説明

孔版印刷装置

【課題】用紙の搬送性を維持しつつも、版胴からの用紙の隔離を適切に行え、ジャムの発生や剥離遅れによる画像面の汚れを抑制する両面印刷可能な孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷部2で表面印刷されて剥離部30によって剥離された表面印刷済み用紙P1を保持し、その後に該表面印刷済み用紙を押圧手段12に向けて送り出し該押圧手段で反転させて印刷部2に向けて再給紙する再給紙部9又は排紙部6に案内する切換手段8を有し、版胴11の1回転で用紙Pの両面に印刷可能な孔版印刷装置において、切換手段8が、版胴外周面11aから剥離された用紙P1,P2を排紙部6へ案内する第1の位置及び版胴外周面から剥離された表面印刷済み用紙P1を再給紙部9へ案内する第2の位置とを占めるように互いに反対方向に揺動自在に支持された一対の切換え部材81,82と、この切換え部材を第1の位置と第2の位置に切換え動作する駆動手段83とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面印刷可能な孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
孔版印刷装置では、用紙の消費量および書類の保管スペースを低減させるため等の目的から、用紙の表裏両面に印刷を行う両面印刷が行えるものが種々提案され、本出願人からも例えば特許文献1に示すものが提案されている。特許文献1に記載の孔版印刷装置は、版胴の回転方向に沿って第1の製版画像と第2の製版画像とが2面並んで形成された分割製版済みマスタを巻装する版胴および該版胴に対して相対的に接離自在な押圧手段を有する印刷部と、印刷部で印刷された印刷済み用紙を排出する排紙部と、印刷部で第1の製版画像または第2の製版画像に対応してその片面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙を一時的に保持し、その後に該表面印刷済み用紙を押圧手段に向けて送り出し該押圧手段で反転させて印刷部に向けて再給紙する再給紙部と、印刷部から送り出された表面印刷済み用紙を再給紙部へ搬送する搬送手段と、印刷部を通過した用紙を再給紙部または排紙部に案内する切換手段とを備えている。
【0003】
そして、片面印刷時には、表面印刷済み用紙が排紙部へ案内されるように切換手段を構成する切換え部材が用紙搬送路から突出しない位置を占め、両面印刷時においては、表面印刷済み用紙を再給紙部へ案内するように切換え部材が用紙搬送路から突出する位置を占めるように切換えている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−125716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構成の両面印刷可能な孔版印刷装置において、切換え部材は、表面印刷済み用紙を再給紙部または排紙部へ搬送するように切換えるため、印刷部よりも用紙搬送方向の下流側に配置されている。このため、切換え部材は、排紙部へ用紙を案内するときには用紙搬送路の一部を構成することになるので、その全長が長くされている。しかし、全長が長いと、表面印刷済み用紙を再給紙部へと案内するように用紙搬送路から突出する位置を占めたときに、版胴の外周面近傍に位置することとなり、用紙先端を版胴外周面から剥離する剥離ファンからの送風を遮る状態となる。このような状態となると、版胴から用紙を剥離するための送風量が不足しがちになり、用紙先端に上向きカールが有る場合や、用紙先端部にベタ画像が有る場合などに、用紙先端が版胴に貼り付き気味で剥離が不安定になり、分離時に用紙ジャムの発生が懸念される。また、版胴と用紙の間に送風する量が減ることで用紙を剥離する力が不足し、剥離遅れにより表面印刷済み用紙の画像面が切換え部材に接触して通過することになる画像面の擦り汚れの発生が懸念される。
【0006】
本発明は、用紙の搬送性を維持しつつも、版胴からの用紙の隔離を適切に行え、ジャムの発生や剥離遅れによる画像面の汚れを抑制する両面印刷可能な孔版印刷装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、請求項1の発明は、版胴の外周面に巻着された製版済みマスタに押圧手段で用紙を押し付けることで当該用紙の表面あるいは表裏両面に印刷を行う印刷部と、印刷部で印刷された用紙を版胴の外周面から剥離する剥離部と、剥離部で剥離された用紙が排出される排紙部と、印刷部で表面印刷されて剥離部によって剥離された表面印刷済み用紙を保持し、その後に該表面印刷済み用紙を押圧手段に向けて送り出し該押圧手段で反転させて印刷部に向けて再給紙する再給紙部と、印刷部を通過した用紙を再給紙部または排紙部に案内する切換手段とを有し、版胴の1回転で用紙の両面に印刷可能な孔版印刷装置において、切換手段は、版胴外周面から剥離された用紙を排紙部へ案内する第1の位置と、版胴外周面から剥離された表面印刷済み用紙を再給紙部へ案内する第2の位置とを占めるように互いに反対方向に揺動自在に支持された一対の切換え部材と、一対の切換え部材を第1の位置と第2の位置とに切換え動作する駆動手段とを有することを特徴とする孔版印刷装置。
