説明

安定なテプレノン製剤

【構成】 テプレノンとL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを含有する安定なテプレノン製剤。 L−アスコルビン酸脂肪酸エステルとしては、脂肪酸部分の炭素数が12〜20のもの、特にL−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル等が好ましく、またその配合量は、テプレノンに対し0.1〜1wt%である。
【効果】 本発明のテプレノン製剤は、有効にテプレノンの分解を防ぐことができるので、長期保存可能なテプレノン製剤として極めて価値の高いものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はテプレノン製剤に関し、更に詳細には長期間にわたって安定に保存することのできるテプレノン製剤に関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】次の式(I)、
【化1】


で表されるテプレノンは、既に50年近く前から知られている化合物であるが(Helv. Chim. Acta. 28, 590, (1945))、近年、イソプレン単位と極性基を有する化合物が消化性潰瘍に有効であることが報告され、これに関連してテプレノンも再脚光をあび、消化性潰瘍治療剤として開発されている。
【0003】しかしながら、テプレノンを含めイソプレン単位を有する化合物は酸化に弱く、実用化にあたってはその問題の解決が求められていた。
【0004】この解決方法としては、抗酸化剤を添加することが容易に着想されるが、テプレノンは油溶性であるため、使用される抗酸化剤も油溶性化合物に制限されるという欠点があった(特公昭62−9096号)。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、テプレノン製剤の安定化に関し、種々検討した結果、水溶性であり、容易に入手でき、しかも安全性の高いL−アスコルビン酸を、その脂肪酸エステルとして使用すればテプレノンを長期間にわたって安定に保持できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】すなわち本発明は、テプレノンとL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを含有する安定なテプレノン製剤を提供するものである。
【0007】本発明において、抗酸化剤として用いるL−アスコルビン酸脂肪酸エステルは、ビタミンCとして知られるアスコルビン酸と、脂肪酸のエステルであり、既に公知の化合物である。 本発明で用いるL−アスコルビン酸脂肪酸エステルは、その脂肪酸部分の炭素数が大きくなればなるほど油溶性となり、テプレノンと混和しやすくなるので、脂肪酸部分の炭素数として12〜20のものを利用することが好ましく、特に炭素数16〜18のものが好ましい。
【0008】本発明の安定なテプレノン製剤は、常法に従い、有効成分としてのテプレノンに上記のL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを配合し、製剤化すれば良い。
【0009】より具体的には、テプレノンに対し、好ましくは0.1〜1wt%のL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを混和し、更に必要に応じて適当な薬学的に許容される担体を用いて製剤化すれば良い。 製剤中のテプレノンの配合量は、好ましくは5〜60wt%程度とすれば良い。
【0010】L−アスコルビン酸脂肪酸エステルの使用量が上記範囲より少ないと、抗酸化作用は十分でなく、また、上記範囲を越える場合は抗酸化作用に問題はないが、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルによる着色の問題が生ずることがあり製剤上あまり好ましくない。
【0011】テプレノンとL−アスコルビン酸脂肪酸エステルの混和に当っては、まず、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルを適当な溶剤、例えばエタノール等に溶解させ、次いでこれをテプレノンと混合し、最後に溶剤を除去しても良い。
【0012】本発明の安定なテプレノン製剤は、種々の剤形、例えば粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、ペースト剤等とすることができ、これに応じた適当な担体、例えば、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等を適宜使用することが可能である。
【0013】
【発明の効果】本発明のテプレノン製剤は、後記実施例に示すようにテプレノンの分解を防ぐことができるので、長期保存可能なテプレノン製剤として極めて価値の高いものである。
【0014】
【実施例】次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例になんら制約されるものではない。
【0015】実 施 例 1テプレノン細粒製剤:表1に示す配合組成および下記製法により、テプレノン細粒製剤を調製し、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル(以下、「L−ASE」と略称することがある)のテプレノンに対する安定化作用を調べた。 安定性試験は、製剤色調の変化およびテプレノン分解生成物の有無を薄層クロマトグラフィで調べることにより行った。 これらの結果を表2〜4に示す。
【0016】( 配合組成 )


【0017】( 製 法 )L−ASEのエタノール溶液とテプレノンを混和し、軽質無水ケイ酸に吸着させた。40℃で6時間乾燥してエタノールを除いた後、乳糖を混合し、常法にしたがって製剤化して細粒を得た。
【0018】( 安定性試験 )
製剤保存条件40℃40℃、75%RH製剤保存期間1週間、2週間、4週間判定項目外観 :目視純度試験:薄層クロマトグラフ法展開溶媒 クロロホルム検出 P−アニスアルデヒド硫酸
【0019】( 試験結果 )40℃、75%RHで保存後の色調変化は、表2の通りである。


【0020】40℃での保存後におけるテプレノン分解生成物の生成を表3に、40℃、75%RHでの保存後の分解生成物の生成を表4にそれぞれ示した。 なお、表3および表4において、薄層クロマトグラフ上に分解物のスポットが認められるものを○、認められないものを×として示した。
【0021】


【0022】


【0023】以上の結果から、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステルはテプレノンの安定化剤として使用できることが明かとなり、その使用量はテプレノンに対し、0.1%以上必要であることも示された。
【0024】また、本製剤の色調変化に影響するのはテプレノンの分解と、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステルの酸化の両者であり、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルの添加量がテプレノンに対し1%を越えた場合は、これが原因と考えられる変色が認められる。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】 テプレノンとL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを含有する安定なテプレノン製剤。
【請求項2】 L−アスコルビン酸脂肪酸エステルを、テプレノンに対し、0.1〜1wt%含有せしめた請求項第1項記載の安定なテプレノン製剤。
【請求項3】 L−アスコルビン酸脂肪酸エステルの脂肪酸部分の炭素数が12〜20である請求項第1項または第2項記載の安定なテプレノン製剤。
【請求項4】 L−アスコルビン酸脂肪酸エステルとして、脂肪酸部分の炭素数が12〜20のL−アスコルビン酸脂肪酸エステルの1種または2種以上を用いる請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の安定なテプレノン製剤。
【請求項5】 L−アスコルビン酸脂肪酸エステルがL−アスコルビン酸ステアリン酸エステルまたはL−アスコルビン酸パルミチン酸エステルである請求項第1項〜第4項の何れかの項記載の安定なテプレノン製剤。