説明

孔版印刷装置

【課題】如何なる用紙を使用しても両面印刷時において画像位置を正確に調整することが可能な孔版印刷装置を提供する。
【解決手段】版胴11及び押圧手段12を有する印刷部2と、補助トレイ8及び再給紙搬送手段19及び再給紙レジスト手段18を有し印刷部2においてその表面に印刷画像が形成された用紙Pを一時的に貯容した後に印刷部2に向けて再給紙する再給紙手段9とを具備し、用紙Pの一方の面に表面画像を印刷する表面印刷工程を行った後に用紙Pの他方の面に裏面画像を印刷する裏面印刷工程を行う両面印刷が可能な孔版印刷装置1において、回転中における版胴11の位置を検知する版胴位置検知手段46と再給紙手段9により再給紙された用紙Pの先端位置を検知する用紙先端位置検知手段47とを設け、版胴11の位置と用紙Pの先端位置とに基づいて再給紙レジスト手段18の周速度を制御手段により制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再給紙手段を有し両面印刷を行うことが可能な孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法としてデジタル式感熱孔版印刷が知られている。これは、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせたマスタに微細な発熱素子を複数有するサーマルヘッドを接触させ、この発熱素子に対しパルス的に通電を行いながらマスタをプラテンローラ等の搬送手段で搬送することにより、マスタの熱可塑性樹脂フィルムに画像情報に基づいた穿孔画像を熱溶融穿孔製版した後、この穿孔製版されたマスタを多孔性円筒状の版胴に巻装させ、プレスローラ等の押圧手段によって用紙を版胴外周面に押圧させることで版胴内周面に供給されたインキを版胴開孔部及びマスタ穿孔部から滲出させ、このインキを用紙に転移させることにより用紙上に印刷画像を得るものである。
【0003】
上述した孔版印刷において、最近では用紙の消費量及び書類の保管スペースを低減させるため等の目的から用紙の両面に印刷を行う両面印刷が頻繁に行われるようになってきている。この一例として、版胴の回転方向に第1製版画像と第2製版画像とが2面並んだ分割製版済みマスタを用い、給紙部より給紙された1枚目の用紙の表面に一方の製版画像を印刷した後にこの用紙を補助トレイに案内し、給紙部より給送された2枚目の用紙の表面に一方の製版画像を印刷した後にこの用紙を補助トレイに案内すると共に、補助トレイより1枚目の用紙を再給紙してこの裏面に他方の製版画像を印刷してこの用紙を排紙トレイに排出し、この動作を連続して行うことにより1工程で両面印刷物を得る孔版印刷装置が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−224633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の孔版印刷装置では、一方の面に印刷が終了した用紙を再給紙手段に送り、再給紙手段から印刷部に向けて反転した状態で再給紙することにより他方の面に印刷を行っているが、その際に再給紙手段で用紙を一時停止させてレジスト合わせ及びスキューの矯正を行っている。しかし、印刷に使用される用紙として更紙等の薄紙からはがき等の厚紙まで多種多様のものがあるため、サイズや重量が異なることにより用紙を印刷部に向けて再給紙する際に搬送抵抗によって滑りが生じたり、用紙停止位置が変動したりすることによりプレスローラと版胴との当接位置に到達する用紙先端位置と版胴との相対位置がばらつき、画像位置がずれてしまうという問題点がある。
【0006】
上述した技術では、用紙一時停止位置までの再給紙搬送手段による搬送速度を変えることができるが、再給紙プラテンローラの揺動により用紙がプレスローラに接触してからプレスローラと版胴との当接部に至るまでの用紙搬送速度は変化させることができず、上述した問題点は解決できない。また、プレスローラ及び再給紙プラテンローラの回転周速度は版胴の回転周速度とほぼ同等とする必要があり、用紙を搬送する搬送手段の周速度を変化させることができないことから上述した問題点の解決は困難である。
【0007】
本発明は上述した各問題点を解決し、如何なる用紙を使用しても両面印刷時において画像位置を正確に調整することが可能な孔版印刷装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、版胴及び前記版胴に対して接離自在に設けられた押圧手段を有する印刷部と、用紙を貯容する補助トレイ及び前記補助トレイ上の用紙を搬送する再給紙搬送手段及び前記再給紙搬送手段により搬送された用紙を前記押圧手段に押圧する再給紙レジスト手段を有し前記印刷部においてその表面に印刷画像が形成された用紙を一時的に貯容した後に前記印刷部に向けて再給紙する再給紙手段とを具備し、用紙の一方の面に表面画像を印刷する表面印刷工程を行った後に該用紙の