説明

安定化組成物

医薬品、化粧品、毛髪処理用品等の分野のアルデヒド様物質供給可能物質が存在する組成物において、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質と、アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有する、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質の、アルデヒドに対する安定性を改善した組成物ならびに該低分子活性物質の安定化方法を提供する。該安定化剤としては、アミノ糖もしくはその重合体、アミノ糖アルコールもしくはその重合体、アミノ酸もしくはその重合体、タンパク質もしくはその加水分解物、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、またはその塩が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アルデヒド様物質供給可能物質が存在する組成物であって、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質と、アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を配合する組成物(以下、単に本発明の組成物と記載することもある)ならびに該低分子活性物質の安定化方法に関する。
【背景技術】
医薬品、化粧品、毛髪処理用品等の組成物においては、該組成物に含有される低分子活性物質の有用な活性を、安定に保持することが重要である。組成物に配合される他の添加物質を選択する際には、低分子活性物質との反応性を検討する必要がある。例えば、特表平10−502355号公報には、N−アセチル−L−システインを含んだ局所組成物において、ホルムアルデヒドとの反応によりN−アセチル−L−システインの活性が減少することを課題として、これを解決するためのホルムアルデヒドを実質的に含まない組成物が記載されている。
第一級アミンまたは第二級アミンを構造中に有する化合物は、ホルムアルデヒドまたはアルデヒド基をもつ化合物と可逆的な反応中間体であるイミンまたはエナミンを形成しやすいことが知られており[パイン(Stanley H.Pine)著、ORGANIC CHEMISTRY,5th edition,pp.248−251(1987),McGRAW−HILL BOOK COMPANY,New York参照]、反応中間体の構造によっては、さらに不可逆的な反応が進行し類縁物質が形成されると考えられる。
一方、固形医薬組成物またはこれを形成する種々の添加物質は、わずかながら、ホルムアルデヒドまたはその他のアルデヒド様物質を含有することが知られている。添加物質や固形医薬組成物を高温多湿な条件下で保存した場合に、ホルムアルデヒドまたはその他のアルデヒド様物質を生成することも知られている[ファーマシューティカル・リサーチ(Pharmaceutical Research),1998,第15巻、第7号、p.1026−1030、およびジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(Journal of Pharmaceutical Sciences),1994,第83巻、第7号、p.915−921参照]。
従って、このような医薬組成物においてアルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を配合する場合には、その活性物質の安定化が必要である。
特開平3−41033号公報には、モチリン類と医薬組成物上許容される糖類、アミノ酸類、無機塩類およびタンパク質から選ばれる少なくとも一種の安定化剤とを含むモチリン類含有凍結乾燥医薬組成物が記載されている。しかしながら、この公報に記載されているのは、高分子物質の凍結乾燥医薬組成物における安定化に関してであり、アルデヒドの影響については一切記載されていない。
国際公開第02/064133号パンフレットには、アルカリ化剤、アミノ酸およびゼラチンから選ばれる1種または2種以上および[3−[(2R)−[[(2R)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]アミノ]プロピル]−1H−インドール−7−イルオキシ]酢酸またはその低級アルキルエステルを含有してなる製剤が記載されており、アルカリ化剤でpHを調節することによる水溶液の安定性試験のデータが示されている。しかしながら、この公報には、アルデヒドとの関係については一切記載されていない。
【発明の開示】
本発明の課題は、医薬品、化粧品、毛髪処理用品等の分野のアルデヒド様物質供給可能物質が存在する組成物において、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質の、アルデヒドに対する安定性を改善した組成物を提供することである。
本発明者らの研究によれば、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質含有組成物において、その組成物に配合されるアルデヒド様物質供給可能物質、例えば、アルデヒド基含有賦形剤等の物質によって、その組成物の調製工程中または貯蔵中に活性物質が変性し、その活性が低下する欠点を有することを見出し、そのような活性低下を防ぐ方法について種々研究を重ねた結果、アルデヒドを吸収し得るアミン構造を有する化合物を安定化剤として配合することによりかかる活性物質の活性低下が有効に抑えられることを知り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記の種々の態様の組成物ならびに安定化方法を提供するものである。
[1]アルデヒド様物質供給可能物質が存在する組成物であって、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質と、アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有する組成物。
[2]安定化剤が、アミノ糖もしくはその重合体、アミノ糖アルコールもしくはその重合体、アミノ酸もしくはその重合体、タンパク質もしくはその加水分解物、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、またはその塩である上記[1]記載の組成物。
[3]安定化剤がキチン、キトサン、キトオリゴ糖、メグルミン、アラニン、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、ゼラチンもしくはその加水分解物、コラーゲンもしくはその加水分解物、アルブミンもしくはその加水分解物、カゼインもしくはその加水分解物、プロタミンもしくはその加水分解物、ジエチルアミン、ヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、またはその塩である上記[2]記載の組成物。
[4]安定化剤がメグルミン、またはその塩である上記[3]記載の組成物。
[5]いずれも固体の粉末である、低分子活性物質と安定化剤を含有する医薬組成物である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]固形または半固形の医薬組成物である上記[5]記載の組成物。
[7]固形または半固形の医薬組成物が、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、粉末注射剤、粉末吸入剤、軟膏剤または貼付剤である上記[6]記載の組成物。
[8]低分子活性物質と安定化剤を均一に混合して製造される上記[1]記載の組成物。
[9]低分子活性物質および安定化剤のいずれか一方を、アルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、他方と均一に混合することにより製造される上記[1]記載の組成物。
[10]安定化剤をアルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、低分子活性物質と均一に混合することにより、アルデヒド様物質供給可能物質と低分子活性物質の接触を防止または減少させるようにして製造される上記[9]記載の組成物。
[11]アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を含有する集合体とアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有する集合体とからなり、これら集合体の少なくとも一方にアルデヒド様物質供給可能物質を含有することを特徴とする医薬組成物。
[12]低分子活性物質を含有する集合体および安定化剤を含有する集合体がいずれも顆粒である、上記[11]記載の組成物。
[13]低分子活性物質を含有する集合体および安定化剤を含有する集合体がいずれも細粒である、上記[11]記載の組成物。
[14]低分子活性物質を含有する顆粒および/または細粒と安定化剤を含有する顆粒および/または細粒とをカプセルに充填してなるカプセル剤である上記[11]記載の組成物。
[15]低分子活性物質を含有する顆粒および/または細粒と安定化剤を含有する顆粒および/または細粒とを錠剤化してなる錠剤である上記[11]記載の組成物。
[16]アルデヒド様物質供給物質が存在する組成物において、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を配合するに際して、アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を配合することを特徴とする、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を安定化する方法。
[17]アルデヒド様物質供給物質、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質およびアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤とを均一に混合する上記[16]記載の安定化方法。
[18]アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質またはアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤のいずれか一方をアルデヒド様物質供給物質と予め造粒したのちに、他方と均一に混合する上記[16]記載の安定化方法。
[19]アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤とアルデヒド様物質供給物質を予め造粒したのちに、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を均一に混合する上記[18]記載の安定化方法。
[20]アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を含有する集合体とアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有する集合体とを別々に調製し、その際に、アルデヒド様物質供給物質を該集合体のいずれか一方または双方に含有させ、ついで両集合体を合わせて混合する、上記[16]記載の安定化方法。
【図面の簡単な説明】
第1図はアルデヒド発生の確認用共栓付きガラス試験管の模式図である。
第2図は低分子活性物質とアルデヒドとの反応確認用共栓付きガラス試験管の模式図である。
第3図は医薬組成物における低分子活性物質とアルデヒドとの反応確認用共栓付きガラス試験管の模式図である。
第4図は安定化剤によるアルデヒドの吸収効果確認用共栓付きガラス試験管の模式図である。
【符号の説明】
1 共栓付きガラス試験管
2 精製水
3 支持棒
4 固形製剤組成物
5 ホルムアルデヒド水溶液
6 化合物A粉末
7 化合物Aを含有する錠剤
8 メグルミン
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の組成物は、アルデヒド様物質供給可能物質とアルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を含有する組成物であって、これにアルデヒドを吸収し得るアミン構造を有する安定化剤を配合することにより、該活性物質のアルデヒド様物質供給可能物質による影響を抑え、その活性低下を防ぐことができる組成物である。
本発明の組成物は医薬品、化粧品、毛髪処理用品等のいずれの組成物であってもよい。
