説明

孔版印刷装置

【課題】新たに検出手段を設けることなく、適切に孔版原紙の搬送速度を制御する。
【解決手段】孔版原紙を搬送するプラテン用パルスモータ65と、プラテン用パルスモータ65との間で孔版原紙を押圧しながら、孔版原紙に対して加熱穿孔するサーマルヘッド67と、加熱穿孔された孔版原紙を切断するカッタ部材68と、搬送される孔版原紙の先端及び後端を検出する孔版原紙搬送検出センサ71と、孔版原紙搬送検出センサ71より搬送された孔版原紙の先端が検出された時点から、カッタ部材68により切断された孔版原紙の後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙の先端に挟み込んだ状態で回転されたドラムの回転角度とに基づいて、プラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいてプラテン用パルスモータ65を制御する制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版原紙が巻装されるドラムを有し、孔版原紙の先端をドラムの外周部に挟み込んだ状態で回転することにより孔版原紙をドラムに着版し、この着版されたドラムに印刷媒体を圧接することにより印刷処理を実行する孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、サーマルヘッドにより加熱穿孔することにより製版された孔版原紙を搬送ローラにより搬送して、回転するドラムに巻き付けた後、印刷用紙をこのドラムに給紙し、ドラムを回転しながら、供給された印刷用紙をプレスローラによりドラムに圧接することにより印刷を行う孔版印刷装置が良く知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような孔版印刷装置では、サーマルヘッドの加熱の影響で、搬送ローラが熱膨張したり、熱収縮したりする場合がある。これにより、搬送ローラによる設計上の搬送速度と実際の搬送速度との間にズレが生じた場合がある。
【0004】
そこで、特許文献2には、プラテンとサーマルヘッドとの間でマスタ(孔版原紙)に製版する場合に、温度センサにより検知した周囲の温度や湿度センサにより検知した周囲の湿度を基に、プラテンや搬送ローラの回転速度を制御することにより、マスタの搬送速度を調整する孔版印刷装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、孔版原紙の製版時にこの孔版原紙の搬送方向に沿って一定時間毎に検出用パターンKを感熱で穿孔形成するサーマルヘッドと、一対の検出用パターンKを検出するセンサと、検出用パターンKの間隔の変化に基づき間隔が一定となるよう駆動モータを駆動制御する制御手段とを備えた孔版印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−262037号公報
【特許文献2】特開平11−188832号公報
【特許文献3】特開2001−315290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の孔版印刷装置では、温度センサにより検知した周囲の温度や湿度センサにより検知した周囲の湿度を基に、プラテンや搬送ローラの回転速度を制御するので、新たに温度センサを設ける必要があり、その分製造コストが高くなるという課題があった。
【0008】
また、特許文献3に記載の孔版印刷装置では、一対の検出用パターンKを検出するセンサと、検出用パターンKの間隔の変化に基づき間隔が一定となるよう駆動モータを駆動制御するので、特許文献2に記載の孔版印刷装置と同様に、新たに一対の検出用パターンKを検出するセンサを設ける必要があり、その分製造コストが高くなるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、新たに検出手段を設けることなく、搬送手段の設計上の搬送速度と実際の搬送速度との間にズレが生じた場合においても、適切な搬送速度で孔版原紙の搬送を制御する孔版印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る孔版印刷装置の第1の特徴は、孔版原紙が巻装されるドラムを有し、孔版原紙の先端を前記ドラムの外周部に挟み込んだ状態で回転することにより孔版原紙を前記ドラムに着版し、この着版されたドラムに印刷媒体を圧接することにより印刷処理を実行する孔版印刷装置であって、設定された搬送速度に基づいて、前記孔版原紙を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送された孔版原紙に対して加熱穿孔するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドより下流側に設けられ、前記加熱穿孔された孔版原紙を切断するカッタ部材と、前記カッタ部材より下流側に設けられ、搬送される孔版原紙の先端及び後端を検出する検出手段と、前記検出手段により孔版原紙の先端が検出された時点から、前記カッタ部材により切断された孔版原紙の後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙の先端に挟み込んだ状態で回転されたドラムの回転角度とに基づいて、前記搬送手段の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいて前記搬送手段を制御する制御手段と、を備えたことにある。
【0011】
本発明に係る孔版印刷装置の第2の特徴は、前記制御手段は、前記検出手段により孔版原紙の先端が検出された時点から、前記カッタ部材により切断された孔版原紙の後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙の先端に挟み込んだ状態で回転されたドラムの回転角度とに基づいて、孔版原紙の搬送量を算出し、前記算出された孔版原紙の搬送量と前記設定された搬送速度に基づいて算出された孔版原紙の搬送量との差が小さくなるように、前記搬送手段の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいて前記搬送手段を制御することを特徴とすることにある。
【0012】
本発明に係る孔版印刷装置の第3の特徴は、前記制御手段は、最後に印刷処理を実行したときから所定の時間を経過した場合に実行されるアイドリング処理を実行する際、前記搬送手段の搬送速度の補正を行うことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る孔版印刷装置の第1の特徴によれば、検出手段により孔版原紙の先端が検出された時点から、カッタ部材により切断された孔版原紙の後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙の先端に挟み込んだ状態で回転されたドラムの回転角度とに基づいて、搬送手段の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいて搬送手段を制御する新たに検出手段を設けることなく、搬送手段の設計上の搬送速度と実際の搬送速度との間にズレが生じた場合においても、適切に孔版原紙の搬送を制御することができる。
【0014】
本発明に係る孔版印刷装置の第2の特徴によれば、検出手段により孔版原紙の先端が検出された時点から、カッタ部材により切断された孔版原紙の後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙の先端に挟み込んだ状態で回転されたドラムの回転角度とに基づいて、孔版原紙の搬送量を算出し、算出された孔版原紙の搬送量と前記設定された搬送速度に基づいて算出された孔版原紙の搬送量との差が小さくなるように、搬送手段の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいて搬送手段を制御するので、新たに検出手段を設けることなく、搬送手段の設計上の搬送速度と実際の搬送速度との間にズレが生じた場合においても、より適切に孔版原紙の搬送を制御することができる。
【0015】
本発明に係る孔版印刷装置の第3の特徴によれば、最後に印刷処理を実行したときから所定の時間を経過した場合に実行されるアイドリング処理を実行する際、搬送手段の搬送速度の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置の構成を示した構成図である。
【図2】本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置が備える製版部の構成を詳細に説明した図である。
【図3】本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置の機能構成を示した機能構成図である。
【図4】本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置が備える製版部による製版処理を示したタイミングチャートである。
【図5】本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置による製版処理の動作を説明した図である。(a)は、搬送路上を搬送された孔版原紙Gの先端が検出された際の製版部を示した図であり、(b)は、搬送路上を搬送された孔版原紙Gの先端が原紙クランプ部42によりクランプされた際の製版部6を示した図であり、(c)は、搬送路上を搬送された孔版原紙の後端が検出された際の製版部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について以下に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態では、両面印刷が可能な2ドラム式の両面孔版印刷装置に適用された製版装置を例に挙げて説明する。
