説明

害虫防除器

【課題】匍匐害虫を容器内に効率よく導くことができる害虫防除器を提供すること。
【解決手段】薬剤12を収容する容器14の周壁に、匍匐害虫の進入口となる開口部16を有する害虫防除器10は、開口部16に匍匐害虫の進行の障壁となるガイド部材18が設けられ、ガイド部材18は、平面視で、容器14の輪郭よりも外方に突出し、開口部16の両側の容器周壁20と非接触であり、容器周壁20との間に匍匐害虫が進入するための通路が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匍匐害虫(以下、単に害虫ということもある。)を防除するための害虫防除器に関する。
【背景技術】
【0002】
匍匐害虫駆除のために毒餌剤などの薬剤を設置する方法は、ホウ酸だんごに代表されるように昔から行われてきているが、近年は特許文献1〜3に記載のように、容器の中に薬剤を入れて、所定の場所に設置する方法が主流となっている。
【0003】
容器内に薬剤を入れておくことによって、薬剤に塵埃がつきにくくなり、効力の低下が抑えられる。また、犬猫等の動物が薬剤を食べることを防止できたり、風雨にさらされても薬剤が濡れることを防止できたり、踏まれるなどの事故をなくせるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−24874号公報
【特許文献2】実公平7−25033号公報
【特許文献3】特開平7−79676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術は、薬剤は容器に入れて用いるので、害虫は容器に形成された害虫進入口となる開口部から進入することになる。そして薬剤の周囲は容器によりほぼ覆われることになり、害虫を容器内に導くには、誘引効果が十分に発揮されず、害虫が薬剤に到達しにくいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決することに係り、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができる害虫防除器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 薬剤を収容する容器の周壁に、匍匐害虫の進入口となる開口部を有する害虫防除器であって、
前記開口部に前記匍匐害虫の進行の障壁となるガイド部が設けられ、
前記ガイド部は、平面視で、前記容器の輪郭よりも外方に突出し、前記開口部の両側の容器周壁と非接触であり、前記容器周壁との間に前記匍匐害虫が進入するための通路が形成されていることを特徴とする害虫防除器。
【0008】
(2) 前記ガイド部が1つの前記開口部に対して複数設けられていることを特徴とする上記(1)に記載の害虫防除器。
【0009】
(3) 前記容器が円筒形状であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の害虫防除器。
【0010】
(4) 前記容器の周囲に、前記ガイド部の上端に当接する庇部材が更に設けられていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の害虫防除器。
【0011】
このような構成にすることにより、従来は容器周壁に当接し、進行方向を変えてしまい、容器内に入らなかった匍匐害虫を、効率良く容器内に導くことができる害虫防除器を提供するものである。
【0012】
本発明の害虫防除器による優れた効果は、以下のような匍匐害虫の性質が複合的に関連していると考えられる。
【0013】
匍匐害虫には、交替性転向反応という性質がある。この性質は、例えば、最初に障害物に接したときに右に転回した匍匐害虫は、次に障害物に接したときに左に転回し、最初に障害物に接したときに左に転回した匍匐害虫は、次に障害物に接したときに右に転回する、というものである(性質1)。これを繰り返すことにより、匍匐害虫は元の場所に戻ることなく、長い距離を移動することができる。
【0014】
また、匍匐害虫には、交替性転向反応とは別に、障害物に接したとき、進行方向に対して転回角度が小さくなる方向へ曲がる性質がある(性質2)。
【0015】
つまり、上記(1)の構成によれば、ガイド部が容器の輪郭よりも外方に突出して設けられているので、容器周壁に最初に当接した匍匐害虫が、開口部方向(例えば右)に転回進行すると、ガイド部に当接して今度は逆側(例えば左)に転回進行し、容器内に入る。
【0016】
したがって、匍匐害虫が容器の周壁に当接すると、ガイド部により匍匐害虫を開口部方向に転回させて開口部へと導くことができ、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができる。
【0017】
このように、容器周壁とガイド部との間で匍匐害虫は交替性転向反応に基づいて進行し、匍匐害虫は開口部から容器内に導かれることになる。
【0018】
