説明

室内の清浄化方法

【課題】居室や作業空間内において微生物の病原作用を短時間で除去する。
【解決手段】H+(H2O)mから成るプラスイオンとO2-(H2O)nから成るマイナスイオンとを発生させるイオン発生器17、18と、前記イオン発生器17で発生した前記プラスイオン及びマイナスイオンイオンを吹出口から送出する送風機とを有したイオン拡散装置を運転し、居室内に前記プラスイオンとマイナスイオンを高濃度に広範に分布させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の居室、作業空間や家畜等育成室内において空気中に浮遊し、または壁等に付着しているウイルス、細菌、真菌、各種アレルゲン等の微生物(特に病原微生物)をプラスイオン及びマイナスイオンを用いて、その病原作用を除去する室内の清浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを放出することにより、居室内の空気を清浄化する技術が盛んに用いられている(特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載されたイオン拡散装置では、清浄化の対象となる空間に気流を放出する通気路の途中にプラスイオン及びマイナスイオンを発生するイオン発生器を配置し、プラスイオン及びマイナスイオンを外部の空間に放出するようにしている。
【0003】
外部に放出されたイオンは、浮遊菌を死滅させ、ウイルスを不活化させるために、居室全体の空気が清浄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3797993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のイオン発生器を備えた機器では、プラスイオン及びマイナスイオンによる空間清浄化の機能は、居室内の粉塵や臭いをフィルタで除去したり、居室内の温湿度を適当に調節するという空気清浄機や空気調和機の本来的な機能に付随する付加的な機能に留まるものである。すなわち、プラスイオン及びマイナスイオンの機能に重点を置いて開発された製品とはなっていなかった。
【0006】
例えば、プラスイオン及びマイナスイオンを発生するイオン発生器を備えた機器では、6〜8畳程度の居室であっても、居室内空気中のイオン濃度は平均2,000個/cm3から3,000個/cm3程度であり、浮遊細菌であってもワンパス試験では90%しか滅菌できなかった。従って、ウイルスの変化に伴い、出現する新型のトリインフルエンザ、ヒトインフルエンザに代表される悪性のウイルスに対しては、前記空気清浄機や空気調和機では、悪性ウイルスを除去する前に、同一居室空間にいる人に人体に感染するおそれがある。
【0007】
ここで、通常安静時に、人が1回の呼吸で吸い込む空気の体積は約500cm3であり、これは居室内の空間体積からすれば非常に微々たる量の空気である。このことからして、居室内で人が咳やくしゃみをして周囲に飛散したウイルスを、同室する別の人が吸引して感染するには最低でも数分の時間が掛かることが予想される。したがって、ウイルスが飛散してから10分程度で99%以上のウイルスを不活化させることが、ウイルスの感染を防止するために実用的なレベルであると言える。
【0008】
例えば、ノロウイルスは100個程度のウイルス接種で感染が成立すると言われているので、居室内に10,000個のウイルスがあるとすれば99%除去しても100個残ることになり、感染の可能性が依然として否定できないが、短時間で99.9%除去できれば残存ウイルスは10個しかないので感染確率をかなり低くすることができる。すなわち、ウイルスの世界では、99%の除去率と99.9%の除去率では、わずか0.9%の違いとはいえ感染確率の面では雲泥の差があることが理解される。
【0009】
もちろんウイルスや細菌を薬品で100%死滅除去させることは可能であるが、居室内において、人体に悪影響を及ぼすことなく、当該悪性のウイルスや細菌(特に病原微生物)に働きかけて、それを短時間で死滅除去させ、人体への感染を高いレベルで防止する方法はこれまで全く存在していない。
【0010】
なお、本明細書において、微生物とはウイルス、細菌、カビ類と、人体がアレルギー反応を示すアレルゲンを含むものとする。そして、この微生物が人体にとって病気等の不都合な作用を起こす場合、これを病原微生物と称する。また、この微生物が人体に対して起こす不都合な作用を病原作用と呼び、この病原作用をなくすことを除去と称する。従って、ウイルスを不活化すること、細菌、カビ類を死滅させること、アレルゲンを解質してその作用をなくすことなどが微生物の病原作用を除去することに相当する。
【0011】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、室内において微生物の病原作用を短時間で除去できる室内の清浄化方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の室内の浄化方法は、H+(H2O)mから成るプラスイオンとO2-(H2O)n(m、nは任意の整数)から成るマイナスイオンとを発生させるイオン発生器と、前記イオン発生器で発生した前記プラスイオン及びマイナスイオンを吹出口から室内に送出する送風機とを有したイオン拡散装置を運転し、前記プラスイオンとマイナスイオンを室内に送出することにより、居室内に前記プラスイオンとマイナスイオンを高濃度に広範に分布させ、浮遊状態にある微生物および/または付着状態にある微生物から病原作用を除去するものである。
【0013】
また本発明は、上記の室内の清浄化方法において、前記室内空気における前記プラスイオンとマイナスイオンの濃度を7,000個/cm3以上にしたことを特徴とする。これによると、浮遊状態のウイルスの病原作用を短時間で99%以上することが可能となる。
【0014】
また本発明は、上記の室内の清浄化方法において、前記室内空気における前記プラスイオンとマイナスイオンの濃度を30,000個/cm3以上にしたことを特徴とする。これによると、付着状態のカビ菌の増殖を抑制することが可能となる。
【0015】
また本発明は、上記の室内の清浄化方法において、前記室内空気における前記プラスイオンとマイナスイオンの濃度を50,000個/cm3以上にしたことを特徴とする。これによると、浮遊状態のウイルスの病原作用を短時間で99.9%以上除去すると共に付着状態の細菌の病原作用を99%以上除去することが可能となる。
【0016】
また本発明は、上記の室内の清浄化方法において、前記吹出口と前記送風機との間を連結するダクトを有するとともに、前記イオン発生器がプラスイオンを発生するプラスイオン発生部とマイナスイオンを発生するマイナスイオン発生部とを有し、前記ダクトを通流する空気を前記イオン発生器の上流側で整流する整流部を前記送風ダクトに設け、前記プラスイオン発生部と前記マイナスイオン発生部とを通流方向に交差する方向に離れて配置したことを特徴とする。
【0017】
これによると、通流方向に延びて、プラスイオン発生部から発生するプラスイオンのみが流れる領域とマイナスイオン発生部から発生するマイナスイオンのみが流れる領域の2つの領域が通流方向に交差する方向に離れて形成される。従って、プラスイオンとマイナスイオンが打ち消し合うことによるイオン損失が防止され、居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを大量に拡散させることができるようになる。
【0018】
また本発明は、上記の室内の清浄化方法において、前記プラスイオン発生部と前記マイナスイオン発生部との間を気流に沿って仕切る仕切部を設けたことを特徴とする。
【0019】
これによると、送風ダクトを流通する気流に沿う方向に延びて形成される、プラスイオンのみが流れる領域とマイナスイオンのみが流れる領域の2つの領域が仕切部によって仕切られる。従って、プラスイオンとマイナスイオンが打ち消し合うことによるイオン損失が確実に防止され、居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを効率良く大量に拡散させることができるようになる。
【0020】
また本発明は、上記の室内の清浄化方法において、前記プラスイオン発生部から発生するプラスイオンと前記マイナスイオン発生部から発生するマイナスイオンの量が、いずれもその発生部から50cm離れた位置で150万個/cm3以上であることを特徴とする。
【0021】
これによると、イオン発生器からプラスイオン及びマイナスイオンが絶えず豊富に発生するので、居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを高濃度で分布させることが容易になる。
【0022】
また本発明は、上記の室内の清浄化方法において、前記吹出口から略水平方向に気流を送出し、該気流の上部の吹出速度を下部の吹出し速度よりも速くしたことを特徴とする。
【0023】
これによると、吹出口の上部から吹き出される速度の速い気流がエアカーテンとなり、速度の遅い下部の気流に含まれたイオンが居室の下部に供給される。よって、エアカーテンでイオンの上方への拡散が抑制され、居室内のある程度の床面高さ(例えば、人の身長程度の高さ)以下の空間にイオンを上記した10,000個/cm3以上のイオン濃度で広範に分布させせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、室内において微生物の病原作用を短時間で除去することができる。従って、室内での病原微生物による感染症の予防に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置を示す斜視図
