説明

定着装置用摺動部材、定着装置、及び画像形成装置

【課題】オイル保持性能に優れた定着装置用摺動部材を提供すること。
【解決手段】基体110と、基体110の表面に配置され、且つ、厚さ方向に貫通する貫通穴112Bを有する架橋ポリテトラフルオロエチレンから構成される摺動シート112と、で構成される定着装置用摺動部材101a。基体110と、フッ素樹脂繊維層114と、厚さ方向に貫通する貫通穴112Bを有する架橋ポリテトラフルオロエチレンから構成される摺動シート112と、を積層して構成される定着装置用摺動部材101b。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置用摺動部材、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、記録紙に形成されたミ定着トナー像を定着装置によって定着して画像形成している。
この定着装置としては、加熱ロールと加熱ロールに接触して配置された加圧ベルトとを備えた構成、又は、加熱ベルトと加熱ベルトに接触して配置された加圧ロールとを備えた構成のベルトニップ方式と呼ばれる定着装置が知られている。
これら定着装置では、ベルトは、内面から押圧部材により他方のロールに押圧されて配置され、当該ベルトと押圧部材の間にはベルトの回転に伴う摺動抵抗を低減する目的で摺動部材を介在させている。
【0003】
この摺動部材としては、以下のようなものが知られている。
例えば、特許文献1には、摺動シートにメッシュを用いたエンボス加工で格子状の凹凸形状をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層や架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層に形成した摺動部材が記載されている。
また、特許文献2〜4にも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層に凹凸形状を施した摺動部材が記載されている。
【0004】
なお、特許文献5〜6にも、自動車関連部品ではあるが、架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた摺動部品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−3969号公報
【特許文献2】特開2001−42670号公報
【特許文献3】特開2002−25759号公報
【特許文献4】特開2009−15227号公報
【特許文献5】特開平9−278907号公報
【特許文献6】特開2000−129019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、オイル保持性能に優れた定着装置用摺動部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、基体と、該基体の表面に配置され、且つ、厚さ方向に貫通する貫通穴を有する架橋ポリテトラフルオロエチレンから構成される摺動シートと、を備えた定着装置用摺動部材である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記基体と前記摺動シートとの間にフッ素樹脂繊維層を備える請求項1に記載の定着装置用摺動部材である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前前記基体と前記摺動シートとの間にフッ素系接着シートを備える請求項1又は請求項2に記載の定着装置用摺動部材である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記貫通穴は、該貫通穴間の周期が0.2mm以上2.0mm以下であり、且つ、該貫通穴の1つ当たりの面積が7×10−3mm以上3.2mm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着装置用摺動部材である。
【0011】
請求項5に係る発明は、第1回転体と、第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、前記第2回転体の内部に配置され、前記第2回転体の内面から第2回転体を第1回転体へ押圧する押圧部材と、前記第2回転体の内面と前記押圧部材との間に介在する摺動部材であって、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の定着装置用摺動部材と、前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方を加熱する加熱源と、を備える定着装置である。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記第2回転体の内面の表面粗さRaが、0.1μm以上2.0μm以下である請求項5に記載の定着装置である。
【0013】
請求項7に係る発明は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段であって、請求項5又は請求項6に記載の定着装置である定着手段と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、貫通穴を有する架橋ポリテトラフルオロエチレンから構成される摺動シートを有さない場合に比べ、オイル保持能力に優れた定着装置用摺動部材を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、フッ素系樹脂繊維層を有さない場合に比べ、オイル保持性能の面内均一性に優れた定着装置用摺動部材を提供できる。
請求項3に係る発明によれば、フッ素系接着シートを有さない場合に比べ、オイルによる劣化が抑制された定着装置用摺動部材を提供できる。
請求項4に係る発明によれば、貫通穴間の周期、及び貫通穴の1つ当たりの面積が規定された範囲でない場合に比べ、オイル保持性能を維持しつつも、画像への影響が抑制された定着装置用摺動部材を提供できる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、貫通穴を有する架橋ポリテトラフルオロエチレンから構成される摺動シートを有さない定着装置用摺動部材を備える場合に比べ、長寿命化が達成された定着装置を提供できる。