上記(2)の構成によれば、一つの開口部に対して複数のガイド部が設けられているので、開口部の近傍を異なる方向に進行していた匍匐害虫であっても、容器周壁又はガイド部に匍匐害虫を当接させて効率良く開口部に導くことができる。
【0019】
上記(3)の構成によれば、容器が円筒形状であることにより、容器に直接当接した匍匐害虫であっても周壁に沿って進行することでいずれかの開口部に達することができる。
【0020】
上記(4)の構成によれば、容器の周囲に、ガイド部の上端に当接する庇部材が更に設けられていることにより、ガイド部に接した匍匐害虫がガイド部の表面上を上方に向けて進行しても、庇部に突き当たり、ガイド部よりも上方に進むことがない。庇部は、いわゆるねずみ返しの機能を有する。
【0021】
本発明が対象とする匍匐害虫は、地面を這う虫であれば特に限定されず、匍匐害虫としては、例えば、ゴキブリ、ダンゴムシ、カミキリムシ、ワラジムシ、アリ、シロアリ、ムカデ、ヤスデ等が挙げられる。
【0022】
本発明は容器内に薬剤として誘引剤を設置して使用することができる。そして、誘引剤を容器内に収容するとともに、粘着剤などの捕獲手段を備えることで、容器内に進入した害虫を容器で捕獲することができる。
【0023】
また、薬剤として毒餌剤を容器内に収容することで、容器内に進入した害虫に毒餌剤を食べさせて駆除することもできる。
【0024】
本発明に用いることのできる薬剤の形状としては、例えば粉剤、生地などの固形製剤、ジェル、グミ、吸水性ポリマーの膨潤体などの半固形製剤、シロップ、ゾルなどの粘性が高い液状製剤等が挙げられ、容器の形状によっては液剤でも使用できる。
【0025】
本発明によれば、複数種類の毒餌剤を使用することによって、種類や場所によって異なる匍匐性害虫の種類や好みに対応することができる。また、その種類や好みに合わせて毒餌剤を複数個使用することも可能である。
【0026】
本発明に使用される毒餌剤には、害虫に対する防除効果を得るために各種殺虫成分等を有効成分として用いることができる。例えば、イミプロトリン、ビフェントリン等のピレスロイド系化合物や、フェニトロチオン、ピリダフェンチオン等の有機リン系化合物や、カルバリル、プロポクスル、フェノブカルブ等のカーバメート系化合物や、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物や、イミダクロプリド、アセタミプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフラン等のネオニコチノイド系化合物や、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物や、アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物や、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物や、ビストリフルロン、ヘキサフルムロン等のキチン合成阻害剤や、ホウ酸、ホウ砂、クロルフェナピル、これらの異性体又は誘導体等が挙げられ、さらに、ピペロニルブトキサイド、サイネピリン500等の共力剤等の1種又は2種以上を配合してもよい。
【0027】
毒餌剤とするには食餌成分を含ませることができる。食餌成分とは、害虫を誘引し、摂食させることができる食餌・誘引成分を意味するものであり、例えば、糖質類、油脂類、デンプン類、タンパク類、アミノ酸類、動植物のエキス類、高級アルコール類等を用いることができる。
【0028】
食餌、誘引成分としては、例えば、果汁、ハチミツ、廃糖ミツ、マルチトース、ソルビトール、異性果糖、蔗糖、砂糖キビ、砂糖、トレハロース、シュークロース、コウジビオース、マルトース、セロビオース、ラクトース、イソマルトース、D−グルコース、N−アセチル−D−グルコミサン、D−ガラクトース、D−マンノース、D−キシロース、D−ラクトース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、D−グルコミサン、アクチン、アルブミン、カゼイン、フィブリン、フィブリノーゲン、ケラチン、グロブリン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
更に、例えば、コオロギ、チョウ、ガ、ハエ、オキアミ、サナギコ、魚類、家畜類、貝類、卵等からの由来物質や、落花生、カボチャ種子、小麦フスマ、小麦粉、トウモロコシ、ソラマメ、大豆等からの由来物質や、木ロウ、ヤシ油、カカオ脂、ヒマシ油、オリーブ油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、ゴマ油、綿実油、アマニ油、キリ油、麻実油、エノ油、鯨油、イワシ油、ニシン油、タラ肝油、微生物油脂、酵母や細菌等からの油脂や、エデスチン、ゼイン、グリアジン等の1種又は2種以上を用いることもできる。
【0030】
また、例えば、オニオンフレーバー、メープルフレーバー、チキンエキス、ビーフエキス、ポークエキス、牛乳、醤油、ウスターソース、ゴキブリの糞や卵及び乾燥物、バニリン、マルトール等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
