説明

害虫防除方法

【課題】常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除方法の提供。
【課題の解決手段】 害虫防除成分として30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるピレスロイド化合物から選ばれた1種又は2種以上、並びに溶剤として炭素数が2〜3の低級アルコールを含むエアゾール原液と噴射剤とからなり、エアゾール原液/噴射剤比率が20〜50/50〜80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上である定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を5〜12時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内で使用されるエアゾール殺虫剤には、使用法からみて、屋内の空間を飛翔する害虫、あるいは壁や床面を徘徊する害虫等の対象害虫をめがけて噴霧する直撃タイプと、あらかじめ害虫の通り道にエアゾール殺虫剤を噴霧塗布しておく待ち伏せタイプがある。後者の場合、残効性を必要とすることから、蒸気圧が低く揮散性の乏しい殺虫成分を使用することが多い。
【0003】
一方、比較的蒸気圧の高い殺虫成分を含有するエアゾール殺虫剤を密閉空間で予め施用し、気中に浮遊殺虫成分粒子を残存させて飛翔害虫を予防的に防除しようとする試みもある。例えば、特許文献1(特開2001−17055号公報)には、好ましくは常温揮散性ピレスロイドを用い、蒸気圧の高い溶媒を使用することによって処理薬剤の粒子径を微細化し、処理薬剤量の気中残存率を処理開始から3時間以上12時間未満の間において1%以上とするか、または処理開始から12時間以上24時間未満の間において0.5%以上にできるエアゾール殺虫剤が記載されている。そして、特許文献1によれば、噴霧粒子径が小さいほど処理薬剤量の気中残存率が高まり、殺虫効力が持続するので、このような噴霧粒子径を与えるエアゾール殺虫剤は、蚊等の飛翔害虫防除には有効といえる。しかしながら、特許文献1の技術思想は、飛翔害虫の防除を目的として処理薬剤粒子の気中残存量を長時間保持させることにあり、当然のことながら匍匐害虫には全く言及されていない。
【0004】
ところで、空中に噴霧された処理薬剤粒子は、(A)気中に浮遊残存するか、(B)床や壁に付着するか、(C)Bの後に再揮散するか、もしくは(D)光等によって分解し消失する、のいずれかの挙動を辿る。特許文献1のエアゾール殺虫剤は、処理薬剤粒子の(B)の比率を下げ、(A)の比率を高めようとするものなので、壁や床面を徘徊する匍匐害虫には殺虫効力が及ばない。
一方、特許文献2(特開2001−328913号公報)は、殺虫成分・メトフルトリンを含有するエアゾールを室内の構造物や備品の表面に直接付着せしめ、表面から再揮散するメトフルトリンの作用で飛翔害虫を駆除できる旨開示している。この特許文献2は、(B)の後で(C)を期待する方法であるが、(C)への移行は使用条件に大きく左右されるので、飛翔害虫に対して安定した駆除効果が得られるとは到底考えられない。
【0005】
近年、飛翔害虫と匍匐害虫を含めた害虫全般を併せて駆除でき、かつ殺虫効果が持続するエアゾール殺虫剤を求めるニーズが高まっている。、上述のとおり、直撃タイプでは飛翔害虫と匍匐害虫の両方を対象としたものが市販されているが、予防を目的として両方の害虫に有効なエアゾール殺虫剤は未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−17055号公報
【特許文献2】特開2001−328913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)害虫防除成分として30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるピレスロイド化合物から選ばれた1種又は2種以上、並びに溶剤として炭素数が2〜3の低級アルコールを含むエアゾール原液と噴射剤とからなり、エアゾール原液/噴射剤比率が20〜50/50〜80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上である定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を5〜12時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除方法。
(2)前記害虫防除成分が、メトフルトリン、プロフルトリン及びトランスフルトリンから選ばれた1種又は2種以上である(1)記載の害虫防除方法。
(3)前記害虫防除用エアゾールの噴霧粒子の粒子径分布において、10〜50μmの噴霧粒子が全体の60%以上を占め、かつ全体の噴霧粒子のうちの20%以上が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着するようになした(1)又は(2)記載の害虫防除方法。
(4)前記定量噴霧用エアゾールバルブの一回当たりの噴霧容量が、0.35〜0.9mLである(1)ないし(3)のいずれかに記載の害虫防除方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の害虫防除方法によれば、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理することにより、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることができるので極めて実用的である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では害虫防除成分として、30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるピレスロイド化合物から選ばれた1種又は2種以上が用いられる。このような化合物は、常温揮散性を有するものであり、例えば、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、エムペントリン、テラレスリン、フラメトリン等があげられる。なかんずく、蒸気圧や安定性、基礎殺虫効力等を考慮すると、メトフルトリン、プロフルトリン及びトランスフルトリンが好ましい。なお、ピレスロイド化合物の酸成分やアルコール部分において、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物も本発明に包含されることはもちろんである。
