説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】定着装置のライフサイクルを長期化できるようにする。
【解決手段】定着ユニット70は、定着ローラ71、加圧ローラ72、オイルローラ74、第1クリーニングローラ75、及び第2クリーニングローラ76を備える。オイルローラ74は、定着ローラ71の周面をクリーニングする。第1クリーニングローラ75は、オイルローラ74の周面をクリーニングする。第2クリーニングローラ76は、第1クリーニングローラ75よりも大径であり、加圧ローラ72の周面をクリーニングする。定着ローラ71は、ハロゲンヒータ711,712によって加熱される。第1クリーニングローラ75は、第1保守処理時にハロゲンヒータ751によって定着ローラ71よりも高温に加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着ローラ用のクリーニングローラ及び加圧ローラ用のクリーニングローラを備えた定着装置及びそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に備えられる定着装置は、ハロゲンヒータ等の熱源によって加熱される定着ローラ、及び定着ローラに圧接する加圧ローラを備える。定着装置は、定着ローラと加圧ローラとのニップ部でシートを搬送することで、シート上に担持された現像剤を溶融及び加圧して現像剤をシートに定着させる定着処理を行う(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
定着処理において、シートは、未定着の現像剤を担持した側の面が定着ローラに接するように搬送される。このように、定着ローラの周面には現像剤が直接接触するので、定着処理後の定着ローラの周面に現像剤が付着していることがある。また、両面印刷を行う場合は、加圧ローラの周面にも現像剤が直接接触するので、加圧ローラの周面にも現像剤が付着することがある。定着ローラ及び加圧ローラの周面に付着した現像剤は、その後にニップ部に搬送されてくるシートに付着するとシートの汚れの原因になる。
【0004】
そこで、定着ローラ用の第1クリーニングローラ及び加圧ローラ用の第2クリーニングローラの両方を備えた定着装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−276701公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような従来の定着装置では、定着ローラはシートの画像面に直接接触するので、定着ローラの周面を傷付けないようにする必要がある。このため、定着ローラの周面には軟質性の中間クリーニングローラが当接し、中間クリーニングローラの周面に第1クリーニングローラが当接する。一方、加圧ローラの周面には、第2クリーニングローラが直接当接する。このため、配置スペース等の理由で、第1クリーニングローラには、第2クリーニングローラよりも小径のものが用いられる。よって、第1クリーニングローラの現像剤の回収容量は、第2クリーニングローラの現像剤の回収容量よりも小さくなる。したがって、第2クリーニングローラの現像剤の回収容量には余裕があるにも関らず、第1クリーニングローラによる現像剤の回収量が回収容量の限界に達してしまったために、定着処理における汚れの発生を抑制できなくなり、定着装置のライフサイクルが短縮化する虞がある。
【0007】
この発明の目的は、定着装置のライフサイクルを長期化できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の定着装置は、定着ローラ、加圧ローラ、第1加熱部、中間クリーニングローラ、第1クリーニングローラ、第2加熱部、及び第2クリーニングローラを備える。定着ローラ及び加圧ローラは、互いに圧接し、現像剤をシートに定着させる定着処理時に互いの間でシートを搬送する。第1加熱部は、定着ローラを加熱する。中間クリーニングローラは、定着ローラの周面に当接して定着ローラの回転に従動して回転する。中間クリーニングローラは、定着ローラの周面をクリーニングする。第1クリーニングローラは、中間クリーニングローラの周面に当接して中間クリーニングローラの回転に従動して回転する。第1クリーニングローラは、中間クリーニングローラの周面をクリーニングする。第2加熱部は、第1クリーニングローラを加熱する。第2クリーニングローラは、第1クリーニングローラよりも大径であり、加圧ローラの周面に当接して加圧ローラの回転に従動して回転する。第2クリーニングローラは、加圧ローラの周面をクリーニングする。
【0009】
