説明

孔版印刷装置

【課題】孔版印刷装置において、機密情報の適切に保護しつつユーザの利便性を確保する。
【解決手段】ユーザからの機密設定指示、印刷指示、認証情報の入力等を受け付けるパネル部100と、第1の印刷ドラム45に対する機密設定指示を受け付け、その指示を受け付けたときに第1の印刷ドラム45に巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止する機密モードを設定するとともに、その指示を出したユーザの認証情報を第1のメモリ45に記録させる機密モード設定部90と、第1の印刷ドラム45に機密モードが設定されているときに、パネル部100により第1の印刷ドラム45による印刷指示を受け付けると、その指示を出したユーザの認証情報を第1のメモリ45に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば第1の印刷ドラム45による印刷を許可する印刷制御部92とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ドラムを備え、その印刷ドラムに製版済み孔版原紙を巻装して印刷を行う孔版印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製版済孔版原紙が外周面に巻着されて回転する印刷ドラムと、この印刷ドラムに圧接されて回転するプレスローラとの間に印刷用紙を挿入し、印刷ドラム内のインクを製版済孔版原紙における孔から押し出し、インクを印刷用紙に転写させて印刷を行う孔版印刷装置が提案されている。
【0003】
上記孔版印刷装置においては、印刷したい文書のデータに基づいて穿孔した製版済孔版原紙を作成して印刷処理を行うため、印刷後、製版済孔版原紙が装置の中に残ることになる。そこで、特許文献1では、機密情報を有する文書などを印刷した場合にその機密情報を悪意のある第三者から守るため、機密保持モードを設け、このモードの設定時において、機密情報が製版された孔版原紙を廃棄するとともに新しい未製版の孔版原紙を版胴に巻装しておくようにした孔版印刷装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、機密保持モードが設定されると、次に製版の指示が出され、孔版原紙の取り替えが行われるまで、製版済孔版原紙が巻装されたドラムの取り出しを制限し、かつ、印刷処理の実行を禁止するようにした孔版印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−198185号公報
【特許文献2】特許第3566367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の孔版印刷装置では、一旦機密保持モードが設定されると、次の印刷が開始する前に必ず孔版原紙の取り替えが行われるようにしているため、第三者による機密情報の刷り増しを効果的に制限することができるというメリットがある一方、その機密情報に関し権限を有するユーザによる刷り増しも同様に制限されてしまうため、ユーザの使い勝手が悪くなってしまうというデメリットがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、機密情報を適切に保護しつつユーザの利便性を確保することができる孔版印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の孔版印刷装置は、印刷ドラムを備え、該印刷ドラムに製版済み孔版原紙を巻装して印刷を行う孔版印刷装置において、ユーザからの指示に応じて印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止する機密モードを設定する機密モード設定部と、機密モード設定部で機密モードを設定したユーザの認証情報を記録する記録媒体と、ユーザからの印刷指示を受け付ける印刷指示受付部と、ユーザからの認証情報の入力を受け付ける認証情報入力受付部と、機密モードが設定されているときに、印刷指示受付部により印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた印刷指示を出したユーザの認証情報を記録媒体に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷を許可する印刷許可部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、記録媒体は、孔版印刷装置の本体に直接設けられたものであってもよいし、印刷ドラムが孔版印刷装置の本体から抜き出したり、挿入したりすることができるものである場合にその印刷ドラムに一体的に設けられたものであってもよい。
【0010】
