説明

安定な抗体含有組成物

本発明は、安定かつ粘性が低い(<50cP)、詳細には安定な抗体含有組成物だがこれに限らないタンパク質含有組成物、及び治療における、詳細には前記安定なタンパク質の皮下送達のための前記安定なタンパク質の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定かつ粘性が低い、詳細には安定な抗体だがこれに限らないタンパク質を含有する液体組成物、及び治療における、詳細には前記安定なタンパク質の皮下送達のための前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリン、モノクローナル抗体(mAb)及びヒト化抗体は長年にわたって医薬製品として開発されている。患者にとってより高い利便性をもたらす皮下投与の可能性のため、mAbの高濃度液体製剤を開発することには明らかな誘因がある。しかしながら、mAbの高濃度製剤の開発は、免疫原性応答の可能性を亢進し同様に低い生物活性を生じさせる可溶性凝集物のみならず不溶性凝集物の形成増加などの、mAbの物理的及び化学的安定性に関して重大な課題を提起するという一般的なコンセンサスがある。
【0003】
液体医薬組成物保存中のポリペプチドによる凝集物形成は、そのポリペプチドの生物学的活性に悪影響を及ぼすことが可能であり、医薬組成物の治療的有効性の喪失をもたらす。そのうえ、凝集物形成はポリペプチド含有医薬組成物が注入システムを用いて投与される場合の管類、膜又はポンプの閉塞などの他の問題の原因となり得る。
【0004】
そのうえ、mAbの高濃度製剤は粘度増加をもたらし、それにより製造性及び注射性について重大な課題を生み出すことが報告されている。
【0005】
高濃度mAbの液体製剤の凝集及び粘度を制御することは些事ではない。市場でほんのわずかのmAb製品しか高濃度液体製剤(≧100mg/ml)として存在しないという事実が複雑さを表示する。NaClは粘度を低下させ、またある程度凝集を制御することもできることを示す論文が発表されている(EP1981824)。ショ糖もまた、優先排除メカニズムによって凝集物の形成に対してmAbを安定化することが示されている。しかしながら、適切な安定剤を同定することは、この分野において未だ経験科学である。
【0006】
比較的大量の塩及びバッファーなどの電解質が高濃度mAb製剤の粘度を低下させるのに用いられることは周知である(EP1981824)。WO01/24814(Chiron Corporation)は、アミノ酸塩基(amino acid base)を安定剤として含む液体ポリペプチド含有医薬組成物を記述する。EP1336410(中外製薬株式会社)は、生理活性タンパク質及び少なくとも1つの糖を無痛化剤として含有する注射可能な医薬製剤を記述する。EP1314437(中外製薬株式会社)は、グリシン及び/又はヒスチジンバッファーを含む抗体含有調製物を記述する。WO02/30463(Genentech, Inc)は、低減された粘度並びに少なくとも約50mMの量の塩及び/又はバッファーを有する濃縮されたタンパク質製剤を記述する。EP1475100(中外製薬株式会社)は、有機酸及び界面活性剤を安定剤として含む抗体含有溶液を記述する。EP1475101(中外製薬株式会社)は、糖を安定剤として含む抗体含有溶液を記述する。WO2004/001007(IDEC Pharmaceuticals Corporation)は、約2mMから約48mMまでの範囲のヒスチジン又は酢酸バッファーから基本的になる濃縮された抗体組成物を記述する。WO2004/016286(Abbot Laboratories (Bermuda) Ltd.)は、pHが約4から8の間であるヒト抗体の製剤を記述する。WO2005/123131(Medimmune Vaccines, Inc)は、抗体又はワクチンを噴霧乾燥するための製剤を記述する。WO2007/003936(Insense Limited)は、タンパク質及びイオン化可能な基を有する1つ又は複数の安定化剤を含む安定な水性系を記述する。WO2007/092772(Medimmune, Inc.)は、Fc変異タンパク質及び1mMから100mMの間の緩衝剤を含む液体タンパク質製剤を記述する。US2004/0022792(Immunex Corporation)は、約2.8から約4.0の間のpHでタンパク質を安定化する方法を記述する。US2003/0180287(Immunex Corporation)は、ポリペプチドの長期保存に適した水性医薬組成物を記述する。WO2008/071394(F. Hoffmann-La Roche AG)は、抗体を含有する安定な医薬非経口製剤を記述する。WO2009/120684及びWO2008/121615(MedImmune Inc)はいずれも、ヒトインターフェロンアルファポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその断片の高濃度液体製剤を記述する。WO2009/070642(MedImmune Inc)は、二重特異性抗体又はその断片の安定な凍結乾燥製剤を記述する。EP1977763(中外製薬株式会社)は、1つ又は複数のアミノ酸を含む抗体含有安定化組成物を記述する。US2004/0197324(Genentech, Inc)は、低減された粘度を有する高度に濃縮された抗体及びタンパク質製剤を記述する。WO2008/132439(University of Strathclyde)は、凝集を予防又は低減させると主張される沈殿安定化組成物を記述する。US2007/0020255(協和発酵工業株式会社)は、溶液へのグリシン及びクエン酸の添加を含む、溶液中の抗体を安定化する方法を記述する。US2007/0184050(麒麟麦酒株式会社)は、グルタミン酸バッファー及び/又はクエン酸バッファー中に抗体を含有する安定な液体製剤を記述する。US2009/0280129(Genentech, Inc)は、高濃度の抗体及びタンパク質製剤を記述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP1981824
【特許文献2】WO01/24814
【特許文献3】EP1336410
【特許文献4】EP1314437
【特許文献5】WO02/30463
【特許文献6】EP1475100
【特許文献7】EP1475101
【特許文献8】WO2004/001007
【特許文献9】WO2004/016286
【特許文献10】WO2005/123131
【特許文献11】WO2007/003936
【特許文献12】WO2007/092772
【特許文献13】US2004/0022792
【特許文献14】US2003/0180287
【特許文献15】WO2008/071394
【特許文献16】WO2009/120684
【特許文献17】WO2008/121615
【特許文献18】WO2009/070642
【特許文献19】EP1977763
【特許文献20】US2004/0197324
【特許文献21】WO2008/132439
【特許文献22】US2007/0020255
【特許文献23】US2007/0184050
【特許文献24】US2009/0280129
【特許文献25】米国特許第4,816,567号
【特許文献26】WO2010/000721
【特許文献27】PCT2009EP067598
【特許文献28】WO2009/103113
【特許文献29】WO2009/077483
【特許文献30】WO2008/009545
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Stability of Protein Pharmaceuticals、Ahern. T.J.及びManning M.C.、Plenum Press、New York 1992年
【非特許文献2】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年
【非特許文献3】Kohlerら、Nature、256: 495 (1975年)
【非特許文献4】Clacksonら、Nature、352: 624〜628ページ(1991年)
【非特許文献5】Marksら、J. Mol. Biol.、222: 581〜597ページ(1991年)
【非特許文献6】Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81: 6851〜6855ページ(1984年)
【非特許文献7】Luo Rら、High-concentration UF/DF of a monoclonal antibody. Strategy for optimization and scale-up、Bioprocess Int. 4、44〜48ページ(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、使用準備済の装置中などでの皮下投与に適した低いかつ実行可能な粘度を有する安定な高濃縮医薬抗体組成物への大きなニーズがある。そのうえ、患者の観点から室温で安定な製品を持つことは高度に望ましい。今現在、薬剤製品の有効期間の間ずっと室温での保存が可能である市販されているmAb製剤はない。典型的に、増加したタンパク質分解は受け入れがたいほど高いレベルの凝集物及びタンパク質に関係した不純物の形成を起こし、これは免疫原性反応を生じさせ得るものである。
【0010】
市販されているmAb製品の多くはその製剤中に界面活性剤を含有する。典型的に、界面活性剤は、受け入れがたい製品品質につながるタンパク質凝集及び粒子形成を誘導することが可能な界面ストレスを低減させるために添加される。界面ストレスの例は、タンパク質とi)空気、ii)ゴムのプランジャー、ピストン、ガラス、充填済みシリンジなどの容器閉鎖材料、iii)鋼製タンク、管類及びポンプなどの生産に関係した材料、iv)凍結/融解中の氷などとの接触であろう。しかしながらポリソルベートなどの界面活性剤は、損なわれた製品品質につながる、タンパク質分子を酸化し得る過酸化物の残留物を典型的に含有する。そのうえ、製造の観点からポリソルベートの添加は生産において余分なステップを必要とするが、これは製剤が前記ポリソルベートを含有する場合に限外/透析ろ過は実行が困難であるためである。酸化された製品の形成は困難な問題であり、それ故、酸化された製品の形成を制御するためにポリソルベートの注意深い取り扱いが必要とされる。従って、界面活性剤を伴わない製剤を設計することは、安定性及び製造の両方の観点から望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様によると、本発明は、タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であることを特徴とする、安定な液体組成物を提供する。
