説明

室内照明システム

【課題】室内照明システムにおいて、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をする。
【解決手段】室内照明システム1は、壁面Wに沿って設置されるEL素子2と、このEL素子2の表面に配設される透光性仕上げ材3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備える。この構成によれば、EL素子2の点灯による光が、透光性仕上げ材3を透過して室内に放射されるので、EL素子2(発光体)自体の存在感が無く、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建造物の壁面や天井を用いた室内照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、発光層を陽極及び陰極で挟持させた発光部が透明基板上に形成されたものであり、電極間に電圧印加されたとき、発光層にキャリアとして注入された電子及びホールの再結合により生成された励起子によって発光する。
【0003】
EL素子は、発光層の蛍光物質に有機物を用いた有機EL素子と、無機物を用いた無機EL素子に大別される。特に、有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光が可能であり、蛍光物質の種類によって様々な発光色が得られ、また、平面発光体としての製造が容易であるという特性がある。
【0004】
この特性を活かして、有機EL素子から成るディスプレイ装置を、壁面や窓等に配置して、ディスプレイ装置に画像を再生させることにより、内装デザインを簡易に変更できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/075032パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような有機EL素子から成るディスプレイ装置の使用は、壁面や窓に映像表示をすることによって、擬似的な仮想空間を演出するものであって、壁面等の全面に大型テレビ等の平面ディスプレイを設置することと実質的に変わらない。また、このものは、ディスプレイ特有のドット(画素)感やギラつき感を居住者に与える虞があり、また、ディスプレイ等の発光体自体の存在感が目立ってしまい、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をするのには適していない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、発光体自体の存在感を無くし、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる室内照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、室内照明システムにおいて、室内面に沿って設置されるEL素子と、このEL素子の表面に配設される透光性仕上げ材と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記室内照明システムにおいて、前記EL素子が複数あって、前記制御部はそれらを個別に点灯制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の室内照明システムによれば、EL素子の点灯による光が、透光性仕上げ材を透過して、自然な光として室内に放射されるので、発光体自体の存在感を無くすことができ、また、居住者にギラつき等を感じさせ難いので、居住者に寛ぎや安らぎを与えるような空間演出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る室内照明システムを用いた室内の概略構成を示す図。
【図2】同室内照明システムに用いられるEL素子を格子状に配置した発光パネルの一部分解斜視図。
【図3】同EL素子、複数のEL素子(発光セル)が格子状に配置されて構成される例を示す斜視図。
【図4】同EL素子の概略構成を示す側断面図。
【図5】同室内照明システムの設置手順を説明するための斜視図。
【図6】同室内照明システムの設置手順を説明するための斜視図。
【図7】同室内照明システムの設置手順を説明するための斜視図。
【図8】同室内照明システムの設置手順を説明するための斜視図。
【図9】同室内照明システムにおけるEL素子の点灯パターンを例示する斜視図。
【図10】同室内照明システムにおけるEL素子の点灯パターンを例示する斜視図。
【図11】同室内照明システムにおけるEL素子の点灯パターンを例示する斜視図。
【図12】同室内照明システムにおけるEL素子の点灯パターンを例示する斜視図。
【図13】同室内照明システムにおけるEL素子の点灯パターンを例示する斜視図。
