説明

室内履き

【課題】介護者等にとって履かせやすく、また着用するものにとっては防寒性、保温性があり、履き心地のよいユニバーサルデザインの室内履きを提供する。
【解決手段】甲被部3に該甲被部3を横断する開口部3cを形成した室内履き1であって、上記開口部3cは、上蓋3bとなるつま先部側の生地の一部を、上記甲被部3の始端が露出するようにつま先方向に折り返して開口させる一方、折り返した上蓋3bとなるつま先部側の生地を、甲被部3側の生地の上方に被せて閉じるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防寒性、保温性のある室内履きに関し、更に詳しくは、介護者等が介護を要するような高齢者や足の不自由な障害者等に履かせ易く、またこれを着用する者にとっては履き心地のよい、幅広い年代の人が使用可能なユニバーサルデザインの室内履きに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、足先の冷え等を防ぐため、防寒性、保温性のあるスリッパや厚手の靴下、室内履きを着用することが知られている。例えば特許文献1には、足被覆部、足首被覆部及び底部が袋状に形成されており、その内部に羽毛が充填されてキルティングが施され、且つ足被覆部、足首被覆部の外側には表地が重ねられるとともに、上記底部の外側には底地が重ねられており、これら表地及び底地がそれぞれの縁部で上記袋状に形成された各部と止着され、保温性、吸湿性が考慮された室内履きが開示されている。
また、特許文献2には、足裏の形に似せ、かつ先端中央にV字状の切込を設けた底板と、この底板を底部とする周囲を起立させることによって履物本体の甲部及び側部を形成する延長部とからなり、底部と甲部と側部とが一体で底に縫い目がなく、バインダーシートや保形布地等によって、保形性が考慮された室内履きが開示されている。
【特許文献1】特開平8−196303号公報
【特許文献2】特開平10−5002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のものは、足の冷えを防ぎ、自ら履いたり脱いだりすることができる者にとっては、問題のない形状といえるが、靴下をはじめ、このような従来の室内履きは、つま先側が閉じられているため、自ら着用することが困難な者にとって、以下のような問題がある。
【0004】
介護者等が上記のような履物を履かせる場合、つま先が閉じられていると、足先を所定の位置に持っていきにくいため、正しい状態に履かせ難く、また介護を要するような高齢者は、足の感覚が鈍い傾向にあり、寝たきりの老人や足が不自由な障害者等においては、例えば足の指が曲がった状態で靴下や室内履き等を着用していてもわからないことが多いため、正しい状態で履いていない場合には、足の指同士が擦れあって、床ずれのように皮膚がめくれてしまうなどの問題を生じている。このような現状から、介護者等にとって履かせ易く、また履かせたときの足の指の状態がわかり、着用者にとっては履き心地のよい室内履きが切望されている。
【0005】
また、介護者のみならず着用する者にとっても、とかく脱いだり履いたりすることは面倒な作業である。したがって、洗い替えするとき以外は、一度履いたらできるだけ長時間履いたままでも快適に過ごせることが理想的といえ、起きているときだけでなく、履いたままで布団等に横になれるものや、室内履きとしてだけでなく車椅子等で外出する際にもおしゃれ感のあるものが望まれている状況にある。
【0006】
つま先が閉じられていない履物としては、つま先が覆われていないスリッパが良く知られているが、このようなスリッパは高齢者や幼児にとっては滑りやすく、底が厚いため、歩行性が悪く、また履いたままで布団等に横になれるものではない。従来より冷え性で靴下を履いて寝る人がいるが、高齢者にとって靴下は、伸縮性があっても足の全体を隙間なく包み込むものであるため、常時着用すると、足のむくみを増長させる傾向となり、靴下を履いたままベッドなどで寝るのは望ましいとはいえない。
【0007】
ところで一方、近年、「ユニバーサルデザイン」としてあらゆる人を対象にデザインされたものがあらゆる分野においてみかけられるようになったが、室内履きにおいては、まだこのようなものはほとんど考案されていない。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、介護者等にとって履かせやすく、また着用するものにとっては防寒性、保温性があり、履き心地のよい、ユニバーサルデザインの室内履きを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る室内履きにおいて、甲被部に該甲被部を横断する開口部は、上蓋となるつま先部側の生地の一部を、甲被部の始端が露出するようにつま先方向に折り返して開口させることが出来、また、折り返した上蓋となるつま先部側の生地を、甲被部側の生地の上方に被せて閉じるようにしている。
