説明

安定化された不飽和ポリエステル樹脂混合物

【課題】強化繊維を含有し、かつ加圧硬化成型用組成物を意図した均質な不飽和ポリエステル樹脂混合物の提供。
【解決手段】下記の成分を含有する不飽和ポリエステル樹脂混合物を用いることにより、課題を解決できる。(ア)重量平均分子量が500〜5、000 g/モルの不飽和ポリエステル樹脂、(イ)エチレン性不飽和モノマー、(ウ)収縮低減成分、(エ)不活性充填剤、及び(オ)強化繊維、並びに(カ)該強化繊維を含有する不飽和ポリエステル樹脂混合物の全重量に対して、0.01〜1重量%のブロック共重合体であり、該ブロック共重合体は一つのAブロックと一つのBブロックを含有し、かつAブロックは、アミン含有のエチレン性不飽和モノマーを含有し、Bブロックは、重合中に重合体に導入されたアルキル及び/又はフェニル含有のエチレン性不飽和モノマーを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏析(demixing)に対して安定な不飽和ポリエステル樹脂混合物、その製造及び不飽和ポリエステル樹脂混合物におけるエチレン性不飽和モノマーに基づくブロック共重合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂システムに基づく成型用組成物はSMC(シートモールディング組成物)、BMC(バルクモールディング組成物)、DMC(ドウモールディング組成物)、TMC(高濃度モールディング組成物)又はLDMC(低密度モールディング組成物)の形で広く使用されている。このために、該樹脂を不活性充填剤及び繊維状強化材料で処理する。これらのモールディング組成物が圧縮される時に、樹脂が重合して硬くなる。このプロセスにおいて、不飽和ポリエステル樹脂は、その処方中の、例えば、スチレン、ジビニルベンゼンのような不飽和モノマーと結合する。この硬化プロセスはフリーラジカルプロセスが一般的であり、圧縮工程時の温度上昇に伴い活性化される、添加されているフリーラジカル開始剤により開始する。強化繊維や充填剤、さらには顔料がこの樹脂マトリックスに均一に分散する。この重合プロセスの間に部分的な収縮が発生する。
【0003】
この重合プロセスの間に部分的な収縮が発生する。この収縮に対応するために、LS添加剤(低収縮添加剤・low-shrink additive)又はLP添加剤(低収縮剤・low-profile additive)として知られている収縮低減成分を該混合物に加える。これらの収縮低減成分のほとんどがポリスチレンやポリアクリレートのような熱可塑性プラスチックである。該圧縮工程中に取扱いができるような該樹脂処方の粘度とするために、元素の周期律表の第1〜3主グループの金属酸化物又は金属水酸化物からの増粘剤を該混合物に加えることが殆どである。該組成物の稠度が切断可能になるが、未だ成型可能なところまで、該混合物の粘度が熟成工程中に上昇する。応用分野によっては、離型剤のような他の添加剤を該不飽和ポリエステル樹脂混合物に加える。
【0004】
不飽和ポリエステル樹脂システム中の各成分は相互に安定な混合物を形成しない。しかしながら、均一な成型組成物を製造するために、全量を通して同じ性質を保ち、圧縮工程の間、全ての成分が安定かつ均質な混合物中に存在しなければならない。しかしながら、この濃縮又は非濃縮タイプの予備混合物(premix)を貯蔵する間にも、該不飽和ポリエステル樹脂システムの全ての成分が安定かつ均質でなければならない。
【0005】
特許文献1には、不飽和ポリエステル樹脂混合物のような硬化可能プラスチック混合物において、ポリエチレンオキシドブロックを含み、かつエチレン性不飽和芳香族モノマー及び/又は共役ジエンモノマーを含むブロック共重合体に相溶化効果があることが記載されている。
特許文献2には、不飽和ポリエステル樹脂混合物におけるポリアルキレンオキシド含有のブロック共重合体による粘度低減効果が記載されている。
特許文献3には、エチレン−酢酸ビニル又はエチレン−プロピオン酸ビニル共重合体の収縮低減成分を分散させるために、酢酸ビニル含有量が60〜99%のエチレン−酢酸ビニル共重合体、長鎖アルキル基を有するポリアクリレート及びセルロース誘導体を使用することが記載されている。
特許文献4及び特許文献5には、SMCやBMCを顔料でより均一に着色するための収縮低減成分として、シリコン、ポリエーテルなどの界面活性物質を酢酸ビニル−無水マレイン酸重合体と組み合わせて使用することが記載されている。
特許文献6及び特許文献7には、それぞれ、特にSMCの表面平滑性を改良するために、不飽和ポリエステル樹脂混合物中において、冷たい状態の混合物中のみならず硬化工程中にも不飽和ポリエステル及びモノマーと相溶するポリエーテル及び芳香族炭化水素が記載されている。
【0006】
これら記載された化合物は、不飽和ポリエステル樹脂システム中において、特定の収縮低減成分又は特定の充填剤のような特定成分としか相溶性が無いという不利益がある。普遍的に適用するためには、不飽和ポリエステル樹脂システム中における添加剤の幅広い相溶性が必要である。
【0007】
【特許文献1】US 3 836 600
【特許文献2】US 3 887 515
【特許文献3】US 3 988 388
【特許文献4】US 4 491 642
【特許文献5】US 4 555 534
【特許文献6】US 5 162 401
【特許文献7】US 5 256 709
【特許文献8】国際公開WO01/44389