請求項6に係る発明によれば、第2回転体の内面の表面粗さRaが規定された範囲外の場合に比べ、かかる第2回転体と摺動部材との間のオイル保持性能がより高まり、長寿命化が達成された定着装置を提供できる。
【0016】
請求項7に係る発明によれば、貫通穴を有する架橋ポリテトラフルオロエチレンから構成される摺動シートを有さない定着装置用摺動部材を備える場合に比べ、長寿命化が達成された画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)及び(b) 本実施形態に係る定着装置用摺動部材の一例を示す概略斜視図である。
【図2】(a)及び(b) 図1(a)及び(b)のA−A断面図である。
【図3】摺動シートの貫通穴とフッ素系接着シートの貫通穴との関係について説明するための上面図である。
【図4】第1実施形態の定着装置の構成を示す概略図である。
【図5】第2実施形態の定着装置の構成を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
(定着装置用摺動部材)
図1(a)及び(b)は、実施形態に係る定着装置用摺動部材の一例を示す概略斜視図である。図2(a)及び(b)は、図1(a)及び(b)のA−A断面図である。
以下、「定着装置用摺動部材」を、単に「摺動部材」と称して説明する場合がある。
【0020】
−摺動部材の構成−
本実施形態に係る摺動部材101aは、図1(a)及び図2(a)に示すように、例えば、シート状の基体110と、基体110上に設けられた架橋ポリテトラフルオロエチレンからなる摺動シート112と、で構成されている(基体110と摺動シート112とを接着するための接着層は不図示)。
また、本実施形態に係る摺動部材101bは、図1(b)及び図2(b)に示すように、例えば、シート状の基体110上に、フッ素樹脂繊維層114を介して、架橋ポリテトラフルオロエチレンからなる摺動シート112が積層した構成を有する(基体110とフッ素樹脂繊維層114、フッ素樹脂繊維層114と摺動シート112を接着するための接着層は不図示)。
以下、架橋ポリテトラフルオロエチレンを、適宜、「架橋PTFE」と称する。
そして、摺動部材101a及び101bの摺動シート112は、摺動部材101の平面状の摺動面112Aを構成する層であって、当該平面状の摺動面112Aから厚さ方向に層を貫通する貫通穴112Bが点在している。
【0021】
ここで、従来、被摺動部材との間に潤滑剤を保持し易くしたり、摺動抵抗を低減することを目的として、摺動部材における摺動面に、例えば、メッシュを用いたエンボス加工を適用して、格子状の凹凸が形成されたものが知られている。
このようなエンボス加工を用い深い凹部を形成しようとすると、摺動面が歪んだり、形状の戻りが発生してしまうことがあった。その結果、摺動面に、所望のオイル保持性能を発現させるための深い凹部を形成することが困難となる傾向があった。
【0022】
これに対して、本実施形態に係る摺動部材101aでは、基体110の表面に、摺動面112Aから厚さ方向に層を貫通する貫通穴112Bが点在した摺動シート112を配置している。
また、本実施形態に係る摺動部材101bでは、基体110の表面に、フッ素樹脂繊維114を介して、摺動面112Aから厚さ方向に層を貫通する貫通穴112Bが点在した摺動シート112を配置している。
このような構成により、図2(a)に示されるように、摺動部材101aでは、摺動シート112の貫通穴112Bと基体110の表面とにより凹部が形成され、また、図2(b)に示されるように、摺動部材101bでは、摺動シート112の貫通穴112Bとフッ素樹脂繊維114を介した基体110の表面とにより凹部が形成される。
このようにして形成される凹部は摺動シート112の厚みと同じ深さがあるため、オイル保持性能に優れる。特に、摺動部材101bでは、摺動シート112と基体110との間にフッ素樹脂繊維114が存在することから、摺動部材101aよりも多くのオイルが保持される。
このように、多くのオイルが保持されるような凹部を有する摺動部材は、凹部から多くのオイルが外部に排出されることになるため、被摺動部材との磨耗により磨耗粉が発生した場合であっても、この磨耗粉による凹部の目詰まりは抑制され、摺動部材自体の長寿命化が達成される。
【0023】
また、本実施形態に係る摺動部材101a及び101bでは、摺動シート112が基体110に積層した態様であり、摺動面112Aを構成する摺動シート112を基体110で支持した状態としている。
これにより、被摺動部材との摺動に伴う摺動シート112の変形が抑制される。
【0024】
以下、本実施形態に係る摺動部材101a及び101bの構成部材について具体的に説明する。
【0025】
まず、摺動部材101a及び101bに共通する摺動シート112について説明する。
摺動シート112は、架橋PTFEで構成され、必要に応じて、充填材等の添加物を含んで構成されていてもよい。
そして、摺動シート112の摺動面112Aは平面状(平坦な面)で構成され、また、摺動面112Aから厚さ方向に層を貫通する貫通穴112Bが点在した状態で存在する。
【0026】
次に、貫通穴112Bについて説明する。
摺動シート112に点在する貫通穴112Bの形状は、例えば、摺動面112Aに対して直交する方向からみたときの形状で円形となっている。
具体的には、貫通穴112Bは、例えば、貫通穴112Bの摺動面112Aにおける形状が円形であると共に、摺動シート112の摺動面112Aとは反対の面での形状も円形となっており、円柱状となっている。
なお、貫通穴112Bにおいて、摺動面112Aにおける形状と摺動面112Aとは反対の面での形状とは、同じであることがよいが、その大きさ(径)は同じであっても異なっていてもよい。
なお、貫通穴112Bの摺動面112Aにおける形状は、図1に示される円形に限られず、楕円状、角状(四角状その他多角状)であってもよいが、加工の容易性の点から、円形であることが望ましい。
【0027】
また、貫通穴112Bは、例えば、摺動面112Aに対して直交する方向からみたとき、一方の方向とこれに交差(例えば直交)する方向に特定の間隔で格子状に配列されている。
なお、貫通穴112Bの配列形態は、格子状に限られず、千鳥格子状や、その他不規則であってもよい。
【0028】