請求項2では、上蓋はその両側端に結び紐を突出させるとともに、上記室内履きの底部の両側端には一対の紐通し部が形成されているので、上蓋は、結び紐を上記一対の紐通し部を通じて結び止めするようにしているので、開口部が不用意に開くことはない。
【0010】
また、請求項3の発明のように、上記開口部は、面ファスナー或いはスライドファスナーで閉じられるものとしてもよい。更に、請求項4の発明のように、伸縮性に富んだ足首部を備えているものとすることができ、請求項5の発明のように上記底部を、熱可塑性ポリウレタンフィルムで構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係る室内履きによれば、甲被部を横断する開口部が形成されているため、介護者等が着用者へ履かせるときには、開口部から手を挿入し、着用者の足先を所定の位置へスムーズに導くことができるので、非常に履かせ易い。また、足先の着用状態が開口部を開けばすぐに確認できるため、足の指同士が重なった状態のままになるということを防ぐことができ、快適な状態で着用することができる。更に、甲被部の上蓋となるつま先部側の生地を甲被部側の生地の上方に被せて閉じるようにしているので、足と履物との間に十分な空間が形成され、靴下のような圧迫感はなく長時間着用できる。そして、開口部を閉止しておけば、外気が入りにくいので、防寒性があり保温性がよい一方、該上蓋となるつま先部側の生地は、つま先方向に折り返して開口可能なので、暑いときには、これを開いて温度調節をすることもできる。
【0012】
請求項2の発明に係る室内履きによれば、上蓋の両端側に結び紐を突出させるとともに、一対の紐通し部を通じて結び紐を上蓋の上方でから紐を通して結ぶように構成されているため、開口部が着用者の動きによって、開いてしまうことがない。そして、紐を結ぶ強度や結び方を調節すれば、着用後の足のずれや、歩く際の足のぶれを防ぐ役割を担うことができ、足へのフィット感が増し、より一層歩行性のよいものとすることができる。
【0013】
請求項3の発明に係る室内履きによれば、開口部は、面ファスナー或いはスライドファスナーで閉止するようにしているので、より簡易な構成で開口部を開閉可能とでき、また外気が入りにくいので、保温性を維持することができる。
【0014】
請求項4の発明に係る室内履きによれば、伸縮性に富んだ足首部を設けているので、足首部分の隙間がなくなり、極めて保温性に優れ、足首の冷えも防ぐことができ、より一層保温性のよいものとすることができる。
【0015】
請求項5の発明に係る室内履きによれば、底部には、熱可塑性ポリウレタンフィルムが用いられるので、柔軟性がありながら、防臭性、抗菌性、制菌性に優れた底部とすることができる。これにより底部をやわらかく構成できるので、着用者は、足の裏で床等を感じることができ、歩行性がよいので転倒事故を低減することができる。また、足に馴染み易いので長時間着用しても疲れを感じず、着用したまま寝ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の室内履きの一例を示す斜視図、図2は該室内履きの底面の一例を示す平面図、図3は本発明の室内履きを着用した状態を示す斜視図、図4は本発明の別実施形態を示す平面図である。
【実施例1】
【0017】
図1、図2は本発明の室内履きの一例を示すものであり、図3は本発明の室内履きを着用した状態を示している。ここで図3は着用状態がわかりやすいように着用者の足部分は透視図で示す。
本発明の室内履き1は、足先の挿入口となる足挿入部2と甲被部3と底部6とかかと部7とからなるものであって、足挿入部2から連なって形成される甲被部3には、これを横断する開口部3cが形成されており、開口部3cは、上蓋3bとなるつま先部側の生地の一部を、甲被部3の始端が露出するようにつま先方向に折り返して開口させることが出来、また、折り返した上蓋3bとなるつま先部側の生地を、甲被部3側の生地の上方に被せて閉じるようにしていることを特徴とする。
【0018】
図1及び図3に示すように、本発明の室内履き1は、甲被部3を横断する開口部3cが形成されており、甲被部3は、足挿入部2から連なって足の甲を覆う甲覆部3aと、つま先側となる上蓋3bとからなる。よって、例えば介護者等が着用者へ履かせるときには、上蓋3bとなるつま先部側の生地の一部を、甲被部3の始端が露出するようにつま先方向に折り返して開口させ、該開口部3cから手を挿入し、着用者の足先を持って、足挿入部2から所定の位置へスムーズに導くことができるので、非常に履かせ易く、開口部3cを開いた状態にしておけば、足先の着用状態をすぐに確認することができる。足の指同士が重なった状態で着用してしまった場合でも、開口部3cから足先が露出する状態となるので、指先を揃え直すことができ、着用者は快適な状態で着用することができる。またこのように本発明によれば、室内履き1を脱がずに足先を露出できるので、足指等を怪我した時は開口部3cを開いて治療、処置したり、或いは足先を拭くこともできる。健常者はもとより、高齢者にとって、一度履いたものを脱いだり履いたりする行為は労力がいるので、特に有効である。