この構成では、第1加熱部の他に第2加熱部を備えるので、第1クリーニングローラ及び定着ローラの温度を自在に設定することが可能である。現像剤は、温度の高い方から低い方へ移行する特性を有する。このため、定着処理時には、定着装置に備えられたローラの中で定着ローラの温度が最も高く、中間クリーニングローラの温度は定着ローラの温度よりも低く、第1クリーニングローラの温度は中間クリーニングローラよりも低くされる。これによって、定着ローラの周面に付着した現像剤は、中間クリーニングローラによって回収され、中間クリーニングローラの周面に付着した現像剤は、第1クリーニングローラによって回収される。また、第2クリーニングローラの温度は加圧ローラよりも低くなる。このため、加圧ローラの周面に付着した現像剤は、第2クリーニングローラによって回収される。
【0010】
第2クリーニングローラは第1クリーニングローラよりも大径であるため、第2クリーニングローラの現像剤の回収容量は、第1クリーニングローラの現像剤の回収容量よりも大きい。一方、両面印刷時には定着ローラと加圧ローラとの両方にシートの画像面が接触するが、片面印刷時には定着ローラのみにシートの画像面が接触するので、定着処理時には加圧ローラの周面よりも定着ローラの周面の方が現像剤の付着量が多くなると考えられる。このため、第1クリーニングローラの周面に付着した現像剤量を減量するための処理を行わずに定着処理を続けた場合は、第2クリーニングローラよりも第1クリーニングローラの方が先に回収量が回収容量の限界に達する。
【0011】
そこで、第1クリーニングローラの現像剤の回収量が回収容量の限界に達する前の所定のタイミングで、第1クリーニングローラの温度を定着ローラの温度よりも高くする保守処理を実行することが考えられる。これによって、第1クリーニングローラの周面に付着していた現像剤が中間クリーニングローラの周面を経て定着ローラの周面へ移行する。また、加圧ローラの温度は定着ローラの温度よりも低く、第2クリーニングローラの温度は加圧ローラよりも低くなるので、定着ローラの周面に付着した現像剤は、加圧ローラの周面を経て第2クリーニングローラの周面へ移行する。このようにして、第1クリーニングローラの周面に付着した現像剤は第2クリーニングローラの周面へ移行する。よって、第1クリーニングローラによる現像剤の回収量が回収容量の限界に達するまでの期間が延長される。
【0012】
この発明の画像形成装置は、上述の定着装置、及び定着装置の動作を制御する制御部を備える。制御部は、第1クリーニングローラの温度が定着ローラの温度よりも高くなるように第1加熱部及び第2加熱部を制御する保守処理を所定のタイミングで実行する。
【0013】
この構成では、第1クリーニングローラの現像剤の回収量が回収容量の限界に達する前の所定のタイミングで、所定時間の間、保守処理が実行される。保守処理時には、定着装置に備えられたローラの中で、第1クリーニングローラの温度が最も高く、中間クリーニングローラ、定着ローラ、加圧ローラの順に温度が低くなり、第2クリーニングローラの温度が最も低くなる。このため、温度の高い方から低い方へ移行するという現像剤の特性によって、保守処理時には、第1クリーニングローラの周面に付着していた現像剤は、中間クリーニングローラ、定着ローラ、及び加圧ローラのそれぞれの周面を経て、第2クリーニングローラの周面へ移行する。よって、第1クリーニングローラによる現像剤の回収量が回収容量の限界に達するまでの期間が延長される。
【0014】
上述の構成において、制御部は、定着ローラと加圧ローラとの間でシートが搬送されないタイミングで保守処理を実行することが好ましい。
【0015】
定着ローラと加圧ローラとの間でシートが搬送されないタイミング、即ち定着処理時以外のタイミングで保守処理を実行することで、第1クリーニングローラの周面から第2クリーニングローラの周面へ移行させる過程の現像剤がシートに付着する事態が防止される。保守処理を実行するタイミングとして、例えば、画像形成装置の電源オンした直後の起動処理時、シート収容部が給紙位置以外の位置にあるとき、及び画質調整処理の実行時等が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、定着装置のライフサイクルを長期化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の構成を示す図である。
【図2】画像形成装置に備えられる定着ユニットの拡大図である。
【図3】画像形成装置の一部の構成を示すブロック図である。
【図4】制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】(A)は、定着ローラ及び第1クリーニングローラの温度制御を示すタイミングチャートであり、(B)は、定着ローラの回転速度制御を示すタイミングチャートである。
【図6】他の実施形態における制御部の処理手順の例を示すフローチャートである。
【図7】(A)は、図6に示す実施形態における定着ローラ及び第1クリーニングローラの温度制御を示すタイミングチャートであり、(B)は、図6に示す実施形態における定着ローラの回転速度制御を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置100は、原稿から生成した画像データ又は外部から入力した画像データに基づいて、シートに単色又は多色の画像を形成する。シートとして、普通紙、印画紙、OHPフィルム等の記録媒体が挙げられる。
【0020】
画像形成装置100は、画像読取部120、画像形成部110、給紙部80、排紙部90、及び制御部200を備えている。
【0021】
画像読取部120は、原稿の画像を読み取って画像データを生成し、画像形成部110へ供給する。
【0022】
画像形成部110は、露光ユニット30、4個の画像形成ステーション31,32,33,34、中間転写ベルトユニット50、二次転写ローラ56、及び定着ユニット70を備え、シートに画像形成処理を行う。定着ユニット70は、定着装置を構成している。
【0023】
中間転写ベルトユニット50は、中間転写ベルト51、中間転写ベルト駆動ローラ52、中間転写ベルト従動ローラ53、及びテンションローラを有している。中間転写ベルト51は、中間転写ベルト駆動ローラ52と中間転写ベルト従動ローラ53との間に張架されてループ状の移動経路を形成している。
【0024】
画像形成部110は、画像データに基づいて、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ及びイエローの4色の各色相のトナー像(現像剤像)を、画像形成ステーション31〜34において形成する。画像形成ステーション31〜34は、中間転写ベルト51の移動経路に沿って一列に配置されている。画像形成ステーション32〜34は、画像形成ステーション31と実質的に同様に構成されている。
【0025】
ブラックの画像形成ステーション31は、感光体ドラム10、帯電器20、現像器40、中間転写ローラ54、及びクリーナユニット60を備えている。
【0026】
感光体ドラム10は、静電潜像担持体であり、所定方向に回転駆動される。帯電器20は、感光体ドラム10の周面を所定の電位に均一に帯電させる。
【0027】
露光ユニット30は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザビームのそれぞれを、画像形成ステーション31〜34のそれぞれの感光体ドラム10に照射する。4個の感光体ドラム10の周面には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0028】
現像器40は、感光体ドラム10の周面に、画像形成ステーション31の色相であるブラックのトナー(現像剤)を供給し、静電潜像をトナー像に顕像化する。
【0029】
中間転写ベルト51の外周面は、4個の感光体ドラム10に順に対向する。中間転写ベルト51を挟んで感光体ドラム10に対向する位置に、中間転写ローラ54が配置されている。中間転写ベルト51と感光体ドラム10とが互いに対向する位置のそれぞれが、一次転写位置である。
【0030】
中間転写ローラ54には、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と逆極性(例えば、プラス)の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。画像形成ステーション32〜34においても同様である。これによって、感光体ドラム10のそれぞれに形成された各色相のトナー像が中間転写ベルト51の外周面に順次重ねて一次転写され、中間転写ベルト51の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0031】
但し、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム10のうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われ、一部の色相のトナー像のみが中間転写ベルト51の外周面に一次転写される。
【0032】
クリーなユニット60は、現像及び一次転写の後に感光体ドラム10の周面に残留したトナーを回収する。
【0033】
一次転写位置のそれぞれにおいて中間転写ベルト51の外周面に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト51の回転によって、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56との対向位置である二次転写位置へ搬送される。
【0034】