【0012】
本発明の別の態様によると、タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、塩及び/又はバッファーの総濃度が60mM未満である、安定な液体組成物が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によると、室温で安定である、安定な液体タンパク質組成物が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によると、タンパク質の濃度が100mg/mlから300mg/mlの間である、安定な液体組成物が提供される。
【0015】
本発明の別の態様によると、アミノ酸のL-アルギニンが安定剤として用いられる、安定な液体タンパク質組成物が提供される。
【0016】
本発明の別の態様によると、治療における使用のための、本明細書で規定される安定なタンパク質組成物が提供される。
【0017】
本発明の別の態様によると、本発明は安定であり生産可能でもある、界面活性剤の添加を伴わないタンパク質組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】製剤が40℃で3ヶ月間保存された後の%HMWP形成に対する主因子及び2因子交互作用の効果についての統計解析を示す図である。
【図2】製剤が40℃で3ヶ月間保存された後の%HMWP形成に対するヒスチジン及びアルギニンの効果についての統計解析を示す図である。
【図3】製剤の粘度に対するヒスチジン、塩化ナトリウム(NaCl)及びアルギニンの効果についての統計解析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一の態様によると、本発明は、タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であることを特徴とする、安定な液体組成物を提供する。
【0020】
驚くべきことに、少量の塩及びバッファーを有する安定なタンパク質の組成物は、25℃で粘度<50cPなどの低いかつ実行可能な粘度を有することが見出された。医薬製剤の低粘度はとりわけ皮下注射に望ましいが、例えば低粘度が製剤の取り扱いを改善する場合は他の液体製剤にも望ましい。
【0021】
用語「安定な組成物」とは、満足な物理的安定性、満足な化学的安定性又は満足な物理的及び化学的安定性を有する組成物をいう。
【0022】
本明細書で用いられるタンパク質組成物についての用語「物理的安定性」とは、熱機械的ストレス並びに/又は疎水性の表面及び界面などの不安定な界面及び表面との相互作用へのタンパク質の曝露の結果として、生物学的に不活性な及び/又は不溶性のタンパク質凝集物を形成するタンパク質の傾向をいう。水性タンパク質組成物の物理的安定性は、適切な容器(例としてカートリッジ又はバイアル)中に充填された組成物を曝露した後に、目視検査及び/又は濁度測定を使って査定される。レイリー散乱のために乳光を呈するのは、mab高度濃縮製剤の固有の品質である。従って、組成物は日光中で目に見える濁度を示す場合、タンパク質凝集に関して物理的に不安定と分類され得ない。一方、日光中で目に見える沈殿又は相分離がある場合、製剤は物理的に不安定と分類される。
【0023】
本明細書で用いられるタンパク質組成物についての用語「化学的安定性」とは、天然のタンパク質構造と比較して潜在的なより弱い生物学的効力及び/又は潜在的な増加した免疫原性特性を有する化学的分解産物の形成につながる、タンパク質構造中の化学的な共有結合性の変化をいう。天然タンパク質の型及び性質並びにタンパク質が曝露される環境に応じて、様々な化学的分解産物が形成されることがある。化学的分解の排除はまず間違いなく完全に避けることができず、保存中に化学的分解産物の量が増加するのはしばしば見られることで、タンパク質組成物の使用は当業者に周知である。大半のタンパク質は脱アミドを起こしやすいが、これはグルタミニル又はアスパラギニル残基中の側鎖アミド基が遊離カルボン酸を形成するよう加水分解されるプロセスである。他の分解経路は、共有結合したダイマー、オリゴマー及びポリマー分解産物の形成につながる、2以上のタンパク質分子がアミド基転移及び/又はジスルフィド相互作用を通じて互いに共有結合した高分子量変換産物の形成に関与する(Stability of Protein Pharmaceuticals、Ahern. T.J.及びManning M.C.、Plenum Press、New York 1992年)。化学的分解の別の変形として(例えばメチオニン残基の)酸化に言及することが可能である。異なる環境条件(例えば温度を上昇させることにより分解産物の形成を加速することがしばしば可能である)への曝露後の様々な時点で化学的分解産物の量を測定することにより、タンパク質組成物の化学的安定性を査定することが可能である。各々の個別の分解産物の量は、様々なクロマトグラフィー技術(例としてSEC-HPLC及び/又はRP-HPLC)を用いて、分子サイズ及び/又は電荷に応じた分解産物の分離によりしばしば決定される。
【0024】
SEC-HPLCは特にタンパク質凝集物の定量化に用いられる。試料は例えばTSK G3000 SWXLカラム、均一濃度の溶出及びその後の214nmでのUV検出を用いて分析され得る。この方法はモノマーのIgG含量、及びゲル樹脂によりサイズに従って分離されるダイマー種又はそれ以上の多量体種からなる% HMWPを決定するのに用いられる。モノマー含量及び% HMWPは、本方法により検出される総タンパク質含量と比して決定される。
【0025】
よって、上で概説されたように、安定な組成物とは満足な物理的安定性、満足な化学的安定性又は満足な物理的及び化学的安定性を有する組成物をいう。製剤の満足な安定性は、10%未満、好ましくは5%未満のタンパク質が製剤中で凝集物(HMWP)として存在するものであり得る。一般的に、組成物は使用期限に達するまで、(推奨される使用及び保存条件に従った)使用及び保存の間、安定でなければならない。
【0026】
本明細書で用いられる粘度は、動的粘度とも呼ばれる絶対粘度として用いられる。測定は25℃に設定されたペルチェ素子を使用した円錐平板技術により行われ、明確に規定された剪断応力勾配が試料に適用され、結果として生じる剪断速度が測定される。粘度は剪断速度に対する剪断応力の比である。絶対粘度は25℃でのセンチポイズ(cP)の単位で表現される。
【0027】
本明細書で用いられる用語「室温」は部屋の温度を意味し、何かしらの冷却効果は必要とされない。室温は15から30℃の間であり、20から30℃の間などであり、20℃、25℃又は30℃などである。
【0028】
本明細書で用いられる用語「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、ペプチド結合により連結された少なくとも5個の構成アミノ酸で構成される化合物を意味する。構成アミノ酸は遺伝暗号によりコードされるアミノ酸の群由来でもよく、遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸、同様に合成アミノ酸であってもよい。遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸は、例としてヒドロキシプロリン、y-カルボキシグルタミン酸、オルニチン、ホスホセリン、D-アラニン及びD-グルタミンである。合成アミノ酸は化学合成により製造されるアミノ酸、すなわちD-アラニン及びD-ロイシンなどの遺伝暗号によりコードされるアミノ酸のD-異性体、Aib(a-アミノイソ酪酸)、Abu(α-アミノ酪酸)、Tle(tert-ブチルグリシン)、β-アラニン、3-アミノメチル安息香酸及びアントラニル酸を含む。
【0029】
1つの実施形態において、塩及びバッファーの総濃度は95mM以下であり、90、85、80、75、70、65又は60mM以下の任意の1つなどである。1つの実施形態において、塩及びバッファーの総濃度は60mM未満で、50mM以下などであり、45、40、35、33、30、25、20mM以下などである。
【0030】
いくつかの実施形態において塩は関連pHでの緩衝能力を有することが可能であり、いくつかの実施形態においてバッファーは塩であってもよい。決定的な特徴は、塩及びバッファーの総濃度が規定された値を超えないことである。
【0031】
1つの実施形態において、塩は無機塩若しくは有機塩又はこれらのうちの1つ若しくは複数の組み合わせである。1つの実施形態において、塩は塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、アルギニン塩酸塩、塩化亜鉛、酢酸ナトリウム、アミノ酸又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0032】
1つの実施形態において、塩は塩化ナトリウム又は塩化マグネシウムであり、任意選択で他の塩と組み合わせられる。1つの実施形態において、塩はアルギニン塩酸塩である。1つの実施形態において、塩は無機塩及びアルギニン塩酸塩の組み合わせである。
【0033】
1つの実施形態において、塩はアミノ酸である。1つの実施形態において、アミノ酸のL-立体異性体が用いられる。1つの実施形態において、塩はアルギニン、グリシン、リジン、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸又はそれらの組み合わせから選択される。1つの実施形態において、アミノ酸はアルギニン又はグリシンである。さらなる実施形態において、アミノ酸はL-アルギニンなどのアルギニンである。塩の型でも又は遊離型でも何でも適切な型のアミノ酸を組成物に添加することが可能である。
【0034】
1つの実施形態において、塩(又は塩の組み合わせ)は0から100mMの間の濃度で存在する。1つの実施形態において、塩の総濃度は100mM以下であり、50mM、40mM、35mM、33mM、30mM、25mM以下などである。
【0035】
