説明

宇宙環境試験装置

【課題】直線的に移動する開閉扉に適用でき、しかも、真空容器の大きさが異なっていても対応が可能で、開閉扉周辺の作業スペースも十分に確保することができる冷媒配管接続構造を備えた宇宙環境試験装置を提供する。
【解決手段】開閉扉13を水平方向に設けたガイドレール14によって直線移動可能に支持した宇宙環境試験装置であって、扉部シュラウドを冷却するための液化窒素が流れる固定冷媒配管23,24と、扉部シュラウドから扉の外側に引き出された扉部冷媒配管17,18とを屈曲自在な可撓性断熱配管26,27で接続するとともに、この可撓性断熱配管を開閉扉より上方位置で水平方向に天井部又は壁部から支持したステージ25の上面に移動可能に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙環境試験装置に関し、詳しくは、宇宙環境試験装置における真空容器本体に設けられた開閉扉内部の扉部シュラウドに冷媒である液化窒素を供給するための冷媒配管の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙環境試験装置は、宇宙の冷暗黒を模擬するため、高真空に排気される真空容器の内周部に、内面を黒色の高輻射率塗装で塗装され、液化窒素によって冷却されるシュラウドを設けている。円筒状真空容器の軸方向端部にヒンジによって開閉可能に支持された開閉扉内部の扉部シュラウドに液化窒素を供給するための冷媒配管(供給側配管及び回収側配管)の接続構造として、前記扉部シュラウドを冷却するための液化窒素が流れる固定冷媒配管と、前記扉部シュラウドから開閉扉の外側に引き出された扉部冷媒配管とを屈曲自在な可撓性断熱配管で接続することにより、冷媒配管を着脱することなく扉を開閉できるようにした宇宙環境試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−137200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1に記載された接続構造では、開閉扉を直線的に移動させて真空容器本体を開閉する宇宙環境試験装置には、そのままでは適用できなかった。また、可撓性断熱配管を保持するステージの一部を扉側に固着し、残部を真空容器本体側に固着しているので、真空容器の大きさなどに応じて個別に設計、製作する必要があった。
【0004】
そこで本発明は、直線的に移動する開閉扉に適用でき、しかも、真空容器の大きさが異なっていても対応が可能で、開閉扉周辺の作業スペースも十分に確保することができる冷媒配管接続構造を備えた宇宙環境試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の宇宙環境試験装置は、真空容器本体の内部に本体部シュラウドを、該真空容器本体に設けられた開閉扉の内部に扉部シュラウドをそれぞれ有し、前記扉部シュラウドを冷却するための液化窒素が流れる固定冷媒配管と、前記扉部シュラウドから扉の外側に引き出された扉部冷媒配管とを屈曲自在な可撓性断熱配管で接続した宇宙環境試験装置において、前記開閉扉を水平方向に設けられたガイドレールによって直線移動可能に支持し、前記可撓性断熱配管を開閉扉より上方位置で水平方向に配置したステージの上面に移動可能に載置するとともに、前記ステージを、宇宙環境試験装置を収納した収納体の天井部又は壁部から支持したことを特徴としている。
【0006】
さらに、本発明の宇宙環境試験装置は、前記可撓性断熱配管は、前記固定冷媒配管との接続部及び扉部冷媒配管との接続部から開閉扉の移動方向に向かって互いに平行に延設される一対の直線部と、反接続部側の直線部同士を繋ぐ円弧部とを有し、開閉扉の移動に伴って一方の直線部が短縮するとともに他方の直線部が伸張して円弧部が移動するように設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の宇宙環境試験装置によれば、開閉扉を直線移動させて真空容器本体を開閉する宇宙環境試験装置においても、冷媒配管を着脱することなく開閉扉を開閉することができる。特に、可撓性断熱配管を支持するステージを宇宙環境試験装置の収納体、通常は宇宙環境試験装置を設置した建屋の天井部や壁部で支持することにより、ステージ下方の床部分を作業スペースとして使用することができる。また、ステージの支持部材を真空容器から切り離した状態としているので、開閉扉の移動距離が同程度ならば、真空容器の大きさに関係なく対応が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図は本発明の宇宙環境試験装置の一形態例を示すもので、図1及び図2は開閉扉を閉じた状態の宇宙環境試験装置を示す平面図及び正面図、図3及び図4は開閉扉を開いた状態の宇宙環境試験装置を示す平面図及び正面図である。
【0009】