30℃における蒸気圧が1×10−2mmHgを超える害虫防除成分を用いると揮散性が高すぎ、一方、2×10−4mmHg未満の場合は、たとえ他の要件全てを合致させても、害虫防除成分の噴霧粒子を長時間気中に残留させることができないので不適当である。
【0011】
本発明の害虫防除方法は、害虫防除成分が高濃度の害虫防除用エアゾールを少量一定量噴霧するので、エアゾール原液中の害虫防除成分含有量も、1.0〜30w/v%程度と高濃度となる。その調製に際し用いる溶剤としては、害虫防除成分の蒸気圧を考慮して炭素数が2〜3の低級アルコールに特定され、エタノールやイソプロパノール(IPA)が一般的である。かかる低級アルコールは、速乾性で噴霧後速やかに揮発するので噴霧粒子を微細にし、害虫防除成分が空間で浮遊残留しやすくなる。
なお、エアゾール原液中の害虫防除成分含有量が1.0w/v%未満であると所望の効果が得られないし、一方、30w/v%を超えるとエアゾール内容液の液性安定化の点で困難を伴う。
【0012】
本発明の害虫防除方法は、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む害虫防除用エアゾールを屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.35〜0.9mLで噴霧し、所定量の噴霧粒子を気中に浮遊残存させる一方、十分量の噴霧粒子が床や壁に付着するようになして、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることに特徴を有する。
このために、本発明で用いる害虫防除用エアゾールは、エアゾール原液/噴射剤比率が20〜50/50〜80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上であることを必須とする。
エアゾール原液/噴射剤比率が20/80より小さく噴射剤が多すぎると、噴霧粒子が必要以上に微細となり床や壁への付着量が不足する。一方、50/50を超えると、逆に噴霧粒子が速やかに沈降し害虫防除成分の気中濃度が不十分となる。
噴射力についても、3.0g・f未満では噴霧の勢いが不足し、噴霧粒子が屋内の隅まで到達しないため満足な害虫防除効果が得られない。
【0013】
本発明では、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、前記常温揮散性ピレスロイド化合物に加え、フタルスリン、レスメトリン、シフルトリン、フェノトリン、ぺルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、イミプロトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系化合物、シラフルオフェン等のケイ素系化合物、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル等のカーバメート系化合物などを若干量配合してもよい。
また、溶剤としても、炭素数が2〜3の低級アルコールに加え、例えば、n−パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素系溶剤、炭素数3〜6のグリコールエーテル類、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等を適宜添加可能である。
【0014】
本発明で用いる害虫防除用エアゾールは少量噴霧で十分なので、敢えて火気に対する危険性に留意する必要はないが、できる限り低減させる観点から水性化処方を採用することもできる。この場合、水の量は20〜70v/v%程度が適当であり、噴霧粒子の噴霧パターンに支障を来たさない限りにおいて、可溶化助剤として若干量の非イオン系界面活性剤を添加してもよい。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミドなどがあげられ、なかでも、エーテル類が適している。
【0015】
本発明では、前記各成分に加え、殺ダニ剤、カビ類、菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤、あるいは、芳香剤、消臭剤、安定化剤、帯電防止剤、消泡剤、賦形剤等を適宜配合してももちろん構わない。殺ダニ剤としては、5−クロロ−2−トリフルオロメタンスルホンアミド安息香酸メチル、サリチル酸フェニル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート等があり、一方、防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤としては、ヒノキチオール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、トリホリン、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、オルト−フェニルフェノール等を例示できる。