【0019】
<両面孔版印刷装置の構成>
本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置の構成を示した構成図である。
【0021】
図1に示すように、両面孔版印刷装置1は、画像読み取り部2と、給紙部3と、第1の印刷部4と、第2の印刷部5と、製版部6と、第1の排版部8と、第2の排版部9と、反転貯留部10と、排紙部11とを備えている。
【0022】
画像読み取り部2は、両面孔版印刷装置1の上部に設けられ、図示しないコンタクトガラス上に載置された原稿から画像データを読み取る。
【0023】
製版部6は、画像読み取り部2により読み取られた画像データに基づいて製版を行う。
【0024】
また、製版部6は、図示しないレールによって図1におけるX方向に移動自在に支持されており、孔版原紙Gを供給する破線で示した位置と、後述する第2の印刷部5に製版した孔版原紙Gを供給する実線で示した位置とを選択的に占める。
【0025】
第1の排版部8は、後述する第1の印刷部4の第1のドラム41の外周面よりクランプ解除された孔版原紙Gを第1のドラム41より引き剥がし、引き剥がされた孔版原紙Gを排版ボックス(図示しない)内に収納する。また、第2の排版部9は、第1の排版部8と同様の構成を有する。
【0026】
給紙部3は、印刷用紙Wが積層される給紙台31と、この給紙台31から最上位置の印刷用紙Wのみを搬送させる1次給紙ロール32と、この1次給紙ロール32によって搬送された印刷用紙Wを後述する第1の印刷部4の第1のドラム41の回転に同期して第1のドラム41と第1のプレスローラ43間に搬送する一対の2次給紙ロール33とを有する。
【0027】
第1の印刷部4は、第1のメインモータ45の駆動力によって図1の矢印A方向に回転する第1のドラム41と、この第1のドラム41の外周面に設けられ、孔版原紙Gの先端をクランプする原紙クランプ部42とを備えている。
【0028】
また、第1の印刷部4は、第1のドラム41の基準位置を検出する第1の基準位置検出部46と、第1のメインモータ45の回転に応じて定周期でパルス信号を出力する第1のロータリエンコーダ47を備えており、第1の基準位置検出部46により検出された基準位置信号を基に第1のロータリエンコーダ47のパルス信号を検出することによって第1のドラム41の回転角度を検出することができるようになっている。
【0029】
また、第1の印刷部4は、印刷用紙Wを反転貯留部10へ搬送する搬送ベルト44と、第1のドラム41の下方位置に配置された第1のプレスローラ43とを備えている。
【0030】
そして、第1のドラム41の回転に同期して給紙部3より給紙される印刷用紙Wを第1のプレスローラ43で第1のドラム41に着版された第1の孔版原紙に押圧することによって、第1の孔版原紙の穿孔からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの表面に印刷されるようになっている。
【0031】
第1のプレスローラ43が第1のドラム41に押圧することによって画像が印刷された印刷用紙Wは、両端が一対の回転軸に巻きかけられた環状の搬送ベルト44によって反転貯留部10に搬送される。
【0032】
反転貯留部10は、第1の印刷部4に対して印刷用紙Wの搬送方向下流側に配置され、多孔構造に形成された環状の反転ベルト101が半円形状に配置されている。この反転ベルト101は、半円形状の補助部材102と一対のローラ103,104に巻きかけられ、一対のローラ103,104のうち少なくとも一方のローラが駆動モータ(不図示)で回転駆動される。この反転貯留部10により印刷用紙Wの表裏が反転され、積載台106に印刷用紙Wを搬送される。
【0033】
第2の印刷部5は、第1の印刷部4と同様に、第2のメインモータ55の駆動力によって図1の矢印A方向に回転する第2のドラム51と、この第2のドラム51の外周面に設けられ、第2の孔版原紙の先端をクランプする原紙クランプ部52と、第2のドラム51の下方位置に配置された第2のプレスローラ53と、反転貯留部10により反転された印刷用紙Wを第2のドラム51の回転に同期して第2のドラム51と第2のプレスローラ53間に搬送する一対の2次給紙ロール54とを有している。
【0034】
