説明

家 具

【課題】 主として、調理や食事以外の用途に用いられる居室においても、簡単な調理や洗面等を可能とし、かつ、居室の美観を損なうことのない家具を提供する。さらに、居室空間の用途を固定することなく、どこでも必要な場所に設置して使用することができ、転用性、融通性に優れた家具とする。
【解決手段】 ワークトップ13には、調理用加熱器具131と、シンク132又は洗面器とを設ける。また、このワークトップ13上部を閉塞しうる回動可能なトップカバー17を設ける。このトップカバー17の内側には、調理用具44の収納部172又は鏡を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、調理用加熱器具を備えた家具に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、単身者用の住宅である、いわゆるワンルームマンションでは、一室にキッチンや、ベッド、クローゼット等の家具が備えられ、食事や就寝などの他、くつろぐ場としても使用されている。中でもキッチンは、居室が狭いため全体的に小さく設計され、シンクは小型のものが採用されたり、収納スペースも少ないものが多い。
【0003】また、高齢者のための居室も、就寝のほか、趣味や飲食など多目的に使用されている。高齢者の多くは、身体機能の低下から、日常生活において動きが緩慢になるとともに、つまずいたり転んだりしやすくなるため、家の中を動き回ることが負担となる。例えば、お茶を入れる程度の簡単な作業であれば、台所まで行かずに同じ室内で行うことができれば、このような負担は軽減される。
【0004】前記以外に、例えば事務所や店舗における接客室のように、日常的に調理や食事以外の用途に用いられている居室であっても、給湯室や洗面室まで行かずとも、お茶を入れたり、手を洗ったりすることができれば便利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記のワンルームマンションに備えられているキッチンは、十分な作業スペースが確保できず使い勝手が悪い。また、キッチンの調理用具が見えて雑然としやすいため居室全体がすっきりとせず、その雰囲気を損なうおそれもある。
【0006】また、高齢者のための居室や、接客室などの場合では、その居室にキッチンを備えていれば利便性は向上するが、頻繁に使用するものではないため大がかりな設備はむしろ不要であり、コストが嵩む。その上、調理や食事が主目的の居室ではないので、キッチンを設けることは、居室の美観や一体性を損なうこととなり好ましくない。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、主として、調理や食事以外の用途に用いられる居室においても、簡単な調理や洗面等を可能とし、かつ、居室の美観を損なうことのない家具を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するため、本発明は、ワークトップに調理用加熱器具を備え、このワークトップ上部を閉塞しうる回動可能なトップカバーが設けられたことを特徴としている。
【0009】この発明によれば、調理が必要な時だけトップカバーを開放して調理を行うことができ、日常的にはワークトップをトップカバーで覆って隠しておくことができる。
【0010】また、ワークトップにシンク又は洗面器が備えられてもよい。この場合、必要時には、トップカバーを開けて、水を汲んだり手を洗ったりすることも可能となる。
【0011】また、トップカバーの内側には調理用具の収納部が設けられてもよい。この場合、トップカバーを開けるとすぐに調理用具を手にすることができ、調理作業の効率が高められる。
【0012】さらに、トップカバーの内側には鏡が設けられてもよい。洗面だけでなく、同時に鏡を使用することもでき、利便性が高まる。
【0013】また、本発明は、外側ユニットに設けられた収納部に内側ユニットが収納される組合せ式の家具であって、内側ユニットは調理用加熱器具を備えるとともに、内側ユニット又は外側ユニットのいずれか一方にキャスターが設けられたことを特徴としている。
【0014】この発明によれば、調理を行わないときは、外側ユニットに内側ユニットを収納しておくことができ、調理を行うときには、内側ユニット又は外側ユニットのいずれか一方を移動させて内側ユニットの調理用加熱器具を使用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る家具の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】図1及び図2は、本発明に係る家具の第1実施形態を示している。