本発明において、「アルデヒド様物質供給可能物質」は、後述の「低分子活性物質の安定性を損なうアルデヒド」を供給することが可能な物質であれば、それ自体がアルデヒド構造を有している物質であっても、組成物の調製中または貯蔵中にアルデヒド構造を有する化合物を生成または発生することが可能である物質であってもよい。ここで、「アルデヒド様物質供給可能物質」は、それ自体がアルデヒド構造を有する化合物を生成または発生することが可能である物質であってもよいし、あるいは前記組成物中の他成分または環境因子(例、水分、酸素、二酸化炭素)との相互作用の結果、アルデヒド構造を有する化合物を生成または発生することが可能である物質であってもよい。「アルデヒド様物質供給可能物質」の具体例としては、例えば、後述するような、アルデヒド構造を有する化合物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド)、それ自体が構造中にアルデヒド構造を有する糖質(グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース等のアルドース)、組成物中で加水分解により構造中にアルデヒド基を有する糖質となる添加物質(例えば、乳糖、ショ糖、トレハロース等のオリゴ糖、澱粉、セルロース等の多糖類)、酸化反応により構造中にアルデヒド基を有する糖質となる添加物質(例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール)、さらに、メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルキルアルコール、ポリエチレンアルコールまたはその脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールまたはその脂肪酸エステル等が挙げられる。
本発明における「アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質」(以下、単に低分子活性物質と記載することもある)は、本発明の組成物中で何らかの有用な効果、例えば薬理活性を有する低分子物質であって、アルデヒドと反応することにより類縁物質を生成する物質であれば、いずれの化合物でもよい。低分子活性物質がアルデヒドと反応することにより類縁物質を生成する物質であるかどうかは、例えば、後述の実験例2の方法によって確認することができる。このような低分子活性物質としては、具体的には、第一級アミン構造または第二級アミン構造を有する化合物が挙げられる。例えば、ヒドラジン構造、トリプタミン構造を有する化合物も含まれる。医薬品組成物の場合の、低分子活性物質の具体例としては、ドパミン、メチルドパ、ノルエピネフリン、バクロフェン、ヒドララジン、エピネフリン、イソプロテレノール、ナドロール、ツロブテロール、エフェドリン、フェニレフリン、エチレフリン、プロプラノロール、[3−[(2R)−[[(2R)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]アミノ]プロピル]−1H−インドール−7−イルオキシ]酢酸、そのエステルまたはその塩が挙げられる。
本発明において「低分子活性物質の安定性を損なうアルデヒド」は、アルデヒド構造を有する化合物を意味し、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒドが挙げられる。それ自体が構造中にアルデヒド基を有する糖質、すなわち、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース等のアルドースも含まれる。これらのアルデヒドの組成物中での供給は、上述のアルデヒド構造を有する化合物自体が組成物に存在する場合のほか、組成物中でアルデヒド構造を有する化合物を生成または発生する物質が組成物中に存在する場合のいずれであってもよい。すなわち、「低分子活性物質の安定性を損なうアルデヒド」は、組成物中の他成分または環境因子(例、水分、酸素、二酸化炭素)との相互作用の結果、生成または発生したものであってもよい。組成物中でアルデヒド構造を有する化合物を生成または発生する添加物質としては、加水分解により構造中にアルデヒド基を有する糖質となる、乳糖、ショ糖、トレハロース等のオリゴ糖、澱粉、セルロース等の多糖類が挙げられる。また、酸化反応により構造中にアルデヒド基を有する糖質となる、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールも含まれる。さらに、メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルキルアルコール、ポリエチレンアルコールまたはその脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールまたはその脂肪酸エステルも組成物中でアルデヒド基を有する化合物を生成または発生する添加物質である。
本発明で用いられる「アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤」(以下、単に安定化剤と記載することもある)は、(1)アミン構造を有していること、(2)アルデヒドを吸収し得る、ことの2つの特徴を同時に有する安定化剤を意味する。安定化剤がアルデヒドを吸収するかどうかは、例えば、後述の実験例4の方法によって確認することができる。また、安定化剤としては、各組成物の分野において許容される安全性を有するものが用いられる。具体的には、アミノ糖もしくはその重合体、アミノ糖アルコールもしくはその重合体、アミノ酸もしくはその重合体、タンパク質もしくはその加水分解物、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、またはその塩が挙げられる。これらの安定化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
「アミノ糖」としては、例えば、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、グルコサミンが挙げられる。アミノ糖の塩、アミノ糖の重合体またはその塩も用いることができる。「アミノ糖の重合体」としては、例えば、キチン、キトサン、キトオリゴ糖が挙げられる。
「アミノ糖アルコール」はアミノ基を有する糖アルコールを意味し、例えば、メグルミンが挙げられる。アミノ糖アルコールの塩、アミノ糖アルコールの重合体またはその塩も用いることができる。
「アミノ酸」としては、例えば、塩基性アミノ酸、さらに具体的には、アラニン、アルギニン、リジン、ヒドロキシチリジン、オルニチンが挙げられる。また、「アミノ酸」としては、グルタミン、アスパラギン、シトルリンなども挙げられる。アミノ酸の塩、アミノ酸の重合体またはその塩も用いることができる。「アミノ酸の重合体」としては、例えば、ポリリジンが挙げられる。
「タンパク質」としては、例えば、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、プロタミンが挙げられる。タンパク質の塩も用いることができる。また、タンパク質の加水分解物も用いることができる。
「アルキルアミン」としては炭素数1〜6個を有する直鎖または分枝鎖アルキルアミンが挙げられ、例えば、ジエチルアミン、ヘキシルアミン、またはその塩が挙げられる。「ヒドロキシアルキルアミン」としては上記アルキルアミンに1〜3個のヒドロキシ基が置換した基が挙げられ、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたはその塩が挙げられる。
安定化剤としては、アミノ基を官能基として有する陰イオン交換樹脂(例、コレスチラミン(商品名:アンバーライトIRP43)、DEAE−セルロース、DEAE−アガロース、メグルミン−セルロース)なども用いられる。
本発明で用いられる好ましい安定化剤としては、メグルミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、L−アルギニン、ゼラチン、またはその塩が挙げられる。
上記の低分子活性物質および安定化剤において、「塩」とは、酸付加塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または有機塩基との塩を意味する。具体的には、酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩およびシュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルコン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等の無機アルカリ塩が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられ、また、有機塩基との塩としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミンとの塩が挙げられる。
本発明の組成物において用いる安定化剤は、組成物中に存在するアルデヒド様物質供給可能物質の重量とその反応性、組成物中で供給されるアルデヒド様物質の量、低分子活性物質の重量とその分子量とアルデヒドとの反応性、安定化剤のアルデヒドとの反応性等を考慮して選択するが、低分子活性物質のアルデヒドとの反応性を基準として、それよりも反応性の高いものを安定化剤として選択することが好ましい。
本発明の組成物において用いる安定化剤の添加量は、組成物中に存在するアルデヒド様物質供給可能物質の重量、組成物中で供給されるアルデヒドの量、アルデヒドと低分子活性物質の反応性、低分子活性物質の重量とその分子量、組成物の全重量、その他の特性を考慮して、適宜選択する。
本発明の一つの態様においては、本発明の組成物は、低分子活性物質と安定化剤とをアルデヒド様物質供給可能物質と共に均一に混合して製造される。すなわち、アルデヒド様物質供給可能物質に低分子活性物質および安定化剤を同時にまたは逐次添加し、所望により他の添加剤を加えて、常法により混合または混練して均一組成物とする。
本発明の他の態様においては、本発明の組成物は、低分子活性物質または安定化剤のいずれか一方を、アルデヒド様物質供給可能物質と共にに予め造粒したのちに、他方と均一に混合することにより製造することができる。好ましくは、安定化剤をアルデヒド様物質供給可能物質と共にに予め造粒した後に、低分子活性物質と均一に混合する。この方法ではアルデヒド様物質供給可能物質と低分子活性物質との接触が防止または減少されるため、低分子活性物質がより安定保持された組成物が得られる。
本発明のさらに他の態様においては、本発明の組成物は、低分子活性物質を含有する集合体と安定化剤を含有する集合体とを別々に調製し、その際、アルデヒド様物質供給可能物質は両集合体のいずれか一方または双方に含有させ、ついで両集合体を合わせて混合または混練して製造される。
本明細書中、「集合体」とは、低分子活性物質または安定化剤を含有し、所望によりアルデヒド様物質供給可能物質および/または他の添加剤を含んでおり、それら集合体を混合して組成物としたのちにも、それぞれ低分子活性物質または安定化剤が比較的高い濃度で含有したままの領域を構成することを意味する。
より具体的には、「集合体」とは、低分子活性物質または安定化剤を、所望によりアルデヒド様物質供給可能物質および/または他の添加剤と共に、混合または混練して得られる顆粒または細粒を意味する。ここで、顆粒および細粒は造粒物(造粒法は乾式または湿式造粒法のいずれであってもよい)である限り特に限定されないが、例えば本発明の医薬組成物に係る顆粒および細粒は、日本薬局方第十四改正に規定された粒度を有することが好ましい。すなわち、顆粒とは、「製剤の粒度試験を行うとき、10号(1700μm)ふるいを全量通過し、12号(1400μm)ふるいに残留するものは全量の5%以下であり、また、42号(355μm)ふるいを通過するものが全量の15%以下である製剤」を意味する。一方、細粒とは、「製剤の粒度試験を行うとき、18号(850μm)ふるいを全量通過し、30号(500μm)ふるいに残留するものは全量の5%以下であり、また、200号(75μm)ふるいを通過するものが全量の10%以下である製剤」を意味する。
顆粒または細粒の粒子径は、平均粒子径として、例えば1μm〜5mm、好ましくは10μm〜1mm、さらに好ましくは20μm〜500μmである。
前記「集合体」は、顆粒または細粒そのものであってもよいし、医薬組成物を製造する際の製剤化工程において、顆粒または細粒が物理的に破壊されたものであってもよい。
すなわち、「集合体」は、例えばカプセル剤等に含まれる、元の形状を保持した顆粒または細粒であってもよいし、錠剤化等の工程において物理的に破壊されて元の形状は保持し得ないが、低分子活性物質または安定化剤をそれぞれ高い濃度で含有する領域であってもよい。さらに、「集合体」は、有核顆粒を構成する核や、有核顆粒に付着(部分的および全体的な被覆を含む)される領域であってもよい。
本発明の組成物は、医薬品、化粧品、毛髪処理用品等種々の用途に用いられるものが含まれるが、最も重要な組成物は医薬組成物である。
以下に医薬組成物についてさらに具体的に説明する。
本発明の医薬組成物は、いずれも固体の粉末である低分子活性物質と安定化剤を含有する組成物であって、好ましくは固形または半固形の医薬組成物である。具体的には、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、粉末注射剤、粉末吸入剤、軟膏剤または貼付剤が挙げられる。上記のカプセル剤には、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、軟膏剤を充填した硬カプセル剤または軟カプセル剤が含まれる。顆粒剤および細粒剤とは、例えば日本薬局方第十四改正に規定された粒度を有する顆粒および細粒を意味する
また低分子活性物質を含有する集合体と安定化剤を含有する集合体からなり、これら集合体の少なくとも一方にアルデヒド様物質供給可能物質を配合した医薬組成物は固形医薬組成物であることが好ましく、具体的には顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル済が挙げられ、とくに錠剤、カプセル剤が好ましい。ここで、錠剤としては、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、舌下錠なども含まれる。また、医薬組成物は、用時溶解型製剤であってもよい。