【0008】
請求項2記載の発明では、一対の切換え部材が、用紙搬送方向に並列配置されていて、用紙搬送方向下流側の切換え部材の全長が用紙搬送方向上流側の切換え部材の全長よりも短く形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明では、用紙搬送方向下流側より用紙搬送方向上流側の切換え部材の揺動幅が大きく設定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明では、駆動手段は、用紙搬送方向上流側の切換え部材の揺動端に設けられた第1の支持軸を回転させる第1歯車手段と、第1歯車手段と噛み合うように配置され用紙搬送方向下流側の切換え部材の揺動端に設けられた第2の支持軸を減速回転させる第2歯車手段と、第1歯車手段又は第2歯車手段を回転する駆動モータとを有することを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明では、駆動手段は、用紙搬送方向上流側及び用紙搬送方向下流側の切換え部材のそれぞれの揺動端にそれぞれの一端が固定され、それぞれの他端が自由端を成す第1及び第2のリンクレバーと、第1及び第2のリンクレバーの自由端にピン結合された連結リンクレバーと、何れかのリンクレバーを揺動させる駆動部材とを有し、第1のリンクレバーが第2のリンクレバーよりも短く設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表面印刷済み用紙を押圧手段に向けて送り出し該押圧手段で反転させて印刷部に向けて再給紙する再給紙部または排紙部に、印刷部を通過した用紙を案内する切換手段が、版胴外周面から剥離された用紙を排紙部へ案内する第1の位置と、版胴外周面から剥離された表面印刷済み用紙を再給紙部へ案内する第2の位置とを占めるように互いに反対方向に揺動自在に支持された一対の切換え部材と、一対の切換え部材を第1の位置と第2の位置とに切換え動作する駆動手段とを有するので、第1の位置を占めているときは従来の切換え部材と同等の長さを維持でき、第2の位置を占めるときには、分割した分だけ短くできる。このため、切換え部材が第1の位置を占めているときは搬送性を確保でき、第2の位置を占めた場合には用紙先端を版胴の外周面から剥離する剥離部からの送風を遮る事がなく、版胴からの用紙の隔離を適切に行え、ジャムの発生や剥離遅れによる画像面の汚れを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1において、符号1は反転再給紙方式の孔版印刷装置を示す。この孔版印刷装置1は、特開2003−200645号に開示された両面印刷装置と関連した構成を有しているので、各部位の説明をできるだけ省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1を主に用いて本実施形態における孔版印刷装置1の全体構成の概要と共に動作を説明する。孔版印刷装置1は、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、切換手段8、再給紙部9、剥離部30、制御手段10等を有し、版胴11の1回転で用紙Pの表面に印刷する片面印刷と、版胴11の1回転で用紙Pの両面に印刷する両面印刷とが可能な構成とされた両面孔版印刷装置として構成されている。
【0015】
孔版印刷装置1の装置本体1Aのほぼ中央に配置された印刷部2は、版胴11と押圧手段となるプレスローラ12とを有している。版胴11は装置本体1Aに回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段によって回転駆動される。版胴11はその外周面(以下「版胴外周面」と記す)11aに開閉自在なクランパ13を有しており、両面印刷時において版胴外周面11aには製版部3で製版されたマスタ(以下「製版済マスタ」という)14が巻装される。
【0016】
