説明

実験用容器の内容物を混合するためのマルチステーション装置

本発明は、容器、特に実験用容器を、特に交換可能なブロック(13、14、16、18)内に収容するためのホルダをそれぞれ有する少なくとも2つのレセプタクルアダプター(4、6、8、10)と、水平面において、レセプタクルアダプターの各点が、それぞれの中心の周りで同じ半径、同じ角速度および同じ角度位置で環状の動作(環状に並進して振動する混合動作)を行うように、レセプタクルアダプターのそれぞれを、同じ角速度を有する混合動作において設定することができる駆動装置(22)とを有する、特に実験用容器の内容物を混合するためのマルチステーション混合装置(2)であって、混合動作の際に起こる不均衡が少なくとも部分的に互いに補正されるように、レセプタクルアダプターが、環状に並進して振動する混合動作において駆動装置によって設定され得る起点となる、レセプタクルアダプターの開始位置が、混合動作の方向に所定の角度だけ回転されることを特徴とするマルチステーション混合装置(2)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、特に実験用容器を、交換可能なサーモブロック内に収容するためのホルダをそれぞれ有する少なくとも2つのアダプター板と、アダプター板のそれぞれを、水平面において環状に並進して振動する混合動作において同じ角速度で駆動することができる駆動機構とを有する、特に実験用容器の内容物を混合するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の内容物を混合する混合装置は十分に周知である。特に実験用に、小さい容器がさらに、「交換可能なサーモブロック」と呼ばれる好適なホルダ内に、数十、数百またはさらには数千という非常に多くのまとまりで組み合わせられることにより、少量の液体を混合することもできる混合器がある。このような交換可能なサーモブロック、さらにまた反応容器は、標準化することができる。例えば、0.2ml、0.5ml、1.5mlおよび2.0mlの含有量を有する反応容器、およびこれらのために標準化されたそれぞれの好適な交換可能なサーモブロックがある。さらに、例えば、凍結チューブ(cryo tubes)用、Falconチューブ(1.5mlおよび50ml)用、ガラス容器およびガラスビーカー用、マイクロタイタープレート(MTP)用、ディープウェルプレート(DWP)用、スライド(slides)用、ならびに96ウェルPCRプレート用の交換可能なサーモブロックがある。このリストは限定的なものではなく、混合器を適したものにすべきである多種多様な実験用容器が存在することを示すものである。このため、いわゆる「フットプリント(footprints)」、すなわち、交換可能なサーモブロックの基礎構造を規定する規格および規制がある。
【0003】
これらの交換可能なサーモブロックは、基本的に、個々の容器がそれらに上から挿入されるように設計されるため、既知の混合器では、環状に並進して振動し、ほぼ水平面で起こる混合動作が定着している。このため、既知の混合器においては、通常、起電力が不均衡な駆動装置(electromotive imbalance drive)が、この環状動作において「台」を駆動する役割を果たす。このため、前記台は、様々な方法で取り付けられることが知られている。例えば、2つの水平方向において直動転がり軸受(いわゆる球面ブッシュ)に取り付けることが知られているが、フィルムヒンジ軸受も知られている。あるいは、電磁的な取り付け、またはそれぞれ駆動装置としても同様に用いることができる圧電素子を用いた取り付けもある。
【0004】
このような混合器は、通常、200rpm〜1500rpmの回転数で駆動される。混合動作の回転数が、混合材料に必要な混合に基づいて、さらには機械的混合パラメータに基づいて設定可能であることが知られている。
【0005】
特に大規模な実験作業においては、マルチステーション混合器(multistation mixers)として知られているものを使用するのが有用であることが分かっている。交換可能なサーモブロックについて、これらは、特に、実験用混合容器用のいくつかの交換可能なサーモブロックを同時に収容し、それによって混合動作の際により多数の実験用容器を同時に駆動するのに適している。
【0006】