驚くべきことに、アミノ酸のL-アルギニンが安定剤として働くこと、及びL-アルギニンの存在が抗体などのタンパク質の高濃度液体製剤中でHMWP凝集物の形成に対して統計的に有意な安定化効果を有することが見出された。従って、本発明はまた、抗体及び5mMから100mMの間の、又は100mMより低い濃度などの間の、50mM、40mM、35mM、33mM、30mM、25mM以下などの濃度のアルギニンを含む安定な液体組成物を提供する。
【0036】
1つの実施形態において、バッファーは適切な薬学的に許容されるバッファーであり、薬学的に許容される塩基及び薬学的に許容される酸の両方を含む。1つの実施形態において、バッファーのpKaは4から8の間である。
【0037】
薬学的に許容される酸及び塩基の例は、当該技術分野で周知のものなどの無機の、同様に有機の非毒性の酸/塩基を包含し得る。例は、酢酸二ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン又はそれらの混合物である。これら特定のバッファーの1つずつが本発明の代替的実施形態を構成する。1つの実施形態において、薬学的に許容されるバッファーはヒスチジン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩又はトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンを含む。
【0038】
1つの実施形態において、バッファーは、組成物の標的pHから±1 pH単位のpKa値を有する。
【0039】
1つの実施形態において、組成物は5から7の間のpH、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9若しくは7.0などのpHに、又はそれらの間の任意の範囲により定義されるpHに緩衝される。1つの実施形態において、組成物は5.0、5.5、6.0、6.5又は7.0のpHに緩衝される。1つの実施形態において、組成物は6.0から6.5の間のpHに緩衝される。1つの実施形態において、組成物は6.0又は6.5のpHに緩衝される。
【0040】
1つの実施形態において、組成物は界面活性剤を付加的に含む。本発明の1つの実施形態において、界面活性剤は洗剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(例としてPluronic(登録商標)F68、ポロキサマー188及び407、Triton X-100などのポロキサマー)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキル化及びアルコキシル化誘導体(ポリソルベート、例としてポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80及びBrij-35)などのポリオキシエチレン及びポリエチレン誘導体、モノグリセリド若しくはそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド若しくはそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチン及びリン脂質(例としてホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質の派生物(例としてジパルミトイルホスファチジン酸)及びリゾリン脂質の派生物(例としてパルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン及びエタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)並びに例としてリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン並びに極性頭基、すなわちコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール及び正電荷を有するDODAC、DOTMA、DCP、BISHOPの修飾体といったリゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニン、並びにグリセロリン脂質(例としてセファリン)、グリセロ糖脂質(例としてガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例としてセラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例としてタウロジヒドロフシド酸ナトリウムなど)、長鎖脂肪酸及びその塩C6〜C12(例としてオレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リ
ジン、アルギニン若しくはヒスチジンのNαアシル化誘導体、若しくはリジン若しくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン若しくはヒスチジン及び中性若しくは酸性アミノ酸の任意の組み合わせを含むジペプチドのNαアシル化誘導体、中性アミノ酸及び2個の荷電アミノ酸の任意の組み合わせを含むトリペプチドのNαアシル化誘導体、DSS(ドクサートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドクサートカルシウム、CAS登録番号[128-49-4])、ドクサートカリウム、CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム若しくはラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸若しくはその誘導体、胆汁酸及びその塩並びにグリシン若しくはタウリン抱合体、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホナート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホナート)一価界面活性剤、両性イオン性界面活性剤(例としてN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-コラミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、カチオン性界面活性剤(四級アンモニウム塩基)(例としてセチルトリメチルアンモニウム臭化物、セチルピリジニウム塩化物)、非イオン性界面活性剤(例としてドデシルβ-D-グルコピラノシド)、エチレンジアミンへの酸化プロピレン及び酸化エチレンの逐次添加に由来する四官能性ブロックコポリマーであるポロキサミン(例としてTetronic's)から選択されるか、又は界面活性剤はイミダゾリン誘導体、若しくはそれらの混合物の群から選択されてもよい。これら特定の界面活性剤の1つずつが本発明の代替的実施形態を構成する。1つの実施形態において、界面活性剤はポリソルベート80(すなわちTween(商標)80)である。
【0041】
医薬組成物における界面活性剤の使用は当業者に周知である。便宜のため、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年への参照がなされる。
【0042】
1つの実施形態において、界面活性剤は0.01%を下回る量で組成物中に存在する。1つの実施形態において、界面活性剤は0.0075%を下回る量で、すなわち0.001%から0.005%の間の、0.001%などの量で組成物中に存在する。
【0043】
1つの実施形態において、界面活性剤は存在しない。驚くべきことに、少量の塩、少量のバッファー又は少量の塩及びバッファーを有し、界面活性剤のいかなる添加も伴わないタンパク質の組成物は安定であることが可能なことが見出された。
【0044】
1つの実施形態において、組成物は張性調節の剤を付加的に含む。適切な張性調節の剤の例は、塩(例として塩化ナトリウム)、多価アルコール(例としてプロピレングリコール、グリセロール、キシリトール、マンニトール又はD-ソルビトール)、単糖(グルコース又はマルトース)、二糖(例としてショ糖)、アミノ酸(L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、ポリエチレングリコール(例としてPEG 400)又はそれらの混合物を包含する。1つの実施形態において、張性調節の剤はショ糖、マンニトール又はプロピレングリコールである。さらなる実施形態において、張性調節の剤はショ糖である。いくつかの実施形態において、組成物のバッファー及び/若しくは塩(上記)はまた張性調節剤としても働き、又は張性調節剤はバッファー及び/若しくは塩として働くであろう(そして張性調節剤の濃度はそれ故、かかる場合においてそのようなものとして計算されるであろう)。
【0045】
1つの実施形態において、張性調節の剤は50から250mMの間の、100から200mMの間などの、例えば100、110、120、130、140、150、160、170、180、190若しくは200のうちの任意の1つの量、又はそれらの間の任意の範囲の間の量で組成物中に存在する。1つの実施形態において、張性調節の剤は150mMの量で組成物中に存在する。
【0046】
1つの実施形態において、組成物は等張性である。
【0047】
1つの実施形態において、タンパク質は免疫グロブリンである。1つの実施形態において、タンパク質は抗体である。1つの実施形態において、タンパク質はモノクローナル抗体(mAb)である。1つの実施形態において、タンパク質はIgG4抗体である。
【0048】
用語「抗体」はモノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長の抗体を包含する)、多エピトープの特異性を有する抗体組成物、二重特異性抗体、二特異性抗体及び一本鎖分子、同様に抗体断片(例としてFab、F(ab')2及びFv)に及ぶ。