溶媒としては、例えば、精製水、イオン水、鉱水等の水や、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール等の有機溶媒や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、グリコール誘導体等の界面活性剤や、乳酸エチル、乳酸メチル等の乳酸エステルや、N−メチルピロリドン等のN−アルキルピロリドン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
また必要に応じて、酸化防止剤、保存剤、誤食防止剤、色素、香料等を配合することもできる。
【0033】
例えば、エリソルビン酸及びその塩、ジブチルヒドロキシトルエン、dl−α−トコフェロール、ノルジヒドログアヤレチック酸、メチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、グアヤク脂、L−システイン塩等の酸化防止剤や、安息香酸及びその塩、サリチル酸、ソルビン酸及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩、パラヒドロキシ安息香酸エステル、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、フェノキシエタノール等の保存剤や、安息香酸デナトニウム、トウガラシ末等の苦味成分や辛味成分等の誤食防止剤や、黄色4号、赤色102号、青色1号等のタール系色素やカラメル等の色素や、チーズ香料、バター香料、ピーナッツ香料、ピーチ香料、ストロベリー香料、ミルク香料等の香料や、クエン酸、リン酸水素塩等のPH調整剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
また害虫の誘引、摂食を阻害しない限り、必要に応じて、例えば、ホワイトカーボン、珪藻土、クレー、カオリン、タルク、ベントナイト、シリカ等の無機物や、パラフィン、ポリエチレングリコール、デキストリン、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、結晶セルロース、寒天、ゼラチン等の有機物の1種又は2種以上を配合してもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の害虫防除器によれば、匍匐害虫が容器周壁及びガイド部に当接することで、匍匐害虫を交替性転向反応などの性質に基づいて開口部に導くことができ、更に匍匐害虫を開口部から容器内に効率良く導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態である害虫防除器の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態である害虫防除器の分解斜視図である。
【図3】図1のガイド部材の固定構造を表す斜視図である。
【図4】図1の害虫防除器の平面図である。
【図5】図1の害虫防除器による匍匐害虫の進入経路を説明する図である。
【図6】本発明の第2実施形態の平面図である。
【図7】図6の害虫防除器による匍匐害虫の進入経路を説明する図である。
【図8】本発明の第3実施形態の平面図である。
【図9】図8の害虫防除器による匍匐害虫の進入経路を説明する図である。
【図10】本発明の第4実施形態の平面図である。
【図11】図10のガイド部による匍匐害虫の案内作用を説明する図である。
【図12】試験例1で使用した害虫防除器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る害虫防除器の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
[第1実施形態]
害虫防除器10は、薬剤12を収容する容器14の周壁に、匍匐害虫の進入口となる開口部16を有する。本実施形態では、容器14は、円筒形状の蓋部14aと円形の底板14bとからなり、蓋部14aの円周方向に3つの開口部16を有する。各開口部16には匍匐害虫の進行の障壁となる一対のガイド部材18が設けられている。ガイド部材18は、平面視で、容器14の輪郭よりも外方に突出し、容器周壁20と非接触であり、容器周壁20との間に匍匐害虫の進入口となる通路が形成されている。
【0039】
ガイド部材18は、基部18aとガイド部18bとからなるへ字状に屈曲した帯状板であり、開口部16の上縁を画成する容器周壁20に基部18aが装着されている。そして、ガイド部18bを開口部16から外方に突出するように配置されている。一対のガイド部材18の基部18aどうしの間は、匍匐害虫の進入口となる通路となる隙間が形成されている。また、ガイド部材18の基部18aと開口部16の両側の容器周壁20との間にも、匍匐害虫の進入口となる通路となる隙間が形成されている。
【0040】
