作を繰り返し行いながら排版することを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−143076(P2009−143076A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321623(P2007−321623)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)