貫通穴112Bは、摺動面112Aに占める面積が一つ当たり7×10−3mm以上3.2mm以下(望ましくは0.03mm以上0.8mm以下)で設けることがよい。
具体的には、貫通穴112Bの摺動面112Aにおける形状が円形である場合、その直径は100μm以上2mm以下(望ましくは150μm以上1mm以下)であることがよい。
【0029】
また、貫通穴112B間の周期(配列ピッチ)、即ち隣接する貫通穴112B間の距離は0.2mm以上2.0mm以下(望ましく0.3mm以上1.5mm以下)であることがよい。
特に、オイル保持性能を維持しつつ画像への影響を抑制する点で、貫通穴の1つ当たりの面積が上記の範囲で、かつ、貫通穴112Bの周期が上記の範囲であることがよい。
摺動面112A全面積に対して、全貫通穴112Bが占める面積の割合は、10%以上50%以下(望ましくは20%以上45%以下)であることがよい。
【0030】
次に、摺動シート112を構成する架橋PTFEについて説明する。
摺動シート112を構成する架橋PTFEは、例えば、未架橋PTFEに対して電離性放射線を照射することにより架橋させた架橋PTFEである。
具体的には、架橋PTFEは、例えば、結晶融点よりも高い温度で加熱した状態の未架橋PTFEに対して、酸素不在の環境下で、照射線量1KGy以上10MGy以下の電離性放射線(例えば、γ線、電子線、X線、中性子線、或いは高エネルギーイオン等)を照射して架橋させたものである。
【0031】
なお、PTFEには、テトラフルオロエチレン以外の他の共重合成分(パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パーフルオロアルキル)エチレン、或いはクロロトリフルオロエチレン等)を含んでいてもよい。
【0032】
充填材その他添加剤について説明する。
充填材は、導電性付与、耐久性、熱伝導性を向上させる目的で添加されるものである。
充填材としては、例えば、金属酸化物粒子、ケイ酸塩鉱物、カーボンブラック、及び窒素化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがよい。
これらの中でも、ケッチェンブラック、黒鉛、アセチレンブラックは、導電性を付与するのに望好ましく、黒鉛、銅、銀、窒化アルミ、窒化硼素、アルミナなどは、熱伝導性を付与するのに望ましい。充填材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
充填材の平均粒径は、例えば0.01μm以上20μm以下であることがよい。
【0033】
充填材の含有量は、例えば、架橋PTFE成分100質量部に対して、0.01質量部以上30質量部以下であることがよい。
【0034】
なお、摺動シート112には、充填材以外にも、その他添加剤を目的に応じて配合してもよい。
【0035】
摺動シート112の厚みは、例えば、30μm以上500μm以下(望ましくは50μm以上300μm以下)の範囲で設定される。
つまり、この厚みと貫通穴112Bの深さは同一となることから、上記の範囲は貫通穴112Bの深さの範囲となる。
なお、摺動シートの厚みは、シート自身の剛性や配置される基体の種類、形状に合わせて設定されればよい。
【0036】
次に、摺動部材101a及び101bに共通するシート状の基体110について説明する。
シート状の基体110は、例えば、樹脂材料と必要に応じて充填材等の添加剤とを含んで構成させる。
樹脂材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂等が挙げられるが、これらの中でも、耐熱性、機械的強度が高いポリイミド樹脂がよい。
【0037】
シート状の基体110の厚みは、例えば、50μm以上150μm以下(望ましくは60μm以上130μm以下)の範囲で設定される。
【0038】
続いて、本実施形態に係る摺動部材101bを構成するフッ素樹脂繊維層114について説明する。
このフッ素樹脂繊維層114は、基体110と貫通穴112Bを有する摺動シート112との間に存在する繊維による層であって、層中にオイルを保持する機能を有することから、このフッ素樹脂繊維層114を介して各貫通穴112B中に存在するオイルが移動する。その結果、摺動部材101bは、オイル保持性能が優れると共に、その面内均一性にも優れることとなる。
フッ素樹脂繊維層114は、例えば、PEFE繊維、耐熱アラミド繊維が用いられる。中でも、耐熱性が高く、架橋PTFEから構成される摺動シート112との接着性の高いPTFE繊維がよい。
【0039】
具体的には、PTFE繊維としては、商品名:ゴアファイバークロスFS120−E(ジャパンゴアテックス社製、厚さ:120μm)が用いられる。
【0040】
ここで、図1及び図2に図示されていない接着層について説明する。
まず、摺動部材101aでは、基体110と摺動シート112との間を接着する接着層が存在する。
この接着層としては、摺動シート112の貫通穴112Bを埋めることのないよう、接着シートから構成されることがよい。また、摺動シート112の貫通穴112Bと同形状の穴を形成した接着シートを用いてもよい。
【0041】
また、摺動部材101bでは、基体110とフッ素樹脂繊維層114との間、及び、フッ素樹脂繊維層114と摺動シート112との間を接着する2つの接着層が存在する。
基体110とフッ素樹脂繊維層114との間の接着層は特に制限はなく、接着シートを用いてもよいが、耐熱性シリコーン樹脂やエポキシ系樹脂等の公知の接着剤を用いて形成されてもよい。
フッ素樹脂繊維層114と摺動シート112との間を接着する接着層は、摺動シート112の貫通穴112Bを埋めることのないよう、摺動シート112の貫通穴112Bと同形状の穴を形成した接着シートから構成されることがよい。
【0042】
上記の接着シートとしては、融点以上に加熱することで熱融着を起こし、基体110と摺動シート112との間、基体110とフッ素樹脂繊維層114との間、及び、フッ素樹脂繊維層114と摺動シート112との間を接着しうるフッ素系接着シートが用いられる。特に、オイルとの相互作用がなく、更には、オイルによる劣化も抑制しうることからも、フッ素系接着シートがよい。
具体的には、フッ素系接着シートとしては、商品名:シルキーボンド(潤工社製)が用いられる。
また、接着シートの厚さとしては、10μm以上30μm以下の範囲で設定される。