【0017】家具1は、箱形に形成され、前面に複数の収納スペースを有している。収納スペースは、収納量の異なる大小の引き出し式収納部11aと、扉を備えた開き戸式収納部11bとを備えている。引き出し式収納部11aは、食器41や鍋42、その他小物類を収納するのに好適である。また、開き戸式収納部11bには、比較的大きい鍋などの調理用具を収納したり、必要に応じて小型の冷蔵庫又は食器洗浄機などの電気機器43が納められてもよい。
【0018】また、家具1は、開き戸式収納部11bの上部に、収納可能に設けられた作業台12を備えている。作業台12は、図2に示されるように、必要時に水平方向前方へスライドして引き出し、サブテーブルとして使用される。
【0019】このような家具1の上部には、ステンレス製のワークトップ13が設けられている。このワークトップ13の一方には、例えば電磁誘導式(IH)加熱調理器などの調理用加熱器具131が設けられ、他方にはシンク132が備えられている。
【0020】ワークトップ13の左右及び後方の端縁には、側板14が立ち上げられている。この側板14は、内側に耐食性の高いステンレス板が貼設されて、調理の際の水の跳ね上げが家具1の周囲に跳ぶのを防いでいる。この側板14には、適宜、コンセントプラグの差込口15が設けられる。
【0021】また、ワークトップ13には、上部を閉塞しうるトップカバー17が回動可能に設けられている。トップカバー17は、ワークトップ13の後方に設けられた側板14の上縁部に蝶番16を介して回動可能に取り付けられている。また、トップカバー17の自由端側には、フロントカバー部171が設けられている。フロントカバー部171は、ワークトップ13の側板14と等しい高さ寸法を有し、トップカバー17が閉じられたときワークトップ13の側板14に相当して内部を完全に隠すものとなる。
【0022】トップカバー17の内側には、パイプ状の収納部172が設けられている。収納部172には、しゃくしやフライ返しなどの調理用具44やふきんを掛けることができる。また、収納部172はその下方に、引っ掛けられた調理用具44を押さえて固定するために、伸縮性を有する留めバンド173を備えている。これにより、トップカバー17の開閉動作時に、収納部172に引っ掛けられた調理用具44が落下したり、音を立てたりすることを防ぐ。
【0023】この家具1は、調理がされないときなど日常的には、図1に示すようにトップカバー17が閉じられる。トップカバー17を閉じると、家具1はワークトップ13を完全に隠すことができ、居室内に設置されていてもその雰囲気や美観を損なうことがない。また、調理を行う際には、図2に示すようにトップカバー17を立ち上げるだけで、容易にミニキッチンとして使用することができるものとなる。
【0024】図3から図5は、本発明に係る家具の第2実施形態を示している。
【0025】この家具2は、図1及び図2に示した第1実施形態と基本構成においてほぼ同様であるが、ワークトップ及びトップカバーにおける構成が異なる。そこで、前記第1実施形態と共通する部分については同一の符号を付して示し、その説明を省略する。
【0026】本実施の形態に係る家具2おいて、ワークトップ23には調理用加熱器具131とともに洗面器232が設けられる。また、トップカバー27の内側には鏡272が取り付けられている。この場合にも、家具1と同様、日常的にはトップカバー27を閉じておくことでワークトップ23を隠し、調理用加熱器具131等を見せずに使用することができる。そして必要時にだけトップカバー27を立ち上げ、ワークトップ23においてお茶を入れたり、手を洗ったりすることができる。さらに、家具2には鏡272が備えられているため、身だしなみを整えたり、化粧の用に供することができる。
【0027】また、図6から図9は、本発明に係る家具の第3実施形態を示している。
【0028】この家具3は、外側ユニット32と内側ユニット31とを有し、外側ユニット32に設けられた収納部321に内側ユニット31が収納される組合せ式の家具である。外側ユニット32及び内側ユニット31は、第1及び第2実施形態の家具1、2と同様、複数の引き出し式収納部11aを有している。
【0029】内側ユニット31は、ワークトップ33に電磁誘導式(IH)加熱調理器などの調理用加熱器具131を備えるとともに、底部にキャスター35が取り付けられている。また、ワークトップ33には、別体のテーブル板34が回動可能に設けられ、前面にはスライド式の作業台12が設けられている。図9に示すように、調理を行う際には、内側ユニット31を外側ユニット32から引き出して調理用加熱器具131を使用する。また、必要に応じてテーブル板34を水平に起こしたり、スライド式の作業台12を手前に引き出したりして、作業スペースを広くすることができる。