【図14】同室内照明システムに用いられるEL素子を格子状に配置した発光パネルの変形性を示す一部分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態に係る室内照明システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態の室内照明システム1は、図1に示すように、壁面Wに沿って設置されるEL素子2と、このEL素子2の表面に配設される透光性仕上げ材3と、EL素子2を点灯制御する制御部4と、を備える。なお、本実施形態は、上述のように壁面Wへの設置例に基づいて説明するが、室内照明システム1は、天井C又は床面Fに設置されてもよい。また、壁面Wの全面に限らず、部分的に設けられてもよい。
【0013】
EL素子2は、直接的に壁面Wに設置されてもよいが、本実施形態においては、複数個のEL素子2が格子状に配列されて、発光パネル5が構成され、この発光パネル5が壁面Wに沿って設置される例に基づいて説明する。また、制御部4は、この発光パネル5の一端部に設けられている。なお、図例のハッチング箇所が点灯しているものとする。
【0014】
壁面Wには、発光パネル5の寸法に対応するように、予めマトリックス状に配線6が設けられており、配線6(図1では破線で示す)は、発光パネル5の一端部に設けられた制御部4の受信部(不図示)と電気的に接続されている。配線6は、給電線及び信号線の双方を含んでおり、制御装置7に接続されている。制御装置7は、給電部ACに接続され、所定電力を室内照明システム1の制御部4に供給すると共に、それらの点灯制御信号を出力する。なお、図1では、制御装置7を、壁付けリモコン型のものとして示している。
【0015】
制御部4は、発光パネル5の各EL素子2を点灯駆動させる駆動回路や、所定のアドレスが設定されたEL素子2を所定の点灯パターンに基づいて点灯させるための出力値を決定し、それを駆動回路に実行させる演算部等を備える。
【0016】
制御装置7は、ユーザの操作によるEL素子2の点灯制御内容を入力するための操作部や、複数の発光パネル5の各EL素子2に個別のアドレスを割り宛て、そのアドレスを記憶すると共に、EL素子2の点灯パターン等を記憶する記憶部や、記憶部に記憶された点灯パターンに基づいて所定のEL素子2を点灯させる制御信号を出力する演算部等を備える。なお、上述した制御部4の演算部は、制御装置7の記憶部及び演算部に共用化されていてもよい。
【0017】
発光パネル5は、図2に示すように、複数個のEL素子2が格子状に配置されており、対向する2枚の透明板10,11に挟持された構成となっている。なお、図例では、一方の透明板10の一部を切り欠いて表現している。各EL素子2は、個別に点灯制御されるように、ITO(酸化インジウムスズ:インジウムチンオキサイド)等の透明な配線12によって制御部4に接続されている。各EL素子2間の間隔は、絶縁性を確保できる範囲において、なるべく狭く形成されることが望ましい。なお、この間隔に、例えば、光拡散材を含有した絶縁性樹脂膜が設けられてもよい。
【0018】
EL素子2は、無機EL素子であってもよいが、素子の平面化に適した有機EL素子が好ましい。また、その形状は、5〜600mm角、好ましくは50〜100mmの略正方形形状の平面発光体である。一つのEL素子2が、単体の発光パネルを構成されていてもよいし、例えば、図3に示すように、10mm角のEL素子(発光セル2c)を格子状に100個設けることによって一つの発光パネルを構成してもよい。後者の場合、セル単位で点灯制御されるように透明な配線のパターンニングが施されることが望ましい。また、その場合の駆動方式は、アクティブ型、パッシブ型のいずれであってもよいが、本実施形態におけるEL素子2は迅速な点灯レスポンスを要しないので、生産性の観点からはアクティブ型が好適である。
【0019】
また、EL素子2は、図4に示すように、透光性を有する基板22上に、発光部23を形成し、その外側を封止材24で被覆したものである。なお、ここでは、EL素子2が単体の発光パネルとして構成されている例を示すが、上述した図3のような複数の発光セル2cにおいても、発光部のサイズや配線のパターンニング等の相違点を除き、基本的な構成は同じである。発光部23は、透明導電膜から成る陽極23a、発光機能を有する発光層23b、透光性を有する陰極23cを、順に基板22上に積層形成したものである。封止材24は、各電極の一部が露出するように被覆され、これら電極の露出部は、直接又はリード線等を介して電極端子(不図示)に電気的に接続される。
【0020】
基板22は、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等の透光性ガラスや、透光性樹脂材料等から成り、矩形板状に形成される。なお、室内照明システム1を構成する透明板11(図3参照)上に発光部23等を形成してもよく、この場合、この透明板11が実質的な基板22ということになる。
