説明

家具の脚体

【課題】前脚及び後脚の構造を簡素化して、後脚に、前脚の上端部を強固に結合しうるようにした家具の脚体を提供する。
【解決手段】前脚6の上端部に、この部分を左右方向に圧縮して塑性変形させることにより、下方の部分よりも幅広で、かつ後脚5の外側部と面接触可能な拡幅部6aを形成し、この拡幅部6aを、後脚5における上下方向の中間部の外側部に結合するとともに、後脚5の前面と前脚6の内側部とを、補強部材9により互いに結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば天板を上下方向を向く不使用位置に回動させて折り畳み、複数のテーブル(机も含む)を前後方向に重ねて、すなわちネスティングして保管しうるようにした家具の脚体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような天板を折り畳み可能としたテーブル等においては、その左右の脚体を、斜め前上方を向く上下方向の後脚と、前下方に傾斜する前脚とからなるものとし、前脚を、後脚の上端部または下端部に、後脚よりも外側に位置するように固定することにより、左右の前脚間の離間寸法を、左右の後脚間のそれよりも大として、複数のテーブル等を、天板を折り畳んだ状態で前後方向から入れ子状に重ねて保管しておけるようにしたものがある(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−102012号公報
【特許文献2】特開2007−260286号公報
【特許文献3】特開2007−301302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載のテーブルの脚体においては、後脚の上端部の外側面に、前脚の上端部を、単にねじにより固定しただけであるので、万一ねじが弛むと、脚体がぐらつく恐れがある。
【0005】
特許文献2に記載のテーブルの脚体は、後脚の外側面に上下方向の凹部を設け、この凹部内に前脚の上端部を嵌合してねじ止めしているので、ねじが弛んだとしても、脚体がすぐにぐらつく恐れは小さい。しかしながら、後脚に凹部を設けたり、この凹部に嵌合可能な嵌合部材を前脚の上端部に固着したりする必要があるので、脚体の構造が複雑となり、その製造コストが大となる。
【0006】
特許文献3に記載の机の脚体においては、後脚の下端部に、前脚の後端部を、外側方から嵌合し、この嵌合部に内側方からねじ止めした板状の固定部材により、後脚を挟持しただけであるので、前脚の後脚への取付強度が小さく、かつ天板等の荷重が取付部に大きな曲げモーメントとして加わるので、強度的に不利である。
【0007】
また、特許文献1〜3の脚体においては、いずれも、前脚と後脚との連結部やねじ等が外部に露呈しているので、脚体の見栄えが悪い。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、脚体の構造を簡素化し、かつ後脚に、前脚の上端部を強固に結合しうるようにした家具の脚体を提供することを第1の目的とするとともに、後脚と前脚との結合部を隠蔽して、脚体の見栄えを向上させうるようにした家具の脚体を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の家具の脚体は、
上下方向を向く後脚と、その上下方向の中間部に上端部が固定される斜め前下方を向く前脚とからなる家具の脚体において、
前記前脚の上端部に、この部分を左右方向に圧縮して塑性変形させることにより、下方の部分よりも上下幅が広幅で、かつ前記後脚の外側部または内側部と面接触可能な拡幅部を形成し、この拡幅部を、前記後脚における上下方向の中間部の外側部または内側部に結合するとともに、前記後脚の前面と前脚の内側部または外側部とを、補強部材により互いに結合したことを特徴としている。
この特徴によれば、後脚には何ら特別な加工等を施す必要がなく、単に前脚の上端部に、下方の部分よりも上下幅が広幅の拡幅部を、圧縮により塑性変形させて形成し、この拡幅部を、後脚の外側部に面接触させて結合しただけであるので、脚体の構造が簡素化し、そのコストを低減することができる。また、後脚に対し拡幅部の接触面積及び結合領域が大きくなるとともに、後脚の前面と前脚の内側部または外側部とを、補強部材により互いに結合しているので、後脚と前脚との結合強度が大となる。
【0010】
本発明の家具の脚体は、