また、芳香剤としては、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、シトロネラ油、ライム油、ユズ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α−ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアセテート等の芳香成分、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分などがあげられるがこれらに限定されない。
【0016】
本発明で用いられる噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)、及び窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等の圧縮ガスがあげられ、そのうちの一種または二種以上を適宜採用することができるが、通常LPGを主体としたものが使いやすい。
本発明では、噴霧粒子の気中残存率と床面や壁への付着率を考慮して、エアゾール原液/噴射剤比率を20〜50/50〜80(容量比)とする。そのうえで、噴霧粒子の粒子径分布において、10〜50μmの噴霧粒子が全体の60%以上を占め、かつ全体の噴霧粒子のうちの20%以上が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着するように設計するのが好ましい。
【0017】
上記害虫防除用エアゾールは、屋内で一定量噴霧処理するための定量噴霧用エアゾールバルブを備え、一回当たりの噴霧容量としては0.35〜0.9mLが適当である。そして、噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上であれば、その用途、使用目的等に応じて、適宜噴口、ノズル、容器等の形状を選択すればよい。
例えば、上から押して噴霧するボタンと斜め上方向きのノズルを備えた卓上タイプとしたり、小型容器の携帯用として設計することができる。
【0018】
本発明は、こうして得られた害虫防除用エアゾールを、屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.35〜0.9mLで噴霧し、所定量の噴霧粒子を気中に浮遊残存させる一方、十分量の噴霧粒子が床や壁に付着するようになし、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とするものである。
この際、噴射距離20cmにおける噴射力が噴霧粒子径とともに極めて重要なファクターであることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、特許文献1のエアゾール殺虫剤は、蚊等の飛翔害虫のみの防除を目的とし、処理薬剤量の気中残存率を高めるために噴霧粒子径を小さくさえすれば良く、噴射力を考慮する必要がなかったのであるが、本発明の害虫防除方法では、噴霧粒子径を比較的大きくする必要性から噴射力の範囲を特定しなければならなかったのである。
本発明において気中に噴霧される害虫防除成分量は、2〜50mg/m程度が適当であり、1回の施用でその処理空間をおよそ5〜12時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることができる。
【0019】
本発明の害虫防除方法が有効な害虫としては、屋内で飛翔して人に被害や不快感を与える害虫、例えば、アカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、ユスリカ類、イエバエ、チョウバエ、ブユ類、アブ類、ハチ類、ヨコバイ類などの各種飛翔害虫のほか、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ等のゴキブリ類、アリ類、コクヌストモドキ、コクゾウムシ、シバンムシ、ダンゴムシ、ワラジムシなどの匍匐害虫があげられるが、これらの害虫に限定されるものではない。
【0020】
つぎに具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明の害虫防除方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
メトフルトリン4.0w/v%をエタノールに溶解してエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液12mLと液化石油ガス18mL[エアゾール原液/噴射剤比率:40/60(容量比)]を定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して、本発明で用いる害虫防除用エアゾールを得た。
このエアゾールの噴射距離20cmにおける噴射力は6.5g・fで、10〜50μmの噴霧粒子が全体の80%を占めた。
【0022】
ほぼ密閉した6畳の部屋で、やや斜め上方に向けて前記エアゾールを0.6mL噴霧した。このエアゾールは、全体の噴霧粒子のうちの30%が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着し、7時間以上にわたり蚊等の飛翔害虫を防除することはもちろん、ゴキブリ類、アリ類やシバンムシ等の匍匐害虫も寄せ付けず、非常に実用性の高いものであった。
【実施例2】
【0023】
実施例1に準じて表1に示す各種害虫防除用エアゾールを調製し、下記に示す試験を行った。その試験結果を纏めて表2に示す。
(1)25m3の部屋での飛翔害虫に対する防除効果
閉めきった25m3の部屋の中央で供試エアゾールを斜め上方に向けて0.6mL噴霧した。直ちに、アカイエカ雌成虫50匹を放ち2時間暴露させた後、全ての供試蚊を回収した。その間、時間経過に伴い落下仰転したアカイエカ雌成虫を数え、KT50値を求めた。同じ部屋で引き続き、噴霧4時間後、及び噴霧7時間後についても同様な操作を行った。
(2)匍匐害虫に対する忌避効果