【0021】
陽極23aは、発光層23bにホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、導電性化合物又はこれらの混合物から成る電極材料が用いられ、好ましくは、仕事関数が4eV以上のものが用いられる。特に、ITO、SnO(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の透光性の導電材料が好ましい。陽極23aは、これらの電極材料を、基板22の表面に、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により成膜及びパターニングすることによって形成される。
【0022】
発光層23bは、所望の白色光を発光させ得る有機蛍光材料が用いられ、例えば、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及びこれらの発光性化合物から成る基を分子構造の一部に有する化合物、高分子材料、各種蛍光色素の混合材料等が用いられる。なお、図3に示したような複数の発光セル2cによってEL素子2が構成される場合、各発光セル2cがRGBの異なる発光色となるように、適宜に蛍光体が選択されることが望ましい。
【0023】
発光層23bは、陽極23aの表面に上述した化合物を、例えば、真空蒸着法により成膜及びパターニングすることによって形成される。なお、発光層23bは、複数の異なる材料が積層されたものであってもよく、これら複数層の間に電位を調整するためのバッファ層を介在させてもよい。
【0024】
陰極23cは、発光層23bに電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物又はこれらの混合物から成る電極材料が用いられ、好ましくは、仕事関数が5eV以下のものが用いられる。特に、リチウム、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、マグネシウム−銀混合物、Al/Al混合物、Al/LiF混合物等の反射性の導電材料が好ましい。また、陽極23aと同じく、透明な電極材料が用いられてもよい。陰極23cも陽極23aと同様の方法により形成される。
【0025】
なお、陽極23a及び発光層23bの間には、陽極23aから発光層23bへのホール注入効果を促進するホール注入・輸送層(図示せず)が設けられてもよい。また、発光層23b及び陰極23cの間には、好ましくは、陰極23cから発光層23bへの電子注入効果を促進する電子注入・輸送層(図示せず)が設けられる。
【0026】
このように構成されたEL素子2においては、電極端子に介して所定の電力が供給されることにより、発光層23bが発光する。発光した光は、陽極23aを透過して、又は陰極23cによって反射されて、基板22側からEL素子2外へ取り出され、発光パネル5から出射し、透光性仕上げ材3を透過して、壁面から放射される。なお、EL素子2の発光面には、基板22を傷や汚れ等から保護するため、アクリル樹脂等から成る保護層や、基板22からの光取り出し効率を高めるための拡散層等が設けられてもよい(図示せず)。
【0027】
透光性仕上げ材3は、透光性を有するものであれば特に限定されず、汎用の壁紙用化粧シートが用いられる。例えば、粗面化処理が施されているものや、拡散材が添加されているもの、又は凹凸のパターンが形成されているもの等が挙げられ、光拡散性を有するものが好ましい。また、和紙や薄い木質材等が用いられてもよく、これらを用いることにより、壁面に自然なテクスチャーを表現することができる。また、図示したようなシート材に限られず、所定の透光性を有していれば、樹脂製の塗料等であってもよい。
【0028】
室内照明システム1は、以下の手順により壁面Wに設置される。まず、図5に示すように、室内照明システム1を設置しようとする壁面Wに、発光パネル5を固定すると共に、配線6を保持するための枠体8を固定する。そして、図6に示すように、この枠体8に沿って発光パネル5が、発光面を表側になるように配置される。このとき、個々の発光パネル5の制御部4(図1参照)が、配線6に接続される。なお、発光パネル5に、他の発光パネル5と通信及び給電が可能な接続端子等が設けられていてもよい。発光パネル5の配置が完了した後、図7及び図8に示すように、この発光パネル5の表面に透光性仕上げ材3が貼付される。
【0029】
次に、室内照明システム1の作動例を説明する。室内照明システム1に用いられる全てのEL素子2を消灯させた状態において、EL素子2は、透光性仕上げ材3によって覆われているため、室内において全く存在感がない。室内照明システム1の作動時、各発光パネル5の制御部4は、制御装置7(図1参照)からの制御信号を受けて、格子状に配置された複数のEL素子2を個別に点灯制御する。例えば、図9に示すように、室内照明システム1に用いられる全てのEL素子2を点灯させる。そうすると、EL素子2が発光した光が室内全体に亘って放射される。
