説明

孫の手

【課題】
背中など手が届かない部位を掻く時に、掻き手部材が痒みを解消するに充分な掻き手幅に拡張でき、携帯する時には嵩張らないように、掻き手部材が狭まり先端柄部の内部に収納可能になるよう掻き手幅を変えることのできる孫の手を提供する。
【解決手段】
所要長になり得る伸縮可能な複数の中空筒体の嵌合体である柄部1の先端柄部1−2に係留凹部8を有した貫通長溝3を設け、長さの異なる曲形の爪部aを有した複数本の掻き手部材4を扇形に拡張できるように拡張部材6を係止し連結保持した掻き手部材4を、連結部材7で貫通長溝3に沿ってスライド可能に取り付け、前記連結部材7を先端開口部9方向へ移動させると先端柄部1−2の内部に収納されていた掻き手部材4が連結部材7とともに引っ張られ、突出しながら拡張部材6の左右方向への反発力で扇形に押し広がり掻き手幅が拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手が届かない背中などの部位を掻く機能としての孫の手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手が届かない背中などの部位を掻く用具として竹製の孫の手が古くから使われている。また、掻き手部の指部と肘関節部が曲がる孫の手がある(例えば特許文献1参照)。更に多機能掻痒解消具としての孫の手がある(例えば特許文献2参照)。また、柄部が数段階に伸縮する携帯用孫の手が知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−57009号公報
【特許文献2】特開2005−224510号公報
【特許文献3】実公昭62−160935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示のように指や肘関節部が曲がる孫の手はあるが掻き手幅を自在に変えられる孫の手が見当たらない。特許文献2に開示の孫の手においては一定幅の掻き手部を持つので嵩張ってしまい、置き場所や収納などに困る。また、特許文献3に開示のような携帯用孫の手に至っては、掻き手幅がより狭くなっており、なかなか痒みを解消できないという問題があり、このような問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明は、所要長になり得る伸縮可能な複数の中空筒体の嵌合体である柄部の先端柄部の内部に挿入された掻き手部材が、先端柄部の先端開口部から、突出しながら掻き手部材の掻き手幅を拡張する孫の手を提供するものである。先端は曲形の爪部を有した基部は穴を設けた長さの異なる指状の掻き手部材を複数本、扇形に広がるように配置し連結糸で連結し、基部の各穴に連結部材を貫通させて保持するとともに、中央部に貫通穴を有し左右方向への反発力で拡張する拡張部材を前記掻き手部材とともに連結部材を貫通させて保持し、前記拡張部材の両端部を両外側部に位置する前記掻き手部材に係止し、前記連結部材が先端柄部に設けた途中係留凹部を有した貫通長溝に沿ってスライド可能に取付ける。前記連結部材を前記貫通長溝の先端柄部の先端開口部方向へ移動させると、前記連結部材と連結保持されている掻き手部材が、先端柄部の内部より引き上げられ先端柄部の先端開口部から突出しながら前記拡張部材の左右方向への反発力で掻き手部材が扇形に広がり掻き手幅を拡張する。また前記連結部材を前記貫通長溝の底部に移動させることにより扇形に開放された前記掻き手部材が閉じられて先端柄部の内部に収納可能とした孫の手を提供する。
【0005】
なお先端柄部の中空筒体に、掻き手部材と同寸またはそれ以上の長さの途中係留凹部を有した貫通長溝を設けても良い。
【0006】
また、長さの異なる指状の掻き手部材の内、最長の掻き手部材を中央に、次長の掻き手部材を左側又は右側に、中長の掻き手部材を右側又は左側に、短長の掻き手部材をより左側又は右側に、最短長の掻き手部材をより右側又は左側の様に交互に配置して、複数本の掻き手部材が扇形に拡張するようにしても良い。
【0007】