他方の面に裏面画像を印刷する裏面印刷工程を行う両面印刷が可能な孔版印刷装置において、前記再給紙レジスト手段がレジスト駆動手段によって周速度可変に回転駆動され、回転中における前記版胴の位置を検知する版胴位置検知手段と、前記再給紙手段により再給紙された用紙の先端位置を検知する用紙先端位置検知手段と、前記レジスト駆動手段の作動を制御して前記再給紙レジスト手段の周速度を制御する制御手段とを有し、前記版胴位置検知手段により検知された前記版胴の位置と前記用紙先端位置検知手段により検知された用紙の先端位置とに基づいて前記制御手段が前記レジスト駆動手段の作動を制御して前記再給紙レジスト手段の周速度を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、さらに前記用紙先端位置検知手段は前記再給紙レジスト手段の用紙搬送方向下流側に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、さらに前記制御手段は用紙のサイズ及び/または厚みに基づいて前記再給紙レジスト手段の周速度をさらに制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の孔版印刷装置において、さらに前記制御手段は環境温度に基づいて前記再給紙レジスト手段の周速度をさらに制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、版胴位置検知手段により検知された版胴の位置と用紙先端位置検知手段により検知された用紙の先端位置とに基づいて制御手段がレジスト駆動手段の作動を制御して再給紙レジスト手段の周速度を制御することにより、再給紙手段から印刷部に向けて再給紙される用紙上の正規の位置に裏面画像を形成することができ、画像位置ずれのない良好な両面印刷物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を採用した孔版印刷装置を示している。この孔版印刷装置は、特開2003−200645号に開示された両面印刷装置と関連した構成を有しているので、各部位の説明をできるだけ省略する。
【0014】
図1において孔版印刷装置1は、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、補助トレイ8を有する再給紙手段9、切替部材10等を有している。
【0015】
装置本体42のほぼ中央に配置された印刷部2は、版胴11と押圧手段としてのプレスローラ12とを有している。版胴11は装置本体42に回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段によって回転駆動される。版胴11はその外周面に開閉自在なクランパ13を有しており、両面印刷時において版胴11の外周面には製版部3で製版された分割製版済みマスタ14が巻装される。分割製版済みマスタ14には表面画像に応じた第1製版画像と裏面画像に応じた第2製版画像とが形成されており、各製版画像間には未製版部分が形成されている。分割製版済みマスタ14は、版胴11上において、第1製版画像が図1に示す表面領域に、第2製版画像が同裏面領域に、未製版部分が同中間領域にそれぞれ対応するように巻装される。版胴11の外周面近傍には、版胴11の位置を検知する版胴位置検知手段としてのロータリエンコーダ46が設けられている。ロータリエンコーダ46からの版胴位置検知信号は後述する制御手段30に出力される。
【0016】
版胴11の下方にはプレスローラ12が配設されている。フッ素樹脂等の撥水性を有する弾性体からなるプレスローラ12は図示しないアーム部材にその両端を回転自在に支持されており、図示しないアーム部材は図示しない揺動手段によって揺動自在に支持されている。プレスローラ12はその周面が版胴11より離間する図1に示す離間位置と、その周面が版胴11上の分割製版済みマスタ14に圧接する圧接位置とを選択的に占める。プレスローラ12の周面近傍には、プレスローラ12の周面に接触してクリーニングを行うクリーニングローラ16が配設されている。クリーニングローラ16は、図示しない駆動手段によって回転駆動される。
【0017】
プレスローラ12の右方近傍には再給紙手段9から送られた表面印刷済みの用紙Pをプレスローラ12の周面に沿わせて搬送するための再給紙案内部材17が配設されており、プレスローラ12の下方には補助トレイ8上に貯留された用紙Pをプレスローラ12の周面に接触させて送り出す再給紙レジスト手段としての再給紙レジストローラ18が配設されている。再給紙レジストローラ18には、図示しない駆動手段によって駆動されるレジスト駆動手段としての駆動部54が、図示しないフレキシブルジョイントやユニバーサルジョイント等の継ぎ手を介して接続されている。駆動部54は速度可変型のモータや変速ギヤ等を有しており、再給紙レジストローラ18の回転周速度を変更自在に構成されている。再給紙レジストローラ18の初期時における周速度は、プレスローラ12の周速度とほぼ同じとなるように設定されている。駆動部54による再給紙レジストローラ18の周速度の制御は、後述する制御手段30によって行われる。
