説明

学習用具

【課題】 この発明は、学習者が問題とヒントを同時に見ることができないようにして問題のヒントに集中させ、かつ問題を解くときにはヒントが見えないことにより集中力、思考力、応用力を高める学習用具を提供することを課題とする。
【解決手段】 この発明の学習用具は、問題11とヒント12が記載された出題シート1と、前記出題シート1を載置するためのボード2と、前記出題シート1に記載された問題11を判読不可能にすると同時にヒント12を判読可能にするためのマスク部材3とで構成する。前記出題シート1に表示された問題11は常態で視認できるように表示し、ヒント12は常態では視認できずマスク部材3を通してのみ視認できるように不可視インクにより表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小学校低学年向けの学習用具であって、漢字や算数の学習に用いられる学習用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、小学校低学年向けの漢字や算数等の学習に用いる学習用具としては種々の学習用具が提供されている。例えば、漢字ドリルや計算ドリルがあるが、ただ問題を与えてこれに解答させるだけのものでは、なかなか解答することができないために途中で解答することをあきらめてしまう子供がいるばかりか、無味乾燥で子供の学習意欲を刺激することができず、結果として期待したほどの学習成果が得られない。
そこで、子供の学習意欲を刺激すべく、問題を読んで解答させる過程において、解答に至るにはどのように考えればいいのかといったヒントとなる観点を示し、すぐに子供が解答をあきらめてしまわないように配慮して、学習意欲を刺激する学習用具も提供されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−236260号公報
【0004】
上記特許文献に記載された発明はジグソーパズルを用いた学習用玩具であり、表面には絵柄が、裏面には問題が印刷されている複数のピースと、各ピースの問題に対応した解答が表示されているパズル板とからなるものである。そして、各ピースの表面に印刷された絵柄をヒントとして解答するものとなっている。
しかしながら、この発明では、ヒントが問題とは直接関係のないジグソーパズルの絵柄となっており、絵柄を手がかりに各ピースの適当な位置を探そうとする思考が強く働くこととなる。すなわち、子供は問題に解答するよりもパズルを完成させることに夢中になってしまう。この場合のように、パズルを完成させようとする思考は、その問題についての解答を導き出すという思考回路とは全く別物であって、漢字や計算などの学習について期待する学習効果を得ることは困難である。
【特許文献2】実開昭63−100775号公報
【0005】
上記特許文献に記載された考案は、問題と解答及び問題に直接関係するヒントが記載された学習カードを3枚の異色の着色透明板を備えた学習機の中に収納し、この着色透明板を1枚ずつ動かすことでヒントが徐々に判読可能となるものとなっている。この考案によれば、学習者は自らの意志でヒントを表示させることができ、このヒントを見ながら解答することができる。そして、そのヒントも問題と関連性があるものであるから、その問題についての解答を導き出す思考に広がりを与えるものであり、一定の学習効果を得ることができる。
この考案では、ヒントと問題が同時に表示されるようになっているため、学習者はヒントを見ながら問題を解答できる。しかも、学習者の任意の操作でヒントを表示することができるから、解答が得られるまでヒントと問題を照らし合わせながら検討することができることとなる。これでは、解答する際にヒントを見ることができるという安心感から、ヒントと問題の何れにも集中できず、集中力、思考力、応用力の向上に結びつかない。すなわち、ヒントはその問題の解答に至るためのポイントとなる観点が示されるものであり、考え方の指針となるものであるから、その観点を理解することが重要であるが、集中してヒントを検討し理解することができないとその考え方を身に付けることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、学習者が問題とヒントを同時に見ることができないようにして、問題のヒントに集中させ、かつ問題を解くときにはヒントが見えないことにより、集中力、思考力、応用力を高める学習用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、学習用具は、問題とヒントが記載された出題シートと、前記出題シートを載置するためのボードと、前記出題シートに記載された問題を判読不可能にすると同時にヒントを判読可能にするためのマスク部材とで構成する。前記出題シートに表示された問題は常態で目で見ることができるように表示し、ヒントは常態では目で見えずマスク部材を通してのみ目で見えるように不可視インクにより表示する。
【0008】
前記マスク部材は、出題シートが載置されるボード上に移動可能に取り付ける態様(請求項2)の他、前記ボードと独立させて使用者が対象となる問題及びヒントの上に適宜載置して使用する態様とすることもできる。
移動可能とするための構成としては、ボードの両側に溝を設けてこの溝にマスク部材の底部に形成した凸部を嵌めて摺動可能とする構成や、ボードの問題に対応する適宜位置に凹部又は凸部を設け、この凹部又は凸部にマスク部材の底部に形成した凸部又は凹部を嵌めるようにする構成が考えられる。
【0009】