上記の環状の混合動作からは不均衡の問題が物理的に生じる。この問題はおもりを適切に配置することによって解決され、このおもりは、回転駆動されるアダプター板とつながっており、また不均衡を補正するために回転する。シングルステーション混合器(single−station mixers)においてさえ、この種のおもりがさらなる構造部品であり、これは組立ての際に調整する必要があり、かつ装置の重量全体をさらに増加させる。マルチステーション混合器においては、マルチステーション混合装置のアダプター板の数とともに、この問題がいわば倍増される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対し、本発明の目的は、不均衡が補正されるとともに、より軽量でエネルギー効率が高く、かつより少ない部品で構成されるマルチステーション混合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する混合装置によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明によれば、特に、実験用容器の内容物を混合するための混合装置には、アダプター板および駆動機構が設けられている。アダプター板は、容器を収容するのに適したホルダを有する。これは、好ましくは、アダプター板が駆動機構を用いて駆動され得る混合動作時の平静な(undisturbed)運転の際に容器が自然に外れないように、容器をアダプター板のホルダに導入できることを意味することを意図している。アダプター板のホルダは、特に交換可能なサーモブロックにおける実験用容器の、特に接続部の寸法に関して、特定の規格を満たすのが好ましい。
【0010】
本発明による混合装置の駆動機構は、平面において環状に並進して振動する混合動作の際にアダプター板を移動させることができる。「環状に並進して振動する」は、本発明によるこのような混合動作の際に、アダプター板の各点が、平行面のそれぞれの中点を中心として、同じ半径、同じ角速度および同じ角度位置で環状動作を行うということによって言い換えることができる。アダプター板に収容される交換可能なサーモブロックが、それらの中に直立して配置される反応容器とともに、確実な運転で混合される結果として、混合動作は水平面において起こる。
【0011】
本発明による装置は、特に、運転時のそれぞれの環状の混合動作によって発生する不均衡が少なくとも部分的に補正されるように、同じ角速度で環状に並進して振動する混合動作を開始する開始位置が、それぞれの回転中点を中心として互いに対して回転されるアダプター板を特徴とする。
【0012】
「互いに対して回転される」は、環状の混合動作の開始時のアダプター板の開始位置が、混合動作のそれぞれの回転中点を中心として別のアダプター板の開始位置から、所定の角度だけ外れることを示すことが意図される。
【0013】
このため、混合装置の駆動機構は、特に好ましくは同じ回転方向にアダプター板を駆動する。
【0014】
本発明による装置の平面図において、アダプター板は、仮想円上で鏡面対称におよび/または均等に配置されるのも好ましい。例えば、4つのアダプター板が、1つの対称軸に対してだけでなく、(第1の対称軸に対して直角における)第2の対称軸に対しても鏡面対称である。または、例えば、3つのアダプター板が、正三角形を形成するのが好ましく、その場合、アダプター板は、仮想円上で均等に配置された、互いに120°の角度をなす3つの対称軸に対して鏡面対称に配置される。4つのアダプター板は、仮想矩形の角で互いに対して配置することができ、すなわち、互いに対して直角である2つの対称軸に対して互いに鏡面対称である。(また、回転軸が正三角形を形成するように配置される3つのアダプター板の場合のように)アダプター板が仮想円上で均等に配置されるように、4つのアダプター板の正方配置(square arrangement)も本明細書において可能である。挙げることのできる他の例には、均等な六角形を形成し得る6つのアダプター板が含まれる。
【0015】
例えば上記のように混合装置上に配置される、(アダプター板が同じ角速度で混合動作を開始する)アダプター板の開始位置は、360°をアダプター板の合計数で除算して好ましくは計算される角度だけ、それぞれの回転中点を中心として互いに対して回転される。例えば、その結果として、4つのアダプター板が90°、3つのアダプター板が120°、6つのアダプター板が60°互いに対して回転される。もう一度強調するために、「互いに対して回転される」は、環状の混合動作の開始時のアダプター板の開始位置が、それぞれの回転中点を中心として別のアダプター板の開始位置から、所定の角度だけ外れることを示すことが意図される。
【0016】
さらに、特にアダプター板が上記のように配置される場合、正反対にあるアダプター板の開始位置が互いに対して180°回転されるのが特に好ましい。例えば、6つのアダプター板が矩形上にほぼ配置される場合(4つが矩形の角に配置され、他の2つのそれぞれが矩形の長辺のうちの1つの中間に配置される)、角上で互いに正反対にある2つのアダプター板の対が互いに対して180°回転され、矩形の長辺の中間において互いに対向しているアダプター板の対も同様である。一方の対から他方の対への開始位置は、この場合もまた好ましくは60°だけ異なる。
