説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】安価な構成でシート冷却を行いつつ定着温度の低下を防止することができるようにする。
【解決手段】定着器10からシート19を搬出するシート搬出口10fの下流直後の搬送路13aでシート19の表面に向かって冷却風14aを送風する冷却装置4と、定着器10の上方に設けられ、定着器10内の高湿高温空気10eを強制的に排気する排気装置15と、シート搬出口10fに位置し、冷却装置14手段の配置側でシート19の全幅にわたって当接する遮蔽部材(第1の搬送ローラ)16と、シート搬出口10fのシート19を挟んで遮蔽部材16と対向する側に設けられ、遮蔽部材16とニップするコロを有する通気性部材(第2の搬送ローラ)17とを備え、前記コロの両側面側の空間部17bを定着器10内と外部とを連通する開口部とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に係り、特に、定着装置から排紙される用紙、記録紙、転写紙、OHPシートなどのシート状記録媒体(以下、本明細書及び特許請求の範囲では、シートと称する。)を冷却する冷却手段を備えた定着装置、及びこの定着装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、デジタル複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着器を出たシートは高温になっており、ガイド板へのトナー再固着や紙同士の接着といった問題が生じることからシート冷却方式として定着器シート搬送出口近傍においてファンを使用した空冷方式の冷却装置がある。このように定着器シート搬送出口近傍でシートに風を当てた場合、シートに当たった風が紙面を伝って定着器の温度が低下してしまいトナー定着性が低下する。そこで、シート搬送性を確保しつつ定着器に風が流れないよう定着器シート搬送出口を塞ぎ、定着温度低下を防ぐことが行われている。
【0003】
しかし、今までのシート搬送性を確保しつつ定着器に風が流れないよう定着器シート搬送出口を塞ぐ方式では、定着器の内部に結露が発生し、それにシートが接触することによりシート搬送性やシート品質の悪化を招き、第2面印刷時の画像不良等が発生することがあった。なぜなら定着器シート搬送出口を塞いだ場合、定着時にシートに含まれていた水分が蒸発して発生する水蒸気が、定着器内部こもりがちになり、結露が発生するためである。
【0004】
そこで、例えば特許文献1(特開2007−86509号)には、定着器において発生した水蒸気がシートガイド板等の部材に結露することを、ウォームアップを要することなく確実に防止するため、搬送される記録媒体上に形成されたトナー像を加熱して前記記録媒体上に定着する加熱手段と、前記加熱手段を格納し、前記記録媒体の搬送路上に前記記録媒体が通過可能な形状及び大きさのスリットを有する容器と、前記スリットを塞ぐように配置され、前記記録媒体の移動を許容しつつ前記記録媒体の全幅を挟持する挟持手段とを備える定着器が提案されている。この発明によれば、トナー像の転写された紙が搬送されてくると、加圧ユニットは紙を加熱ロールに押圧し、加熱ロールは加熱によりトナー像を紙上に定着させ、その際に紙が含む水分は水蒸気となるが、そのように発生した水蒸気は、定着器の容器に設けられた排紙用のスリットを塞ぐように配置されたニップロールによりトラップされ、ダクトを介して画像形成装置の筐体外へ排出され、その結果、筐体内における結露が確実に防止されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の発明では、定着器シート搬送出口をローラ対によって塞ぐことによって水蒸気を定着器外部へ漏れないようにし、また、定着器内部には発生した水蒸気を排気するダクトを設け、結露を防止しているが、結露防止のために定着器内部に排気ダクトを設けると、定着器のコストアップを招くことになり、また、サイズアップにも繋がることになる。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、安価な構成でシート冷却を行いつつ定着温度の低下を防止することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の手段は、画像形成後の画像をシート上に定着させる定着器を有する定着装置であって、前記定着器からシートを搬出するシート搬出口の下流直後の搬送路で前記シートの表面に向かって冷却風を送風する冷却手段と、定着器の上方に設けられ、当該定着器内の高湿高温空気を強制的に排気する排気手段と、前記シート搬出口に位置し、前記シートの前記冷却手段の配置側で当該シートの全幅にわたって当接する遮蔽手段と、前記シート搬出口の前記シートを挟んで前記遮蔽部材と対向する側に設けられ、前記定着器内と連通する開口手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合、前記遮蔽手段をシート全幅に当接して当該シートを搬送する第1の搬送ローラから構成することができる。