説明

完全冗長な宇宙機の電力および姿勢制御システム

【課題】完全冗長であるがシステムおよび宇宙機全体の重量を著しく増大させない宇宙機応用例向けの冗長エネルギー貯蔵フライホイールシステムを提供する。
【解決手段】宇宙機用のエネルギー貯蔵フライホイール106システムが、完全冗長な回転グループおよびジンバルアクチュエータ324と共に実装される。具体的には、ジンバルアクチュエータ324、モータ/発電機330、一次軸受け342、二次軸受けアクチュエータ354は、それぞれ1対の冗長コイルまたはモータと共に実装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵フライホイールシステムに関し、より詳細には、宇宙機の電力および姿勢制御用の完全冗長なエネルギー貯蔵フライホイールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、米国空軍研究所によって授与された契約番号F29601−01−2−0046の元で、政府支援と共になされた。政府は、本発明におけるある種の権利を有する。
多数の衛星や他の宇宙機、ならびに、いくつかの地上の静止応用例および航洋船など乗物応用例は、バックアップ電力源を提供するために、またその乗物に対する姿勢制御を実現するために、1つまたは複数のエネルギー貯蔵フライホイールシステムを含むことがある。そのようなシステムでは、各フライホイールシステムは、乗物の配電系統内の電気需要の釣り合いを保つように制御および調節され、また、乗物内の主コントローラによって受け取られた、プログラムされた、または遠隔の姿勢(またはトルク)コマンドに応答して制御される。
【0003】
多数のエネルギー貯蔵フライホイールシステムは、ハウジングアセンブリ内で回転可能に支持される1つまたは複数の構成部品を含む。回転グループと呼ぶことができるこれらの構成部品は、たとえば、エネルギー貯蔵フライホイール、モータ/発電機、シャフトを含む。具体的には、エネルギー貯蔵フライホイールおよびモータ/発電機がシャフト上に載置され、シャフトは、ハウジングアセンブリ内で、1つまたは複数の軸受けアセンブリを介して回転可能に支持される。多くの場合、シャフトは、1つまたは複数の一次軸受けアセンブリと、1つまたは複数の二次またはバックアップ軸受けアセンブリとを使用して、回転可能に支持される。たとえば、多数の衛星および宇宙機応用例では、フライホイールシステムは、一次軸受けアセンブリとして機能する1つまたは複数の磁気軸受けアセンブリと、二次軸受けアセンブリとして機能する1つまたは複数の機械軸受けアセンブリとを含むことがある。典型的には、一次軸受けアセンブリは、回転グループを回転可能に支持するために使用され、一方、二次軸受けアセンブリは、他の方法で回転グループから解放される。1つまたは複数の一次軸受けアセンブリが、たとえば故障により非活動化された場合、または他の原因で回転グループを回転可能に支持するように動作することができなくなった場合には、二次軸受けアセンブリが回転グループに係合し、それにより回転グループを回転可能に支持することになる。
【0004】
上述の構成部品の1つまたは複数は、エネルギー貯蔵フライホイールシステムの動作中に動作不能になる可能性がある。そのような場合には、エネルギー貯蔵フライホイールシステム全体が動作不能になる可能性がある。したがって、システムが動作不能になる可能性を低減するために、とりわけ宇宙応用例向けのエネルギー貯蔵フライホイールシステム内で、十分な冗長性を実現することが望ましい。残念ながら、2重のモータ/発電機、および/または2重の一次軸受けなど、大抵の冗長方式は、システム重量全体を増大させる可能性があり望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、完全冗長であるがシステムおよび宇宙機全体の重量を著しく増大させない宇宙機応用例向けの冗長エネルギー貯蔵フライホイールシステムが求められている。本発明は、少なくともこの必要に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、宇宙機の電力および姿勢制御用の完全冗長なエネルギー貯蔵フライホイールシステムを提供する。
一実施形態では、一例にすぎないものとして、エネルギー貯蔵フライホイールシステムが、シャフトと、フライホイールアセンブリと、複数の磁気軸受けアセンブリと、複数の二次軸受けアセンブリと、二次軸受けアクチュエータアセンブリと、モータ/発電機とを含む。このフライホイールアセンブリは、シャフト上に載置される。各磁気軸受けアセンブリは、一次アクチュエータコイルと、二次アクチュエータコイルとを含む。各アクチュエータコイルは、選択的に通電および遮電されるように適合され、通電されたとき、フライホイールアセンブリを非接触で回転可能に載置するように構成される。各二次軸受けアセンブリは、シャフトを選択的に回転可能に支持するように構成される。二次軸受けアクチュエータアセンブリは、1つまたは複数の二次軸受けアセンブリに結合され、一次駆動コイルと、二次駆動コイルとを含む。各二次軸受けアクチュエータアセンブリの駆動コイルは、アクチュエータ制御信号を選択的に受け取るように適合され、受け取った信号に応答して、二次軸受けアクチュエータアセンブリが、1つまたは複数の二次軸受けアセンブリを、各二次軸受けアセンブリがシャフトを回転可能に支持する係合位置と、各二次軸受けアセンブリがシャフトを回転可能に支持しない非係合位置のうちの一方に移動させるように動作可能である。モータ/発電機は、エネルギー貯蔵フライホイールに結合され、モータモードまたは発電モードで動作するように構成される。モータ/発電機は、ロータと、ステータとを含み、ステータは、一次ステータコイルと、二次ステータコイルとを含む。
【0007】
他の例示的な実施形態では、エネルギー貯蔵フライホイールシステムが、ジンバルフレームと、フライホイールハウジングと、シャフトと、フライホイールアセンブリと、複数の磁気軸受けアセンブリと、複数の二次軸受けアセンブリと、二次軸受けアクチュエータアセンブリと、モータ/発電機と、ジンバルアクチュエータとを含む。フライホイールハウジングアセンブリは、ジンバルフレーム上に回転可能に載置され、シャフトは、ハウジングアセンブリ上に回転可能に載置される。フライホイールアセンブリは、シャフト上に載置される。各磁気軸受けアセンブリは、一次アクチュエータコイルと、二次アクチュエータコイルとを含む。各アクチュエータコイルは、選択的に通電および遮電されるように適合され、通電されたとき、フライホイールアセンブリを非接触で回転可能に載置するように構成される。各二次軸受けアセンブリは、シャフトを選択的に回転可能に支持するように構成される。二次軸受けアクチュエータアセンブリは、1つまたは複数の二次軸受けアセンブリに結合され、一次駆動コイルと、二次駆動コイルとを含む。各二次軸受けアクチュエータアセンブリの駆動コイルは、アクチュエータ制御信号を選択的に受け取るように適合され、受け取った信号に応答して、二次軸受けアクチュエータアセンブリが、1つまたは複数の二次軸受けアセンブリを、各二次軸受けアセンブリがシャフトを回転可能に支持する係合位置と、各二次軸受けアセンブリがシャフトを回転可能に支持しない非係合位置のうちの一方に移動させるように動作可能である。モータ/発電機は、エネルギー貯蔵フライホイールに結合され、モータモードまたは発電モードで動作するように構成される。モータ/発電機は、ロータと、ステータとを含み、ステータは、一次ステータコイルと、二次ステータコイルとを含む。ジンバルアクチュエータは、ジンバルフレームとフライホイールハウジングアセンブリとの間で結合され、少なくとも一次駆動コイルと、二次駆動コイルとを含む。各ジンバルアクチュエータ駆動コイルは、ジンバル制御信号を選択的に受け取るように適合され、受け取った信号に応答して、ジンバルアクチュエータが、フライホイールハウジングアセンブリをジンバルフレームに対して移動させるように動作可能である。
【0008】
好ましいエネルギー貯蔵フライホイールシステムの他の独立した特徴および利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
詳細な説明に進む前に、述べられている実施形態は、宇宙機と共に使用することに限定されないことを理解されたい。したがって、本実施形態は、説明の都合上、衛星内で実装されるものとして示され述べられているが、地上の、および地球外の他のシステムおよび環境内で実装することができることを理解されたい。
【0010】
次に説明に転じ、まず図1を参照すると、宇宙機用の例示的な、一体化された電力および姿勢制御システム100の機能ブロック図が示されている。システム100は、主コントローラ102と、一次電力源104と、複数のフライホイールシステム106(106−1、106−2、106−3、...106−N)とを含む。システム100を使用することができる宇宙機200の例示的な物理的実施形態の斜視図が図2に示されている。
【0011】
主コントローラ102は、姿勢コマンド(またはトルクコマンド)を、たとえば地上に固定されたステーションまたはその機上の自動操縦装置108から受け取り、配電系統114を監視し、フライホイールシステム106の動作を適切に制御する。トルクコマンドに応答して、フライホイールシステム106は、宇宙機内で適切な姿勢擾乱を誘発するように制御され、それにより宇宙機の姿勢を制御する。さらに、配電系統114の状態に応じて、フライホイールシステム106は、配電系統に電気エネルギーを供給するように、または配電系統から電気エネルギーを引き出すように制御される。1つまたは複数の姿勢センサ110および1つまたは複数のレートセンサ112など、1つまたは複数の宇宙機動的センサが、宇宙機の姿勢、および姿勢変化率をそれぞれ検知し、それらを表すフィードバック信号を主コントローラ102に供給する。主コントローラ102と、それが電力および姿勢を制御するために実施する工程の詳細な説明は、特許請求されている発明を使用可能にする、またはそれについて述べるのに必要とされないので提供しない。
【0012】
一次電力源104は、その名前が暗示するように、配電系統114に対する主な電力源である。システム100が宇宙機内で実装される図の実施形態では、一次電力源104は1つまたは複数の太陽電池パネルであり、そのそれぞれが、光エネルギーを電気エネルギーに変換するために太陽電池のアレイを含む。太陽電池パネル104は、宇宙機それ自体に、または宇宙機から延びる固定もしくは可動の構造物に取り付けることができる。宇宙機200は、たとえば地球の影の中にあるときなど太陽光を受けないように位置決めされているとき、バックアップ電力源が必要となる。上記で暗に述べられているように、姿勢制御を実現することに加えて、フライホイールシステム106は、バックアップ電力源としても機能する。フライホイールシステム106はまた、電気的負荷によって要求される電力が一次電力源104の能力を超えた場合、電力を送ることができる。(図1において破線で示されている)バッテリ115など、別のバックアップ電力源をも設けることができることが理解されるであろう。
【0013】
システム100は、N個のエネルギー貯蔵フライホイールシステム106(106−1、106−2、106−3、...106−N)を含む。システム100は、フライホイールシステム106のいくつかが活動状態であり、一方、残りのフライホイールシステム106の1つまたは複数が、待機中の非活動状態であるように構成されることが好ましい。したがって、システム100は、少なくとも耐単一故障である。活動状態であるフライホイールシステム106の数は、システム要件に応じて変えることができる。特定の好ましい実施形態では、4つのフライホイールシステム106が活動状態であり、残りのものが非活動状態である。
【0014】
フライホイールシステム106は、それぞれがフライホイール制御モジュール116(116−1、116−2、116−3、...116−N)と、フライホイールハードウェア118(118−1、118−2、118−3、...118−N)とを含む。フライホイール制御モジュール116は、それぞれ、主コントローラ102と動作可能に通信し、図の実施形態では、データバス111を介して互いに通信する。主コントローラ102は、上記で指摘されているように、姿勢制御コマンドを、フライホイール制御モジュール116のそれぞれに供給する。次いで、フライホイール制御モジュール116は、宇宙機200の姿勢制御を行うために、関連付けられたフライホイールハードウェア118の相対的な姿勢および角速度を制御する。フライホイール制御モジュール116はまた、主コントローラ102からのコマンドに応答し、モータモードまたは発電機モードでの関連付けられたフライホイールハードウェア118の動作を、また各モードでの関連付けられたフライホイールハードウェア118の回転加速度を制御する。フライホイール制御モジュール116はまた、下記でより詳細に論じらるように、関連付けられたフライホイールハードウェア118の様々なパラメータを監視し、これらを表す信号を主コントローラ102に供給する。1つのフライホイールシステム106の例示的な実施形態のブロック図が図3に示されており、次に詳細に論じる。
【0015】
図の実施形態では、フライホイール制御モジュール116は、それぞれが、4つの別個のコントローラと、ジンバルコントローラ302と、モータ/発電機コントローラ304と、磁気軸受けコントローラ306と、補助軸受けコントローラ308とを含む。フライホイールハードウェア118は、それぞれが、エネルギー貯蔵フライホイールアセンブリ310と、ジンバルハードウェア320と、モータ/発電機ハードウェア330と、磁気軸受けハードウェア340と、補助軸受けハードウェア350とを含む。次に、フライホイール制御モジュール116およびフライホイールハードウェア118のこれらの部分のそれぞれの特定の好ましい実施形態について、より詳細に述べる。
【0016】
ジンバルコントローラ302は、ジンバル角速度コマンドを主コントローラ102から受け取り、姿勢制御を行うために、適切なジンバル制御信号をジンバルハードウェア320に供給し、様々なフィードバック信号をジンバルハードウェア320から受け取る。ジンバルコントローラ302が受け取るフィードバック信号の少なくともいくつかは、供給された制御信号に対するジンバルハードウェア320の応答を表す。ジンバルコントローラ302はまた、これらのフィードバック信号を主コントローラ102に供給する。
【0017】
図の実施形態では、ジンバルハードウェア320は、1つまたは複数のジンバルフレーム322と、1つまたは複数のジンバルアクチュエータ324と、1つまたは複数のジンバルセンサ326とを含む。フライホイールアセンブリ310は、ジンバルフレーム322内で、ジンバル軸の周りで、回転可能に載置される。ジンバル軸は、エネルギー貯蔵フライホイールアセンブリ310の回転軸に対して垂直である。ジンバルアクチュエータ324は、ジンバルフレーム322に結合され、また、ジンバルコントローラ302から制御信号を受け取るように結合される。ジンバルアクチュエータ324は、電気機械アクチュエータとして実装されることが好ましく、少なくとも一次駆動コイル323と、二次駆動コイル325とを含む。一次駆動コイル323および二次駆動コイル325は、それぞれ、ジンバルコントローラ302から供給されたジンバル制御信号を選択的に受け取るように結合され、そのジンバル制御信号に応答して、ジンバルアクチュエータ324に、フライホイールアセンブリ310をジンバルフレーム322に対して移動させるように動作可能である。
【0018】
ジンバルコントローラ302がジンバル制御信号を供給する駆動コイル323、325は、少なくとも部分的に、ジンバルコントローラ302に供給されるフィードバック信号に基づいている。より具体的には、ジンバルコントローラ302は、通常、ジンバル制御信号を、たとえば一次駆動コイル323に供給するように構成される。しかし、ジンバルコントローラ302が、少なくとも部分的に、受け取られたフィードバック信号に基づいて、一次駆動コイル323が動作不能であると決定した場合、ジンバルコントローラ302は、自動的に、ジンバル制御信号を二次駆動コイル325に供給することになる。
【0019】
ジンバルアクチュエータ324は、多数の構成のうちの任意の1つに従って実装することができることが理解されるであろう。たとえば、ジンバルアクチュエータ324は、一次駆動コイル323と二次駆動コイル325が共に単一のロータ327に関連付けられるように実装することができる。そのような場合には、図6および図7で示されているように、駆動コイル323、325は、互いに半径方向に、または軸方向に変位することができる。別法として、図8に示されているように、ジンバルアクチュエータ324は、各駆動コイル323、325がそれ自体の個々のロータ327、329に関連付けられるように実装することができる。
【0020】
一般に知られているように、宇宙機における姿勢制御は、ジンバル角度をあるレート(たとえば、角速度)で変化させることによって実施することができる。したがって、ジンバルコントローラ302は、主コントローラ102から受け取られたコマンドに応答して、適切なジンバル制御信号を、ジンバルアクチュエータの一次コイル323または二次コイル325に供給する。これらの制御信号に応答して、ジンバルアクチュエータ324は、フライホイールアセンブリ310を、ジンバルフレーム322に対して、適切な角速度で適切に位置決めする。ジンバルセンサ326は、ジンバルフレーム322に対するフライホイールの、少なくとも位置およびレートを検知することができるセンサを含み、位置およびレートフィードバック信号を、ジンバルコントローラ302に、また主コントローラ102に供給する。
【0021】
モータ/発電機コントローラ304は、配電系統114のバス電圧を表す信号を受け取り、その信号に応答して、モータ/発電機ハードウェア330を、モータまたは発電機として動作するように構成する。モータ/発電機コントローラ304はまた、主コントローラ102からコマンドを受け取り、そのコマンドに応答して、モータ/発電機の、したがってフライホイールアセンブリ310の回転加速度を制御する。そのために、モータ/発電機コントローラ304は、モータ制御則311または発電機制御則313を選択的に実施するように構成される。モータ/発電機コントローラ304はまた、様々なフィードバック信号をモータ/発電機ハードウェア330から受け取る。モータ/発電機コントローラ304によって受け取られるフィードバック信号の少なくともいくつかは、供給された制御信号に対するモータ/発電機ハードウェア330の応答を表す。モータ/発電機コントローラ304は、モータ/発電機ハードウェア330から受け取るフィードバック信号の1つまたは複数を主コントローラ102に供給する。
【0022】
モータ/発電機ハードウェア330は、モータ/発電機332と、1つまたは複数のセンサ334とを含む。モータ/発電機332は、現在既知の、または将来における多数のモータ/発電機セットのうちの任意の1つとすることができ、少なくとも主ロータ331と、ステータ333とを含む。ロータ331は、永久磁石ロータとして実装されることが好ましく、フライホイールアセンブリ310のロータに結合される。ステータ333は、少なくとも一次ステータコイル335と、二次ステータコイル337とを含む。モータ/発電機の一次ステータコイル335および二次ステータコイル337は、ジンバルアクチュエータ324と同様に、また図6および図7に示されているように、互いに半径方向に、または軸方向に変位することができる。
【0023】
センサ334は、1つまたは複数の温度センサと、1つまたは複数の転流センサ(commutation sensor)とを含む。配電系統114のバス電圧が十分に高いとき、モータ/発電機コントローラ304は、モータ制御則311を実施し、モータ/発電機332は、モータとして動作される。モータとしての動作中には、モータ/発電機332は、回転運動エネルギーを貯蔵するために、フライホイールアセンブリ310をスピンアップする。逆に、配電系統114のバス電圧が何らかの所定の大きさに下降したとき、モータ/発電機コントローラ304は、発電機制御則313を実施し、モータ/発電機332は、発電機として動作される。発電機としてのその動作中には、モータ/発電機332は、フライホイールアセンブリ310をスピンダウンし、フライホイールの貯蔵された回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。先に論じたように、フライホイールアセンブリ310の回転速度の変化は、宇宙機の姿勢に影響を及ぼす可能性がある。したがって、モータモードでも発電機モードでも、フライホイールアセンブリ310は、主コントローラ102によって命じられた加速度で、ある回転速度にスピンアップまたはスピンダウンされる。
【0024】
モータ/発電機332がどのモードで動作していようと、一次ステータコイル335または二次ステータコイル337が、配電系統114に電力を供給し、または配電系統114から電力を受け取っている。好ましくは、モータ/発電機コントローラ304は、配電系統114に電力を供給している、または配電系統114から電力を受け取っている特定のステータコイル335、337を制御する。具体的には、モータ/発電機コントローラ304は、一次ステータコイル335が通常、配電系統114に電力を供給する、または配電系統114から電力を受け取るように構成される。しかし、モータ/発電機コントローラ304が、少なくとも部分的に、受け取られたフィードバック信号に基づいて、一次ステータコイル335が動作不能であると決定した場合、モータ/発電機コントローラ304は、二次ステータコイル337が配電系統114に電力を供給する、または配電系統114から電力を受け取るようにモータ/発電機332を自動的に構成することになる。
【0025】
磁気軸受けコントローラ306はまた、主コントローラ102から1つまたは複数のコマンドを受け取ることができる。磁気軸受けコントローラ306は、制御則に従って、磁気軸受けハードウェア340に適切なコマンド信号を供給し、磁気軸受けハードウェア340から様々なフィードバック信号を受け取る。磁気軸受けコントローラ306によって受け取られるフィードバック信号の少なくともいくつかは、供給された制御信号に対する磁気軸受けハードウェア340の応答を表す。いくつかの実施形態では、磁気軸受けコントローラ306はまた、受け取るフィードバック信号の1つまたは複数を補助軸受けコントローラ308に供給することができる。さらに、ジンバルコントローラ302と同様に、磁気軸受けコントローラ306は、受け取るフィードバック信号の1つまたは複数を主コントローラ102に追加的に供給することができる。
【0026】
磁気軸受けハードウェア340は、エネルギー貯蔵フライホイールアセンブリ310を非接触で回転可能に支持する、または空中浮揚させるように機能し、エネルギー貯蔵フライホイールアセンブリ310用の一次軸受けシステムである。図の実施形態では、磁気軸受けハードウェア340は、能動磁気軸受けを実装し、電磁アクチュエータ342と、たとえば位置センサ、温度センサ、速度センサなど、1つまたは複数のセンサ344とを含む。位置センサ344は、フライホイールロータ(図示せず)の位置を検知し、適切な位置信号を磁気軸受けコントローラ306に供給する。磁気軸受けコントローラ306は、制御則に従って、適切な電流量を電磁アクチュエータ342に供給し、電磁アクチュエータ342は、フライホイールロータを適切に位置決めするように、適切な大きさの磁気力を生成する。能動磁気軸受けが、図3に示されているシステム内で実装されるものとして述べられているが、磁気軸受けハードウェア340は、受動磁気軸受けを実装するように構成することができることを理解されたい。別法として、たとえば非磁性回転要素軸受けなど、他のタイプの軸受けアセンブリを使用し、一次軸受けアセンブリを実装することができる。
【0027】
磁気軸受けアクチュエータ342は、ジンバルアクチュエータ324およびモータ/発電機332と同様に、冗長的に構成される。具体的には、磁気軸受けアクチュエータ342は、一次アクチュエータコイル343と、二次アクチュエータコイル345とを共に含む。一次アクチュエータコイル343および二次アクチュエータコイル345は、それぞれ、磁気軸受けコントローラ306を介して選択的に通電されるように結合される。磁気軸受けコントローラ306が選択的に通電するアクチュエータコイル343、345は、少なくとも部分的に、磁気軸受けコントローラ306に供給されるフィードバック信号に基づいている。より具体的には、磁気軸受けコントローラ306は、通常、たとえば一次アクチュエータコイル343を選択的に通電するように構成される。しかし、磁気軸受けコントローラ306が、少なくとも部分的に、受け取られたフィードバック信号に基づいて、一次アクチュエータコイル343が動作不能であると決定した場合、磁気軸受けコントローラ306は、自動的に、二次アクチュエータコイル345を選択的に通電することになる。図6および図7がさらに示すように、磁気軸受けアクチュエータの一次コイル343および二次コイル345は、ジンバルアクチュエータ324およびモータ/発電機332と同様に、互いに半径方向に、または軸方向に変位することができることを理解されたい。
【0028】
補助軸受けコントローラ308は、補助軸受けハードウェア350から、磁気軸受けハードウェアの動作可能を表す様々な信号、および様々なフィードバック信号を受け取る。これらの信号に応答して、補助軸受けコントローラ308は、補助軸受けハードウェア350に適切なコマンド信号を供給する。具体的には、補助軸受けコントローラ308は、補助軸受けハードウェアの位置を表すフィードバック信号を受け取り、配電系統114のバス電圧を表す信号を追加的に受信することができる。これらの信号に応答して、補助軸受けコントローラは、補助軸受けハードウェア350に適切なコマンド信号を供給する。
【0029】
補助軸受けハードウェア350は、磁気軸受けハードウェア340が動作不能である場合、または他の原因でエネルギー貯蔵フライホイールアセンブリ310を回転可能に支持することが適正にできないとき、それを行うために使用される。補助軸受けハードウェア350は、アクチュエータアセンブリ352と、1つまたは複数の補助(または二次)軸受けアセンブリ354と、1つまたは複数の位置センサ356と、ブレーキアセンブリ358とを含む。アクチュエータアセンブリ352は、補助軸受けコントローラ308からの適切なコマンド信号に応答し、補助軸受けアセンブリ354を係合位置または非係合位置に移動する。補助軸受けアセンブリ354の通常位置である非係合位置では、補助軸受けアセンブリ354は、フライホイールアセンブリ310から解放され、フライホイールアセンブリ310を回転可能に支持しない。より正確には、フライホイールアセンブリ310は、磁気軸受けハードウェア340によって回転可能に支持される。逆に、係合位置では、補助軸受けアセンブリ354がフライホイールアセンブリ310に係合し、フライホイールアセンブリ310を回転可能に支持する。
【0030】
補助軸受けアクチュエータアセンブリ352は、ジンバルアクチュエータ324、モータ/発電機332、磁気軸受けアクチュエータ342と同様に、好適な冗長性を有するように構成される。具体的には、補助軸受けアクチュエータアセンブリ352は、電気機械アクチュエータとして実装されることが好ましく、少なくとも一次駆動コイル353と、二次駆動コイル355とを含む。一次駆動コイル353および二次駆動コイル355は、それぞれ、補助軸受けコントローラ308から供給されたコマンド信号を選択的に受け取るように結合される。補助軸受けアクチュエータアセンブリ352がコマンド信号を供給する駆動コイル353、355は、少なくとも部分的に、補助軸受けアクチュエータアセンブリ352に供給されるフィードバック信号に基づいている。より詳細には、補助軸受けアクチュエータアセンブリ352は、通常、コマンド信号を、たとえば一次駆動コイル353に供給するように構成される。しかし、補助軸受けアクチュエータアセンブリ352が、少なくとも部分的に、受け取られたフィードバック信号に基づいて、一次駆動コイル353が動作不能であると決定した場合、補助軸受けアクチュエータアセンブリ352は、自動的に、コマンド信号を二次駆動コイル355に供給することになる。
【0031】
補助軸受けアクチュエータアセンブリ352は、多数の構成のうちの任意の1つに従って実装することができることが理解されるであろう。たとえば、補助軸受けアクチュエータアセンブリ352は、ジンバルアクチュエータ324と同様に、一次駆動コイル353と二次駆動コイル355が共に単一のロータ357に関連付けられるように実装することができる。さらに、図6および図7に示されているように、駆動コイル353、355は、互いに半径方向に、または軸方向に変位することができ、あるいは、図8に示されているように、各駆動コイル353、355がそれ自体の個々のロータ327、329に関連付けることができる。
【0032】
完全となるように、次に、エネルギー貯蔵フライホイールシステム106の例示的な物理的実施形態を示す図4および図5を参照されたい。これらの図に示されているように、例示的なフライホイールシステム106は、ジンバルフレーム322内で、2つのジンバル軸受け404(1つだけ示されている)を介して回転可能に載置されるハウジングアセンブリ402を含むことが好ましい。単一のジンバルアクチュエータ324が、ジンバルフレーム322上に載置され、上記で指摘されているように、ジンバルコントローラ302(図4および図5には図示せず)から制御信号を受け取り、ハウジングアセンブリ402を適切な角速度で位置決めし、それにより姿勢制御を行う。
【0033】
ハウジングアセンブリ402は、中央セクション406と、2つの端部セクション408および410と、モータ/発電機ハウジング412と、補助軸受けハウジング414と、補助モータハウジング416とを含む。ハウジングアセンブリ402は、共に結合される多数のセクションから構築されるものとして示されているが、一体化された構造物として形成してもよいことを理解されたい。いずれにしても、モータ/発電機ハウジング412は、ハウジングアセンブリの第2の端部セクション410に結合され、補助軸受けハウジング414は、ハウジングアセンブリの第1の端部セクション408に結合され、補助モータハウジング416は、補助軸受けハウジング414に結合される。
【0034】
モータ/発電機332のステータは、モータ/発電機ハウジング412内に載置され、モータ/発電機332のロータは、フライホイールアセンブリ310に結合される。フライホイールアセンブリ310は、図5により具体的に示されているように、シャフトアセンブリ502と、ハブ504と、フライホイールリム506とを含む。シャフトアセンブリ502は、ハウジングアセンブリ402内で、磁気軸受けハードウェア340の2つのセット、または2つの補助軸受けアセンブリ354を介して、回転可能に載置される。ハブ504は、高強度合金から構築されることが好ましく、シャフトアセンブリ502上で載置される。ハブ504は、たとえば中実構成、スポークタイプの構成、またはそれらの組合せを含めて、多数の構成のうちの任意の1つで構築することができる。フライホイールリム506は、ハブ504上で載置され、ハブ504を取り囲み、たとえばフィラメント巻き炭素繊維など、高い強度対密度比を有する材料から構築されることが好ましい。
【0035】
本発明について、好ましい実施形態を参照して述べたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、様々な変更を加えることができること、また均等物を本発明の要素に置き換えることができることが、当業者には理解されるであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなしに、本発明の教示に対して、特定の状況または材料に適合するように多数の修正を加えることができる。したがって、本発明は、この発明を実施することが企図された最良の形態として、開示されている特定の実施形態に限定されないこと、一方、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入る実施形態すべてを含むことになることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】解放された構成で保持システムの例示的な実施形態を含む例示的なエネルギー貯蔵フライホイールシステムの簡易概略図である。
【図2】図1に示されている、しかし係合された構成で例示的な保持システムを有する本システムの簡易概略図である。
【図3】図1のシステムにおいて使用することができる1つのエネルギー貯蔵フライホイールシステムの例示的な実施形態の機能ブロック図である。
【図4】図3のエネルギー貯蔵フライホイールシステムの物理的な実施形態の斜視図である。
【図5】図3のエネルギー貯蔵フライホイールシステムの物理的実施形態の断面図である。
【図6】図3のエネルギー貯蔵フライホイールシステム内で冗長性をもたせるための様々な構成を示す図である。
【図7】図3のエネルギー貯蔵フライホイールシステム内で冗長性をもたせるための様々な構成を示す図である。
【図8】図3のエネルギー貯蔵フライホイールシステム内で冗長性をもたせるための様々な構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵フライホイールシステム(106)であって、
シャフト(502)と、
前記シャフト(502)上に載置されたフライホイールアセンブリ(106)と、
複数の磁気軸受けアセンブリ(340)とを有し、各磁気軸受けアセンブリ(340)は一次アクチュエータコイル(343)と二次アクチュエータコイル(345)とを含み、各アクチュエータコイル(343、345)は、選択的に通電および遮電されるように適合され、且つ各アクチュエータコイル(343、345)が通電されたときに前記フライホイールアセンブリ(106)を非接触で回転可能に載置するように構成され、
前記システム(106)は、さらに、複数の二次軸受けアセンブリ(354)を有し、各二次軸受けアセンブリ(354)は、前記シャフト(502)を選択的に回転可能に支持するように構成され、
前記システム(106)は、さらに、1つまたは複数の前記二次軸受けアセンブリ(354)に結合される二次軸受けアクチュエータアセンブリ(352)を有し、前記二次軸受けアクチュエータアセンブリ(352)は、一次駆動コイル(353)と二次駆動コイル(355)とを含み、各二次軸受けアクチュエータアセンブリの駆動コイル(355)は、アクチュエータ制御信号を選択的に受け取るように適合され、且つ、受け取った信号に応答して、前記二次軸受けアクチュエータアセンブリ(352)が、1つまたは複数の前記二次軸受けアセンブリ(354)を、(i)各二次軸受けアセンブリ(354)が前記シャフト(502)を回転可能に支持する係合位置と、(ii)各二次軸受けアセンブリ(354)が前記シャフト(502)を回転可能に支持しない非係合位置とのうちの一方に移動させるように動作可能であり、
前記システム(106)は、さらに、エネルギー貯蔵フライホイール(106)に結合され且つモータモードまたは発電モードで動作するように構成されたモータ/発電機(330)を有し、前記モータ/発電機(330)は、ロータ(331)とステータ(332)とを含み、前記ステータ(332)が、一次ステータコイル(335)と、二次ステータコイル(337)とを含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステム(106)であって、
前記システム(106)は、さらに、磁気軸受けアセンブリ(340)の動作可能性を表す1つまたは複数の磁気軸受け監視信号を受け取るように適合された磁気軸受け制御回路(360)を有し、前記磁気軸受け制御回路(360)は、前記磁気軸受け監視信号に応答して、磁気軸受け活動化制御信号を、各磁気軸受けアセンブリ(340)の前記一次アクチュエータ(343)または前記二次アクチュエータ(345)に選択的に供給するように構成され、
前記システム(106)は、さらに、二次軸受けアクチュエータアセンブリ(354)の動作可能性を表す1つまたは複数の信号を受け取るように適合された二次軸受け制御回路(308)を有し、前記二次軸受け制御回路(308)は、受け取った信号に応答して、前記アクチュエータ制御信号を、前記一次駆動コイル(353)または前記二次駆動コイル(355)に選択的に供給するように動作可能であり、
前記システム(106)は、さらに、モータ/発電機(330)の動作可能性を表す1つまたは複数の信号を受け取るように適合されたモータ/発電機制御回路(304)を有し、前記モータ/発電機制御回路(304)は、受け取った信号に応答して、前記一次ステータコイルセット(335)または前記二次ステータコイルセット(337)を介して、前記モータ/発電機(330)が電力を供給または電力を引き出すように前記モータ/発電機(330)を構成するように動作可能であることを特徴とするシステム(106)。
【請求項3】
請求項1に記載のシステム(106)であって、
前記二次軸受けアクチュエータアセンブリ(352)の各々が、一次ロータ(327)と、二次ロータ(329)とを含み、
前記二次軸受けアクチュエータの一次駆動コイル(353)が、アクチュエータ制御信号を受け取ったとき、前記二次軸受けアクチュエータアセンブリの一次ロータ(327)を回転させ、
前記二次軸受けアクチュエータの二次駆動コイル(355)が、アクチュエータ制御信号を受け取ったとき、前記二次軸受けアクチュエータアセンブリの二次ロータ(329)を回転させることを特徴とするシステム(106)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−94384(P2008−94384A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−184080(P2007−184080)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)