【0018】
プレスローラ12の左下方には上面に補助トレイ8を有する再給紙搬送手段としての再給紙搬送ユニット19が配設されており、これには再給紙位置決め部材20が一体的に設けられている。再給紙搬送ユニット19の上方には、補助トレイ8の上面に沿って移動自在な用紙受け板21が配設されている。これら補助トレイ8、再給紙案内部材17、再給紙レジストローラ18、再給紙位置決め部材20、再給紙搬送ユニット19及び用紙受け板21によって再給紙手段9が構成されている。
【0019】
プレスローラ12の外周面近傍であって再給紙レジストローラ18と再給紙案内部材17との間の位置には、再給紙レジストローラ18及び再給紙搬送ユニット19によって搬送されてくる用紙Pの先端を検知する用紙先端位置検知手段としての用紙先端検知センサ47が配設されている。用紙先端検知センサ47からの用紙先端位置検知信号は後述する制御手段30に出力される。
【0020】
版胴11とプレスローラ12との接触位置の左方であって、用紙Pの搬送経路上には切替部材10が配設されている。切替部材10はその用紙搬送方向下流側端部を装置本体42に回動自在に支持されており、図示しない移動手段によって移動され、図1に実線で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置とを選択的に占める。版胴11とプレスローラ12との間を通過した用紙Pは、切替部材10が第1の位置を占めているときに排紙部6へと案内され、切替部材10が第2の位置を占めているときに補助トレイ8へと案内される。
【0021】
印刷部2の右上方には製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ22をロール状に巻成したマスタロールを保持するマスタ保持部材23、プラテンローラ24、サーマルヘッド25、マスタ切断手段26、マスタストック部27、テンションローラ対28、反転ローラ対29等を有する周知の構成であり、両面印刷時において製版部3では分割製版済みマスタ14が作成される。
【0022】
製版部3の下方には給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙トレイ48、周知の給紙ローラ、分離ローラ、分離パッド、レジストローラ対52等を有している。上面に多数の用紙Pを積載可能な給紙トレイ48は装置本体42に上下動自在に支持されており、図示しない昇降手段によって上下動される。筐体状をなす給紙トレイ48は、積載された用紙Pのサイズを検出する用紙サイズ検知センサ49をその内部に複数有しており、その上面には一対のサイドフェンス50が配設されている。各サイドフェンス50は、図2に示すようにラック部50aをそれぞれ一体的に有しており、給紙トレイ48の内部には各ラック部50aに噛合するピニオン51が配設されている。ピニオン51にはエンコーダタイプの用紙サイズ検知センサ51aが接続されており、各サイドフェンス50は用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に向けて互いに同期して移動される。給紙トレイ48上に積載された用紙Pは、各センサ49によってその搬送方向のサイズを、センサ51aによってその幅方向のサイズをそれぞれ検知される。
【0023】
レジストローラ対52の用紙搬送方向上流側には、用紙Pの透過光から用紙Pの厚みを測定する発光素子と受光素子とを有する用紙厚み検知センサ53が配設されている。用紙厚み検知センサ53は、予め設定されている値を基準として検知値から搬送されてくる用紙Pの厚みを測定(推定)する。
【0024】
印刷部2の左上方に配設された排版部5は、上排版部材、下排版部材、排版ボックス、圧縮板等を有する周知の構成であり、使用済みの分割製版済みマスタ14を版胴11の外周面より剥離して排版ボックスの内部に廃棄する。
【0025】
排版部5の下方には排紙部6が配設されている。排紙部6は、剥離爪31、排紙搬送ユニット32、排紙トレイ33、剥離ファン34等を有している。剥離爪31は図示しない揺動手段によってその先端部が版胴11の外周面に対して近接・離間自在に設けられており、近接位置を占めた際に版胴11の外周面上より用紙Pを剥離する。排紙搬送ユニット32は、駆動ローラ、従動ローラ、無端ベルト、吸引ファン等を有しており、無端ベルトの上面に印刷済みの用紙Pを吸引しつつ図1の矢印方向に搬送する。排紙トレイ33は1個のエンドフェンスと一対のサイドフェンスとを有しており、その上面に印刷済みの用紙Pを積載する。剥離ファン34は剥離爪31の上方に配設されており、版胴11の外周面に向けて送風を行うことにより表面印刷工程を終えて切替部材10によって版胴11の外周面上から剥離される用紙P、及び裏面印刷工程を終えて剥離爪31によって版胴11の外周面上から剥離される用紙Pの先端をそれぞれ送風によって浮き上がらせる。
