説明

安定な放射性ヨウ素複合体の精製方法

本発明は放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドとターゲッティングM因子の複合体を製造および精製する方法を対象とする。本方法は、(A)(i)非結合放射性ヨウ素、(ii)ターゲッティング因子と結合してない放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチド、および(iii)ターゲッティング因子と結合している放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチド、を含んでなる溶液を準備すること;(B)その溶液と陰イオン交換樹脂とを接触させること;および(C)その陰イオン交換樹脂と溶液を一緒に、陰イオン交換樹脂粒子を捕捉し得るファイルターに通すことを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、放射免疫検出および放射免疫治療に用いる試薬の精製、詳しくはイン・ビボにおける安定性が増強され、かつ、腫瘍部位における保持が増強された放射性ヨウ素標識複合体の精製に関する。
【発明の背景】
【0002】
放射性ヨウ素化モノクローナル抗体は、Goldenberg がAmer. J. Med. 1993; 94: 297-312にまとめているように、癌の診断および治療に重要である。ここ30年の間に、これらの用途のために、モノクローナルおよびポリクローナル抗体へ放射性ヨウ素を化学的に導入する方法がいくつか開発された。タンパク質の放射性ヨウ素化に用いられる化学反応は比較的容易なものであり、放射性ヨウ素は有用な物理的崩壊性を有し、さらに、ヨウ素の同位体は商業的に入手できることから、これらの適用の放射性標識としてはヨウ素が好ましい。ヨウ素と、癌細胞をターゲッティングする抗体とを結合させるために種々の化学法が開発されている。これらの化学法はWilbur, Bioconjugate Chemistry 1992; 3: 433-70に概説されている。最も一般的な結合法としては、in situで求電子性の放射性ヨウ素種を抗体上の官能基と反応するように意図されている。求電子性のヨウ素を生じさせるには、クロラミン−Tおよびヨードゲンなどの試薬が用いられている。通常、タンパク質上のチロシン基がヨウ素化の部位となる。
【0003】
MAbの従来の放射性ヨウ素化にあっては、使用した酸化剤ならびに組み込まれなかった放射性ヨウ素を、なんらかの精製法を用いて除去する必要がある。クロラミン−Tなどのバッファーに可溶な酸化剤を用いた場合、酸化剤と放射性ヨウ素は慣例的に、市販のPD10(登録商標)カラムなどのサイズ排除カラムでのサイズ排除クロマトグラフィーにより除去される。
【0004】
直接放射性ヨウ素化法を用いる場合の主な欠点は、イン・ビボにおける脱ヨウ素現象である。抗体のインターナライゼーションとイン・ビボでのリソソーム処理の結果、標識タンパク質は小さなペプチドへと分解され、その放射性ヨウ素がヨードチロシンの形で、または低分子量のペプチド断片と結合したヨウ素として細胞から放出される。これらの知見は、Geissler et al., Cancer Research 1992; 52: 2907-2915およびShih et al., J. Nucl. Med. 1994; 35: 899-908により報告されている。このようなイン・ビボにおける標的細胞からの放射性ヨウ素の除去によって、放射線診断にとって重要な腫瘍と非腫瘍の識別が低下し、しかも、放射線療法の有効性に著しい影響を及ぼす、標的細胞での放射性ヨウ素の滞留時間も短くなる。
【0005】
細胞内で保持されるヨウ素の放射性標識のデザインにより、イン・ビボでの脱ヨウ素化の現象を克服するためのいくつかのアプローチが考案されている。このような標識は「レシジュアライジングラベル(residualizing label)」と呼ばれている。一つの方法では、放射性ヨウ素を代謝できない炭水化物と結合し、まずこれを活性化し、その後、抗体と結合させる。このアプローチはラクチトリチラミン(LT)およびジラクチトリチラミン(Strobel et al., Arch. Biochem. Biophys 1985; 240: 635-45)ならびにチロシンセロビオース(Ali et al. , Cancer Research 1990; 50: 783s-88s)により例示される。別のアプローチでは、ピリジンに基づく部分「SIPC」が用いられている(Reist et al. , Cancer Research 1996; 56: 4970-4977)。総てのDアミノ酸と複数の塩基性アミノ酸を含有するペンタペプチドも採用されている(Foulon et al. , Cancer Research 2000; 60: 4453-4460)。さらに別のアプローチでは、DTPAを付加した、D−アミノ酸含有放射性ヨウ素化ペプチドがレシジュアライジンラベルとして首尾良く用いられている(Govindan et al., Bioconjugate Chemistry 1999; 10:231-240; Stein et al., Cancer Research 2003; 63: 111-118)。
【0006】
放射性ヨウ素化した低分子量物質をMAbと結合させた場合(以下、放射性ヨウ素化複合体)、前段の記載に例示したように、結合しなかった物質も同様に除去する必要があるという点で、さらなる必要性が生じる。これは必然的にさらなるカラム精製を必要とする。この炭水化物法は結果的に全体の収率および比活性が低くなり、最終工程でカラム精製法を必要とする。Reist et al(前掲)およびFoulon et al(前掲)の方法は2つのカラム精製工程を含み、一つは放射性ヨウ素化段階、もう一つは抗体結合段階である。Govindan et al(前掲;Stein et al(前掲)にもさらなる記載がある)の方法は最終工程に1回のカラム精製を含み、全体の収率および比活性はより高い。
【0007】