【0019】
また甲被部3の上蓋3bは、足のつま先を覆い且つ、上蓋3bとなるつま先部側の生地を、甲被部3側の生地、すなわち甲覆部3aの上方に被せて閉じるようなっている。
この構成によれば、開口部3cから外気が入りにくいので、保温性をよくすることができ、足と履物との間に十分な空間が形成され、靴下のような圧迫感がなく、長時間に亘って着用しても足がむくんだりすることがない。また、内部空間に余裕がある構成なので、内側にポケットなどを設け、カイロを仕込むことが可能である。
そして足が蒸れたりする場合には、開口部3cを開けることにより温度調節することもできる。
【0020】
室内履き1は、図に示すように、底部6の両側端6aには一対の紐通し部4が形成されており、紐5を上記一対の紐通し部4を通じて結び止めするようにしている。なお、この構成はこれに限られず、紐通し部4を設けた部分を面ファスナーとし、紐5を太めのゴムとしてそのゴムの両端を面ファスナーで留めるようにしたものでもよい。
図1に示すように、該紐通し部4から紐5を通して足の甲で結ぶようにしたり、或いは足の甲でクロスさせ、足首の後ろで結び止めするようにしてもよい。これによれば、開口部3cが着用者の動きによって、開いてしまうことがなく、保温性を維持することができる。また、紐5を結ぶ強度を調節すれば、着用後の足のずれや、歩く際の足のぶれを防ぐ役割を担うことができる。更に、上蓋3bの両側端3dから紐5を突出させているので、開口部3cが開いてしまうようなことがなく、着用時のフィット感が増す。このように、紐5によって、室内履き1の足へのフィット感が高まると、歩きやすくなるので、特に高齢者等においては、転倒事故等を低減することができる。
【0021】
更に図1(a)及び図2に示すように、足挿入部2は、足首を覆うように形成される足首部2aを備えたものとしてもよい。また足挿入部2をくるぶしの下まで(不図示)のものとしてもよいことは言うまでもない。
このように、足首部2aを備えたものとすれば、足首の冷えも防ぐことができ、より一層保温性のよいものとすることができる。特に高齢者においては、足さばきをよくするため、ズボンの丈を短めにすることが多いため、このように足首部2aを備えたものが望ましい。またこの足首部2aを構成する素材は特に限定するものではないが、伸縮性のあるもの(例えばリブニット、ニット)とすれば、履き易いものとすることができる。
【0022】
ここで本発明の室内履き1を構成する素材は特に限定されるものではなく、綿、絹等の天然繊維や、ポリエステル、アクリル等の化学繊維等が適宜用いられ、保温性があり一般家庭で洗濯が可能な素材(例えばフリースや羽毛や綿の入ったキルティング等)が望ましく、素材に防水加工、防臭加工等を施せば、一層機能的なものとすることができる。また皮革製(天然皮やポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の合成皮革)とすれば、室内履きに限定されず、車椅子の方等の外出用履物としても使用することができる。更に、着物の生地やシルク等を用いれば、おしゃれ感のあるものとすることができる。
【0023】
底部6の素材も、上記と同様に限定するものではないが、滑りにくく且つ柔らかい任意の素材を用い、従来よりよく知られたスリッパの底部のように固いものでないことが望ましい。底部6の構成は特に限定するものではないが、複数層で形成する場合、外側の床面等と接する側(底部6下面)に、熱可塑性ポリウレタンフィルムを用いれば、柔軟性がありながら、防臭性、抗菌性、制菌性に優れたものとすることができる。熱可塑性ポリウレタンフィルムとしては、例えばモビロンフィルム(登録商標:日清紡社製)、ガイアコット(登録商標:日清紡社製)等が挙げられる。また底部6の足裏と接する側(底部6上面)は、フリースや起毛を有する素材を用いれば、暖かく履き心地のよいものとすることができる。
底部6をこのようにやわらかく構成すれば、室内履き1を着用していても、足の裏で床を感じることができ、足にフィットするので、特に高齢者や幼児の場合は、このような構成の方が歩きやすいため、転倒事故を低減することができる。また、底部6がやわらかく構成されていることにより、足に馴染み易いので着用したまま布団等で寝ても違和感がない。
【0024】