また、第2の印刷部5は、第2のドラム51の基準位置を検出する第2の基準位置検出部56と、第2のメインモータ55の回転に応じて定周期でパルス信号を出力する第2のロータリエンコーダ57を備えており、第2の基準位置検出部56により検出された基準位置信号を基に第2のロータリエンコーダ57のパルス信号を検出することによって第2のドラム51の回転角度を検出することができるようになっている。
【0035】
そして、第2の印刷部5は、第1の印刷部4と同様に、第2のドラム51の回転に同期して一対の2次給紙ロール54より給紙される印刷用紙Wを第2のプレスローラ53で第2のドラム51に着版された孔版原紙Gに押圧することによって、孔版原紙Gの穿孔からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの裏面に印刷されるようになっている。
【0036】
排紙部11は、印刷された印刷用紙Wが搬送される排紙ベルト111と、排紙ベルト111より排紙される印刷用紙Wが積置される排紙台112と、積載台106に複数枚積載された印刷用紙Wを搬出する中間搬送ベルト113と、中間搬送ベルト113により搬出された印刷用紙Wを第2の印刷部5に搬送する一対のローラ115とを有する。
【0037】
<製版部6の構成>
図2は、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1が備える製版部6の構成を詳細に説明した図である。
【0038】
図2に示すように、製版部6では、孔版原紙Gを巻回した円環筒状の孔版原紙ロール61が孔版原紙Gの巻回径に応じて変化する角速度でB方向に回転自在にマスターホルダー62内に支持されていると共に、この孔版原紙ロール61がマスターホルダー62に対して着脱可能に支持されている。ここで、孔版原紙Gは、例えば、格子状のプラスチックメッシュ上に感熱フィルムが貼り合わされたスクリーンマスター原紙や、和紙上に感熱フィルムが貼り合わされた和紙マスター原紙等が用いられる。
【0039】
また、孔版原紙ロール61より下流には、第1,第2ガイドシャフト63,64と、プラテン用パルスモータ65によってC方向に所定の一定速度で回転駆動されるプラテンローラ66と、複数の発熱体67aが紙面垂直方向に一列に配列されてプラテンローラ66に対して不図示の押圧機構を介して接離自在であり、孔版原紙Gに圧接しながら画像データに基づいて感熱穿孔するサーマルヘッド67とを備えている。このように、サーマルヘッド67は、プラテンローラ66との間で孔版原紙Gを圧接しながら感熱穿孔するので、プラテンローラ66まで伝熱し、プラテンローラ66が熱膨張したり、熱収縮したりする場合もある。そして、プラテンローラ66が熱膨張や熱収縮することにより、プラテンローラ66外径が変化し、これにより、プラテンローラ66により搬送する孔版原紙の搬送速度が変動する場合がある。
【0040】
また、サーマルヘッド67の下流には、製版された孔版原紙Gを後述する第1の印刷部4に備えられた第1のドラム41又は第2の印刷部5に備えられた第2のドラム51の円周長以下に設定された1版分の長さで切断する上下一対のカッタ部材68と、プラテン用パルスモータ65を共用して回転駆動される上下一対の第1フィードローラ69と、製版された孔版原紙Gを一時的に溜める孔版原紙溜め箱70と、製版された孔版原紙Gの搬送状態を検出する孔版原紙搬送検出センサ71と、上下一対の第2フィードローラ72と、上下一対の第3フィードローラ73とが孔版原紙Gの搬送経路に沿いながら第1の印刷部4又は第2の印刷部5側に向かって上記順に設けられている。
【0041】
第1,第2,第3フィードローラ69,72,73により搬送された孔版原紙Gは、第1のドラム41の原紙クランプ部42により先端がクランプされる(挟み込まれる)。
【0042】
そして、孔版原紙Gは、クランプされた状態で第1のドラム41がA方向に回転することにより、第1のドラム41表面に着版される。
【0043】
なお、上下一対の第1,第2,第3フィードローラ69,72,73は、各下側の駆動ローラに対して各上側の従動ローラが接離自在になっている。また、第1フィードローラ69はプラテン用パルスモータ65を共用しており、第2,第3フィードローラ72,73は、フィードローラ用パルスモータ75を共用している。
【0044】
また、上下一対のカッタ部材68から上下一対の第3フィードローラ73までの孔版原紙Gの搬送経路中では、図示とは異なって各部品が接近して配置されているので孔版原紙Gの剛性により孔版原紙Gを搬送経路に沿って確実に走行させることができるが、各部品の間隔が離れている場合には必要に応じて孔版原紙Gの搬送を案内する案内板(図示せず)を設置しても良い。
【0045】
<製版部6の機能構成>
図3は、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1の機能構成を示した機能構成図である。
【0046】