【0026】
装置本体の上部には画像読取部7が配設されている。画像読取部7は、図示しないコンタクトガラス、コンタクトガラスに対して接離自在に設けられた図示しない圧板、原稿画像を走査して読み取るそれぞれ図示しない反射ミラー及び蛍光灯、走査された画像を集束する図示しないレンズ、集束された画像を処理する図示しない画像センサ等を有している。
【0027】
図3は、孔版印刷装置1の操作パネルを示している。同図において操作パネル15には、製版スタートキー35、印刷スタートキー36、ストップキー37、テンキー38、7セグメントLEDからなる表示装置39、LCDからなる表示装置40、両面印刷を行う際に押下される両面印刷キー41等が配設されている。
【0028】
図4は、孔版印刷装置1に用いられる制御手段のブロック図である。同図において制御手段30は、内部にCPU43、ROM44、RAM45等を有するマイクロコンピュータであり、操作パネル15からの動作信号、ロータリエンコーダ46からの版胴位置検知信号及び用紙先端検知センサ47からの用紙先端位置検知信号に基づいて印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、再給紙手段9、切替部材10の作動をそれぞれ制御する。ROM44には孔版印刷装置1の動作プログラムが記憶されていると共に、RAM45には各種数値や情報等が一時的に記憶され、CPU43はRAM45に記憶された数値や情報等及びROM44から呼び出された動作プログラムに基づいて孔版印刷装置1の動作制御を行う。
【0029】
上述した孔版印刷装置1では、画像読取部7に原稿がセットされ製版スタートキー35が押下されることにより、排版部5が作動して排版動作が行われた後に製版部3が作動して製版動作が行われ、版胴11に製版済みマスタが巻装されて片面印刷待機状態となる。その後、印刷枚数が置数された後に印刷スタートキー36が押下されることにより、給紙部4より用紙Pが連続的に給送されて片面印刷動作が行われる。置数された印刷枚数に達すると片面印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び片面印刷待機状態となる。
【0030】
また、画像読取部7に原稿がセットされ両面印刷キー41が押下された後に製版スタートキー35が押下されることにより、排版部5が作動して排版動作が行われた後に製版部3が作動して製版動作が行われ、版胴11に分割製版済みマスタ14が巻装されて両面印刷待機状態となる。その後、印刷枚数が置数された後に印刷スタートキー36が押下されることにより、給紙部4より用紙Pが連続的に給送されて両面印刷が行われる。以下に、両面印刷動作を説明する。
【0031】
版胴11が所定の角度まで回転してその表面領域がプレスローラ12と対応する所定位置を占めると、プレスローラ12が圧接位置を占めることにより用紙Pが版胴11上の分割製版済みマスタ14の第1製版画像に圧接され、その一方の面に表面画像を転写される。表面印刷済み用紙となった用紙Pは、第2の位置を占めている切替部材10の先端によって版胴11の外周面より剥離され、再給紙搬送ユニット19へと送られる。このとき、用紙Pはその先端を用紙受け板21によって受け止められ、後端側から補助トレイ8上に載置される。補助トレイ8上の用紙Pは再給紙搬送ユニット19によって図1の矢印方向に搬送され、その先端を再給紙位置決め部材20に当接させた状態で一時停止される。
【0032】
1枚目の用紙Pが補助トレイ8上に案内されている間も版胴11は回転を継続しており、給紙部4からは1枚目の用紙Pと同じタイミングで2枚目の用紙Pが給送される。給送された2枚目の用紙Pは1枚目の用紙Pと同様にプレスローラ12によってその一方の面に表面画像を転写された後、第2の位置を占めている切替部材10によって再給紙搬送ユニット19へと送られる。給紙部4から2枚目の用紙Pが給送された後、版胴11の裏面領域がプレスローラ12と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングで、再給紙レジストローラ18が作動して補助トレイ8上に貯留されている1枚目の用紙Pがプレスローラ12の周面に圧接される。プレスローラ12の周面に圧接された1枚目の用紙Pは、版胴11に圧接して従動回転しているプレスローラ12の回転力によって版胴11との当接部に向けて搬送され、分割製版済みマスタ14の第2製版画像に圧接されることによりその他方の面に裏面画像を転写される。
【0033】