【0049】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」とは実質的に均一な抗体の集団から取得される抗体をいい、すなわち、集団を含む個々の抗体は少量存在する可能性がある潜在的に自然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して向けられる。そのうえ、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を典型的に包含する従来の(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンによる混入がない点で有利である。修飾語「モノクローナル」は実質的に均一な抗体の集団から取得されるものとしての抗体の特質を指し示し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするものとして解釈されない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体はKohlerら、Nature、256: 495 (1975年)により最初に記述されたハイブリドーマ法により作られてもよく、又は組換えDNA法(例として米国特許第4,816,567号を参照)により作られてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClacksonら、Nature、352: 624〜628ページ(1991年)及びMarksら、J. Mol. Biol.、222: 581〜597ページ(1991年)に記述された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0050】
本明細書のモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に由来する又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の相当する配列と同一又は相同である一方、残りの鎖が別の種に由来する又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の相当する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、同様に望まれる生物学的活性を呈する限りにおいてかかる抗体の断片を包含するように拡張し得る(米国特許第4,816,567号; Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81: 6851〜6855ページ(1984年))。
【0051】
本発明の安定な組成物中に処方され得る適切な抗体の例は、3F8、アバゴボマブ、アブシキシマブ、ACZ885(カナキヌマブ)、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ(Alacizumab)ペゴール、アレムツズマブ、アルツモマブペンテテート、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ(IMA-638)、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ(トシリズマブ)、アトロリムマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブ(Clivatuzumab)テトラキセタン、CNTO 148(ゴリムマブ)、CNTO 1275(ウステキヌマブ)、コナツムマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドルリキシズマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルシリモマブ、エンリモマブペゴール、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィギツムマブ、フォントリズマブ、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ、イムシロマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマ
ブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、ムロモナブ-CD3、MYO-029(スタムルマブ)、ナコロマブタフェナトクス、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オクレリズマブ、オヅリモマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パスコリズマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピンツモマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、PRO 140、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サツモマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、ソラネズマブ、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、タカツズマブ(Tacatuzumab)テトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ、テプリズマブ、TGN1412、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ、TNX-355(イバリズマブ)、TNX-650、TNX-901(タリズマブ)、トシリズマブ(アトリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ、ゾリモマブアリトクスなどを包含する。
【0052】
1つの実施形態において、抗体はモノクローナルな抗IL20抗体である。1つの実施形態において、抗体はWO2010/000721に記述された抗IL20抗体である。1つの実施形態において、抗IL20モノクローナル抗体はWO2010/000721に記述された15D2又は5B7である。
【0053】
1つの実施形態において、抗体はモノクローナルな抗TFPIモノクローナル抗体である。1つの実施形態において、抗体はPCT2009EP067598に記述された抗TFPI抗体である。1つの実施形態において、抗TFPIモノクローナル抗体はPCT2009EP067598に記述されたHzTFPI4F36である。
【0054】
1つの実施形態において、抗体はモノクローナルな抗C5aRモノクローナル抗体である。1つの実施形態において、抗体はWO2009/103113に記述された抗C5aR抗体である。1つの実施形態において、抗C5aRモノクローナル抗体はWO2009/103113に記述された7F3である。
【0055】
1つの実施形態において、抗体はモノクローナルな抗NKG2Dモノクローナル抗体である。1つの実施形態において、抗体はWO2009/077483に記述された抗NKG2D抗体である。1つの実施形態において、抗NKG2Dモノクローナル抗体はWO2009/077483に記述されたMSである。
【0056】
1つの実施形態において、抗体はモノクローナルな抗NKG2Aモノクローナル抗体である。1つの実施形態において、抗体はWO2008/009545に記述された抗NKG2A抗体である。1つの実施形態において、抗NKG2Aモノクローナル抗体はWO2008/009545に記述されたhumZ270である。
【0057】
本発明はタンパク質が高濃度で組成物中に存在する場合の特定の有用性を見出すものと理解されるであろう。従って1つの実施形態において、タンパク質は50mg/ml以上の、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300mg/ml以上などの濃度で存在する。1つの実施形態において、タンパク質は50mg/mlから300mg/mlの間の、例えば50mg/mlから250mg/mlの間の、50mg/mlから200mg/mlの間などの、例えば50mg/mlから150mg/mlの間の量で組成物中に存在する。1つの実施形態において、タンパク質は75mg/mlから300mg/mlの間の、例えば75mg/mlから250mg/mlの間の、75mg/mlから200mg/mlの間などの、例えば75mg/mlから150mg/mlの間の濃度で存在する。1つの実施形態において、タンパク質は100mg/mlから300mg/mlの間の、例えば100mg/mlから250mg/mlの間の、100mg/mlから200mg/mlの間など、例えば100mg/mlから150mg/mlの間の濃度で存在する。
【0058】
1つの実施形態において、本発明の安定な組成物は25℃で測定された場合に粘度が50cP以下であり、45、40、35、30、25、20、15、10、5又は1cP未満のいずれかなどである。特に、本発明の安定な組成物は25℃で測定された場合に粘度が5cP以下である。
【0059】
例えば100mg/mlのタンパク質及び合計で100mM未満の塩及びバッファー濃度を含有する高濃縮製剤を利用することは、2〜8℃の保存温度で安定な比較的低粘性の製剤(抗IL20抗体の場合、25℃で5cP)を与える。1つの実施形態において、製剤は室温などのより高い温度でも安定である。製剤は、市販されている使用準備済の製品(例えば27G針及び50mg/mlの抗体濃度を利用するHumira(登録商標))と比較して増強された患者の利便性を付与する小さい針サイズを有する使用準備済の装置における使用に適している。
【0060】
1つの実施形態において、本発明のタンパク質組成物は
(a) ≧50mg/ml抗体、
(b) 30mM以下の塩化ナトリウム又は塩化マグネシウムなどの無機塩、
(c) 0〜25mMのアルギニン又はグリシンなどのアミノ酸、
(d) 50mM以下のヒスチジンバッファーなどのバッファー、
(e) 0.001〜0.005%の非イオン性界面活性剤、
(f) 100〜200mMのショ糖、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール又はD-ソルビトールなどの張性調節の剤
を含み、5から7の間のpHに緩衝される。
【0061】
1つの実施形態において、本発明のタンパク質組成物は
(a) 100mg/ml抗体、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 0.001%ポリソルベート80、
(f) 150mMショ糖
を含み、5から7の間のpHに緩衝される。
【0062】
1つの実施形態において、安定なタンパク質組成物は
(a) 100mg/ml抗体、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 0.001%ポリソルベート80、