【0043】
−製造方法−
次に、本実施形態に係る摺動部材101a及び101bの製造方法について説明する。
まず、基体110となるシート、摺動シート112、更には、摺動部材101bの場合にはフッ素樹脂繊維層114となるシートをそれぞれ準備する。
【0044】
次に、摺動シート112に貫通穴112Bを形成する。
貫通穴112B形成には、レーザー加工法、ドリルによる加工、金型を用いた打ち抜き加工などが用いられる。穴径が比較的大きい場合(例えば、径0.3mmを超えた場合)には打ち抜き加工が、小さい場合(例えば、径0.5mm未満の場合)はレーザーを用いることがよい。
ここで、レーザー加工法には、COレーザー、エキシマレーザー等が用いられる。
【0045】
また、摺動部材101bを製造する場合には、フッ素系接着シートについても貫通穴を形成する。
この貫通穴の形成は、摺動シート112における貫通穴112Bの形成と同様の方法が用いられ、摺動シート112の貫通穴112Bとフッ素系接着シートの貫通穴とが積層した際に連通するように、フッ素系接着シートの貫通穴の形状や位置は設定される。
以下、図3を参照して、摺動シート112の貫通穴112Bと、フッ素系接着シートの貫通穴について説明する。ここで、図3は、摺動シート112の貫通穴112Bとフッ素系接着シートの貫通穴との関係について説明するための上面図である。
例えば、図3(a)に示される貫通穴112Bを有する摺動シート112と図3(b)に示される貫通穴を備えたフッ素系接着シートと、においてそれぞれの円形の貫通穴は、図3(c)に示されるように、摺動シート112とフッ素系接着シートとを積層した際、連通するように形成されていることがよい。図3(c)に示されるように、フッ素系接着シートに形成された貫通穴の径は、摺動シート112の貫通穴112Bよりも大きく、このような形態とすることで、摺動シート112の貫通穴112Bを塞ぐことなく、摺動シート112とフッ素樹脂繊維層114となるシートとを接着しうる。なお、フッ素系接着シートに形成された貫通穴の径は摺動シート112の貫通穴112Bと同じであってもよい。
なお、摺動部材101aを製造する際に用いられるフッ素系接着シートは、貫通穴があってもよいし、なくてもよい。
【0046】
続いて、摺動部材101aの場合には、基体110となるシートと貫通穴112Bを有する摺動シート112とをフッ素系接着シートを用いて張り合わせる。
この張り合わせは、基体110となるシートと貫通穴112Bを有する摺動シート112との間にフッ素系接着シートを挟み、つまり、基体110となるシート/フッ素系接着シート/貫通穴112Bを有する摺動シート112の積層体を形成し、その上下から圧力を加え、更に加熱することにより行われる。
【0047】
また、摺動部材101bの場合には、基体110となるシートとフッ素樹脂繊維層114となるシートとをフッ素系接着シート(貫通穴なし)で、また、フッ素樹脂繊維層114となるシートと貫通穴112Bを有する摺動シート112とを貫通穴を有するフッ素系接着シートで、張り合わせる。
この張り合わせは、基体110となるシート/フッ素系接着シート(貫通穴なし)/フッ素樹脂繊維層114となるシート/貫通穴を有するフッ素系接着シート/貫通穴112Bを有する摺動シート112の積層体を形成し、その上下から圧力を加え、更に加熱することにより行われる。
【0048】
前記した張り合わせの際に積層体に印加される圧力は、1.0MPa以上2.0MPa以下の範囲で設定されればよく、また、加熱温度としては、320度以上350度以下の範囲で設定されればよい。
【0049】
以上の工程を経て、本実施形態に係る摺動部材101a及び101bは製造される。
【0050】
以上説明した本実施形態に係る摺動部材101a及び101bは、シート状の基体110と摺動シート112とを少なくとも有するシート状部材であったが、以下の形態であってもかまわない。
即ち、基体が金属製の押圧部材(押圧パッド)からなるものであってもよく、この基体表面に貫通穴112Bを有する摺動シート112が配置された摺動パッドも、本実施形態に係る摺動部材の一例として挙げられる。この摺動パッドとしては、例えば、第107回日本画像学会年次大会予稿集等に記載されているように、富士ゼロックス社製Color1000/800Pressに搭載されている定着装置内の剥離パッドが挙げられる。
【0051】
[定着装置]
以下、本実施形態に係る定着装置の一例について説明する。
本実施形態に係る定着装置としては、種々の構成があり、以下に、第1実施形態として、加熱源を有する加熱ロールと押圧パッドが押圧された加圧ベルトと備えた定着装置を説明し、第2実施形態として、加熱源が押圧された加熱ベルトと加圧ロールと備えた定着装置を説明する。
これらの定着装置におけるシート状の摺動部材として、前記した本実施形態に係る摺動部材が適用される。
【0052】
ここで、本実施形態に係る摺動部材を配置し、その摺動面を接触させる第2回転体の一例としての加熱ベルトや加圧ベルトの内面(内周面)は、例えば、その表面粗さRaが0.1μm以上2.0μm以下(望ましくは0.3μm以上1.5μm以下)であることがよい。
これにより、第2回転体の一例としての加熱ベルトや加圧ベルトと、摺動部材と、の摺動抵抗が低減し、潤滑剤(オイル)を介在させた場合、特に、当該部材間で潤滑剤を保持し易くなり、摺動部材の耐摩耗性が向上する。
なお、表面粗さRaの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で行う。
【0053】
−定着装置の第1実施形態−
まず、第1実施形態に係る定着装置60について説明する。図4は、第1実施形態の定着装置60の構成を示す概略図である。
【0054】
第1実施形態に係る定着装置60は、図4に示すように、例えば、回転駆動する第1回転体の一例としての加熱ロール61と、第2回転体の一例としての加圧ベルト62と、加圧ベルト62を介して加熱ロール61を押圧する押圧部材の一例としての押圧パッド64とを備えて構成されている。
なお、押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62と加熱ロール61とが相対的に加圧されていればよい。従って、加圧ベルト62側が加熱ロール61に加圧されてもよく、加熱ロール61側が加熱ロール61に加圧されてもよい。