カラム法は一般に煩雑であり、特に臨床規模の調製物として数百mCiのI−131を取り扱う場合に、職員への放射線暴露や取り返しのつかないカラム事故の更なる欠点がつきまとう。ヨードゲンに基づく放射性ヨウ素化では、酸化剤は水に不溶であり、放射性標識物質を単にシリンジで除去するか、または濾去することにより除去される。これらの場合には、除去する必要のある他の物質は組み込まれなかった放射性ヨウ素だけである。リン酸イオンまたは水酸化物イオンに対してヨウ化物イオンは強陰イオン交換樹脂との結合に比較的高い親和性を持っているので、組み込まれなかったヨウ化物イオンは陰イオン交換樹脂を用いることにより除去可能であることが示されている[Weadock et al. J Nuclear Medicine 1990; 31:508-511]; Behr TM et al. Nuklearmedizin 2002; 41: 71-79)。また、陰イオン交換樹脂と、市販の「ヨードビーズ」(登録商標)などの固定化クロラミン−T酸化剤を併用することも考えられる。このような併用により、直接放射性ヨウ素化抗体の精製においてはある程度の簡素化が達成されるものの、このような放射性ヨウ素化複合体の使用には依然として、結合していない低分子量部分を除去する必要がある。この精製の多くは、通常カラム法により達成されるが、これらの方法に付随する欠点は、臨床適用で数百ミリキュリーの放射性標識調製物の精製を行うのは実用上問題があるということである。
【0008】
ジエチルアミノエチル−セルロース陰イオン交換体のカラムを通し、数回水で溶出することにより、放射性金属キレートDOTA−ペプチドを非標識DOTA−ペプチドから精製するカラム法は、Li et al. (Bioconjugate Chemistry 1994; 5: 101-104)により記載されている。この場合、放射性金属キレートDOTAペプチドは中性の電荷を有するので、カラムから溶出されるが、キレーター部分に負電荷を有する非標識物質は陰イオン交換カラムに保持される。これには放射性金属でキレートし、その後、抗体と結合させた二官能性物質を精製することを必要とし、この生成物はサイズ排除カラム法により精製された。このように、Li et al.(前掲)の手順は多段階のアプローチ、そして2工程のカラムに基づく精製を含む。ここでも、このようなカラムに基づく方法は、低分子量部分を大規模に放射性ヨウ素化した後にターゲッティング因子と結合させるために適用する場合、実施不可能である。後者の場合、何百ミリキュリーという放射活性ヨウ素が関与するならば、より簡単な精製方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドとターゲッティング因子とを共有結合させることによって製造された放射性ヨウ素化複合体の精製方法を提供することにより、上記の問題を解決するものである。
【0010】
本発明は、種々の放射性ヨウ素化したアミノポリカルボキシレート付加部分とターゲッティング因子に由来する放射性ヨウ素化複合体のための精製系の必要性に取り組むものである。当技術分野で従来知られていた方法とは対照的に、抗体などのターゲッティング因子の直接の放射性ヨウ素化に関し、本発明はチロシン含有二官能性ペプチドなどの低分子量部分の放射性ヨウ素化と、その放射性ヨウ素化部分と抗体の結合を含む手法に関する。本発明はそれ自体、組み込まれなかった放射性ヨウ素および非結合放射性ヨウ素化部分の双方を精製により除去する必要性に取り組むものである。
【0011】
本発明の方法は、レシジュアライジングヨウ素標識による、より効率的な抗体標識を提供する。これらの方法はまた、凝集塊が少なく、より品質が高く、安定な放射性ヨウ素複合体の製造法を提供する。ワンポット製造および精製法に伴う簡素化および取り扱いの安全性などの他の利点は以下の詳細な説明から明らかになろう。
【0012】
定義
以下の記載においていくつかの専門用語が広く用いられている。本発明の理解を容易にするために、以下、定義を示す。
【0013】
ターゲッティング因子 「ターゲッティング因子」とは、標的細胞と選択的に結合し得る分子部分である。ターゲッティング因子の例としては、腫瘍もしくは感染病変部により発現される抗原または受容体をターゲッティング可能なタンパク質分子、または腫瘍もしくは病変部上の特定の受容体をターゲッティング可能な低分子量部分、または腫瘍細胞もしくは病変部にターゲッティングされる合成ヌクレオチドが挙げられる。好ましいターゲッティング因子としては、抗体およびペプチドが挙げられる。
【0014】
抗体 「抗体」とは、ネズミ、キメラ、ヒト化またはヒト抗体などのモノクローナル抗体、ならびに抗原結合フラグメントが含まれる。このようなフラグメントとしては、完全な抗体のFcフラグメントを欠いたFab、Fab’、F(ab)、およびF(ab’)が挙げられる。このようなフラグメントとしてはまた、軽鎖可変領域の単離されフラグメント、重鎖および軽鎖の可変領域の「Fv」フラグメント、(sFv)フラグメント(例えば、Tai et al., Cancer Research Supplement, 55:5983-5989, 1995参照)、および軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーにより連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子も挙げられる。「多価」抗体とは、抗体が、同じ構造であっても異なる構造であってもよいが、1を超える抗原と同時に結合し得ることを意味する。「多重特異性抗体」とは、対象抗体が、構造の異なる少なくとも2つの抗原と同時に結合し得ることを意味する。
【0015】
複合体 本明細書において「複合体」とは、モノクローナル抗体などのターゲッティング因子と共有結合された非標識または放射性標識アミノポリカルボキシレート付加ペプチド(「低分子量部分」とも呼ばれる)を含んでなる分子である。この複合体はターゲッティング因子の生物特異性を保持している。例えば、抗体ターゲッティング因子の免疫反応性(抗原結合能)は、その低分子量部分と結合させる前と比べて結合させた後はだいたい同じであるか、またはわずかに低下しているだけである。
【0016】
アミノポリカルボキシレート付加ペプチド 「アミノポリカルボキシレート付加ペプチド」とは、アミノポリカルボン酸とペプチドとの共有結合により形成された化学部分をさす。この結合はペプチドのアミノ基を介したものであることが好ましい。いずれの好適なアミノポリカルボキシレートも本発明との併用が意図される。アミノポリカルボキシレートの例としては、容易に考えつく他のアミノポリカルボキシレートおよびそれらの誘導体の中でも、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン四酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンN, N’,N”,N”’−テトラ酢酸)、または例えば、イソチオシアナトベンジル−EDTA/DTPA/TTHA/DOTAなどの、様々なその主鎖置換変種が挙げられる。ペプチドは以下に定義する。
【0017】