【図2】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置を示す側面断面図
【図3】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置のイオン発生器の構成を示す平面図(a)及び側面図(b)
【図4】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置のダクトを示す側面断面図
【図5】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置のダクトの左右拡幅部を示す平面図
【図6】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図7】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の交互駆動モードでの運転の処理手順の一例を示すフローチャート
【図8】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の交互駆動モードにおいて出力インターフェースのそれぞれから制御入力PC1、PC2へ入力される駆動信号のタイミングチャート
【図9】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の交互駆動モードにおいて各左右分割通路を通流して居室内に送出されるプラスイオン及びマイナスイオンの様子を示す説明図
【図10】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の全体駆動モードでの運転の処理手順の一例を示すフローチャート
【図11】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の全体駆動モードにおいて出力インターフェースのそれぞれから制御入力PC1、PC2へ入力される駆動信号のタイミングチャート
【図12】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の全体駆動モードにおいて各左右分割通路を通流して居室内に送出されるプラスイオン及びマイナスイオンの様子を示す説明図
【図13】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置の居室内の送風状態を示す斜視図
【図14】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置による図13の鉛直面Dにおけるイオン濃度の測定結果を示す図
【図15】本発明の第1実施形態に係るイオン拡散装置による図13の鉛直面Eにおけるイオン濃度の測定結果を示す図
【図16】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の構成を示す縦断側面図
【図17】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の要部の構成を示す正面図
【図18】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の要部の構成を示す側面図
【図19】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置のイオン発生器の構成を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図
【図20】室内の床に据えられた本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の吹出口から吹出された空気を室内で測定する見取図
【図21】図20の各測定点で空気中のイオン量を測定した結果を示すデータ
【図22】本発明の第3の実施形態に係るイオン放出装置の構成を示す縦断正面図
【図23】本発明の第3の実施形態に係るイオン放出装置の構成を示す縦断側面図
【図24】本発明の第3の実施形態に係るイオン放出装置のイオン発生器の構成を示す一部を省略した正面図
【図25】本発明のプラスイオン及びマイナスイオンを居室内で高濃度に分布させる技術によって新たに実現が可能となる効果効能を示す図
【図26】プラスイオン及びマイナスイオンの発生メカニズムの説明図
【図27】プラスイオン及びマイナスイオンによるウイルス不活化メカニズムの説明図
【図28】プラスイオン及びマイナスイオンで処理したH5N1型トリインフルエンザウイルスの細胞への感染力低減効果を調べた試験の方法及び装置説明図
【図29】代表的なウイルス感染力評価方法であるTCID50法の説明図
【図30】プラスイオン及びマイナスイオンで処理したH3N2型トリインフルエンザウイルスのヒヨコへの感染力低減効果を調べた試験の方法及び装置説明図
【図31】図30の試験で得られた、プラスイオン及びマイナスイオンの濃度とヒヨコの感染率及び抗体保有率の関係を示すグラフ
【図32】ウイルス濃度とヒヨコの感染確率の関係の一例を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の代表的な実施形態を図面を参照して説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のイオン拡散装置を示す外観斜視図である。イオン拡散装置1はハウジング2の左右端に脚部2aが設けられ、居室内の床面に設置される。ハウジング2の前面上部には吹出口10が開口する。
【0028】
図2はイオン拡散装置1の側面断面図を示している。ハウジング2の底面には居室内の空気を吸い込む吸込口3が設けられる。ハウジング2の下部にはハウジング5aにより覆われる送風機5が配される。送風機5は所定の回転数で回転駆動されるクロスフローファンから成り、吸気口5bから回転翼(不図示)の周方向からハウジング5a内に吸気し、排気口5cから周方向に排気する。吸込口3と送風機5との間にはエアフィルタ4が設けられる。
【0029】
送風機5の排気口5cと吹出口10とは送風機5による気流が通流するダクト6により連結される。ダクト6はハウジング5aと一体に形成され、図示の通り、上方に延びて前方に屈曲する。ダクト6内には上下方向に分割された複数の上下分割通路11,12,13,14が上方から順に設けられる。以下、ダクト6の上下分割通路11〜14を通流する気流の方向を「通流方向(図5の矢印A方向)」と称し、これに交差する方向を「通流方向に交差する方向(図5の矢印B方向)」と称する。
【0030】
上部の上下分割通路11が送風機5の外周側に配され、下部の上下分割通路14が送風機5の内周側に配される。吹出口10は各上下分割通路11〜14に対応して上下に分割され、開口部10a,10b,10c,10dが形成される。詳細を後述するように、各上下分割通路11〜14は上流側に上下拡幅部7が設けられ、下流側に左右拡幅部8が設けられる。上下分割通路14の下壁には、第1及び第2のイオン発生器17及び18のイオン発生部17A,17B及びイオン発生部18A,18B(図3参照)が設けられた保持体19の上面を露出させるように切り欠き(不図示)が設けられている。
【0031】
図3は、本実施形態のイオン発生器の構成を示す平面図である。第1及び第2のイオン発生器17及び18は、通流方向に交差する方向へ離隔した2つのイオン発生部17A,17B及び18A,18Bと、イオン発生部17A,17B及び18A,18Bに電圧を供給する給電部(不図示)と、イオン発生部17A,17B及び18A,18B及び給電部を保持する保持体19とを備え、給電部がイオン発生部17A,17B及び18A,18Bに電圧を供給することにより、イオン発生部17A,17Bがコロナ放電し、イオンを発生するように構成されている。
【0032】
イオン発生部17A,17Bは、尖鋭状をなす放電電極凸部17Aa,17Ba、及び該放電電極凸部17Aa,17Baを囲繞する誘導電極環17Ab,17Bbを有し、誘導電極環17Ab,17Bbそれぞれの中心部に放電電極凸部17Aa,17Baを配してあり、一方のイオン発生部17Aがプラスイオンを発生し、他方のイオン発生部17Bがマイナスイオンを発生するように構成されている。第2のイオン発生器18のイオン発生部18A,18Bについても同様であり、一方のイオン発生部18Aがプラスイオンを発生し、他方のイオン発生部18Bがマイナスイオンを発生するように構成されている。なお、イオン発生部17Bの通流方向の下流側には、イオン発生量の異常を検知するためのイオンセンサ20が配されている。
【0033】
第1及び第2のイオン発生器17及び18は、上下分割通路14の下壁に取付けられ、空気が通流する通流方向と交差する位置に二つのイオン発生部17A,17B及び18A,18Bを配してある。
【0034】
上下分割通路14の下壁に取り付けられるイオン発生器17,18は、2個を1つの保持体19に保持したカートリッジ式である。カートリッジの交換は、イオンセンサ20がイオン発生量の異常を検知したときや所定の取り替え期間が経過したときに行うようにしている。2個のイオン発生器17,18は、通流方向へ離隔し、かつ、イオン発生部の極性が反転する配置で並置されている。カートリッジを装着した状態では、最下段の上下分割通路14の下壁の切り欠きに保持体19の上面が位置し、第1及び第2のイオン発生器17及び18のイオン発生部17A,17B及び18A,18Bが、上下部分割通路14内に露出することになる。保持体19の上面は、通流方向に湾曲し、かつイオン発生部17A,17B,18A,18Bのそれぞれに対応する4箇所が開口19aされている。
【0035】