宇宙環境試験装置を構成する円筒状真空容器11は、容器軸線を水平方向として床部に固定された真空容器本体12と、該真空容器本体12の一端部に着脱可能にフランジ結合される開閉扉13とを備えている。開閉扉13は、容器軸線に平行な方向に敷設した床面のガイドレール14に沿って直線的に移動する台車15の上に設けられており、開閉扉13の開き位置は、ガイドレール14の終端に設けられたストッパー14aにより規制されている。
【0010】
真空容器本体12及び開閉扉13の内部には、従来と同様の本体部シュラウド及び扉部シュラウド(いずれも図示省略)がそれぞれ設けられており、各シュラウドには、真空容器本体12及び開閉扉13の上部にそれぞれ突設したヘッドタンク12a,13aを介して本体部冷媒供給管16,本体部冷媒回収管17,扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19がそれぞれ接続されている。
【0011】
また、宇宙環境試験装置を設置した建屋の床部からは、図示しない冷媒供給手段や冷媒回収手段に接続した主供給管21及び主回収管22が立ち上がっており、前記本体部冷媒供給管16及び本体部冷媒回収管17は、これらの主供給管21及び主回収管22からそれぞれ分岐し、建屋天井部からの吊り金具等によって固定されている。
【0012】
一方、前記扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19と、前記主供給管21及び主回収管22からそれぞれ分岐した扉側固定供給管23及び扉側固定回収管24とは、ステージ25に移動可能に載置された可撓性断熱配管26,27を介して接続されている。ステージ25は、四方組みされた外枠28の中に容器軸線に平行な方向の支持部材29を複数本設けたものであって、梁30等の建屋天井部部材や柱等の建屋壁部部材に取り付けた吊り金具31により、開閉扉13よりも上方位置で水平方向に支持されている。
【0013】
扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19と、扉側固定供給管23及び扉側固定回収管24とは、可撓性断熱配管26,27を円弧状に屈曲させたときの円弧の最小直径よりも大きな距離を隔ててステージ25の一端側(開閉扉側)に設けられており、各管の可撓性断熱配管26,27との接続方向がステージ25の他端方向(真空容器本体側)を向くように配置されている。
【0014】
可撓性断熱配管26,27は、例えば、周知の真空断熱フレキシブルホースからなるものであって、扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19との接続部18a,19a、扉側固定供給管23及び扉側固定回収管24との接続部23a,24aから開閉扉13の移動方向(容器軸線方向)に向かって互いに平行に延設される各一対の直線部26a,26b,27a,27bと、反接続部側の直線部同士を繋ぐ半円形の円弧部26c,27cとを有するU字状となっており、この円弧部26c,27cが前記支持部材29上にスライド可能に支持されている。
【0015】
このような状態でステージ25に載置された可撓性断熱配管26,27は、開閉扉13の開閉の際に開閉扉13と一緒に移動する扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19の位置に応じて変形する。図1に実線で示すように、開閉扉13が閉じているときには、扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19がステージ25の上部に進入し、扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19側の直線部26a,27aの長さは、扉側固定供給管23及び扉側固定回収管24側の直線部26b,27bよりも短くなり、円弧部26c,27cは、ステージ25の真空容器本体側端部に位置した状態となっている。
【0016】
この状態から開閉扉13を開いていくと、開閉扉13と共に扉部冷媒供給管18の接続部18a及び扉部冷媒回収管19の接続部19aが図3に示す位置へ移動する過程で、扉側固定供給管23及び扉側固定回収管24側の直線部26b,27bが次第に短縮するとともに、扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19側の直線部26a,27aが次第に伸張し、円弧部26c,27cは、ステージ25の真空容器本体側から開閉扉側に向かって次第に移動する状態、すなわち、直線部26b,27bの反接続部側が円弧部26c,27cの一部となり、円弧部26c,27cの直線部26a,27a側が直線部26a,27aの反接続部側となるようにして、見掛け上、円弧部26c,27cがステージ25上を開閉扉13の移動方向に向かって移動していく状態となる。開閉扉13を閉じる際には、開閉扉13の移動に伴って円弧部26c,27cがステージ25上を真空容器本体側に向かって逆方向に移動する状態となる。