ペプチド アミノポリカルボキシレート付加ペプチドという場合の「ペプチド」の使用は、LもしくはD−アミノ、またはLおよびD−アミノ酸の組合せから構成された任意のペプチドをさす。このペプチドは好ましくは2〜40個のアミノ酸、より好ましくは2〜5個のアミノ酸、最も好ましくは3〜4個のアミノ酸から構成されている。最適には、ペプチドは、LまたはD−リシンなどの塩基性アミノ酸に好まれるD−チロシンを少なくとも1つ有し、これがペプチドのカルボキシ末端を構成している。この塩基性アミノ酸はアミノポリカルボン酸と結合することができる。
【0018】
溶液 本明細書において、溶液とは、抗体と放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレートの複合体、組み込まれていない放射性ヨウ化物、および組み込まれていない放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレートを含有する溶液をさす。好ましい溶液は緩衝水溶液である。
【0019】
非結合放射性ヨウ素 本明細書において、非結合放射性ヨウ素とは、反応性ヨウ素種へと酸化されてない放射活性ヨウ素種をさし、ペプチドと結合していない非酸化放射性ヨウ化物を含む。
【0020】
陰イオン交換樹脂 本明細書において、「陰イオン交換樹脂」とは、対イオン(陰イオン)を検体の陰イオンと交換可能な、プロトン化第三級アミンまたはテトラアルキルアンモニウム官能基のいずれかを含む市販の不溶性合成または天然ポリマーマトリックスをさす。
【0021】
フィルター 本明細書において、「フィルター」とは、例えば、濾過サイズ0.10μm〜0.30μmの間であり、粒子物質を保持することができる(約0.22μmの孔径のフィルターがより好ましい)任意の装置をさす。
【0022】
酸化剤 本明細書において、「酸化剤」とは、Wilbur(前掲)が述べているように、放射性ヨウ素化反応の放射性ヨウ素化種である、活性放射性一塩化ヨウ素へと放射性ヨウ素を酸化するのに用いられる任意の酸化剤をさす。
【0023】
ヨードゲン法 この用語は、酸化剤としてのヨードゲンの使用を含む放射性ヨウ素化法をさす。ヨードゲン(1,3,4,6−テトラクロロ−3●,6●−ジフェニルグリコールウリル)は、Wilbur(前掲)が述べているように、放射性ヨウ化物の溶液と接触させた際に活性な放射性ヨウ素化種を生成する水に不溶な物質である。
【0024】
クロラミン−T法 この用語は、Wilbur(前掲)が述べているように、放射性ヨウ化物の溶液と混合した際に活性な放射性ヨウ素化種を生成する水溶性の酸化剤としてクロラミン−T(ナトリウムN−クロロトルエンスルホンアミド)を用いることをさす。
【0025】
結合部分 結合部分はマレイミド、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミド、ヨードアセトアミド、ビニルスルホン、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、アミデートエステル、イソシアネート、またはイソチオシアネートを含んでなる基から選択され、ターゲッティング因子と共有結合を形成し得る官能基をさす。結合部分は、同種二官能性または異種二官能性架橋分子を用いてアミノポリカルボキシレート付加ペプチドへと導入される。架橋剤としての同種二官能性および異種二官能性試薬の使用は当技術分野で周知のものである(Wong, S. S., 1991; Chemistry of protein conjugation and cross-linking; CRC Press, Boca Raton, FL; pp 1-48)。
【発明の詳細な説明】
【0026】
驚くことに、本発明者らは、陰イオン交換樹脂とわずかの間接触させるだけで非結合低分子量部分を効率的に除去されることを見出した。精製生成物は濾過により陰イオン交換樹脂から単離される。複合体、ならびに樹脂により除去された非反応ヨウ化物およびヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドから樹脂を濾過するには、粒子物質を捕捉できるいずれの濾過装置も適用することができる。0.22μmの濾過装置が最も好ましい。陰イオン交換樹脂とともに攪拌することにより非結合低分子量物質を除去する方法は、DTPAなど、本発明のアミノポリカルボキシレート部分の場合に特によく機能する。
【0027】
予期しないことに、煩雑なカラム精製法を用いず、簡単なワンポット精製により非結合ポリカルボキシレート部分が効率的に除去できることが見出された。陰イオン交換樹脂の対イオン選択性に基づけば、陰イオン交換樹脂と短時間接触させただけで、ポリカルボキシレートなどの非結合低分子量部分が効率的に除去できるとは予想外のことである。例えば、水酸化物は陰イオン交換樹脂との結合力が弱いと考えられ、酢酸基は水酸化物よりも若干よく結合するに過ぎない。アミノポリカルボキシレートは窒素原子上に酢酸残基を含み、これらの酢酸残基はpH>6の緩衝溶液中で酢酸塩として十分にイオン化されることから、酢酸基は本アミノポリカルボキシレートに関連する。例えば、製造者の製品文献(AG(登録商標)1およびAG2強陰イオン交換樹脂説明マニュアル,BioRad Corporation)に基づけば、陰イオン交換樹脂であるAG1(登録商標)におけるヨウ化物の選択性は水酸化物(任意に1とする)の175倍であるが、酢酸塩では水酸化物の3.2倍である。さらに、この樹脂は、酢酸塩よりも若干高い、相対選択性が5(水酸化物の1に対して)のリン酸型で用いられる。ヨウ化物は陰イオン交換樹脂に対する結合選択性が比較的高いので、イオン交換法によるヨウ化物の除去がうまくいくと予測されるに過ぎない。しかし、陰イオン交換樹脂との結合に対する酢酸塩の選択性がリン酸イオンよりも低いにもかかわらず、本発明者は、このイオン交換法が、陰イオン交換樹脂の結合選択性に基づいては予測できない、アミノポリカルボキシレート含有非結合低分子物質の除去において効率的に機能することを見出した。特定の理論に何ら縛られるものではないが、本発明者は、この選択性の向上が、低分子量部分のアミノポリカルボキシレートの部分構造により予測されるように、同一分子中複数の酢酸基の存在によるものであると考えている。このように、低分子量物質中にアミノポリカルボキシレート部分を組み込むことにより、単に陰イオン交換樹脂の懸濁液とともに数分間攪拌し、生成物を濾別することで、非結合放射性ヨウ素化物質を効率的に除去することができることを発見した。本発明の簡略な方法は、カラム精製法が完全になくなるという点で、Li et al.(前掲)の方法とは実施上明らかに異なり、有利である。
【0028】
陰イオン交換樹脂