なお、本実施形態では、保持体19が2個のイオン発生器を保持した場合を示すが、3個或いはそれ以上保持した構成として、通流方向に離隔して並置されるイオン発生器の数を増やしてもよい。
【0036】
図26は、プラスイオン及びマイナスイオンの発生メカニズムの説明図である。イオン発生部17A,18Aには正電圧が印加され、放電によるプラズマ領域で、空気中の水分子が電気的に分解され、主として水素イオンH+が生成する。そして、生成した水素イオンの周りに空気中の水分子が凝集し、安定した電荷が正のクラスターイオンH+(H2O)mが形成される。イオン発生部17B,18Bには負電圧が印加され、放電によるプラズマ領域で、空気中の酸素分子が電気的に分解され、主として酸素イオンO2-が生成する。そして、生成した酸素イオンの周りに空気中の水分子が凝集し、安定した電荷が負のクラスターイオンH+(H2O)mが形成される。ここで、m、nは任意の整数である。この明細書中で「プラスイオン」というときは正のクラスターイオンを意味し、「マイナスイオン」というときは負のクラスターイオンを意味するものとする。なお、正負のクラスターイオンの生成は、飛行時間分解型質量分析法により確認している。
【0037】
図27は、プラスイオン及びマイナスイオンによる浮遊ウイルス不活化メカニズムの説明図である。プラスイオン及びマイナスイオンは、同時に空気中に放出されると、空気中に浮遊する微生物の表面で凝集してこれらを取り囲む。そして、瞬間的に、プラスイオンとマイナスイオンが結合して酸化力の非常に高い活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH22(過酸化水素)を微生物の表面上で凝集生成して、化学反応により微生物の表面のタンパク質を分解してその働きを抑制する。そのほか、上記のようにして生成する水酸基ラジカルや過酸化水素は、空気中の臭い成分を分解する作用があることも分かっている。従って、プラスイオン及びマイナスイオンを発生して吹出口10から吐出することにより、居室内に浮遊するウイルスの不活化し、細菌やカビ類を死滅させ、或いは臭いを除去することができる。
【0038】
なお、後述するように、上述したプラスイオン及びマイナスイオンの作用は、空気中のイオン濃度が高いほど効果が高いことが確認されている。例えば、10分程度でのH5N1型トリインフルエンザの感染力の低減効果は、空気中のイオンの濃度を約7,000個/cm3としたときは99%であり、50,000個/cm3以上に高めれば99.9%にまで向上することが実証されている。また、イオン濃度が約30,000個/cm3以上としたときは、付着状態のカビ菌の増殖を抑制することができることが初めて明らかとなった。前記のイオン発生器17,18の場合、イオン発生器単独でのプラスイオン及びマイナスイオンの発生量は、各イオン発生部から50cm離れた位置で測定して約150万個/cm3(25cm離れた位置では約480万個/cm3)と非常に多いため、居室内のイオン濃度を上記のような有効な濃度に維持するために好適なデバイスである。
【0039】
図4はダクト6の概略構成を示す側面断面図である。ダクト6の上壁6U及び下壁6Dは湾曲した曲面部6a,6bをそれぞれ有している。上下分割通路11〜14を形成する各壁面は上壁6U及び下壁6Dに沿って湾曲し、一端D1が送風機5の近傍に設けられる。これにより、上下分割通路11〜14は送風機5の近傍から吹出口10にわたって形成される。
【0040】
図4において、上下拡幅部7はダクト6の上壁6Uと下壁6Dとの間が上流側に対して下流側が上下方向に拡幅される。これにより、吹出口10から気流が上下方向に広がって送出される。各上下分割通路11〜14は上流側に対して下流側が上下方向に拡幅され、流路断面は左右方向の幅が高さ方向の幅に対して十分大きいスリット状に形成される。このため、ダクト6を通流する気流は各上下分割通路11〜14の上下の壁面と接触する面積が大きくなる。これにより、上下分割通路11〜14を通流する気流を上下の壁面から剥離させずに上下方向に広げることができる。
【0041】
左右拡幅部8は上下拡幅部7の下流側に配され、上下拡幅部7の終端から上下の壁面が平面状に延長される。図5は最下段の上下分割通路14の平面図を示している。左右拡幅部8はダクト6の左壁6Lと右壁6Rとの間が上流側に対して下流側が左右方向に拡幅される。これにより、吹出口10から気流が左右方向に広がって送出される。
【0042】
左右拡幅部8は各上下分割通路11〜14を更に左右方向に分割した8つの細通路から成る左右分割通路8a〜8hを有している。今、左右拡幅部8を、隣接する2つ左右分割通路をペアとして通流方向に交差する方向に4つの通路ペアに分けて考える。即ち、左右分割通路8a,8bから構成される第1の通路ペア81、左右分割通路8c,8dから構成される第2の通路ペア82、左右分割通路8e,8fから構成される第3の通路ペア83、左右分割通路8g,8hから構成される第4の通路ペア84を考える。
【0043】
4つの各通路ペアのそれぞれに対応して、2個のイオン発生器17,18を1つの保持体53で保持した前記のカートリッジが、通流方向に交差する方向に並んで4つ取り付けられる。これにより、各通路ペアに対応して、通流方向に離隔する第1及び第2のイオン発生器17及び18が、各イオン発生部17A,17B及び18A,18Bの極性(発生するイオンの極性)が反転する配置で設けられる。また第1及び第2のイオン発生器17及び18は、通流方向において、第1のイオン発生器17が下流側、第2のイオン発生器18が上流側となるように並置される。
【0044】
左右分割通路8a〜8hを形成する各壁面の上流端D2は、第1のイオン発生器17よりも通流方向の若干下流側で終端し、通流方向に交差する方向に並ぶイオン発生器間、各イオン発生器のイオン発生部間をイオン発生部毎に仕切るように位置している。つまり、第1のイオン発生器17のプラスイオン発生部17A及び第2のイオン発生器18のマイナスイオン発生部18Bが各通路ペア81,82,83,84の一方の左右分割通路(8a,8c,8e,8f)の空気流入口の近傍に位置し、第1のイオン発生器17のマイナスイオン発生部17B及び第2のイオン発生器18のプラスイオン発生部18Aが各通路ペア81,82,83,84の他方の左右分割通路(8b,8d,8g,8h)の空気流入口の近傍に位置する。
【0045】
このような左右拡幅部8の通路構成により、第1のイオン発生器17のプラスイオン発生部17Aから発生したプラスイオン又は/及び第2のイオン発生器18のマイナスイオン発生部18Bから発生したマイナスイオンは各通路ペア81,82,83,84の一方の左右分割通路(8a,8c,8e,8f)を通流させるとともに、第1のイオン発生器17のマイナスイオン発生部17Bから発生したマイナスイオン又は/及び第2のイオン発生器18のプラスイオン発生部18Aから発生したプラスイオンが各通路ペア81,82,83,84の他方の左右分割通路(8b,8d,8g,8h)を通流させることができる。すなわち、各イオン発生部から発生するイオンの通流路として専用の左右分割通路を割り当てることができる。これにより、プラスイオン及びマイナスイオンを吹出口10から効率良く均等に送出することができるようになる。
【0046】
なお、左右分割通路8a〜8hを形成する各壁面の上流端D2を、通流方向に交差する方向に並ぶイオン発生器17,17間、及び各イオン発生器のイオン発生部間を通過するように延長して、イオン発生部17A,17B,18A,18Bが左右分割通路の内部に位置するようにしても構わない。
【0047】
なお、本実施形態では、図1に示すように、すべての上下分割通路11〜14の下流側を左右分割通路8a〜8hで分割するように構成された場合を説明したが、左右分割通路8a〜8hはプラスイオン及びマイナスイオンが通流する最下断の上下分割通路14の下流側にのみ設けられてもよい。
【0048】
ダクト6の左壁6L及び右壁6Rは湾曲した曲面部6c,6dをそれぞれ有している。左右分割通路8a〜8hを形成する各壁面は左壁6L及び右壁6Rに沿って湾曲する。各左右分割通路8a〜8hは左右の壁面によって上流側に対して下流側が左右方向に拡幅され、流路断面は上下拡幅部7に対して左右方向の幅が狭められる。これにより、流路断面の濡れぶち長さが大きくなり、ダクト6を通流する気流は左右分割通路8a〜8hの左右の壁面と接触する面積が大きくなる。従って、左右分割通路8a〜8hを通流する気流を左右の壁面から剥離させずに左右方向に気流を広げることができる。
【0049】
上記構成のイオン拡散装置1において、送風機5及びイオン発生器17,18が駆動されると、居室内の空気が吸込口3からハウジング2内に取り込まれる。ハウジング2内に取り込まれた空気はエアフィルタ4で塵埃が捕集され、吸気口5bから送風機5に導かれる。
【0050】
送風機5の排気は排気口5cを介してダクト6を通流する。ダクト6を通流する気流は上下分割通路11〜14に分岐し、上部拡幅部7で上下方向に流路が広がるとともに左右拡幅部8で左右方向に流路が広がる。これにより、吹出口10から上下及び左右方向に広がった気流が送出される。
【0051】
ダクト6の下部の上下分割通路14を通流する気流は複数の左右分割通路8a〜8hに分岐する。左右分割通路8a,8c,8e,8gには第1イオン発生器17のイオン発生部17Aから発生するプラスイオン又は/及び第2イオン発生器18のイオン発生部18Bから発生するマイナスイオンが含まれる。左右分割通路8b,8d,8f,8hには第1イオン発生器17のイオン発生部17Bから発生するマイナスイオン又は/及び第2イオン発生器18のイオン発生部18Aから発生するプラスイオンが含まれる。これにより、開口部10dからプラスイオン及びマイナスイオンを含む気流が送出される。