本発明の医薬組成物の調製に使用する低分子活性物質および安定化剤は、固体(結晶、非結晶)の粉末であり、そのまま用いるか、必要に応じて、適当な粉砕装置、例えば流体エネルギーミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル等を用いて粉砕し、平均粒子径が200μm以下となるように粉砕して用いてもよい。好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下に微粒子化して用いる。また、合成の最終過程で結晶化条件を適当に調節するか、粉砕工程を経ずに超臨界流体技術などを用いて適当に粒子径を調節して用いてもよい。
本発明の医薬組成物において用いる安定化剤は、低分子活性物質のアルデヒドとの反応性を基準として、それよりも反応性の高いものを選択することが好ましい。
本発明の医薬組成物において、安定化剤の添加量は、アルデヒドと低分子活性物質の反応性、低分子活性物質の分子量、その他の特性によって異なるが、通常、医薬組成物中の低分子活性物質1重量部に対して0.001重量部から1000重量部の比率で添加する。好ましくは、低分子活性物質1重量部に対し0.01重量部から100重量部を添加する。より好ましくは低分子活性物質1重量部に対し0.1重量部から50重量部を添加する。最も好ましくは低分子活性物質1重量部に対し0.2重量部から20重量部を添加する。
また、低分子活性物質を含有する集合体と安定化剤を含有する集合体とからなる医薬組成物においては、該低分子活性物質含有集合体と安定化剤含有集合体の配合割合は、各低分子活性物質の重量および安定化剤の重量に換算して0.01:100〜100:0.01(重量比、以下同じ)、好ましくは、0.1:50〜50:0.1、さらに好ましくは0.1:10〜10:0.1の範囲から選ばれる。
さらに、医薬組成物中でアルデヒド様物質供給可能物質から発生するアルデヒドが、低分子活性物質の化学的安定性に影響することを考慮すると、安定化剤の添加量は、医薬組成物中のアルデヒド様物質供給可能物質の総重量に対して決定されるべきである。例えば、安定化剤は、アルデヒド様物質供給可能物質全重量に対して、0.0001重量部から0.5重量部、好ましくは0.001重量部から0.1重量部、さらに好ましくは0.005重量部から0.05重量部の比率で添加される。
また、医薬組成物中に存在するアルデヒド様物質供給可能物質の性質によって異なるが、安定化剤は、通常、医薬組成物全重量に対して0.0001重量部から0.5重量部の比率で添加する。好ましくは、医薬組成物全重量に対して0.001重量部から0.1重量部の比率で添加する。さらに好ましくは、医薬組成物全重量に対して0.005重量部から0.05重量部の比率で添加する。
このように、本発明の医薬組成物における安定化剤の配合量は、医薬組成物中の低分子活性物質重量を基準とするか、医薬組成物中のアルデヒド様物質供給可能物質重量を基準とするか、または医薬組成物の全重量を基準として決められるが、いずれの場合も医薬組成物中の低分子活性物質を最も安定化できる量を選択して使用することが望ましい。
本発明の医薬組成物の製造は、例えば、以下のようにして行われる。本発明の一つの態様においては、低分子活性物質と安定化剤をアルデヒド様物質供給可能物質と共に均一に混合して製造することができる。例えば、混合機の中でアルデヒド様物質供給可能物質を含む医薬担体に所定量の低分子活性物質および安定化剤を同時にまたは逐次添加し、所望により他の添加剤を加えて均一に混合することにより散剤が得られる。細粒剤、顆粒剤を得るには、常法により、さらに湿潤剤、結合剤、崩壊剤等を添加し、練合、造粒、乾燥、整粒、篩別等の工程を経て製品化される。
本発明の他の態様においては、低分子活性物質および安定化剤のいずれか一方を、アルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、他方と均一に混合することにより製造することができる。より好ましくは、安定化剤をアルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、低分子活性物質と均一に混合することにより、アルデヒド様物質供給可能物質と低分子活性物質の接触を防止または減少させるようにして製造することができる。以下、低分子活性物質をアルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、安定化剤と均一に混合することにより製造する方法を、安定化剤後添加法と記載し、安定化剤をアルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、低分子活性物質と均一に混合することにより製造する方法を、低分子活性物質後添加法と記載することがある。
また、本発明の医薬組成物が、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤である場合は、安定化剤または低分子活性物質のいずれか一方を、アルデヒド様物質供給可能物質と共に予め顆粒(芯粒子)または錠剤(錠芯)を製造した後に、他方を糖衣、フィルムコートまたはカプセル等の剤皮の構成成分として添加して製造することができる。
本発明のさらに他の態様において、低分子活性物質を含有する集合体と安定化剤を含有する集合体を別々に調製し、その際、アルデヒド様物質供給可能物質を両集合体のいずれか一方または双方に含有させ、ついで両集合体を用いて製剤化することにより、医薬組成物を製造することができる。
例えば、低分子活性物質と安定化剤を予め別々に顆粒とし、その際、アルデヒド様物質供給可能物質を両顆粒のいずれか一方または双方に含有させ、ついで両顆粒を混合または混練することにより、医薬組成物を製造することができる。ここで、低分子活性物質または安定化剤を含有する顆粒は、例えばノンパレル(商品名;白糖75%(W/W)およびコーンスターチ25%(W/W)を含む)等の実質的に球形の核に、それぞれ低分子活性物質または安定化剤を付着(部分的および全体的な被覆を含む)させることにより得られる有核顆粒であってもよい。以下、このように低分子活性物質と安定化剤を予め別々に顆粒または細粒とした後に医薬組成物を製造する方法を、二群造粒法と記載することがある。
なお、アルデヒド様物質供給可能物質は、低分子活性物質を含有する集合体(好ましくは顆粒)または安定化剤を含有する集合体(好ましくは顆粒)の双方か、あるいは安定化剤を含有する顆粒のみに含有させることが好ましい。
このようにして製造される低分子活性物質含有顆粒と安定化剤含有顆粒をそのままカプセルに充填してカプセル剤としてもよく、さらにこれらの顆粒の混合物を常法により錠剤化して錠剤とすることもできる。なお、これら低分子活性物質含有顆粒と安定化剤含有顆粒は、製剤内に均一に分散していてもよいし、例えば多層錠、有核錠のような製剤内の各部分に別々に存在してもよい。
また、例えばノンパレル(商品名;白糖75%(W/W)およびコーンスターチ25%(W/W)を含む)等の実質的に球形の核に、低分子活性物質または安定化剤を、それぞれ必要に応じてアルデヒド様物質供給可能物質と共に、順次、付着(部分的および全体的な被覆を含む)あるいは積層させることによっても、医薬組成物を製造することができる。さらに、低分子活性物質または安定化剤のいずれかを核とし、他方を必要に応じてアルデヒド様物質供給可能物質と共に付着(部分的および全体的な被覆を含む)あるいは積層させることによっても、医薬組成物を製造することができる。
このようにして製造される低分子活性物質および安定化剤含有有核顆粒をそのままカプセルに充填してカプセル剤としてもよく、さらに該有核顆粒を常法により錠剤化して錠剤とすることもできる。
なお、低分子活性物質と安定化剤との配合性が好ましくない場合には、前記した各種製造法のなかでも、前記二群造粒法を採用することによって、低分子活性物質が最も安定化された医薬組成物を得ることができる。すなわち、二群造粒法により得られる医薬組成物においては、他の各種製造法により得られる医薬組成物と比べて、低分子活性物質の活性低下あるいはその類縁物質の生成が抑制される。
こうして製造された本発明の医薬組成物は、ヒートシール包装、PTP包装、瓶充填等のいずれの方法で保存しても、良好な安定性が得られる。ヒートシール包装、PTP包装の場合は、アルミピロー等の高防湿の二次包装を施すことにより、瓶充填の場合は、高密度ポリエチレン瓶、ガラス瓶等に充填することにより、さらに良好な安定性が得られる。さらに、高防湿の二次包装や瓶内にシリカゲルを封入することにより、最も良好な安定性が得られる。
前記した包装または瓶には、乾燥剤、脱酸素剤、炭酸ガス吸収剤、水分調整剤等から選ばれる1種以上を、必要に応じキャニスターに入れた後に同封してもよい。
例えば、乾燥剤としては、シリカゲル、生石灰、塩化カルシウム加工品、シリカアルミナゲル、合成ゼオライト、珪藻土等を;脱酸素剤としては、鉄粉等の金属粉(酸化触媒として金属ハロゲン化物を含む)、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜二チオン酸塩、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ピロガロール、没食子酸、ロンガリット、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸塩、ソルボース、グルコース、リグニン等を;炭酸ガス吸収剤としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ソーダライム、バラライム、ケイ酸カルシウム水和物等を;湿度調整剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、無機塩、B型シリカゲル、紙、セルロース、木炭、無機塩の飽和水溶液を含浸させたストリップ等を使用することができる。これらは、医薬品の包装設計において通常使用される量が用いられる。
以下に、本発明の医薬組成物について、各剤型ごとに、さらに詳細に説明する。なお、便宜上、本発明の組成物のうち、低分子活性物質および安定化剤を均一に混合して製剤化する態様(一方を予め造粒したのち、他方と均一混合して製剤化する態様も含む)と、低分子活性物質含有集合体と安定化剤含有集合体を別々に調製したのち、両集合体を用いて製剤化する態様に分けて説明する。
(I)低分子活性物質と安定化剤を均一混合して製剤化する場合
(I)−1.散剤:
本発明の医薬組成物が散剤である場合には、オッシレーター、ピンミル、ハンマーミル等であらかじめ凝集物を解砕した低分子活性物質および安定化剤と、物理的および化学的な安定性上許容される賦形剤(乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、ショ糖、エリスリトール、デンプン、結晶セルロース等)とを適当な比率で、V型混合機、ダブルコーン型混合機、リボン型混合機等を用いて混合し、必要に応じて、静電気防止または流動性を改善する目的または粉末の凝集・固結を防止する目的でタルク、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸またはその塩類、ショ糖脂肪酸エステル類等の滑沢剤をさらに添加し、均一な紛体とする。さらに必要に応じて、低分子活性物質含有量の均一性を確保するために、低分子活性物質と賦形剤の一部、必要に応じてさらに滑沢剤の一部を加えオッシレーター、ピンミル、ハンマーミル等を用いてあらかじめ倍散を調製し、その後に残りの添加物質と混合することにより目的の散剤を製造する。
(I)−2.細粒剤および顆粒剤:
本発明の医薬組成物が細粒剤および顆粒剤(以下、単に顆粒剤という)である場合には、例えば、低分子活性物質および安定化剤と、物理的および化学的な安定性上許容される賦形剤(乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、ショ糖、エリスリトール、デンプン、結晶セルロース)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポリビニルピロリドン等)、必要に応じて崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋化ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルスターチナトリウム等)とを適当な比率で、V型混合機、ダブルコーン型混合機、リボン型混合機等を用いて混合し、必要に応じて、含量の均一性、流動性を改善する目的で、タルク、軽質無水ケイ酸等の流動化剤をさらに添加し均一な混合物とする。この混合物を、スラッグ錠剤機、圧縮ローラー等を使用した乾式法、または練合造粒機、高速撹拌造粒機、流動層造粒乾燥機などを用いた湿式造粒法により造粒後、常法に従い乾燥、整粒を経て顆粒剤とする。または、上記の結合剤をあらかじめ水等の溶剤に溶解し結合液とした後、練合造粒機、高速撹拌造粒または流動層造粒乾燥機を使用して、上記の低分子活性物質、安定化剤および賦形剤の混合物中に添加し、造粒、乾燥し、整粒を行い顆粒剤としてもよい。この粒状物はそのまま顆粒剤として用いることができるが、さらに、静電気防止または流動性を改善する目的でタルク、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ステアリン酸またはその塩類、ショ糖脂肪酸エステル類等を付着防止剤として外部に添加してもよい。または、上記顆粒剤の製法において、本発明の安定化剤を細粒または顆粒(以下、単に顆粒という)中に添加せず、付着防止剤などとともに外部に添加してもよい。
