説明

安全衛生管理および検査事業促進のための方法ならびにそのシステム

【課題】 コンピュータおよび通信ネットワークで結合された安全衛生管理システムで全国規模の総合的システム管理を行うことにより、安全で快適な職場及び社会環境を形成する。
【解決手段】 企業から委託を受けた安全衛生管理会社がその企業の総合的な労働安全衛生管理および検査促進事業を行ない、企業の労働者が就業する特定の場所に設置された安全衛生システム装置26(27、28、29)で、個々の労働者が携帯するIDカードに記録された、労働安全衛生法を遵守するために必要な少なくとも個人データ、所属事業者データを含む労働経歴データを保存し、必要に応じてその内容を更新してデータベースを構築し、通信ネットワーク経由で委託を受けた企業に公開する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安全衛生管理および検査事業促進のための方法ならびにそのシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、人間によって形成されている社会環境はじめ職場での安全衛生上起きる事故などの諸問題、自然災害以外の多くは、人間が起因し発生していると言っても過言ではない。今後日本社会は、少子化に伴い、職場の高齢化、外国からの労働者の参入が更に進み、全ての企業で働く人々の安全衛生管理の充実が強く望まれる。特に、日本の労働法は、主要各国と比較しても極めて高度な法整備がされているが、実体は企業格差があり、安全衛生管理上の整備は、まだまだ遅れているのが現状である。
【0003】労働法の整備の遅れている理由としては、各企業個々の社内規則、マニュアル等をもとに、自主管理されており、中小零細企業で働く労働者はじめ、派遣社員、アルバイト、日雇い労働者などにおいては、自己管理主義で、作業所の防災環境の面においても、今後改善すべき課題が山積している。例えば、土木、建築関連企業の安全衛生管理は、労働基準法、安全衛生法の法規に定められた規定内で実施されており、諸負企業側で作成されたマニュアルにのっとった書類作成、及び安全指導、安全教育、安全管理が行われている場合が一般的である。
【0004】前記の環境で労働する場合、総括安全衛生責任者は、作業所の長が選任され、規定書類は作業が終了するまで保存されているが、長期保存はされないケースが多い。特に、下請け業者(二次)、孫請業者(三次)の極めて重要な作業者名、作業内容についての詳細な記録についても同様である。そのため、労働者の作業経歴など二次、三次下請会社の、在籍証明のみで、個人事業者、日雇労働者、外国人労働者の、実務及び経歴を証明することが困難であり、所得申告等においても、不透明な点が多い。又中小零細企業事業者は法規上の義務は理解しながらも、資金面等の問題で事業者の義務である安全衛生法で定める安全教育、安全指導、安全管理についても徹底されていないのが現状である。また、企業等におけるリストラの普及に伴い、安全衛生管理者の不足も進むものと思われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の安全衛生管理では、災害事故などが発生しても、死亡事故等の大きな事故等はともかく、小さな事故等においては労働基準監督署に対しての報告もされないケースが多かった。また、二次、三次業者又、中小零細で働く労働者の責任で処理されるケースが多く、労働者が不当に不利な扱いを受けることもあった。
【0006】なお、欧米等では、ユニオン制度で労働者の労災に関する保護は極めて充実しており、我国の労働環境も欧米並みの水準にすることが望まれる。特に、末端で働く労働者一人々の作業時間、作業内容、作業場所等、個人記録は所属している企業が長期間記録保存していないため、個人が独立する時に必要な実務及び経歴等公的証明をしてもらえないなど諸々の問題点も指摘されている。また、決められた就業時間に対する対価も守られない場合があり、労働者にとって極めて不適切な状態が存在した。そして、経営者側は、就労データがないことにより税金に対する不正を行なうことができるため、不都合であった。
【0007】さらに、快適な作業環境を形成する為には、日々の詳細なデータの分析が不可欠であり、又改善するためには極めて重要な資料である。特に、小さな事故を無視することが重大な事故につながる危険性が極めて大きく、従来の安全衛生管理方法では、働く労働者一人々のデータおよび経営者側のデータを総合的管理するシステムが無いところに問題がある。