給紙部80は、給紙カセット81、手差しトレイ82、第1用紙搬送路101、及び第2用紙搬送路105を備えている。給紙カセット81及び手差しトレイ82のそれぞれには、シートが収容される。第1用紙搬送路101は、給紙カセット81及び手差しトレイ82のそれぞれから二次転写位置及び定着ユニット70を経由して排紙部90へ至るように形成されている。第2用紙搬送路105は、両面印刷用の用紙搬送路であり、一方の面に画像を形成されたシートが表裏を反転された状態で再び二次転写位置へ搬送されるように形成されている。
【0035】
二次転写ローラ56は、中間転写ベルト51を挟んで中間転写ベルト駆動ローラ52に所定のニップ圧で圧接している。二次転写ローラ56と中間転写ベルト51とのニップ圧を所定値に維持するために、二次転写ローラ56又は中間転写ベルト駆動ローラ52のいずれか一方が硬質材料(例えば、金属又は樹脂)で構成され、他方が軟質材料(例えば、弾性ゴム又は発泡性樹脂)で構成されている。
【0036】
給紙部80から給紙されたシートが二次転写位置を経由する際に、二次転写ローラ56に、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と逆極性(例えば、プラス)の二次転写バイアスが定電圧制御によって印加され、これによって、中間転写ベルト51の外周面に担持されたトナー像が、シートに二次転写される。
【0037】
トナー像がシートに転写された後の中間転写ベルト51上に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーニングユニット55によって回収される。
【0038】
トナー像が転写されたシートは、定着ユニット70へ送られる。定着ユニット70は、定着ローラ71及び加圧ローラ72を備えている。定着ユニット70は、定着ローラ71と加圧ローラ72との間にシートを挟んで回転することで、シートを加熱及び加圧してトナー像をシートに堅牢に定着させる定着処理を行う。定着ユニット70の詳細については後述する。
【0039】
排紙部90は、排紙トレイ91及び排紙ローラ92を備えている。トナー像が定着したシートは、排紙ローラ92によって排紙トレイ91へ排出される。シートは、トナー像が定着した面を下にして、排紙トレイ91に収容される。
【0040】
図2に示すように、定着ユニット70は、定着ローラ71、ハロゲンヒータ711,712、加圧ローラ72、オイルローラ74、第1クリーニングローラ75、ハロゲンヒータ751、及び第2クリーニングローラ76を備えている。
【0041】
定着ローラ71は、図3に示す駆動モータ77から回転力を伝達されて回転する。ハロゲンヒータ711,712は、第1加熱部を構成しており、定着ローラ71の内部に配置され、定着ローラ71の周面を内部から加熱する。一例として、定着ローラ71の軸方向において、ハロゲンヒータ711は、定着ローラ71の周面の全域を加熱し、ハロゲンヒータ712は、定着ローラ71の周面の端部を除く部分を加熱する。
【0042】
加圧ローラ72は、定着ローラ71の周面に圧接しており、定着ローラ71の回転に従動して回転する。
【0043】
オイルローラ74は、中間クリーニングローラを構成しており、定着ローラ71の周面に当接して、定着ローラ71の回転に従動して回転する。オイルローラ74は、軟質性の素材で構成され、オイルを充填されている。一例として、オイルローラ74は、スポンジ製である。オイルローラ74が軟質性の素材で構成されていることで、定着ローラ71の周面の傷付きが防止されている。
【0044】
オイルローラ74は、定着ローラ71の周面にオイルを塗布し、これによって、定着ローラ71の周面のトナー離型性を向上させて、定着ローラの周面にトナーが付着することを抑制している。しかし、オイルを塗布された定着ローラ71の周面にもトナーが付着することはあり、定着ローラ71の周面に付着したトナーは、オイルローラ74によって回収される。
【0045】
第1クリーニングローラ75は、オイルローラ74の周面に当接し、オイルローラ74の回転に従動して回転する。第1クリーニングローラ75は、オイルローラ74の周面をクリーニングする。一例として、第1クリーニングローラ75は、中空の金属製(例えば、ステンレス製)の柱状体である。
【0046】
ハロゲンヒータ751は、第2加熱部を構成しており、第1クリーニングローラ75の周面を加熱する。一例として、ハロゲンヒータ751は、第1クリーニングローラ75の内部に配置され、第1クリーニングローラ75の周面を内部から加熱する。
【0047】
第2クリーニングローラ76は、加圧ローラ72の周面に当接して、加圧ローラ72の回転に従動して回転する。第2クリーニングローラ76は、加圧ローラ72の周面をクリーニングする。一例として、第2クリーニングローラ76は、中空の金属製(例えば、アルミニウム製)の柱状体である。
【0048】