図3に示すように、両面孔版印刷装置1は、操作部15と、制御部20と、第1のドラム41と、第1のメインモータ45と、第1の基準位置検出部46と、第1のロータリエンコーダ47と、第2のドラム51と、第2のメインモータ55と、第2の基準位置検出部56と、第2のロータリエンコーダ57と、カッタ部材68と、プラテン用パルスモータ65と、孔版原紙搬送検出センサ71と、フィードローラ用パルスモータ75とを備えている。
【0047】
これらの構成のうち、第1のドラム41と、第1のメインモータ45と、第1の基準位置検出部46と、第1のロータリエンコーダ47と、第2のドラム51と、第2のメインモータ55と、第2の基準位置検出部56と、第2のロータリエンコーダ57と、カッタ部材68と、プラテン用パルスモータ65と、孔版原紙搬送検出センサ71と、フィードローラ用パルスモータ75とについては、上述したので、説明を省略する。
【0048】
操作部15は、製版や印刷等を開始させるためのスタートキー、製版や印刷等を停止させるためのストップキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を制御部20に供給する。
【0049】
また、操作部15は、表示/入力パネル15aを備えており、表示/入力パネル15aは、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置され、各種表示画面を表示する液晶表示パネル(いずれも図示せず)とを有している。利用者は、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで、各種ボタンの押下操作を行うことができる。また、操作部15は、制御部20の指示に基づいて、様々なメッセージの表示を行う。
【0050】
制御部20は、製版部6の中枢的な制御を行う。例えば、制御部20は、製版部6の制御部20は、孔版原紙搬送検出センサ71により搬送経路上を搬送された孔版原紙Gの先端が検出された時点から、カッタ部材68により切断された孔版原紙Gの後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙Gの先端に挟み込んだ状態で回転された第1のドラム41の回転角度とに基づいて、孔版原紙Gの搬送量を算出し、算出された孔版原紙Gの搬送量と設定された搬送速度に基づいて算出された孔版原紙Gの搬送量との差が小さくなるように、プラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいてプラテン用パルスモータ65を制御する。
【0051】
<製版部6の作用>
本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1が備える製版部6による製版処理の作用について説明する。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1が備える製版部6による製版処理を示したタイミングチャートである。ここでは、第1のドラム41に孔版原紙Gを着版する場合を例に挙げて説明する。
【0053】
図4に示すように、t1時点において、サーマルヘッド67は、押圧機構によりプラテンローラ66に対して加圧され、これにより孔版原紙Gに圧接される。
【0054】
t1時点において、プラテン用パルスモータ65が駆動開始することにより、プラテンローラ66と第1フィードローラ69とが回転駆動する。これにより搬送経路上を孔版原紙Gが搬送される。また同時に、フィードローラ用パルスモータ75が駆動開始することにより、第2,第3フィードローラ72,73が回転駆動を開始する。
【0055】
その後、t3時点において、孔版原紙搬送検出センサ71が、プラテンローラ66及び第1フィードローラ69により搬送された孔版原紙Gの先端を検出する。
【0056】
そして、第2,第3フィードローラ72,73により搬送された孔版原紙Gの先端が、第1のドラム41の原紙クランプ部42の位置に到達するt5時点において、フィードローラ用パルスモータ75が駆動を停止する。これにより、孔版原紙Gは、原紙クランプ部42によりクランプされ、以降、プラテンローラ66及び第1フィードローラ69により搬送された孔版原紙Gは、孔版原紙溜め箱70内に一時的に貯留される。
【0057】
次に、t7時点において、プラテン用パルスモータ65が駆動を停止し、カッタ部材68が、搬送経路上で停止している孔版原紙Gを切断する。
【0058】
そして、t9時点において、カッタ部材68による孔版原紙Gの切断が終了すると、t11時点において、第1のドラム41が回転を開始する。これにより、原紙クランプ部42によりクランプされた孔版原紙Gは、第1のドラム41の表面に巻装されていく。
【0059】