(f) 150mMマンニトール
を含み、5から7の間のpHに緩衝される。
【0063】
1つの実施形態において、安定なタンパク質組成物は
(a) 100mg/ml抗体、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 0.001%ポリソルベート80、
(f) 150mMショ糖
を含み、6.0から6.5の間のpHに緩衝される。
【0064】
1つの実施形態において、安定なタンパク質組成物は
(a) 100mg/ml抗体、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 150mMショ糖
を含み、5から7の間のpHに緩衝される。
【0065】
本発明の組成物は驚くべきことに室温(ここでは25℃で測定)で12ヶ月間の、及び5℃で24ヶ月間までの、検出可能な% HMWPの増加がないというHMWPの形成に向けた安定性が実証された。加えて、本発明のいくらかの組成物は40℃で3ヶ月にわたって2〜7%のHMWPしか形成されないことを典型的に示し、これは塩及びバッファーの総濃度が低いにも関わらず興味深い熱安定性の製剤を示唆する。
【0066】
上記の安定なタンパク質組成物が標準的な手法(Luo Rら、High-concentration UF/DF of a monoclonal antibody. Strategy for optimization and scale-up、Bioprocess Int. 4、44〜48ページ(2006年))に従って調製され得ることは医薬組成物の当業者に明らかであろう。例えば安定なタンパク質組成物は、タンジェント流ろ過(Tangential Flow Filtration、TFF)の使用によりタンパク質を50mg/ml以上の濃度で最初に透析ろ過することにより典型的に調製され得る。続いて、界面活性剤の添加(適用可能な場合)を除いて処方された製品は100mg/ml以上の濃度まで限外ろ過され、その後に界面活性剤が添加されてもよい。
【0067】
他の成分が本発明の医薬組成物中に存在してもよい。かかる付加的な成分は、共溶媒、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、増量剤、キレート剤、金属イオン、油性媒体、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び両性イオンを包含し得る。かかる付加的な成分はもちろん本発明の医薬製剤の全体的な安定性に悪影響を及ぼしてはならない。
【0068】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は6週超の使用の間及び3年超の保存の間、安定である。
【0069】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は4週超の使用の間及び3年超の保存の間、安定である。
【0070】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は4週超の使用の間及び2年超の保存の間、安定である。
【0071】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は2週超の使用の間及び2年超の保存の間、安定である。
【0072】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は1週超の使用の間及び6ヶ月超の保存の間、安定である。
【0073】
本発明の第二の態様によると、治療における使用のための本明細書に定義される安定なタンパク質組成物が提供される。
【0074】
本明細書で用いられる用語「処置」及び「処置すること」は、疾患又は障害などの状態と闘う目的での患者の管理及び看護を意味する。この用語は、症状若しくは合併症を緩和するための、疾患、障害若しくは状態の進行を遅延させるための、症状及び合併症を緩和若しくは軽減するための、並びに/又は疾患、障害若しくは状態を治癒若しくは除去するための、同様に状態を予防するための活性化合物の投与など、患者が患っている所定の状態への処置の全範囲を包含することが意図されるが、ここで予防は疾患、状態又は障害と闘う目的での患者の管理及び看護として理解されるもので、症状又は合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を包含する。処置される患者は好ましくは哺乳類、特にヒトであるが、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ及びブタなどの動物も包含し得る。
【0075】
例えば、本発明の抗IL20抗体の組成物は炎症性疾患、特に乾癬、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病及び乾癬性関節炎又はWO2010/000721に記述された他の疾患などの自己炎症性疾患の処置において用いられ得る。
【0076】
従ってさらなる態様によると、本発明は、治療的に有効な量の本発明の抗IL20抗体の組成物を患者に投与する工程を含む、かかる炎症性疾患を処置する方法を提供する。
【0077】
本発明はまた、かかる炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗IL20抗体の組成物を提供する。
【0078】
本発明はまた、かかる炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、本発明の抗IL20抗体の組成物の使用を提供する。
【0079】
本発明はまた、かかる炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗IL20抗体の組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0080】
例えば、本発明の抗TFPI抗体の組成物は阻害剤の有無に関わらない血友病A、阻害剤の有無に関わらない血友病B又はPCT2009EP067598に記述された他の疾患などの凝固障害(出血障害)の処置において用いられ得る。
【0081】
従ってさらなる態様によると、本発明は、治療的に有効な量の本発明の抗TFPI抗体の組成物を患者に投与する工程を含む、凝固障害を処置する方法を提供する。
【0082】
本発明はまた、凝固障害の処置における使用のための、本発明の抗TFPI抗体の組成物を提供する。
【0083】
本発明はまた、凝固障害の処置のための薬剤の製造における、本発明の抗TFPI抗体の組成物の使用を提供する。
【0084】
本発明はまた、凝固障害の処置における使用のための、本発明の抗IL20抗体の組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0085】
例えば、本発明の抗C5aR抗体の組成物は炎症性疾患、特に乾癬、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病及び乾癬性関節炎又はWO2009/103113に記述された他の疾患などの自己炎症性疾患の処置において用いられ得る。
【0086】
従ってさらなる態様によると、本発明は、治療的に有効な量の本発明の抗C5aR抗体の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法を提供する。
【0087】
本発明はまた、炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗C5aR抗体の組成物を提供する。
【0088】
本発明はまた、炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、本発明の抗C5aR抗体の組成物の使用を提供する。
【0089】
本発明はまた、炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗C5aR抗体の組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0090】
例えば、本発明の抗NKG2D抗体の組成物は炎症性疾患、特に乾癬、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病及び乾癬性関節炎又はWO2009/077483に記述された他の疾患などの自己炎症性疾患の処置において用いられ得る。
【0091】
従ってさらなる態様によると、本発明は、治療的に有効な量の本発明の抗NKG2D抗体の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法を提供する。
【0092】
本発明はまた、炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗NKG2D抗体の組成物を提供する。
【0093】
本発明はまた、炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、本発明の抗NKG2D抗体の組成物の使用を提供する。
【0094】
本発明はまた、炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗NKG2D抗体の組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0095】
例えば、本発明の抗NKG2A抗体の組成物は炎症性疾患、特に乾癬、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、クローン病及び乾癬性関節炎又はWO2008/009545に記述された他の疾患などの自己炎症性(自己免疫とも呼ばれる)疾患の処置において用いられ得る。
【0096】
従ってさらなる態様によると、本発明は、治療的に有効な量の本発明の抗NKG2A抗体の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法を提供する。
【0097】
本発明はまた、炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗NKG2A抗体の組成物を提供する。
【0098】
本発明はまた、炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、本発明の抗NKG2A抗体の組成物の使用を提供する。
【0099】