【0052】
また、開口部10a,10b,10cから送出される気流はダクト6の上部の上下分割通路11,12,13を通流し、風速が速い。このため、開口部10a,10b,10cから送出される気流がエアカーテンとなってイオンの上方への拡散が防止される。従って、開口部10dから居室内の居室に向けて気流を送出し、開口部10a,10b,10cから居室の上方に向けて気流を送出することによって居室に十分なイオンを供給して高い殺菌効果やウイルス不活化効果を得ることができる。
【0053】
また、上下分割通路11〜14は上方から順に配され、開口部10a〜10dから送出される気流は上方から順に風速が速くなっている。これにより、気流の乱れを低減することができる。
【0054】
図6は、イオン拡散装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。制御系の中心となるのはCPU30であり、CPU30は、プログラム等の情報を記憶するROM31、一時的に発生した情報を記憶するRAM32、及び時間を計時するためのタイマ33と互いにバス接続されている。CPU30は、ROM31に予め格納されている制御プログラムに従って入出力、演算等の処理を実行する。
【0055】
CPU30には、更にイオン拡散装置1の運転、停止等の操作を受け付けるための操作部35と、操作の内容、運転状態等の情報を表示するLCDからなる表示部36と、送風機5のモータ5mを駆動するための送風機駆動制御回路37とがバス接続されている。
【0056】
CPU30にバス接続された出力インターフェース34,34の出力側のそれぞれは、イオン発生器駆動回路38,38の制御入力PC1及びPC2に接続されている。各イオン発生器駆動回路38,38の出力の一端のそれぞれは、陽極が第1及び第2のイオン発生器17及び18の電源入力V1及びV2に接続されている直流電源E1の陰極に接続されており、他端は、第1及び第2のイオン発生器17及び18の接地入力G1及びG2に接続されている。
【0057】
上述した構成において、タイマ33が所定時間を計時する都度、CPU30が、出力インターフェース34,34を介して、イオン発生器駆動回路38,38の制御入力PC1及びPC2のオン/オフを交互に反転させる。これにより、イオン発生器駆動回路38,38のそれぞれが、第1及び第2のイオン発生器17及び18の接地入力G1及びG2のそれぞれと、直流電源E1の陰極との接続を交互に接/断する。
【0058】
第1及び第2のイオン発生器17及び18は、交互駆動モードと全体駆動モードのいずれかのモードで選択的に駆動される。交互駆動モードは、第1のイオン発生器17と第2のイオン発生器18とを交互に所定の間隔で駆動するモードであり、全体駆動モードは、第1及び第2のイオン発生器17及び18を同時に連続駆動するモードである。
【0059】
図7は、交互駆動モードでのイオン拡散装置1の運転の処理手順の一例を示すフローチャートである。操作部35により交互駆動モードが選択され、イオン拡散装置の運転が開始されると、CPU30は送風機駆動制御回路37によりモータ5mを制御し600rpmの回転数で送風機5を回転駆動する(ステップS11)。その後、タイマ33に一秒の計時を開始させる(ステップS12)。その後、CPU30は、タイマ33が計時を終了したか否かを判定する(ステップS13)。計時を終了していないと判定した場合(ステップS13:NO)、CPU30は、タイマ33が計時を終了するまで待機する。計時を終了したと判定した場合(ステップS13:YES)、CPU30は、FLG1がセットされているか否かを判定する(ステップS14)。
【0060】
FLG1がセットされていると判定した場合(ステップS14:YES)、CPU30は、FLG1をクリアする(ステップS15)。その後、CPU30は、一方の出力インターフェース34の出力をオフさせてイオン発生駆動装置駆動回路38の制御入力PC1をオフさせる(ステップS16)と共に、他方の出力インターフェース34の出力をオフさせてイオン発生器駆動回路38の制御入力PC2をオンさせ(ステップS17)、ステップS12に戻る。
【0061】
ステップS14でFLG1がセットされていないと判定した場合(ステップS14:NO)、CPU30は、FLG1をセットする(ステップS18)。その後、CPU30は、一方の出力インターフェース34の出力をオンさせてイオン発生駆動回路38の制御入力PC1をオンさせる(ステップS19)と共に、他方の出力インターフェース34の出力をオフさせてイオン発生器駆動回路38の制御入力PC2をオフさせ(ステップS20)、ステップS12に戻る。
【0062】
図8は、交互駆動モードにおいて出力インターフェース34,34のそれぞれから制御入力PC1、PC2へ入力される駆動信号のタイミングチャートである。それぞれの駆動信号は、ディーティ50%で交互に1秒オン/1秒オフを繰り返す。これにより、イオン発生器駆動回路38,38のそれぞれは、第1及び第2のイオン発生器17及び18への電源供給を1秒おきに交互に接/断する。従って、第1及び第2のイオン発生器17及び18が1秒おきに交互に駆動される。
【0063】
図9は、交互駆動モードにおいて各左右分割通路8a〜8hを通流して居室内に送出されるプラスイオン及びマイナスイオンの様子を示す説明図である。交互駆動モードでは、第1のイオン発生器17と第2のイオン発生器18とを交互に駆動することで、通流方向に延びて、プラスイオンのみが流れる領域F1(図4参照)とマイナスイオンのみが流れる領域F2(図4参照)の2つの領域が交互に切り替わりながら形成され、図9(a)と図9(b)の状態が交互に切り替わるように、隣接する左右分割通路のそれぞれをプラスイオンとマイナスイオンが交互に切り替わりながら通流し、吹出口10の開口部10dから吹き出されることになる。従って、プラスイオンのみが特定の左右分割通路を通流することによる、或いはマイナスイオンのみが特定の左右分割通路を通流することによる、居室内でのプラスイオン及びマイナスイオンの分布の偏りがなくなる。よって、居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを効率良く均等に拡散させることができる。
【0064】
図10は、全体駆動モードでのイオン拡散装置1の運転の処理手順の一例を示すフローチャートである。操作部35により全体駆動モードが選択され、イオン拡散装置の運転が開始されると、CPU30は送風機駆動制御回路37によりモータ5mを制御し900rpmの回転数で送風機5を回転駆動する(ステップS21)。その後、CPU30は、一方の出力インターフェース34の出力をオンさせてイオン発生駆動装置駆動回路38の制御入力PC1をオンさせる(ステップS22)と共に、他方の出力インターフェース34の出力をオンさせてイオン発生器駆動回路38の制御入力PC2をオンさせて(ステップS23)、処理を終了する。
【0065】
図11は、全体駆動モードにおいて出力インターフェース34,34のそれぞれから制御入力PC1、PC2へ入力される駆動信号のタイミングチャートである。それぞれの駆動信号は連続してオンである。これにより、イオン発生器駆動回路38,38のそれぞれは、第1及び第2のイオン発生器17及び18への電源供給を連続的に接にする。従って、第1及び第2のイオン発生器17及び18が同時に連続駆動される。
【0066】
図12は、全体駆動モードにおいて各左右分割通路8a〜8hを通流して居室内に送出されるプラスイオン及びマイナスイオンの様子を示す説明図である。全体駆動モードでは、第1のイオン発生器17と第2のイオン発生器18とを同時に連続駆動することで、通流方向に延びて、プラスイオン及びマイナスイオンが混在して流れる領域F1及びF2(図4参照)が2つ同時に形成され、図11に示すように、隣接する左右分割通路のいずれにもプラスイオン及びマイナスイオンが混在して通流し、吹出口10の開口部10dから吹き出されることになる。従って、吹出口10から居室内に送出されたプラスイオン及びマイナスイオンの分布の偏りがなく、居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを効率良く均等かつ大量に拡散させることができる。
【0067】
図13、図14、図15は本実施形態のイオン拡散装置1を交互駆動モードで運転したときの居室のイオン量の分布を調べた結果を示す図である。居室Rは高さが4800mm、幅6400mm、奥行6400mmである。この居室Rの面積は、三六間と呼ばれる基本的な一畳サイズの規格(910mm×1820mm)に換算して約25畳である。イオン拡散装置1は一方の側壁W1の床面Fに設置し、側壁W1に対向する側壁W2に向かって斜め上方に気流を送出している。イオン量の測定はイオン拡散装置1の左右方向の中心を通る鉛直面D及び高さ1600mmの水平面Eについて行っている。また、測定時間は吹出開始から20分間、イオン量は空気中のプラスイオン濃度(個/cm3)、マイナスイオン濃度(個/cm3)である。
【0068】
図14及び図15に示すように、本実施形態では上方へのイオンの拡散及びプラスイオン及びマイナスイオンの打ち消しによるイオン損失が抑制され、数10畳広さの居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを10,000個/cm3以上のイオン量で広範に分布させることができる。また、居室内で常時居住できる領域、つまり居室の4隅、2mを越える上部空間以外の居住領域については、十分なイオン濃度を確保できている。従って、本実施形態のイオン拡散装置を複数個、間隔を置いて配置することで、広範な領域、例えばホテル、空港等のロビー、病院の待合室等において、人が居住する領域を十分なイオン濃度を確保できる。これによって、室内の浮遊菌の除菌効果、ウイルスの不活化効果、及びカーテン、衣類等に付着している付着臭の除去効果を高めることができる。