これらの例として、スチレンジビニルベンゼンコポリマー格子に結合された第四級アンモニウム基を含有する、市販の強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた。この樹脂の架橋度は8%であり、排除限界分子量1000Daの孔径に相当し、媒体のメッシュサイズは100〜200(粒径150〜75μm)である。
【0029】
しかしながら、本発明は上述の特定の陰イオン交換樹脂特性に限定されるものではないが、上記の強塩基性陰イオン交換樹脂および市販のジエチルアミノエチルセルロースのような弱塩基性陰イオン交換樹脂の双方を含む。さらに、用いる樹脂の架橋度も限定されない。特定例の強塩基性陰イオン樹脂では、架橋度は2%(排除限界分子量2700Daの孔径)〜12%(排除限界分子量400Daの孔径)まで様々であってよく、樹脂の粒径は20メッシュ〜400メッシュであってよく、これは粒径範囲850μm〜38μmに相当する。
【0030】
複合体
本発明は、放射活性がイン・ビボで滞留するように標識化抗体として使用される代謝できない放射性ヨウ素化ペプチドに関する。これらの特別に設計されたペプチドは2〜40個のアミノ酸、好ましくは2〜5個のアミノ酸を含み、好ましくはD−アミノ酸を含む。D−アミノ酸は、ペプチドの抗体への結合部位と、チロシンまたはチラミンと結合している放射活性ヨウ素との間のペプチドにおいて用いるのが好ましい。この領域内に、L−アミノ酸である2つの隣接するアミノ酸がないのが最も好ましい。これに関して、グリシンはL−アミノ酸である。このようにD−アミノ酸を用いることにより、放射活性ヨウ素を抗体と連結しているペプチド結合は、リソソーム中でも加水分解されない。さらに、1以上のアミノポリカルボキシレート部分がこのペプチドに付加され、N末端および/または側鎖アミノ基は、抗体への共有結合のための官能基を有する架橋剤に結合される。抗体共有結合基はアミノ残基(MAbの酸化されたFc部分の炭水化物との位置特異的結合のため)、イミデートまたはイソチオシアネート(タンパク質のリシン基と結合可能)、マレイミド、ブロモ−またはヨードアセトアミド残基(MAb上のチオールに特異的)などであり得る。最後のD−チロシン単位のすぐ後の、抗体結合架橋剤を導入するために用いられるアミノ酸は、天然L−アミノ酸であってもよい。アミノポリカルボキシレート単位は、容易に考えつく、他の多くのアミノポリカルボキシレートおよびそれらの誘導体の中でも、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン四酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンN,N’,N”,N”’−四酢酸)、NOTA(1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−三酢酸)、または例えば1−[(p−イソチオシアナト)ベンジル]−EDTA(ベンジル−EDTA)、1−[(pイソチオシアナト)ベンジル]−DTPA(ベンジル−DTPA)、1−[(p−イソチオシアナト)ベンジル]−TTHA(ベンジル−TTHA)、1−[(p−イソチオシアナト)ベンジル]−DOTA(ベンジル−DOTA)、1−[(p−イソチオシアナト)ベンジル]−NOTA(ベンジル−NOTA)などの種々の主鎖置換変種であり得る。
【0031】
もう1つの実施形態では、ヨウ素化可能な二官能性アミノポリカルボキシレートは、アミノポリカルボキシレートにトリラミン基と抗体結合基を結合させることにより誘導される。これらの構造中にはプロテアーゼ感受性結合は含まれていない。あるいは、抗体結合単位で主鎖置換したアミノポリカルボキシレートを、対応する二無水物へ変換し、これを次にD−チロシンと反応させてD−チロシン残基2個を含む物質を得る。二官能性アミノポリカルボキシレートとD−チロシンの間のアミド結合は、プロテアーゼによって認識されないので、これらはまた違った種のレシジュアライジングヨウ素標識をなす。
【0032】
ヨウ素化D−チロシン部分がデイオジナーゼに耐性があるということは、本発明とともに使用可能な有利な特性である。この可能性は、Dumas et al., Biochem. Biophys. Acta 1973; 293: 36-47によって記載されている。
【0033】
抗体の放射性ヨウ素化に有用なアミノポリカルボキシレート付加ペプチドの例としては、X−Gly−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;X−D−Ala−D−Tyr−D−Tyr−D−Lys(DTPA);[X−D−Ala−D−Tyr−D−Tyr−D−Lys(1/2DTPA)]2;X−Lys(X)−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−D−Tyr−D−Tyr−D−Lys((1−(p−NH)ベンジル)DTPA)−OH;X−Lys(X)−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;X−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;X−Lys(X)−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;X−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;およびX−Lys(X)−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH(ここで、Xは、モノクローナル抗体、そのフラグメントおよび構築物などのタンパク質をはじめ、ターゲッティングベクターとの共有結合のための官能基を含有する架橋剤である)からなる群から選択される。
【0034】
本発明の範囲内で好適な例としての放射性ヨウ素は、I−123、I−124、I−125またはI−131である。
【0035】
抗体
本発明の好ましい実施形態では、MAb、多価抗体および多重特異性抗体などの抗体は、標的細胞において高レベルで発現され、正常組織に対して罹患細胞において優先的にまたは罹患細胞でのみ発現されるマーカーまたは腫瘍関連抗原、ならびにある種の正常細胞、および骨髄細胞のように侵食される組織や、副甲状腺、脾臓および子宮内膜などの異所組織に関連する抗原を認識する、またはそれらと結合するもの、および速やかにインターナライズする抗体が用いられる。「多価」抗体とは、抗体が、構造が同じであっても異なっていてもよいが、1を超える抗原と同時に結合し得ることを意味する。「多重特異性」抗体とは、対象抗体が構造の異なる少なくとも2つの抗原と同時に結合し得ることを意味する。例えば、2つの異なる特異性を有する抗体は、構造の異なる2つの標的と同時に結合し得ることから、多価抗体であり、多重特異性抗体でもあるとみなされる。他方、同じ標的と結合する2以上の特定のアームを有するが、他の特異性は持たない抗体は多価ではあるが、多重特異性ではない。種々の多重特異性かつ/または多価抗体は分子工学を用いて作製することができる。例えば、二重特異性融合タンパク質は、例えば、ある抗原に対する単一の結合部位を有するscFvと、別の抗原に対する単一の結合部位を有するFabフラグメントからなる一価のものであり得る。二重特異性抗体はまた、例えば、ある抗原に対する2つの結合部位を有するIgGと、別の抗原に対する2つの結合部位を有するscFvからなる二価のものであり得る。