本発明はまた、炎症性疾患の処置における使用のための、本発明の抗NKG2A抗体の組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0100】
治療的及び予防的な(予防性の)療法は本発明の別個の態様を表すものと理解される。
【0101】
本発明の医薬製剤は一般に非経口投与に適している。非経口投与はシリンジ、任意選択でペン様シリンジを使った皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注射により行われ得る。あるいは、注入ポンプを使って非経口投与を行うことも可能である。
【0102】
本発明は以下の限定されない例への参照を伴ってさらに記述される。
【0103】
(実施例)
(実施例1)
18の製剤が調製された(下のTable 1(表1)参照)。製剤はおよそ150mg/mlのmAb 1及び10mMヒスチジンバッファーを含有するpH6.5のストック溶液から調製された。このストック溶液は従来のUF/DF/UFにより調製された。添加剤のストック溶液はBiomek(登録商標) 2000、Beckman Coulterロボットシステムを用いて調製され、正しい割合で混合された。最終の製剤は3mlのPenfill(登録商標)カートリッジ、タイプ1ガラス中に充填された。カートリッジ内のピストンは充填体積でもある0.6mlを収容するように調整された。製剤は40℃で3ヶ月間保存され、次いで化学的、製薬化学的及び生物物理学的に分析された。SAS JMP 8.0ソフトウェアを用いてタンパク質凝集物(%HMWP)形成の増加をモデル化することが可能である。データはアルギニンの安定性に対する好ましい効果があることを示し、この効果はタンパク質凝集物の形成を顕著に減少させた。同様に、ヒスチジン及びNaClの併用効果もまたタンパク質凝集物の形成を減少させた。ショ糖及びポリソルベート80(PS 80)はタンパク質凝集物の形成を弱く増大させた。
【0104】
【表1】

【0105】
製剤が40℃で3ヶ月間保存された後の%HMWP形成に対する主因子及び2因子交互作用の統計的効果は図1に示される。
【0106】
(実施例2)
mAb溶液はUF/DF/UFにより濃度が>100mg/mlになるように、10mMヒスチジン又は10mM NaClのいずれかを包含して調製される。調査される添加剤を含有する溶液は調製され、目的の濃度になるようにmAb溶液と混合される。pHは目的のpHになるように調整される。製剤は3mlのPenfill(登録商標)カートリッジ、タイプ1ガラス中に充填された。カートリッジ内のピストンは充填体積でもある1.5mlを収容するように調整された。カートリッジは5℃及び/又は25℃及び/又は40℃で保存された。Table 2(表2)は調製された様々な製剤及び結果として生じた粘度及び凝集物(%HMWP)の増加を示す。
【0107】
実施例1と同様に、アルギニンは% HMWPの形成に対抗することから安定化効果を有することが認められる。ヒスチジンもまた同様の安定化効果を含有するのが認められる。
【0108】
そのうえ、ヒスチジン、塩化ナトリウム及びアルギニンは各々、製剤に対して統計的に有意な粘度低下効果を有し、ヒスチジンは最も著明な効果を有することも認められた。
【0109】
興味深いことに、25℃で12ヶ月後の% HMWPの増加は実質的に非存在であり、これは室温で安定な製剤の可能性があることを強く示唆する(Table 2(表2))。
【0110】
mAb1はWO2010/000721に記述された15D2抗IL20抗体である。mAb2はPCT2009EP067598に記述された抗TFPIモノクローナル抗体のHzTFPI4F36である。mAb3はWO2009/103113に記述された抗C5aRモノクローナル抗体のhAb-Qである。mAb4はWO2009/077483に記述された抗NKG2Dモノクローナル抗体のMSである。mAb5はWO2008/009545に記述された抗NKG2Aモノクローナル抗体のhumZ270である。
【0111】
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【0112】
製剤が40℃で3ヶ月間保存された後の%HMWP形成に対するヒスチジン及びアルギニンの統計的効果は図2に示される。
【0113】
製剤の粘度に対するヒスチジン、塩化ナトリウム(NaCl)及びアルギニンの統計的効果は図3に示される。
【0114】
(実施例3)
mAbの製剤は界面活性剤の量だけ変化させて、実施例2で言及されたように調製されている。製剤の頑強性は加速された及び保存温度での保存安定性により(Table 3(表3))、及びそのうえ機械的撹拌及び凍結/融解により(Table 4(表4))、評価されている。全ての製剤は100mg/ml mAb、33mMヒスチジン、25mMアルギニン、25mM NaCl、150mMショ糖、0〜0.1mg/mlポリソルベート80を含有する。製剤pH:6.5(mAb1)及び6.0(mAb4)
【0115】
【表3】

【0116】
全ての製剤について粒子形成の可能性を評価するため、ライトキャビネット(light cabinet)及びアーキテクトランプ(architect lamp)の中での目視外観分析も行われた。0時において全ての試料は清澄からわずかに乳白色であり、目に見える粒子は全くないことが両分析法を用いて見出された。全ての製剤の外観について保存安定期間の間、差は認められていない。
【0117】
【表4】

【0118】
全ての製剤について粒子形成の可能性を評価するため、ライトキャビネット及びアーキテクトランプの中での目視外観分析も行われた。0時において全ての試料は清澄からわずかに乳白色であり、目に見える粒子は全くないことが両分析法を用いて見出された。上のストレス条件の間、差は認められていない。そのうえ、これらのストレス条件の間、% HMWPの増加を検出することはできなかった。
【0119】
(実施例4)
2つのバッチ(およそ3L)は通常の充填仕上げ条件に従ってパイロットプラント設備において生産された。製剤は3mlのPenfill(登録商標)カートリッジ、タイプ1ガラス中に充填された。カートリッジ内のピストンは充填体積でもある1mlを収容するように調整された。バッチの組成物間の差は、一方はポリソルベート80を含有し、他方は含有しない点である。2つの薬剤製品は加速された温度条件及び機械的撹拌に曝露される(Table 5(表5))。
【0120】
【表5】

【0121】
(実施例5)
実験室スケールのバッチは実施例2のように調製され、3.0mlのPenfill(登録商標)カートリッジ、タイプ1ガラス中に充填された。カートリッジ内のピストンは充填体積でもある1.5mlを収容するように調整された。薬剤製品に対する空気/水の界面ストレスの効果は、種々の体積の空気を製剤に適用し、苛酷温度及び機械的撹拌条件に曝露することにより評価された(Table 6(表6))。
【0122】
【表6】

【0123】
以下は本発明の実施形態の限定的でないリストである。
実施形態1:タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及びバッファーの総濃度が100mM未満であることを特徴とする、安定な液体組成物。
実施形態2:前記塩及びバッファーの総濃度が5から100mMの間である、実施形態1に記載の組成物。
実施形態3:塩及びバッファーの総濃度が5から95mMの間である、実施形態1又は2に記載の組成物。
実施形態4:塩及びバッファーの総濃度が5から90mMの間である、実施形態1から3のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態5:塩及びバッファーの総濃度が5から85mMの間である、実施形態1から4のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態6:塩及びバッファーの総濃度が5から80mMの間である、実施形態1から5のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態7:塩及びバッファーの総濃度が5から75mMの間である、実施形態1から6のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態8:塩及びバッファーの総濃度が5から70mMの間である、実施形態1から7のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態9:塩及びバッファーの総濃度が5から65mMの間である、実施形態1から8のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態10:塩及びバッファーの総濃度が5から60mMの間である、実施形態1から9のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態11:塩及びバッファーの総濃度が5から55mMの間である、実施形態1から10のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態12:塩及びバッファーの総濃度が5から50mMの間である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態13:塩及びバッファーの総濃度が5から45mMの間である、実施形態1から12のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態14:塩及びバッファーの総濃度が5から40mMの間である、実施形態1から13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態15:塩及びバッファーの総濃度が5から35mMの間である、実施形態1から14のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態16:塩及びバッファーの総濃度が5から30mMの間である、実施形態1から15のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態17:塩及びバッファーの総濃度が5から25mMの間である、実施形態1から16のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態18:バッファーの濃度が100以下である、実施形態1又は2に記載の組成物。