20×20cmのガラス板6枚(チャバネゴキブリ用、クロヤマアリ用、及びアミメアリ用各2枚)を閉めきった25m3の部屋の中央に設置した。供試エアゾールを部屋の中央から斜め上方に向けて0.6mL噴霧し、2時間後にガラス板3枚を回収した。この薬剤付着ガラス板1枚と無処理のガラス板1枚を隙間なく合わせて並べ、合わせ目に直径15cmのプラスチックリングの中心がくるように置いた。リング内にチャバネゴキブリ(♂♀各5匹)、クロヤマアリ(5匹)又はアミメアリ(5匹)を放って自由に徘徊させ、30分後に供試昆虫がどちらのガラス板に留まっているかを計数した。噴霧7時間後に回収した残りのガラス板3枚ついても同様な操作を行った。結果は以下の基準で示した。
◎:全てノックダウン又は致死、あるいは全ての供試昆虫が無処理ガラス板、○:供試昆虫の80〜90%が無処理ガラス板(忌避活性あり)、△:供試昆虫の50〜70%が無処理ガラス板(忌避活性の可能性)、×:忌避活性なし。
(3)噴霧粒子の床面及び壁面付着量
25m3の部屋の床面及び壁面の数ケ所に20×20cmのガラス板を置き、噴霧処理1時間後に全てのガラス板を取り出し、付着した害虫防除成分をアセトンで洗い出してガスクロマトグラフィーにより分析した。得られた分析値を基に、噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着した害虫防除成分の、理論上の噴霧全体量に対する比率を求めた。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
試験の結果、害虫防除成分として30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるピレスロイド化合物、好ましくは、メトフルトリン、プロフルトリン及びトランスフルトリンから選ばれた1種又は2種以上、並びに溶剤として炭素数が2〜3の低級アルコールを含むエアゾール原液と噴射剤とからなり、エアゾール原液/噴射剤比率が20〜50/50〜80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上である定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールは、屋内で一定量噴霧処理することによって、飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれに対しても、7時間以上にわたり優れた害虫防除効果を保持した。
これに対し、比較例1のように、害虫防除成分として蒸気圧が2×10−4mmHg未満であるd,d−T80−プラレトリンを用いた場合、害虫防除成分の噴霧粒子が気中に長く残存せず短時間で床面に沈降するため、匍匐害虫に対しては相応の害虫防除効果を奏するものの、飛翔害虫に対する害虫防除効果は速やかに低下した。このような傾向は、所定の害虫防除成分を用いたとしても、エアゾール原液/噴射剤比率が50/50より大きい比較3や、溶剤として2〜3の低級アルコールではなくケロシンを用いた比較5においても認められた。
一方、比較2のように、エアゾール原液/噴射剤比率が20/80より小さいと、噴霧粒子が微細になりすぎ、また、比較4の如く、噴射力が3.0g・f未満であると、噴霧粒子が床面や壁面に付着する割合が低くなり、いずれも匍匐害虫に対する害虫防除効果の低下を招いた。
このように、本発明の害虫防除方法によってのみ、飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれに対しても、7時間以上にわたり優れた害虫防除効果が得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の害虫防除方法は、屋内だけでなく広範な害虫駆除を目的として利用することが可能である。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫防除成分として30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgであるピレスロイド化合物から選ばれた1種又は2種以上、並びに溶剤として炭素数が2〜3の低級アルコールを含むエアゾール原液と噴射剤とからなり、エアゾール原液/噴射剤比率が20〜50/50〜80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上である定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を5〜12時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることを特徴とする害虫防除方法。
【請求項2】
前記害虫防除成分が、メトフルトリン、プロフルトリン及びトランスフルトリンから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の害虫防除方法。
【請求項3】
前記害虫防除用エアゾールの噴霧粒子の粒子径分布において、10〜50μmの噴霧粒子が全体の60%以上を占め、かつ全体の噴霧粒子のうちの20%以上が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着するようになしたことを特徴とする請求項1又は2記載の害虫防除方法。
【請求項4】
前記定量噴霧用エアゾールバルブの一回当たりの噴霧容量が、0.35〜0.9mLであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の害虫防除方法。































【公開番号】特開2010−280633(P2010−280633A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136636(P2009−136636)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】