【0008】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、監視指導する行政をはじめ、事業者、労働者、地域社会の人々の責任、又働く職場での管理体制の明確化、安全衛生上の自主活動が極めて重要であることから、企業から委託を受けた安全衛生管理会社がその企業の総合的な労働安全衛生管理事業を行なうことを前提とし、安全衛生管理会社がコンピュータ、通信ネットワークから成る安全衛生管理システム装置を用い、全国ネットで総合的システム管理を行なうことにより、安全で快適な職場及び社会環境を形成することのできる安全衛生管理および検査事業促進のための方法ならびにそのシステムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために請求項1に記載の発明は、委託を受けた安全衛生管理会社がその委託先の総合的な労働安全衛生管理事業を行なう安全衛生管理事業促進のための方法であって、委託先の労働者が就業する特定の場所に設置された安全衛生システム装置で、個々の労働者が携帯するIDカードに記録された、労働安全衛生法を遵守するために必要な少なくとも個人データ、所属事業者データを含む労働経歴データを保存し、その内容が変化したときに更新してデータベースを構築し、通信ネットワーク経由で前記委託先に公開することとした。
【0010】このことにより、労働者が就業する特定の場所に設置される安全衛生システム装置で、労働安全衛生法を遵守するために必要な全てのデータをコンピュータならびにインターネット等通信ネットワークを介し、IDカードに記録された個人データ、企業データを基に、労働者の安全確保、就業する場所での災害防止、作業所内外における環境衛生の充実、労働者の健康維持管理の促進を行なうために用いることができる。
【0011】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の安全衛生管理および検査事業促進のための方法において、前記IDカードの更新は、労働者が就業する特定の場所を入退出するときに、労働安全衛生法遵守のためになされた教育の受講、健康診断、資格取得、事故災害発生の少なくとも一つが行われたことに基づいてなされることとした。
【0012】このことにより、IDカードに記録されたデータに基づき、あるいはIDカードに記録されたデータに基づきローカルに構築されるデータベースを参照することにより、労働者の作業データをリアルタイムで得ることができ、実働時間チェック、労働経歴、賞罰等についても検索でき、コンピュータにより必要書類を随時作成することができる。
【0013】請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の安全衛生管理および検査事業促進のための方法において、関係監督官庁、医療機関、保険会社、検査機関が持つコンピュータシステムの少なくとも一つと通信ネットワークを構築することによって前記安全衛生管理会社が管理するデータベースを公開することにした。
【0014】このことにより、関係監督官庁で必要とする書類は勿論のこと、安全衛生管理会社による管理の下でコンピュータによって記録されたデータの出し入れが自由となり、医療機関、あるいは保険会社との連携により災害発生時の対応の迅速化が期待できる。また、検査会社による査察の際にもその結果記録、および必要な記録をリアルタイムに取り出すことができる。
【0015】請求項4の発明は、委託を受けた安全衛生管理会社がその企業の総合的な労働安全衛生管理および検査事業を行なう安全衛生管理および検査事業促進システムであって、企業の労働者が就業する特定の場所に設置され、個々の労働者が携帯するIDカードに記録された、労働安全衛生法を遵守するために必要な少なくとも個人データ、所属事業者データを含む労働経歴データを保存し、その内容が変化したときに更新してデータベースを構築する安全衛生システム装置と、前記安全衛生システム装置とは通信ネットワーク経由で接続され、前記安全衛生システム上に構築されるデータベースの写しが転送され、前記データベースに基づき前記委託先の総合的な労働安全衛生管理および検査のための指導記録および必要な書類作成を行なう前記安全衛生管理会社に設置されたホストコンピュータとを備えることとした。
【0016】上記構成により、労働者が就業する特定の場所に設置される安全衛生システム装置で、労働安全衛生法を遵守するために必要な全てのデータをコンピュータならびにインターネット等通信ネットワークを介し、IDカードに記録された個人データ、企業データを基に、労働者の安全確保、就業する場所での災害防止、作業所内外における環境衛生の充実、労働者の健康維持管理の促進を行なうことのできる安全衛生管理および検査事業促進システムを提供することができる。