また、前記開口手段を1以上の点で前記第1の搬送ローラとニップするコロを有する第2の搬送ローラから構成し、前記コロの両側面側の空間部を開口部として形成することもできる。また、前記開口手段を、前記第1の搬送ローラとシート全幅にわたってニップするローラを有する第3の搬送ローラと、前記シート搬出口において当該第3の搬送ローラの前記第1の搬送ローラに対して背後側に形成された開口部と、から構成することもできる。
さらに、前記冷却手段はシート搬送後も一定時間冷却風を送風し、前記冷却手段の送風方向に冷却風を前記定着器からの高湿高温空気をともに前記排出手段に導くガイド部材を設けることができる。これにより効率的に冷却することが可能となる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段に係る定着装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0010】
なお、後述の実施形態では、シートは符号19に、定着器は符号10に、シート搬出口は符号10fに、搬送路は13a,13bに、冷却風は符号14aに、冷却手段は冷却装置14に、高湿高温空気は符号10eに、排気手段は排気装置15に、遮蔽手段は遮蔽部材16に、開口手段は通気性部材17、開口部17a、開口部21に、第1の搬送ローラは遮断部材16に、第2の搬送ローラは通気性部材(コロ)17に、コロの両側面側の空間部は符号17bに、第3の搬送ローラは搬送部材18に、ガイド部材は符号15aに、画像形成装置は符号1に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価な構成でシート冷却を行いつつ定着温度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1における定着器から排紙ローラ対に至る排紙搬送路近傍の気流の状態について示す図である。
【図3】図2に示した遮断部材と通気性部材の構成を示す要部斜視図である。
【図4】冷却装置の送風域からシートが抜けた状態での気流の状態を示す説明図である。
【図5】通気性部材の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、シート冷却風によってシート冷却を行う一方、シート冷却風を遮断する部材を定着器のシート搬出口に設け、定着器温度低下を防止し、かつ、上記遮断する部材を設けることによって陥りやすい定着器搬送下流側での結露を定着器より発生する水蒸気の換気を効率よく行うことにより防止することが特徴となっている。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。同図において、画像形成装置1は、原稿を読み取る原稿読取部2、作像エンジンを有し、シートに画像を形成する画像形成部3、及び画像形成部に前記シートを供給する給紙部4から基本的に構成され、複写機として機能する。
【0016】
原稿読取部2は、原稿を原稿台から読取位置まで給紙し、読取位置でスキャナにより原稿上の画像を光学的に読み取ってデジタルデータの画像データに変換し、画像形成部3の画像処理部に送る。画像形成部3では、受け取った画像データを作像可能なデータに変換し、給紙部4から給紙されるシート上に作像エンジンによって可視画像を形成し、定着装置10で加熱及び加圧して画像をシートに定着し、排紙ローラ対11から排紙トレイ12に排紙する。なお、作像エンジンは本実施形態では、電子写真方式でモノクロあるいはカラーの画像を形成する。
【0017】
給紙部4には、給紙装置5が配置されており、給紙装置5は、積層されて配置されたシート束6(複数のシート)の最上面に当接し、シート束6から最上部の1枚のシート6aを分離して搬送方向下流側に給紙する分離部7を備えている。シート6aは、分離部7により分離されて搬送路13内に搬入される。搬送路13内に搬入されたシート6aは、搬送ローラ対8により搬送路13に沿って上方に搬送され、転写装置9において画像形成部3で形成されたトナー画像が転写される。このトナー画像が定着器10で前述のようにして定着され、排紙トレイ12に排紙される。なお、画像形成装置1は、複写機として構成する他に、プリンタ、ファクシミリ装置、印刷機またはデジタル複合機として構成することもできる。
【0018】