実施形態19:バッファーの濃度が50以下である、実施形態1から12のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態20:バッファーの濃度が45以下である、実施形態1から13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態21:バッファーの濃度が40以下である、実施形態1から14のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態22:バッファーの濃度が35以下である、実施形態1から15のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態23:バッファーの濃度が33mM以下である、実施形態22に記載の組成物。
実施形態24:塩の濃度が100以下である、実施形態1又は2に記載の組成物。
実施形態25:塩の濃度が50以下である、実施形態1から12のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態26:塩の濃度が45以下である、実施形態1から13のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態27:塩の濃度が40以下である、実施形態1から14のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態28:塩の濃度が35以下である、実施形態1から15のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態29:塩の濃度が25mM以下である、実施形態1から16のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態30:バッファーが存在し、バッファーのpKaが4から8の間である、実施形態1から29のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態31:バッファーのpKaが5から7の間である、実施形態30に記載の組成物。
実施形態32:バッファーが存在し、バッファーが酢酸二ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン又はそれらの混合物である、実施形態1から30のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態33:バッファーがヒスチジン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸又はトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンである、実施形態32に記載の組成物。
実施形態34:バッファーがヒスチジンである、実施形態33に記載の組成物。
実施形態35:バッファーが組成物の標的pHから±1 pH単位のpKa値を有する、実施形態1〜34のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態36:塩が存在し、塩が塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、アルギニン塩酸塩、塩化亜鉛及び酢酸ナトリウム又はそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、実施形態1から35のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態37:塩が塩化ナトリウム又は塩化マグネシウムである、実施形態36に記載の組成物。
実施形態38:塩が塩化ナトリウムである、実施形態37に記載の組成物。
実施形態39:塩がアルギニン-HClである、実施形態36に記載の組成物。
実施形態40:抗体及びアルギニンを含み、アルギニンが5mMから100mMの間の濃度で存在する、安定な液体組成物。
実施形態41:アルギニンが5mMから50mMの間の濃度で存在する、実施形態40に記載の組成物。
実施形態42:アルギニンが5mMから40mMの間の濃度で存在する、実施形態41に記載の組成物。
実施形態43:アルギニンが5mMから35mMの間の濃度で存在する、実施形態42に記載の組成物。
実施形態44:アルギニンが5mMから33mMの間の濃度で存在する、実施形態43に記載の組成物。
実施形態45:アルギニンが5mMから30mMの間の濃度で存在する、実施形態44に記載の組成物。
実施形態46:アルギニンが5mMから25mMの間の濃度で存在する、実施形態45に記載の組成物。
実施形態47:アルギニンが50mM、40mM、35mM、33mM、30mM又は25mMの濃度で存在する、実施形態40又は実施形態41に記載の組成物。
実施形態48:pHが5.0から7.0の間である、実施形態1から47のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態49:pHが6.0又は6.5である、実施形態1から48のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態50:界面活性剤を付加的に含む、実施形態1から49のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態51:界面活性剤がポリソルベート80である、実施形態50に記載の組成物。
実施形態52:界面活性剤が0.01%を下回る量で組成物中に存在する、実施形態50又は実施形態51に記載の組成物。
実施形態53:界面活性剤が0.0075%を下回る量で組成物中に存在する、実施形態50から52のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態54:界面活性剤が0.001%から0.005%の間の量で組成物中に存在する、実施形態50から52のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態55:界面活性剤が0.001%の量で組成物中に存在する、実施形態50から54のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態56:界面活性剤を含まない、実施形態1から49のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態57:張性調節の剤を付加的に含む、実施形態1から56のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態58:張性調節の剤がショ糖又はマンニトールである、実施形態57に記載の組成物。
実施形態59:張性調節の剤がショ糖である、実施形態58に記載の組成物。
実施形態60:張性調節の剤が50から250mMの間の量で組成物中に存在する、実施形態57から59のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態61:張性調節の剤が100から200mMの間の量で組成物中に存在する、実施形態57から60のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態62:張性調節の剤が150mMの量で存在する、実施形態57から61のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態63:組成物が薬学的に許容される、実施形態1から62のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態64:タンパク質が免疫グロブリンである、実施形態1から63のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態65:タンパク質が抗体である、実施形態64に記載の組成物。
実施形態66:タンパク質が50mg/mlから300mg/mlの間の濃度で組成物中に存在する、実施形態1から65のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態67:タンパク質が75mg/mlから300mg/mlの間の濃度で組成物中に存在する、実施形態66に記載の組成物。
実施形態68:タンパク質が100mg/mlから300mg/mlの間の濃度で組成物中に存在する、実施形態67に記載の組成物。
実施形態69:タンパク質が50mg/mlから200mg/mlの間の濃度で組成物中に存在する、実施形態68に記載の組成物。
実施形態70:タンパク質が50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、又は300mg/mlの濃度で組成物中に存在する、実施形態69に記載の組成物。
実施形態71:25℃で測定された場合に粘度が50cP以下である、実施形態1から70のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態72: 25℃で測定された場合に粘度が1から10cP以下の間である、実施形態71に記載の組成物。
実施形態73:25℃で測定された場合に粘度が2から10cP以下の間である、実施形態71又は実施形態72に記載の組成物。
実施形態74:
(a) ≧50mg/mlの抗体であるタンパク質、
(b) 30mM以下の塩化ナトリウム又は塩化マグネシウムなどの塩、
(c) 50mM以下のヒスチジンバッファーなどのバッファー、
(d) 0〜25mMのアルギニン又はグリシンなどのアミノ酸、
(e) 0.001〜0.005%の非イオン性界面活性剤、
(f) 100〜200mMのショ糖、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール又はD-ソルビトールなどの張性調節の剤
を含み、5から7の間のpHに緩衝される、実施形態1に記載の組成物。
実施形態75:
(a) 100mg/mlの抗体であるタンパク質、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 0.001%ポリソルベート80、
(f) 150mMショ糖
を含み、5から7の間のpHに緩衝される、実施形態1に記載の組成物。
実施形態76:
(a) 100mg/mlの抗体であるタンパク質、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 0.001%ポリソルベート80、
(f) 150mMマンニトール