製版部3により製版された製版済マスタ14は、その先端部をクランパ13によりクランプされて版胴外周面11aに巻装される。製版済マスタ14には、図2に示すように、表面印刷用の第1の画像201(以下、「表面画像201」という)と、裏面印刷用の第2の画像202(以下、「裏面画像202」という)が版胴11の回転方向に順に並んで形成されている。孔版印刷では、このマスタ14から用紙Pに直接転写されるので、製版済マスタ14上の画像は鏡像になる。図2は、製版済マスタ14を印刷ドラム11に巻き付けた状態を展開してフィルム面側から見た図である。表面画像201と裏面画像202の間には未製版部分が形成されている。製版済マスタ14は、版胴11上において、表面画像201が図1に示す表面領域に、裏面画像202が同裏面領域に、未製版部分204が同中間領域にそれぞれ対応するように巻装される。
【0017】
図1に示すように、版胴11の下方にはプレスローラ12が配設されている。フッ素樹脂等の撥水性を有する弾性体からなるプレスローラ12は、図示しないアーム部材にその両端を回転自在に支持されており、図示しないアーム部材は図示しない揺動手段によって揺動自在に支持されている。プレスローラ12はその周面が版胴11より離間する図1に示す離間位置と、その周面が版胴11上の製版済マスタ14に圧接する圧接位置とを選択的に占めるように版胴11に対して接離自在とされている。
【0018】
プレスローラ12の右方近傍には、再給紙部9から送られた表面印刷済み用紙P1をプレスローラ12の周面に沿わせて搬送するための再給紙案内部材17が配設されている。プレスローラ12の下方には補助トレイ8上に貯留された表面印刷済み用紙P1をプレスローラ12の周面に接触させて送り出す再給紙レジストローラ18が配設されている。プレスローラ12の左下方には、上面に補助トレイ22を有する再給紙搬送ユニット19が配設されている。この補助トレイ22には再給紙位置決め部材20が一体的に設けられている。再給紙搬送ユニット19の上方には、補助トレイ22の上面に沿って移動自在な用紙受け板21が配設されている。これら補助トレイ22、再給紙案内部材17、再給紙レジストローラ18、再給紙位置決め部材20、再給紙搬送ユニット19及び用紙受け板21によって再給紙部9が構成されている。
【0019】
印刷部2の右上方には製版部3が配設されている。製版部3は、未製版のマスタをロール状に巻成したマスタロールを保持するマスタ保持部材、プラテンローラ、サーマルヘッド、マスタ切断手段、マスタストック部、テンションローラ対、反転ローラ対等を有する周知の構成であり、この製版部3では製版済マスタ14が作成される。
【0020】
製版部3の下方には給紙部4が配置されている。給紙部4は、用紙Pが積載される給紙トレイ48と、給紙トレイ48上の用紙Pを給紙する給紙ローラ51と、給紙トレイ48と版胴11の間に形成された搬送経路に配置されたレジストローラ対53を備えている。
【0021】
印刷部2の左上方に配設された排版部5は、上排版部材、下排版部材、排版ボックス、圧縮板等を有する周知の構成であり、使用済みの製版済みマスタ14を版胴外周面11aより剥離して排版ボックスの内部に廃棄する周知の構成とされている。
【0022】
排版部5の下方には、剥離部30と排紙部6が配設されている。剥離部30は、剥離爪31と、剥離爪31と版胴外周面11aの間に送風する剥離ファン32とを備えている。剥離爪31は図示しない揺動駆動手段によってその先端部が版胴外周面11aに対して近接・離間自在に設けられており、近接位置を占めることで版胴外周面11a上より用紙Pを剥離する。剥離ファン32は、剥離爪31の上方に配設されており、版胴外周面11aに向けて送風を行うことにより印刷を終えて分離爪31によって版胴外周面11a上から剥離される用紙P1の先端P1aをそれぞれ浮き上がらせる機能を備えている。
【0023】
排紙部6は、剥離部30よりも下方に配置されていて、排紙搬送ユニット33と排紙トレイ34とを備えている。排紙搬送ユニット33は、駆動ローラ、従動ローラ、無端ベルト、吸引ファン等を有しており、無端ベルトの上面に表面印刷済み用紙P1又は表裏両面印刷済み用紙P2を吸引しつつ図1に矢印Xで示す用紙搬送に搬送する。排紙トレイ33は1つのエンドフェンスと一対のサイドフェンスとを有した周知の構成であり、その上面に、表面印刷済み用紙P1又は表裏両面印刷済み用紙P2を積載する。
【0024】
装置本体1Aの上部には、画像読取部7が配設されている。画像読取部7は、コンタクトガラス、コンタクトガラスに対して接離自在に設けられた圧板、原稿画像を走査して読み取る反射ミラー及び蛍光灯、走査された画像を集束するレンズ、集束された画像を処理する画像センサ等を有しており、その上部には自動原稿読取装置であるADFユニット61が設けられている。
【0025】