図3に示すように、ガイド部材18は、容器周壁20に形成されたスリット22に基部18aを圧入することで装着されている。また、必要に応じて基部18aを接着剤により固着してもよい。
【0041】
また、ガイド部材18は、開口部16の中心線に対する角度θが0°〜90°に設定されるが、この角度θは20°〜60°であることが好ましい。
【0042】
ガイド部材18の上記角度θが20°未満であると、容器周壁20に当接した後、ガイド部18bと容器周壁20との間に進入した匍匐害虫が容器から離れる方向に進みやすくなり、上記角度θが60°を超えると、ガイド部18b間に進入した匍匐害虫がガイド部18b対して鋭角に当接しにくくなり、やはりガイド効果が充分に発揮されないことがある。
【0043】
容器14はプラスチック、紙、金属等の材料により成形される。容器の一部を透明なプラスチック製にすると、内部を視認できるので好ましい。
【0044】
また、容器14には、リング形状の庇部材24が外嵌されている。庇部材24の内径は、容器14の外径よりも大きく、庇部材24を容器14に被せてガイド部材18の上縁に載置されるようになっている。
【0045】
容器14の底板14bには、薬剤が載置される。
使用前に、底板14b上に薬剤を収容できるように、蓋部14aと底板14bとは分離されているが、使用にあたっては、蓋部14aと底板14bとは固定されることが好ましい。この場合、蓋部14aと底板14bとの固定構造は特に限定されない。固定構造としては、例えば、接着、溶着、圧入、ロック爪等による係止機構、等を採用することができる。
【0046】
また、蓋部14aの上面又は周壁に、開閉可能な毒餌剤挿入口を形成しておき、蓋部14aと底板14bとをあらかじめ固着しておいてもよい。
【0047】
本実施形態の害虫防除器10を使用するには、まず、底板14b上に薬剤12を収容する。薬剤12は、底板14bの中央に収容することが好ましい。ついで、底板14bと蓋部14aとを一体化して固定する。ついで、庇部材24を蓋部14aの上から被せてガイド部材18上に載置する。このようにして組み立てた害虫防除器10を所期の場所に設置することで、匍匐害虫が容器14内に効率良く導かれる。
【0048】
図4は第1実施形態の平面図であるが、庇部材24は図示を省略されている。
【0049】
以下、第1実施形態における害虫防除器による匍匐害虫の進入経路を、図5を参照して説明する。匍匐害虫は、性質1又は性質2に基づいて、転回していると考えられる。
【0050】
図5に示すように、匍匐害虫は、経路P1を通って容器周壁20に当接すると左に転回し、更に容器周壁20に沿って進行する。その後、ガイド部材18に当接して、右に転回して容器14内に進入する。
【0051】
匍匐害虫が経路P2を通ってガイド部材18に当接すると、容器14内方に向けて左に転回し、更に進行すると、相対するガイド部材18に当接する。すると、匍匐害虫は、容器14内方に向けて右に転回し、更に進行して一対のガイド部材18間から容器14内に進入する。
【0052】
匍匐害虫が経路P3を通ってガイド部材18に当接すると、容器14内方に向けて左に転回し、そのまま容器14内に進入する。
【0053】
経路P4を通った匍匐害虫は、容器周壁20に当接し、右に転回し、更に容器周壁20に沿って進行する。その後、ガイド部材18に当接して、左に転回して容器14内に進入する。
【0054】
ここで、ガイド部材18が設けられていないと、経路P3で進行する匍匐害虫は、容器周壁20とも当接せずにそのまま開口部16の前を通り過ぎるだけであり、容器14内に入らない。また、経路P1,P4で進行する匍匐害虫は、容器周壁20に当接して転回した後、そのまま開口部16の前を通り過ぎるだけであり、容器14内に入らない。したがって、ガイド部材18が設けられていることで、匍匐害虫が開口部16から容器14内に進入する割合が高まる。
【0055】
ガイド部材18のガイド部18bは、長さが長い方が匍匐害虫と当接する機能が高まるので誘導効果が高まるが、長すぎると設置時に広い面積を必要として邪魔になるので、適切な長さ(5〜50mm)に設定される。
【0056】
なお、上記実施形態は、容器14内に薬剤12を収容しただけであるが、容器14内に、進入した匍匐害虫を捕獲する構成を具備してもよい。このような構成としては、例えば粘着性シートを採用することができる。
【0057】
[第2実施形態]
上記第1実施形態は、容器14の各開口部16に一対のガイド部材18を設けたものであるが、本第2実施形態は一対のガイド部材18に代えて、Y字形状のガイド部材18Aを各開口部16に1つずつ設けた構成である。他の構成は第1実施形態と同じであるので、同符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0058】
図6は第2実施形態の平面図であるが、庇部材24は図示を省略されている。
ガイド部材18Aは基部18Aaを容器周壁20に固定され、二つの帯状板を外方に向けられている。
【0059】