さらに、長さの異なる指状の掻き手部材の内、最長の掻き手部材を最外側として順に、次長の掻き手部材をその隣側に、中長の掻き手部材を前記次長の掻き手部材の隣側に、短長の掻き手部材を前記中長の掻き手部材の隣側に、最短長の掻き手部材を前記短長の掻き手部材の隣側に組み、複数本の掻き手部材が扇形に拡張するようにしても良い。

【発明の効果】
【0008】
上述のように、本発明は、所要長になり得る伸縮可能な複数の中空筒体の嵌合体である柄部の先端柄部の内部に挿入された掻き手部材が、先端柄部の先端開口部から、突出しながら左右方向への反発力で扇形に拡張するように掻き手部材を先端柄部に連結している孫の手だから、掻き手部材が掻くに十分な幅に拡張する。
【0009】
また、掻き手部材の組み方を、中央を中心に左右交互に組むことで、中心から左右に扇形に拡張するので、柄部からの力がより均等に伝わり強度も保て、満足な掻き心地が得られる。また掻き手部材の組み方を端から順に組むことにより、右利きや左利きにも対応可能である。
【0010】
さらに、背中などの手が届かない箇所を掻けるのは勿論のこと、連結部材を先端柄部に設けた途中係留凹部を有した貫通長溝内の係留凹部に係留することで掻き手部材の掻き手幅の調節ができるので、服の着用時でも襟首や袖口に合わせて、入りやすいように掻き手部材の掻き手幅を変えることができる。また、貫通長溝の長さを掻き手部材の長さと同寸またはそれ以上設け、掻き手部材全体を柄部の先端柄部の内部に挿入することで掻き手部材を先端柄部の内部に収納でき、掻き手部材の嵩張りが解消され、よりコンパクトになりバックや背広の内ポケットなどにも入り携帯にも便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7 に基づいて説明する。
図1は柄部1の先端柄部1−2に掻き手部材4が収納されている状態で、3本の中空筒体の嵌合体を伸縮可能に連接して縮めた柄部1は約15cm程度のものであるが、携帯するのに嵩張らない程度の10〜20cmでもよい。伸縮可能な中空筒体の嵌合体である柄部1と先端柄部1−2は、3本連接して構成し、ステンレス製のものを用いている。
【0012】
図2は先端柄部1−2の内部に収納されていた掻き手部材4を先端柄部1−2の先端開口部9より突出させ、中央を中心に左右に広がる扇形に押し広げた状態で、柄部1、1、と先端柄部1−2は約30cm程度に引き伸ばした状態を示している。柄部1、1、と先端柄部1−2は20〜50cmでもよい。直接目で確かめられない背中など手が届かない部位を掻くので、柄部1、1、と先端柄部1−2はある程度の強度のあるもので、なおかつあまり重たく感じられないもので竹や合成樹脂などの中空筒体を2〜4本程度連接して所要長に伸縮可能な嵌合体であれば好適である。
【0013】
また、先端柄部1−2には係留凹部8を設けた貫通長溝3を形成し、前記貫通長溝3の長さは掻き手部材4と同寸またはそれ以上の長さを有する。ここでは、6cm程度の貫通長溝3を設けた。また、前記貫通長溝3の長さは掻き手部材4の長さより短く設けてもよく、1.5cm〜10cmでもよい。更に、貫通長溝3に設けた係留凹部8は連結部材7が係留可能な深さがあり、実施例では2箇所設けているが、1箇所でも3箇所でもよい。
【0014】
図3は先端柄部1−2の内部に収納されていた掻き手部材4を先端柄部1−2の先端開口部9より突出させ、中央を中心に左右に広がる扇形に押し広げた状態の掻き手部材4と先端柄部1−2と柄部1を示している。掻き手部材4の本数はここでの実施例は5本であるが、3〜8本でもよい。
【0015】
また掻き手部材4の組み方は、最長の掻き手部材4−1を中央にして、次長の掻き手部材4−2を左側に、中長の掻き手部材4−3を右側に、短長の掻き手部材4−4をより左側に、最短長の掻き手部材4−5をより右側に配置し、最長の掻き手部材4−1を中央にその他の掻き手部材4−2、4−3、4−4、4−5を左右交互に組んで、組んだ掻き手部材4が均等に扇形に広がるよう連結糸5であるポリエステル糸で連結している。連結糸5は綿糸やナイロン糸でもよい。
【0016】