【特許文献9】国際公開WO00/40630
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、強化繊維を含有し、かつ加圧硬化成型用組成物を意図した均質な不飽和ポリエステル樹脂混合物に関するものであり、該不飽和ポリエステル樹脂混合物は公知技術よりも少ない混合物安定化用添加剤を含有しており、該混合物安定化用添加剤が幅広い相溶性を示すものである。特に、粘度の低減により該ポリエステル樹脂混合物の偏析が進行するので、該不飽和ポリエステル混合物の粘度が低減されることがない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、外部圧力により硬化することができる不飽和ポリエステル樹脂混合物により達成することができ、かつ該不飽和ポリエステル樹脂混合物が少なくとも下記の成分を含んでいる。
(ア)重量平均分子量が500〜5、000 g/モルの不飽和ポリエステル樹脂、
(イ)エチレン性不飽和モノマー、
(ウ)収縮低減成分、
(エ)不活性充填剤、及び
(オ)強化繊維、並びに
(カ)強化繊維を含有する該不飽和ポリエステル樹脂混合物の全重量に対して、0.01〜1重量%のブロック共重合体。ここで、該ブロック共重合体は少なくとも一つのAブロック及び少なくとも一つのBブロックを含有し、かつAブロックは、重合中に重合体に組み込まれるアミン含有のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも一種含有する。
また、Bブロックは、重合中に重合体に組み込まれるアルキル及び/又はフェニル含有のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも一種含有しており、重合中に重合体に組み込まれるアミン含有のエチレン性不飽和モノマーとは無関係である。
【発明の効果】
【0010】
該不飽和ポリエステル樹脂混合物は公知技術よりも少ない混合物安定化用添加剤を含有しており、該混合物安定化用添加剤が幅広い相溶性を示すものである。特に、粘度の低減により該ポリエステル樹脂混合物の偏析が進行するので、該不飽和ポリエステル混合物の粘度が低減されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
一般に、通常の不飽和ポリエステル樹脂(UP樹脂と称す)は成分(ア)の不飽和ポリエステル樹脂として機能することができる。市販されているUP樹脂のいずれも基本的に適している。特に、UP樹脂は二塩基カルボン酸及び無水カルボン酸から作ることができ、これらの少なくとも一種の化合物は不飽和で、2価アルコール及びエポキシドからのものでなければならない。
【0012】
二塩基不飽和カルボン酸やカルボン酸誘導体の例としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びHET酸(ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸)があり、また、これらの無水物も挙げることができる。さらに、アジピン酸、グルタル酸、又は無水マレイン酸及びシクロペンタジエンからなるディールス・アルダー付加物も二塩基カルボン酸成分として使用することができる。UP樹脂の製造中にアクリル酸やメタクリル酸からできるものを併用することができる。
特に使用できる2価アルコール成分としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール又はネオペンチルグリコールの他に、1,4−ブタンジオール及び2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールがある。
使用できる他の例として、テトラブロモビスフェノールのジグリシジルエーテルがある。二塩基カルボン酸及び2価アルコールの他に、分岐の重縮合物となる高級官能性のアルコールやカルボン酸を使用することもできる。
【0013】
成分(イ)のエチレン性不飽和モノマーはポリエステル鎖の二重結合とフリーラジカル重合機構により反応して、生成物の硬化のような架橋反応を生じる。
エチレン性不飽和モノマー(イ)がスチレン又は酢酸ビニルのような電気陰性のコモノマーであれば、例えばその生成物は交互共重合体である。これらは比較的短い架橋を有する共重合体であり、相対的に硬い熱硬化性の樹脂となる。反対に、メチルメタクリレートのようなより電子陽性であるコモノマーは生成するポリエステル鎖の間に比較的長いメチルメタクリレートブロックが生成するので、対応する柔軟な熱硬化性の樹脂となる。さらに、特定の樹脂は、例えば、ビニルトルエン、α−メチルスチレン又はフタル酸ジアリルエステルを成分(イ)として含有することができる。
【0014】
これに関して使用される収縮低減成分(ウ)は、特に、該文献でLS添加剤又はLP添加剤と称される化合物を含有する。これらの中で、例えば、ポリエチレン及びその共重合体、ポリスチレン及びその共重合体、飽和ポリエステル、セルロースアセトブチラート、ポリメチルメタクリレートのようなポリアクリレート、ポリビニルアセテート及びその共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体及びそれらの共重合体の混合物が挙げられる。
【0015】
不活性充填剤(エ)として適しているものとして、天然由来及び合成のチョーク(CaCO3)、アルミニウム三水和物(ATH)、カオリン、タルク、長石、金属酸化物、水晶粉末及び岩粉がある。