【0036】
本発明の範囲内で有用な抗体としては、上記のような特性を有するmAbが含まれ、限定されるものではないが、以下のmAb:LL1(抗CD74)、LL2(抗CD22)、RS7(抗上皮糖タンパク質−1(EGP−1))、PAM−4(抗MUC1)、MN−14(抗癌胎児性抗原)、Mu−9(抗結腸特異的抗原−p)、AFP(抗α−フェトプロテイン)、抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)(J591など)、およびG250(抗炭酸脱水酵素IX)の使用が意図される。これらの複合体を用いてターゲッティングされ得る他の有用な抗原としては、HER−2/neu、CD19、CD20、VEGF、EGF受容体、アルカリホスファターゼ、前立腺酸性ホスファターゼ、テネイシン、胎盤増殖因子(PlGF)、インスリン様増殖因子(ILGF)、およびガングリオシドが挙げられる。
【0037】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、抗体は、速やかにインターナライズし、その後、再発現され、プロセシングされ、細胞表面で提示され、細胞による連続的取り込みおよび循環免疫複合体の付着が可能となるものが用いられる。最も好ましい抗体/抗原対の例としては、LL1と抗CD74 mAb(定常鎖、クラスII特異的シャペロン、Ii)がある。CD74抗原はB細胞リンパ腫、ある種のT細胞リンパ腫、黒色腫およびある種の他の癌で発現が高い(Ong et al., Immunology 1999; 98:296-302)。
【0038】
抗CD74抗体で治療される疾患としては、例えば、限定されるものではないが、非ホジキンリンパ腫、黒色腫および多発性骨髄腫が挙げられる。標的細胞の表面で短期間CD74抗原が連続発現した後、抗原がインターナライズされ、その抗原が再発現するので、ターゲッティングLL1抗体を、それが「ミサイル弾頭」として運ぶ治療薬部分とともにインターナライズさせることが可能となる。これにより高い治療濃度のLL1−治療薬免疫複合体をこのような細胞に蓄積させることができる。インターナライズされたLL1免疫複合体はリソソームおよびエンドソームを介して循環され、このようにレシジュアライジング放射活性部分が標的細胞内で保持される。
【0039】
好ましい実施形態では、ヒト疾患の治療に用いられる抗体は、ヒト型またはヒト化型(cdrグラフト)抗体であるが、ネズミ型およびキメラ型の抗体も使用できる。獣医学用途としては、同種IgGが最も有効なベクターである可能性があるが、交差種IgGもやはり有用である。送達薬剤としての同種IgG分子は、免疫応答を最小限とするために通常好ましい。これは反復治療を考える場合に特に重要である。ヒトに対しては、ヒトまたはヒト化IgG抗体が患者の抗IgG免疫応答を起こしにくいと思われる。インターナライズしている抗原をターゲッティングすれば、hLL1およびhLL2などの抗体は、標的細胞と結合した後に速やかにインターナライズされるが、このことは運ばれている放射性ヨウ素化抗体複合体が速やかに細胞内にインターナライズされることを意味する。
【0040】
MAbはネズミ、キメラ、ヒト化またはヒト抗体であり、完全な形であっても、そのフラグメントであっても操作された種々の形態であってもよい。特に好ましい実施形態では、MAbはチオール基を持つように誘導体化されているか、またはジスルフィド還元されている。
【0041】
抗体標的
心血管病変部(例えば、血餅、塞栓、アテローム斑)、アミロイド沈着物(例えば、アミロイド症およびアルツハイマー病の場合)、感染性生物(例えば、細菌、真菌、リケッチア、ウイルス、寄生虫)、炎症(例えば、急性特発性血小板減少性紫斑病または慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫媒介性血小板減少症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および繊維性肺胞炎などのような第III種自己免疫疾患)、変位または異所性の正常組織(例えば、副甲状腺、子宮内膜、脾臓、胸腺)、および癌(液性癌(例えば、白血病およびリンパ腫)および固形癌(例えば、癌腫、肉腫、神経膠腫、黒色腫)といった種々の罹患組織、細胞および器官に対する抗体が用いられる。
以下、本発明を、その範囲を限定するものではないが、実施例により説明する。
【実施例】
【0042】
実施例1:放射性ヨウ素化IMP−R4によるジスルフィド還元抗CEA MAb、hMN−14の標識化のための簡便なワンポット製造および精製法
以下、本手順を、放射性ヨウ素化し、ジスルフィド還元抗CEA MAbであるhMN−14と結合されている、低分子量物質としてのIMP−R4を用いて説明する。IMP−R4はMCC−Lys(MCC)−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH(ここで、MCCは4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボニルである)という構造を有する。IMP−R4は2000年10月26日に出願された米国特許出願第09/696,740号の主題の一部である。
【0043】
供給者から得たI−131ヨウ化ナトリウムを、7倍量0.5Mリン酸ナトリウムpH7.4で緩衝させ、さらに1.4mLの40mMリン酸ナトリウムpH7.4を用いて、ヨードゲンでコーティングし、攪拌子を入れ、IMP−R4(0.13μmol/100mCiのI−131)を含むバイアルに移した。この溶液を8〜15分間攪拌し、組み込まれなかった放射性ヨウ素を過剰量の4−ヒドロキシフェニル酢酸で急冷した。この放射性ヨウ素化IMP−R4を30分間、ジスルフィド還元hMN−14と結合させ(1回の実験でのIgG−SH−対IMP−R4比は0.6)、用いられなかったチオール基をナトリウムテトラチオネートでキャップした。最後に、リン酸型の陰イオン交換樹脂AG1×8(登録商標)(100〜200メッシュ)の20%w/v懸濁液2〜3mLを加え、5分間攪拌した。次に、この放射性標識物質を、Milli−Fil(登録商標)GS 0.22μmフィルターユニット(Millipore Corporation)を用いて滅菌密閉容器中へ濾過した。所望により、ヒト血清アルブミンを生成物に加えて、終濃度1%〜2.5%とした。