以下、第2実施形態における害虫防除器による匍匐害虫の進入経路を、図7を参照して説明する。匍匐害虫は、性質1又は性質2に基づいて、転回していると考えられる。
【0060】
図7に示すように、匍匐害虫は、P5を通って容器周壁20に当接して左に転回すると、容器周壁20に沿って進行する。その後、ガイド部材18Aに当接して、右に転回して容器14内に進入する。
【0061】
匍匐害虫が経路P6を通ってガイド部材18Aに当接すると、容器14内方に向けて左に転回し、そのまま容器14内に進入する。
【0062】
経路P7を通った匍匐害虫は、容器周壁20に当接し、右に転回し、更に容器周壁20に沿って進行する。その後、ガイド部材18Aに当接して、左に転回して容器14内に進入する。
【0063】
ここで、ガイド部材18Aが設けられていないと、経路P6で進行する匍匐害虫は、容器周壁20とも当接せずにそのまま開口部16の前を通り過ぎるだけであり、容器14内に入らない。また、経路P5,P7で進行する匍匐害虫は、容器周壁20に当接して転回した後、そのまま開口部16の前を通り過ぎるだけであり、容器14内に入らない。したがって、ガイド部材18Aが設けられていることで、匍匐害虫が開口部16から容器14内に進入する割合が高まる。
【0064】
[第3実施形態]
本第3実施形態は、第1実施形態の一対のガイド部材18に代えて、平板形状のガイド部材18Bを各開口部16に1つずつ設けた構成である。また開口部16の数を3つから4つに増設してある。他の構成は第1実施形態と同じであるので、同符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0065】
図8は第3実施形態の平面図であるが、庇部材24は図示を省略されている。
【0066】
第3実施形態における害虫防除器による匍匐害虫の進入経路を、図9を参照して説明する。匍匐害虫は、性質1又は性質2に基づいて、転回していると考えられる。
【0067】
図9に示すように、匍匐害虫は、経路P8を通って容器周壁20に当接すると、左に転回し、更に容器周壁20に沿って進行する。その後、ガイド部材18Bに当接して、右に転回して容器14内に進入する。
【0068】
匍匐害虫が経路P9を通ってガイド部材18Bに当接すると、容器14内方に向けて左に転回し、そのまま容器14内に進入する。
【0069】
経路P10を通った匍匐害虫は、容器周壁20に当接し、右に転回し、更に容器周壁20に沿って進行する。その後、ガイド部材18Bに当接して、左に転回して容器14内に進入する。
【0070】
ここで、ガイド部材18Bが設けられていないと、経路P9で進行する匍匐害虫は、容器周壁20とも当接せずにそのまま開口部16の前を通り過ぎるだけであり、容器14内に入らない。また、経路P8,P10で進行する匍匐害虫は、容器周壁20に当接して転回した後、そのまま開口部16の前を通り過ぎるだけであり、容器14内に入らない。したがって、ガイド部材18Bが設けられていることで、匍匐害虫が開口部16から容器14内に進入する割合が高まる。
【0071】
[第4実施形態]
本第4実施形態は、第1実施形態の容器周壁20の形状を円形から正方形に代えて、開口部16を4つ設けた構成である。他の構成は第1実施形態と同じであるので、同符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0072】
図10は第4実施形態の平面図であるが、庇部材24は図示を省略されている。
【0073】
以下、第4実施形態における害虫防除器による匍匐害虫の進入経路を、図11を参照して説明する。匍匐害虫は、性質1又は性質2に基づいて、転回していると考えられる。
【0074】
図11に示すように、匍匐害虫は、経路P11を通って容器周壁20に当接すると、左に転回し、更に容器周壁20に沿って進行する。その後、ガイド部材18に当接して、右に転回して容器14内に進入する。その他の経路も第1実施形態と同様であるが、P12の経路で進入した場合は、ガイド部材18から離れる方向に進み、容器内に進入しない。
【0075】
実施例1
下記試験により本発明の効果を確認した。
実施例1で用いた第1実施形態の構成(図4)の害虫防除器の大きさは以下のようになっている。
直径85mm、高さ32mm、開口部の幅45mm(ガイド部材を均等に配置)、開口部の高さ10mm、ガイド部材の開口部中心線に対する角度θ=40度、ガイド部材の長さ(開口部外側)30mm、(開口部内側)5mm
供試虫
チャバネゴキブリ雌雄混合約50頭
試験方法
1. 縦45cm×横33cm×高さ16cmのバット内に供試虫約50頭を入れる。
2. 本発明の第1実施形態の構成(図1の庇部材24のない構成)の害虫防除器(実施例1)と、実施例1のガイド部材18のない構成の害虫防除器(比較例1)とを10cm程度離して前記バット内に併置する。
3. 10分間観察を行い、供試虫が実施例1と比較例1とに進入した数をカウントする。
4. 以下の式により、実施例1、比較例1それぞれについて単位時間(分)当たりの進入数を算出する。
単位時間当たりの進入数(頭/分)=進入数/観察時間