その後、t13時点において、孔版原紙搬送検出センサ71が、第1のドラム41の回転により牽引搬送された孔版原紙Gの後端を検出する。
【0060】
このとき、制御部20は、孔版原紙搬送検出センサ71により搬送経路上を搬送された孔版原紙Gの先端が検出されたt3時点から、カッタ部材68により切断された孔版原紙Gの後端が検出されたt13時点までの時間であるTと、孔版原紙Gの先端に挟み込んだ状態で回転された第1のドラム41の回転角度とに基づいて、孔版原紙Gの搬送量を算出する。
【0061】
そして、制御部20は、算出された孔版原紙Gの搬送量と設定された搬送速度に基づいて算出された孔版原紙Gの搬送量との差を算出し、この算出された差が小さくなるように、プラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいてプラテン用パルスモータ65を制御する。
【0062】
次に、t14時点において、プラテン用パルスモータ65が駆動開始することにより、プラテンローラ66と第1フィードローラ69とが回転駆動する。これにより搬送経路上を、切断された次の孔版原紙Gが搬送される。
【0063】
その後、t15時点において、孔版原紙搬送検出センサ71が、プラテンローラ66及び第1フィードローラ69により搬送された次の孔版原紙Gの先端を検出すると、フィードローラ用パルスモータ75が駆動を停止する。
【0064】
<搬送速度の補正方法>
以下に、プラテン用パルスモータ65の搬送速度の補正方法について詳述する。
【0065】
設計上、即ち、熱膨張や熱収縮によりプラテンローラ66の外径に変化が生じていない場合、搬送量とプラテン用パルスモータ65の周波数と搬送時間との間には下記の(数式1)の関係が成り立ち、このときの第1のドラム41の回転角Z=Zcal(deg)になるとする。
【0066】
cal=Xcal×A×T1 (数式1)
ここで、設計上の孔版原紙Gの搬送方向の長さをYcal(mm)、プラテン用パルスモータ65における1パルス当たりの孔版原紙Gの搬送量をXcal(mm/p)、プラテン用パルスモータ65の周波数をA(p/s)、1サイクルのうち、カッタ部材68により孔版原紙Gが切断されるまでに、プラテン用パルスモータ65が駆動する時間をT1(s)とする。
【0067】
なお、カッタ部材68により孔版原紙Gが切断された後、t14時点からt15時点までの間、プラテン用パルスモータ65が駆動するが、この駆動する時間をT2(s)とすると、T2(s)時間内の搬送量はXcal×A×T2で表される。しかしながら、T2は、孔版原紙搬送検出センサ71により検出された検出結果に基づいて決定されるので、搬送量(Xcal×A×T2)は正確な値となり、補正する必要はない。
【0068】
また、第1のドラム41の外径をφ(mm)とすると、第1のドラム41の回転角度あたりの孔版原紙Gの搬送方向の長さL(mm/deg)は、下記の(数式2)を用いて算出される。
【0069】
L=φ×π/360 (数式2)
一方、熱膨張や熱収縮によりプラテンローラ66の外径に変化が生じた場合、設計上の、孔版原紙搬送検出センサ71がオフとなる第1のドラム41の回転角度Zcalと、孔版原紙搬送検出センサ71により孔版原紙Gの後端が検出されたt13時点の角度Zactとの間に、ズレが生じ、このズレ角度δは、下記の(数式3)を用いて算出される。
【0070】
δ=(Zact−Zcal) (数式3)
そして、伸縮量、即ち、ズレ角度δに相当する孔版原紙Gの搬送方向の搬送量yactは、下記の(数式4)を用いて算出される。
【0071】
act=L×δ (数式4)
ここで、設計上のプラテン用パルスモータ65における1パルスの孔版原紙Gの搬送量が、Xcal(mm/p)であるので、設計上、長さYcal(mm)の孔版原紙Gを搬送するためには、α(=Ycal/Xcal)パルス分だけプラテン用パルスモータ65にて搬送する必要がある。
【0072】
しかしながら、熱膨張や熱収縮によりプラテンローラ66の外径に変化が生じた場合、上述したように、孔版原紙Gの搬送量は、yact(mm)だけズレが生じるので、実際の1パルス分の孔版原紙Gの搬送量Xact(mm/p)は、下記の(数式5)を用いて算出される。
【0073】
act=(Ycal+yact)/α (数式5)
また、孔版原紙Gを穿孔するための画像信号は周波数Acalで供給されるので、画像信号に合わせて、孔版原紙Gの搬送速度を補正する必要がある。
【0074】
そこで、孔版原紙Gの搬送に必要な設計上の搬送時間はT1であるから、補正後のプラテン用パルスモータ65の周波数Aactは、下記の(数式6)を用いて算出される。
【0075】
act=(Ycal/Xact)/T1 (数式6)
このようにして、制御部20は、補正後のプラテン用パルスモータ65の周波数をAactとして設定することにより、搬送速度を補正する。