後脚及び前脚を角筒状とし、前脚の拡幅部を、左右寸法が後端に向かうにしたがって漸次小をなす扁平な板状としたことを特徴としている。
この特徴によれば、後脚に対し前脚の拡幅部を広い面積で面接触させて、広範囲に結合することができるので、後脚と前脚との結合強度がより大となる。
【0011】
本発明の家具の脚体は、
後脚と前脚と補強部材との結合部を、カバー部材により覆ったことを特徴としている。
この特徴によれば、後脚と前脚と補強部材との結合部がカバー部材により隠蔽され、外部に露呈しないので、脚体の見栄えが向上する。
【0012】
本発明の家具の脚体は、
カバー部材における拡幅部を覆う部分の左右幅を、後端に向かうにしたがって漸次小としたことを特徴としている。
この特徴によれば、カバー部材における拡幅部を覆う部分が外側方に大きく突出しないので、その部分に物が当たる恐れは小さく、かつ体裁もよくなる。
【0013】
本発明の家具の脚体は、
カバー部材における補強部材を内側方より覆う部分の内側面を、後端から前端に向かって漸次外側方に傾斜する傾斜面としたことを特徴としている。
この特徴によれば、例えば天板が折り畳み可能な複数のテーブルを前後方向に重ねて保管する際に、前側のテーブルの左右の後脚が、後側のテーブルにおける左右のカバー部材の内側面と接触する恐れが小さくなるので、後脚やカバー部材が傷つきにくく、かつ前後のテーブルを互いに接近させて効率よくネスティングすることができる。
【0014】
本発明の家具の脚体は、
カバー部材を、前脚の拡幅部を覆う第1のカバー部材と、補強部材を覆う第2のカバー部材との左右2分割構造とし、これら第1のカバー部材と第2のカバー部材との対向端面のいずれか一方に係合溝を、かつ他方に、前記係合溝に係合する係止爪を設けたことを特徴としている。
この特徴によれば、第1のカバー部材と第2のカバー部材とを、後脚と前脚と補強部材との結合部に、左右方向から容易に、かつ互いに連結させて装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の脚体構造の実施例を適用した折り畳みテーブルを斜め前方より見た斜視図である。
【図2】本発明の脚体を外側方より見た拡大斜視図である。
【図3】同じく、内側方より見た拡大斜視図である。
【図4】後脚と前脚との結合部の拡大横断端面図である。
【図5】図1のV−V線に沿う拡大縦断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る家具の脚体を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明を適用した折り畳みテーブルを斜め前方より見た斜視図で、この折り畳みテーブル1は、上端部の対向面同士が横連結杆2により連結された左右1対の脚体3、3と、両脚体3の上端部に回動可能に取り付けられたブラケット(図示略)に、水平をなす使用位置と、脚体3の後側において起立する折り畳み位置との間を回動しうるように取り付けられた天板4とを備えている。
【0018】
左右の脚体3、3は、図2及び図3にも拡大して示すように(左右対称につき、左方の脚体のみ図示する)、斜め前上方を向いて傾斜する上下方向の後脚5と、その上下方向の中間部の外側面に、側面視ほぼ「人」の字状をなすように上端部(後端部)が固着された斜め前下方を向く前脚6とからなり、後脚5と前脚6の下端には、キャスタ7が取り付けられている。後脚5と前脚6とは、互いに溶接可能な金属、例えば鉄等の金属材により角筒状に形成されている。
【0019】
前脚6の上端部には、その部分をプレス等により左右方向に圧縮して塑性変形させることにより、下方の部分よりも上下幅が広幅の拡幅部6aが形成されている。この拡幅部6aは、左右寸法(厚さ)が後端に向かうにしたがって漸次小をなす扁平な板状とされ、その内側面(内側部)は、後脚5の外側面(外側部)と面接触するように、垂直面としてある。拡幅部6aの外側面の凹部8は、後端部の厚さを薄肉にするためと、内側面を垂直面とするためのプレスによる押圧痕である。
【0020】
前記拡幅部6aの内側面を、後脚5の上下方向の中間部の外側面に当接させ、互いの接触部の周縁を溶接することにより、後脚5の外側面に、前脚6の上端部が、側面視「人」の字状をなすように結合されている。なお、接触部の周縁を溶接するのに加えて、凹部8が形成された部分を、スポット溶接等により固着してもよい。このようにすると、後脚5に対し拡幅部6aを強固に結合することができる。
【0021】