【0044】
典型的な回収率は次の通りである。57.4mCiのI−131から出発すると最終生成物に40mCi(69.9%)が含まれており、123mCiのI−131で一度試したところ、最終生成物には63mCi(51%)が含まれていた。40mCi〜123mCiのI−131を用いた放射性標識(n=9)では、HPLC分析によれば全体の組み込み率は61%〜75%であり、回収率は50%〜70%の範囲であった。CEAとの複合化およびHPLC分析によって判断したところ、免疫反応性は>95%であった。HPLC分析によれば最終生成物は純度>95%であり、凝集率は<5%であり、比活性は5mCi/mg〜6mCi/mgの範囲であった。
【0045】
実施例2:イン・ビボにおけるバッファー中および血清添加に対する安定性
実施例1の精製生成物(全放射活性62.9mCi)を、2.5%HSAを含有するリン酸バッファー中、0.9mCi/mL濃度および抗体濃度0.2mg/mLで20時間室温で放置し、サイズ排除HPLCにより分析した。リン酸バッファーの例としては、0.1Mリン酸ナトリウム水溶液をpH6.0〜7.5の間に調節したものである。これにより、この生成物は実質的に変化しないことが示された。20倍モル過剰のCEA抗原と複合化したところ、免疫反応性が保存されていることが明らかになった。
【0046】
第二の実験では、上記の生成物をヒト血清中で33.3倍希釈し、37℃で20時間インキュベートした。この時点で分析したところ、標識の損失は無視できるもので、この材料はCEAとなお複合化していることが示され、このことから免疫反応性が保存されていることが示唆された。
【0047】
実施例3:低pHでの標識および精製
I−131ヨウ化ナトリウムの緩衝をその7倍量の0.3Mリン酸ナトリウムpH6で行い、その後、緩衝させたこのI−131を1.4mLの0.03Mリン酸ナトリウムpH6を用いてヨードゲンバイアル中に移すという変更を行い、実施例1の手順に従った。56.5mCiのI−131ヨウ化ナトリウムから出発し、放射性ヨウ素化、ジスルフィド還元hMN−14との結合、およびAG(登録商標)1×8陰イオン交換樹脂とともに攪拌することによる精製の後、39mCi(69%)の精製I−131−IMP−R4−hMN−14が回収された。別の実験で、同じ手順を用い、109.8mCiのI−131ヨウ化ナトリウムから、69.3mCiの精製生成物(63.1%)が得られた。ここでも、これら2種の実験で、CEAとの複合化を用い、免疫反応性の完全な保存が示された。
【0048】
実施例4:酸化剤として固定化クロラミン−Tを用いた放射性ヨウ素化、その後の結合および陰イオン交換精製
この実験では、ヨードゲンの代わりに市販の固定化クロラミン−T(ヨード−ビーズ(登録商標)を用いる。放射性ヨウ素化バイアル中で1以上のビーズを用いる。それ以外の操作は実施例1に記載したものと同じである。このように、陰イオン交換精製および簡単な濾過による生成物の単離の後、精製されたI−131−IMP−R4−hMN−14が得られた。
【0049】
本願に言及された特許、特許出願および刊行物文献を含むいずれの、また総ての参照文献の内容は引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】粗(未精製)生成物(I−131−IMP−R4−hMN−14)のサイズ排除(SEC)HPLCを示す。保持時間約10分の主要ピークは標識hMN−14によるものであり、14分と18分付近のピークはそれぞれ非結合I−131−IMPR4とI−131を示す。
【図2】精製I−131−IMPR4−hMN14のSEC HPLCを示し、非結合I−131−IMPR4とI−131は陰イオン交換により完全に除去されることを示している。
【図3】精製生成物と抗原癌胎児性抗原(CEA)複合体の混合物のSEC−HPLCを示し、このHPLCは、標識抗体により、より高分子量物質の抗体−抗原複合体への完全なピークシフトによって示されるように、この生成物の免疫反応性が完全に維持されていることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドとターゲッティング因子との複合体を製造および精製する方法であって、
(A)(i)非結合放射性ヨウ素、(ii)ターゲッティング因子と結合してない放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチド、および(iii)ターゲッティング因子と結合している放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドを含んでなる溶液を準備すること;
(B)その溶液と陰イオン交換樹脂とを接触させること;および
(C)その陰イオン交換樹脂と溶液とを供に、陰イオン交換樹脂粒子を捕捉し得るフイルターに通すこと;
それにより放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドとターゲッティング因子の精製された複合体を得ることを含んでなる、方法。
【請求項2】
(A)の溶液が、アミノポリカルボキシレート付加ペプチドを放射性ヨウ素化して放射性ヨウ素化ペプチドを形成すること;および
放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドとターゲッティング因子とを結合させて放射性ヨウ素化アミノポリカルボキシレート付加ペプチドの複合体を形成すること;
により製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペプチドの放射性ヨウ素化が、酸化剤を用い、ペプチドと結合し得る放射性ヨウ素を放射活性ヨウ化ナトリウムから生成することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸化剤がヨードゲンまたはクロラミン−Tである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
酸化剤がクロラミン−Tであり、放射性ヨウ素化が、固定化された不溶性ビーズ型のクロラミン−Tの存在下で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フィルターの孔径が0.1μm〜0.3μmの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