【0017】
一般に、アダプター板に様々な負荷がかかることがあるため、本発明によって達成される不均衡の補正は理想的な形で物理的に機能しないことがあることが留意されるであろう。したがって、本発明によれば、不均衡が本発明によって少なくとも部分的に互いに補正され、および/または回転相において少なくとも低減されるのが有利である。
【0018】
本発明のさらなる利点および特徴が、本発明の例示的実施形態を示す添付の図面を参照して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】4つのアダプター板を有する、本発明による混合装置の立体図を示す。
【図2】図1に記載の装置の4つのアダプター板の概略的平面図を示す。
【図3】混合動作の方向において本発明による回転のない、図1に記載の装置の4つのアダプター板の駆動機構および軸受の平面図を示す。
【図4】環状に並進して振動する混合動作を例示するための、図2に記載の4つのアダプター板のうちの1つの概略的平面図を示す。
【図5】混合動作の方向における開始位置の本発明のよる回転を例示するための、図2に記載の4つのアダプター板のうちの1つの概略的平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において、交換可能なサーモブロック12、14、16および18を収容するためのホルダをそれぞれ有する4つのフレームの形状のアダプター板4、6、8および10が上部に配置された混合装置2が見られる。混合装置2の筐体20の内部の駆動機構によって、水平面において、それぞれのアダプター板の各点が、それぞれの中点を中心として、同じ半径、同じ角速度および同じ角度位置で環状の動作(環状に並進して振動する混合動作)を行うように、アダプター板のそれぞれが、各アダプター板4、6、8および10の同じ角速度で起こる混合動作において駆動され得る。このために混合装置2に設けられる駆動機構22、ならびにアダプター板4、6、8および10の軸受24、26、28および30が、図3に示されており、環状に並進して振動する混合動作の概略図が図4に見られる。
【0021】
まず図4を参照すると、環状に並進して振動する混合動作(混合装置2のアダプター板4、6、8および10のそれぞれの混合動作;アダプター板10が例として示されている)において、図4に見られるような、アダプター板の各点(左上隅Lおよび右上隅R、さらにまたアダプター板の重心Sが、例として強調されている)が、それぞれの中点M、MおよびMを中心として同じ半径、同じ角速度および同じ角度位置で、(環形状の3つの矢印によって示される)環状経路上の水平面(図4の紙面)において移動する。
【0022】
図3は、(混合動作の方向においてアダプター板の開始位置の本発明による回転のない)図1に記載の混合装置2の駆動機構22の内側構造の平面図を示している。この図は、軸受24、26、28および30ならびに駆動機構22により、装置の台20(その上にこの混合動作用の駆動モータ18も固定される)に対してアダプター板4、6、8および10の上記の混合動作が可能になり;アダプター板4、6、8および10のそれぞれが、装置の台に対して方向xにおいてある程度の自由度を有するフィルムヒンジ装置25および方向yにおいてある程度の自由度を有するフィルムヒンジ装置27によって、軸受24、26、28および30を介して取り付けられる様子を特にはっきりと示している。これにより、ベルト駆動装置22が、水平面(図2〜5の紙面)において図4に記載の環状に並進して振動する混合動作においてアダプター板4、6、8および10を移動することが可能になる一方、フィルムヒンジ軸受は、水平面から外れたいかなる実質的な動作も許容しない。
【0023】
図2に記載の概略的平面図から、4つのアダプター板4〜10が同じ方向に回転する(アダプター板の重心Sにおける小さい矢印がそれぞれの回転動作を示す)ことが分かるであろう。また、アダプター板4〜10の重心の回転動作の中点Mが仮想矩形32の端点において配置されることも分かるであろう。アダプター板4〜10の間隔がデシメートル台である一方、回転動作の半径はミリメートル台である(図3の誇張された概略図においてではなく、互いに対して実際の関係において)ため、アダプター板4〜10のこの構成は、本発明によれば、好ましくは、「平面図において実質的に鏡面対称」(すなわち互いに対して直角に延在する対称軸34、36に対して対称)と示され得る。
【0024】