【0055】
加熱ロール61は、例えば、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612及び離型層613を積層して構成されたものである。加熱ロール61の内部には、加熱手段の一例としてのハロゲンランプ66が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0056】
一方、加熱ロール61の表面には、例えば、感温素子69が接触して配置されている。この感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、加熱ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、150℃)を維持される。
【0057】
加圧ベルト62は、例えば、内部に配置された押圧パッド64とベルト走行ガイド63とによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域N(ニップ部)において押圧パッド64により加熱ロール61に対して押圧されて配置されている。
【0058】
押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62の内側において、加圧ベルト62を介して加熱ロール61に加圧される状態で配置され、加熱ロール61との間で挟込領域Nを形成している。
押圧パッド64は、例えば、幅の広い挟込領域Nを確保するための前挟込部材64aを挟込領域Nの入口側に配置し、加熱ロール61に歪みを与えるための剥離挟込部材64bを挟込領域Nの出口側に配置している。
【0059】
加圧ベルト62の内周面と押圧パッド64との摺動抵抗を小さくするために、例えば、前挟込部材64a及び剥離挟込部材64bの加圧ベルト62と接する面にシート状の摺動部材68が設けられている。そして、押圧パッド64と摺動部材68とは、金属製の保持部材65に保持されている。
なお、摺動部材68は、例えば、その摺動面が加圧ベルト62の内面と接するように設けられており、加圧ベルト62との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。前述したように本実施形態に係る摺動部材は、オイル保持・供給性能に優れており、定着装置内においてオイルの供給・保持が長期に亘り維持されることから、定着装置の長寿命化が達成される。
【0060】
保持部材65には、例えば、ベルト走行ガイド63が取り付けられ、加圧ベルト62が回転する構成となっている。
【0061】
加熱ロール61は、例えば、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62は、加熱ロール61の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、例えば、加熱ロール61が図4における時計方向へ回転するのに対して、加圧ベルト62は反時計方向へ回転する。
【0062】
そして、未定着トナー像を有する用紙K(記録媒体)は、例えば、定着入口ガイド56によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0063】
第1実施形態の定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に倣う凹形状の前挟込部材64aにより、前挟込部材64aがない構成に比して、広い挟込領域Nを確保される。
【0064】
また、第1実施形態に係る定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に対し突出させて剥離挟込部材64bを配置することにより、挟込領域Nの出口領域において加熱ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。
【0065】
このように剥離挟込部材64bを配置すれば、例えば、定着後の用紙Kは、剥離挟込領域を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、用紙Kが加熱ロール61から剥離しやすい。
【0066】
剥離の補助手段として、例えば、加熱ロール61の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70を配設されている。剥離部材70は、例えば、剥離爪71が加熱ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に加熱ロール61と近接する状態で保持部材72によって保持されている。
【0067】
−定着装置の第2実施形態−
次に、第2実施形態に係る定着装置80について説明する。図5は、第2実施形態に係る定着装置80の構成を示す概略図である。
【0068】
第2実施形態に係る定着装置80は、図5に示すように、例えば、第2回転体の一例として加熱ベルト84を備える定着ベルトモジュール86と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)に押圧して配置された第1回転体の一例としての加圧ロール88とを含んで構成されている。そして、例えば、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88とが接触する挟込領域N(ニップ部)が形成されている。挟込領域Nでは、記録媒体の一例としての用紙Kが加圧及び加熱されトナー像が定着される。
【0069】
定着ベルトモジュール86は、例えば、無端状の加熱ベルト84と、加圧ロール88側で加熱ベルト84が巻き掛けられ、モータ(図示省略)の回転力で回転駆動すると共に加熱ベルト84をその内面から加圧ロール88側へ押し付ける加熱押圧ロール89と、加熱押圧ロール89と異なる位置で内側から加熱ベルト84を支持する支持ロール90とを備えている。
定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84の外側に配置されてその周回経路を規定する支持ロール92と、加熱押圧ロール89から支持ロール90までの加熱ベルト84の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール94と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88とが接触する領域である挟込領域Nの下流側において加熱ベルト84を内面から張力を付与する支持ロール98とが設けられている。