第2クリーニングローラ76は、第1クリーニングローラ75よりも大径である。
【0049】
図3に示すように、制御部200は、モータドライバ771へ回転制御信号を出力することで、駆動モータ77の駆動を制御する。駆動モータ77は、定着ローラ71を回転させる。駆動モータ77として、ステッピングモータが用いられる。
【0050】
制御部200は、ヒータドライバ713へ加熱制御信号を出力することで、ハロゲンヒータ711の駆動を制御する。制御部200は、ヒータドライバ714へ加熱制御信号を出力することで、ハロゲンヒータ712の駆動を制御する。制御部200は、ヒータドライバ752へ加熱制御信号を出力することで、ハロゲンヒータ751の駆動を制御する。
【0051】
画像形成装置100は、定着ユニット70内に、定着ローラ71の周面温度を検出する温度検出器78、及び第1クリーニングローラ75の周面温度を検出する温度検出器79をさらに備えている。温度検出器78,79として、例えばサーミスタが用いられる。制御部200には、温度検出器78から定着ローラ71の周面の検出温度が入力し、温度検出器79から第1クリーニングローラ75の周面の検出温度が入力する。制御部200は、検出温度に基づいてハロゲンヒータ711,712,751を制御することで、定着ローラ71及び第1クリーニングローラ75の周面の温度を調整する。制御部200は、画像形成装置100の全体を統括的に制御している。
【0052】
次に、制御部200の処理手順の一部について説明する。
【0053】
図4及び図5に示すように、制御部200は、画像形成要求が入力されると(S1)、定着処理の実行回数を計測するカウンタ値Cをリセットする(S2)。制御部200は、定着ローラ71の回転速度V及び周面温度TFを、定着処理時の設定条件である基準速度V0及び基準設定温度T0に設定する(S3,S4)。一例として、基準設定温度T0は、180℃である。また、制御部200は、定着処理時には、ハロゲンヒータ751を駆動させず、第1クリーニングローラ75を加熱しない(S5)。
【0054】
制御部200は、定着ローラ71を基準速度V0及び基準設定温度T0に設定した状態で画像形成処理を実行し(S6)、カウンタ値Cを1だけインクリメントする(S7)。画像形成処理の中の1行程として、定着処理が行われる。カウンタ値Cは、シートの1面の定着処理が実行される毎に1ずつインクリメントされる。
【0055】
トナーは、温度の高い方から低い方へ移行する特性を有する。定着処理時には、定着ユニット70に備えられたローラ71,72,74,75,76の中で定着ローラ71の温度が最も高い。また、オイルローラ74の温度は定着ローラ71の温度よりも低く、第1クリーニングローラ75の温度はオイルローラ74の温度よりも低い。このため、定着ローラ71の周面に付着したトナーは、オイルローラ74によって回収され、オイルローラ74の周面に付着したトナーは、第1クリーニングローラ75によって回収される。また、加圧ローラ72は定着ローラ71に圧接し、第2クリーニングローラ76は加圧ローラ72に当接しているので、第2クリーニングローラ76の温度は加圧ローラ72の温度よりも低くなる。このため、加圧ローラ72の周面に付着したトナーは、第2クリーニングローラ76によって回収される。
【0056】
制御部200は、S1において入力された画像形成要求(画像形成ジョブ)に、次に画像形成すべきページが残っていない場合は、次の画像形成要求があるまで待機し(S8)、次に画像形成すべきページが残っている場合は、カウンタ値Cが、予め設定された所定回数C1以上であるか否かを判定する(S9)。
【0057】
制御部200は、カウンタ値Cが所定回数C1未満である場合は、S6に戻って画像形成処理を繰り返し、カウンタ値Cが所定回数C1以上となった場合は、第1保守処理を開始する。一例として、所定回数C1は、200である。
【0058】
第2クリーニングローラ76は第1クリーニングローラ75よりも大径であるため、第2クリーニングローラ76のトナーの回収容量は、第1クリーニングローラ75のトナーの回収容量よりも大きい。一方、両面印刷時には定着ローラ71と加圧ローラ72との両方にシートの画像面が接触するが、片面印刷時には定着ローラ71のみにシートの画像面が接触するので、定着処理時には加圧ローラ72の周面よりも定着ローラ71の周面の方がトナーの付着量が多くなると考えられる。このため、第1クリーニングローラ75の周面に付着したトナー量を減量するための処理を行わずに定着処理を続けた場合は、第2クリーニングローラ76よりも第1クリーニングローラ75の方が先に回収量が回収容量の限界に達する。
【0059】