(I)−3.錠剤、カプセル剤:
本発明の医薬組成物が錠剤またはカプセル剤である場合には、低分子活性物質(通常、医薬組成物全重量の0.01〜10w/w%)および本発明の安定化剤を含む上記顆粒に、さらに、必要に応じて外部に添加物質(賦形剤、崩壊剤、滑沢剤等)を適当な比率で添加・混合し調製末とする。この調製末を、ゼラチン、ヒドロキシピルメチルセルロースまたはプルラン製のカプセルに充填しカプセル剤とすることができる。または、この調製末を圧縮成型することにより錠剤とすることもできる。
上記カプセル剤および錠剤はいずれの場合も、本発明の安定化剤は必ずしも顆粒中に添加する必要は無く、低分子活性物質を含む顆粒の外部に添加してもよい。
または、逆に、安定化剤を含有する顆粒(低分子活性物質を含有しない)に対し、その外部に低分子活性物質および適当な添加物質(賦形剤、崩壊剤、滑沢剤等)を添加・混合して製した調製末をカプセルに充填してカプセル剤とするか、圧縮成型することにより錠剤としてもよい。
また、安定化剤または低分子活性物質のいずれか一方を、アルデヒド様物質供給可能物質と共に予め顆粒(芯粒子)または錠剤(錠芯)を製造した後に、他方を糖衣、フィルムコートまたはカプセル等の剤皮構成成分として添加してもよい。
(I)−4.徐放性の顆粒剤、錠剤、カプセル剤:
さらに、前述の低分子活性物質および安定化剤を含有する顆粒または錠剤で崩壊剤を添加していないものを、芯粒子または錠芯とし、これに、高分子、油脂等から成る薬物溶出制御皮膜を施し、必要に応じて加熱処理(キュアリング)を施すことにより、徐放性の顆粒剤または錠剤を製造することができる。または、崩壊剤を添加せず、高分子、油脂等から成る薬物溶出制御成分を添加したものを、上記の方法により顆粒剤または錠剤に成型し、必要に応じて加熱処理を施すことによっても徐放性の顆粒剤または錠剤を製造することができる。このようにして製造した顆粒をカプセルに充填しカプセル剤とすることができる。
(I)−5.粉末注射剤:
本発明の医薬組成物が、粉末注射剤である場合は、例えば、無菌的に製造された低分子活性物質の粉末(凍結乾燥物を含む)および、同様に無菌化された本発明の安定化剤の粉末(凍結乾燥物を含む)、必要に応じてその製剤化に通常用いられる添加剤、例えば、賦形剤(乳糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖等)またはpH調節剤、浸透圧調節剤、可溶化剤、製剤安定化剤等を適当な比率で、アンプル、バイアル、その他適当な容器、キット容器に充填して製造する。
(I)−6.粉末吸入剤:
本発明の医薬組成物が、粉末吸入剤である場合は、例えば、吸入剤として適当な粒子サイズに調製され、かつ無菌的に製造された低分子活性物質の粉末(凍結乾燥物を含む)および、同様に無菌化された本発明の安定化剤の粉末(凍結乾燥物を含む)、必要に応じてその製剤化に通常用いられる添加剤、例えば賦形剤(乳糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖等)またはpH調節剤、浸透圧調節剤、可溶化剤、製剤安定化剤等を適当な比率で、適当な噴射装置中に充填して製造する。
(I)−7.軟膏剤、貼付剤:
本発明の医薬組成物が、軟膏剤または貼付剤である場合は、例えば、外用剤として適当な粒子サイズにて製造された低分子活性物質の粉末および、適当な粒子サイズに調製された本発明の安定化剤の粉末を、必要に応じてこれらの製剤に通常用いられるpH調節剤、製剤安定化剤、吸収促進剤等を適当な比率で軟膏基剤または貼付剤基剤中に、適当な装置を用いて分散させ、軟膏剤または貼付剤の常法より製造する。
(II)低分子活性物質含有集合体と安定化剤含有集合体を別々に調製したのち製剤化する場合
(II)−1.細粒剤および顆粒剤:
本発明の医薬組成物が細粒剤または顆粒剤である場合には、例えば、低分子活性物質および安定化剤を、それぞれ別々に、アルデヒド様物質供給可能物質、物理的および化学的な安定性上許容される賦形剤(例、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、ショ糖、エリスリトール、デンプン、結晶セルロース、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、カンゾウ末、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム)、結合剤(例、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム、トラガント、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、グリセリン)、必要に応じて崩壊剤(例、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋化ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、アミノ酸、デンプン、コーンスターチ、炭酸カルシウム、クロスポビドン)と共に適当な比率で、V型混合機、ダブルコーン型混合機、リボン型混合機等を用いて混合し、必要に応じて、含量の均一性、流動性を改善する目的で、タルク、軽質無水ケイ酸等の流動化剤をさらに添加し均一な混合物とする。ここで、アルデヒド様物質供給可能物質は、物理的および化学的な安定性上許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤などと同一であってもよいし、異なっていてもよい。このようにして得られる混合物を、スラッグ錠剤機、圧縮ローラー等を使用した乾式法、または練合造粒機、高速撹拌造粒機、流動層造粒乾燥機などを用いた湿式造粒法により造粒後、必要に応じて、常法に従い乾燥、整粒を経て細粒または顆粒とする。また、湿式造粒法においては、上記の結合剤をあらかじめ水等の溶剤に溶解し結合液として用いてもよく、また、該結合液に低分子活性物質または安定化剤を添加してもよい。
また、例えばノンパレル(商品名;白糖75%(W/W)およびコーンスターチ25%(W/W)を含む)等の実質的に球形の核に、低分子活性物質または安定化剤を含有する前記混合物を付着(部分的および全体的な被覆を含む)させることにより、それぞれ低分子活性物質または安定化剤を含有する有核顆粒を得ることができる。
こうして得られた低分子活性物質含有顆粒(または細粒)および安定化剤含有顆粒(または細粒)を均一に混合して、顆粒剤(または細粒剤)として用いる。さらに、静電気防止または流動性を改善する目的でタルク、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ステアリン酸またはその塩類(例、マグネシウム塩、カルシウム塩)、ショ糖脂肪酸エステル類等を付着防止剤として顆粒剤(または細粒剤)の外部に添加してもよい。
また、例えばノンパレル(商品名;白糖75%(W/W)およびコーンスターチ25%(W/W)を含む)等の実質的に球形の核に、低分子活性物質または安定化剤を含有する前記混合物を、順次、付着(部分的および全体的な被覆を含む)あるいは積層させることにより、低分子活性物質および安定化剤を含有する有核顆粒を得ることもできる。
さらに、低分子活性物質または安定化剤を含有する前記混合物のいずれかを核とし、他方を付着(部分的および全体的な被覆を含む)あるいは積層させることによっても、低分子活性物質および安定化剤を含有する有核顆粒を得ることができる。
(II)−2.錠剤、カプセル剤:
本発明の医薬組成物が錠剤またはカプセル剤である場合には、前記(II)−1.で述べた低分子活性物質(通常、医薬組成物全重量の0.01〜10w/w%)含有顆粒および安定化剤含有顆粒に、さらに、必要に応じて添加物質(賦形剤、崩壊剤、滑沢剤等)を適当な比率で添加・混合し調製末とする。この調製末を、ゼラチン、ヒドロキシピルメチルセルロースまたはプルラン製のカプセルに充填しカプセル剤とすることができる。また、この調製末を圧縮成型することにより錠剤とすることもできる。低分子活性物質含有顆粒と安定化剤含有顆粒を均一に混合した後に圧縮成形すすれば、製剤内に低分子活性物質含有顆粒と安定化剤含有顆粒が均一に分散した錠剤を得ることができる。
また、低分子活性物質含有顆粒と安定化剤含有顆粒を製剤内の各部分に別々に存在させて圧縮成形することにより、例えば多層錠、有核錠のような錠剤を得ることができる。具体的には、低分子活性物質含有顆粒または安定化剤含有顆粒のいずれか一方を、必要に応じて添加物質(例、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤)と共に打錠した後、他方を同一の打錠臼で連続して打錠することにより、2層錠を得ることができる。また、低分子活性物質含有顆粒または安定化剤含有顆粒のいずれか一方を、必要に応じて添加物質(例、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤)と共に打錠した後、得られる錠剤を内核錠として他方を被覆成分として打錠することにより、有核錠を得ることができる。
さらに、低分子活性物質および安定化剤を含有する有核顆粒を用いて、前記と同様にして、錠剤を得ることもできる。
前記(II)−1.および(II)−2.で得られる細粒剤、顆粒剤、錠剤およびカプセル剤は、味のマスキング、腸溶性あるいは徐放性などのためのコーティング剤でコーティングされていてもよい。
該コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン80、プルロニックF68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物(商品名:オイドラギット(ローム社製、西ドイツ))などが挙げられる。
また、コーティングの際に、低分子活性物質の光安定性向上を目的として、酸化チタン、ベンガラ等の遮光剤を用いてもよい。
(II)−3.徐放性の顆粒剤、錠剤、カプセル剤:
さらに、前述の低分子活性物質含有顆粒および安定化剤含有顆粒を混合して得られた顆粒剤、錠剤を解砕等により適当なサイズで成形して得られる顆粒状物または錠剤で、崩壊剤を添加していないものを芯粒子または錠芯とし、これに、高分子、油脂等から成る薬物溶出制御皮膜を施し、必要に応じて加熱処理(キュアリング)を施すことにより、徐放性の顆粒剤または錠剤を製造することができる。または、崩壊剤を添加せず、高分子、油脂等から成る薬物溶出制御成分を添加したものを、上記の方法により顆粒剤または錠剤に成型し、必要に応じて加熱処理を施すことによっても徐放性の顆粒剤または錠剤を製造することができる。このようにして製造した顆粒をカプセルに充填しカプセル剤とすることができる。
以下に実験例、比較例および実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に化合物Aと記載しているのは、本発明の低分子活性物質の一例である、[3−[(2R)−[[(2R)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]アミノ]プロピル]−1H−インドール−7−イルオキシ]酢酸を意味する。
実験例1:アルデヒド発生の確認
通常汎用される製剤添加剤、またはこれらの組合せによる製剤組成物からは、保存条件(温度、保存期間)に応じてアルデヒドまたはアルデヒド様物質が発生することを、次の実験によって確認した。すなわち、表1の実験例1−1または1−2に示す組成に従って物理混合した固形製剤組成物100mgを、ホルムアルデヒド捕集用の精製水1mLを満たしたカップと共に、共栓付きガラス試験管中に入れ(第1図参照)、40、50および60℃で14日間保存した後、カップ中の精製水に捕集されたホルムアルデヒド量を測定した。これらの加温処理は試料の経時変化を短期間で調査するための加速試験であり、常温または室温で長期間保存した場合の変化を反映している。
試料中のホルムアルデヒド量の測定には、試料に0.1%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNP)の4N塩酸水溶液0.1mLを反応させてDNP誘導体とし、さらに4N水酸化ナトリウムで中和した後、以下の条件に従い、20μLを高速液体クロマトグラフに注入し測定した。
高速液体クロマトグラフ条件:
カラム:L−カラム ODS(内径4.6mm×150mm)(財団法人化学物質評価研究機構製)、
移動相:アセトニトリル・水混液(1:1)、
検出器:紫外可視吸光光度計(検出波長:345nm)、
温 度:40℃付近の一定温度、
流 速:1ml/分
その結果、表2の実験例1−1に示すように、加温温度の上昇に伴いカップ中のホルムアルデヒド捕集量の増加が認められたことから、固形製剤組成物を加温処理することによりホルムアルデヒドが生成することを確認した。このことは、固形製剤組成物が、ホルムアルデヒドの供給源となることを示し、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質がホルムアルデヒドと反応することにより、類縁物質を生成することが可能な環境を提供しうることを示唆している。