版胴11とプレスローラ12との接触位置の左方であって、用紙Pの搬送経路R上には印刷部2を通過した表面印刷済み用紙P1と表裏両面印刷済み用紙P2を排紙部6または再給紙部9に案内する切換手段8が配設されている。切換手段8は、図5(a)に示すように、版胴外周面11aから剥離された表面印刷済み用紙P1及び表裏両面印刷済み用紙P2を排紙部6のへ案内する第1の位置と、図5(b)に示すように、版胴外周面11aから剥離された表面印刷済み用紙P1を再給紙部9へ案内する第2の位置とを占めるように互いに反対方向に揺動自在に支持された一対の切換え部材81,82と、これら切換え部材81,82を第1の位置と第2の位置とに切換え動作する駆動手段83とを有している。
【0026】
切換え部材81,82は、用紙搬送方向Xに並列配置されていて、用紙搬送方向下流側に配置された切換え部材82の全長L1が用紙搬送方向上流側に配置に配置された切換え部材81の全長L2よりも短く形成されている。切換え部材81は、その揺動端81aが図示フレームに揺動自在にじされた第1の支持軸89と一体回転可能に形成されている。切換え部材82は、その揺動端82aが図示フレームに揺動自在に支持された第2の支持軸88と一体回転可能に形成されている。
【0027】
切換え部材81,82は、第1の位置を占めているときには、互いの上面81c、82cが同一平面上に位置して搬送経路Rの下部を構成し、搬送経路Rに突出しないように平坦面に形成されている。切換え部材82の裏面82bは、切換え部材82が第2の位置を占めているときには、搬送経路Rを通過している表面印刷済み用紙P1を再給紙部9へ案内するような円弧面に形成されている。
【0028】
駆動手段83は、切換え部材81の揺動端81aに設けられた第1の支持軸89を回転させる第1歯車手段となる歯車84と、切換え部材82の揺動端82aに設けられた第2の支持軸88を減速回転させる第2歯車手段となる歯車86と、歯車84と歯車86に噛み合うように配置された歯車85と、その出力軸87aに歯車85が装着されていて同歯車85を回転駆動する駆動モータ87とを有している。歯車84,85は、同一径、同一ピッチの歯部を有し、歯車86は歯車84,85よりも大径とされていて、その歯数が多くされている。本形態では、歯車85が駆動歯車を構成し、歯車84,86が従同歯車を構成するようにしているが、駆動モータ87で歯車84を駆動するようにしてもよい。この場合、歯車84が駆動歯車を構成し、歯車86が従同歯車を構成し、歯車85がアイドルギアとして構成される。あるいは駆動モータ87で歯車86を駆動するようにしてもよい。この場合、歯車86が駆動歯車を構成し、歯車84が従同歯車を構成し、歯車85がアイドルギアとして構成される。駆動モータ87には、正逆両後方に回転するようにステッピングモータが用いられている。
【0029】
本形態において、切換え部材81は、第1の位置から第2の位置へ移動する場合には、図5(b)に示すように、上面81cが搬送経路Rよりも下方に位置するように反時計周り方向に駆動手段83で揺動される。切換え部材82は、第1の位置から第2の位置へ移動する場合には、裏面81bが搬送経路R内を突出して遮る位置を占めるように時計周り方向に駆動手段83で揺動される。
【0030】
つまり、駆動モータ87は、第1の位置から第2の位置へ切換え部材81,82を移動する場合には、図5(a)に示すように歯車85を矢印aで示す時計周り方向に回転駆動し、第2の位置から第1の位置へ切換え部材81,82を移動する場合には、図5(b)に示すように歯車85を矢印bで示す反時計周り方向に回転駆動する。これら切換え部材81と切換え部材82の揺動幅となる角度θ1、θ2は、切換え部材81の揺動角θ1が切換え部材82の揺動角θ2よりも大きくなるように設定されている。切換え部材81,82の初期位置は第1の位置とされている。
【0031】
図3は、両面印刷装置1の操作パネルを示している。同図において操作パネル15には、製版スタートキー35、印刷スタートキー36、ストップキー37、テンキー38、7セグメントLEDからなる表示装置39、LCDからなる表示装置40、片面印刷を行う際に押下される片面印刷キー41と、両面印刷を行う際に押下される両面印刷キー42等の周知の構成が配設されている。
【0032】
図4は、孔版印刷装置1に用いられる制御手段10のブロック図である。同図において制御手段10は、CPU,ROM,RAM等を有する周知のコンピュータで構成されていて、操作パネル15からの動作信号及び各センサからの検知信号に基づいて印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、再給紙部9、剥離部30の各駆動手段と、切換手段8の駆動手段となる駆動モータ87の作動をそれぞれ制御する。ROMには孔版印刷装置1の動作プログラムが記憶されていると共に、RAMには各種数値や情報等が一時的に記憶され、CPUはRAMに記憶された数値や情報等及びROMから呼び出された動作プログラムに基づいて孔版印刷装置1の動作制御を行う。本形態おいては、制御手段10は、両面印刷の表面印刷時に切換え部材81,82が第2の位置を占め、裏面側への印刷時に第1の位置を占めるように駆動モータ87の作動を制御する。