上記孔版印刷装置は、複数の印刷ドラムを備え、該複数の印刷ドラムの一部または全部により前記印刷を行う孔版印刷装置であって、機密モード設定部への前記機密モード設定が、複数の印刷ドラムのうちのどの印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止するものであるかを特定してなされたものであり、印刷許可部が、機密モード設定部により機密モードが設定されているときに、前記特定された印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた印刷指示を出したユーザの認証情報を記録媒体に前記特定された印刷ドラムに対応させて記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば前記特定された印刷ドラムによる印刷を許可するものであってもよい。
【0011】
このとき、記録媒体が複数の印刷ドラムのそれぞれに一体的に設けられた不揮発性メモリであり、機密モード設定部が、機密モードの設定指示を受け付けると、機密モードを設定したユーザの認証情報を前記特定された印刷ドラムに一体的に設けられている記録媒体に記録させるものであり、印刷許可部が、機密モード設定部により機密モードが設定されているときに、印刷指示受付部により前記特定された印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた印刷指示を出したユーザの認証情報を前記特定された印刷ドラムに一体的に設けられている記録媒体に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば前記特定された印刷ドラムによる印刷を許可するものであってもよい。
【0012】
また、上記孔版印刷装置は、ユーザからの機密解除指示を受け付ける機密解除指示受付部をさらに備え、機密モード設定部が、機密モードが設定されているときに、機密解除指示受付部により機密解除指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた機密解除指示を出したユーザの認証情報を記録媒体に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば機密モードの設定を解除するとともに、記録媒体に記録されている認証情報を削除するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の孔版印刷装置によれば、印刷ドラムを備え、該印刷ドラムに製版済み孔版原紙を巻装して印刷を行う孔版印刷装置において、ユーザからの指示に応じて印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止する機密モードを設定する機密モード設定部と、機密モード設定部で機密モードを設定したユーザの認証情報を記録する記録媒体と、ユーザからの印刷指示を受け付ける印刷指示受付部と、ユーザからの認証情報の入力を受け付ける認証情報入力受付部と、機密モードが設定されているときに、印刷指示受付部により印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた印刷指示を出したユーザの認証情報を記録媒体に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷を許可する印刷許可部とを備えているので、製版済み孔版原紙に対して機密モードが設定された後であっても、その製版済み孔版原紙の処分に権限を有するユーザであればその製版済み孔版原紙を用いて再度印刷を行うことが可能であり、機密情報を適切に保護しつつ、一旦機密保持モードが設定されるとその孔版原紙による再印刷はできなくなってしまう上記従来の孔版印刷装置に比べて、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0014】
このとき、記録媒体が、印刷ドラムに一体的に設けられた不揮発性メモリである場合、機密モードが設定された印刷ドラムを孔版印刷装置の本体から抜き出し、別の孔版印刷装置の本体に挿入した場合であっても、その記録媒体に記録されている認証情報に基づいて、その印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を引き続き禁止することができ、機密情報を適切に保護することができる。また、機密モードが設定された印刷ドラムを機密モードが設定されていない他の印刷ドラムに取り換え、その孔版印刷装置により印刷を行うことができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0015】
また、上記孔版印刷装置が、複数の印刷ドラムを備え、該複数の印刷ドラムの一部または全部により前記印刷を行う孔版印刷装置であって、機密モード設定部への前記機密モード設定が、複数の印刷ドラムのうちのどの印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止するものであるかを特定してなされたものであり、印刷許可部が、機密モード設定部により機密モードが設定されているときに、前記特定された印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた印刷指示を出したユーザの認証情報を記録媒体に前記特定された印刷ドラムに対応させて記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば前記特定された印刷ドラムによる印刷を許可するものである場合には、一部の印刷ドラムに対して機密モードが設定され、その印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷が禁止されている場合であっても、他の印刷ドラムにより印刷を実行させることができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0016】