上記実験を2回実施した結果は表1の通りである。
【0076】
【表1】

【0077】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1は比較例1に比べて単位時間当たりの匍匐害虫の進入数が多く、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができた。
【0078】
実施例2
下記試験により第2実施形態の構成(図6)の害虫防除器の効果を確認した。
なお、第2実施形態の構成(図6)の害虫防除器の大きさは、開口部の幅が30mmとなっている以外は実施例1と同じであり、庇部材24を除いてある。
供試虫
チャバネゴキブリ雌雄混合約30頭
試験方法
1. 縦45cm×横33cm×高さ16cmのバット内に供試虫約30頭を入れる。
2. 本発明の第2実施形態の構成(図6)の害虫防除器(実施例2)と、ガイド部材を省略した構成の害虫防除器(比較例2)とをそれぞれ単独で設置する。
3. 実施例2及び比較例1の周壁に衝突した供試虫の数をカウントする。
4. 衝突後、実施例2及び比較例2の内部に進入した供試虫の数を記録する(衝突数が30頭となるまで観察する)。
5. 以下の式により進入率を算出し、実施例2と比較例2とで比較する。
進入率(%)=(進入数/壁面衝突数)×100

上記実験を2回実施した結果は表2の通りである。
【0079】
【表2】

【0080】
表2の結果から明らかなように、本発明の実施例2は比較例2に比べて、周壁に衝突した後、内部への進入率が高く、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができたことが分かる。
【0081】
実施例3
下記試験により第3実施形態の構成(図8)の害虫防除器の効果を確認した。
なお、第3実施形態の構成(図8)の害虫防除器の大きさは実施例2と同じであり、庇部材24を除いてある。
供試虫
チャバネゴキブリ雌雄混合約200頭
試験方法
1. 縦45cm×横33cm×高さ16cmのバット内に供試虫約200頭を入れる。
2. 本発明の第3実施形態の構成(図8)の害虫防除器(実施例3)と、ガイド部材を省略した構成の害虫防除器(比較例3)とを10cm程度離して設置する。
3. 10分間観察を行い、供試虫が本発明実施例3と比較例3とに進入した数をカウントする。
4. 以下の式により、実施例3、比較例3それぞれについて単位時間当たりの進入数を算出する。
単位時間当たりの進入数(頭/分)=進入数/観察時間

上記実験を4回実施した結果は表3の通りである。
【0082】
【表3】

【0083】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例3は比較例3に比べて単位時間当たりの匍匐害虫の進入数が多く、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができたことが分かる。
【0084】
実施例4
下記試験により第4実施形態の構成(図10)の害虫防除器〔100mm×100mm、開口部の幅30mm(ガイド部材を均等に配置)、ガイド部材の開口部中心線に対する角度θ=40度、ガイド部材の長さ(開口部外側)30mm、(開口部内側)5mm〕の効果を確認した。
供試虫
チャバネゴキブリ雌雄混合約100頭
試験方法
1. 縦45cm×横33cm×高さ16cmのバット内に供試虫約100頭を入れる。
2. 本発明の第4実施形態の構成(図10)の害虫防除器(実施例4)と、ガイド部材を省略した構成の害虫防除器(比較例4)とを10cm程度離して設置する。なお、実施例4と比較例3は庇部材を除いてある。
3. 10分間観察を行い、供試虫が本発明実施例4と比較例4とに進入した数をカウントする。
4. 以下の式により、実施例4、比較例4それぞれについて単位時間当たりの進入数を算出する。
単位時間当たりの進入数(頭/分)=進入数/観察時間