【0017】請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の安全衛生管理および検査事業促進システムにおいて、前記安全衛生システム装置は、更に、前記構築されるデータベースの少なくとも一部を前記通信ネットワーク経由で前記委託先に設置された企業内ホストコンピュータに公開することとした。上記構成により、例えば、企業内ホストコンピュータで必要なデータをリアルタイムに得ることができ、関係官庁への提出書類等コンピュータによる作成、提出が可能となる。
【0018】請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の安全衛生管理および検査事業促進システムにおいて、前記安全衛生システム装置は、前記IDカードに記録されたデータをリードライトすることによって労働者の入退場をチェックする入退場IDコントローラと、前記IDカードに記録されたデータに基づきローカルなデータベースを構築すると共に、前記IDカードの記録内容が変化したときに更新し、前記データベースに反映させる安全衛生管理端末装置とを備えることとした。
【0019】上記構成により、IDカードに記録されたデータに基づき、あるいはIDカードに記録されたデータに基づきローカルに構築されるデータベースを参照することにより、労働者の作業データをリアルタイムで得ることができ、実働時間チェック、労働経歴等についても検索でき、コンピュータにより必要書類を随時作成可能な安全衛生管理および検査事業促進システムを提供することができる。
【0020】請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の安全衛生管理および検査事業促進システムにおいて、前記安全衛生システム装置は、更に、労働者が就業する特定の場所に設置された監視カメラを備え、監視カメラで撮影した内容を記録保存することにより不測の事態が発生した際の原因究明時に再現することにより改善指導に役立てることにした。上記構成により、不測の事態が発生した際に撮影した内容を再現することで原因究明をはかり、改善のための資料を作れることになる。また、撮影した内容を参考とすることにより再発防止に貢献することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の安全衛生管理および検査事業促進のための方法を実現するビジネスモデルの概略を示す図である。図中、1は労働基準監督署、2は元請施工会社、3は工事事務所、4は工事作業所、5、6、7は、それぞれ、一次、二次、三次下請け施工会社、8は安全衛生管理会社を示す。
【0022】労働基準監督署1は、工事作業員が就業するにあたり、労働基準法を遵守しているか、同法を遵守した作業を厳守しているか、安全パトロールを実行しているか、定期的な健康診断を行なっているか等を常にチェックし、元請施工会社2を監督し、行政指導ならびに改善命令を発する。
【0023】作業所現場を含む元請施工会社2は、産業廃棄物等の管理を行なう他、各作業所での安全衛生管理マニュアル作り、監督官庁への提出書類の作成を行ない、1次〜3次下請け施工会社5〜7の作業員の名簿を作成する。また、社内外における作業員の安全衛生管理を行ない、朝礼、体操、作業報告等も行なう。更に、安全パトロールの実施、事故、災害等不測の事態が発生したときの記録、報告書の作成も行なう。
【0024】企業である元請施工会社2(委託先)は、安全衛生管理会社8と業務契約を締結することにより、前記した自身で行なうべき安全衛生管理業務の一部を委託する。安全衛生管理会社8は、元請施工会社2の安全衛生管理業務の代行を行ない、各作業所に設置された入退場システムゲート81による作業員の入退場管理、集計管理を行なうと共に、コンピュータ管理82による労働者の健康管理の記録保存、関係官庁への提出書類作成代行、作業所、所長等に対する報告書の作成等を行なう。
【0025】前記したコンピュータ管理82は、安全衛生管理会社8が発行し、各作業員に携帯させるIDカードに記録される、労働安全衛生法を遵守するために必要な、少なくとも個人データ、所属事業者データを含む労働経歴データの検査に基づき構築されるデータベースを参照することによって行われる。なお、安全衛生管理会社8と提携関係にある保険会社9、および検査会社(機関)10は、安全衛生管理会社8の管理の下でコンピュータ管理82により構築されるデータベースをアクセスできるのとする。
【0026】図2は、本発明における安全衛生管理事業促進システムのシステム構築の一例を示す図である。図2において、21は、安全衛生管理会社8が持つ本部ホストコンピュータであり、元請施工会社等企業側ホストコンピュータ22、23、24、25ならびに各工事作業所4(図1参照)に設置される安全衛生システム装置26、27、28、29、そして、下請け企業(一次、二次、三次等)が持つコンピュータ31、32、33、34とは専用回線、もしくはインターネット等通信ネットワーク回線30を介して接続される。