以下に本発明の室内履き1の縫製工程について説明する。なお、縫製工程はこれに限られるものではなく、ここでは保温性、保形性をよくするため、甲被部3及び底部6は2層構造とした例を記載するが、これに限られない。
(縫製工程)
1)まず少なくとも底部6、上蓋3bと甲覆部3aとでなる甲被部3、足挿入口部2になる足首部2aを型にあわせてそれぞれ裁断する。底部6は床面と接する側と足裏と接する側との2枚を型にあわせて裁断する。
2)底部6の床面と接する側の生地(図1(b)参照)は、その周囲をパイピングの生地で縁取りする。
3)甲覆部3aの後ろ部分を縫い合わせ、かかと部7を形成し、2枚を中表に重ねて縫製する。この縫い合わせたものの足挿入口部2となる側に足首部2a(例えば2つ折りのリブニット)を挟み込んで縫い合わせ、表に返す。
4)上蓋3bは、その両端部3dから紐5が突出されるよう、紐を通す部位が形成されるよう縫っておく。
5)上記2)の底部6の足裏と接する側の上に上記3)及び4)をのせ、パイピングの生地でくるみ込んで縁を縫い合わせる。このとき、紐通し部4を底部6の両端部6aの適所にループ状に挟み込んで一緒に縫う。
7)紐通し部4と上蓋3bに形成した紐を通す部位に紐5を通し、足の甲にあたるところで紐5を結ぶ(図1(a)参照)。
【実施例2】
【0025】
図4は本発明の別の実施形態を示すものであり、図4に示す室内履き1は、開口部3cが、面ファスナーAで閉じられるようにしたことを特徴とするものである。従って、上蓋3bの裏面と甲覆部3aの生地の上面には面ファスナーAが縫い付けられる。
これによれば、室内履き1内への外気がより一層入りにくくなるので、保温性がよくなる。なお、図示していないが、開口部3cはスライドファスナーによって開閉可能とする構成としても、同様の効果を得ることができる。また図4の例では、面ファスナーAを設けると共に、紐5も設けているが、紐5がないものとしてもよい。
その他の構成は、上記実施例1と同様であるので共通部分に同一の符号を付しその説明を割愛する。
【0026】
以上、本発明の室内履きは、室内履きとして素足の上から履く他、靴下の上から重ねて履いても使用することができ、カラフルな布地やさまざまな素材を組み合わせて縫製すれば、ファッション性の高いものとすることができる。また本発明の使用対象者は、介護を要するような者や足の不自由な障害者等に限定されず、歩くのがおぼつか無い幼児から大人まで、年代を問わずに使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の室内履きの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の室内履きの底面の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の室内履きを着用した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の別実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 室内履き
2 足挿入部
2a 足首部
3 甲被部
3a 甲覆部
3b 上蓋
3c 開口部
4 紐通し部
5 紐
6 底部
7 かかと部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲被部に該甲被部を横断する開口部を形成した室内履きであって、
上記開口部は、上蓋となるつま先部側の生地の一部を、上記甲被部の始端が露出するようにつま先方向に折り返して開口させる一方、折り返した上蓋となるつま先部側の生地を、甲被部側の生地の上方に被せて閉じるようにしている室内履き。
【請求項2】
請求項1に記載の室内履きにおいて、
上記上蓋はその両側端に結び紐を突出させるとともに、上記室内履きの底部の両側端には一対の紐通し部が形成されており、上記結び紐を上記一対の紐通し部を通じて結び止めするようにしている室内履き。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記開口部は、面ファスナー或いはスライドファスナーで閉止するようにしている室内履き。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
上記室内履きは、伸縮性に富んだ足首部を更に設けている室内履き。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
上記底部は、熱可塑性ポリウレタンフィルムで製されている室内履き。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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