そこで、制御部200は、第1クリーニングローラ75のトナーの回収量が回収容量の限界に達する前の所定のタイミング、一例としてカウンタ値Cが所定回数C1以上となったタイミングで、第1クリーニングローラ75に回収されたトナーを第2クリーニングローラ76へ移行させる第1保守処理を実行する。
【0060】
前回の第1保守処理の実行時以降に行われた定着処理の回数が所定回数C1以上になったときに第1保守処理を実行することで、第1クリーニングローラ75によるトナーの回収量が回収容量の限界に達する前に、第1クリーニングローラ75から第2クリーニングローラ76へトナーを移行させることができる。
【0061】
制御部200は、時間計測を開始し(S10)、第1クリーニングローラ75の周面温度TCを定着ローラ71の周面温度TFよりも所定温度高い第1温度T1に上昇させる(S11)。
【0062】
一例として、制御部200は、第1保守処理時に、定着ローラ71の周面温度TFを基準設定温度T0に維持し、第1クリーニングローラ75の周面温度TCを定着ローラ71の基準設定温度T0よりも10度高い温度に設定する。
【0063】
第1保守処理時には、定着装置70に備えられたローラ71,72,74,75,76の中で、第1クリーニングローラ75の温度が最も高く、オイルローラ74、定着ローラ71、加圧ローラ72の順に温度が低くなり、第2クリーニングローラ76の温度が最も低くなる。このため、温度の高い方から低い方へ移行するというトナーの特性によって、第1保守処理時には、第1クリーニングローラ75の周面に付着していたトナーは、オイルローラ74、定着ローラ71、及び加圧ローラ72のそれぞれの周面を経て、第2クリーニングローラ76の周面へ移行する。よって、第1クリーニングローラ75によるトナーの回収量が回収容量の限界に達するまでの期間が延長され、定着ユニット70のライフサイクルが長期化される。
【0064】
第1保守処理時には、制御部200は、定着ローラ71を基準速度V0よりも低速回転させる(S12)。一例として、制御部200は、定着ローラ71の回転速度Vを基準速度V0の10分の1に設定する。
【0065】
また、図5に示すように、第1保守処理時には、制御部200は、定着ローラ71を間欠回転させることが好ましい。一例として、第1保守処理時に定着ローラ71は、基準速度V0の10分の1の速度での回転時間TM4の回転と、停止間隔時間TM5の停止と、を繰り返し、回転時間TM4は3秒間であり、停止間隔時間TM5は3秒間である。
【0066】
定着ローラ71を間欠回転させることで、オイルローラ74及び第1クリーニングローラ75も間欠回転する。このため、第1クリーニングローラ75の周面に付着しているトナーが、第1クリーニングローラ75の周面からオイルローラ74の周面へ移行しやすくなる。同様にして、オイルローラ74の周面から定着ローラ71の周面へトナーが移行しやすくなる。なお、第1保守処理時に定着ローラ71を低速回転させること及び定着ローラ71を間欠回転させることは、必ずしも必要ではない。第1保守処理時に、定着ローラ71を基準速度V0又は基準速度V0以上の速度で回転させた場合でも、第1クリーニングローラ75の周面に付着していたトナーを、オイルローラ74、定着ローラ71、及び加圧ローラ72のそれぞれの周面を経て、第2クリーニングローラ76の周面へ移行させることができる。
【0067】
制御部200は、第1保守処理の開始から予め設定された所定の第1時間TM1が経過すると(S13)、第1保守処理を終了し、S2へ戻ってカウント値Cをリセットし、定着ローラ71の回転速度V及び周面温度TFを基準速度V0及び基準設定温度T0に設定し(S3,S4)、第1クリーニングローラ75用のハロゲンヒータ751の駆動を停止させて(S5)、画像形成処理を再開する(S6)。一例として、第1時間TM1は30秒である。
【0068】
なお、第1保守処理を終了した後においては、定着ローラ71を基準速度V0及び基準設定温度T0に設定する処理(S3,S4)及び第1クリーニングローラ75用のハロゲンヒータ751の駆動を停止させる処理(S5)を実行してから、画像形成処理(S6)を再開するまでの間に、定着ローラ71と加圧ローラ72との間にシートを搬送することなく、定着ローラ71及び加圧ローラ72のそれぞれの周面をクリーニングするための時間を設けることが好ましい。
【0069】
第1クリーニングローラ75の周面温度が定着ローラ71の周面温度よりも低下すると、温度が高い方から低い方へ移行するというトナーの特性によって、定着ローラ71の周面のトナーはオイルローラ74を経由して第1クリーニングローラ75によって回収され、加圧ローラ72の周面のトナーは第2クリーニングローラ76によって回収される。
【0070】
なお、上述の実施形態では、カウント値Cが所定回数C1以上であるか否かの判定処理S9を、1回の画像形成処理毎に行っていたが、複数の画像形成処理を連続して行う旨の画像形成要求である画像形成ジョブの終了毎に行うようにすることもできる。