【0017】
したがって、可撓性断熱配管26,27の長さは、開閉扉13を開閉する際の円弧部26c,27cの移動量に応じて設定され、また、扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19と、扉側固定供給管23及び扉側固定回収管24との距離は、可撓性断熱配管26,27の最小屈曲可能直径に応じた距離以上に設定される。
【0018】
このような冷媒配管接続構造を採用することにより、開閉扉13の開閉の際に扉部冷媒供給管18及び扉部冷媒回収管19と扉側固定供給管23及び扉側固定回収管24とを着脱する必要がなくなり、開閉扉13の開閉を容易に行うことができる。また、管接続時の漏洩試験や管取り外し時の昇温操作も不要となるので、開閉扉13の開閉に要する作業を大幅に削減できるとともに、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0019】
さらに、真空容器本体12や開閉扉13のヘッドタンク12a,13aより上方にステージ25を配置し、この宇宙環境試験装置を収納した建屋の天井部や壁部でステージ25を支持したことにより、宇宙環境試験装置周辺の作業空間を十分に確保することができ、開閉扉13の開閉や真空容器本体12内の機器の搬入、搬出も容易に行うことが可能となる。
【0020】
また、ステージ25や可撓性断熱配管26,27等を円筒状真空容器11から独立した状態で形成することができるので、径や長さ等の形状が異なる宇宙環境試験装置にも同じような配管構造を適用することができ、宇宙環境試験装置全体の製作コストを低減することが可能である。さらに、ステージ25の上面部分で可撓性断熱配管26,27と接触する部分を低摩擦状態になるように加工したり、低摩擦材料、例えばフッ素樹脂板等で被覆したりすることにより、前述の円弧部26c,27cの移動を円滑化することができる。
【0021】
なお、各シュラウドの構造や形式は任意であり、特に限定されるものではない。また、ステージ25は、水平とすることが望ましいが、ガス溜まりが生じない程度の僅かな傾斜があってもよい。さらに、ステージ25の上面を平面板状とし、この平面板上を円滑に移動する部材によって可撓性断熱配管26,27を間接的にステージ25で支持することも可能である。また、開閉扉13の開閉方向は、容器軸線と直交する方向であってもよく、開閉扉13を上吊り形式とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】開閉扉を閉じた状態の宇宙環境試験装置を示す平面図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】開閉扉を開いた状態の宇宙環境試験装置を示す平面図である。
【図4】同じく正面図である。
【符号の説明】
【0023】
11…円筒状真空容器、12…真空容器本体、12a,13a…ヘッドタンク、13…開閉扉、14…ガイドレール、14a…ストッパー、15…台車、16…本体部冷媒供給管、17…本体部冷媒回収管、18…扉部冷媒供給管、18a,19a…接続部、19…扉部冷媒回収管、21…主供給管、22…主回収管、23…扉側固定供給管、23a,24a…接続部、24…扉側固定回収管、25…ステージ、26,27…可撓性断熱配管、26a,26b,27a,27b…直線部、26c,27c…円弧部、28…外枠、29…支持部材、30…梁、31…吊り金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器本体の内部に本体部シュラウドを、該真空容器本体に設けられた開閉扉の内部に扉部シュラウドをそれぞれ有し、前記扉部シュラウドを冷却するための液化窒素が流れる固定冷媒配管と、前記扉部シュラウドから扉の外側に引き出された扉部冷媒配管とを屈曲自在な可撓性断熱配管で接続した宇宙環境試験装置において、前記開閉扉を水平方向に設けられたガイドレールによって直線移動可能に支持し、前記可撓性断熱配管を開閉扉より上方位置で水平方向に配置したステージの上面に移動可能に載置するとともに、前記ステージを、宇宙環境試験装置を収納した収納体の天井部又は壁部から支持したことを特徴とする宇宙環境試験装置。
【請求項2】
前記可撓性断熱配管は、前記固定冷媒配管との接続部及び扉部冷媒配管との接続部から開閉扉の移動方向に向かって互いに平行に延設される一対の直線部と、反接続部側の直線部同士を繋ぐ円弧部とを有し、開閉扉の移動に伴って一方の直線部が短縮するとともに他方の直線部が伸張して円弧部が移動することを特徴とする請求項1記載の宇宙環境試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate