説明

定着装置およびこれを備える画像形成装置

【課題】整磁合金層を有する発熱制御板を用いつつベルト昇温性能を向上することができる定着装置を提供すること。
【解決手段】電磁誘導加熱方式の定着装置において、定着ベルト101の周経経路の内側に、発熱制御板105と、発熱制御板105を支持する支持部材106とが配置される。発熱制御板105と支持部材106は、発熱制御板105のベルト周方向の中央部150と支持部材106のベルト周方向の中央部160とが空間90を介して非接触であり、発熱制御板105のベルト周方向の側縁部151,152が支持部材106のベルト周方向の側縁部161,162に接して支持される構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置およびこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター等の画像形成装置は、トナーなどの未定着画像が形成されたシートを定着ニップに通すことにより、未定着画像を加熱、加圧により当該シート上に定着する定着装置を備えている。この定着装置には、例えば誘導発熱層を有する定着ベルトの周回経路の外側に励磁コイルを配置し、励磁コイルに交流電流を流すことによって発生する磁束を誘導発熱層へ導いて定着ベルトを発熱させる電磁誘導加熱方式によるものがある。
【0003】
電磁誘導加熱方式の定着装置は、定着ベルトの熱容量を小さく設計することができるので、定着ベルトを所定の定着温度まで昇温するのに要する時間(ウォームアップ時間)を短縮することができる。
ところが、定着ベルトの熱容量が小さくなると、投入電力あたりの昇温速度が速くなるので、幅の狭い小サイズのシートを連続使用すると、定着ベルトにおけるシートが通過する領域(以下、「通紙部」という。)よりもベルト幅方向(用紙幅方向に相当)外側の、シートが通過しない領域(以下、「非通紙部」という。)の温度が通紙部の温度よりも上昇し、周辺部材の熱破壊や劣化を招くという問題が生じる。
【0004】
このような非通紙部の温度上昇を抑制する方法として、定着温度よりも高い所定温度のキュリー点を有する整磁合金層が設けられた板状の部材(以下、「発熱制御板」という。)を定着ベルトの周回経路の内側かつ定着ベルトを介して励磁コイルに対向する位置に配置し、非通紙部の温度が定着温度よりも高いキュリー点まで上昇したときに、発熱制御板の整磁合金層における非通紙部に相当する部分のみが磁性を失うことにより、非通紙部の発熱量を低下させる自己温度制御機能を働かせる方法がある。
【0005】
発熱制御板は、周回駆動中の定着ベルトの内周面に摺接され、定着ベルトとの間に生じる摩擦力により周方向の負荷を受ける。この負荷により発熱制御板が変形することがないように、発熱制御板の厚みを厚くしつつ、発熱制御板のベルト幅方向の両端部を定着ベルトの外側に出して、定着装置の装置筐体に固定することにより、発熱制御板の強度を高める構成がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010‐249917号公報
【特許文献2】特開2010‐2509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、発熱制御板の厚みを厚くすると、それだけ発熱制御板の熱容量が大きくなり、発熱制御板の昇温速度が遅くなることから、定着ベルトから発熱制御板へ熱が移動し易く、さらに装置筐体へ熱が逃げることで、ベルト昇温性能が低下してしまう。
本発明は、発熱制御板を用いつつベルト昇温性能を向上することができる定着装置およびこれを備える画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、未定着画像が形成されたシートを定着ニップに通して、加熱、加圧により当該未定着画像を当該シート上に定着する電磁誘導加熱方式の定着装置であって、周回駆動される、誘導発熱層を有する無端状のベルトと、前記ベルト表面を押圧して当該ベルトとの間に前記定着ニップを確保する加圧部材と、前記ベルトの周回経路の外側に配され、前記ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部と、前記ベルトの周回経路の内側に配され、定着温度よりも高い所定温度を超えると磁性を失う整磁合金層を有する発熱制御板と、前記発熱制御板を支持する支持部材と、を備え、前記発熱制御板は、前記ベルトを介して磁束発生部と対向する第1領域と、第1領域のベルト周方向両側の端部からそれぞれ連続して延在する第2領域とを有し、前記支持部材は、前記ベルトの周回経路の内側において、前記発熱制御板の第1領域と非接触であり、前記第2領域で接して当該第2領域を支持することを特徴とする。
【0009】
また、前記発熱制御板の第1領域は、横断面が前記ベルトの内周面に沿う弧状に形成されてなり、前記支持部材は、前記発熱制御板の第1領域よりも前記磁束発生部から遠い側であり、第1領域とは空間を挟んで対向配置される第3領域と、前記第3領域のベルト周方向両側の端部からそれぞれ連続して延在する第4領域と、を有し、前記支持部材における一方の第4領域が前記発熱制御板における一方の第2領域と接して当該第2領域を支持すると共に、前記支持部材における他方の第4領域が前記発熱制御板における他方の第2領域と接して当該第2領域を支持するとしても良い。
【0010】
ここで、前記支持部材の第3領域は、横断面が前記発熱制御板の第1領域に沿う弧状に形成されてなるとしても良い。
また、装置筐体と、前記ベルトの周回経路の内側に配され、前記ベルトを介して前記加圧部材に押圧されるローラーと、を備え、前記支持部材は、ベルト幅方向長さが前記ベルトよりも長く、長手方向端部が前記ベルトのベルト幅方向外側で前記装置筐体に固定されているとしても良い。
【0011】
さらに、前記発熱制御板の第1領域が周回駆動中のベルトの内周面に接触するとしても良い。
また、前記支持部材にはスリットが設けられており、前記発熱制御板の第2領域の一部分が前記スリットに嵌め込まれているとしても良い。
さらに、前記発熱制御板と前記支持部材とは、前記第2領域での接触部において、締結部材により複数の箇所で締結されているとしても良い。
【0012】
ここで、前記締結部材は、リベットであるとしても良い。
また、前記締結部材は、ハトメであるとしても良い。
本発明に係る画像形成装置は、シート上に未定着画像を形成し、形成された未定着画像を定着部により定着する画像形成装置であって、前記定着部として、上記の定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成すれば、発熱制御板の、支持部材による支持部には、ベルトと発熱制御板間の摩擦力によるベルト周方向の引っ張り力がかかるが、従来のような発熱制御板のベルト幅方向の両端部を装置筐体に直接、固定する構成の場合に、その両端部にかかる、ベルト周方向の引っ張り力とベルト幅方向の長さの積であるモーメントよりも少なくて済む。これにより、そのモーメントの作用による変形防止のために発熱制御板の厚みを厚くする必要がなくなり、従来よりも薄くすることが可能になる。
【0014】
そして、発熱制御板の厚みを薄くすることにより、発熱制御板を低熱容量化することができ、低熱容量化によりベルトからの熱の移動が抑制されるので、従来のように発熱制御板の厚みが厚いことにより熱容量が大きなためにベルトの熱が発熱制御板を介して直接、装置筐体に逃げる構成に比べて、電磁誘導により発せられたベルトの熱が発熱制御板を介して支持部材に移動することが抑制され、ベルト昇温性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンターの全体の構成を示す図である。
【図2】プリンターに設けられる定着部の構成を示す斜視図である。
【図3】定着部の構成を示す横断面図である。
【図4】定着ベルトと発熱制御板の断面を示す図である。
【図5】発熱制御板と支持部材の構成を示す概略斜視図である。
【図6】発熱制御板が支持部材に支持されている様子を図5の矢印Hで示す方向から見た平面図である。
【図7】図3におけるF−F線で定着部を切断したときの矢視断面図である。
【図8】実施例における発熱制御板の構成と2つの比較例における発熱制御板の構成における昇温特性の実験結果を示す図である。
【図9】発熱制御板と支持部材とをハトメ止めにより締結する変形例における定着ローラーの一方の端部側の断面図である。
【図10】ハトメ止めによる変形例の分解斜視図である。
【図11】発熱制御板と支持部材とをリベット止めにより締結する変形例の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る定着装置および画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例にして説明する。
〔1〕プリンターの全体構成
図1は、プリンター1の全体の構成を示す図である。
同図に示すように、プリンター1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像形成部10と、ベルト搬送部20と、給送部30と、定着部40を備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0017】
画像形成部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部10Y〜10Kを備えている。作像部10Yは、感光体ドラム11Yと、その周囲に配設された帯電器12Y、露光部13Y、現像器14Y、一次転写ローラー15Y、感光体ドラム11Yを清掃するためのクリーナなどを備えており、公知の帯電、露光、現像工程を経て感光体ドラム11Y上にY色のトナー像を作像する。この構成は、他の作像部10M〜10Kについて同様であり、対応する色のトナー像が感光体ドラム11M〜11K上に作像される。
【0018】
ベルト搬送部20は、矢印で示す方向に周回走行される中間転写ベルト21を備える。
給送部30は、給紙カセットから記録用のシートSを搬送路35に1枚ずつ繰り出す。
感光体ドラム11Y〜11K上に作像されたトナー像は、感光体ドラム11Y〜11Kの転写位置において転写ローラー15Y〜15Kと感光体ドラム11Y〜11K間に生じる電界による静電力の作用を受けて、周回走行する中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、中間転写ベルト21上において同じ位置に多重転写されるようにタイミングをずらして実行される。
【0019】
この作像動作のタイミングに合わせて、給送部30からは、シートSが搬送されて来ており、そのシートSは、中間転写ベルト21と、これに圧接された二次転写ローラー22の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラー22に印加された二次転写電圧により生じる電界による静電力の作用を受けて、中間転写ベルト21上の各色トナー像が一括してシートS上に二次転写される。二次転写後のシートSは、定着部40に送られる。
【0020】
定着部40は、定着ベルト101を備える電磁誘導加熱方式によるものであり、加熱、加圧により二次転写後のシートS上の各色トナー像を定着させる。定着後のシートSは、排出ローラー対38を介して機外に排出され、収容トレイ39上に収容される。
〔2〕定着部40の構成
図2は、定着部40の構成を示す斜視図であり、図3は、定着部40の構成を示す横断面図である。なお、図2では、説明の都合上、一部を切り欠いて示している。
【0021】
両図に示すように、定着部40は、無端状の定着ベルト101と、定着ローラー102と、加圧ローラー103と、磁束発生部104と、発熱制御板105と、支持部材106などを備える。
<定着ベルト101の構成>
定着ベルト101は、円筒状であり、ここでは半径方向にある程度の力を加えると弾性変形し、変形状態から力を離して自由にすると自身の復元力により元の円筒状に戻る自己形状保持可能なものが用いられている。
【0022】
図4は、定着ベルト101を図3のE−E線で切断したときの断面を示す図であり、定着ベルト101は、その表面側から離型層111、弾性層112、誘導発熱層113が、この順に積層されてなる。離型層111は、例えば厚さが20〔μm〕のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などからなり、弾性層112は、例えば厚さが200〔μm〕のシリコーンゴムやフッ素ゴムなどからなる。
【0023】
誘導発熱層113は、例えば厚さが40〔μm〕のニッケルなどからなり、磁束発生部104から発せられる磁束により発熱する。なお、ニッケルに限られず、電磁誘導加熱方式に適用可能な材料であれば、他の磁性材や非磁性材を用いるとしても良い。
図2に戻って、定着ベルト101の幅方向(定着ローラー102の軸方向に相当。以下、「ベルト幅方向」という。)長さは、最大サイズのシートの幅方向長さよりも長くなっている。同図では、最大サイズよりもサイズの小さい小サイズ紙が定着ニップNを通過している様子を示している。
【0024】
<定着ローラー102の構成>
定着ローラー102は、長尺状の芯金121の周囲に弾性層122が積層されてなり、定着ベルト101の周回経路(定着ベルト101が周回走行するときの経路:以下、「ベルト周回経路」という。)の内側に配される。
軸部としての芯金121は、例えばステンレスや鉄、アルミニウム等からなる。
【0025】
弾性層122は、定着ベルト101の熱を芯金121に逃がさないためのものであり、熱伝導率が低く、耐熱性を有する部材、例えばゴム材や樹脂材のスポンジ体等からなる。
シリコンスポンジ材を用いる場合、厚さが1〜10〔mm〕、より望ましくは2〜7〔mm〕の範囲内のものを用いることができる。弾性層122の硬度は、アスカーC硬度で例えば20〜60度、より望ましくは30〜50度の範囲内のものを用いることができる。なお、定着ローラー102全体としての硬度は、アスカーC硬度で30〜90度程度が好ましい。
【0026】
定着ローラー102は、芯金121の軸方向両端部が定着部の装置筐体191(図7)に軸受部材としてのベアリング125(図7)を介して回転自在に支持されている。
定着ローラー102の外径は、定着ベルト101の内径よりも小さく、定着ローラー102と定着ベルト101は、定着ニップNで接するので、定着ニップN以外の部分で両者間には隙間(空間)110が設けられるようになっている。
【0027】
このような空間110を有する構成をとると、定着ベルト101が定着ローラー102と接する領域が定着ニップNだけになるので、例えば空間がない構成をとった場合に定着ベルト101の発熱層から発せられる熱の一部が定着ローラー102の芯金121を介して芯金121の両端部を回転自在に支持する装置筐体191などに伝わって逃げるといった伝熱ロスの低減を図ることができる。
【0028】
<加圧ローラー103の構成>
加圧ローラー103は、長尺状の芯金131の周囲に弾性層132を介して離型層133が積層されてなり、ベルト周回経路の外側に配置され、定着ベルト101の外側から定着ベルト101を介して定着ローラー102を押圧して、定着ベルト101表面との間に定着ニップNを確保する。
【0029】
芯金131は、例えばステンレスなどからなり、弾性層132は、例えばゴムからなり、離型層133は、例えばPFAチューブなどからなる。
加圧ローラー103は、芯金131の軸方向両端部が定着部の装置筐体191(図7)に軸受部材(不図示)を介して回転自在に支持されると共に、加圧ローラー103は、駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより、図2の矢印Bで示す方向に回転駆動される。この加圧ローラー103の回転に従動して、定着ベルト101が矢印Aで示す方向に沿って周回駆動されると共に、定着ローラー102が同方向に回転駆動される。なお、定着ローラー102を駆動側、定着ベルト101と加圧ローラー103を従動側としても良い。
【0030】
<磁束発生部104の構成>
磁束発生部104は、コイルボビン140と励磁コイル141などを有し、定着ベルト101の周回経路の外側であり定着ベルト101の近辺の位置に、定着ベルト101にベルト幅方向に沿うように配置される。
コイルボビン140は、定着ベルト101の周方向(以下、「ベルト周方向」という。)に沿って円弧状に湾曲する部分を含む板状の部材であり、ベルト幅方向の両端部が装置筐体191に固定されている。
【0031】
コイルボビン140と定着ベルト101の表面との間隔(ベルト−ボビン間距離)が1〜2〔mm〕の範囲内の所定値になるように、コイルボビン140の配設位置が調整される。コイルボビン140の、定着ベルト101側とは反対側には、高透磁率のフェライトなどからなる複数個のコアが配置されている。
励磁コイル141は、ベルト幅方向に沿って長く伸びると共に横断面が円弧状の形状になるようにコイルボビン140に導線を巻き回してなる。励磁コイル141の長手方向長さは、定着ベルト101のベルト幅方向長さよりもやや長くなっている。励磁コイル141は、公知の高周波インバータを含む励磁コイル駆動回路(不図示)に接続され、励磁コイル駆動回路からの交流電力の供給により、定着ベルト101の誘導発熱層113を発熱させるための磁束を発生させる。
【0032】
励磁コイル141から発せられた磁束は、コイルボビン140に配置された各コアにより定着ベルト101に導かれ、定着ベルト101の誘導発熱層113の、主に磁束発生部104に対向する部分を貫き、この誘導発熱層113の部分に渦電流を発生させて誘導発熱層113を発熱させる。この発熱量は、シートに対してその幅方向にどの位置でも略均一になるようになっている。
【0033】
この発熱した部分の熱が定着ベルト101の周回駆動により定着ニップNの位置で加圧ローラー103等に伝わることにより、定着ニップNの領域が昇温される。なお、図示していないが定着ベルト101の温度を検出するためのセンサが別途配置されており、このセンサの検出信号により定着ベルト101の現在の温度を検出し、この検出温度に基づき定着ニップNの温度が目標の定着温度、例えば180〔℃〕に維持されるように励磁コイル141への電力供給が制御される。定着ニップNの温度が目標の定着温度に維持された状態でシートSが定着ニップNを通過する際に、シートS上の未定着のトナー像が加熱、加圧されて当該シートS上に熱定着される。
【0034】
<発熱制御板105の構成>
発熱制御板105は、定着ベルト101と定着ローラー102の間の空間110内に定着ローラー102とは接触しない位置に配設され、ベルト幅方向に沿って長尺であり、その長手方向の長さが定着ベルト101の幅と略同じになっており、発熱制御部材の機能に加えて、周回駆動される定着ベルト101の内周面に接しながら定着ベルト101を周回方向に沿って案内する機能も有する。
【0035】
なお、本実施の形態では、定着ベルト101が周回駆動されていないときでも発熱制御板105が定着ベルト101と接する構成であるが、例えば周回駆動されていないときには僅かな隙間を有して離間しており、周回駆動が開始されると定着ベルト101の触れなどにより定着ベルト101が発熱制御板105に接した状態になり、その接した状態で定着ベルト101を案内する構成であっても良い。
【0036】
発熱制御板105は、図3に示すように横断面において定着ベルト101の曲率に略等しくなるようにベルト周方向に沿って湾曲する円弧状に形成され、ベルト周方向に沿って、中央部150(第1領域)と、中央部150を挟むようにして中央部150のベルト周方向端部から連続して延在する側縁部151,152(第2領域)とを有する。
発熱制御板105の中央部150は、定着ベルト101を介して磁束発生部104と対向する部分であり、支持部材106とは非接触である。
【0037】
発熱制御板105の側縁部151,152は、磁束発生部104とは対向しない部分であり、発熱制御板105の側縁部151が支持部材106のベルト周方向における側縁部161に接して支持され、発熱制御板105の側縁部152が支持部材106のベルト周方向における側縁部162に接して支持されている。
発熱制御板105は、図4に示すように定着ベルト101に近い側から、整磁合金層115と低抵抗導電層116とがこの順に積層されてなり、例えば鍍金、蒸着などにより形成されるが、機械的に2層を貼り合わせる方法による形成することもできる。
【0038】
整磁合金層115は、定着温度よりも所定温度高い温度にキュリー点を有する材料、例えばパーマロイからなり、キュリー点を超えると磁性体から非磁性体に変化し(磁性を失い)、キュリー点以下になると磁性を取り戻す可逆的な変化特性を有する。
比透磁率としては、例えば50〜2000、好ましくは100〜1000の範囲内のものを用いることができる。キュリー点よりも低い温度範囲での体積抵抗率としては、例えば2〜200×10-8〔Ωm〕、好ましくは5〜100×10-8〔Ωm〕の範囲内とすることができる。整磁合金層115の厚さは、例えば100〜1000〔μm〕、好ましくは200〜600〔μm〕の範囲内とすることができる。キュリー点は、目標とする定着温度が約180〔℃〕の場合には、180〜240〔℃〕、好ましくは190〜220〔℃〕の範囲内のものを用いることができる。本実施の形態では、厚さが400〔μm〕、キュリー点が220〔℃〕のパーマロイが用いられる。
【0039】
上記のキュリー点は、パーマロイの成分の比率を変えることにより調整することができ、またクロム、コバルト、モリブデンなどを含む合金とすることによってもキュリー点を調整することもできる。なお、整磁合金層115の素材は、パーマロイに限られず、他の材料を用いることもできる。
低抵抗導電層116は、整磁合金層115よりも電気抵抗率が低い材料、例えば銅またはアルミニウムなどからなる。
【0040】
この整磁合金層115と低抵抗導電層116により、多数枚の小サイズのシートを連続してプリントする場合の過昇温を防止することができる。すなわち、当該プリント中に定着ベルト101のうち、図2に示すようにベルト幅方向に小サイズのシートSが通過しない両端側の部分(非通紙部)Pの温度が、当該シートSに熱が奪われないために定着温度より上昇してキュリー点に達すると、整磁合金層115の非通紙部Pに対応する部分が磁性体から非磁性体に変化する。整磁合金層115の非通紙部Pに対応する部分が非磁性体に変化すると、その変化した部分については磁束発生部104からの磁束が定着ベルト101の誘導発熱層113から発熱制御板105の整磁合金層115を介して低抵抗導電層116に通り抜け易くなる。
【0041】
低抵抗導電層116の非通紙部Pに対応する部分では、当該対応する部分を通過する磁束に対して、打ち消す方向の磁束が発生し、この打ち消す方向の磁束の発生により、定着ベルト101の誘導発熱層113のうち非通紙部Pに対応する部分の発熱が抑制される(自己温度制御機能)。
この自己温度制御機能の作用により非通紙部Pに対応する部分の温度がキュリー点を大幅に超えることがなくなり、定着ベルト101にダメージを与えるような過昇温に至ることを防止することができる。なお、低抵抗導電層116は、整磁合金層115との組み合わせにより自己温度制御機能をより有効に機能させるものではあるが、低抵抗導電層116が設けられていなくても必要な程度に自己温度制御機能が機能する場合には、低抵抗導電層116を設けない構成をとるとしても良い。
【0042】
<支持部材106の構成>
支持部材106は、図3に示すように定着ベルト101と定着ローラー102の間の空間110内であり、発熱制御板105を支持する機能を有するものであり、定着ベルト101にも定着ローラー102にも接していない。
支持部材106は、例えばステンレスや鉄、アルミニウムなどからなるが、耐熱性を有する部材であれば良く、例えば樹脂を用いることもできる。
【0043】
支持部材106は、横断面において発熱制御板105よりも曲率が小さくなるようにベルト周方向に沿って湾曲する弧状に形成される中央部160(第3領域)と、ベルト周方向に中央部160を挟むように中央部160のベルト周方向端部から連続して延在されている側縁部161,162(第4領域)とを有する。
支持部材106の中央部160は、発熱制御板105の中央部150と対向する部分であり、発熱制御板105の中央部150よりも磁束発生部104から遠い側であり、発熱制御板105の中央部150とは非接触、すなわち発熱制御板105の中央部150と支持部材106の中央部160との間に空間90が介在されてなる。
【0044】
支持部材106の側縁部161,162は、発熱制御板105の側縁部151,152を支持する。
図5は、図3の矢印Gで示す方向から発熱制御板105と支持部材106だけを抜き出して見たときの発熱制御板105と支持部材106の構成を示す概略斜視図である。なお、図5では、ベルト幅方向の一方端側だけの構成を示しており、他方端側については省略しているが、基本的に同じ構成になっている。
【0045】
図5に示すように発熱制御板105は、中央部150が弧状に湾曲しており、側縁部151,152が平板状に形成されてなる。
一方の側縁部151には、ベルト幅方向に沿って所定の間隔をおいた複数の位置にベルト周方向に沿った切り込み153,153・・が入れられており、これらの切り込み153により、側縁部151が第1部分155と第2部分156とに分離され、第1部分155と第2部分156とがベルト幅方向に交互に設けられる構成になっている。
【0046】
同様に、他方の側縁部152にも、切り込みにより、側縁部152が第1部分158と第2部分159とに分離され、第1部分158と第2部分159とがベルト幅方向に交互に設けられる構成になっている。
一方、支持部材106は、中央部160が弧状に湾曲しており、側縁部161,162が平板状に形成されてなる。
【0047】
中央部160と一方の側縁部161とは、段差部163を介して接続され、中央部160と他方の側縁部162とは、段差部164を介して接続されている。
段差部163には、ベルト幅方向に沿って長いスリット165が穿設されており、段差部164にも、同様にベルト幅方向に沿って長いスリット166が穿設されている。スリット165,166は、それぞれがベルト幅方向に沿って間隔をおいて複数、設けられているが、同図では1つだけが示されている。
【0048】
このような構成において、発熱制御板105の第1部分155が支持部材106の側縁部161の上面にオーバーラップされつつ、発熱制御板105の第2部分156が支持部材106のスリット165に嵌め込まれた状態で、発熱制御板105の側縁部151が支持部材106の側縁部161に接着などにより固定支持される。
同様に、発熱制御板105の第1部分158が支持部材106の側縁部162の下面にオーバーラップされつつ、発熱制御板105の第2部分159が支持部材106のスリット166に嵌め込まれた状態で、発熱制御板105の側縁部152が支持部材106の側縁部162に接着などにより固定支持される構成になっている。
【0049】
図6は、発熱制御板105の側縁部151が支持部材106の側縁部161に支持されている様子を図5の矢印Hで示す方向から見た平面図であり、定着ローラー102との位置関係も示されている。なお、発熱制御板105の側縁部151が支持部材106の側縁部161にオーバーラップしている様子を判り易くするために、発熱制御板105と支持部材106に異なる模様を付している。
【0050】
同図に示すように、発熱制御板105の側縁部151のうち、第1部分155が支持部材106の側縁部161の上面にオーバーラップしており、オーバーラップ部分では支持部材106の側縁部161が発熱制御板105の側縁部151に隠れて見えないが、発熱制御板105の第2部分156が支持部材106のスリット165に嵌め込まれている部分だけ、支持部材106の側縁部161の上面が見えるようになっている。
【0051】
同図では、発熱制御板105の側縁部151に3つの第2部分156が設けられており、3つの第2部分156に対応する3つのスリット165が支持部材106に設けられている例が示されている。同図は、発熱制御板105の一方の側縁部151が支持部材106の側縁部161に支持されている様子を示すものであるが、発熱制御板105の他方の側縁部152が支持部材106の側縁部162に支持される構成も同様である。
【0052】
図5に戻って、支持部材106の側縁部161,162のベルト幅方向の一方端には、L字状の取付部171,172が設けられている。この取付部171,172は、装置筐体191(図7)に固定される。
図7は、図3におけるF−F線で定着部40を切断したときの矢視断面図であり、ベルト幅方向の一方端側だけを示している。
【0053】
同図に示すように、支持部材106は、その取付部171,172の先端部が装置筐体191に接着やネジ留めなどにより固定されており、この構成はベルト幅方向の他方端側も同様になっている。
この固定支持により支持部材106と装置筐体191との間に、周回駆動される定着ベルト101と発熱制御板105との間に生じる摩擦力が発熱制御板105を介して支持部材106に作用したときに、その摩擦力により支持部材106が変形することのないような強度が確保される。
【0054】
〔3〕実施例と比較例
図8は、実施例における発熱制御板105の構成と2つの比較例における発熱制御板の構成における昇温特性の実験結果を示す図である。同図では、定着ベルト101を周回駆動状態にして励磁コイル141に1400〔W〕の電力を供給したときに、定着ベルト101のベルト幅方向中央部の温度が160〔℃〕に達するまでの昇温時間を測定した結果を示している。
【0055】
実施例は、発熱制御板105における整磁合金層115の厚みを0.4〔mm〕、低抵抗導電層116の厚みを0.3〔mm〕、支持部材106の厚みを1.0〔mm〕とした場合の構成例である。
比較例1は、支持部材106を用いず、低抵抗導電層を支持部材と兼用する構成例であり、整磁合金層の厚みを0.4〔mm〕、低抵抗導電層の厚みを、発熱制御板の強度を確保できる厚みである0.8〔mm〕として、発熱制御板のベルト幅方向の両端部を装置筐体191に直接、固定する構成としたものである。
【0056】
このように発熱制御板のベルト幅方向の両端部を装置筐体191に直接、固定する構成(従来構成に相当)をとる場合、周回駆動される定着ベルトと発熱制御板間の摩擦力によるベルト周方向の引っ張り力とベルト幅方向の長さの積であるモーメントの作用を発熱制御板のベルト幅方向の両端部だけで受けることになる。
発熱制御板へのモーメントの作用が大きくなると、発熱制御板にベルト周方向に捻れようとする力が大きくかかるようになるので、発熱制御板の変形防止のために、発熱制御板の厚みをより厚く、本比較例1では1.2〔mm〕にして、発熱制御板の強度が高められている。
【0057】
比較例2は、実施例の発熱制御板105と支持部材106とを一体構成した例(発熱制御板105と支持部材106間に空間90が介在しない構成例)であり、整磁合金層、低抵抗導電層、支持部材の厚みは、実施例と同じになっている。
同図から、実施例と比較例1,2とでは、実施例の方が比較例1,2よりも昇温時間が短くなっていることが判る。
【0058】
比較例1では、実施例よりも発熱制御板の低抵抗導電層の厚みが厚い分、熱容量が大きくなっており、熱容量が大きくなった分、昇温時間が長くなったものと推定される。
一方、比較例2では、整磁合金層、低抵抗導電層、支持部材の厚みが実施例と同じであるが、発熱制御板と支持部材とが一体構成されており、実施例のように発熱制御板105の中央部150(磁束発生部104と対向する部分)と支持部材106の中央部160との間に空間90が介在しない。
【0059】
従って、定着ベルト101における磁束発生部104と対向する部分(主な発熱領域)をみたとき、実施例では、定着ベルト101の主な発熱領域の熱が発熱制御板105の中央部150に伝わるが、支持部材106の中央部160には、空間90が介在されるために伝わり難い。一方、比較例2では、発熱制御板と支持部材が一体なので、定着ベルト101の主な発熱領域の熱が発熱制御板を介して支持部材に伝わり易い。
【0060】
このことは、定着ベルト101の主な発熱領域では、定着ベルト101の熱が伝わる支持部材が比較例2では存在するが、実施例では実質、存在しないといえ、この意味で、比較例2の方が実施例よりも熱容量が大きくなり、比較例2の方が実施例よりも昇温時間が長くなったものと推定される。
実施例では、発熱制御板105を支持する支持部材106を、発熱制御板105の中央部150では非接触としつつ、発熱制御板105の側縁部151,152で支持し、かつベルト幅方向の両端部が装置筐体191に固定される形状に構成した。
【0061】
従って、定着ベルト101の主な発熱領域では、発熱制御板105と支持部材106間に介在する空間90により、定着ベルト101の熱が支持部材106に伝わり難いために、実質、発熱制御板105だけが熱容量の大きさを決める部材になり、比較例1,2よりも低熱容量化することができ、昇温特性を向上することができる。
また、発熱制御板105のベルト周方向の側縁部151,152を支持部材106で支持する構成なので、周回駆動される定着ベルト101と発熱制御板105間の摩擦力によるベルト周方向の引っ張り力を受けるが、上記のモーメントよりも少なくて済み、発熱制御板105の厚みを厚くして強度を上げる必要がなくなり、比較例1の構成よりも薄くすることができる。さらに、定着ベルト101がベルト幅方向に長尺であることから、ベルト幅方向の端部を装置筐体191に支持する比較例1の構成に比べて、ベルト幅方向に沿って発熱制御板105の、支持部材106との支持領域を拡長することもできる。
【0062】
これにより、発熱制御板105の変形を防止し、かつ自己温度制御機能を作用させることができる範囲で、発熱制御板105の厚みを薄くして、発熱制御板105の変形を防止しつつ低熱容量化を図ることができる。
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0063】
(1)上記実施の形態では、発熱制御板105と支持部材106とを接着により固定支持するとしたが、発熱制御板105と支持部材106とを締結することができれば、これに限られることはない。例えば、ハトメ止めを用いることができる。
図9は、ハトメ止めを用いる構成例の定着ローラー102の一方の端部側の断面図であり、図10は、発熱制御板105と支持部材106だけを抜き出して示す分解斜視図である。図9と図10に示すように、発熱制御板105と支持部材106には、それぞれハトメ201を通すための貫通孔211、212が設けられている。
【0064】
発熱制御板105の側縁部151が支持部材106の側縁部161に重ねられた状態で、ハトメ201の先端が発熱制御板105の貫通孔211、支持部材106の貫通孔212をこの順に通り抜け、支持部材106の裏面側で座金202にかしめられることにより、発熱制御板105の側縁部151と支持部材106の側縁部161とが締結される。
同様に、発熱制御板105の側縁部152が支持部材106の側縁部162に重ねられた状態で、ハトメ201の先端が発熱制御板105の貫通孔211、支持部材106の貫通孔212をこの順に通り抜け、支持部材106の裏面側で座金202にかしめられることにより、発熱制御板105の側縁部152と支持部材106の側縁部162とが締結される。
【0065】
この締結は、ここでは、発熱制御板105の側縁部151と支持部材106の側縁部161との間に、その締結部分(側縁部151、161)における厚み方向に所定の大きさ、例えば0.1〔mm〕程度の隙間が設けられるように行われる。この隙間を設けることは、発熱制御板105の側縁部152と支持部材106の側縁部162との間についても同様である。
【0066】
ハトメ201による締結箇所は、発熱制御板105の側縁部151と支持部材106の側縁部161についてはベルト幅方向に間隔を開けてなる3か所であり、発熱制御板105の側縁部152と支持部材106の側縁部162についても、ベルト幅方向に間隔を開けてなる3か所になっている。
この3か所のうち、中央の締結箇所は、発熱制御板105のベルト幅方向中央に位置しており、残りの2つ(外側)の締結箇所は、それぞれ中央の締結箇所からベルト幅方向に同じ距離だけ離れたところに位置にしている。
【0067】
図10には、中央の締結箇所を200a、外側の締結箇所を200bで示しており、中央の締結箇所200aの貫通孔211、212が丸穴になっているのに対し、外側の締結箇所200bの貫通孔211、212については、ベルト幅方向に沿って長い長穴(小判型)の形状になっている。
外側の締結箇所における貫通孔の形状を長穴にすることにより、この長穴がベルト幅方向の遊びになり、また、発熱制御板105と支持部材106間に隙間(上記例では、0.1〔mm〕)を設けることにより、この隙間が発熱制御板105の厚み方向の遊びになる。これらの遊びを設けることにより、例えば溶接やねじ止めなどの固定方法に比べて、発熱制御板105の整磁合金層115と低抵抗導電層116および支持部材106のそれぞれの熱膨張率差により生じる、各部材のねじれや歪を吸収して、発熱制御板105と支持部材106の変形を抑制することができる。
【0068】
発熱制御板105と支持部材106の変形量が大きくなれば、周回中の定着ベルト101の裏面が発熱制御板105の側縁部151、152に接することによる定着ベルト101の摩耗や、回転中の定着ローラー102の表面が支持部材106の側縁部161、162に接することによる定着ローラー102の摩耗が進み易くなるが、本変形例の構成をとることにより、定着ベルト101と定着ローラー102の摩耗を抑制して、定着ベルト101と定着ローラー102の耐久性の向上を図ることができる。
【0069】
なお、ハトメ止めを行う場合、ハトメ201の頭部201aが発熱制御板105の表面から突出したようになり、座金202が支持部材106の裏面から突出したようになる。
本変形例では、その突出量が座金202側の方がハトメ201の頭部201a側よりも大きくなるので、突出量の大きい方が定着ローラー102に対向する側になる、換言すれば突出量の小さい方である頭部201aの位置する側が、定着ベルト101に対向する側になるようにしている。
【0070】
図9に示すように定着ローラー102と支持部材106の側縁部161、162との間隔をα、定着ベルト101と発熱制御板105の側縁部151、152との間隔をβとすると、α>βの関係があり、間隔βが狭ければ、周回時の振動による定着ベルト101の位置変動により、定着ベルト101が発熱制御板105の側縁部151、152に接触し易くなる。このようなα>βの関係がある場合、突出量の少ない方である頭部201a側が定着ベルト101側に位置するようにハトメ止めを行うことにより、周回中の定着ベルト101と発熱制御板105の側縁部151、152との接触を回避することができる。
【0071】
なお、ハトメ止めによる締結箇所の数と位置、発熱制御板105と支持部材106間の隙間の値が上記に限られることはない。装置構成に応じて適した数などが決められる。
また、貫通孔211、212の形状を、締結箇所によって丸穴と長穴のいずれかにする構成例を説明したが、これに限られない。例えば、上記の隙間を設けることにより、熱膨張率差の影響を抑制できるのであれば、全ての貫通孔を丸穴にするとしても良い。また、所定の大きさの隙間を設けなくても、熱膨張率差の影響を吸収できるのであれば、隙間を設けずに、発熱制御板105と支持部材106を密着させる構成とすることもできる。
【0072】
さらに、ハトメ201と座金202の2つの部材を用いる方法を説明したが、筒状のハトメを1つの部材として、そのハトメの両端をかしめる方法などをとることもできる。
また、発熱制御板105と支持部材106を締結する締結部材であれば、ハトメ201に限られることはなく、ハトメ201に代えて、例えば図11に示すように締結部材としてのリベット221によるリベット止めを用いるとしても良い。
【0073】
リベット止めを用いる場合も、ハトメ止めと同様に、発熱制御板105と支持部材106の熱膨張率差により生じるねじれなどを吸収して、発熱制御板105と支持部材106のそれぞれの変形を抑制するという効果を得ることができる。
(2)上記実施の形態では、支持部材106の中央部160の形状が横断面で曲面状になるようにしたが、発熱制御板105の中央部150に非接触であれば、曲面状に限られず、例えば1以上の角部を有する形状としても良い。
【0074】
また、支持部材106が中央部160と側縁部161,162とを有する構成例を説明したが、これに限られない。例えば、中央部160を設けない構成をとることもできる。
実施の形態のように中央部160と側縁部161,162が一体構成されていれば、側縁部161,162が中央部160を介して接続されるので、支持部材106の強度が増すと共に、定着部40の製造時に、発熱制御板105を支持部材106に支持させた状態で、これを一体として、定着ベルト101に挿入させる作業を行えば良く、組立作業性の向上を図れるが、例えば中央部160を設けずに、側縁部161,162だけの構成をとれば、中央部160を設けなくて済む分、これに使用する材料を節約することができ、コスト的に有利になる。
【0075】
(3)発熱制御板105を支持部材106に支持する方法として、上記実施の形態では、発熱制御板105の側縁部151,152の第2部分156,159を支持部材106の段差部163,164に設けられたスリット165,166に嵌め込んだ状態で、発熱制御板105の側縁部151,152を支持部材106の側縁部161,162に接着する方法をとったが、支持方法がこれに限られないことはいうまでもない。嵌め込みだけで支持状態を維持できるのであれば、接着が不要であり、また段差部の有無に関わらず、溶接や機械的な固定など他の方法などをとることができる。
【0076】
さらに、支持部材106の取付部171,172を装置筐体191に固定するとしたが、定着ベルト101の周回駆動中に発熱制御板105が定着ベルト101の内周面に接する構成であれば、固定に限られない。例えば、発熱制御板105が定着ベルト101の内周面に対して接離方向に移動可能になるように、支持部材106を装置筐体191に可動可能に支持しつつ、モータなどのアクチュエータの駆動力により、定着ベルト101の周回駆動中に、発熱制御板105が定着ベルト101の内周面に接する位置まで支持部材106を移動させる構成をとることも可能である。
【0077】
(4)上記実施の形態では、定着ベルト101の周回経路の内側に定着ローラー102を配置する構成例を説明したが、定着ベルト101の周回経路の外側から加圧ローラー103などの加圧部材に定着ベルト101を介して押圧され、定着ニップNを確保可能な被加圧部材であれば、ローラー形状のものに限られない。
例えば、ローラーに代えて固定パッドを用いることもできる。固定パッドを用いる場合、支持部材106の取付部171,172が定着ベルト101の外側において装置筐体191に固定支持される構成に代えて、例えば定着ベルト101の周回経路の内側でその固定パッドに固定支持される構成をとることもできる。
【0078】
また、加圧部材として加圧ローラー103を設ける構成例を説明したが、これに限られず、例えば加圧パッドなどを用いるとしても良い。
(5)上記実施の形態では、発熱制御板105の、定着ベルト101を介して磁束発生部104に対向する領域(第1領域)として、ベルト周方向の中央部150を、コイルボビン140のベルト周方向一方端から他方端までの領域とする構成例を説明したが、これに限られない。コイルボビン140上において励磁コイル141(コイルボビン140に導線を巻き回してなる全体の領域)とコアとを含む部分を磁束発生部と捉えて、これに対向する領域を第1領域とすることもでき、また励磁コイル141だけを磁束発生部と捉えて、これに対向する領域を第1領域とすることもできる。
【0079】
(6)上記実施の形態では、本発明に係る定着装置および画像形成装置をタンデム型カラープリンターに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、誘導発熱層を有する無端状のベルトの周回経路の外側に、ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部を配置しつつ、ベルトの周回経路の内側に、定着温度よりも高い所定温度(キュリー点)を超えると磁性を失う整磁合金層を有する発熱制御板を配置する構成の電磁誘導加熱方式の定着装置およびこれを備える画像形成装置であれば、例えば複写機、ファクシミリ装置、多機能複合機(MFP:Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
【0080】
なお、定着ベルト101、定着ローラー102、発熱制御板105、支持部材106等の各部材について、その寸法、形状、材料等が上記のものに限られないことはいうまでもなく、装置構成に応じて、その構成に適した寸法、形状等が決められる。
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンター
40 定着部
90、110 空間
101 定着ベルト
102 定着ローラー
103 加圧ローラー
104 磁束発生部
105 発熱制御板
106 支持部材
113 誘導発熱層
115 整磁合金層
116 低抵抗導電層
141 励磁コイル
150 発熱制御板のベルト周方向の中央部
151,152 発熱制御板のベルト周方向の側縁部
160 支持部材のベルト周方向の中央部
161,162 支持部材のベルト周方向の側縁部
171、172 取付部
191 装置筐体
201 ハトメ
221 リベット
N 定着ニップ
P 非通紙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着画像が形成されたシートを定着ニップに通して、加熱、加圧により当該未定着画像を当該シート上に定着する電磁誘導加熱方式の定着装置であって、
周回駆動される、誘導発熱層を有する無端状のベルトと、
前記ベルト表面を押圧して当該ベルトとの間に前記定着ニップを確保する加圧部材と、
前記ベルトの周回経路の外側に配され、前記ベルトの誘導発熱層を発熱させるための磁束を発生させる磁束発生部と、
前記ベルトの周回経路の内側に配され、定着温度よりも高い所定温度を超えると磁性を失う整磁合金層を有する発熱制御板と、
前記発熱制御板を支持する支持部材と、を備え、
前記発熱制御板は、
前記ベルトを介して磁束発生部と対向する第1領域と、第1領域のベルト周方向両側の端部からそれぞれ連続して延在する第2領域とを有し、
前記支持部材は、
前記ベルトの周回経路の内側において、前記発熱制御板の第1領域と非接触であり、前記第2領域で接して当該第2領域を支持することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記発熱制御板の第1領域は、
横断面が前記ベルトの内周面に沿う弧状に形成されてなり、
前記支持部材は、
前記発熱制御板の第1領域よりも前記磁束発生部から遠い側であり、第1領域とは空間を挟んで対向配置される第3領域と、
前記第3領域のベルト周方向両側の端部からそれぞれ連続して延在する第4領域と、
を有し、
前記支持部材における一方の第4領域が前記発熱制御板における一方の第2領域と接して当該第2領域を支持すると共に、前記支持部材における他方の第4領域が前記発熱制御板における他方の第2領域と接して当該第2領域を支持することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記支持部材の第3領域は、
横断面が前記発熱制御板の第1領域に沿う弧状に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
装置筐体と、
前記ベルトの周回経路の内側に配され、前記ベルトを介して前記加圧部材に押圧されるローラーと、を備え、
前記支持部材は、
ベルト幅方向長さが前記ベルトよりも長く、
長手方向端部が前記ベルトのベルト幅方向外側で前記装置筐体に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記発熱制御板の第1領域が周回駆動中のベルトの内周面に接触することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記支持部材にはスリットが設けられており、
前記発熱制御板の第2領域の一部分が前記スリットに嵌め込まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記発熱制御板と前記支持部材とは、
前記第2領域での接触部において、締結部材により複数の箇所で締結されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記締結部材は、
リベットであることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記締結部材は、
ハトメであることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項10】
シート上に未定着画像を形成し、形成された未定着画像を定着部により定着する画像形成装置であって、
前記定着部として、請求項1〜9のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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