後脚5と前脚6との結合部において、それらの前面と内側面とは、左右寸法が後端から前端に向かって漸次小とされた、平面視直角三角形状の補強部材9により互いに結合されている(図3参照)。すなわち、補強部材9の後端面と外側面とを、それぞれ後脚5の前面と前脚6の内側面とに溶接することにより、それらの前面と内側面とが互いに結合されている。後脚5と前脚6と補強部材9との結合部は、合成樹脂製のカバー部材10により覆われている。
【0022】
図2〜図5に示すように、カバー部材10は、前脚6における拡幅部6aを含む上端部を外側方より覆う第1のカバー部材11と、補強部材9を内側方より覆う第2のカバー部材12との左右2分割構造とされている。
【0023】
第1及び第2のカバー部材11、12は、それぞれ、側片11a、12aと、上片11b、12bと、下片11c、12cとを備え、縦断面形は、互いに対向するコ字状をなしている。第1のカバー部材11の後端には、拡幅部6aを後方より覆う短寸の後片11dが、内側方に向かって連設されている。
【0024】
前述したように、拡幅部6aの左右寸法を後端に向かうにしたがって漸次小をなす扁平な板状とすると、第1のカバー部材11の側片11aを、後端に向かうにしたがって漸次内側方に傾斜させて、第1のカバー部材11の拡幅部6aを覆う部分の左右幅を、後端に向かうにしたがって漸次小とすることができる。このようにすると、第1のカバー部材11における拡幅部6aを覆う部分が外側方に大きく突出しないので、その部分に物が当たる恐れは小さく、かつ体裁もよくなる。
【0025】
第2のカバー部材12は、補強部材9を内側方から覆うようにして、後脚5の前面と前脚6の内側面とに当接させて取り付けられるもので、その内側面、すなわち側片12aは、後端から前端に向かって漸次外側方に傾斜させてある。このように側片12aを傾斜させると、複数の折り畳みテーブル1を前後方向に重ねて保管する際に、前側のテーブルの左右の後脚5が、後側のテーブルにおける左右の第2のカバー部材12の側片12aと接触する恐れが小さくなるので、後脚5や第2のカバー部材12が傷つきにくく、かつ前後のテーブルを互いに接近させて効率よくネスティングすることができる。
【0026】
図3及び図5に示すように、第1のカバー部材11における上片11bと下片11cの前半部の右側縁には、上下方向に弾性変形可能な前後2個ずつの係止爪13、13が、内側方に突出させて連設されている。また、第2のカバー部材12における上片12bと下片12cの左端部の内面には、前記第1のカバー部材11の各係止爪13、13に係合可能な係合溝14が、前後2個ずつ形成されている。
【0027】
第2のカバー部材12の側片12aの下端には、位置決め片15が斜め下向きに突設され、この位置決め片15の下端部の外側面には、図4に示すように、前脚6の内側面に形成された係合孔16に係止可能な下向き鉤状断面の係止フック17が突設されている。なお、係止フック17を係合孔16に容易に係止するために、位置決め片15を、基端部を中心として厚さ方向に弾性変形しうるようにするのが好ましい。
【0028】
第1及び第2のカバー部材11、12を装着するには、まず第1のカバー部材11を、前脚6の拡幅部6aを含む上端部に外側方より被せる。
【0029】
次いで、第2のカバー部材12における位置決め片15の係止フック17を、前脚6の係合孔16に係合させ、第2のカバー部材12を前脚6の長手方向に位置決めする。この状態で、第2のカバー部材12を補強部材9に内側方より被せ、図5に示すように、第2のカバー部材12の上片12bと下片12cに設けた各係合溝14に、第1のカバー部材11の各係止爪13を弾性的に係合させる。これにより、第1のカバー部材11と第2のカバー部材12とが互いに連結されるとともに、第1及び第2のカバー部材11、12により、後脚5と前脚6と補強部材9との結合部が覆われる。
【0030】
以上説明したように、前記実施例の脚体構造においては、後脚5には何ら特別な加工等を施す必要がなく、単に前脚5の上端部に、下方の部分の上下幅よりも広幅の拡幅部6aを、圧縮により塑性変形させて形成し、この拡幅部6aを、後脚5の外側面に面接触させて溶接により結合しただけであるので、後脚5及び前脚6の構造が簡素化し、脚体3のコストが低減する。
【0031】
また、後脚5に対し拡幅部6aの接触面積及び溶接領域が大きくなるとともに、後脚5の前面と前脚6の内側面とを、補強部材9により互いに結合しているので、後脚5と前脚6との結合強度が大となる。
【0032】