このとき、記録媒体が複数の印刷ドラムのそれぞれに一体的に設けられた不揮発性メモリであり、機密モード設定部が、機密モードの設定指示を受け付けると、機密モードを設定したユーザの認証情報を前記特定された印刷ドラムに一体的に設けられている記録媒体に記録させるものであり、印刷許可部が、機密モード設定部により機密モードが設定されているときに、印刷指示受付部により前記特定された印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた印刷指示を出したユーザの認証情報を前記特定された印刷ドラムに一体的に設けられている記録媒体に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば前記特定された印刷ドラムによる印刷を許可するものである場合、機密モードが設定された印刷ドラムを孔版印刷装置の本体から抜き出し、別の孔版印刷装置の本体に挿入した場合であっても、その記録媒体に記録されている認証情報に基づいて、その印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を引き続き禁止することができ、機密情報を適切に保護することができる。また、機密モードが設定された印刷ドラムを機密モードが設定されていない他の印刷ドラムに取り換え、その孔版印刷装置により印刷を行うことができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0017】
また、上記孔版印刷装置が、ユーザからの機密解除指示を受け付ける機密解除指示受付部をさらに備え、機密モード設定部が、機密モードが設定されているときに、機密解除指示受付部により機密解除指示を受け付けると、認証情報入力受付部により受け付けた機密解除指示を出したユーザの認証情報を記録媒体に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば機密モードの設定を解除するとともに、記録媒体に記録されている認証情報を削除するものである場合、たとえば製版済み孔版原紙が機密情報を有するものと認められ、機密モードを設定してその利用を制限していたが、その後、当該情報が機密情報ではなくなった場合等に、機密モードの設定により印刷を禁止させた製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷を第三者に対しても許可することができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の孔版印刷装置の一実施形態の全体概略構成図
【図2】本発明の孔版印刷装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図
【図3】本発明の孔版印刷装置の一実施形態の制御部の構成を示す図
【図4】機密モード設定部による機密解除処理を説明するためのフローチャート
【図5】印刷制御部による処理の流れを説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の孔版印刷装置の一実施形態について説明する。図1は本孔版印刷装置の概略構成図である。
【0020】
本実施形態の孔版印刷装置1は、1色刷りと2色刷りとを選択的に行うことができる孔版印刷装置であって、図1に示すように、原稿の画像を読み取って画像データを出力する画像読取部10、画像読取部10で読み取られた画像データに基づいて孔版原紙Mに製版処理を施す第1および第2の製版部30,35、第1および第2の製版部30,35において製版された孔版原紙Mを用いて印刷用紙Pに印刷を施す第1および第2の印刷部40,50、第1の印刷部40に印刷用紙Pを給紙する給紙部20、第1の印刷部40から排出された印刷用紙Pを第2の印刷部50に向けて搬送する搬送ベルト部44と、印刷済みの印刷用紙が排出される排紙部70と、使用済孔版原紙M’が送り込まれる排版部80とを備えている。
【0021】
画像読取部10は、原稿の画像情報を光電的に読み取るラインイメージセンサを有し、ラインイメージセンサで原稿を走査することによって原稿を読み取り、画像データを出力するものである。
【0022】
第1の製版部30は、複数個の発熱体が一列に配列されてなるサーマルヘッド31を有し、孔版原紙ロールから繰り出された孔版原紙Mに対し、サーマルヘッド31を用いて製版処理を行うものである。第2の製版部35も、第1の製版部30と同様に、サーマルヘッド36を有し、孔版原紙ロールから繰り出された孔版原紙Mに対し、サーマルヘッド36を用いて製版処理を行うものである。
【0023】