【0030】なお、本発明は、キャスター35を外側ユニット32に設けて、内側ユニット31ではなく外側ユニット32を移動させるものとしてもよい。
【0031】以上のように構成されることにより、家具3は、調理をしないときには内側ユニット31を収納部321に収納して、ワークトップ33を隠すことができる。また、調理の際には、内側ユニット31を外側ユニット32から引き出して、適当な場所へ内側ユニット31を移動させて使用することができる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る家具は、ワークトップに調理用加熱器具を備え、このワークトップ上部を閉塞しうる回動可能なトップカバーが設けられるので、ワークトップを使用しないときは隠しておき、必要時のみトップカバーを開放して調理をすることができる。
【0033】また、ワークトップに、適宜シンク又は洗面器が設けられ、トップカバーの内側に調理用具の収納部や鏡が設けられた場合には、さらに利便性が高められる。
【0034】また、本発明に係る家具は、外側ユニットに設けられた収納部に内側ユニットが収納される組合せ式の家具とされ、内側ユニットは調理用加熱器具を備えるとともに、内側ユニット又は外側ユニットのいずれか一方にキャスターが設けられるので、調理をするときは、外側ユニットに内側ユニットを収納しておくことができ、調理の際には、内側ユニット又は外側ユニットのいずれか一方を移動させて、内側ユニットの調理用加熱器具を使用することができる。
【0035】このように、本発明によれば、主として調理や食事以外の用途に用いられる居室においても、調理や洗面等を行うことが可能となり、ワークトップを使用しないときには、これを隠して通常の家具と並べて使用することができる。この結果、居室の美観を損なうことがなく、居室空間の用途を固定することもないため、どこでも必要な場所に設置して使用することができ、転用性、融通性に優れた家具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の家具の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の家具の使用状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の家具の第2実施形態を示す正面図である。
【図4】図3の家具におけるワークトップを示す上面図である。
【図5】図3の家具のトップカバーを開けた状態を示す側面図である。
【図6】本発明の家具の第3実施形態を示す正面図である。
【図7】図6の家具の上面図である。
【図8】図6の家具における外側ユニットの正面図である。
【図9】図6の家具における内側ユニットの使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 家具
13 ワークトップ
131 調理用加熱器具
132 シンク
17 トップカバー
44 調理用具
2 家具
23 ワークトップ
232 洗面器
27 トップカバー
272 鏡
3 家具
31 内側ユニット
32 外側ユニット
33 ワークトップ
34 テーブル板
35 キャスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ワークトップに調理用加熱器具を備え、このワークトップ上部を閉塞しうる回動可能なトップカバーが設けられたことを特徴とする家具。
【請求項2】 ワークトップにはシンク又は洗面器が備えられたことを特徴とする請求項1に記載の家具。
【請求項3】 トップカバーの内側には調理用具の収納部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の家具。
【請求項4】 トップカバーの内側には鏡が設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の家具。
【請求項5】 外側ユニットに設けられた収納部に内側ユニットが収納される組合せ式の家具であって、内側ユニットは調理用加熱器具を備えるとともに、内側ユニット又は外側ユニットのいずれか一方にキャスターが設けられたことを特徴とする家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−334114(P2003−334114A)
【公開日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−146183(P2002−146183)
【出願日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願人】(000163419)株式会社きんでん (37)
【Fターム(参考)】