強化繊維(オ)として、ガラス繊維、特に、低アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス繊維、合成有機繊維(例;ポリエステル、ポリアミド、アラミド)、炭素繊維及び天然由来の有機繊維(例;セルロース)が挙げられる。
【0016】
圧力で硬化する本発明の不飽和ポリエステル樹脂混合物はさらに他の成分を含むことができる。
これらの中で、離型剤及び消泡剤のような加工添加剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤及び難燃剤のような安定化剤、接着性向上剤、湿潤剤、可塑剤、増粘剤、耐衝撃性改良剤及び発泡剤のようなバルク改質剤及び静電防止剤のような表面改質剤がある。勿論、これらの添加剤の選択についての制限は無く、また、目的とする使用のための機能として知られている方法で選択する。
所望により、本発明のポリエステル樹脂混合物は、さらに、有機及び無機顔料又は染料を含有することができる。
特許文献8には水性の顔料含有調製物のための湿潤・分散剤としてのブロック共重合体が記載されている。
特許文献9には、顔料入りコーティング組成物又はインクの処方ために適している顔料調製物の製造のために同じ構造の重合体の使用を特許請求している。該両明細書には、ポリエステル樹脂ベースの典型的な塗料バインダの存在下に、顔料をブロック共重合体で分散することが記載されている。顔料調製物の粘度がここでは低くなってしまう。
【0017】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂混合物の場合には、本発明の不飽和ポリエステル樹脂混合物は所定量のブロック共重合体による粘度の低下効果は見られない。また、該不飽和ポリエステル樹脂混合物の粘度が低いと分離し易いために、粘度の低下は望ましくない。
【0018】
該不飽和ポリエステル樹脂混合物に使用される該ブロック共重合体(カ)は好ましくは制御されたリビング重合の方法で製造する。これらの重合方法の例は当業者に知られており、かつ、とりわけ、下記の記事や特許明細書に記載されている。
1)Poly.Int., 2000, 49, 993、US 6 29 620、国際公開WO98/01478、WO98/58974及びWO99/31144に実験例・実施例として記載されている「可逆的付加分断鎖移行プロセス"Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer process (RAFT)」。
2)Chem. Rev., 2001,101, 3661に実験例として記載されている「重合調節剤としてのニトロキシル化合物を用いた制御された重合(NMP)」。
3)Chem. Rev., 2001, 101, 2921に実験例として記載されている「原子移送ラジカル重合 ”Atom Transfer Radical Polymerization” (ATRP)」。
4)Encyclopedia of Plymer Science and Engineering,7巻、H.F.Mark, N.M.Bikales,C.G.Overberger及びG.Menges,Eds.,Wiley Interscince,New York,1987,pp.580の「グループ移送重合”Group Transfer Polymerization”」の中の、O.W.Websterにより実験例として記載されている「グループ移送重合(GTP)」を参照のこと。
当業者に知られている適切な反応条件、モノマー及び溶媒は重合方法の機能として選択される。
【0019】
本発明によると、ブロック共重合体として使用される共重合体は重合体鎖に沿ってモノマー構成中における鋭い転移(sharp transition in monomer constitution)によって特徴付けられ、重合体の個々のブロック間の境界が明確となる。モノマー又はモノマーの混合物を逐次添加することで、制御されたリビング重合が関係する上述の方法により、このモノマー構成中の鋭い転移を達成することができる。
ブロック共重合体の適切なブロックであるためには、ブロックは少なくとも3つのモノマー単位を含んでなければならない。該ブロック自体は、ランダム構造、交互構造、ブロック構造又は階調構造(gradient structure)を有することができる。
該ブロック共重合体の数平均分子量として、1,000〜200,000 g/モルが好ましく、2,000〜50,000 g/モルが特に好ましく、2,000〜20,000 g/モルが格別に好ましい。
【0020】
ブロック共重合体の好ましい例として、ABもしくはBAの二ブロック共重合体、ABAもしくはBABの三ブロック共重合体、又は少なくとも一つのAブロック及び少なくとも一つのBブロックの他に、Aブロック及びBブロックの定義に入らない一つ以上の他のブロック(Cブロック)をも含む三ブロック共重合体がある。ABA及びBABの三ブロック共重合体の場合に、前者の二個のAブロック及び後者の二個のBブロックが上記定義を満たす場合には、それぞれ独立して異なる構造とすることができる。従って、例えば、BAB三ブロック共重合体の第一のBブロックはAブロックの反対側の第二のBブロックとは長さ及び/又はモノマー構成において異なっても良い。しかしながら、上記の構造中では二ブロック構造が特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂混合物中のブロック共重合体(カ)の各Aブロックは、該各Aブロックの全重量を基準として、重合中に導入される一種以上のアミン含有エチレン性不飽和モノマーを、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、及び特に好ましくは少なくとも50重量%含有する。