図4は図3を斜視図で示している。また掻き手部材4の組み方を、最長の掻き手部材4−1を中央にして、次長の掻き手部材4−2を右側に、中長の掻き手部材4−3を左側に、短長の掻き手部材4−4をより右側に、最短長の掻き手部材4−5をより左側に配置し、最長の掻き手部材4−1を中央にその他の掻き手部材4−2、4−3、4−4、4−5を左右交互に組んでもよく、組まれた各掻き手部材4に力が伝わりやすいように、最長の掻き手部材4−1を中央に左右に広がる扇形に組んでものよい。
【0017】
さらに、拡張部材6は、掻き手部材4を左右方向へその反発力で拡張するために、中央部に設けた貫通穴と掻き手部材4の基部に設けた各基部の穴b を一致させ、連結部材7を貫通させて保持する。なお、拡張部材6の一端を、組んだ外側の掻き手部材4−5に、拡張部材6の他端を組んだ外側の掻き手部材4−4に係止する。連結部材7は実施例としてビスを使用し、拡張部材6としてバネを使用している。拡張部材6はゴムなどでもよいが耐久性のあるものが望ましい。また、拡張部材6は組んだ掻き手部材4に係止するので、掻き手部材4と拡張部材6とともに先端柄部1−2の中空筒体に収まる程度の厚みのものが良い。
【0018】
そして、掻き手部材4に拡張部材6を係止し、連結部材7を貫通させて保持するとともに、先端柄部1−2に設けた途中係留凹部8を有した貫通長溝3に沿って連結部材7をスライド可能に取付けて、掻き手部材4と先端柄部1−2を連結させた孫の手として構成している。
【0019】
連結部材7を先端柄部1−2の先端開口部9方向にスライドすることによって、先端柄部1−2の内部に収納されていた掻き手部材4が、連結部材7と連結保持されているため、先端柄部1−2の先端開口部9方向へ押し出され、先端柄部1−2の内部で圧縮されていた拡張部材6の左右方向への弾力復元力により掻き手部材4が中央を中心に左右に扇形に広がり掻き手部材4の掻き手幅を拡張する。また連結部材7を先端柄部1−2の先端開口部9の底部へ引き下げると、連結部材7と連結保持されている掻き手部材4の基部が先端柄部1−2の内部に引き込まれ、拡張していた拡張部材6が先端柄部1−2の先端開口部9から先端柄部1−2の中空筒体の内部に入ることによって圧縮され、掻き手部材4が掻き手幅を狭めながら先端柄部1−2の内部に挿入され収納される。
【0020】
図5は先端柄部1−2の内部に掻き手部材4が挿入されている状態の断面図である。実施例では掻き手部材4を5本用いているが、掻き手部材4の本数を増加していくと、本数分組んだ掻き手部材4の厚みと拡張部材6の厚みとともに収納可能な先端柄部1−2の中空筒体の直径が必要とされ、先端柄部1−2と連接している嵌合体である柄部1も必然的に太くなっていく。また、掻き手部材4の本数を増加する場合は、先端柄部1−2の先端開口部9の両外側を切り込んで、掻き手部材4を大きく開放するようにしてもよい。
【0021】
図6は掻き手部材4を示している。掻き手部材4は直接皮膚に当たる部分であるので感触の良い竹を使用しているが、合成樹脂などでもよい。掻き手部材4は、厚さ0.2cm、幅0.8cmで、長さは最長の掻き手部材4−1を5.2cm、次長の掻き手部材4−2を4.9cm、中長の掻き手部材4−3を4.6cm、短長の掻き手部材4−4を4.3cm、最短長の掻き手部材4−5を4cmの指状で、先端に曲形の爪部aと基部に穴b を設けた長さの異なる掻き手部材4を5本用いた。長さの異なる掻き手部材4の曲形の爪部aは掻く皮膚部位に均等に当たるように曲形を変えて形成し、触感を良くしたものである。 さらに、長さの異なる掻き手部材4の曲形の爪部aは掻き手部材4が順に重なり合えるように形成したものである。また、掻き手部材4の厚さは0.1〜0.5cm、幅0.5〜1.5cm、長さは最長の掻き手部材4を4〜10cm、最短長の掻き手部材4を3〜9cm程度にしてもよい。
【0022】
図7は長さの異なる指状の掻き手部材4の内、最長の掻き手部材4−1を最外側として順に、次長の掻き手部材4−2をその隣側に、中長の掻き手部材4−3を前記次長の掻き手部材4−2の隣側に、短長の掻き手部材4−4を前記中長の掻き手部材4−3の隣側に、最短長の掻き手部材4−5を前記短長の掻き手部材4−4の隣側に組んでいるので、掻き手部材4が一方方向に広がる扇形に拡張することにより、右利きや左利きにも対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例となる孫の手の掻き手部材が先端柄部の内部に収納され、柄部を最短に縮めた状態の正面図である。