【0071】
また、制御部200は、定着ローラ71と加圧ローラ72との間でシートが搬送されないタイミングで第1保守処理を実行することが好ましい。定着ローラ71と加圧ローラ72との間でシートが搬送されないタイミング、即ち定着処理時以外のタイミングで第1保守処理を実行することで、第1クリーニングローラ75の周面から第2クリーニングローラ76の周面へ移行させる過程のトナーがシートに付着する事態が防止される。
【0072】
第1保守処理を実行するタイミングの他の例として、画像形成装置の電源オンした直後に行われる起動処理時、及び画質調整処理の実行時等が挙げられる。
【0073】
第1保守処理時における第1クリーニングローラ75の周面温度TCは、トナーの融点温度以上で、かつ、定着ローラ71の周面温度TFよりも約10度以上高い温度に設定される。第1保守処理時における第1クリーニングローラ75の周面温度TCは、例えば、130℃以上の予め決められた温度に設定される。
【0074】
なお、第1保守処理時における第1クリーニングローラ75の周面温度TC及び定着ローラ71の周面温度TFは、画像形成処理に続けて行われる場合、又は起動処理時に行われる場合等、第1保守処理が実行されるタイミングに応じて異なる温度に設定するように構成することができる。第1保守処理が画像形成処理に続けて行われる場合は定着ローラ71の周面温度TFがすでに基準設定温度(例えば、180℃)に高められているのに対して、起動処理の開始時は定着ローラ71の周面温度TFがまだ低いので、第1クリーニングローラ75の周面温度TC及び定着ローラ71の周面温度TFを、トナーの溶融及びトナーの第1クリーニングローラ75から第2クリーニングローラ76への移行のために必要最低限の温度まで高めることとすることで、第1保守処理にかかる時間が短縮される。また、省エネ化に貢献することもできる。
【0075】
また、二次転写位置及び定着ユニット70へ供給するためのシートを収容する給紙カセット81は、シートを供給自在な給紙位置とシートを補給するための補給位置との間で変位自在に構成される。給紙カセット81はシート収容部を構成する。画像形成装置100は、給紙カセット81が給紙位置にあるか否かを検出する検出センサを備えることができる。制御部200は、検出センサによる検出結果に基づいて、給紙カセット81が給紙位置以外の位置にあるときに、第1保守処理を開始するように構成することができる。このように、第1保守処理を実行するタイミングのさらに他の例として、給紙カセット81が給紙位置以外の位置にあるときが挙げられる。
【0076】
さらに、第1保守処理が終了するまでは、定着ローラ71と加圧ローラ72との間でシートが搬送されないことが好ましいので、制御部200は、第1保守処理が開始された場合は、第1保守処理が終了するまで、画像形成処理を開始させないように構成されることが好ましい。
【0077】
また、定着ユニット70は、定着ローラ71を加熱する第1加熱部として、ハロゲンヒータ711,712を定着ローラ71内に備えるものに限定されず、定着ローラ71の周面に当接して定着ローラ71の周面を外部から加熱する外部加熱ベルトを備えるように構成することができる。さらに、定着ユニット70は、第1クリーニングローラ75を加熱する第2加熱部として、ハロゲンヒータ751を第1クリーニングローラ75内に備えるものに限定されず、第1クリーニングローラ75の周面に当接して第1クリーニングローラ75の周面を外部から加熱する外部加熱ベルトを備えるように構成することができる。この場合は、第1クリーニングローラ75を中実の金属製(例えば、ステンレス製)の柱状体に構成することができる。
【0078】
さらに、図6及び図7に示すように、制御部200は、第1時間TM1よりも短い第2時間TM2の間、第1保守処理を実行し(S1〜S12)、第1保守処理に続けて、第1クリーニングローラ75の周面温度TCを第1温度T1(=T0+10)に維持し、定着ローラ71の周面温度TFを基準設定温度T0に維持しつつ定着ローラ71を基準速度V0で回転させる第2保守処理を開始するように構成することもできる。
【0079】
具体的には、制御部200は、第1保守処理を開始してから第2時間TM2が経過すると(S14)、タイマをリセットして再び時間計測を開始し(S15)、第1クリーニングローラ75の周面温度TCを第1温度T1(=T0+10)に維持し、定着ローラ71の周面温度TFを基準設定温度T0に維持しつつ、定着ローラ71の回転速度Vを基準速度V0に高める(S16)。
【0080】
制御部200は、第2保守処理を開始してから、予め設定された所定の第3時間TM3が経過すると(S17)、第2保守処理を終了し、S2へ戻る。
【0081】