【0076】
図5は、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1による製版処理の動作を説明した図である。図5(a)は、搬送路上を搬送された孔版原紙Gの先端が検出された際の製版部6を示した図であり、図5(b)は、搬送路上を搬送された孔版原紙Gの先端が原紙クランプ部42によりクランプされた際の製版部6を示した図であり、図5(c)は、搬送路上を搬送された孔版原紙Gの後端が検出された際の製版部6を示した図である。
【0077】
図5(a)に示すように、プラテン用パルスモータ65が駆動開始することにより、プラテンローラ66と第1フィードローラ69とが回転駆動する。これにより搬送経路上を孔版原紙GがX方向に搬送される。
【0078】
そして、孔版原紙搬送検出センサ71が、プラテンローラ66及び第1フィードローラ69により搬送された孔版原紙Gの先端を検出している。
【0079】
次に、図5(b)に示すように、さらに、孔版原紙Gは搬送路上を搬送され、孔版原紙Gの先端が第1のドラム41の原紙クランプ部42の位置に到達するまで、第2,第3フィードローラ72,73により搬送される。
【0080】
そして、孔版原紙Gの先端が第1のドラム41の原紙クランプ部42の位置に到達すると、フィードローラ用パルスモータ75が駆動を停止するので、孔版原紙Gは、孔版原紙溜め箱70内に一時的に貯留される。
【0081】
次に、図5(c)に示すように、カッタ部材68による孔版原紙Gの切断が終了すると、第1のドラム41が回転を開始し、原紙クランプ部42によりクランプされた孔版原紙Gは、第1のドラム41の表面に巻装されていく。
【0082】
その後、孔版原紙搬送検出センサ71が、第1のドラム41の回転により牽引搬送された孔版原紙Gの後端を検出する。
【0083】
このとき、制御部20は、孔版原紙搬送検出センサ71により搬送経路上を搬送された孔版原紙Gの先端が検出された時点から、カッタ部材68により切断された孔版原紙Gの後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙Gの先端に挟み込んだ状態で回転された第1のドラム41の回転角度とに基づいて、孔版原紙Gの搬送量を算出し、算出された孔版原紙Gの搬送量と設定された搬送速度に基づいて算出された孔版原紙Gの搬送量との差が小さくなるように、プラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいてプラテン用パルスモータ65を制御する。
【0084】
これにより、新たにセンサ類を設けることなく、適切に孔版原紙Gの搬送を制御する。より具体的には、プラテンローラ66が熱膨張や熱収縮することにより、プラテンローラ66外径が変化して設計上の搬送速度と実際の搬送速度との間にズレが生じた場合においても、既存の孔版原紙搬送検出センサ71により検出された値を用いて、プラテンローラ66が熱膨張や熱収縮に応じた、次回の孔版原紙Gを製版する際の適切な搬送速度を設定することができる。
【0085】
また、制御部20は、最後に印刷処理を実行したときから所定の時間を経過した場合に実行されるアイドリング処理を実行する際、プラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正するようにしてもよい。ここで、アイドリング処理とは、最後に印刷した時刻と現在時刻とから求められる第1のドラム41又は第2のドラム51の放置時間が予め設定された時間を越えているとき、次回の製版動作に先立ち、無製版の孔版原紙Gを第1のドラム41又は第2のドラム51に巻装して紙を給紙せずに印刷と同じプレス動作を行うことによりインクを馴染ませる動作のことをいう。
【0086】
具体的には、印刷処理を実行する毎に現在日時を使用日時としてハードディスクに記憶し、新たな印刷処理の実行が要求されると共に、ハードディスクに記憶された使用日時からの経過時間が所定の設定時間を超えていると判定された場合に、製版処理の実行に先立ちアイドリング処理を実行する。そのアイドリング処理を実行する中で、無製版の孔版原紙Gを第1のドラム41又は第2のドラム51に巻装する際、制御部20は、孔版原紙搬送検出センサ71により搬送経路上を搬送された孔版原紙Gの先端が検出された時点から、カッタ部材68により切断された孔版原紙Gの後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙Gの先端に挟み込んだ状態で回転された第1のドラム41の回転角度とに基づいて、孔版原紙Gの搬送量を算出し、算出された孔版原紙Gの搬送量と設定された搬送速度に基づいて算出された孔版原紙Gの搬送量との差が小さくなるように、プラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正するようにしてもよい。