【0027】安全衛生システム装置26(27、28、29)は、安全衛生端末装置41(42、43、44)を核に、入退出IDコントローラ45(46、47、48)、場内外監視カメラ49(50、51、52)から構成される。ここで、場内外監視カメラ49として魚眼レンズを用い、可能な範囲で広角に画像をとらえるものとし、撮影した内容を記録保存しておくことにより不測の事態が発生した際の原因究明時に読み出し、再現するものとする。
【0028】なお、31は保険会社が持つホストコンピュータ、32は検査会社が持つホストコンピュータであり、安全衛生管理会社8(図1参照)が持つ本部ホストコンピュータ21とは図示しない監督官庁のホストコンピュータと共に、インターネット等通信ネットワーク回線30経由で接続されるものとする。
【0029】本発明の安全衛生管理および検査事業促進のための方法は、安全衛生管理会社8が企業等事業者(元請施工会社2)から委託を受けて総合的な労働安全衛生管理事業および検査促進事業を行なうものである。労働者が就業する特定の場所に設置される安全衛生システム装置26(27、28、29)で、労働安全衛生法を遵守するために必要な全てのデータをコンピュータならびにインターネット等通信ネットワークを介し、IDカードに記録された個人データ、企業データを基に、労働者の安全確保、就業する場所での災害防止、作業所内外における環境衛生の充実、労働者の健康維持管理の促進を行なう。
【0030】特に、中小零細企業で働く労働者の経歴証明、技能資格、各種免許の取得に必要な講習、また、中小零細企業者に対しての安全衛生法上の改善に必要な、国による支援等の斡旋をコンピュータ、インターネット等を利用し、全国規模で一元管理することにより、国が求める労働者をはじめ、事業者の意識を高め、安全衛生の高揚、および社会環境の推進等による社会貢献を可能とする。
【0031】安全衛生システム装置26(27、28、29)が持つ安全衛生端末装置41の内部構成を図3に示す。安全衛生端末装置41は、CPU411を制御中枢とし、プログラム乃至デ―タが格納されるROM412、RAM413、大容量ハードディスク装置(HDD)414、TCP/IP(Transport Control Protocol/Internet Protocol)インタフェース415、IDカードリーダライタ416、IEEE1394ビデオインタフェース417、そして、グラフィックコントローラ(GDC)418、ビデオキャプチャボード419で構成される。前記した411〜418の各コンポーネントは、アドレス、データ、コントロールのためのラインが複数本で構成されるシステムバス420に共通接続される。
【0032】TCP/IPインタフェース415は、接続されるインターネット網30との通信インタフェースを司り、IEEEビデオインタフェース417は、場内外監視カメラ49により撮影された画像を取り込み、HDD414に圧縮して保存しておく。大容量ハードディスク装置414には、他に、後記する工事作業員毎、IDカードに記録された労働安全衛生法を遵守するために必要な少なくとも個人データ、所属事業者データを含む労働経歴データに基づくローカルなデータベースが構築され、格納される。グラフィックコントローラ418は、更にビデオキャプチャボード419に接続され、ここでHDD414に保存された動画像データの再生が行なわれ、外部接続される表示モニタに表示される。
【0033】図4に、IDカードに記録されるデータフォーマットの構造ならびにIDカードに記録されたデータに基づく、安全衛生管理端末装置41のHDD414にローカルに構築されるデータベースの構造を示す。ここではIDカードとして非接触のタイプを用いるものとし、このIDカードは、工事作業所内で就業する労働者が常に携帯し、入退場時に設置してある入退館システムゲート81(図1参照)で各人の入出データが集録される。
【0034】IDカードは、形状がクレジットカード大で個人及び属する企業名等30項目以上の情報が記録される。個人データとしては、顔写真、指紋、氏名、性別、生年月日、血液型、本籍地、現住所、電話番号、緊急連絡先、家族構成、健康保険番号、業種、経歴、所属する企業団体名及び所属部署名、取得資格の有無、有の場合は資格名、登録番号、安全衛生に関する受講の有無、有の場合は受講日・受講場所、健康診断書、検診医療機関名・住所・電話番号、指示医の有無、有の場合は医院名・医師名、住所・電話番号等が考えられる。