第1クリーニングローラ75の周面からオイルローラ74の周面を経て定着ローラ71の周面へ溶け出すであろう所定の第2時間TM2の間、第1保守処理を実行した後に、所定の第3時間TM3の間、第1クリーニングローラ75の周面温度TCを定着ローラ71の周面温度TFよりも所定温度高い第1温度T1に維持しつつ定着ローラ71を基準速度V0で回転させる第2保守処理を実行する。これによって、第3時間TM3内における、定着ローラ71の周面と加圧ローラ72の周面との累積の接触面積、及び、加圧ローラ72の周面と第2クリーニングローラ76の周面との累積の接触面積が増える。このため、単位時間における、定着ローラ71の周面から加圧ローラ72の周面へのトナーの移行量、及び、加圧ローラ72の周面から第2クリーニングローラ76の周面へのトナーの移行量が、多くなる。
【0082】
第1時間TM1及び第2時間TM2は、何れも第1保守処理の実行時間であるが、第1時間TM1は、トナーを第1クリーニングローラ75から第2クリーニングローラ76まで移行させるための時間であるのに対して、第2時間TM2は、第1クリーニングローラ75の周面からオイルローラ74の周面を経て定着ローラ71の周面へ溶け出すであろう時間であるため、第2時間TM2は第1時間TM1よりも短くすることができる。
【0083】
第2時間TM2は、定着ローラ71が複数回回転する時間であることが好ましい。定着ローラ71が複数回回転することで、第1クリーニングローラ75の周面のそれぞれの部分とオイルローラ74の周面との接触機会、及びオイルローラ74の周面のそれぞれの部分と定着ローラ71の周面との接触機会が、複数回になるので、第1クリーニングローラ75の周面からオイルローラ74の周面へのトナーの移行機会、及びオイルローラ74の周面から定着ローラ71の周面への移行機会が多く、トナーの移行がより行われやすくなる。一例として、第2時間TM2は、定着ローラ71が基準速度V0の10分の1の速度で2回転する時間である。また、一例として、第3時間TM3は、3分間である。
【0084】
なお、画像形成装置100が画像読取部120を備えることは必須要件ではなく、外部から入力された画像データに基づいて画像形成処理を行う画像形成装置にこの発明を適用した場合にも、同様の効果が奏される。
【0085】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
70 定着ユニット(定着装置)
71 定着ローラ
72 加圧ローラ
74 オイルローラ(中間クリーニングローラ)
75 第1クリーニングローラ
76 第2クリーニングローラ
711,712 ハロゲンヒータ(第1加熱部)
752 ハロゲンヒータ(第2加熱部)
100 画像形成装置
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに圧接し、現像剤をシートに定着させる定着処理時に互いの間でシートを搬送する定着ローラ及び加圧ローラと、
前記定着ローラを加熱する第1加熱部と、
前記定着ローラの周面に当接して前記定着ローラの回転に従動して回転する中間クリーニングローラであって前記定着ローラの周面をクリーニングする中間クリーニングローラと、
前記中間クリーニングローラの周面に当接して前記中間クリーニングローラの回転に従動して回転する第1クリーニングローラであって前記中間クリーニングローラの周面をクリーニングする第1クリーニングローラと、
前記第1クリーニングローラを加熱する第2加熱部と、
前記第1クリーニングローラよりも大径であり、前記加圧ローラの周面に当接して前記加圧ローラの回転に従動して回転する第2クリーニングローラであって前記加圧ローラの周面をクリーニングする第2クリーニングローラと、を備える定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置、及び前記定着装置の動作を制御する制御部を備える画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記第1クリーニングローラの温度が前記定着ローラの温度よりも高くなるように前記第1加熱部及び前記第2加熱部を制御する保守処理を所定のタイミングで実行する、画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記定着ローラと前記加圧ローラとの間でシートが搬送されないタイミングで前記保守処理を実行する、請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220746(P2012−220746A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86889(P2011−86889)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】