陰イオン交換樹脂がポリマー格子上にある第四級アンモニウム官能基からなり、ポリマーの架橋度が約2%〜12%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
陰イオン交換樹脂がポリマー格子上にある第三級アミン官能基からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
樹脂粒子の大きさが20メッシュ〜400メッシュ(粒径850μm〜38μm)の間である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
精製された複合体溶液が含む、陰イオン交換樹脂に曝す前の溶液中に既に存在していた非結合放射性ヨウ素および非結合放射性ヨウ素化ペプチドの合計が10%に満たない量である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
樹脂を溶液とともに攪拌することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
溶液を陰イオン交換樹脂を含むカラムに通すことをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載のアミノポリカルボキシレート付加ペプチドが
X−Gly−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;
X−D−Ala−D−Tyr−D−Tyr−D−Lys(DTPA);
[X−D−Ala−D−Tyr−D−Tyr−D−Lys(1/2DTPA)]
X−Lys(X)−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−D−Tyr−D−Tyr−D−Lys((1−(p−NH)ベンジル)DTPA)−OH;
X−Lys(X)−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;
X−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;
X−Lys(MCC)−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;
X−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH;および
X−Lys(X)−Asp−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OH
(ここで、Xはターゲッティング因子と共有結合を形成し得る結合部分を含む架橋剤である)
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ターゲッティング因子が、マレイミド、クロロアセトアミド、ブロモアセトアミド、ヨードアセトアミド、ビニルスルホン、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、アミデートエステル、イソシアネート、またはイソチオシアネートを含んでなる結合部分により、アミノポリカルボキシレート付加ペプチドと結合されている、請求項1または13に記載の方法。
【請求項15】
マレイミド結合部分が4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボニル部分である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
マレイミド結合部分が2−(N−マレイミド)アセチル部分である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
アミノポリカルボキシレートがEDTA、DTPA、ベンジル−EDTA、ベンジル−DTPA、ベンジル−DOTA、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)、NOTA、またはベンジル−NOTAである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ペプチドがMCC−Lys(MCC)−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−D−Tyr−D−Lys((1−(p−CSNH)ベンジル)DTPA)−OHである(ここで、MCCは4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボニル部分である)IMP−R4である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ターゲッティング因子がモノクローナル抗体(MAb)である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記モノクローナル抗体が悪性疾患に関連している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記モノクローナル抗体が心血管疾患に関連している、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体が自己免疫疾患に関連している、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が第III種自己免疫疾患である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第III種自己免疫疾患が免疫媒介性血小板減少症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および繊維性肺胞炎からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記モノクローナル抗体がアルツハイマー病に関連している、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記モノクローナル抗体が感染性生物に関連している、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記モノクローナル抗体がインターナライズ型抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記モノクローナル抗体が抗CEA MAb、MN−14;抗EGP−1 MAb;抗CD22 MAb;抗CD20 MAb;抗結腸特異的抗原−p MAb;抗CD74 MAb;抗MUC1 MAb;抗AFP MAb;抗前立腺特異的膜抗原;または抗炭酸脱水酵素IX MAbである、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記モノクローナル抗体がネズミ、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体であり、完全型、そのフラグメントまたは種々の操作型であってよい、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記モノクローナル抗体がチオール基を有するように誘導体化されているか、またはジスルフィド還元されている、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