実験例2:低分子活性物質とアルデヒドとの反応
化合物A粉末2mgを、各濃度に調製したホルムアルデヒド水溶液(1mL)を満たしたカップと共に、密栓した共栓付きガラス試験管中に保存し(第2図参照)、50℃で14日間加温した時に生成する化合物Aの類縁物質の生成量を測定した。類縁物質の生成量は、化合物A粉末(2mg)をメタノール200mLに溶解し試料溶液とし、この溶液10μLにつき高速液体クロマトグラフを使用して以下の条件に従い測定した。化合物Aを含む全ピーク面積値に対する類縁物質のピーク面積百分率をその生成量とした。
高速液体クロマトグラフ条件:
カラム:Develosil ODS−5(内径4.6mm×150mm)(野村化学株式会社製)、
移動相:0.01Mクエン酸緩衝液(pH2.5)・アセトニトリル混液(75:25)、
検出器:紫外可視吸光光度計(検出波長:220nm)、
温 度:40℃付近の一定温度、
流 速:1ml/分
この実験の結果、表3に示すように、類縁物質の生成量は、水溶液中のホルムアルデヒドの濃度に比例して増大することが判明した。このことは、試験管内に封入したホルムアルデヒド水溶液から揮発したホルムアルデヒドが空気中を拡散して化合物Aの粉末と反応することを示している。