【0070】
そして、定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84と加熱押圧ロール89との間に、シート状の摺動部材82が介在するように設けられている。
摺動部材82は、例えば、その摺動面が加熱ベルト84の内面と接するように設けられており、加熱ベルト84との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。前述したように本実施形態に係る摺動部材は、オイル保持・供給性能に優れており、定着装置内においてオイルの供給・保持が長期に亘り維持されることから、定着装置の長寿命化が達成される。
ここで、摺動部材82は、例えば、その両端が支持部材96により支持された状態で設けられている。
【0071】
加熱押圧ロール89は、アルミニウムからなる円筒状の芯金の表面の金属磨耗を防止する保護層として、芯金表面に坪量200μmのフッ素樹脂皮膜が形成されたハードロールである。
加熱押圧ロール89の内部には、例えば、加熱源の一例としてハロゲンヒータ89Aが設けられている。
【0072】
支持ロール90は、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、内部には加熱源の一例としてハロゲンヒータ90Aが配設されており、加熱ベルト84を内面側から加熱するようになっている。
支持ロール90の両端部には、例えば、加熱ベルト84を外側に押圧するバネ部材(図示省略)が配設されている。
【0073】
支持ロール92は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、支持ロール92の表面には厚み20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。
支持ロール92の離型層は、例えば、加熱ベルト84の外周面からのトナーや紙粉が支持ロール92に堆積するのを防止するために形成されるものである。
支持ロール92の内部には、例えば、加熱源の一例としてハロゲンヒータ92Aが配設されており、加熱ベルト84を外周面側から加熱するようになっている。
【0074】
つまり、例えば、加熱押圧ロール89と支持ロール90及び支持ロール92とによって、加熱ベルト84が加熱される構成となっている。
【0075】
姿勢矯正ロール94は、例えば、アルミニウムで形成された円柱状ロールであり、姿勢矯正ロール94の近傍には、加熱ベルト84の端部位置を測定する端部位置測定機構(図示省略)が配置されている。
姿勢矯正ロール94には、例えば、端部位置測定機構の測定結果に応じて加熱ベルト84の軸方向における当り位置を変位させる軸変位機構(図示省略)が配設され、加熱ベルト84の蛇行を制御するように構成されている。
【0076】
一方、加圧ロール88は、例えば、アルミニウムからなる円柱状ロール88Aを基体として、基体側から順に、シリコーンゴムからなる弾性層88Bと、膜厚100μmのフッ素樹脂を含む剥離層とが積層された構成となっている。また、加圧ロール88は、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリング等の付勢手段によって加熱ベルト84が加熱押圧ロール89に巻き回された部位に押圧されて設けられている。これにより、定着ベルトモジュール86の加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)が矢印E方向へ回転移動するのに伴って、加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)に従動して矢印F方向に回転移動するようになっている。
【0077】
そして、未定着トナー像を有する用紙Kは、定着装置80の挟込領域Nに導かれ、挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0078】
[画像形成装置]
次に、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
図6は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置では、上記実施形態に係る定着装置が適用される。
【0079】
本実施形態に係る画像形成装置100は、図6に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0080】
この定着装置60が既述の第1実施形態の定着装置60であり、当該定着装置は既述の本実施形態の摺動部材68を有してなる。なお、画像形成装置100は、既述の第2実施形態に係る定着装置80(既述の本実施形態の摺動部材82)を備える構成であってもよい。
【0081】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0082】
感光体11の周囲には、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、前記帯電手段により帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザー露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0083】
また、感光体11の周囲には、前記潜像形成手段により前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0084】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザー露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0085】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミド或いはポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