第1の印刷部40は、多孔金属板、メッシュ構造体などのインク通過性の円筒状の第1の印刷ドラム41と、印刷用紙Pを所定のプレス圧で第1の印刷ドラム41に圧接させる第1のプレスローラ42と、第1の印刷ドラム41から印刷済みの印刷用紙Pを剥ぎ取る第1の剥取爪43とを備えている。第1の印刷ドラム41の外周には第1の製版部30において穿孔された製版済孔版原紙Mが巻き付けられて装着されるようになっている。
【0024】
第2の印刷部50は、第1の印刷部40と同様に、円筒状の第2の印刷ドラム51と、印刷用紙Pを所定のプレス圧で第2の印刷ドラム51に圧接させる第2のプレスローラ52と、第2の印刷ドラム51から印刷済みの印刷用紙Pを剥ぎ取る第2の剥取爪53とを備えている。第2の印刷ドラム51の外周には第2の製版部35において穿孔された製版済孔版原紙Mが巻き付けられて装着されるようになっている。
【0025】
給紙部20は、印刷用紙Pが載置される給紙台21と、給紙台21より印刷用紙Pを一枚ずつ取り出して2次給紙ローラ23に向けて送り出す1次給紙ローラ22と、1次給紙ローラ22の搬送方向下流側に配置され、1次給紙ローラ22により搬送された印刷用紙Pの先端を一旦停止させ、所定のタイミングで印刷用紙Pを第1の印刷ドラム41と第1のプレスローラ42との間に送り出す2次給紙ローラ23とを備えている。
【0026】
排紙部70は、印刷済みの印刷用紙Pを排紙台71まで搬送する排紙送りベルト部72と、排紙送りベルト部72により搬送された印刷済みの印刷用紙Pが積載される排紙台71とを備えている。
【0027】
排版部80は、第1および第2の印刷部40,50から引き剥がされた使用済孔版原紙M’が送り込まれる排版ボックス81と、第1および第2の印刷部40,50から使用済孔版原紙M’を引き剥がして排版ボックス81内へ送り込む排版ローラ82とを備えている。
【0028】
また、図2に示すように、上述した各部は、制御部90に接続されており、制御部90が各部の制御を行なう。また、図1においては図示省略したが、本孔版印刷装置1には、図2に示すようにパネル部100が設けられている。パネル部100は、液晶タッチパネル等であって、孔版印刷装置1の動作状態や、各種設定状態、および選択・指定できる機能等を表示する表示部と、ユーザによる機密設定指示、機密解除指示、印刷指示などの各種指示を受け付けるとともに、ユーザからの認証情報の入力等を受け付ける入力部として機能するものである。なお、このパネル部100が本発明の機密解除指示受付部、印刷指示受付部および認証情報入力受付部に相当する。
【0029】
ここで、孔版印刷装置1は、第1および第2の印刷ドラム41、51いずれか一方または両方を選択的に用いて印刷等の処理を行う機能を有しており、ユーザは、パネル部100において、第1および第2の印刷ドラム41、52のいずれか一方または両方を選択して機密設定指示、機密解除指示、印刷指示などの各種指示を入力することができる。たとえば、第1の印刷ドラム41に対してのみ機密設定指示を入力したり、第1および第2の印刷ドラム41,51の両方に機密設定がなされている場合に、第2の印刷ドラム51に対してのみ機密解除指示を入力したり、第2の印刷ドラム51のみを用いた印刷指示を入力したりすることができる。
【0030】
なお、孔版印刷装置1において、第1の印刷ドラム41のみを用いて印刷を行う場合には(1色刷り)、印刷用紙Pは、まず第1の印刷部40によって印刷が行われ、その後印刷用紙Pは一旦第2の印刷部50へ搬送されるが、第2の印刷部50ではさらに印刷が行われることなくそのまま排紙部70へ搬送され、排出される。同様に、第2の印刷ドラム51のみを用いて印刷を行う場合には、印刷用紙Pは、まず第1の印刷部40に給紙されるが、第1の印刷部40では印刷が行われることなくそのまま第2の印刷部50へ搬送され、第2の印刷部50によって始めて印刷が行われ、排出される。一方、第1および第2の印刷ドラムの41、51の両方を用いて印刷を行う場合には(2色刷り)、第1の印刷部40によって1色目の印刷がなされた印刷用紙Pに対して、第2の印刷部50によって2色目の印刷がさらに行われる。
【0031】
そして、孔版印刷装置1の制御部90には、図3に示すように、第1および第2の印刷ドラム41、51のいずれか一方または両方に機密モードを設定する機密モード設定部91と、第1および第2の印刷部40、50いずれか一方または両方による印刷を制御する印刷制御部92とを備えている。また、図1においては図示省略したが、第1および第2の印刷ドラム41、51には、図3に示すように、それぞれの印刷ドラムに対応して第1のメモリ45と第2のメモリ55が設けられている。第1および第2のメモリ45、55は不揮発性メモリであり、後述するように、その印刷ドラムに対する機密設定指示を受け付けたときに、機密設定指示を出したユーザの認証情報が記録されることとなる。また、第1および第2のメモリ45、55は各対応する印刷ドラムに一体的に設けられているので、印刷ドラムを装置本体から抜き出したり、挿入したりするときに、その印刷ドラムと共に装置本体から抜き出されたり、挿入されたりすることとなる。
【0032】