上記実験を2回実施した結果は表4の通りである。
【0085】
【表4】

【0086】
表4の結果から明らかなように、本発明の実施例4は比較例4に比べて単位時間当たりの匍匐害虫の進入数が多く、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができたことが分かる。
【0087】
試験例1
下記試験により庇部材の効果を確認した。
なお、試験に用いた捕獲器は、図12に示す害虫防除器(試験例1)とその庇部材24を除いた形状の比較例5である。試験例1の大きさは、底面80mm×80mm,天面60mm×60mm,庇部材90mm×90mm,高さ18mm、開口部幅10mmである。
供試虫
チャバネゴキブリ雌雄混合約100頭
試験方法
1. 縦36cm×横24cm×高さ14cmのバット内に供試虫約100頭を入れる。
2. 図12の害虫防除器(試験例1)を設置する。
3. 5分間観察を行い、以下の(1)〜(3)をカウントする。
(1) 害虫防除器の周辺(1cm程度)へ近づいた供試虫数
(2) 害虫防除器の内部へ進入した供試虫数
(3) 害虫防除器を乗り越えた供試虫数
4. 以下の式により、進入率を算出する。
進入率(%)=(進入した供試虫数÷周辺へ近づいた供試虫数)×100
また、庇部材24を省略した構成の害虫防除器(比較例5)も同様に試験を行った。
上記実験をそれぞれ4回実施した結果は表5の通りである。
【0088】
【表5】

【0089】
表5の結果から明らかなように、試験例1は比較例5に比べて単位時間当たりの匍匐害虫の進入率が高く、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができたことが分かる。
【0090】
実施例5
下記試験により第1実施形態の構成(図4)で庇部材24を取り付けた害虫防除器(実施例5)の効果を確認した。なお、実施例5の害虫防除器の大きさは実施例1と同じであり、庇部の幅は15mmである。
供試虫
チャバネゴキブリ雌雄混合約50頭
試験方法
1. 縦45cm×横33cm×高さ16cmのバット内に供試虫約50頭を入れる。
2. 本発明の第1実施形態の構成(図4)で庇部材24を取り付けた害虫防除器(実施例5)と、庇部材24とガイド部材18を省略した構成の害虫防除器(比較例6)とを10cm程度離して設置する。
3. 10分間観察を行い、供試虫が本発明実施例5と比較例6とに進入した数をカウントする。
4. 以下の式により、実施例5、比較例6それぞれについて単位時間当たりの進入数を算出する。
単位時間当たりの進入数(頭/分)=進入数/観察時間

上記実験を2回実施した結果は表6の通りである。
【0091】
【表6】

【0092】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例5は比較例6に比べて単位時間当たりの匍匐害虫の進入数が多く、匍匐害虫を容器内に効率良く導くことができたことが分かる。
【0093】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0094】
例えば、容器の形状は円筒形に限らず、角筒形、円錐形、角錐形等であってもよい。
また、ガイド部材のガイド部の形状は、平面視で、直線状でなくてもよく、円弧形状であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 害虫防除器
12 薬剤
14 容器
16 開口部
18,18A,18B ガイド部材
18a 基部
18b ガイド部
20 容器周壁
22 スリット
24 庇部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を収容する容器の周壁に、匍匐害虫の進入口となる開口部を有する害虫防除器であって、
前記開口部に前記匍匐害虫の進行の障壁となるガイド部が設けられ、
前記ガイド部は、平面視で、前記容器の輪郭よりも外方に突出し、前記開口部の両側の容器周壁と非接触であり、前記容器周壁との間に前記匍匐害虫が進入するための通路が形成されていることを特徴とする害虫防除器。
【請求項2】
前記ガイド部が1つの前記開口部に対して複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除器。
【請求項3】
前記容器が円筒形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫防除器。
【請求項4】
前記容器の周囲に、前記ガイド部の上端に当接する庇部が更に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の害虫防除器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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