【0021】
アミン基を含むエチレン性不飽和モノマーの例を下記する。ここで、本明細書において(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの両者を意味する。N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及び2−ブチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート及びアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、又は2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びビニルイミダゾールのような酸と塩を形成し得るエチレン性不飽和N−複素環化合物である。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂混合物中のブロック共重合体(カ)の各Bブロックは、該各Bブロックの全重量を基準として、重合中に導入される少なくとも一種のアルキル及び/又はフェニル含有エチレン性不飽和モノマーを、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、及び特に好ましくは100重量%含有する。さらに、該Bブロックを特徴付けるモノマーはAブロックに存在させることもできる。
【0023】
フェニル基を含むエチレン性不飽和モノマーの例として、ベンジルメタクリレート及びフェニルアクリレートのようなアリール(メタ)アクリレートがあり、各アリールラジカルは未置換又は4−ニトロフェニルメタクリレートのように最大5個の置換基を有している。また、スチレン及び4−メチルスチレン、4−ビニル安息香酸及び4−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような置換スチレンを挙げることができる。
【0024】
アルキル基を含むエチレン性不飽和モノマーの例としては、下記のものを挙げることができる。炭素数1〜22の直鎖、分岐又は脂環式アルコールのアルキル(メタ)アクリレートであり、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びtert−ブチル(メタ)アクリレートである。
【0025】
その他のモノマーは任意のCブロックの構成成分とすることができ、Aブロック及びBブロックの定義に入らないエチレン性不飽和モノマーから自由に選択できる。しかしながら、これらのモノマーはAブロック及び/又はBブロックにも存在することができる。
【0026】
これらのエチレン性不飽和モノマーの例として、とりわけ、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのような炭素数2〜36の直鎖、分岐又は脂環式ジオールのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ビニロキシエトキシエチルメタクリレート、メトキシエトキシエチルメタクリレート、シクロへキシルオキシメチルメタクリレート、メトキシメトキシエチルメタクリレート、ベンジルオキシメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、アリルオキシメチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート及びポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレートのような炭素数5〜80のエーテルの、ポリエチレングリコールの、プロピレングリコールの又は混合ポリ(エチレン/プロピレン)グリコールの(メタ)アクリレート;数平均分子量が220〜1,200のカプロラクトン及び/又はバレロラクトンで修飾したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びメタクリロニトリル並びにアクリロニトリルを挙げることができる。ここで、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは好ましくは炭素数2〜8の直鎖、分岐又は脂環式ジオールから誘導される。
【0027】
本発明の他の目的は、加圧状態で混合安定化剤により硬化できる成形組成物用の本発明の不飽和ポリエステル樹脂混合物を提供することにあり、該安定化剤はその浸出のように所望しない効果の発生を防ぐために、該不飽和ポリエステル樹脂を硬化する間に重合体マトリックス中に導入されてもよい。
特に、この目的は、例えば上述したNMP又はRAFT技術により製造されるブロック共重合体(カ)において達成され、製造工程で使用される重合調節剤は該ブロック重合体鎖の端に残存する。従って、該樹脂が硬化する間に、該ブロック重合体の鎖を延長することが可能であり、該ブロック重合体は不飽和ポリエステル樹脂の重合体マトリックス中に導入される。これにより、引続き発生するブロック共重合体の浸出を防止する。