実験例3:医薬組成物における低分子活性物質とアルデヒドの反応
化合物Aを含有する錠剤において、実際にアルデヒドの生成が起こることを確認するために以下の実験を行った。表4の実験例3−1または実験例3−2に示す処方に従って調製した、化合物Aを含有する錠剤5錠を、ホルムアルデヒド捕集用の精製水1mLを満たしたカップと共に、共栓付きガラス試験管中に入れ(第3図参照)、40℃、50℃および60℃で28日間保存した後、カップ中の精製水に捕集されたホルムアルデヒド量を実験例1と同様にして測定した。錠剤中の類縁物質含量は、試料をメタノール200mLに懸濁し遠心分離により上澄液をとり、これを試料溶液とし、以下実験例2と同様にして測定した。
その結果、表5に示すように、カップ中のホルムアルデヒド捕集量と類縁物質の生成量の間には明らかな正の相関関係が認められた。このことは、錠剤から発生するアルデヒドが、低分子活性物質と反応して類縁物質を生成することを実証している。


実験例4:安定化剤によるアルデヒドの吸収
メグルミン粉末1gを、0.1μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mLの各濃度に調製したホルムアルデヒド水溶液(調湿用ヨウ化カリウム含有)2mLを満たしたカップと共に、密栓した共栓付きガラス試験管中に保存した(第4図参照)。比較対照として、メグルミンを封入せずに、各々の濃度に調製したホルムアルデヒド水溶液(調湿用ヨウ化カリウム含有)2mLを満たしたカップを入れて密栓した密栓した共栓付きガラス試験管を用いた。25℃または40℃で2日間保存した後、カップ中に残存するホルムアルデヒド量を、実験例1と同様にして測定した。
その結果、表6に示すように、メグルミン粉末を封入することにより保存後のカップ中のホルムアルデヒド残存率は、メグルミンを封入しなかった場合のカップ中のホルムアルデヒド残存率と比較して、明らかに低かった。このことは、カップ中のホルムアルデヒド水溶液から揮散した試験管内のホルムアルデヒドをメグルミン粉末が吸収することを示している。

実施例1、実施例2および比較例1:散剤
表7の実施例1、実施例2および比較例1に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、磁性乳鉢で混合し化合物Aを含有する散剤を得た。
実施例1、実施例2および比較例1の散剤を、第3図に示す共栓付ガラス試験管の底部に装填し、密栓状態(相対湿度100%)で60℃の条件下に1週間保存し、類縁物質の生成量を実験例3と同様にして、高速液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表8に示す。
DL−アラニンまたはL−アルギニンを含有する実施例1および実施例2の散剤中における類縁物質の生成量は、安定化剤を含有しない比較例1の散剤と比較して明らかに抑制されることが確認された。


比較例2および比較例3:錠剤
表9の比較例2に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、化合物A、乳糖および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、流動層造粒乾燥機(FLO−2型、フロイント産業)中でヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5w/w%)を噴霧することにより造粒・乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、低分子活性物質含有顆粒とした。この低分子活性物質含有顆粒に結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式錠剤機(HT−AP18SS−II型、畑鐵工所)を用いて圧縮成型し化合物Aの錠剤を得た。
表9の比較例3に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、上記と同様の操作を行い、化合物Aの錠剤を得た。
比較例2および3の錠剤を高密度ポリエチレン瓶に充填し、密栓、密栓(シリカゲル封入)および開栓状態で40℃75%RHの条件下に1ヶ月間保存し、類縁物質の生成量を、実験例3と同様にして高速液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表10に示す。
比較例2(乳糖系処方)および比較例3(マンニトール系処方)の錠剤からは、保存条件によっては1%を超える類縁物質が生成することが確認された。


実施例3および実施例4:錠剤
表11の実施例3に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、化合物A、D−マンニトールおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに、加水分解ゼラチン水溶液(10w/w%)を加え、万能混合撹拌機(5MD型、品川工業所)を用いて練合造粒後、50℃で16時間乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、低分子活性物質含有顆粒とした。この低分子活性物質含有顆粒に結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒を単発錠剤機(菊水製作所)を用いて圧縮成型し化合物Aの錠剤を得た。
表11の実施例4に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、化合物A、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび軽質無水ケイ酸を、流動層造粒乾燥機(FLO−2型、フロイント産業)中で、予めメグルミンを溶解したヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5w/w%)を噴霧することにより造粒・乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、低分子活性物質含有顆粒とした。この低分子活性物質含有顆粒に結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式錠剤機(HT−AP18SS−II型、畑鐵工所)を用いて圧縮成型し化合物Aの錠剤を得た。
実施例3および4の錠剤を高密度ポリエチレン瓶に充填し、密栓、密栓(シリカゲル封入)および開栓状態で40℃75%RHの条件下に1ヶ月間保存し、類縁物質の生成量を実験例3と同様にして、高速液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表12に示す。
安定化剤としてゼラチンまたはメグルミンを製剤中に添加した実施例3および4の錠剤から生成する類縁物質の量は、同じマンニトール系処方の比較例3の錠剤の結果と比較して、何れの保存条件でも明らかに抑制された。特に、シリカゲルを錠剤と共に封入した場合は類縁物質の生成に対する抑制効果がさらに優れていた。


実施例5および実施例6:錠剤
表13の実施例5および6に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、化合物A、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび軽質無水ケイ酸を、流動層造粒乾燥機(FLO−2型、フロイント産業)中で、予めL−アルギニンを溶解したヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5w/w%)を噴霧することにより造粒・乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、低分子活性物質含有顆粒とした。この低分子活性物質含有顆粒に結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式錠剤機(HT−AP18SS−II型、畑鐵工所)を用いて圧縮成型し化合物Aの錠剤を得た。
実施例5および6の錠剤を高密度ポリエチレン瓶に充填し、密栓、密栓(シリカゲル封入)および開栓状態で40℃75%RHの条件下に1ヶ月間保存し、類縁物質の生成量を実験例3と同様にして、高速液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表14に示す。
安定化剤としてL−アルギニンを製剤中に添加した実施例5および6の錠剤から生成する類縁物質の量は、同じマンニトール系処方である比較例3の錠剤の結果と比較して、何れの保存条件でも明らかに抑制された。このとき、L−アルギニンの添加量(〜2%)の増大に比例して類縁物質生成の抑制効果も増強された。


実施例7:安定化剤後添加法で製造した錠剤
表15の実施例7に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、化合物A、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび軽質無水ケイ酸を、流動層造粒乾燥機(FLO−15型、フロイント産業)中でヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5%)を噴霧することにより造粒・乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、低分子活性物質含有顆粒とした。この低分子活性物質含有顆粒にメグルミン、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式錠剤機(HT−AP18SS−II型、畑鐵工所)を用いて圧縮成型し化合物Aのメグルミン後添加法錠剤を得た。
実施例7の錠剤を高密度ポリエチレン瓶に充填し、密栓(シリカゲル封入)および開栓状態で40℃75%RHの条件下に1ヶ月間保存し、類縁物質の生成量を実験例3と同様にして、高速液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表16に示す。
安定化剤であるメグルミンを低分子活性物質と直接接触しない形態、すなわち低分子活性物質含有顆粒外に後添加成分と共に添加し、錠剤化した実施例7の錠剤を、密栓(シリカゲル封入)および開栓状態で40℃75%RHの条件下に1ヶ月間保存した場合でも十分な低分子活性物質の安定化効果が得られ、メグルミンと共に造粒した低分子活性物質含有顆粒からなる実施例4の錠剤に匹敵する安定性が得られた。


実施例8および実施例9:低分子活性物質後添加法で製造した錠剤
表17の実施例8および9示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、D−マンニトールおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、流動層造粒乾燥機(FLO−5B型/15型、フロイント産業)中で予めメグルミンを溶解したヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5%)を噴霧することにより造粒・乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、メグルミン顆粒とした。このメグルミン顆粒に、化合物A、D−マンニトール、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式錠剤機(クリーンプレス コレクト19K型、菊水製作所)を用いて圧縮成型し化合物Aの低分子活性物質後添加法錠剤を得た。
実施例8および9の錠剤を高密度ポリエチレン瓶に充填し、密栓、密栓(シリカゲル封入)および開栓状態で40℃75%RHの条件下に1ヶ月間保存し、類縁物質の生成量を実験例3と同様にして、高速液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表18に示す。
実施例7とは異なり、安定化剤であるメグルミンおよびアルデヒド様物質供給可能物質を低分子活性物質と直接接触させず、メグルミン顆粒の外部に低分子活性物質を後添加成分と共に添加し、錠剤化した実施例8および9の錠剤は、いずれの保存条件でも優れた安定性が得られ、メグルミンと共に造粒した低分子活性物質含有顆粒からなる実施例4の錠剤に勝る安定性が得られた。さらに、シリカゲルを錠剤と共に封入した場合は極めて優れた類縁物質の生成抑制効果が得られた。


実施例10および実施例11:錠剤
表19の実施例10に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、塩酸ヒドララジン、乳糖および低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びメグルミンを、流動層造粒乾燥機(FLO−5B型、フロイント産業)中でヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5w/w%)を噴霧することにより造粒・乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、低分子活性物質含有顆粒とした。この低分子活性物質含有顆粒に結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式錠剤機(HT−AP18SS−II型、畑鐵工所)を用いて圧縮成型し、安定な塩酸ヒドララジンの錠剤を得た。
表19の実施例11に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、上記と同様の操作を行い、安定な塩酸ヒドララジンの錠剤を得た。

実施例12および実施例13:錠剤
表20の実施例12に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、バクロフェン、D−マンニトールおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに、加水分解ゼラチン水溶液(10w/w%)を加え、万能混合撹拌機(5MD型、品川工業所)を用いて練合造粒後、50℃で16時間乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、低分子活性物質含有顆粒とした。この低分子活性物質含有顆粒に結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒を単発錠剤機(菊水製作所)を用いて圧縮成型し、安定なバクロフェンの錠剤を得た。
表20の実施例13に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、上記と同様の操作を行い、安定なバクロフェンの錠剤を得た。

実施例14および実施例15:低分子活性物質後添加法で製造した錠剤
表21の実施例14に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、D−マンニトールおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、流動層造粒乾燥機(FLO−5B型/15型、フロイント産業)中で予めメグルミンを溶解したヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5%)を噴霧することにより造粒・乾燥し、ステンレス篩(20メッシュ)を用いて整粒し、メグルミン顆粒とした。このメグルミン顆粒に、塩酸エフェドリン、D−マンニトール、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸を添加しポリエチレン袋を用いて混合し打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式錠剤機(クリーンプレス コレクト19K型、菊水製作所)を用いて圧縮成型し、安定な塩酸エフェドリンの低分子活性物質後添加法錠剤を得た。
表21の実施例15に示す処方成分を、各々の組成比に従い計量し、上記と同様の操作を行い、安定な塩酸エフェドリンの錠剤を得た。

実施例16、実施例17および実施例18:
表22の実施例16、実施例17および実施例18に示す予備混合散の各成分を、サンプルミル(AP−S型、スクリーン:径=1mm)を用いて分散し、予備混合散を得た。この予備混合散、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび軽質無水ケイ酸を流動層造粒乾燥機(フローコーター、FLO−5B型)に入れ、ヒドロキシプロピルセルロースを溶かした水溶液を用いて造粒乾燥し、低分子活性物質含有顆粒を得た。マンニトールおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをフローコーター(FLO−15型)に入れ、メグルミンおよびヒドロキシプロピルセルロースを溶かした水溶液で造粒乾燥し、安定化剤含有顆粒を得た。低分子活性物質含有顆粒および安定化剤含有顆粒を各々整粒機(ツインローター(32メッシュ篩付))を用いて製粒した。整粒した低分子活性物質含有顆粒、整粒した安定化剤含有顆粒、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよび軽質無水ケイ酸混合機(Vミキサー(VM−10型))を用いて10分間混合し、打錠用顆粒とした。打錠用顆粒をロータリー式打錠機(クリーンプレス、C19K)を用いて錠剤とした。

【実施例19】
精製水1188gにヒドロキシプロピルセルロース62.5gを溶解し、結合液1を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−3S,富士産業)中で、化合物A5.0g、マンニトール1783gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース250gを均一に混合後、機内で結合液1を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、主薬顆粒を得た。
別に、精製水1188gにヒドロキシプロピルセルロース62.5gとメグルミン50.0gを溶解し、結合液2を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−3S、パウレック)中で、軽質無水ケイ酸(AEROSIL;日本アエロジル)25.0g、マンニトール1713gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース250gを均一に混合後、機内で結合液2を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、メグルミン顆粒を得た。
得られた2つの造粒物を、パワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とした。
得られた主薬含有整粒末1680g、メグルミン含有整粒末1680g、微結晶セルロース600g及びステアリン酸マグネシウム40.0gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合し、打錠用顆粒とした。得られた顆粒をロータリー打錠機(コレクト19K、菊水製作所)で6.5mmφの杵を用いて重量100mgで打錠(打錠圧7KN/杵)し、1錠当たり化合物A0.1mgを含有する下記処方の錠剤を得た。
処方(1錠当たりの組成):
1)化合物A 0.1mg
2)マンニトール 69.9mg
3)メグルミン 1.0mg
4)ヒドロキシプロピルセルロース 2.5mg
5)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0mg
6)軽質無水ケイ酸 0.5mg
7)微結晶セルロース 15.0mg
8)ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
合計 100.0mg
【実施例20】
精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、結合液1を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、化合物A9.0g、マンニトール3209gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液1を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、主薬顆粒を得た。
別に、精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gとメグルミン90.0gを溶解し、結合液2を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、マンニトール3128gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液2を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、メグルミン顆粒を得た。
得られた2つの造粒物を、パワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とした。
得られた主薬含有整粒末3486g、メグルミン含有整粒末3486g、微結晶セルロース1245gとステアリン酸マグネシウム83.0gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合し、打錠用顆粒とした。得られた顆粒をロータリー打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で6.5mmφの杵を用いて重量100mgで打錠(打錠圧6KN/杵)し、1錠当たり化合物A0.1mgを含有する下記処方の錠剤を得た。
処方(1錠当たりの組成):
1)化合物A 0.1mg
2)マンニトール 70.4mg
3)メグルミン 1.0mg
4)ヒドロキシプロピルセルロース 2.5mg
5)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0mg
6)微結晶セルロース 15.0mg
7)ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
合計 100.0mg
【実施例21】
精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、結合液1を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、化合物A18.0g、マンニトール3200gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液1を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、主薬顆粒を得た。
別に、精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gとメグルミン90.0gを溶解し、結合液2を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、マンニトール3128gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液2を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、メグルミン顆粒を得た。
得られた2つの造粒物を、パワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とした。
得られた主薬含有整粒末3486g、メグルミン含有整粒末3486g、微結晶セルロース1245gとステアリン酸マグネシウム83.0gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合し、打錠用顆粒とした。得られた顆粒をロータリー打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で6.5mmφの杵を用いて重量100mgで打錠(打錠圧6KN/杵)し、1錠当たり化合物A0.2mgを含有する下記処方の錠剤を得た。
処方(1錠当たりの組成):
1)化合物A 0.2mg
2)マンニトール 70.3mg
3)メグルミン 1.0mg
4)ヒドロキシプロピルセルロース 2.5mg
5)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0mg
6)微結晶セルロース 15.0mg
7)ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
合計 100.0mg
【実施例22】
精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、結合液1を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、化合物A27.0g、マンニトール3191gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液1を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、主薬顆粒を得た。
別に、精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gとメグルミン90.0gを溶解し、結合液2を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、マンニトール3128gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液2を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、メグルミン顆粒を得た。
得られた2つの造粒物を、パワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とした。
得られた主薬含有整粒末3486g、メグルミン含有整粒末3486g、微結晶セルロース1245gとステアリン酸マグネシウム83gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合し、打錠用顆粒とした。得られた顆粒をロータリー打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で6.5mmφの杵を用いて重量100mgで打錠(打錠圧6KN/杵)し、1錠当たり化合物A0.3mgを含有する下記処方の錠剤を得た。
処方(1錠当たりの組成):
1)化合物A 0.3mg
2)マンニトール 70.2mg
3)メグルミン 1.0mg
4)ヒドロキシプロピルセルロース 2.5mg
5)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0mg
6)微結晶セルロース 15.0mg
7)ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
合計 100.0mg
【実施例23】
精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、結合液1を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、化合物A9.0g、マンニトール3209gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液1を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、主薬顆粒を得た。
別に、精製水2138gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gとメグルミン90.0gを溶解し、結合液2を調製した。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、マンニトール3128gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液2を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、メグルミン顆粒を得た。
得られた2つの造粒物を、パワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とした。
得られた主薬含有整粒末3486g、メグルミン含有整粒末3486g、微結晶セルロース1245gとステアリン酸マグネシウム83.0gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合し、打錠用顆粒とした。得られた顆粒をロータリー打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で長径8.5mm、短径5mmの杵を用いて重量100mgで打錠(打錠圧4KN/杵)し、1錠当たり化合物A0.1mgを含有する下記処方の錠剤を得た。
処方(1錠当たりの組成):
1)化合物A 0.1mg
2)マンニトール 70.4mg
3)メグルミン 1.0mg
4)ヒドロキシプロピルセルロース 2.5mg
5)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0mg
6)微結晶セルロース 15.0mg
7)ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
合計 100.0mg
【実施例24】
精製水1413gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、ヒドロキシプロピルセルロース溶液1を調製する。次に、黄色三二酸化鉄4.5gをラボディスパー(中央理科)を用いて精製水630gに分散し、精製水90.0g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液1を混合し、結合液1を得た。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、化合物A18.0g、マンニトール3195gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液1を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、主薬顆粒を得た。
別に、精製水1323gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、ヒドロキシプロピルセルロース溶液2を調製する。次に、黄色三二酸化鉄4.5gをラボディスパー(中央理科)を用いて精製水630gに分散し、メグルミン90g、精製水90g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液2を混合し、結合液2を得た。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、マンニトール3123gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液2を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、メグルミン顆粒を得た。
得られた2つの造粒物を、パワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とした。
得られた主薬含有整粒末3486g、メグルミン含有整粒末3486g、微結晶セルロース1245gとステアリン酸マグネシウム83.0gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合し、打錠用顆粒とした。得られた顆粒をロータリー打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で長径8.5mm、短径5mmの杵を用いて重量100mgで打錠(打錠圧4KN/杵)し、1錠当たり化合物A0.2mgを含有する下記処方の錠剤を得た。
処方(1錠当たりの組成):
1)化合物A 0.2mg
2)マンニトール 70.2mg
3)メグルミン 1.0mg
4)ヒドロキシプロピルセルロース 2.5mg
5)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0mg
6)微結晶セルロース 15.0mg
7)ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
8)黄色三二酸化鉄 0.1mg
合計 100.0mg
【実施例25】
精製水1415gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、ヒドロキシプロピルセルロース溶液1を調製する。次に、黄色三二酸化鉄2.25gをラボディスパー(中央理科)を用いて精製水630gに分散し、精製水90g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液1を混合し、結合液1を得た。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、化合物A27.0g、マンニトール3188gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液1を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、主薬顆粒を得た。
別に、精製水1325gにヒドロキシプロピルセルロース112.5gを溶解し、ヒドロキシプロピルセルロース溶液2を調製する。次に、黄色三二酸化鉄2.25gをラボディスパー(中央理科)を用いて精製水630gに分散し、メグルミン90.0g、精製水90.0g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液2を混合し、結合液2を得た。流動層造粒乾燥機(FD−5S、パウレック)中で、マンニトール3125gおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロース450gを均一に混合後、機内で結合液2を噴霧して造粒し、ついで流動層造粒乾燥機中で乾燥し、メグルミン顆粒を得た。
得られた2つの造粒物を、パワーミル粉砕機(P−3、昭和化学機械工作所)を用い、1.5mmφパンチングスクリーンで解砕して整粒末とした。
得られた主薬含有整粒末3486g、メグルミン含有整粒末3486g、微結晶セルロース1245gとステアリン酸マグネシウム83.0gを加え、タンブラー混合機(TM−60S、昭和化学機械工作所)で混合し、打錠用顆粒とした。得られた顆粒をロータリー打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)で長径8.5mm、短径5mmの杵を用いて重量100mgで打錠(打錠圧4KN/杵)し、1錠当たり化合物A0.3mgを含有する下記処方の錠剤を得た。
処方(1錠当たりの組成):
1)化合物A 0.3mg
2)マンニトール 70.1mg
3)メグルミン 1.0mg
4)ヒドロキシプロピルセルロース 2.5mg
5)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0mg
6)微結晶セルロース 15.0mg
7)ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
8)黄色三二酸化鉄 0.1mg
合計 100.0mg
【産業上の利用の可能性】
本発明の組成物は、医薬品、化粧品、毛髪処理用品等のアルデヒド様物質供給可能物質が存在する組成物において、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質と、アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有することにより、該組成物における低分子活性物質の活性を、安定に保持することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド様物質供給可能物質が存在する組成物であって、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質と、アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有する組成物。
【請求項2】
安定化剤が、アミノ糖もしくはその重合体、アミノ糖アルコールもしくはその重合体、アミノ酸もしくはその重合体、タンパク質もしくはその加水分解物、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、またはその塩である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
安定化剤がキチン、キトサン、キトオリゴ糖、メグルミン、アラニン、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、ゼラチンもしくはその加水分解物、コラーゲンもしくはその加水分解物、アルブミンもしくはその加水分解物、カゼインもしくはその加水分解物、プロタミンもしくはその加水分解物、ジエチルアミン、ヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、またはその塩である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
安定化剤がメグルミン、L−アルギニン、ゼラチン、またはその塩である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
いずれも固体の粉末である、低分子活性物質と安定化剤を含有する医薬組成物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
固形または半固形の医薬組成物である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
固形または半固形の医薬組成物が、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、粉末注射剤、粉末吸入剤、軟膏剤または貼付剤である請求項6記載の組成物。
【請求項8】
低分子活性物質と安定化剤を均一に混合して製造される請求項1記載の組成物。
【請求項9】
低分子活性物質および安定化剤のいずれか一方を、アルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、他方と均一に混合することにより製造される請求項1記載の組成物。
【請求項10】
安定化剤をアルデヒド様物質供給可能物質と共に予め造粒した後に、低分子活性物質と均一に混合することにより、アルデヒド様物質供給可能物質と低分子活性物質の接触を防止または減少させるようにして製造される請求項9記載の組成物。
【請求項11】
アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を含有する集合体とアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有する集合体とからなり、これら集合体の少なくとも一方にアルデヒド様物質供給可能物質を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
低分子活性物質を含有する集合体および安定化剤を含有する集合体がいずれも顆粒である、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
低分子活性物質を含有する集合体および安定化剤を含有する集合体がいずれも細粒である、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
低分子活性物質を含有する顆粒および/または細粒と安定化剤を含有する顆粒および/または細粒とをカプセルに充填してなるカプセル剤である請求項11記載の組成物。
【請求項15】
低分子活性物質を含有する顆粒および/または細粒と安定化剤を含有する顆粒および/または細粒とを錠剤化してなる錠剤である請求項11記載の組成物。
【請求項16】
アルデヒド様物質供給物質が存在する組成物において、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を配合するに際して、アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を配合することを特徴とする、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を安定化する方法。
【請求項17】
アルデヒド様物質供給物質、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質およびアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤とを均一に混合する請求項16記載の安定化方法。
【請求項18】
アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質またはアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤のいずれか一方をアルデヒド様物質供給物質と予め造粒したのちに、他方と均一に混合する請求項16記載の安定化方法。
【請求項19】
アミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤とアルデヒド様物質供給物質を予め造粒したのちに、アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を均一に混合する請求項18記載の安定化方法。
【請求項20】
アルデヒドの影響により安定性が損なわれる低分子活性物質を含有する集合体とアミン構造を有しかつアルデヒドを吸収する安定化剤を含有する集合体とを別々に調製し、その際に、アルデヒド様物質供給物質を該集合体のいずれか一方または双方に含有させ、ついで両集合体を合わせて混合する、請求項16記載の安定化方法。

【国際公開番号】WO2004/037293
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501570(P2005−501570)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013419
【国際出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】