機密モード設定部91は、パネル部100によりユーザからの機密設定指示を受け付けた場合に、その機密設定指示において選択された第1および第2の印刷ドラム41、51いずれか一方または両方に対して、その機密設定指示を受け付けたときに印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止する機密モードを設定するとともに、その機密設定指示を出したユーザの認証情報をその印刷ドラムに設けられているメモリに記録させるものである。
【0033】
ここで、ユーザの認証情報は、ユーザ個々人に対応したものであってもよいし、所定のユーザグループに対応したものであってもよい。少なくとも特定のユーザまたはユーザグループを他のユーザまたはユーザグループと区別することが可能な情報であれば足りる。
【0034】
また、機密設定指示を出したユーザの認証情報は、ユーザからの機密設定指示を受け付けるときに、パネル部100に認証情報を入力可能な画面を表示し、その画面においてユーザからの認証情報の入力を受け付けて取得することができる。なお、ユーザからの機密設定指示を受け付ける前に、装置を操作するユーザを特定する情報としてユーザの認証情報が取得されており、その情報が機密設定指示の操作を行うユーザを特定し得る情報と認められる場合には、その情報をそのまま機密設定指示を出したユーザの認証情報として取得してもよい。また、ここでは、ユーザの認証情報をパネル部100に表示された画面に対するユーザの入力に基づいて取得する場合について例示しているが、例えば装置本体にカードリーダーを備え、そのカードリーダーによりユーザが所持するIDカードからユーザの認証情報が読み取られることでユーザの認証情報を取得するようにしてもよい。
【0035】
また、機密モード設定部91は、上述の処理によって機密モードが設定されているときに、ユーザからのその設定された機密モードを解除することを指示する機密解除指示を受け付けた場合に、パネル部100により受け付けた機密解除指示を出したユーザの認証情報をその印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば機密モードの設定を解除するとともに、その印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報を削除する機能を有する。
【0036】
ここで、機密解除指示を出したユーザの認証情報も、上記機密設定指示を出したユーザの認証情報を取得する場合と同様に、ユーザからの機密解除指示を受け付けるときに、パネル部100に認証情報を入力可能な画面を表示し、その画面においてユーザからの認証情報の入力を受け付ける等の方法によって取得することができる。
【0037】
また、機密モード設定部91は、両認証情報が一致したか否かに関らず、機密解除指示を出したユーザがその孔版印刷装置の管理者であるときに、すなわち、機密解除指示を出したユーザの認証情報が予め登録され、記憶されている管理者の認証情報であるときにも、その印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報を削除するものであってもよい。
【0038】
ここで、機密モード設定部91による機密解除処理について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。たとえば、第1および第2の印刷ドラム41,51のいずれか一方(特定の印刷ドラム)に巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止する機密モードが設定されているときに、パネル部100により機密解除指示を受け付けると(S10)、パネル部100に認証情報を入力可能な画面が表示され、その画面においてユーザからの認証情報の入力を受け付けることにより、機密解除指示を出したユーザの認証情報が取得される。そして、印刷制御部92により、その受け付けたユーザの認証情報と上記特定の印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報とが比較され、両認証情報が一致するか否かが判断される(S11)。そこで、印刷制御部92が両認証情報が一致すると判断した場合には、機密モード設定部91により機密モードの設定が解除されるとともに、上記特定の印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報が削除される(S12)。一方、印刷制御部92が両認証情報が一致しないと判断した場合には、印刷制御部92により上記パネル部100により受け付けたユーザの認証情報と、予め登録されかつ記憶されている管理者の認証情報とがさらに比較され、両認証情報が一致するか否かがが判断される(S13)。そこで、印刷制御部92が両認証情報が一致すると判断した場合には、機密モード設定部91により機密モードの設定が解除されるとともに、上記特定の印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報が削除される(S12)。一方、印刷制御部92により両認証情報が一致しないと判断された場合には、そのまま機密モードが維持され(S14)、処理が終了する。