【0069】
<第2実施形態>
図16は本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の構成を示す縦断側面図、図17は要部の構成を示す正面図、図18は要部の構成を示す側面図、図19はイオン発生器の構成を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0070】
図16に示した空気清浄装置100は、後壁101aに吸込口111を有し、天壁101bに吹出口112を有するハウジング101と、該ハウジング101内の下部に配されている送風機102と、吸込口111の内側に配され、送風機102が吸込口111から吸込む空気を通過させ、該空気中の異物を除去して清浄の空気にするフィルタ103と、送風機102及び吹出口112の間に配され、前記空気を前記吹出口112へ通流させる通流路としてのダクト104と、二つのイオン発生部151,152を有し、送風機102が送風する空気にプラスイオン及びマイナスイオンを含ませるイオン発生器105とを備え、イオン発生部151,152が発生するプラスイオン及びマイナスイオンを、送風機102が送風する空気に含ませ、空気とともにプラスイオン及びマイナスイオンを吹出口12から外部へ放出すように構成されている。
【0071】
ハウジング101は平面視矩形をなす底壁101cと、該底壁101cの二辺に連なる前壁101d、後壁101a及び底壁101cの他の二辺に連なる側壁と、天壁101bとを有する略直方体をなす。後壁101aにはその長手方向が上下となり、長方形をなす吸込口111が設けられ、天壁101bにはその長手方向が両側壁側となり、長方形をなす吹出口112が設けられている。
【0072】
送風機102は、円筒形状をなし、回転軸が前後となるように配される羽根車121及び該羽根車121を回転自在に収容してあるケーシング122を有する遠心形であり、羽根車121を駆動するモータ106が、ケーシング122の前側部に取付けられている。
【0073】
羽根車121は、外縁に対し回転中心側が回転方向へ変位する複数の羽根121aを有する多翼羽根車、換言すると円筒形状をなすシロッコ羽根車であり、一端に軸受板を有し、該軸受板の中心に開設されている軸孔にモータ106の出力軸が取付けられ、他端の開口から中心部の空洞へ吸込んだ空気を外周部の羽根121a間から放出するように構成されている。
【0074】
ケーシング122は、羽根車121の回転により発生する気流を羽根車121の回転方向へ誘導して層流とし、気流の速度を速めるための円弧形誘導壁122aと、該円弧形誘導壁122aの一部から円弧形誘導壁122aの接線方向一方へ上向きに開放された排気口122bとを有する。排気口122bは円弧形誘導壁122aの一部から円弧形誘導壁122aの接線方向一方へ突出する角筒形状をなしている。また、ケーシング122は、深皿形をなし、円弧形誘導壁122a及び排気口122b用の開放部とを有するケーシング本体102aと、羽根車121の前記開口と対応する箇所が開放され、ケーシング本体102aの開放側を閉塞する蓋板102bとを備え、該蓋板102bがケーシング本体102aに複数本の雄螺子により取付けられている。
【0075】
このように構成されたケーシング102の円弧形誘導壁122aには、イオン発生部151,152に対応する貫通孔及び貫通孔と離隔する取付孔が開設されており、該取付孔に捩込まれる雄螺子によりイオン発生器105が取付けられている。
【0076】
ダクト104は、その下端が排気口122bに連なり、その上端が開放されている角筒形をなし、ケーシング本体102a及び蓋板102bと一体に成形されている。また、ダクト104は、排気口122bから円弧形誘導面122aの接線方向一方に沿って配された一側壁104aと、排気口122bから前記一側壁との離隔距離が漸次長くなる他側壁104bと、一側壁104a及び他側壁104bに連なり、鉛直に配された後壁104c及び排気口122bから後壁104cとの離隔距離が漸次短くなる前壁104dとを有し、排気口122bから吹出された空気を、一側壁104a、後壁104c及び前壁104dに沿って層流に誘導するように構成されている。また、前壁104dにはイオン発生部151,152に対応する貫通孔及び貫通孔と離隔する取付孔が開設されており、該取付孔に捩込まれる雄螺子によりイオン発生器105が取付けられている。
【0077】
図19に示すように、イオン発生器105は、送風機102が送風する空気の通流方向と交差する方向へ離隔した二つのイオン発生部151,152と、イオン発生部151,152に電圧を供給する給電部と、イオン発生部151,152及び給電部を保持する保持体153とを備え、給電部がイオン発生部151,152に電圧を供給することにより、イオン発生部151,152がコロナ放電し、イオンを発生するように構成されている。プラスイオン及びマイナスイオンの発生原理は上述した通りである。
【0078】
イオン発生部151,152は、尖鋭状をなす放電電極凸部151a,152a、及び該放電電極凸部151a,152aを囲繞する誘導電極環151b,152bを有し、誘導電極環151b,152b夫々の中心部に放電電極凸部151a,152aを配してあり、一方のイオン発生部151がプラスイオンを発生し、他方のイオン発生部152がマイナスイオンを発生するように構成されている。プラスイオン及びマイナスイオンの発生原理は上述した通りである。
【0079】
イオン発生器105は、ケーシング122の円弧形誘導壁122aと、ダクト104の前壁104dとに取付けられ、空気が通流する通流方向と交差する位置に二つのイオン発生部151,152を配してある。
【0080】
ケーシング122の円弧形誘導壁122aに取付けられるイオン発生器105は、3個を一つの保持体153に保持してある。3個のイオン発生器105は、前記通流方向(円弧形誘導壁122aの円弧方向)へ離隔して並置され、且つ前記通流方向と交差する方向(羽根車121の回転軸方向)へ相対的に偏倚している。また、3個のイオン発生器5のイオン発生部151,152は、相対的に偏倚する方向の極性を等しくし、且つ前記通流方向の重なりがないように配してあり、イオン発生器105夫々のイオン発生部151,152が前記貫通孔からケーシング122内に臨んでいる。また、保持体153のケーシング122への取付側は前記通流方向へ湾曲し、且つイオン発生部151,152夫々に対応する3箇所が開口153aされている湾曲面153bを有し、該湾曲面153bの夫々の開口153aに前記イオン発生部151,152を配してある。
【0081】
以上のように構成された空気清浄装置100は吸込口111が壁側となるように居住室内の壁の近くに据えられる。
【0082】
送風機102の駆動により、羽根車121が回転し、室内の空気が吸込口111からハウジング101内へ吸込まれ、吸込口111及び吹出口112間に空気の通流路が発生し、吸込まれた空気中の塵埃等の異物はフィルタ103により除去されて清浄の空気となる。
【0083】
フィルタ103を通過した空気は、送風機102のケーシング122内に吸込まれる。この際、ケーシング122内に吸込まれた空気は、羽根車121周りの円弧形誘導壁122aにより層流となり、層流に通流する空気が円弧形誘導壁122aに沿って排気口122bへ誘導され、該排気口122bからダクト104内へ吹出される。
【0084】
送風機102におけるケーシング122の円弧形誘導壁122aにはイオン発生部151,152を配してあるため、イオン発生部151,152が発生したイオンを、円弧形誘導壁122aに沿って比較的狭い通路を層流に通流する空気に効率的に含ませることができる。また、円弧形誘導壁122aに沿って通流する空気は高風速で通流するため、イオンをより一層効率的に空気に含ませることができる。
【0085】
また、イオン発生器105は、空気の通流方向と交差する位置に二つのイオン発生部151,152を配し、空気に初めてイオンを含ませる箇所を多くしてあるため、イオンをより一層効率的に空気に含ませることができる。
【0086】
また、イオン発生器105は、清浄空気の通流方向へ離隔して3個を配し、且つ3個のイオン発生器105を前記通流方向と交差する方向へ相対的に偏倚させ、イオン発生器5夫々のイオン発生部151,152を前記通流方向の重なりがないように配して、空気に初めてイオンを含ませる箇所を多くし、イオン発生器105夫々のイオン発生部151,152が発生したプラスイオンと、マイナスイオンとが打ち消されるのを防ぐようにしてあるため、ケーシング122を大形にすることなく、イオンをより一層効率的に空気に含ませることができる。
【0087】
以上のように層流に通流する空気に含ませたプラスイオン及びマイナスイオンは、空気がケーシング122の排気口122bからダクト104内へ吹出される際に混じり合う。
【0088】
ダクト104は、一側壁104a、後壁104c及び前壁104dに沿って空気を層流に通流させるように構成されており、この層流に通流させる前壁104dにイオン発生部151,152を配してあるため、送風機102のケーシング122内でプラスイオン及びマイナスイオンを含ませてある空気に、さらにダクト104に配してあるイオン発生部151,152が発生したプラスイオン及びマイナスイオンを含ませることができ、空気中のイオン量を増すことができる。
【0089】