を含み、5から7の間のpHに緩衝される、実施形態1に記載の組成物。
実施形態77:
(a) 100mg/mlの抗体であるタンパク質、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 0.001%ポリソルベート80、
(f) 150mMショ糖
を含み、6.5のpHに緩衝される、実施形態1に記載の組成物。
実施形態78:
(a) 100mg/mlの抗体であるタンパク質、
(b) 25mM塩化ナトリウム、
(c) 33mMヒスチジンバッファー、
(d) 25mMアルギニン、
(e) 150mMショ糖
を含み、5から7の間のpHに緩衝される、実施形態1に記載の組成物。
実施形態79:組成物が室温で安定である、実施形態1〜78のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態80:組成物が15から30℃の間の温度で安定である、実施形態1〜79のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態81:タンパク質がモノクローナル抗体である、実施形態1から80のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態82:抗体がIgG4サブタイプに属する、実施形態65又は81に記載の組成物。
実施形態83:モノクローナル抗体が抗IL20モノクローナル抗体である、実施形態65、81又は82に記載の組成物。
実施形態84:モノクローナル抗体が抗TFPIモノクローナル抗体である、実施形態65、81又は82に記載の組成物。
実施形態85:モノクローナル抗体が抗C5aRモノクローナル抗体である、実施形態65、81又は82に記載の組成物。
実施形態86:モノクローナル抗体が抗NKG2Dモノクローナル抗体である、実施形態65、81又は82に記載の組成物。
実施形態87:モノクローナル抗体が抗NKG2Aモノクローナル抗体である、実施形態65、81又は82に記載の組成物。
実施形態88:治療における使用のための、実施形態1から87のいずれか1つに記載の安定なタンパク質組成物。
実施形態89:治療的に有効な量の実施形態83に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法。
実施形態90:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態83に記載の組成物。
実施形態91:炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、実施形態83に記載の組成物の使用。
実施形態92:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態83に記載の抗IL20組成物を含む医薬組成物。
実施形態93:治療的に有効な量の実施形態84に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、凝固障害を処置する方法。
実施形態94:凝固障害の処置における使用のための、実施形態84に記載の組成物。
実施形態95:凝固障害の処置のための薬剤の製造における、実施形態84に記載の組成物の使用。
実施形態96:凝固障害の処置における使用のための、実施形態84に記載の抗TFPI組成物を含む医薬組成物。
実施形態97:治療的に有効な量の実施形態84に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法。
実施形態98:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態85に記載の組成物。
実施形態99:炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、実施形態85に記載の組成物の使用。
実施形態100:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態85に記載の抗C5aR組成物を含む医薬組成物。
実施形態101:治療的に有効な量の実施形態86に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法。
実施形態102:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態86に記載の組成物。
実施形態103:炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、実施形態86に記載の組成物の使用。
実施形態104:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態86に記載の抗NKG2D組成物を含む医薬組成物。
実施形態105:治療的に有効な量の実施形態87に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法。
実施形態106:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態87に記載の組成物。
実施形態107:炎症性疾患の処置のための薬剤の製造における、実施形態87に記載の組成物の使用。
実施形態108:炎症性疾患の処置における使用のための、実施形態87に記載の抗NKG2A組成物を含む医薬組成物。
【0124】
刊行物、特許出願及び特許を包含する本明細書で引用される全ての参考文献は、本明細書の各所でなされる特定の資料についてのあらゆる分離して提供される組み込みにも関わらず、あたかも各参考文献が参照により組み込まれることが個々に具体的に指し示され、本明細書にその全体が記載されたのと同程度まで(法により許容される最大範囲まで)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
本発明を記述する文脈における用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示語の使用は、本明細書において他に指示されない又は文脈による明らかな矛盾がない限り、単数形と複数形の両方に及ぶように解釈される。例えば、語句「化合物」は他に指示されない限り、本発明の様々な「化合物」又は特定の記述された態様をいうものと理解される。
【0126】
他に指示されない限り、本明細書で提供される全ての正確な値は相当する近似値の代表である(例として、特定の因子又は測定に関して提供される全ての正確な代表値は相当する近似測定値を提供するとも考えることが可能で、適当な場合は「約」により修飾される)。範囲が与えられる場合、他に指示されない限り、範囲は両端の値を包含する。
【0127】
ある要素を参照した「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有する」などの用語を用いた任意の態様又は本発明の態様についての本明細書の記載は、他に述べられない又は文脈による明らかな矛盾がない限り、その特定の要素「からなる」、「から基本的になる」又は「を実質的に含む」同様の態様又は本発明の態様についての支持を提供することが意図される(例として、特定の要素を含むものとして本明細書に記述される組成物は、他に述べられない又は文脈による明らかな矛盾がない限り、その要素からなる組成物を記述するものとしても理解されるべきである)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であることを特徴とする、安定な液体組成物。
【請求項2】
前記塩及び/又はバッファーの総濃度が60mM未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
界面活性剤を含まない、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
タンパク質が100mg/mlから300mg/mlの間の濃度で組成物中に存在する、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が室温で安定である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
25℃で測定された場合に粘度が50cP以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗体及びアルギニンを含み、アルギニンが5mMから100mMの間の濃度で存在する、安定な液体組成物。
【請求項8】
アルギニンの濃度が5mMから30mMの間である、請求項7に記載の安定な液体組成物。
【請求項9】
タンパク質が抗体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
抗体がIgG4サブタイプに属する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
モノクローナル抗体が抗IL20モノクローナル抗体、抗C5aRモノクローナル抗体、抗NKG2Dモノクローナル抗体又は抗NKG2Aモノクローナル抗体である、請求項9又は請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
モノクローナル抗体が抗TFPIモノクローナル抗体である、請求項9又は請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
治療的に有効な量の請求項11に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、炎症性疾患を処置する方法。
【請求項14】
治療的に有効な量の請求項12に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、凝固障害を処置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−520476(P2013−520476A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554367(P2012−554367)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052914
【国際公開番号】WO2011/104381
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【Fターム(参考)】