最後に、4つのアダプター板4〜10の開始位置が「互いに対して回転される」ことも分かるであろう。アダプター板が、(重心Sにおける小さい矢印によって示される)その混合動作を開始し、開始位置から互いに対してそれぞれ90°(すなわち、本発明による好ましい計算によって、360°をアダプター板の合計数で除算)回転される。2つの他の正反対のアダプター板6、8の重心Sと同様に、正反対のアダプター板4、10の重心Sは互いに対して180°回転され、これらのアダプター板の対4、10および6、8は、今度は、常にそれぞれの回転中点Mに対して互いに対して90°回転される。
【0025】
「互いに対して90°回転される」をもう一度例として示すために、図5が参照される。アダプター板8の開始位置が点線で示されている一方、アダプター板4の開始位置が実線で示されている。アダプター板4(の重心)が、(重心の回転中点Mを中心として示される)アダプター板8(の重心)に対して90°回転されることが分かるであろう。
【0026】
したがって、好ましくない不均衡を低減する本発明の効果は、示される例において互いに対して90°の、アダプター板の開始位置の本発明による回転とともに、水平面における環状に並進して振動する混合動作から得られる(よって、示される例においては、(水平動作面のx方向およびy方向において)各アダプター板4〜10の結果として得られる2つの並進自由度を有する図3に記載のフィルムヒンジ軸受から機械的に得られ、その際、アダプター板4〜10が、(図2によって概略的に示されるように)ベルト駆動装置22によって回転して駆動される)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器、特に実験用容器を、特に交換可能なサーモブロック内に収容するためのホルダをそれぞれ有する少なくとも2つのアダプター板と、
水平面において、前記アダプター板の各点が、それぞれの中点を中心として、同じ半径、同じ角速度および同じ角度位置で環状の動作(環状に並進して振動する混合動作)を行うように、前記アダプター板のそれぞれを、同じ角速度で起こる混合動作において駆動することができる駆動機構と
を有する、特に実験用容器の内容物を混合するためのマルチステーション混合装置であって、
前記混合動作の際の不均衡が少なくとも部分的に補正されるように、前記アダプター板が、前記環状に並進して振動する混合動作において前記駆動機構によって駆動され得る起点となる、前記アダプター板の開始位置が、それぞれの角度位置において、前記混合動作の方向に所定の角度だけ互いに対して回転されることを特徴とするマルチステーション混合装置。
【請求項2】
前記駆動機構が、前記アダプター板を同じ回転方向に駆動することを特徴とする請求項1に記載のマルチステーション混合装置。
【請求項3】
前記アダプター板が、平面図で見て、(仮想)円上で実質的に鏡面対称におよび/または均等に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチステーション混合装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのアダプター板の開始位置が、360°を前記アダプター板の合計数で除算して計算される角度だけ、互いに対して回転されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のマルチステーション混合装置。
【請求項5】
アダプター板が偶数であること、ならびに正反対に配置されたアダプター板の前記開始位置が、互いに対して180°回転されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のマルチステーション混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−520038(P2010−520038A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551142(P2009−551142)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001646
【国際公開番号】WO2008/107139
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(591121683)エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフト (23)
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf AG
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, D−22339 Hamburg, Germany
【Fターム(参考)】