【0086】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図6に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0087】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0088】
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0089】
二次転写部20は、背面ロール25と、前記現像手段により形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段の一例としての、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0090】
背面ロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10Ω/□以上1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0091】
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0092】
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0093】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
【0094】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0095】
更に、本実施形態の画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを所定のタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0096】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0097】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザー露光器13に出力される。
【0098】
レーザー露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザーから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザー露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0099】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0100】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から所定サイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0101】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0102】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0103】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能であり、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能であることは言うまでもない。
【0105】
なお、本実施形態に係る画像形成装置では、電子写真方式の画像形成装置について説明したが、これに限られず、電子写真方式以外の公知の画像形成装置(例えば、用紙搬送用の無端ベルトを備えたインクジェット記録装置など)であってもよい。
【実施例】
【0106】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
最初に、架橋PTFEシート(日立電線製:エクセロンXF−1B、厚さ:0.1mm)にCOレーザーで貫通穴を形成した。具体的には、架橋PTFEシートとして、150mm×380mm×0.1mmのシートを用い、このシートの中央部の60mm×380mmの部分に、直径0.2mm、ピッチ0.6mmの間隔で貫通穴を形成した。
次に、150mm×380mm×0.09mmのポリイミドシートと、150mm×380mm×0.015mmのフッ素系接着シート(潤工社製:シルキーボンド)を用意した。
そして、フッ素系接着シートを、貫通穴付き架橋PTFEシートとポリイミドシートとの間に挟み、その上下から1MPaの圧力を加えて330℃で10分間加熱して貼り合わせた。
これにより、摺動部材101aと同様の構成を備えたシート状の摺動部材を得た。
【0108】
(実施例2)
貫通穴付き架橋PTFEシートを作製する際に、COレーザーによる加工法に代えて打ち抜き法を使った以外は、実施例1と全く同様にして、貫通穴付き架橋PTFEシートを得た。
この貫通穴付き架橋PTFEシートを用い、実施例1と同様の条件にて、ポリイミドシート/フッ素系接着シート/貫通穴付き架橋PTFEシートの積層体を張り合わせた。
これにより、摺動部材101aと同様の構成を備えたシート状の摺動部材を得た。
【0109】
(実施例3)
最初に、架橋PTFEシート(日立電線製:エクセロンXF−1B、厚さ:0.1mm)にCOレーザーで貫通穴を形成した。具体的には、架橋PTFEシートとして、150mm×380mm×0.1mmのシートを用い、このシートの中央部の60mm×380mmの部分に、直径0.2mm、ピッチ0.6mmの間隔で貫通穴を形成した。
次に、同様の方法で貫通穴付きフッ素系接着シートを用意した。即ち、150mm×380mm×0.015mmのフッ素系接着シート(潤工社製:シルキーボンド)の中央部の60mm×380mmの部分に、COレーザーで貫通穴(直径0.2mm、ピッチ0.6mm間隔)を形成したものを用意した。
更に、150mm×380mm×0.09mmのポリイミドシートと、150mm×380mm×0.015mmのフッ素系接着シート(潤工社製:シルキーボンド、貫通穴なし)と、150mm×380mm×0.12mmのフッ素樹脂繊維シート(ジャパンゴアテックス社製:ゴアファイバークロス、FS120−E)を用意した。