また、マスク部材の構成は、ヒントボード収納部に出題シートに記載された問題を不可読化しヒントを可読化する色彩の付されたヒントボードを出入り可能に収納して構成する(請求項3、以下「スライド式」という。)他、枠体に出題シートに記載された問題を不可読化してヒントを可読化する色彩の付されたヒントボードを装着した構成とすることもできる。
後者の構成においては、枠体の一縁をボードに回動可能に固定し、不使用時には跳ね上げておき、使用時に出題シート上に倒すようにすることもできる(以下「可倒式」という。)。
前記ヒントボードは、出題シートに記載されたヒントを判読可能かつ問題を判読不可能にする特性を持つフィルムを枠体に取り付けたもの、又はシートであり、色彩その他の具体的な構造は問わない。そして、ヒントボード収納部は前記ヒントボードを収納するケース体であって、必要によりヒントボードを出し入れするための駆動装置を設ける。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2,3の発明において、マスク部材が一定時間問題を判読不可能となりヒントを判読可能な状態にした後、再びヒントを判読不可能かつ問題を判読可能な状態に自動的に復帰するようにしたものである。
一定時間を計る手段としては例えば5秒間など予め所定時間が固定されたタイマー手段の他、学習者が任意の時間を設定できるタイマー手段が考えられる。
例えば、マスク部材がスライド式である場合には、ヒントボードを引き出して所定時間が経過した後、自動的にヒントボードが収納部に収納される。また、可倒式である場合には、マスク部材を倒して所定時間が経過した後、自動的にマスク部材が跳ね上げられるというような態様が考えられる。
【0011】
請求項5の発明は、マスク部材又はボードにヒントボードを利用した回数がカウントされるカウンターを備えたものである。 前記カウンターは、マスク部材がスライド式の場合にはヒントボードの引き出しに連動して作動し、マスク部材が可倒式の場合にはマスク部材を倒す作動に連動して作動するものとするのが好ましいが、手動でカウントするものとしてもよい。
カウンタに加えて、メッセージボードを設け、ヒントボードの使用時間が所定時間経過したときに「解答しましょう」など学習者に解答を促すメッセージが表示されるようにしたり、回答を促す音声が発せられるようにすることもできる。
前記メッセージボードは、回答を促すメッセージが表示されたカードが所定時間経過時にマスク部材又はボードから跳ね上がるようにしたり、マスク部材又はボードにデジタル表示部を設けてここに表示されるようにする構成が考えられる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、学習者は学習に際して問題とヒントが記載された出題シートをボードに載置して解答にあたるが、ヒントは常態で見ることができない。そしてマスク部材を用いるとヒントは読めるが問題は読めない。すなわち、問題を見るときにはヒントが見えず、ヒントを見るときには問題が見えないので、ヒントを見ながら問題に解答することができない。したがって、学習者は最初に問題を見て解答に辿り着かない場合にはヒントボードを利用してヒントを見ることができるが、この場合、問題が見えないのでヒントに集中することができる。その結果、その問題について解答に至るためのポイント、考え方を身に付けることができ、読んだヒントを意識しながら問題を解くことができる。
さらに、通常は判読できないヒントがマスク部材を通して見た場合にのみ判読可能となることは学習者の関心を引くことができるので、学習者に本発明を利用した学習を促すことができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、ヒントを見る時間が限られているので、、不必要に長時間ヒントを見てしまうことがない。
【0014】
請求項5の発明によれば、前記ボード又はマスク部材には学習者がマスク部材を利用した回数をカウントできるカウンターが設けられているので、学習者は自分がどの程度ヒントを参照したかを認識することができ、学習意欲を刺激することができる。また、前記ボードにはヒントボードを利用した後に再びヒントを隠しながら問題が表示された時にメッセージが表示されるメッセージボードを設けると、学習者に何らかのメッセージ(例えば解答を促すメッセージなど)を伝えることで学習者の学習意欲を刺激することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
出題シート1を載置するためのボード2の上面にマスク部材3が取り付けてある。
前記出題シート1は、用紙の一側に問題11が通常のインクで印刷してあり、他側には前記問題を説くためのヒント12が、常態では肉眼で読むことができず赤色シートを透過したときに肉眼で読むことのできる不可視インクで印刷してある。前記問題11とヒント12とは、マスク部材3によって同時に覆われるように、用紙の上下方向同じ位置に、左右に並べて印刷してある。図には3組の問題とヒントが表示されている。
【0017】
前記ボード2は、方形の板であり、左右両側に溝21がほぼ全長に亘り形成してある。
【0018】
前記マスク部材3は、中空直方体で前後が開口したヒントボード収納部31にヒントボード32を装着して構成してある。前記ヒントボード収納部31の底面には凸部(図示しない)が形成してあり、この凸部が前記ボード2の溝21に嵌装されて、マスク部材3がボード2上を移動できるようにしてある。
前記ヒントボード32は透明な長方形の合成樹脂シートであって、出題シート1に表示された一組の問題とヒントを同時に覆うことのできる大きさとしてある。