【0035】また、企業及び団体データとしては、企業名・本社・支社・営業所等所在地住所・電話番号、代表者名、所属する部署名・直属長名・連絡番号・緊急連絡先、雇用年月日、従事している経歴、役職名、経験年数等が考えられる。
【0036】図5、図6は、それぞれ、安全衛生管理端末装置41(42、43、44)、本部ホストコンピュータ21の動作をフローチャートで示した図である。以下、図5、図6に示すフローチャートを参照しながら図2乃至図4に示す本発明実施形態の動作について説明する。安全衛生管理会社8は、企業から委託を受けて元請施工会社2の安全衛生管理業務を代行するものとし、まず、工事作業者に対してIDカードを発行する(ステップS51)。IDカード発行に際し、本部ホストコンピュータ21は、企業から通知される個々の工事作業者の名簿に従い、また、その経歴に基づき新規のIDカードにデータを記録して元受施工会社2に渡す。そして、安全衛生システム装置26(27、28、29)は、そのIDカードを携帯した作業者が入退場システムゲート81を入退場する毎、HDD414に構築されるデータベース(DB)にその時刻等入退場記録を書き込む(ステップS53)。
【0037】次に、安全衛生システム装置26(27、28、29)は、工事作業者の労働経歴を更新すべきイベントがあったか否かをチェックする。更新すべきイベントとしては、安全衛生教育受講、健康診断、資格取得、事故災害発生等が考えられる(ステップS54〜S57)。前記したいずれか1個のイベントが発生したときに安全衛生システム装置26(27、28、29)は、工事作業者毎、HDD414に構築されるローカルDBの更新を行なう(ステップS58)と共に、そのデータをIDカードに書き込む(ステップS59)。
【0038】更新されたデータベースの内容は、本部ホストコンピュータ21から要求があったときに(ステップS60)、あるいは、必要に応じて企業側ホストコンピュータ22(23、24、25)に転送する(ステップS61)。なお、図5に示すフローチャートには記載されていないが、IDカード発行後、カード所有者本人が個人災害保険に加入しているか否かをチェックし、加入していた場合に、適当なタイミングで報告審査を行ない、ローカルDBを更新する処理も行われる。そして、安全衛生管理会社8から転送要求があった場合にその検査記録を送信し、保険会社9が持つホストコンピュータ31との間で必要なデータの交換が行われる。
【0039】一方、本部ホストコンピュータ21は、随時データベースの転送要求を発し(ステップS62)、転送データを受信して本部DBを更新する(ステップS63、S64)。即ち、安全衛生システム装置26(27、28、29)が持つHDD414上に構築されるローカルDBを検索して変更分のデータを吸い上げる。そして、それらデータの解析を行ない(ステップS65)、要求に従い、入退場集計データ、健康診断記録、関係官庁への提出書類等を作成する(ステップS66〜S68)。
【0040】ここでは、本部ホストコンピュータ21の役割として入退場集計データ、健康診断記録、関係官庁への提出書類等作成のみ示したが、他に、企業側への報告書作成等、多々あり、企業側ホストコンピュータ22(23、24、25)、安全衛生システム装置26(27、28、29)との機能分散によってそれぞれの負担が決まる。
【0041】ここで、安全衛生管理会社8で行なわれる事業の概要について説明する。安全衛生管理会社8は、主に、企業の事業所内外で働く労働者の安全衛生に関する労働基準法、および安全衛生法に定められた規定書類を本部ホストコンピュータ21または安全衛生システム装置26(27、28、29)等コンピュータによって作成する。また、企業の事業所内外で働く労働者の安全衛生に関する労働基準法、および安全衛生法に定められた安全衛生上の教育、指導、および上記したコンピュータによる総合管理を行なう。
【0042】具体的には、工場、作業所内外の労働者の安全衛生教育、およびマニュアルの作成、安全パトロールによる安全衛生上の改善指導、教育および監視、搬入機材等の安全検査、改善指導、産業廃棄物等の搬入出チェックおよび最終処理状況等の確認である。
【0043】また、査察の際におけるインスペクターの目視による鉄筋の配筋検査、コンクリート強度検査が行なわれ、検査報告書の作成、その記録保存も行なわれる。その他、検査会社10により、構造物の重要な一定部分または特定部分の検査、記録が行なわれる。
【0044】さらに、安全衛生法で定められた規定書類および教育、指導、管理等必要上の記録のコンピュータによる長期保存、工場作業所内外で働く労働者の日別詳細記録および長期保存、労働者の長期間にわたる就業状況記録および実務経験証明書作成代行を行なう。このため、作業所内に、安全衛生端末装置41(42、43、44)、IDカードコントローラ45(46、47、48)、場内外監視カメラ49(50、51、52)で構成される安全衛生システム装置26(27、28、29)が設置される。