【0039】
印刷制御部92は、上記機密モード設定部91により機密モードが設定されているときに、その印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷指示を受け付けた場合に、パネル部100により受け付けた印刷指示を出したユーザの認証情報をその印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷を許可し、一致しない場合には、そのまま禁止のままとするものである。なお、この印刷制御部92が本発明の印刷許可部に相当する。
【0040】
ここで、印刷制御部92による処理の流れについて、図5に示すフローチャートを用いて説明する。まず、パネル部100により第1および第2の印刷ドラム41、51いずれか一方または両方による印刷指示を受け付けると(S20)、その印刷の実行に用いられる印刷ドラムのいずれかに機密モードが設定されているか否かが判断される(S21)。そこで、印刷の実行に用いられる印刷ドラムのいずれにも機密モードが設定されていない場合には、そのまま印刷動作が実行される(S24)。
【0041】
ここで、2色刷りの場合に行われる印刷動作について簡単に説明しておく。まず、インク供給ポンプにより第1および第2の印刷ドラム41,51の内側にインクが供給され、第1および第2の印刷ドラム41,51が回転駆動される。そして、第1および第2の印刷ドラム41,51の回転に同期して所定のタイミングにて印刷用紙P1が1次給紙ローラ22によって給紙台21から繰り出され、所定のタイミングで2次給紙ローラ23により図1における左から右へ搬送され、第1の印刷ドラム41と第1のプレスローラ42との間に供給される。そして、第1の印刷ドラム41の外周面に巻き付けられている製版済孔版原紙Mに対し、印刷用紙P1が第1のプレスローラ42によって圧接されることにより印刷用紙P1に対して1色目の孔版印刷が行われる。
【0042】
そして、第1の印刷ドラム41が所定の角度だけ回転して印刷用紙P1への1版目の孔版印刷が終了すると、その1色印刷済印刷用紙P2は剥取爪43により第1の印刷ドラム41から剥ぎ取られ、その剥ぎ取られた1色印刷済印刷用紙P2は、搬送ベルト部44によって第2の印刷部50へ搬送され、所定のタイミングで第2の印刷ドラム51と第2のプレスローラ52との間に供給される。
【0043】
そして、第2の印刷ドラム51の外周面に巻き付けられている製版済孔版原紙Mに対し、1色印刷済印刷用紙P2の印刷面が第2のプレスローラ52によって圧接されることにより1色印刷済印刷用紙P2の印刷面に対して2色目の孔版印刷が行われる。そして、第2の印刷ドラム51が所定の角度だけ回転して1色印刷済印刷用紙P2の印刷面への2色目の孔版印刷が終了すると、その2色印刷済印刷用紙P3は剥取爪53により第2の印刷ドラム51から剥ぎ取られ、その剥ぎ取られた2色印刷済印刷用紙P3は、排紙送りベルト部72により排紙台71まで搬送され、排紙台71に積載される。
【0044】
一方、S21のステップにおいて、印刷の実行に用いられる印刷ドラムのどれか(特定の印刷ドラム)に機密モードが設定されている場合には、パネル部100に認証情報を入力可能な画面が表示され、その画面においてユーザからの認証情報の入力を受け付けることにより、印刷指示を出したユーザの認証情報が取得される。そして印刷制御部92により、その受け付けたユーザの認証情報と上記特定の印刷ドラムに設けられているメモリに記録されている認証情報とが比較され、両認証情報が一致するか否かが判断される(S22)。そこで印刷制御部92は、両認証情報が一致すると判断した場合、そのまま上述したような印刷動作が実行する(S24)。一方、印刷制御部92が両認証情報が一致しないと判断した場合には、印刷制御部92は上記パネル部100により受け付けたユーザの認証情報と、予め登録されかつ記憶されている管理者の認証情報とをさらに比較し、両認証情報が一致するか否かがを判断する(S23)。そこで印刷制御部92により、両認証情報が一致すると判断された場合には、S24に進み、印刷動作が実行されるが、一致しないと判断された場合には、印刷動作が実行されることなく(S25)、処理が終了する。なお、認証情報の不一致により印刷動作を実行しない場合、一定時間が経過するまでは認証画面を表示したままにして認証情報の入力を可能にし、一定時間経過するまでに適切な認証情報の入力がされなかった場合には、認証画面の表示をやめて再度S20に戻って印刷指示の有無の確認を行うようにしてもよい。
【0045】
上記の構成により、上記実施形態の孔版印刷装置1によれば、機密モード設定部91により特定の印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙に対して機密モードが設定された後であっても、印刷制御部92が、その機密モードが設定された印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、パネル部100により印刷指示を出したユーザの認証情報を受け付けて、予めその印刷ドラムに対応させて記録しておいた認証情報と比較し、両認証情報が一致していればその印刷ドラムによる印刷を許可するようにしているので、製版済み孔版原紙に対して機密モードが設定された後であっても、その製版済み孔版原紙の処分に権限を有するユーザであればその製版済み孔版原紙を用いて再度印刷を行うことが可能であり、機密情報を適切に保護しつつ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0046】