さらに、後脚5と前脚6と補強部材9との結合部や溶接部は、カバー部材10により隠蔽され、外部に露呈しないので、脚体3の見栄えが向上する。
【0033】
カバー部材10は、第1のカバー部材11と第2のカバー部材12との左右2分割構造とされ、かつそれらの上片11b、12bと下片11c、12cとの対向部に設けた係止爪13と係合溝14とを互いに係合させることにより、第1のカバー部材11と第2のカバー部材12とを連結しうるようにしてあるので、第1及び第2のカバー部材11、12を、後脚5と前脚6と補強部材9との結合部に、左右方向から容易に装着することができる。
【0034】
なお、前記実施例では、前脚6の拡幅部6aを、後脚5の外側面に結合したが、後脚5の内側面に結合してもよい。この際、補強部材9は、後脚5の前面と前脚6の外側面とに結合される。
【0035】
また、前記実施例では、後脚5及び前脚6を、互いの結合部の接触面積を大とするために、角筒状をなすものとしたが、円形パイプや楕円パイプ等を使用することもできる。この際には、拡幅部6aにおける後脚5の外側面(外側部)(または内側面(内側部))と対向する側面(側部)を、丸パイプや楕円パイプ等の後脚と面接触可能な曲面形状とすればよい。
【0036】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0037】
例えば、前記実施例のような折り畳みテーブル1に限定されるものではなく、通常の天板固定式のテーブルや机等の脚体にも適用することができる。
【0038】
また、前記実施例では、前脚6の拡幅部6aを、後脚5の外側面に当接させ、互いの接触部の周縁を溶接することによって結合させているが、この結合手段は、溶接によるものに限らず、例えば、拡幅部6aの面積の広さを利用して、この拡幅部6aと後脚5の外側面とをネジ等の螺合部材により結合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 折り畳みテーブル
2 横連結杆
3 脚体
4 天板
5 後脚
6 前脚
8 凹部
9 補強部材
10 カバー部材
11 第1のカバー部材
12 第2のカバー部材
13 係止爪
14 係合溝
15 位置決め片
16 係合孔
17 係止フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向を向く後脚と、その上下方向の中間部に上端部が固定される斜め前下方を向く前脚とからなる家具の脚体において、
前記前脚の上端部に、この部分を左右方向に圧縮して塑性変形させることにより、下方の部分よりも上下幅が広幅で、かつ前記後脚の外側部または内側部と面接触可能な拡幅部を形成し、この拡幅部を、前記後脚における上下方向の中間部の外側部または内側部に結合するとともに、前記後脚の前面と前脚の内側部または外側部とを、補強部材により互いに結合したことを特徴とする家具の脚体。
【請求項2】
後脚及び前脚を角筒状とし、前脚の拡幅部を、左右寸法が後端に向かうにしたがって漸次小をなす扁平な板状としたことを特徴とする請求項1に記載の家具の脚体。
【請求項3】
後脚と前脚と補強部材との結合部を、カバー部材により覆ったことを特徴とする請求項1または2に記載の家具の脚体。
【請求項4】
カバー部材における拡幅部を覆う部分の左右幅を、後端に向かうにしたがって漸次小としたことを特徴とする請求項3に記載の家具の脚体。
【請求項5】
カバー部材における補強部材を内側方より覆う部分の内側面を、後端から前端に向かって漸次外側方に傾斜する傾斜面としたことを特徴とする請求項3または4に記載の家具の脚体。
【請求項6】
カバー部材を、前脚の拡幅部を覆う第1のカバー部材と、補強部材を覆う第2のカバー部材との左右2分割構造とし、これら第1のカバー部材と第2のカバー部材との対向端面のいずれか一方に係合溝を、かつ他方に、前記係合溝に係合する係止爪を設けたことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の家具の脚体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−90752(P2012−90752A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240410(P2010−240410)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】