【0033】
孔版印刷装置1の片面印刷と両面印刷並びにその時の切換手段8の動作について説明する。
【0034】
本形態において片面印刷とは、製版部3により1版分の長さ内に片面印刷用の画像が製版されたマスタ14を版胴外周面11aに巻装し、版胴11に対して接離自在なプレスローラ12で用紙Pを版胴11に押圧してその片面に印刷するものである。
【0035】
本形態において、両面印刷とは、製版部3により1版分の長さ内に第1の画像201と第2の画像202が並べて製版されたマスタ14を版胴外周面11aに巻装し、プレスローラ12で用紙Pを版胴11に押圧してその表面に印刷し、表面印刷済み用紙P1を再給紙部9から再度印刷部2へ給紙してその裏面に印刷を行うものである。
(片面印刷と切換手段の動作)
画像読取部7あるいはADF61に原稿がセットされ、片面印刷キー41が押下されて製版スタートキー35が押下されることにより片面印刷モードが設定される。片面印刷モードが設定されると、排版部5が作動して排版動作が行われた後に製版部3が作動して製版動作が行われ、製版済マスタ14が版胴外周面11aに巻装される。このとき、給紙部4からは版付けのための用紙Pが1枚給紙されて版付け動作が行われ、片面印刷待機状態となる。
【0036】
テンキー38で印刷枚数が置数された後に印刷スタートキー36が押下されると、給紙部4から用紙Pが連続的に給送されて片面印刷動作が行われる。ここでは、版胴11が印刷速度で回転するとともに、その回転タイミングに合わせてレジストローラ対53によって用紙Pが印刷部2に向かって給紙され、プレスローラ12の上昇により版胴外周面11aに押圧されることで、製版済マスタ14の製版画像が転写される。
【0037】
このとき、分離部30では、図6(a)に示すように、揺動駆動手段によって剥離爪31の先端が版胴外周面11aに近接する位置に置かれるとともに、剥離ファン32が作動して分離爪31と版胴外周面11aの間に送風が送られる。また、この時、駆動モータ87は駆動しないので、切換え部材81,82は第1の位置をしめたままである。
【0038】
このため、製版画像が転写された用紙、すなわち表面印刷済み用紙P1は、分離部30の機能によって版胴外周面11aから剥離され、その先端P1aが切換え部材81の上面81cに落下し、切換え部材82の上面82cを経て、図1に示すように、用紙搬送方向下流側の排紙搬送ユニット32へ案内され、排紙搬送ユニット32によって排紙トレイ33に排紙される。このような片面印刷の動作は、設定された印刷枚数に達するまで継続され、設定された印刷枚数に達すると片面印刷動作が完了して両面印刷装置1は再び片面印刷待機状態となる。
(両面印刷と切換手段の動作)
画像読取部7に原稿がセットされ両面印刷キー41が押下された後に製版スタートキー35が押下されることにより両面印刷モードが設定され、排版部5が作動して排版動作が行われた後に製版部3が作動して製版動作が行われ、版胴外周面11aに製版済マスタ14が巻装される。また、給紙部4からは版付けのための用紙Pが1枚給紙されて版付け動作が行われて、両面待機状態となる。
【0039】
テンキー38で印刷枚数が置数された後に印刷スタートキー36が押下されると、給紙部4から用紙Pが連続的に給送されて両面印刷動作が行われる。ここでは、版胴11が印刷速度で回転するとともに、その回転タイミングに合わせてレジストローラ対53によって用紙Pが印刷部2に向かって1枚給紙され、プレスローラ12の上昇により表面領域の分だけ版胴外周面11aに押圧される。そして、製版済マスタ14の第1の画像201が用紙Pの表面に転写される。
【0040】
このとき、分離部30では、図6(b)に示すように、揺動駆動手段によって剥離爪31の先端が版胴外周面11aに近接する位置に置かれるとともに、剥離ファン32が作動して分離爪31と版胴外周面11aの間に送風が送られるため、第1の画像201が転写された用紙、すなわち表面印刷済み用紙P1が、分離部30の機能によって版胴外周面11aから剥離されるとともに、駆動モータ87が正転方向に作動して、切換え部材81,82が図6(a)に示す第1の位置から図6(b)に示す第2の位置へと移動する。
【0041】