また、その製版済み孔版原紙の処分に権限を有するユーザの認証情報を印刷ドラムに一体的に設けられた不揮発性メモリに記憶させているので、機密モードが設定された印刷ドラムを孔版印刷装置1の本体から抜き出し、別の孔版印刷装置の本体に挿入した場合であっても、その記録媒体に記録されている認証情報に基づいて、その印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を引き続き禁止することができ、機密情報を適切に保護することができる。また、機密モードが設定された印刷ドラムを機密モードが設定されていない他の印刷ドラムに取り換え、その孔版印刷装置1により印刷を行うことができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、孔版印刷装置1が2つの印刷ドラムを備えたものである場合について例示したが、1つまたは3つ以上の印刷ドラムを備えた孔版印刷装置においても同様に、製版済み孔版原紙が巻装された印刷ドラム毎に機密モードを設定するとともに、その機密設定指示を出したユーザの認証情報を記録しておき、その後、その機密モードが設定された印刷ドラムに対して印刷指示または機密解除指示を受け付けたときに、ユーザ認証を行い、認証が成功した場合にのみ印刷を許可するようにすることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、機密モード設定部91が、機密モードを個々の印刷ドラムに対して設定、解除するものである場合について説明したが、装置全体に対して機密モードを設定、解除するものであってもよい。このとき、機密モード解除用の認証情報が個々の印刷ドラムに不揮発性メモリ等によって一体的に付帯されていない場合には、一部の印刷ドラムが孔版印刷装置1の本体から抜き出され、別の孔版印刷装置の本体に挿入され、不当に使用されてしまう場合が想定されるので、このような場合には、印刷ドラムが装置本体から取り外されることを禁止するために印刷ドラムをロックする機構を備えておくとよい。
【0049】
このロック機構として、例えば、印刷ドラムに設けられた切りかき状の凹部と、孔版印刷装置1の本体側に設けられたソレノイドにより回動制御されるフックとを備え、そのフックが、制御部90からソレノイドに対して制御信号を送出することにより、切りかき状の凹部と係合する位置と離間する位置とをとるものとし、フックと凹部とが係合した状態では、印刷ドラムが孔版印刷装置1本体から取り外せないように設計することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 孔版印刷装置
10 画像読取部
20 給紙部
30 第1の製版部
35 第2の製版部
40 第1の印刷部
41 第1の印刷ドラム
42 第1のプレスローラ
44 搬送ベルト部
45 第1のメモリ
50 第2の印刷部
51 第2の印刷ドラム
52 第2のプレスローラ
55 第2のメモリ
70 排紙部
80 排版部
90 制御部
91 機密モード設定部
92 印刷制御部
100 パネル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ドラムを備え、該印刷ドラムに製版済み孔版原紙を巻装して印刷を行う孔版印刷装置において、
ユーザからの指示に応じて前記印刷ドラムに巻装されている製版済み孔版原紙を用いた印刷を禁止する機密モードを設定する機密モード設定部と、
前記機密モード設定部で機密モードを設定したユーザの認証情報を記録する記録媒体と、
ユーザからの印刷指示を受け付ける印刷指示受付部と、
ユーザからの認証情報の入力を受け付ける認証情報入力受付部と、
前記機密モードが設定されているときに、前記印刷指示受付部により前記印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷指示を受け付けると、前記認証情報入力受付部により受け付けた前記印刷指示を出したユーザの認証情報を前記記録媒体に記録されている認証情報と比較して、両認証情報が一致していれば前記印刷が禁止されている製版済み孔版原紙が巻装されている印刷ドラムによる印刷を許可する印刷許可部と
を備えたことを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−10187(P2013−10187A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142662(P2011−142662)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)