【0045】そして、公的医療機関による作業場内で健康診断の実施を行ない、また、関係官庁提出書類を前記したコンピュータによって作成し、また、記録保存し、事故災害等不測の事態発生時の原因分析、安全対策の構築、記録保存が行なわれる。更に、各種有資格者取得のための講習会の開催、安全衛生法上の国の援助に関する認定制度、融資制度、助成制度に関する支援代行も行なわれる。
【0046】前記した各イベント(既存するデータと異なる事項)発生の都度、安全衛生システム装置26(27、28、29)上に構築されるデータベースを更新し、随時、労働者が携帯するIDカードの記録も同期をとって更新するものである。なお、本発明の安全衛生管理および検査事業促進のための方法ならびにそのシステムを導入して好適な対象作業所例としては、土木作業所、建築作業所、製造業、炭鉱・鉱山作業所、造船作業所、港、駅、トラックターミナル等荷役作業所、倉庫保管作業所、産業廃棄物処理場、アルバイトを含む人材派遣所、運輸配送関連、発電所・電気、電機設備作業所、サービス関連オフィス、炉鋼所等多岐に渡る。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、安全衛生管理システムで全国規模な総合的システム管理を行なうことにより、安全で快適な職場及び社会環境を形成することができ、本システムを導入する企業側にとって以下に列挙する効果が得られる。
【0048】(1)安全衛生管理についての資格を有する社内専門職を雇用するより人件費の削減になる。
(2)安全衛生管理についての資格を有する作業者が必要なく、現場用員は技術者及び事務職で良い。
(3)入退場システムにより施工会社、作業員データの長期保存が可能となる。
(4)安全衛生管理会社に委託をすることにより専門職による安全指導の徹底が図れる。
(5)労務管理についての事務的業務が簡素化される。
【0049】(6)リアルタイムで場内外作業者のチェックが出来る。
(7)非常時の連絡体制の確立がしやすい。
(8)作業員の個別健康管理にも役立つ。総合的な経費の領域になる。
(9)現場直接外注経費で計上出来る。
【0050】(10)カードの販売により雑収入を得られる。
(11)全工事作業員の動員数などがリアルタイムでデータをとる事が可能になる。
(12)優良作業員の確保も可能になり、良くない作業員のチェックも出来る。
(13)下請け会社における作業員の実動時間のチェックも可能になる。
(14)保険会社、検査会社、関係監督官庁、医療機関等は、労働経歴データに基づき構築されるデータベースを参照することで、災害などの異常発生時に迅速で正確なデータに基づく対応が可能となる。
(15)転職希望者および派遣職希望者が自己の履歴書、職歴書を作成する手間が省ける上に、信頼度の高い個人データを提供できる。
【0051】また、本発明により、以下に列挙する社会的、経済的な効果も得られる。
(1)コンピュータ、インターネットを利用した新規事業の確立が可能である。
(2)委託をした安全衛生管理会社の専門職による指導教育管理により、職場の安全衛生面の徹底が図れる。
【0052】(3)都市部だけではなく、地方での雇用の促進に貢献できる。
(4)経験豊富な高齢者の雇用の促進が図れる。
(5)早期による健康チェックで医療費(健康保険)の削減につながる。
(6)個人事業者、日雇労働者、フリータ、アルバイタ、外国人労働者などに対しての健康管理面での充実、及び実務経験証明を受けることにより、独立した起業化の創出が可能になる。
【0053】(7)健康診断の受診が、労働者個別ではなく、作業所毎で一括検診を受けることが出来る。
(8)中小零細企業に対する安全衛生管理面での充実と意識の高揚が図れる。
(9)非常時、災害時での早期対応が可能になる。
【0054】(10)個人事業者、日雇い労働者、フリータ、アルバイタや外国人労働者等の実務経歴保証が可能となる。
(11)産業廃棄物処理などによる地域の安全及び環境保護の充実が図れる。
(12)企業側工場及び作業所内の環境改善の促進につながる。
(13)納税面ですべての労働者末端まで徹底が図れる。(労働者および経営者の脱税阻止にもつながる)また、総合的な安全防災面で一層の充実を図る事が可能になる。
(14)保険会社、検査会社等は、重複した調査をすることがなく、経済的,人的労力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の安全衛生管理事業促進のための方法を実現するビジネスモデルの概略を示す図である。