このため、印刷部2と排紙搬送ユニット32の間に形成された搬送経路Rが開放されるので、版胴外周面11aから分離された表面印刷済み用紙P1が搬送経路Rから再給紙部9へと繋がる搬送経路R1を介して再給紙部9へと案内される。
【0042】
また、切換え部材82が第2の位置を占めると、搬送経路Rを遮る位置を占め、その裏面82bが印刷部2側に向かうので、図6(c)に示すように分離された表面印刷済み用紙P1が、分離部30によって分離部30によって上手く分離されずに、直進した場合でも、用紙先端P1aが裏面82bに衝突して裏面82bの曲面によって搬送経路R1へと戻されて再給紙部9へと案内される。
【0043】
再給紙部9へ案内された表面印刷済み用紙P1は、図1に示すように印刷部2において版胴11の裏面領域とタイミングが合うように再給紙部9から給紙され、印刷されていない裏面に対して第2の画像202が転写される。ここで、駆動モータ87が逆転方向に作動して、切換え部材81,82が図6(b)に示す第2の位置から図6(a)に示す第1の位置へと移動する。
【0044】
このため、片面印刷時には解放された搬送経路Rが閉じされるので、第2の画像202が転写された用紙、すなわち表裏両面印刷済み用紙P2は、分離部30の機能によって版胴外周面11aから剥離され、その先端P2aが切換え部材81の上面81cに落下し、切換え部材82の上面82cを経て、図1に示すように、用紙搬送方向下流側の排紙搬送ユニット32へ案内され、排紙搬送ユニット32によって排紙トレイ33に排紙される。このような両面印刷の動作は、設定された印刷枚数に達するまで継続され、設定された印刷枚数に達すると両面印刷動作が完了して両面印刷装置1は再び両面印刷待機状態となる。
【0045】
このような構成によると、表面印刷済み用紙P1をプレスローラ12に向けて送り出し該プレスローラ12で反転させて印刷部2に向けて再給紙する再給紙部9または排紙部6に、印刷部2を通過した表面印刷済み用紙P1または表裏両面印刷済み用紙P2を案内する切換手段8が、版胴外周面11aから剥離された表面印刷済み用紙P1と表裏両面印刷済み用紙P2を排紙部6へ案内する第1の位置と、版胴外周面11aから剥離された表面印刷済み用紙P1を再給紙部9へ案内する第2の位置とを占めるように互いに反対方向に揺動自在に支持された一対の切換え部材81,82と、切換え部材81,82を第1の位置と第2の位置とに切換え動作する駆動手段83とを有するので、切換え部材81,82が第1の位置を占めているときは従来の切換え部材と同等の長さを維持でき、第2の位置を占めるときには、分割した分だけ短くできる。このため、切換え部材81,82が第1の位置を占めているときは搬送性を確保でき、第2の位置を占めた場合には用紙先端P1aを版胴外周面11aから剥離する剥離部30からの送風を遮る事がなく、版胴11からの表面印刷済み用紙P1の隔離を適切に行え、ジャムの発生や剥離遅れによる画像面の汚れを抑制することができる。
【0046】
また、本形態においては、切換え部材81,82を用紙搬送方向に並列配置し、用紙搬送方向下流側の切換え部材82の全長L1を用紙搬送方向上流側の切換え部材81の全長L2よりも短く形成したので、切換え部材82が第2の位置を占めた時に、搬送経路Rからの突出する量を従来構成に比べて低くすることができ、より剥離部30からの送風を遮る事がなくなり、版胴11からの表面印刷済み用紙P1の隔離をより適切に行え、ジャムの発生や剥離遅れによる画像面の汚れを一層抑制することができる。
【0047】
本形態によれば、用紙搬送方向下流側の切換え部材82の揺動角θ2よりも用紙搬送方向上流側の切換え部材81の揺動角θ1を大きく設定しているので、搬送経路Rを大きく開放することができ、版胴11からの分離された表面印刷済み用紙P1をよりスムーズに再給紙部9に案内することができ、ジャムの発生をより少なくできると共に、用紙搬送方向下流側に位置する切換え部材82と表面印刷済み用紙P1との間隔を十分に確保でき、切換え部材82と表面印刷済み用紙P1との接触による画像面の汚れの発生をより低減することができる。
(第2の実施形態)
本形態は、図7から図9に示すように、第1の実施形態における駆動手段8の構成を駆動手段180として切換手段8Aを構成したものである。このため、切換え部材81,82の構成は第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0048】
駆動手段180は、切換え部材81,82のそれぞれの揺動端81a,82aにそれぞれの一端181a,182aが固定され、それぞれの他端181b,182bが自由端を成す第1及び第2のリンクレバー181,182と、第1及び第2のリンクレバー181,182の自由端にピン結合された連結リンクレバー183と、第2のリンクレバー182を揺動させる駆動部材となる電磁ソレノイド184とを備えている。