【0028】
NMP用の重合調節剤の例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル(TEMPO)及びN−tert−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ(2,2−ジメチル−プロピル)]ニトロキシルが挙げられる。RAFT用の重合調節剤の例としては、チオカルボン酸エステル又はキサントゲン酸エステルがある。他の例として、上記にリストした文献に開示されているし、当業者に知られている。
【0029】
一つの特定の具体例として、成分(ア)〜(エ)及びブロック重合体(カ)は相互に混合される。この混合に必要な要件は、貯蔵中に本質的に均質であること、かつ分離しないことである。さらに。成分(オ)及び増粘剤は次の時点までは通常加えることがないし、かつ該全混合物は通常均質化してから成型される。この場合に、圧縮工程中に該樹脂混合物は本質的に該成分の偏析が無い状態で重合する。
【0030】
研究論文:J.H.Auser、A.Kasper「不飽和ポリエステル樹脂”Unsaturated Polyester Resins”」,2003,Verlag Moderne Industrie、及びHamid G.Kia「シート成型組成物の科学と技術”Sheet Molding Compounds Science and Technology”」,1993,Hanser Publishers, Munichには不飽和ポリエステル樹脂混合物の加工が記載され、かつ不飽和ポリエステル樹脂の、収縮低減成分の、強化繊維の、及び不活性充填材又は添加剤の他の例、並びにそれらの使用が記載されている。
【実施例】
【0031】
具体例としての重合体の製造
比較例 1(ランダム共重合体)
窒素雰囲気下、精密なガラス製パッキン付き攪拌機及び還流コンデンサを装着した三口フラスコに入れた、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコール(BASF)14.5gを120℃に加熱する。120分以内に、スチレン12g、n−ブチルアクリレート22g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート15g及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gをこのフラスコに加える。さらに、1時間経過後、転化率は98%である。次に、Pluriol P 600を加え、該重合体含有量が52%になるように調節する。
【0032】
BAブロック共重合体
重合体 1
窒素雰囲気下、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコール(BASF)14.5g,スチレン12g、n−ブチルアクリレート22g、SG1(=N−tert−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ(2,2−ジメチル−プロピル)]ニトロキシル(製造はMacromolecules,2000,33,1141を参照)1g及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.35gを、精密なガラス製パッキン付き攪拌機及び還流コンデンサを装着した三口フラスコに入れ、120℃に加熱する。3時間経過後、転化率は90%である。次に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート15gを加えて、さらに5時間重合させて転化率を95%以上とする。次いで、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコールを加え、該重合体含有量が52%になるように調節する。
【0033】
重合体 2
窒素雰囲気下、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコール(BASF)14.5g、n−ブチルアクリレート35g、SG1の1g及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.35gを、精密なガラス製パッキン付き攪拌機及び還流コンデンサを装着した三口フラスコに入れ、120℃に加熱する。3時間経過後、転化率は90%である。次に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート15gを加えて、さらに5時間重合させて転化率を95%以上とする。さらに、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコールを加え、該重合体含有量が52%になるように調節する。
【0034】
BABブロック重合体
重合体 3
窒素雰囲気下、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコール(BASF)14.5g、スチレン6g、n−ブチルアクリレート11g、SG1の1g及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.35gを、精密なガラス製パッキン付き攪拌機及び還流コンデンサを装着した三口フラスコに入れ、120℃に加熱する。3時間経過後、転化率は95%である。次に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート15gを加えて、さらに100℃で4時間重合させて転化率を95%以上とする。さらに、スチレン6g及びn−ブチルアクリレート11gを加えて得られた混合物を120℃で転化率が95%を超えるまで重合する(約10時間)。Pluriol P 600 ポリプロピレングリコールを加え、該重合体含有量が52%になるように調節する。
【0035】
重合体 4
窒素雰囲気下、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコール(BASF)14.5g、n−ブチルアクリレート17g、SG1の1g及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.35gを、精密なガラス製パッキン付き攪拌機及び還流コンデンサを装着した三口フラスコに入れ、120℃に加熱する。3時間経過後、転化率は95%である。次に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート15gを加えて、さらに100℃で4時間重合させて転化率を95%以上とする。さらに、n−ブチルアクリレート17gを加えて得られた混合物を120℃で転化率が95%を超えるまで重合する(約10時間)。Pluriol P 600 ポリプロピレングリコールを加え、該重合体含有量が52%になるように調節する。
【0036】
重合体 5
窒素雰囲気下、Pluriol P 600 ポリプロピレングリコール(BASF)14.5g、スチレン6g、n−ブチルアクリレート11g、SG1の1g及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.35gを、精密なガラス製パッキン付き攪拌機及び還流コンデンサを装着した三口フラスコに入れ、120℃に加熱する。3時間経過後、転化率は95%である。次に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート15gを加えて、さらに100℃で4時間重合させて転化率を95%以上とする。さらに、n−ブチルアクリレート17gを加えて得られた混合物を120℃で転化率が95%を超えるまで重合する(約10時間)。Pluriol P 600 ポリプロピレングリコールを加え、該重合体含有量が52%になるように調節する。
【0037】
応用関連実施例
不飽和ポリエステル樹脂混合物Aの均質性(homogeneity)テスト
【0038】
【表1】

【0039】
UP樹脂: スチレン中の不飽和ポリエステル樹脂
LS添加剤: 低収縮添加剤(収縮低減成分)
Palapreg P 1702:スチレン中の不飽和ポリエステル樹脂
Palapreg H 814−01:スチレン中に溶媒和化したポリスチレン
【0040】
不飽和ポリエステル樹脂混合物の調製及び評価
成分1〜5を処方順に加えて手動で混合した後に均質化する。次いで、成分6を攪拌しながら加える。この混合物をバネ蓋付の100mlビード・エッジガラス容器に入れて室温で貯蔵する。24時間経過後、試料の均質性を目視で評価する。
【0041】
【表2】

【0042】
使用した重合体1〜5のいずれにも粘度低下は観察されない。顔料のコバルトブルーは該不飽和ポリエステル樹脂混合物の均質性を評価するのに好都合であるが、現実には通常使用されない。
【0043】
本発明の重合体のブロック型構造が混合物の安定化に優れる作用を示すことを評価するために、比較実施例1としてランダム共重合体を選択する。
第1表に示される応用関連実施例の結果によると、重合体1〜重合体5のブロック重合体を使用すると、比較例1のランダム構造重合体を使用する場合に比べて、不飽和ポリエステル樹脂混合物中の混合物安定化作用が格段に優れていることが判る。
【0044】
テスト処方SMCエレクトログレイ(Electrogrey)−RAL7032
第2表に記述したSMC処方は最初に全ての液状成分を、溶解機を用いて均質にし、ついで、混合しながら全ての固体成分を加えた。
【0045】
【表3】

【0046】
SMCプリプレグをSchmidt and Heinzmann社の実験室用SMC装置の処方を用い, 2枚のポリアミド製キャリアホイルの間に樹脂組成物を挟んで製造した。この時の条件は下記の通りであった。
ベルトスピード:5.5m/分、
ドクターギャップ(doctor gap):1.6mm、
単位面積当たりの重量:4,000g/m2、
使用したガラスのタイプ:Owens Corning社のOC R07 4800テックス、
ガラス含有量:97重量部であり、全処方の25重量%に相当する。

室温で5日間貯蔵した後、この高粘度SMCプレプリグを860片にカットし、該キャリアホイルを剥ぎ取り、次いで、外観を評価した。
【0047】
プレス後のSMCについての均質性テスト
該キャリアホイルを剥ぎ取ったSMCをプレスし、金型設計要素40%を使用してテ
スト用シートを作成した。ここでの使用温度は150〜155℃で、プレス時間は180秒、かつラム圧力1,200kNであった。次に。完成したプレスシートの均質性及び表面の品質を目視で評価した。表面の品質を評価するために、テスト用シートと比較用シートを窓に対して少し斜めに保持した。試験用表面が目的物を反射することができた時の透明性を評価した。
使用実施例で製造したSMCシートは所望の均質性示し、例えば、大理石模様の無い光沢ある表面がその一例である。圧縮工程中の該不飽和ポリエステル樹脂混合物の成分が偏析すると、大理石模様を有する光沢の無いSMCを製造するであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部圧力を加えることにより硬化し得るものであり、かつ少なくとも下記の成分を含有する不飽和ポリエステル樹脂混合物。
(ア)重量平均分子量が500〜5、000g/モルの不飽和ポリエステル樹脂、
(イ)エチレン性不飽和モノマー、
(ウ)収縮低減成分、
(エ)不活性充填剤、及び
(オ)強化繊維、並びに
(カ)該不飽和ポリエステル樹脂混合物の全重量に対して、0.01〜1重量%のブロック共重合体。(該ブロック共重合体は少なくとも一つのAブロック及び少なくとも一つのBブロックを含有し、かつAブロックは、重合中に重合体に導入されたアミン含有のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも一種含有し、Bブロックは、重合中に重合体に導入されたアルキル及び/又はフェニル含有のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも一種含有しており、重合中に重合体に導入されたアミン含有のエチレン性不飽和モノマーとは無関係である。)
【請求項2】
該ブロック共重合体(カ)がNMP(重合調節剤としてのニトロキシル化合物を用いた制御された重合)又はRAFT(可逆的付加分断鎖移行プロセス)の方法により製造されたものである請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物。
【請求項3】
該ブロック共重合体(カ)がその末端に、該不飽和ポリエステル樹脂(ア)及び/又は該エチレン性不飽和モノマー(イ)に対して反応性を示す重合調節剤を有する請求項1又は2に記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物。
【請求項4】
ブロックAが、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド及び酸と塩を形成し得るエチレン性不飽和チッソ含有複素環化合物からなる群から選ばれる一種以上のモノマーを含有し、かつ、ブロックBがアリール(メタ)アクリレート、スチレン、置換スチレン及び炭素数1〜22の直鎖、分岐又は脂環式アルコールのアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる一種以上のモノマーを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物。
【請求項5】
ブロックAのアミン含有エチレン性不飽和モノマーが該ブロックA中に、ブロックAの全重量を基準にして、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%の比率で存在する請求項1〜4のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物。
【請求項6】
ブロックBのアルキル及び/又はフェニル含有エチレン性不飽和モノマーが該ブロックB中に、ブロックBの全重量を基準にして、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは100重量%の比率で存在する請求項1〜5のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物。
【請求項7】
該ブロック共重合体(カ)がAB、BA、ABA又はBABブロック共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物。
【請求項8】
該ブロック共重合体が二ブロック共重合体である請求項7に記載の不飽和ポリエステル混合物。
【請求項9】
硬化工程を施されてなる請求項1〜8のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物。
【請求項10】
強化繊維を含有し、かつ外部圧力を加えることにより硬化し得る不飽和ポリエステル樹脂混合物の製造方法であって、成分(ア)〜(エ)及び成分(カ)を最初に混ぜた後に他の成分を該混合物に加える該不飽和ポリエステル樹脂混合物の製造方法。
【請求項11】
該ブロック共重合体(カ)がNMP(重合調節剤としてのニトロキシル化合物を用いた制御された重合)又はRAFT(可逆的付加分断鎖移行プロセス)の方法で製造され、及び/又は該不飽和ポリエステル樹脂混合物に対して粘度低下効果を与えない、請求項1〜9のいずれかに記載のブロック共重合体(カ)の又は請求項10に記載の製造方法におけるブロック共重合体(カ)の使用。
【請求項12】
該不飽和ポリエステル樹脂混合物が請求項1〜9のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂混合物であるか、又は該不飽和ポリエステル樹脂混合物が請求項11に従って得られたものである請求項11に記載の使用。
【請求項13】
該不飽和ポリエステル樹脂混合物を硬化して成型用組成物とする請求項11又は12に記載の使用。

【公開番号】特開2006−257420(P2006−257420A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−58738(P2006−58738)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】