放射性ヨウ素がI−123、I−124、I−125またはI−131である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
ターゲッティングベクターによりターゲッティングされる抗原がHER−2/neu、CD19、CD20、VEGF、EGF受容体、アルカリホスファターゼ、前立腺酸性ホスファターゼ、テネイシン、胎盤増殖因子(PlGF)、インスリン様増殖因子(ILGF)およびガングリオシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記モノクローナル抗体が心血管病変部、アミロイド沈着物、感染性生物、炎症、自己免疫疾患、変位または異所性の正常組織、および液性癌または固形癌をターゲッティングし得る、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記モノクローナル抗体が血餅、塞栓、アテローム斑、アミロイド症、細菌、真菌、リケッチア、ウイルス、寄生虫、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、変位または異所性の副甲状腺組織、変位または異所性の子宮内膜組織、変位または異所性の脾臓組織、変位または異所性の胸腺組織、白血病、リンパ腫、癌腫、肉腫、神経膠腫、または黒色腫をターゲッティングし得る、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
ターゲッティング因子が多価抗体または多価多重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体が悪性疾患に関連している、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体が心血管疾患に関連している、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体が自己免疫疾患に関連している、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記自己免疫疾患が第III種自己免疫疾患である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第III種自己免疫疾患が免疫媒介性血小板減少症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および繊維性肺胞炎からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体がアルツハイマー病に関連している、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体が感染性生物に関連している、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体がインターナライズ型抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体がチオール基を有するように誘導体化されているか、またはジスルフィド還元されている、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体が心血管病変部、アミロイド沈着物、感染性生物、炎症、自己免疫疾患、変位または異所性の正常組織、および液性癌または固形癌をターゲッティングし得る、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体がCD74、CD22、上皮糖タンパク質−1、MUC1、癌胎児性抗原、結腸特異的抗原−p、α−フェトプロテイン、前立腺特異的膜抗原、炭酸脱水酵素IX、HER−2/neu、CD19、CD20、VEGF、EGF受容体、アルカリホスファターゼ、前立腺酸性ホスファターゼ、テネイシン、胎盤増殖因子(PlGF)、インスリン様増殖因子(ILGF)、およびガングリオシドに対する結合部位を含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記多価抗体または多価多重特異性抗体が血餅、塞栓、アテローム斑、アミロイド症、細菌、真菌、リケッチア、ウイルス、寄生虫、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、変位または異所性の副甲状腺組織、変位または異所性の子宮内膜組織、変位または異所性の脾臓組織、変位または異所性の胸腺組織、白血病、リンパ腫、癌腫、肉腫、神経膠腫、または黒色腫をターゲッティングし得る、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫媒介性血小板減少症が急性特発性血小板減少性紫斑病または慢性特発性血小板減少性紫斑病である、請求項24に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫媒介性血小板減少症が急性特発性血小板減少性紫斑病または慢性特発性血小板減少性紫斑病である、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記モノクローナル抗体がMN−14、RS7、LL2、1F5、A20、Mu9、LL1、PAM−4、Immu31、J591およびG250からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−517230(P2006−517230A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503348(P2006−503348)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/003305
【国際公開番号】WO2004/071571
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】