【0049】
第1のリンクレバー181は、第2のリンクレバー182よりも、その全長が短く形成されている。各リンクレバー181,182は、切換え部材81,82が図7(a)に示す第1の位置を占めるときには、支持軸89,88を中心にして略垂直に垂れさがった状態にあり、切換え部材81,82が図7(b)に示す第2の位置を占めるときには、支持軸88,89を中心に反時計周りに揺動するように構成されている。また、第1のリンクレバー181の支持軸89を中心とした第1の位置と第2位置との間への揺動角θ4は、支持軸88を中心とした第2のリンクレバー182の揺動角θ3よりも大きく設定されている。
【0050】
電磁ソレノイド184は、本体184aと可動ロッド184bとを備えていて、可動ロッド184bの先端が第2のリンクレバー182の他端182b寄りにピン結合されている。可動ロッド184bは、図8に示すように孔版印刷装置1の制御手段10Aに信号線を介して接続されている。制御手段10Aは、片面印刷時にはオフされていて、両面印刷時の表面印刷時には可動ロッド184bを図7(b)に示すように押し出すように、電磁ソレノイド182の作動するように制御する。
【0051】
このような構成の駆動手段182を備えた切換手段8Aによると、片面印刷時には、電磁ソレノイド182は作動しないので、切換え部材81,82は第1の位置を占めたままである。このため、表面印刷済み用紙P1は、分離部30の機能によって版胴外周面11aから剥離され、その先端P1aが切換え部材81の上面81cに落下し、切換え部材82の上面82cを経て、図1に示すように、用紙搬送方向下流側の排紙搬送ユニット32へ案内され、排紙搬送ユニット32によって排紙トレイ33に排紙される。このような片面印刷の動作は、設定された印刷枚数に達するまで継続され、設定された印刷枚数に達すると片面印刷動作が完了して両面印刷装置1は再び片面印刷待機状態となる。
【0052】
一方、両面印刷時の表面印刷時には、電磁ソレノイド182が作動するので、切換え部材81,82が図7(a)に示す第1の位置から図7(b)に示す第2の位置へと移動する。このため、印刷部2と排紙搬送ユニット32の間に形成された搬送経路Rが開放されるので、版胴外周面11aから分離された表面印刷済み用紙P1が搬送経路Rから再給紙部9へと繋がる搬送経路R1を介して再給紙部9へと案内される。
【0053】
切換え部材82が第2の位置を占めると、搬送経路Rを遮る位置を占め、その裏面82bが印刷部2側に向かうので、図6(c)に示すように分離された表面印刷済み用紙P1が、分離部30によって分離部30によって上手く分離されずに、直進した場合でも、用紙先端P1aが裏面82bに衝突して裏面82bの曲面によって搬送経路R1へと戻されて再給紙部9へと案内される。
【0054】
再給紙部9へ案内された表面印刷済み用紙P1は、図1に示すように印刷部2において版胴11の裏面領域とタイミングが合うように再給紙部9から給紙され、印刷されていない裏面に対して第2の画像202が転写される。ここで、電磁ソレノイド182の作動が停止すると、切換え部材81,82が図7(b)に示す第2の位置から図7(a)に示す第1の位置へと移動する。
【0055】
このため、片面印刷時には解放された搬送経路Rが閉じされるので、第2の画像202が転写された用紙、すなわち表裏両面印刷済み用紙P2は、分離部30の機能によって版胴外周面11aから剥離され、その先端P2aが切換え部材81の上面81cに落下し、切換え部材82の上面82cを経て、図1に示すように、用紙搬送方向下流側の排紙搬送ユニット32へ案内され、排紙搬送ユニット32によって排紙トレイ33に排紙される。このような両面印刷の動作は、設定された印刷枚数に達するまで継続され、設定された印刷枚数に達すると両面印刷動作が完了して両面印刷装置1は再び両面印刷待機状態となる。このような形態としても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明にかかる両面印刷可能な孔版印刷装置の概略構成図である。
【図2】マスタに第1の画像と第2の画像が製版された状態を示す概要平面図である。
【図3】印刷装置の操作部の一形態を示す拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における制御系のブロック図である。
【図5】(a)は第1の実施形態における切換手段の構成と切換え部材の第1の位置を示す拡大図、(b)は切換え部材の第2の位置を示す拡大図である。