図20は室内の床に据えられた本発明に係る空気清浄装置の吹出口から吹出された空気を室内で測定する見取図である。図21は室内でのイオン量を測定した結果を示すデータである。イオン発生器を備える従来の空気清浄装置と、本発明に係る空気清浄装置との室内A〜E点でのイオン量を測定したところ、図21に示す結果が得られた。図20において、室内は、5.1m×5.7mの床面積(三六間の一畳サイズに換算して約18畳)であり、空気清浄装置は5.7m側の一の壁に対し0.3m離隔した床に据えてある。また、測定点Aは室内の5.1m側の一の壁に対し0.1m離隔した箇所で、5.7m側の1,3,5点の箇所、測定点Cは室内の5.1m側の中央で、5.7m側の1,3,5点の箇所、測定点Eは室内の5.1m側の他の壁に対し0.1離隔した箇所で、5.7m側の1,3,5点の箇所である。また、測定時間は吹出開始から20分間、イオン量は空気中のプラスイオン濃度(個/cm3)、マイナスイオン濃度(個/cm3)である。
【0090】
図21の測定結果により、測定点平均のイオン量は39,611個/cm3、増加率は154%であり、室内へ放出されたイオン量を多くすることができることを実証することができた。本実施形態によると、数畳広さの居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを10,000個/cm3以上のイオン量で広範に分布させることができる。これによって、室内の浮遊菌の除菌効果、ウイルスの不活化効果、及びカーテン,衣類等に付着している付着臭の除去効果を高めることができる。
【0091】
尚、本実施形態では、空気の通流が層流となるようになしてあるケーシングの円弧形誘導壁122aに3個のイオン発生器5を配し、空気の通流が層流となるようになしてあるダクト104の前壁104dに1個のイオン発生器105を配したが、その他、イオン発生器105は空気の通流が層流となるようになしてある層流部に配する構成であればよく、イオン発生器105を配する箇所は特に制限されない。例えば、排気口122bの円弧形誘導壁122aに連なる箇所、及び円弧形誘導壁122a、ダクト104の前壁104dの少なくとも1箇所に配する構成とする。
【0092】
<第3実施形態>
図22は本発明の第3実施形態に係るイオン放出装置の構成を示す縦断正面図、図23はイオン放出装置の構成を示す縦断側面図、図24はイオン発生器の構成を示す一部を省略した正面図である。
【0093】
図22に示したイオン放出装置200は、離隔して対向する両側壁201a,201bの下部に吸込口211,211を有し、天壁201cの中央部に二つの嵌合孔212,212を有するハウジング201と、該ハウジング201内の下部に配され、出力軸方向の両側に出力軸221,221を有するモータ202と、該モータ202の出力軸221,221に装着されている二つの羽根車203,203と、羽根車203,203夫々を回転自在に収容する二つのケーシング204,204と、羽根車203,203夫々の回転により発生する気流を個別に上方へ通流させる筒部としての二つのダクト205,205と、二つのイオン発生部261,262を有し、ダクト205,205夫々の途中に配されたイオン発生器206,206と、嵌合孔212,212に取外しを可能に配置された風向体207,207とを備える。尚、モータ202と、羽根車203,203とケーシング204,204とが送風機を構成している。
【0094】
ハウジング201は平面視矩形をなす底壁201dと、該底壁201dの二辺に連なる前壁201e、後壁201f及び底壁201dの他の二辺に連なる側壁201a,201bと、天壁201cとを有する略直方体をなす。両側壁201a,201b下部の吸込口211,211には、羽根車203,203が吸込口211,211から吸込む空気を通過させ、該空気中の異物を除去して清浄空気にするフィルタ208,208が取付けられている。天壁201cの嵌合孔212,212はその長手方向が前後となる長方形をなし、前側の内面が鉛直に対して前方へ傾斜し、後側の内面が鉛直に対して後方へ傾斜している。また、ハウジング201は上下方向の途中で上分体と下分体とに分断され、下分体にケーシング204,204が装着され、上分体にダクト205,205が装着されている。
【0095】
羽根車203,203は、外縁に対し回転中心側が回転方向へ変位する複数の羽根203aを有する多翼羽根車、換言すると円筒形状をなすシロッコ羽根車であり、一端に軸受板を有し、該軸受板の中心に開設されている軸孔にモータ202の出力軸221,221が取付けられ、他端の開口から中心部の空洞へ吸込んだ空気を外周部の羽根203a間から放出するように構成されている。
【0096】
ケーシング204,204は、羽根車203,203の回転により発生する気流を羽根車203,203の回転方向へ誘導し、気流の速度を速めるための円弧形誘導壁241,241及び該円弧形誘導壁241,241の一部から円弧形誘導壁241,241の接線方向一方へ上向きに開放された排気口242,242とを有する。排気口242,242は円弧形誘導壁241,241の一部から円弧形誘導壁241,241の接線方向一方で、且つ鉛直に対して斜め方向へ突出する角筒形状をなしている。また、ケーシング204,204は、深皿形をなし、円弧形誘導壁241,241及び排気口242,242用の開放部を有するケーシング本体204a,204aと、羽根車203,203の前記開口と対応する箇所が開放され、ケーシング本体204a,204aの開放側を閉塞する蓋板204b,204bとを備え、ケーシング本体204a,204a夫々の対向側が仕切り用の連結壁243にて一体に連結されている。また、蓋板204b,204bの開放部とフィルタ208,208との間に、複数の通気孔を有する通気板209,209が設けられている。
【0097】
連結壁243のモータ2と対応する箇所は一方のケーシング本体204a側へ窪む凹所を有し、該凹所の縁部に深皿状の支持板244が取付けられ、凹所及び支持板244の中央部間にゴム板245,245を介してモータ202を挾着保持し、凹所及び支持板244の中央部に開設されている軸孔に出力軸221,221が挿通され、出力軸221,221に羽根車203,203を取付けてある。また、連結壁243の上端はケーシング204,204よりも上方へ延出されている。
【0098】
ダクト205,205は、その下端が排気口242,242に連なり、その上端が嵌合孔212,212に連なり、上下方向の途中が絞られている角筒形の筒部からなる。また、ダクト205,205は、排気口242,242から円弧形誘導面241,241の接線方向一方に沿って配された前壁205a,205aと、排気口242,242からほぼ鉛直に配された後壁205b,205bと、前壁205a,205a及び後壁205b,205bに連なり、ほぼ鉛直に配された二つの側壁205c,205c、205d,205dとを有し、排気口242,242から吹出された空気を、前壁205a,205a及び側壁205c,205c、205d,205dに沿って層流とし、鉛直に沿わせて通流させるように構成されている。
【0099】
前壁205a,205aにはイオン発生部261,262に対応する貫通孔が開設されており、該貫通孔にイオン発生器206,206が嵌込みにより取付けられており、後壁205b,205bにはモータ202、イオン発生器206,206及び電源線に接続されている回路基板210及び該回路基板210を被覆するカバー220が取付けられている。また、ダクト205,205は上下方向の途中でダクト上分体251とダクト下分体252とに分断されている。ダクト下分体252は角筒形をなし、横方向の中央が連結壁243にて仕切られている。ダクト上分体251は、横方向に離隔して並置される角筒部251a,251aの下部が連結部251bにて一体に連なっており、連結部251b及び連結壁243にて仕切られている。また、ダクト上分体251の上端には、外部から指等の異物が挿入されるのを防ぐための防護網230,230を配してある。
【0100】
図24に示すように、イオン発生器206,206は、羽根車203,203(図22参照)の回転により発生する空気の通流方向と交差する方向へ離隔した二つのイオン発生部261,262と、イオン発生部261,262に電圧を供給する給電部と、イオン発生部261,262及び給電部を保持する保持体263とを備え、給電部がイオン発生部261,262に電圧を供給することにより、イオン発生部261,262がプラズマ放電し、イオンを発生するように構成されている。
【0101】
イオン発生部261,262は、尖鋭状をなす放電電極凸部261a,262a、及び該放電電極凸部261a,262aを囲繞する誘導電極環261b,262bを有し、誘導電極環261b,262b夫々の中心部に放電電極凸部261a,262aを配してあり、一方のイオン発生部261がプラスイオンを発生し、他方のイオン発生部62がマイナスイオンを発生するように構成されている。プラスイオン及びマイナスイオンの発生原理は上述した通りである。
【0102】
イオン発生器206,206は、2個を一つの保持体263に保持してある。2個のイオン発生器206,206はダクト205,205夫々の前壁205a,205aに取付けられ、前記通流方向へ離隔して並置されている。また、2個のイオン発生器206,206夫々のイオン発生部61,62は、前記通流方向と交差する位置に並べて配され、隣合う側の極性を等しくしてあり、イオン発生器206,206夫々のイオン発生部261,262が前記貫通孔からダクト205,205内に臨んでいる。また、保持体263のダクト205,205への取付側はイオン発生部261,262夫々に対応する4箇所が開口263aされており、開口263a夫々にイオン発生部261,262を配してある。
【0103】