【図2】本発明の実施例となる孫の手の掻き手部材が最大幅に拡張し、柄部を最長に伸ばした状態の正面図である。
【図3】本発明の実施例となる孫の手の掻き手部材が最大幅に拡張した状態を示す正面図である。
【図4】本発明の実施例となる孫の手の掻き手部材が最大幅に拡張した状態の斜視図である。
【図5】本発明の実施例となる孫の手の掻き手部材が先端柄部の内部に収納された状態の断面図である。
【図6】本発明の実施例となる孫の手の掻き手部材の正面図である。
【図7】本発明の異なる実施例となる孫の手の掻き手部材が最大幅に拡張した状態の正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 柄部
1−2 先端柄部
3 貫通長溝
4 掻き手部材
5 連結糸
6 拡張部材
7 連結部材
8 係留凹部
9 先端開口部
a 曲形の爪部
b 基部の穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要長になり得る伸縮可能な複数の中空筒体の嵌合体である柄部(1)の先端柄部(1−2)の内部に挿入された掻き手部材(4)が、先端柄部(1−2)の先端開口部(9)から突出しながら拡張する孫の手であって、先端は曲形の爪部(a)を有し基部は穴(b )を設けた長さの異なる指状の掻き手部材(4)を複数本、扇形に基部の各穴(b )に連結部材(7)を貫通させて保持するとともに、中央部に貫通穴を有し、左右方向への反発力で拡張する拡張部材(6)を前記掻き手部材(4)とともに連結部材(7)を貫通させて保持し、前記拡張部材(6)の両端部を両外側部に位置する前記掻き手部材(4)に係止し、前記連結部材(7)が先端柄部(1−2)に設けた途中係留凹部(8)を有した貫通長溝(3)に沿ってスライド可能に取付けられ、前記連結部材(7)を前記貫通長溝(3)の底部に移動させることにより扇形に開放された前記掻き手部材(4)が閉じられて柄部(1)の先端柄部(1−2)の内部に収納可能としたことを特徴とする孫の手。
【請求項2】
上記所要長になり得る伸縮可能な複数の中空筒体の嵌合体である柄部(1)の先端柄部(1−2)の中空筒体に、掻き手部材(4)と同寸またはそれ以上の長さの途中係留凹部(8)を有した貫通長溝(3)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の孫の手。
【請求項3】
長さの異なる指状の掻き手部材(4)の内、最長の掻き手部材(4−1)を中央に、次長の掻き手部材(4−2)を左側又は右側に、中長の掻き手部材(4−3)を右側又は左側に、短長の掻き手部材(4−4)をより左側又は右側に、最短長の掻き手部材(4−5)をより右側又は左側の様に交互に配置して、複数本の掻き手部材(4)が扇形に拡張することを特徴とする請求項1又は2に記載の孫の手。
【請求項4】
長さの異なる指状の掻き手部材(4)の内、最長の掻き手部材(4−1)を最外側として順に、次長の掻き手部材(4−2)をその隣側に、中長の掻き手部材(4−3)を前記次長の掻き手部材(4−2)の隣側に、短長の掻き手部材(4−4)を前記中長の掻き手部材(4−3)の隣側に、最短長の掻き手部材(4−5)を前記短長の掻き手部材(4−4)の隣側に組み、複数本の掻き手部材(4)が扇形に拡張することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の孫の手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−279152(P2008−279152A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127563(P2007−127563)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(305024846)
【Fターム(参考)】