また、本実施形態では、定着器10と排紙ローラ対11の間にシートの冷却装置14と排気装置15を備えている。冷却装置14は定着器10から排紙トレイ12側に開口する排紙搬送路13aの湾曲部13bの内側に、排気装置15は前記湾曲部13bの外側にそれぞれ配設されている。定着器10のシート搬送口10fは、冷却装置側14ではシート全幅でシートと当接し、かつ搬出口10fを塞ぐ遮断部材(第1の搬送ローラ)16が設けられ、シート冷却装置14の対向側には通気性を持たせた通気性部材17が設けられている。
【0019】
図2は、図1における定着器10から排紙ローラ対11に至る排紙搬送路13a近傍の気流の状態について示す図である。
同図において、冷却装置14は排紙搬送路13aの湾曲部13bの内側の定着器10の定着ローラ10a側に配置され、同側の定着器10のシート搬出口10fには遮断部材16が配置されている。遮断部材16は冷却装置14からの冷却風14aが定着器10の内部に入り込まないようシート19の全幅に当接し、かつ定着器10の定着ローラ10a側の外壁10cの気密性を保つよう構成されている。具体的には図示しないシール部材あるいは遮断部材16を覆う部材によって気密性を保つようにされている。
【0020】
遮断部材16に対向する通気性部材17は定着器10の通気性を保つよう定着器10の加圧ローラ10b側の外壁10dと併せて開口部17bが形成されるよう構成されている。通気性部材17は軸17aに軸着された1以上のコロによって構成され(第2の搬送ローラ)、第1の搬送ローラからなる遮断部材16とニップし、シートはこのニップ間を通って排紙される。また、開口部17bは図3に示すように隣接する通気性部材(コロ)17間の間隙によって形成される。
【0021】
定着器10の上方には排気装置15が設けられており、定着器10内部から上昇する高温高湿の空気10eを効率よく排出する。搬送ガイド20a、20bは搬送面に図示しない開口部が設けられており、通気性を確保している。また、シート19は定着ローラ10a、加圧ローラ10bのニップを通過する際に、シート19内に含まれている水分が水蒸気に変化するが、水蒸気は低温側の加圧ローラ10b側から多く放出されるために、本実施形態では、通気性部材17は加圧ローラ10b側に配置されている。
【0022】
図3は図2に示した遮断部材16と通気性部材17の構成を示す要部斜視図である。遮断部材16と通気性部材17はシート19の搬送性を確保するためローラ対として構成されている。前述のように遮断部材16は定着器10のシート搬出口10fを遮断するため、シート19全幅に当接するローラから構成され、通気性部材17は通気性を確保するため、1個あるいは複数のコロから構成され、軸17aによって回転可能に支持されている。このように遮断部材16と通気性部材17によって遮断機能と通気機能を備えたローラ対としてシートをニップし、搬送機能も備えた構成となっている。
【0023】
図4は冷却装置14の送風域からシート19が抜けた状態での気流の状態を示す説明図である。
図2に示したようにシート19搬送中は、冷却風14aはシート19の湾曲部の内側に沿って流れシート19を冷却するが、シート19が冷却装置14の送風域を抜けた場合、冷却風14aは搬送ガイド20b,20cを抜ける。一方、開口部17bの上部に排気装置15が位置しており、開口部17bから定着器10内の高温高湿空気10eが排気装置15によって吸気され、排気されている。そのため、前記搬送ガイド20b,20aを抜けた冷却風14aは、定着器10からの高温高湿空気10eに流れ込み、一体となって排気装置15によって吸気され、外部に排気される。このような吸気作用によって特に連続印刷時に紙間で高温高湿空気10eの排出が可能となり、高速機においても高い結露防止効果を得ることができる。その際、シート搬送後も一定時間冷却装置14による冷却風の送風を続行するようにする。これにより、次ジョブの定着開始までに設定温度まで十分に冷却することが可能となる。
【0024】
また、冷却装置14の風を排気装置15側に導く壁状のガイド部材15aを設けると、排気装置15によって確実に高温高湿空気10eとともに排気することができる。
【0025】
なお、冷却装置14は強制的に冷却風14aを送り出すファンを備え、排気装置15は強制的に高湿高温空気10eを吸気し、排気するファンを備えている。
【0026】
図5は通気性部材の他の実施形態を示す図である。この実施形態は、図2及び図3に示した通気性部材17をシート面の当接状態を考慮して遮断部材16と同様にシート全幅で当接するローラ状の搬送部材(第3の搬送ローラ)18を用いたものである。この例では、遮断部材16と搬送部材18のニップ圧がシート全幅で平均化するので、シート19に形成された画像に影響を与える虞が少なくなる。しかし、定着器10の高温高湿空気10eの排気ができなくなるので、搬送部材18のシート19に対して背後側に開口部21を設けたものである。すなわち、図5の例では、通気性のない搬送部材18と定着器10の外壁10dとの間に定着器10の内部と連通する開口部21を設け、排気装置15によって当該開口部21から高温高湿空気10eを強制的に吸引するようにした。この場合も、図4に示したガイド部材15aを設け、排気効率の向上を図っている。なお、図5における開口部21は図3に示した開口部17bとは異なり、シート全幅にわたって均一幅の開口となる。