図23に示すように、風向体207,207は、前後方向の断面形状が逆台形をなす角枠部271,271、及び該角枠部271,271内に前後方向へ離隔して並置され、鉛直に対して前後方向一方へ傾斜する複数の風向板272,272を有し、等形状に形成されている。角枠部271,71の前後の壁は鉛直に対して前後方向へ傾斜している。
【0104】
以上のように構成されたイオン放出装置200は居住室内に据えられる。送風機のモータ202の駆動により、羽根車203,203が回転し、室内の空気が両側の吸込口211,211から二つのケーシング4,4内へ吸込まれ、吸込まれた空気中の塵埃等の異物はフィルタ208,208により除去される。この際、ケーシング204,204内に吸込まれた空気は、羽根車203,203周りの円弧形誘導壁242,242により層流となり、この層流の空気が円弧形誘導壁241,241に沿って排気口242,242へ通流し、該排気口242,242からダクト205,205内へ吹出される。
【0105】
ダクト205,205は、前壁205a,205a及び側壁205c,205c、205d,205dに沿って空気を層流の状態で通流させるように構成されており、この層流の状態で通流させる前壁205a,205aにイオン発生器206,206を配してあるため、イオン発生器206,206のイオン発生部261,262が発生したプラス及びマイナスのイオンを、前壁205a,205aに沿って比較的狭い通路を層流の状態で通流する空気に効率的に含ませることができる。また、ダクト205,205の上下方向の途中は絞られて空気が高風速で通流するように構成されているため、プラスイオン及びマイナスイオンを空気に効率的に含ませることができる。また、イオン発生器206,206は、空気の通流方向に離隔して複数配し、空気にイオンを含ませる箇所を多くしてあるため、イオンを効率よく空気に含ませることができる。
【0106】
因に、ダクト205,205の前壁205a,205aに二つのイオン発生器206,206を前記通流方向へ離隔して配してある構成において、室内に放出された空気の1cm3当たりのイオン量を測定した結果、10,000個/cm3程度のイオン濃度を得ることができた。これによって、室内の浮遊菌の除菌効果、ウイルスの不活化効果、及びカーテン,衣類等に付着している付着臭の除去効果を高めることができる。
【0107】
尚、本実施形態では、羽根車203,203夫々の回転により送出する空気の通流が層流となる層流部をダクト205,205が有し、ダクト205,205夫々の層流部にイオン発生部261,262を配したが、その他、イオン発生部261,262は、羽根車203,203夫々の回転により送出する空気の通流が層流となるようになしてある円弧形誘導壁に配してもよく、イオン発生部を配する箇所は特に制限されない。
【0108】
また、本実施形態では、二つのダクト205,205内の通流方向と交差する位置に、前記通流方向へ離隔する二つのイオン発生器206,206を並置したが、その他、二つの通流路のイオン発生器206,206は、前記通流方向へ離隔して配してもよい。
【0109】
上記したように、本発明の各実施形態で説明した機器を居室内に設置して連続運転することにより、イオン発生器で発生させたプラスイオン及びマイナスイオンを居室内に効率良く均等かつ大量に拡散することが可能となり、数畳〜数10畳広さの居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを10,000個/cm3以上のイオン濃度で広範に分布させることができる。さらには、居室の大きさに応じて上記実施形態で挙げた機器タイプを適切に選択することにより、居室内に居室内にプラスイオン及びマイナスイオンを50,000個/cm3以上のイオン濃度で広範に分布させることも可能である。
【0110】
従来の実用化されているイオン発生器を搭載した機器では、居室内のプラスイオン及びマイナスイオン濃度をせいぜい2,000個/cm3程度であったのに対して、本発明の各実施形態で説明した機器では飛躍的にイオン濃度を向上させることができる。その結果、従来から存在する機器ではとうてい達成できないような画期的な効果効能の実現が可能となった。
【0111】
本発明のプラスイオン及びマイナスイオンを居室内に高濃度に分布させる技術によって新たに実現が可能となる効果効能を図25に示す。図25において、イオン濃度2,000個/cm3は、従来の機器で実空間でも達成されており、浮遊ウイルスの除去率が90%、浮遊かび菌の除去率が99%、浮遊ダニアレルゲンの除去率が23%である。なお、浮遊ウイルスについては、1m3チャンバー試験でイオン濃度7,000個/cm3の効果を確認したが、ウイルスの除去率が10分で99%であった。従って、図25に示された他の効果、効能は、これまでは知られておらず、特に、付着臭の除去については、効果がないものとされていた。
【0112】
しかしながら、図25に示す条件の実験を行なった結果、浮遊ウイルス、付着菌、付着カビ菌、浮遊アレルゲンのいずれにおいても、イオン濃度を増加させることにより、その除去率が高くなり、特に従来(2,000個/cm3)に比して1桁以上増加させることにより、新たに付着菌、付着カビ菌の増殖抑制、付着臭の除去にも効果があることが判明した。また、イオン濃度を50,000個/cm3以上にすると、浮遊トリインフルエンザウイルス(特にH5N1型)を10分で99.9%除去、付着菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌)を99%除去、付着汗臭の1レベル低減(強度で1/10)が確認された。
【0113】
従来の機器で達成される居室空間中のイオン濃度では、浮遊トリインフルエンザウイルスに対してはワンパス試験で90%(10分間の実空間試験で73%除去に相当)までしか除去することができなかった。しかし、本発明の高濃度化技術によって短時間で99%以上(イオン濃度50,000個/cm3では10分でトリインフルエンザウイルスの除去率99.9%)の除去率を達成すること可能であることが実証された。しかも、近年パンデミックが恐れられているH5N1型でこのような効果が得られたことは、本発明の高濃度化技術が新型ウイルスによる感染症の予防に有用であり、公衆衛生上極めて有益であることを示唆するものである。
【0114】
また、従来の機器で達成される実空間中のイオン濃度では、細菌やアレルゲンや臭いに関しては空中を浮遊するものについてしか効果が確認されておらず、固形物に付着した細菌等には効果がない、あるいは効果が期待されないと予測されていた。しかし、本発明の高濃度化技術は、以下に示すように、付着菌(黄色ブドウ球菌、大腸菌)の除去、付着カビ(クロドスポリウム)の増殖抑制、付着臭(付着タバコ臭気、付着汗臭(イソ吉草酸))の脱臭も実用的な時間で可能とすることが確認された。
【0115】
<付着臭脱臭効果>
付着タバコ臭気の臭気強度を1レベル低減させるのに要する時間が、イオン濃度7,000個/cm3で57.5分、イオン濃度20,000個/cm3で40分、イオン濃度30,000個/cm3で約27.5分、イオン濃度50,000個/cm3で22.5分となり、付着汗臭(イソ吉草酸)について、イオン濃度50,000個/cm3で約12時間、イオン濃度100,000個/cm3で約4時間となった。このように、イオン濃度7,000個/cm3以上で付着臭の有意な脱臭効果が見られ、イオン濃度を増すほどその効果が高まるという結果が得られた。
【0116】
<付着カビ除去効果>
イオン濃度30,000個/cm3でクラドスポリウムの菌糸発育が中程度(試験面積の25%〜50%)になり、イオン濃度50,000個/cm3でクラドスポリウムの菌糸発育がわずか(試験面積の25%以下)になった。このように、イオン濃度30,000個/cm3以上で付着カビの有意な除去効果が見られ、イオン濃度を増すほど付着カビの除去効果が高まるという結果が得られた。
【0117】
<付着菌除去効果>
冷蔵庫内でイオン濃度50,000個/cm3を維持すると、7日間で黄色ブドウ球菌及び大腸菌の菌数が99%減少した。このように、イオン濃度50,000個/cm3以上で付着菌の有意な除去効果が見られ、イオン濃度を増すほどその効果が高まるという結果が得られた。
【0118】
<浮遊ウイルス除去効果>
(1)細胞を用いた浮遊ウイルスの感染能力評価その1
プラスイオン及びマイナスイオンの存在する環境で浮遊インフルエンザウイルスの感染能力低減効果を検証することを目的として、細胞を用いた検証試験を実施した。図28に示すように、容積1m3チャンバー内に実施形態で説明したイオン発生器とチャンバー内空気の空気撹拌用のファンを設置した。次いで、イオン発生器から発生したプラスイオン及びマイナスイオンをファンで撹拌し、空間中のプラスイオン及びマイナスイオンの濃度が50,000個/cm3の均一な濃度となるように維持した。そして、H5N1型トリインフルエンザウイルスをチャンバー内に噴霧し、噴霧終了直後から10分間及び噴霧終了後5分後から10分間、それぞれチャンバー内の浮遊ウイルスを吸引回収し、その感染力価をウイルス研究分野で一般に用いられるTCID50法(段階的に希釈したウイルス液を細胞へ接種し感染力を調べる方法、図29参照)で調べた。ここで、感染力価とは、ウイルスの細胞への感染能力を表す指標である。その結果、ウイルスの感染力価(感染能力)は、約10分という短時間で約99.9%減少することが確かめられた。なお、イオン濃度7,000個/cm3で同様の実験での10分での除去率は99.0%であった。また、H1N1型ヒトインフルエンザウイルスの場合は同様の実験で25分での除去率はイオン濃度7,000個/cm3で99.7%、イオン濃度50,000個/cm3で約99.97%であった。このように、イオン濃度7,000個/cm3以上で浮遊ウイルスの有意な除去効果が見られ、イオン濃度を増すほどその効果が高まるという結果が得られた。