そして、ポリイミドシート/フッ素系接着シート(貫通穴なし)/フッ素樹脂繊維シート/貫通穴付きフッ素系接着シート/貫通穴付き架橋PTFEシートの順で積層した積層体を、その上下から1MPaの圧力を加えて330℃で10分間加熱して貼り合わせた。
これにより、摺動部材101bと同様の構成を備えたシート状の摺動部材を得た。
【0110】
(実施例4)
貫通穴付き架橋PTFEシートを作製する際に、COレーザーによる加工法に代えて打ち抜き法を使った以外は、実施例3と全く同様にして、貫通穴付き架橋PTFEシートを得た。
この貫通穴付き架橋PTFEシートを用い、実施例3と同様の条件にて、ポリイミドシート/フッ素系接着シート(貫通穴なし)/フッ素樹脂繊維シート/貫通穴付きフッ素系接着シート/貫通穴付き架橋PTFEシートの順で積層した積層体を張り合わせた。
これにより、摺動部材101bと同様の構成を備えたシート状の摺動部材を得た。
【0111】
(比較例1)
金属製のメッシュ(30メッシュ、線径0.2mm)を使い、厚さ0.2mmの架橋PTFEシート(日立電線製、エクセロンXF−1B_0.2T)に、180℃に加熱しながら加圧することで架橋PTFEシート表面に格子形状の凹凸を形成するエンボス加工を施した。ここで、形成された凹部は深さ0.05mmであった。
この架橋PTFEシートを、厚さ0.09mmポリイミドシートに、耐熱シリコーン接着剤を用いて接着し、シート状の摺動部材を得た。
【0112】
<評価>
各例で得られたシート状の摺動部材を、高速複写機(富士ゼロックス社製:Color 1000 Press)のベルト・ロールニップ方式の定着装置(図5参照:シート状の摺動部材を配置する加熱ベルトの内面の表面粗さRa=0.6μm)に取り付けて、プロセススピードを180ppm(枚/分)、800mm/secに上げて連続稼動させた際の、摺動部材の状態を目視にて観察することで、摺動部材の耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0113】
−耐久性の評価指標−
摺動部材の耐久性の評価基準は以下の通りである。
◎:1,200,000枚(1.2Mpv)後まで摺動部材の劣化(摩耗粉による黒色汚れや摺動抵抗の増加)が見られなかった
○:800,000枚(800Kpv)後まで摺動部材の劣化(摩耗粉による黒色汚れや摺動抵抗の増加)が見られなかった
×:600,000枚(600Kpv)までに摺動部材の劣化(摩耗粉による黒色汚れや摺動抵抗の増加)が見られた
【0114】
【表1】

【0115】
上記結果から、本実施例のシート状の摺動部材は、比較例に比べ、耐久性に優れていることが分かる。
これは、本実施例のシート状の摺動部材がオイルの保持性能に優れるため、被摺動部材(加熱ベルト)との間の摩擦係数の上昇が抑制され、それが維持されることに起因する。 このように、本実施例の摺動部材の耐久性が優れることで、その寿命(ライフ)が長くなり、結果として、これを備える定着装置や画像形成装置の長寿命化を達成しうる。
【符号の説明】
【0116】
11 感光体(像保持体)
12 帯電器(帯電手段)
13 レーザー露光器(潜像形成手段)
14 現像器(現像手段)
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール(転写手段)
22 二次転写ロール(転写手段)
60 定着装置(定着手段)
61 加熱ロール
62 加圧ベルト
63 ベルト走行ガイド
64 押圧パッド
64a 前挟込部材
64b 剥離挟込部材
65 保持部材
66 ハロゲンランプ
68 摺動部材
69 感温素子
70 剥離部材
71 剥離爪
72 保持部材
80 定着装置
82 摺動部材
84 加熱ベルト
86 定着ベルトモジュール
88A 円柱状ロール
88 加圧ロール
88B 弾性層
89 加熱押圧ロール
89A ハロゲンヒータ
90 支持ロール
90A ハロゲンヒータ
92 支持ロール
92A ハロゲンヒータ
94 姿勢矯正ロール
96 支持部材
98 支持ロール
100 画像形成装置
101a、101b 定着装置用摺動部材
110 シート状の基体
112 架橋ポリテトラフルオロエチレンからなる摺動シート
112A 摺動面
112B 貫通穴
114 フッ素樹脂繊維層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
該基体の表面に配置され、且つ、厚さ方向に貫通する貫通穴を有する架橋ポリテトラフルオロエチレンから構成される摺動シートと、
を備えた定着装置用摺動部材。
【請求項2】
前記基体と前記摺動シートとの間にフッ素樹脂繊維層を備える請求項1に記載の定着装置用摺動部材。
【請求項3】
前記基体と前記摺動シートとの間にフッ素系接着シートを備える請求項1又は請求項2に記載の定着装置用摺動部材。
【請求項4】
前記貫通穴は、該貫通穴間の周期が0.2mm以上2.0mm以下であり、且つ、該貫通穴の1つ当たりの面積が7×10−3mm以上3.2mm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着装置用摺動部材。
【請求項5】
第1回転体と、
第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、
前記第2回転体の内部に配置され、前記第2回転体の内面から第2回転体を第1回転体へ押圧する押圧部材と、
前記第2回転体の内面と前記押圧部材との間に介在する摺動部材であって、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の定着装置用摺動部材と、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
を備える定着装置。
【請求項6】
前記第2回転体の内面の表面粗さRaが、0.1μm以上2.0μm以下である請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段であって、請求項5又は請求項6に記載の定着装置である定着手段と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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