【0027】
その他、特に説明しない各部は図1及び図2に示した定着器10と同様に構成されている。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、
1)遮断部材16と通気性部材17を使用するだけなので、安価な構成でシート冷却と定着温度低下を防止することができる。
2)定着器内部の結露発生を防止することが可能となり、シートが高温であることによる不具合を解消し、安定した定着性を確保することができる。
3)結露発生による搬送性の悪化、シート品質の悪化、及び画像不具合発生を防止することができる。
4)遮断部材16はシート全幅で当接するローラからなるので、シート19に当接しつつ安定したシート搬送品質を得ることができる。
5)通気性部材17が軸17aに支持されたコロからなるので、安定したシート搬送品質を得ることができるとともに、通気性を確保することができる。
6)紙間及びシート搬送後一定時間でも冷却装置14を作動させるので、定着器10から排出された高温高湿空気10eを冷却風14aとともに排気装置15に導くことができ、冷却効率を高めることが可能になる。
7)ガイド部材15aを備えているので、定着器10より排出された高温高湿空気を冷却装置14からの冷却風14aを用いて確実に排気装置15へと導くことができる。
等の効果を奏する。
【0029】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲により規定される範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 画像形成装置
10 定着器
10e 高湿高温空気
10f シート搬出口
13a,13b 搬送路
14 冷却装置
14a 冷却風
15 排気装置
15a ガイド部材
16 遮蔽部材(第1の搬送ローラ)
17 通気性部材(第2の搬送ローラ)
17a,21 開口部
17b コロの両側面側の空間部
18 搬送部材(第3の搬送ローラ)
19 シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2007−86509号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成後の画像をシート上に定着させる定着器を有する定着装置であって、
前記定着器からシートを搬出するシート搬出口の下流直後の搬送路で前記シートの表面に向かって冷却風を送風する冷却手段と、
定着器の上方に設けられ、当該定着器内の高湿高温空気を強制的に排気する排気手段と、
前記シート搬出口に位置し、前記シートの前記冷却手段の配置側で当該シートの全幅にわたって当接する遮蔽手段と、
前記シート搬出口の前記シートを挟んで前記遮蔽部材と対向する側に設けられ、前記定着器内と連通する開口手段と、
を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置であって、
前記遮蔽手段が、シート全幅に当接して当該シートを搬送する第1の搬送ローラからなること
を特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2記載の定着装置であって、
前記開口手段が、1以上の点で前記第1の搬送ローラとニップするコロを有する第2の搬送ローラからなり、前記コロの両側面側の空間部が開口部を形成すること
を特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項2記載の定着装置であって、
前記開口手段が、
前記第1の搬送ローラとシート全幅にわたってニップするローラを有する第3の搬送ローラと、
前記シート搬出口において当該第3の搬送ローラの前記第1の搬送ローラに対して背後側に形成された開口部と、
からなることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定着装置であって、
前記冷却手段はシート搬送後も一定時間冷却風を送風すること
を特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の定着装置であって、
前記冷却手段の送風方向に冷却風を前記定着器からの高湿高温空気をともに前記排出手段に導くガイド部材を備えていること
を特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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