【0119】
(2)細胞を用いた浮遊ウイルスの感染能力評価その2
図28に示すように、容積1m3チャンバー内に本実施形態で説明したイオン発生器とチャンバー内空気の空気撹拌用のファンを設置した。次いで、イオン発生器から発生したプラスイオン及びマイナスイオンをファンで撹拌し、空間中のプラスイオン及びマイナスイオンの濃度が50,000個/cm3の均一な濃度となるように維持した。そして、H5N1型トリインフルエンザウイルスをチャンバー内に噴霧し、噴霧終了後5分後から10分間チャンバー内の浮遊ウイルスを吸引回収し、細胞に接種し3日間の細胞の変化を調べた。その結果、プラスイオン及びマイナスイオンを作用させていないウイルスを接種した細胞は、接種3日後で変形し破壊されているのに対し、プラスイオン及びマイナスイオンを作用させたウイルスを接種した細胞では、ほとんど変化が見られず正常な形状を保っていた。このことから、プラスイオン及びマイナスイオンの作用によりウイルスの細胞感染力を抑制することが確認された。
【0120】
(3)小動物を用いた浮遊ウイルスの感染能力評価
プラスイオン及びマイナスイオンの存在する環境で浮遊インフルエンザウイルスの感染能力低減効果を検証することを目的として、小動物(ヒヨコ)を用いた検証試験を実施した。図30に示すように、イオン発生器と空気撹拌用のファンを設置した容積1m3のチャンバー(イオンとウイルスの接触を行なう室)及び容積270Lのヒヨコの飼育室を2本のチューブで接続し、チャンバーとヒヨコ飼育室を空気が循環できるようにする。次いで、チャンバーとヒヨコ飼育室との間の通気を遮断し、プラスイオン及びマイナスイオンの濃度が3,000、7,000、25,000又は50,000個/cm3の均一な濃度となるように設定したチャンバー(それぞれ、試験区1、2、3又は4とする)内にウイルス濃度105 TCID50/1mLのH3N2型トリインフルエンザウイルス液をネブライザーにより25分間かけ全量噴霧を行なう。そして噴霧後1時間、チャンバー内でイオン発生器から前記濃度を維持するようにプラスイオン及びマイナスイオンを発生させ、ファンにてイオンとウイルスの攪拌を行なう。比較のため、イオン発生器を動作させないでイオン濃度を0に設定したチャンバー(対照区とする)内でウイルス液を噴霧、撹拌を行った。
【0121】
1時間の攪拌後、チャンバーとヒヨコ飼育室間の遮断を解き、チャンバー内の空気とヒヨコ20羽を投入している飼育室内の空気を、飼育室に設置しているポンプを用い30分間循環させる。30分間の空気循環後、チャンバーとヒヨコ飼育室間の通気を遮断し、ヒヨコ飼育室のみ外気との通気が可能な状態とし、ヒヨコの飼育を行なう。3日飼育後、ヒヨコ20羽中の10羽を回収、解剖し、肝臓、腎臓、血液を採材する。採材した部位をサンプルとしてPCR法により分析を行ない、それぞれの部位のウイルスの有無を測定、感染率を算出する。尚、感染成立に関しては、上記3部位の何れか1つの部位へのウイルスの存在をもって感染成立とする。更に18日飼育後(ウイルス噴霧から21日後)に残りの10羽を回収、血液を採取、赤血球凝集抑制反応を利用した抗体分析実施し、抗体保有率を算出する。
【0122】
上記の試験においてウイルスが感染しているかどうかの検証は、(a)感染率(ウイルスが生体内に進入しているヒヨコの確率)及び(b)抗体保有率(ウイルスが生体に進入し、生体防御反応が起こり免疫を保持しているヒヨコの確率)で2つの指標で評価を行なった。結果を表1及び図31に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
表1及び図31の結果より、イオン濃度が3,000/cm3の環境において感染率が70%から30%へ低下し、抗体保有率が90%から40%へ減少、イオン濃度が7,000個/cm3の環境において感染率が70%から20%へ低下し、抗体保有率が90%から30%へ減少することが認められた。つまり、H3N2型トリインフルエンザウイルスをプラスイオン及びマイナスイオンにより1時間処理することにより、ウイルスのヒヨコへの感染能力を有意に低減できることが分かった。
【0125】
また、イオン濃度が7,000個/cm3の環境により、感染率で50%の低減、抗体保有率で60%の低減が達成されたという事実は、感染確率試験で得られたインフルエンザウイルス濃度に対する感染率/抗体保有率のグラフ(図32参照)から、インフルエンザウイルスの90〜99%が不活化されたと予想される。
【0126】
尚、本試験では、図32に示すように、感染確率試験によりヒヨコの100%の感染が認められたウイルス濃度である105 TCID50/1mLのウイルス液を用いて試験を行なったが、対照区において感染率/抗体保有率が70%/90%であったことから、本試験時(表1及び図31)に用いたヒヨコは、感染確率試験時(図32)に用いたロットのヒヨコよりもウイルスに対する耐性が若干強いロットであったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、高度に清浄化された居室を提供する方法に関するものであり、不特定の人が集まる場所や行き交う場所に本発明を適用することで、病原性ウイルスなどによる感染症の予防などに役立ち、公衆衛生上極めて有益である。また、本発明によって浄化された空間が家畜や菌茸類を含む植物の育成(いわゆる無菌育成)にも充分実用できることが明白である。
【符号の説明】
【0128】
1 イオン拡散装置
2 ハウジング
3 吸込口
4 エアフィルタ
5 送風機
6 ダクト(通流路)
6a,6b 曲面部
7 上下拡幅部
8 左右拡幅部
8a〜8h 左右分割通路
10 吹出口
10a〜10d 開口部
11〜14 上下分割通路
17 第1のイオン発生器
17A プラスイオン発生部
17B マイナスイオン発生部
18 第2のイオン発生器
18A プラスイオン発生部
18B マイナスイオン発生部
19 保持体
100 空気清浄装置
101 ハウジング
111 吸込口
112 吹出口
102 送風機
121 羽根車
122 ケーシング
122a 円弧形誘導壁
122b 排気口
103 フィルタ
104 ダクト
105 イオン発生器
151 プラスイオン発生部
152 マイナスイオン発生部
153 保持体
200 イオン放出装置
202 モータ
221 出力軸
203 羽根車(送風機)
204 ケーシング(整風体)
241 円弧形誘導壁
242 排気口
205 ダクト(通流路、筒部)
206 イオン発生器
261 プラスイオン発生部
262 マイナスイオン発生部
263 保持体
207 風向体
272 風向部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
+(H2O)mから成るプラスイオンとO2-(H2O)n(m、nは任意の整数)から成るマイナスイオンとを発生させるイオン発生器と、前記イオン発生器で発生した前記プラスイオン及びマイナスイオンを吹出口から送出する送風機とを有したイオン拡散装置を運転し、居室や作業空間内に前記プラスイオンとマイナスイオンを高濃度に広範に分布させることにより、浮遊状態にある微生物および/または付着状態にある微生物から病原作用を除去する室内の清浄化方法。
【請求項2】
前記室内空気における前記プラスイオンとマイナスイオンの濃度を7,000個/cm3以上にしたことを特徴とする請求項1に記載の室内の清浄化方法。
【請求項3】
前記室内空気における前記プラスイオンとマイナスイオンの濃度を30,000個/cm3以上にしたことを特徴とする請求項1に記載の室内の清浄化方法。
【請求項4】
前記室内空気における前記プラスイオンとマイナスイオンの濃度を50,000個/cm3以上にしたことを特徴とする請求項1に記載の室内の清浄化方法。
【請求項5】
前記吹出口と前記送風機との間を連結するダクトを有するとともに、前記イオン発生器がプラスイオンを発生するプラスイオン発生部とマイナスイオンを発生するマイナスイオン発生部とを有し、前記ダクトを通流する空気を前記イオン発生器の上流側で整流する整流部を前記ダクトに設け、前記プラスイオン発生部と前記マイナスイオン発生部とを通流方向に交差する方向に離間して配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の室内の清浄化方法。
【請求項6】
前記プラスイオン発生部と前記マイナスイオン発生部との間を気流に沿って仕切る仕切部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の室内の清浄化方法。
【請求項7】
前記プラスイオン発生部から発生するプラスイオンと前記マイナスイオン発生部から発生するマイナスイオンの発生量が、いずれもその発生部から50cm離れた位置で150万個/cm3以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の室内の清浄化方法。
【請求項8】
前記吹出口から略水平方向に気流を送出し、該気流の上部の吹出速度を下部の吹出し速度よりも速くしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の室内の清浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−75661(P2010−75661A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3580(P2009−3580)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】