【図6】(a)は第1の位置を占めた切換え部材の機能を示す拡大図、(b)は第2の位置を占めた切換え部材の機能を示す拡大図、(c)は第2の位置を占めた切換え部材の別な機能を示す拡大図でする。
【図7】(a)は第2の実施形態における切換手段の構成と切換え部材の第1の位置を示す拡大図、(b)は切換え部材の第2の位置を示す拡大図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における制御系のブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1 孔版印刷装置
2 印刷部
6 排紙部
8,8A 切換手段
9 再給紙部
11a 版胴外周面
12 押圧手段
14 製版済みマスタ
18,180 駆動手段
30 剥離部
81,82 一対の切換え部材
81a,82a 切換え部材の揺動端
83 駆動手段
84 第1歯車手段
85,86 第2歯車手段
87 駆動モータ
88 第2の支持軸
89 第1の支持軸
181,182 第1及び第2のリンクレバー
181a,182a リンクレバーの一端
181b,182b リンクレバーの一端
183 連結リンクレバー
184 駆動部材
P 用紙
P1 表面印刷済み用紙
X 用紙搬送方向
L1 用紙搬送方向下流側の切換え部材の全長
L2 用紙搬送方向上流側の切換え部材の全長
θ1〜θ4 切換え部材の揺動幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴の外周面に巻着された製版済みマスタに押圧手段で用紙を押し付けることで当該用紙の表面あるいは表裏両面に印刷を行う印刷部と、前記印刷部で印刷された用紙を前記版胴の外周面から剥離する剥離部と、前記剥離部で剥離された用紙が排出される排紙部と、前記印刷部で表面印刷されて前記剥離部によって剥離された表面印刷済み用紙を保持し、その後に該表面印刷済み用紙を前記押圧手段に向けて送り出し該押圧手段で反転させて前記印刷部に向けて再給紙する再給紙部と、前記印刷部を通過した用紙を前記再給紙部または前記排紙部に案内する切換手段とを有し、前記版胴の1回転で用紙の両面に印刷可能な孔版印刷装置において、
前記切換手段は、
前記版胴の外周面から剥離された用紙を前記排紙部へ案内する第1の位置と、前記版胴外周面から剥離された表面印刷済み用紙を前記再給紙部へ案内する第2の位置とを占めるように互いに反対方向に揺動自在に支持された一対の切換え部材と、
前記一対の切換え部材を第1の位置と第2の位置とに切換え動作する駆動手段とを有することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
前記一対の切換え部材は、用紙搬送方向に並列配置されていて、用紙搬送方向下流側の切換え部材の全長が用紙搬送方向上流側の切換え部材の全長よりも短く形成されていることを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
【請求項3】
前記用紙搬送方向下流側より用紙搬送方向上流側の切換え部材の揺動幅が大きく設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の孔版印刷装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記用紙搬送方向上流側の切換え部材の揺動端に設けられた第1の支持軸を回転させる第1歯車手段と、第1歯車手段と噛み合うように配置され、前記用紙搬送方向下流側の切換え部材の揺動端に設けられた第2の支持軸を減速回転させる第2歯車手段と、第1歯車手段又は第2歯車手段を回転する駆動モータとを有することを特徴とする請求項2または3記載の孔版印刷装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記用紙搬送方向上流側及び用紙搬送方向下流側の切換え部材のそれぞれの揺動端にそれぞれの一端が固定され、それぞれの他端が自由端を成す第1及び第2のリンクレバーと、第1及び第2のリンクレバーの自由端にピン結合された連結リンクレバーと、前記何れかのリンクレバーを揺動させる駆動部材とを有し、
第1のリンクレバーが第2のリンクレバーよりも短く設定されていることを特徴とする請求項2または3記載の孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−196107(P2009−196107A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37360(P2008−37360)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】