【0030】
この光は、透光性仕上げ材3を透過して、室内に放射されるため、居住者にギラギラした眩しさを感じさせ難い自然な光となり、ディスプレイ装置のようなドット感やギラつき感も与え難い。しかも、EL素子2自体は透光性仕上げ材3で覆われているので、室内において照明装置やディスプレイ装置のような発光体自体の存在感が無い。そのため、室内照明システム1は、居住者に対して、自然で居心地の良い照明環境を与えることができる。また、発光面積を広くすれば、単位面積あたりの輝度が低くなっても、部屋全体を明るくすることができる。
【0031】
また、例えば、居住者がリビングで寛ぎの時間を過ごそうとするときは、図10に示すように、床面に近い低位置のEL素子2を点灯させる。こうすれば、足元がほんのり明るくなり、ムード溢れる空間を演出することができる。また、居住者が部屋隅に置かれたソファーで読書をしようとするときは、図11に示すように、その箇所のみを点灯させる。このとき、透光性仕上げ材3を介して放射された光は、ギラつきが少ないので、目に負担をかけ難く、居住者は、快適に読書を楽しむことができる。また、部屋全体を明るくする必要もないので、省エネにも役立つ。なお、このような点灯制御は、室内に人感センサ(不図示)を設けて、人が居る場所の近傍のEL素子2を、制御装置7(図1参照)が自動的に点灯するようにしてもよい。
【0032】
また、透光性仕上げ材3に、絵や模様、又は幾何学的な図形等の柄が描かれた化粧シートが用いられてもよい。このとき、EL素子2を点灯させると、化粧シートに描かれた柄が、浮かび上がるように強調され、室内側からの照明では実現できない斬新な空間演出が可能となる。なお、図12には、大理石調の化粧シートを用いた例を示すが、これに限られないことは言うまでもない。
【0033】
また、上述した複数の発光セル2c(図3参照)でEL素子2を構成し、それらを個別に点灯制御すれば、より細かな演出が可能となり、壁面Wの表面に、様々な文字や図形等を表示することができる。また、図13に示すように、時計を表示することもできる。
【0034】
なお、上述した発光パネル5においては、複数のEL素子2が殆ど隙間無く配置された例を示したが、図14に示すように、複数のEL素子2を、それらの間に一定の間隔が空くように配置してもよい。この場合、室内照明システム1を全面発光させることはできないが、室内照明システム1の半分程度の面積に各EL素子2が設けられていれば、室内を十分な明るさに補光することができる。また、ITOや蛍光体といった高コスト材料の使用量を低減できるので、生産コストを低減することができる。
【0035】
なお、本発明は、壁紙等の壁面用仕上げ材の裏側にEL素子から成る平面発光体を設け、壁面用仕上げ材を介して室内に光が放射されるようになしたものであれば、上述の実施形態に限られることなく種々の変形が可能である。また、例えば、上述した本実施形態では、格子状に配置された複数のEL素子2を個別にオンオフ制御して、室内照明システム1全体における発光面積を変化させる例を示したが、制御部4が複数のEL素子2の夫々の調光出力を制御するようにしてもよい。また、赤色、青色、黄色の3色を発光可能なEL素子2を用い、制御部4が、これらの発光色を組み合わせて点灯制御することにより、例えば、様々なシチュエーションに応じて室内空間の演色性を変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 室内照明システム
2 EL素子
3 透光性仕上げ材
4 制御部
W 壁面(室内面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内面に沿って設置されるEL素子と、このEL素子の表面に配設される透光性仕上げ材と、前記EL素子を点灯制御する制御部と、を備えることを特徴とする室内照明システム。
【請求項2】
前記EL素子が複数あって、前記制御部はそれらを個別に点灯制御することを特徴とする請求項1に記載の室内照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図14】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−15079(P2012−15079A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153484(P2010−153484)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】