【図2】 本発明における安全衛生管理事業促進システムのシステム構築の一例を示す図である。
【図3】 図2に示す安全衛生システム装置が持つ安全衛生端末装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】 IDカードに記録されるデータフォーマットの構造ならびに安全衛生管理端末装置にローカルに構築されるデータベースの構造を示す図である。
【図5】安全衛生管理端末装置の動作をフローチャートで示した図である。
【図6】 本部ホストコンピュータの動作をフローチャートで示した図である。
【符号の説明】
1…労働基準監督署、2…元請施工会社(企業)、8…安全衛生管理会社、9…保険会社、10…検査会社、21…安全衛生管理会社本部ホストコンピュータ、22(23、24、25)…企業側ホストコンピュータ、26(27、28、29)…安全衛生管理システム装置、30…通信ネットワーク回線、41(42、43、44)…安全衛生管理端末装置、45(46、47、48)…入退出IDコントローラ、49(50、51、52)…場内外監視カメラ、81…入退場システムゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 委託を受けた安全衛生管理会社がその委託先の総合的な労働安全衛生管理および検査事業を行なう安全衛生管理および検査事業促進のための方法であって、委託先の労働者が就業する特定の場所に設置された安全衛生システム装置で、個々の労働者が携帯するIDカードに記録された、労働安全衛生法を遵守するために必要な少なくとも個人データ、所属事業者データを含む労働経歴データを保存し、その内容が変化したときに更新してデータベースを構築し、通信ネットワーク経由で前記委託先に公開することを特徴とする安全衛生管理および検査事業促進のための方法。
【請求項2】 前記IDカードの更新は、労働者が就業する特定の場所を入退出するときに、労働安全衛生法遵守のためになされた教育の受講、健康診断、資格取得、事故災害発生の少なくとも一つが行われたことに基づいてなされることを特徴とする請求項1に記載の安全衛生管理および検査事業促進のための方法。
【請求項3】 関係監督官庁、医療機関、保険会社、検査機関が持つコンピュータシステムの少なくとも一つと通信ネットワークを構築することによって前記安全衛生管理会社が管理するデータベースを公開することを特徴とする請求項1に記載の安全衛生管理および検査事業促進のための方法。
【請求項4】 委託を受けた安全衛生管理会社がその委託先の総合的な労働安全衛生管理および検査事業促進を行なう安全衛生管理および検査事業促進システムであって、委託先の労働者が就業する特定の場所に設置され、個々の労働者が携帯するIDカードに記録された、労働安全衛生法を遵守するために必要な少なくとも個人データ、所属事業者データを含む労働経歴データを保存し、その内容が変化したときに更新してデータベースを構築する安全衛生システム装置と、前記安全衛生システム装置に通信ネットワーク経由で接続され、前記安全衛生システム上に構築されるデータベースの写しが転送され、前記データベースに基づき前記委託先の総合的な労働安全衛生管理および検査促進事業のための指導記録および必要な書類作成を行なう前記安全衛生管理会社に設置されたホストコンピュータとを備えたことを特徴とする安全衛生管理および検査事業促進システム。
【請求項5】 前記安全衛生システム装置は、更に、前記構築されるデータベースの少なくとも一部を前記通信ネットワーク経由で前記委託先に設置された企業内ホストコンピュータに公開することを特徴とする請求項4に記載の安全衛生管理および検査事業促進システム。
【請求項6】 前記安全衛生システム装置は、前記IDカードに記録されたデータをリードライトすることによって労働者の入退場をチェックする入退場IDコントローラと、前記IDカードに記録されたデータに基づきローカルなデータベースを構築すると共に、労働者の前記IDカードの記録内容が変化したときに更新し、前記データベースに反映させる安全衛生管理端末装置とを備えたことを特徴とする請求項4に記載の安全衛生管理および検査事業促進システム。
【請求項7】 前記安全衛生システム装置は、更に、労働者が就業する特定の場所に設置された監視カメラを備え、監視カメラで撮影した内容を記録保存することにより不測の事態が発生した際の原因究明時に再現することによって改善指導に役立てることを特徴とする請求項5に記載の安全衛生管理および検査事業促進システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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