【0087】
これにより、無製版の孔版原紙Gを用いてプラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正することができるので、孔版原紙Gを無駄にすることなく、プラテン用パルスモータ65の搬送速度を補正することができる。
【0088】
また、本発明の一実施形態では、孔版原紙Gが着版された上流側のドラムにより印刷用紙Wの表面を印刷し、孔版原紙Gが着版された下流側のドラムにより印刷用紙Wの裏面を印刷する2ドラム式の両面孔版印刷装置1を例に挙げて説明したが、1ドラム式の両面孔版印刷装置や、1ドラム式の片面孔版印刷装置であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…両面孔版印刷装置
2…画像読み取り部部
3…給紙部
4…第1の印刷部
5…第2の印刷部
6…製版部
8…第1の排版部
9…第2の排版部
10…反転貯留部
11…排紙部
15…操作部
15a…表示/入力パネル
20…制御部
41…第1のドラム
42…原紙クランプ部
43…第1のプレスローラ
44…搬送ベルト
45…第1のメインモータ
46…第1の基準位置検出部
47…第1のロータリエンコーダ
51…第2のドラム
52…原紙クランプ部
53…第2のプレスローラ
55…第2のメインモータ
56…第2の基準位置検出部
57…第2のロータリエンコーダ
61…孔版原紙ロール
62…マスターホルダー
63…第2ガイドシャフト
65…プラテン用パルスモータ(搬送手段)
66…プラテンローラ
67…サーマルヘッド
67a…発熱体
68…カッタ部材
69…第1フィードローラ
70…孔版原紙溜め箱
71…孔版原紙搬送検出センサ(検出手段)
72…第2フィードローラ
73…第3フィードローラ
75…フィードローラ用パルスモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔版原紙が巻装されるドラムを有し、孔版原紙の先端を前記ドラムの外周部に挟み込んだ状態で回転することにより孔版原紙を前記ドラムに着版し、この着版されたドラムに印刷媒体を圧接することにより印刷処理を実行する孔版印刷装置であって、
設定された搬送速度に基づいて、前記孔版原紙を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送された孔版原紙に対して加熱穿孔するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドより下流側に設けられ、前記加熱穿孔された孔版原紙を切断するカッタ部材と、
前記カッタ部材より下流側に設けられ、搬送される孔版原紙の先端及び後端を検出する検出手段と、
前記検出手段により孔版原紙の先端が検出された時点から、前記カッタ部材により切断された孔版原紙の後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙の先端に挟み込んだ状態で回転されたドラムの回転角度とに基づいて、前記搬送手段の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいて前記搬送手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする孔版印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記検出手段により孔版原紙の先端が検出された時点から、前記カッタ部材により切断された孔版原紙の後端が検出された時点までの時間と、孔版原紙の先端に挟み込んだ状態で回転されたドラムの回転角度とに基づいて、孔版原紙の搬送量を算出し、前記算出された孔版原紙の搬送量と前記設定された搬送速度に基づいて算出された孔版原紙の搬送量との差が小さくなるように、前記搬送手段の搬送速度を補正し、この補正された搬送速度に基づいて前記搬送手段を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
最後に印刷処理を実行したときから所定の時間を経過した場合に実行されるアイドリング処理を実行する際、前記搬送手段の搬送速度の補正を行う
ことを特徴とする請求項1又は2記載の孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−43427(P2013−43427A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184587(P2011−184587)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)