出題シート1の問題11に対応する部分は、問題11を隠すために不透明インクを印刷した不透明部33としてあり、出題シート1のヒント12に対応する部分は、ヒント12の不可視印刷を読むことができるように透光性のある赤色インクを印刷した赤色部分34としてある。なお、赤色のシートを使用する場合は印刷は不要である。
【0019】
前記ヒントボード32の基部側は前記ヒントボード収納部31内に装着された作動部材に固定してあり、この作動部材の上部に設けられたレバー35がヒントボード収納部31の上部に設けられた長孔36から上方に突出し、このレバー35を操作することによりヒントボード32がヒントボード収納部31の開口部40から出入りするようにしてある。
また、前記レバー35の作動はカウンター37に連動させてあり、レバー操作の回数、すなわちヒントボード32を利用した回数がヒントボード収納部31のカウンター37に表示されるようにしてある。
【0020】
前記ヒントボード32の収納はレバー35の操作により行うほか、自動的にも行えるようにしてある。すなわち、ヒントボード収納部31内にタイマー(図示しない)が設置してあり、レバー35の操作によりヒントボード32が突出したときにタイマーが稼働し、所定時間(例えば5秒)経過後にレバー35操作用のモーター(図示しない)が動き、レバー35が原位置に復帰し、ヒントボード32がヒントボード収納部31に収納される。
また、前記ヒントボード収納部31にはメッセージカードの収納部38が設けてあり、このメッセージカードの収納部38にはポップアップ機構が設けてある。そして、前記タイマーの作動によりポップアップ機構が作動し、メッセージカードの収納部38に収納されたメッセージカード39が跳ね上がる。すなわち、ヒントボード32が収納されて問題が読めるようになったときに、メッセージカード39が跳ね上がる。
このメッセージカードには「問題を解こう」など問題を解くことを促すメッセージが表示されている。
【0021】
前記ヒントボード収納部31の開口部40にはリミットスイッチ(図示しない)が取り付けてあり、出題シートを開口部40に挿入することにより電源がONとなるようにしてある。
【0022】
上記実施形態の学習用具を用いる場合、まず出題シート1をボード2に載置し、出題シート1の天をヒントボード収納部31の開口部40に挿入する。この操作により電源がONとなる。
次いで、通常の要領で問題を解く。このとき、問題は読めるがヒントは読めない。解けないときにはレバー35を操作してヒントボード32を引き出す。ヒントボード32の位置が解こうとする問題に対応しない場合は、マスク部材3をボード2の溝21に沿って移動させて、適正な位置に合わせる。マスク部材3を図中下方へ移動させるとき、出題シートの天側はヒントボード収納部31の後側に設けられた開口部から突出する。
ヒントボード32で問題11とヒント12を覆うと、ヒント12は読めるが問題11は読めない。
ヒントボード32を引き出すとタイマーが作動し、所定時間経過後にヒントボード32は自動的にヒントボード収納部31に収納され、同時にメッセージカード39が跳ね上がり、問題を解くことが促される。
この状態では問題11は読めるがヒント12は読めないので、先に読んだヒント12を意識しつつ自力で問題を問くこととなる。
一度ヒント12を読んでもまだ問題を解けないときは、再度ヒントボード32を引き出す。これを問題が解けるまで繰り返すが、その繰り返し回数がカウンター37に表示される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、ヒントを容易に見ることができつつ、問題とヒントとを同時に見ることができないものであり、学習効果の向上を図ることができ、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施形態のヒントボードが収納された状態の斜視図
【図2】この発明の実施形態のヒントボードが突出した状態の斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 出題シート
2 ボード
3 マスク部材
11 問題
12 ヒント
21 溝
31 ヒントボード収納部
32 ヒントボード
33 不透明部
34 赤色部
35 レバー
36 長孔
37 カウンター
38 メッセージカード収納部
39 メッセージカード
40 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
問題とヒントが記載された出題シートと、前記出題シートが載置されるボードと、前記出題シートに記載された問題を判読不可能かつヒントを判読可能な状態にすることのできるマスク部材とよりなり、前記出題シートには問題が常態で可読に表示され、ヒントが前記マスク部材を通してのみ可読に表示された、学習用具
【請求項2】
マスク部材は、出題シートが載置されるボード上に移動可能に取り付けられた、請求項1記載の学習用具
【請求項3】
マスク部材は、ヒントボード収納部に出題シートに記載された問題を不可読化しヒントを可読化するヒントボードを出入り可能に収納して構成された、請求項1又は2に記載の学習用具
【請求項4】
ヒントボードは、一定時間問題を判読不可能かつヒントを判読可能にした後、再びヒントを判読不可能かつ問題を判読可能にした、請求項2又は3記載の学習用具
【請求項5】
出題シートを載置するボード又はマスク部材には、マスク部材を利用した回数がカウントされるカウンターが備えられた、請求項1ないし4の何れかに記載の学習用具


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate