説明

安定化された生菌製剤およびその製造方法。

【課題】生菌の保存安定性に優れた生菌製剤および該生菌製剤の製造方法を提供する。
【解決手段】菌体を、蒸留水で洗浄し、蒸留水に分散させた後、ショ糖が、トレハロース、グルタミン酸ナトリウム、ヒスチジン、リンゴからなる水溶液2mlを加え、菌体分散液を調製。該菌体分散液を凍結乾燥した後、凍結乾燥機の庫内温度を40℃に上昇させ、24時間熟成させることにより、生菌製剤を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れた生菌製剤および該生菌製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌や酵母等の微生物は古くより発酵食品などに深く関与してきた有用微生物である。近年、これらの微生物の中には整腸作用をはじめ、感染予防、免疫賦活、ガン予防、アレルギー改善等の生理作用を有することが明らかになり、乳酸菌、酵母等の微生物生菌や死菌、またはその培養物を健康食品や医薬品などの素材として利用するための研究開発が行われている。特に、微生物を生きた状態で腸に到達させることにより、上記生理作用が向上することも見出されており、より多くの生菌を安定的に手軽に摂取できる生菌製剤が求められるようになった。しかしながら、当該生菌製剤は保存中に生菌数が減少してしまうという実用上の課題がある。
【0003】
生菌製剤の保存安定性を向上させる方法として、一般的にシリカゲルや脱脂粉乳を添加する方法が用いられている。また、生菌製剤の製造時にフェニルアラニン、ヒスチジン、クエン酸、コハク酸、酒石酸およびこれらの塩ならびに炭酸アルカリからなる群より選ばれる化合物を添加する方法(特許文献1)、アルギニン、オルニチンもしくはセリン、またはそれらの塩を添加する方法(特許文献2)、凍結乾燥菌末にテアニンを添加する方法(特許文献3)等が挙げられる。しかしながら、これらの方法は生菌製剤の程味の調製を困難にし、また、生菌の保存安定性向上効果も満足しうるものではなく、より保存安定性に優れた生菌製剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−26508号公報
【特許文献2】特開2003−219862号公報
【特許文献3】特開2009−284820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生菌の保存安定性に優れた生菌製剤および該生菌製剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、微生物菌体を乾燥した後、さらに熟成を行うことにより、保存安定性に優れた生菌製剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、微生物菌体を乾燥後、さらに熟成を行うことにより得られた生菌製剤である。また、本発明は、微生物生菌製剤の製造方法であって、乾燥後の菌体を40℃以上に保持する工程を含む製造方法でもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、生菌の保存安定性に優れた生菌製剤および該生菌製剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明は、菌体を培養した後に乾燥し、さらに熟成を行うことにより、保存安定性に優れた生菌製剤を得ることができる。
【0010】
本発明に用いられる菌体は、通常使用される培地で培養でき、通常用いられる乾燥方法により、乾燥が可能な菌体であれば、特に限定はなく、細菌や酵母などの微生物が挙げられる。
【0011】
細菌としては、乳酸菌等の細菌が挙げられ、例えば、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等のペディオコッカス属に属する乳酸菌;ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・デルブリッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactbacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)等のラクトバチルス属に属する乳酸菌;エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)等のエンテロコッカス属に属する乳酸菌;ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)等のビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌等が挙げられる。
【0012】
その他の細菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherlchia coli)等のエシェリヒア属に属する細菌、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等のバチルス属に属する細菌等が挙げられる。また、酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属に属する酵母等が挙げられる。
【0013】
これらの微生物のなかでも、整腸作用などの生理活性を有しているため、工業的利用価値が高いことから乳酸菌が好ましい。乳酸菌のなかでもペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌、特に、強い中性脂肪低減作用ならびに抗アレルギー作用を有するペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici) R037株(NITE BP−900)が好ましく、また、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌、特に強い整腸作用ならびに免疫賦活作用を有するラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) kaneka−01株(NITE P−558)又は強い抗血糖作用を有するラクトバチルス・デルブリッキー(Lactobacillus delbrueckii) KLAB−4株(NITE BP−394)が好ましい。これらの微生物は、それぞれ上記の受託番号にて独立行政法人製品評価技術基盤機構(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
【0014】
培養方法としては、所望する菌体が培養可能であれば、培地成分、培養方法など特に限定はなく、通常行われる公知の培地成分および培養方法であれば液体培養でも固体培養でもよいが、菌体を培養し、回収する必要性により固体培養より液体培養が好ましい。以下では、液体培養の場合を例として説明する。
【0015】
培養液より、菌体を回収、洗浄後、蒸留水及び/又は、保護剤等を添加した溶液で菌体分散液を調製する。生菌製剤の保存安定性が向上することから、保護剤を添加した溶液を用いて菌体分散液を調整することが好ましい。
【0016】
前記保護剤としては、特に限定されないが、例えば、トレハロース、ウシ血清アルブミン、脱脂粉乳、グルタミン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ホエー、グルコース、アスパラギン酸、メチオニン、デンプン、デキストラン、ショ糖、乳糖等が挙げられる。
【0017】
また、生菌製剤の保存安定性が向上することから、菌体分散液のpHが酸性である場合には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム等のpH調整剤により、pH6〜8、望ましくはほぼ中性にpHを調整することが好ましい。なお、本発明の目的を妨げないものであれば、前記保護剤は他の物質を含有してもかまわない。
【0018】
前記菌体分散液を乾燥する方法としては、特に限定はなく、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥等公知の方法を単独または組み合わせて使用することができる。これら公知の方法を用いて、菌体乾燥物が得られる。乾燥時の菌体の死滅を極力抑える観点からは、通常は40℃以下で乾燥を行うことが好ましく、凍結乾燥が特に好ましい。ただし、高温にさらされる時間が短い場合や、予備的な乾燥等により水分含量が減じられた菌体を乾燥する場合等、乾燥方法や条件に応じて、40℃以上でも乾燥し得ることはいうまでもない。
【0019】
本発明の保存安定性に優れた生菌製剤は、例えば、上記菌体乾燥物を熟成することにより製造することができる。本発明の熟成とは、上記菌体乾燥物を40℃以上の温度条件下に一定時間保持することをいう。
【0020】
熟成温度の上限は70℃以下、好ましくは60℃以下である。熟成温度が70℃を超えた場合、菌体自体が損傷、死滅するため適していない。
【0021】
上記熟成に要する時間は、微生物の種類や熟成温度に応じて適宜設定することができ特に限定されないが、熟成温度が高くなるほど、所要時間は短くなる傾向にある。
【0022】
例えば乳酸菌の場合、熟成温度が40℃の場合、熟成時間の下限は6時間以上、好ましくは12時間以上、より好ましくは24時間以上で実施できる。熟成時間が6時間未満であると、熟成が進まず保存安定性に優れた生菌製剤が得難い。また、熟成時間の上限は90日以下、好ましくは60日以下、より好ましくは30日以下で実施できる。熟成時間が90日を越えてもそれ以上保存安定性に優れた生菌製剤が得られず、生産性の面からも好ましくない。
【0023】
熟成温度が50℃の場合、熟成時間の下限は3時間以上、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上で実施できる。熟成時間が3時間未満であると、熟成が進まず保存安定性に優れた生菌製剤が得難い。また、熟成時間の上限は60日以下、好ましくは30日以下、より好ましくは15日以下で実施できる。熟成時間が60日を越えてもそれ以上保存安定性に優れた生菌製剤は得られない。
【0024】
熟成温度が60℃の場合、熟成時間の下限は1時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上で実施できる。熟成時間が1時間未満であると、熟成が進まず保存安定性に優れた生菌製剤が得難い。また、熟成時間の上限は30日以下、好ましくは15日以下、より好ましくは7日以下で実施できる。熟成時間が30日を越えてもそれ以上保存安定性に優れた生菌製剤は得られない。
【0025】
熟成温度が70℃の場合、熟成時間の下限は0.3時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上で実施できる。熟成時間が0.3時間未満であると、熟成が進まず保存安定性に優れた生菌製剤が得難い。また、熟成時間の上限は15日以下、好ましくは7日以下、より好ましくは3日以下で実施できる。熟成時間が15日を越えると菌体自体が損傷を受け保存安定性に優れた生菌製剤を得られない場合がある。
【0026】
熟成時の圧力は、常圧でもよいし、陰圧状態でもよいし、加圧状態でもよい。言うまでもなく、乾燥と熟成を一連/一体の操作として行うことができる。例えば、凍結乾燥後、チャンバー内の圧力を引き続き維持してもよいし、装置内を常圧に戻して熟成させてもよい。この場合、乾燥を40℃以下で行い、乾燥終了後に温度を40℃以上としても良いし、乾燥を40℃以上で実施し、乾燥終了後(水分量が所望の値まで低下した後)も40℃以上の温度に維持し、引き続き熟成を行ってもよい。乾燥は40℃以下で実施し、その後40℃以上で熟成するのが好ましく、特には、40℃以下で凍結乾燥あるいは真空乾燥した菌体を、40℃以上で熟成することが好ましい。
【0027】
また、本発明における熟成は、菌体乾燥物をガラス製、プラスチック製及び/又は金属製の素材にて包装、梱包し、外部環境から遮断された環境下で行うこともできる。
【0028】
ガラス製の素材とは、例えば、軟質ガラス、硬質ガラス等を挙げることができる。
【0029】
プラスチック製の素材としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン等を挙げることができる。言うまでもなく、上記プラスチック製の素材を積層したフィルム、アルミラミネート等のプラスチック製の素材にアルミ等の金属を積層したフィルム、亜プラスチック製の素材に、アルミナ、シリカ等を蒸着させたフィルム(アルミナ蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルム)もプラスチック製の素材に含まれる。
【0030】
金属製の素材としては、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、銅、すず、チタン、クロムあるいはこれらの合金(ステンレス、真鍮等)を挙げることができる。
【0031】
上記した素材は、ボトル、袋、缶、ドラム、箱等に成型し、乾燥物を包装、梱包するのが好ましい。また、ポリエチレン等の比較的ガス流通性が高い素材を用いた場合には、2重以上の包装、梱包することが好ましく、このとき、アルミラミネートやアルミナ、シリカ等の蒸着フィルム、ガラス、金属等の比較的ガスバリア性、防湿性の高い素材を使用するのが特に好ましい。
【0032】
上記包装、梱包においては、乾燥剤や脱酸素剤を併用してもよく、特に乾燥剤を併用することが好ましい。乾燥剤としては、シリカゲル、塩化カルシウム、合成ゼオライト等を挙げることができる。
【0033】
本発明では、菌体乾燥物に賦形剤等を加えたものを熟成してもよい。ここでいう賦形剤とは、特に限定しないが、例えば、乳糖、デンプン、デキストリン、ショ糖等が挙げられる。
【0034】
本発明では、上記熟成方法により得られた菌体乾燥物および該菌体乾燥物に賦形剤、風味改良剤、香料、着色料などを更に添加した場合も本発明では生菌製剤とする。
【0035】
本発明によって得られた生菌製剤は、そのまま、または加工して食品、健康食品、栄養補助食品、栄養機能性食品、特定保健用食品、医薬品、医薬部外品、飼料、ペットフード等に使用できる。また、その加工形態としては、錠剤、散剤、チュアブル錠、丸剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤等が挙げられる。また、得られた生菌製剤を発酵乳や発酵豆乳などのスターターとして用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。
【0037】
(菌体分散液の調製)
菌体をトリプトンが1重量%、酵母エキスが0.5重量%、グルコースが0.5重量%、ラクトースが0.5重量%、Tween80が0.1重量%、L−システイン塩酸塩が0.02重量%を含有する滅菌済み液体培地1Lに植菌し、37℃、20時間静置培養を行った。培養後、培養液を5000rpm、10分、4℃で遠心分離して得られた菌体を、500mlの蒸留水で2回洗浄し、20mlの蒸留水に分散させた後、ショ糖が0.4重量%、トレハロースが0.2重量%、グルタミン酸ナトリウムが0.2重量%、ヒスチジンが0.2重量%、リンゴ酸が0.2重量%からなる水溶液2mlを加え、菌体分散液を調製した。
【0038】
(乾燥)
上記菌体分散液を−25℃で凍結しその後真空乾燥した。
【0039】
(保存時の生残率の測定方法)
上記菌体乾燥物もしくは上記菌体乾燥物に賦形剤を加えた菌体乾燥物および、菌体乾燥物を熟成することで得られた生菌製剤、および保存後の生菌製剤中の生菌数を乗法に従い測定し、生残率を次式より求めた。
保存時の生残率(%)=(保存後のサンプル1g中の生菌数/保存前のサンプル1g中の生菌数)×100
【0040】
(実施例1)
ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici) R037の菌体分散液を凍結乾燥した後、凍結乾燥機の庫内温度を40℃に上昇させ、24時間熟成させることにより、生菌製剤を得た。該生菌製剤の40℃、1ヶ月保存後の生残率を測定し表1に示した。
【0041】
(比較例1)
ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici) R037からなる菌体分散液を凍結乾燥し菌体乾燥物を得た。該菌体乾燥物の40℃、1ヶ月保存後の生残率を測定し表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示したように、比較例1の熟成をさせていない菌体乾燥物の40℃、1ヶ月保存後の生残率は、58%であるのに対して、凍結乾燥機の庫内温度を40℃に上昇させ、24時間熟成させた生菌製剤の40℃、1ヶ月保存後の生残率は、実施例1に示すとおり、83%と熟成により保存安定性が向上していた。
【0044】
(実施例2)
乳酸菌ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici) R037の凍結乾燥物10gに90gのデンプンを加え、菌体乾燥物を得た。該菌体乾燥物10gをチャック付きポリエチレン袋に分注したものを、シリカゲル1gを入れたアルミパウチに梱包し、ヒートシールにより密閉、40℃の温度下で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月熟成させた生菌製剤を得た。
【0045】
(比較例2)
乳酸菌ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici) R037の凍結乾燥物10gに90gのデンプンを加え熟成させていない菌体乾燥物を得た。
【0046】
(実施例3)
実施例2の乳酸菌をラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) kaneka−01に代えた以外は同様に処理し、熟成させた生菌製剤を得た。
【0047】
(比較例3)
比較例2の乳酸菌をラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) kaneka−01に代えた以外は同様に処理し、熟成させていない菌体乾燥物を得た。
【0048】
(実施例4)
実施例2の乳酸菌をラクトバチルス・デルブリッキー(Lactobacillus delbrueckii) KLAB−4に代えた以外は同様に処理し、熟成させた生菌製剤を得た。
【0049】
(比較例4)
比較例2の乳酸菌をラクトバチルス・デルブリッキー(Lactobacillus delbrueckii) KLAB−4に代えた以外は同様に処理し、熟成させていない菌体乾燥物を得た。
【0050】

実施例2から4の生菌製剤および比較例2から4の菌体乾燥物の40℃、1ヶ月保存後の生残率を測定し表2に示した。
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示したように、40℃の温度下で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月熟成させた生菌製剤の40℃、1ヶ月保存後の生残率は、いずれの実施例においても、熟成していない各比較例と比べて保存安定性が向上することが明らかとなった。
【0053】
(実施例5)
乳酸菌ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) kaneka−01の凍結乾燥物10gに90gのデンプンを加え、菌体乾燥物を得た。該菌体乾燥物10gをチャック付きポリエチレン袋に分注したものを、シリカゲル1gを入れたアルミパウチに梱包し、ヒートシールにより密閉、50℃の温度下で0.5日、1日、7日、14日、30日、60日、熟成させ生菌製剤を得た。該生菌製剤の40℃、1ヶ月保存後の生残率を測定し表3に示した。
【0054】
(比較例5)
乳酸菌ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis) kaneka−01の凍結乾燥物10gに90gのデンプンを加え熟成していない菌体乾燥物を得た。該菌体乾燥物の40℃、1ヶ月保存後の生残率を測定し表3に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示したように、50℃の温度下で熟成させた生菌製剤の40℃、1ヶ月保存後の生残率は、いずれの熟成時間において熟成させていない比較例5の生残率よりも高く、熟成により保存安定性が向上していることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物菌体を乾燥後、さらに熟成を行うことにより得られた生菌製剤。
【請求項2】
前記微生物が細菌または酵母である請求項1記載の生菌製剤。
【請求項3】
前記細菌が乳酸菌である請求項2記載の生菌製剤。
【請求項4】
前記乳酸菌が、ペディオコッカス(Pediococcus)属またはラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌である請求項3記載の生菌製剤。
【請求項5】
前記乳酸菌が、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcusacidilactici) R037(NITE BP−900)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis kaneka−01(NITE P−558)、及びラクトバチルス・デルブリッキー(Lactobacillus delbrueckii) KLAB−4(NITE BP−394)からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4記載の生菌製剤。
【請求項6】
微生物生菌製剤の製造方法であって、乾燥後の菌体を40℃以上に保持する工程を含む製造方法。
【請求項7】
前記微生物が細菌または酵母である請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記細菌が乳酸菌である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記乳酸菌が、ペディオコッカス(Pediococcus)属またはラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記乳酸菌が、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici) R037(NITE BP−900)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis kaneka−01(NITE P−558)、及びラクトバチルス・デルブリッキー(Lactobacillus delbrueckii) KLAB−4(NITE BP−394)からなる群より選択される少なくとも1種である請求項9記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−55288(P2012−55288A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204493(P2010−204493)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】