裏面画像を転写されて両面印刷済み用紙となった1枚目の用紙Pは第1の位置を占めた切替部材10によって排紙部6へと案内され、剥離ファン34からの送風によってその先端部を浮き上げられた後、剥離爪31の先端によって版胴11の外周面より剥離される。剥離された印刷済みの用紙Pは排紙搬送ユニット32へと送られた後、搬送されて排紙トレイ33上に排出積載される。以下、上述の動作が設定された印刷枚数を消化するまで繰り返され、設定された枚数の両面印刷動作が完了すると各部位の作動が停止して孔版印刷装置1は再び両面印刷待機状態となる。
【0034】
上述した両面印刷動作時において、版胴11の裏面領域がプレスローラ12と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングで再給紙レジストローラ18が作動することにより、補助トレイ8上に貯留されている用紙Pがプレスローラ12の周面に圧接されることで版胴11に圧接して従動回転しているプレスローラ12の回転力によって版胴11とプレスローラ12との当接部に向けて搬送されるが、「発明が解決しようとする課題」の欄でも述べたように、各種の要因によって版胴11とプレスローラ12との当接位置に到達する用紙先端位置と版胴との相対位置がばらつくことにより、用紙Pの裏面画像の位置がずれてしまうという問題点がある。本発明はこの問題点を解決すべく、ロータリエンコーダ46からの版胴位置検知信号及び用紙先端位置検知センサ47からの先端位置検知信号に基づいて、制御手段30が駆動部54の作動を制御して再給紙レジストローラ18の周速度を変更する構成を採用している。以下に制御手段30による再給紙レジストローラ18の周速度制御について説明する。
【0035】
ROM44には、版胴11に巻装された分割製版済みマスタ14の第2製版画像開始位置に対応したロータリエンコーダ46のパルス数と再給紙手段9から用紙Pが印刷部2に向けて再給紙される際に用紙先端検知センサ47がオンするタイミングとの関係が予め記憶されており、本実施形態では例えば図5に示すように、版胴パルスの5パルス目に用紙先端検知センサ47がオンすれば用紙P上の正規の位置に裏面画像が形成されるように構成されている。
【0036】
上述の構成において、例えば版胴パルスの7パルス目に用紙先端検知センサ47がオンした場合には、再給紙手段9から再給紙される用紙Pの先端位置が基準位置よりも2パルス分だけ遅れていると制御手段30が判断し、制御手段30は用紙Pが版胴11とプレスローラ12との当接位置に搬送されるまでの間に遅れた2パルス分の搬送量を回復するように再給紙レジストローラ18の周速度を増速させるべく駆動部54の作動を制御する。この制御に基づいた増速により再給紙レジストローラ18による過分送りが用紙Pに作用し、これにより用紙Pが前方に押し出される形で搬送されることにより2パルス分の遅れが回復し、用紙P上の正規の位置に裏面画像が形成される。
【0037】
また、版胴パルスの3パルス目に用紙先端検知センサ47がオンした場合には、再給紙手段9から再給紙される用紙Pの先端位置が基準位置よりも2パルス分だけ進んでいると制御手段30が判断し、制御手段30は用紙Pが版胴11とプレスローラ12との当接位置に搬送されるまでの間に進んだ2パルス分の搬送量を消滅するように再給紙レジストローラ18の周速度を減速させるべく駆動部54の作動を制御する。この制御に基づいた減速により再給紙レジストローラ18によるブレーキ力が用紙Pに作用し、これにより用紙Pが後方に引き戻される形で搬送されることにより2パルス分の進みが消滅し、用紙P上の正規の位置に裏面画像が形成される。
【0038】
上述したように本発明によれば、ロータリエンコーダ46により検知された版胴11の位置と用紙先端検知センサ47により検知された用紙の先端位置とに基づいて制御手段30が駆動部54の作動を制御して再給紙レジストローラ18の周速度を変更することにより、再給紙手段9から印刷部2に向けて再給紙される用紙P上の正規の位置に裏面画像を形成することができ、画像位置ずれのない良好な両面印刷物を得ることが可能となる。
【0039】
上記実施形態の変形例として、使用される用紙Pのサイズ及び/または厚みに基づいて再給紙レジストローラ18の周速度をさらに変更すべく駆動部54を制御する構成としてもよい。用紙Pのサイズは各センサ49,51aから、また用紙Pの厚みはセンサ53から自動検知可能である。このとき用紙Pが標準紙(例えばA4サイズ上質紙)よりも小さい場合あるいは薄い場合には、制御手段30は再給紙手段9から用紙Pが印刷部2に向けて再給紙される際に用紙先端検知センサ47がオンしたときのロータリエンコーダ46のパルス数の標準値との差分(上記例では2パルス分)を上記実施形態(標準紙使用時)よりも小さく(例えば1.5パルス分等)し、用紙Pが標準紙よりも大きい場合あるいは厚い場合には、制御手段30は前記差分を標準紙使用時よりも大きく(例えば3パルス分等)する。
【0040】
上述の構成によれば、小さいあるいは薄い用紙が搬送される際には標準紙に比して滑りが少ないことから用紙搬送が標準紙よりも早めに行われることを、また大きいあるいは厚い用紙が搬送される際には標準紙に比して滑りが多いことから用紙搬送が標準紙よりも遅れて行われることをそれぞれ相殺することができ、用紙Pの種類の違いによる用紙搬送形態の多様化にそれぞれ対応した用紙搬送制御を行うことができる。
【0041】
上記実施形態の他の変形例として、環境温度(及び/または湿度)に基づいて再給紙レジストローラ18の周速度をさらに変更すべく駆動部54を制御する構成としてもよい。環境温度(及び/または湿度)は装置本体42内部に設けられた図示しない温度計(及び/または湿度計)によって測定され、この測定値は制御手段30に出力される。このとき温度が標準温度(例えば20℃)よりも高い場合には制御手段30は前記差分を標準温度時よりも小さくし、温度が標準温度よりも低い場合には制御手段30は前記差分を標準温度時よりも大きくする。
【0042】
上述の構成によれば、温度が高い場合には標準温度時に比して滑りが少ないことから用紙搬送が標準紙よりも早めに行われることを、また温度が低い場合には標準温度時に比して滑りが多いことから用紙搬送が標準紙よりも遅れて行われることをそれぞれ相殺することができ、環境条件の違いによる用紙搬送形態の多様化にそれぞれ対応した用紙搬送制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両面印刷が可能な孔版印刷装置の概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる給紙トレイ内部の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる操作パネルの概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いられる制御手段のブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態における再給紙レジストローラの周速度制御を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0044】
1 孔版印刷装置
2 印刷部
8 補助トレイ
9 再給紙手段
11 版胴
12 押圧手段(プレスローラ)
18 再給紙レジスト手段(再給紙レジストローラ)
19 再給紙搬送手段(再給紙搬送ユニット)
30 制御手段
46 版胴位置検知手段(ロータリエンコーダ)
47 用紙先端位置検知手段(用紙先端検知センサ)
54 レジスト駆動手段(駆動部)
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴及び前記版胴に対して接離自在に設けられた押圧手段を有する印刷部と、
用紙を貯容する補助トレイ及び前記補助トレイ上の用紙を搬送する再給紙搬送手段及び前記再給紙搬送手段により搬送された用紙を前記押圧手段に押圧する再給紙レジスト手段を有し前記印刷部においてその表面に印刷画像が形成された用紙を一時的に貯容した後に前記印刷部に向けて再給紙する再給紙手段とを具備し、
用紙の一方の面に表面画像を印刷する表面印刷工程を行った後に該用紙の他方の面に裏面画像を印刷する裏面印刷工程を行う両面印刷が可能な孔版印刷装置において、
前記再給紙レジスト手段がレジスト駆動手段によって周速度可変に回転駆動され、回転中における前記版胴の位置を検知する版胴位置検知手段と、前記再給紙手段により再給紙された用紙の先端位置を検知する用紙先端位置検知手段と、前記レジスト駆動手段の作動を制御して前記再給紙レジスト手段の周速度を制御する制御手段とを有し、前記版胴位置検知手段により検知された前記版胴の位置と前記用紙先端位置検知手段により検知された用紙の先端位置とに基づいて前記制御手段が前記レジスト駆動手段の作動を制御して前記再給紙レジスト手段の周速度を制御することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の孔版印刷装置において、
前記用紙先端位置検知手段は前記再給紙レジスト手段の用紙搬送方向下流側に設けられていることを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の孔版印刷装置において、
前記制御手段は用紙のサイズ及び/または厚みに基づいて前記再給紙レジスト手段の周速度をさらに制御することを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の孔版印刷装置において、
前記制御手段は環境温度に基づいて前記再給紙レジスト手段の周速度をさらに制御することを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−748(P2010−748A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163156(P2008−163156)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)