説明

家庭用洗浄剤

【課題】環境問題を配慮しつつ、キッチン周りの油汚れ、室内における手垢・埃汚れやヤニ汚れ等の強力な汚れに対しても、良好に洗浄することのできる家庭用洗浄剤を提供する。
【解決手段】家庭内における汚れを洗浄する家庭用洗浄剤において、電解水にアルコールを混合すると共に、そのアルコールの混合する比率を50〜90%の範囲内にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭内における汚れを洗浄する家庭用洗浄剤、特にキッチン周りの油汚れや室内のヤニ汚れ等の強力な汚れを良好に洗浄することのできる家庭用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭内における汚れを洗浄、例えば、キッチン周りの油汚れや室内のヤニ汚れ等の洗浄に用いる家庭用洗浄剤としては、一般的に界面活性剤を用いた洗浄剤が知られていた。
【0003】
ところが、近年、人体や環境にやさしいといった環境面等への配慮、すなわち環境問題が大きくクローズアップされてきており、これらのことから、界面活性剤を用いない新たな洗浄剤の開発が進められてきた。
【0004】
そこで、界面活性剤を用いない新たな家庭用洗浄剤として、薄食塩水等の電解質水溶液を電気分解して生成される電解水の洗浄剤が知られている。この電解水の家庭用洗浄剤は、ある程度の殺菌効果も備え、現代における環境問題に配慮した商品として有効に利用されるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電解水の家庭用洗浄剤にあっては、多少の汚れであれば、きれいに洗浄することはできるものの、キッチン周りの油汚れ、油と埃が混じった汚れや、室内におけるヤニ汚れ等の強力な汚れに対して洗浄力が低いといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、環境問題を配慮しつつ、キッチン周りの油汚れ、油と埃が混じった汚れや、室内におけるヤニ汚れ等の強力な汚れに対しても、良好に洗浄することのできる安全性の高い家庭用洗浄剤を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一発明は、家庭内における汚れを洗浄する家庭用洗浄剤において、電解水にアルコールを混合すると共に、そのアルコールの混合する比率を50〜90%の範囲内にした家庭用洗浄剤である。
【0008】
本発明の第二発明は、第一発明において、アルコールの混合する比率を60〜80%の範囲内にした家庭用洗浄剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の電解水のみの家庭用洗浄剤では、なかなか落とすことのできなかったキッチン周りの油汚れや室内のヤニ汚れ等といった強力な汚れも、電解水にアルコールを混合したことで、極めて容易に落とすことができる。また、電解水による殺菌力にアルコールによる殺菌力が加わって、極めて高い殺菌力も有するようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による家庭用洗浄剤としては、電解水にアルコールを混合したものである。電解水としては、従来と同様、薄食塩水等の電解質水溶液を電気分解して生成されるものである。アルコールとしては、エチルアルコールやイソプロピルアルコール等が挙げられる。このエチルアルコールには、糖蜜、サトウキビ等の糖質やトウモロコシ、サツマイモ、ジャガイモ等のでんぷん質を原料として作られる発酵アルコールと、エチレンに水を付加させる等して製造される合成アルコールとがある。
【0011】
そして、この電解水にアルコールを混合する際、アルコールの混合する比率を50〜90%の範囲内にする。また、洗浄力を極めて高くするということを考慮すると、アルコールの混合する比率を60〜80%の範囲内にするのが最も良い。なお、このアルコールの混合する比率については、後述する第一の試験に基づくものである。
【0012】
このような家庭用洗浄剤において、実際の使用方法としては、レバーを操作することによって噴霧口より前方に内容物を噴霧する噴霧器付き容器に当該家庭用洗浄剤を収容する。そして、この噴霧器付き容器を用いて、例えば、キッチン周りであるガスレンジの周辺あるいはレンジフード等の汚れた箇所に、家庭用洗浄剤を噴霧し、この家庭用洗浄剤を噴霧したところを布等を使って、ここに付着している油汚れを拭き取る。これにより、キッチン周りであるガスレンジの周辺あるいはレンジフード等の汚れを落として、洗浄を行う。
【0013】
また、別の使用方法としては、当該家庭用洗浄剤を不織布や布、紙等のシートに含浸させて、このシートを筒型または箱型、ピロー型等の容器や袋に収容する。そして、容器内や袋内に収容したシートを取り出して、このシートを使って、例えば、キッチン周りであるガスレンジの周辺あるいはレンジフード等の汚れた箇所をシートで拭き、ここに付着している油汚れを拭き取る。これにより、キッチン周りであるガスレンジの周辺あるいはレンジフード等の汚れを落として、洗浄を行う。
【0014】
このような本発明による家庭用洗浄剤にあっては、電解水にアルコールを混合すると共に、そのアルコールの混合する比率を50〜90%の範囲内にしたことにより、家庭用洗浄剤として、環境問題を配慮しつつ、キッチン周りの油汚れや室内のヤニ汚れ等の強力な汚れに対しても、良好に洗浄することができる。
【0015】
この家庭用洗浄剤は、電解水にアルコールを混合することにより、アルコールによる作用及び電解水による作用という二つの作用の相乗効果によって、洗浄を良好に行うことができる、すなわち、洗浄力を高くすることができるものである。これは、アルコールによる汚れの溶解作用と、電解水による汚れの剥離作用との二つの作用によって洗浄が行われるものであり、具体的には、まず、第一段階として、図1(a)に示すように、混合したアルコールによって、汚れにアルコールが浸透して、汚れを溶解する、すなわち、溶解作用が起こる。そして、第二段階として、図1(b)に示すように、溶解された汚れにおいて、電解水によって、その汚れ表面がプラスイオン化されて、汚れが剥離する、すなわち、剥離作用が起こる。これにより、剥離した汚れは布等を使って容易に拭き取ることができる。
【0016】
このように家庭用洗浄剤において、電解水にアルコールを混合することにより、従来の電解水のみのものと比べて、洗浄力が高くなることにより、キッチン周りにおけるガスレンジ、レンジフード、その周辺への油汚れ、また、室内における壁、ガラス、家電品への手垢・埃汚れやヤニ汚れ等に対して、極めて容易に汚れを落とすことができ、すなわち、キッチン周りの油汚れや室内のヤニ汚れ等の強力な汚れに対しても、良好に洗浄することができる。特に、キッチン周りの油汚れは、通常の油が付着した程度の汚れとはまったく異なるもので、油における酸化重合という現象で油の分子が鎖状につながる変成油に変化したものであり、なかなか容易に洗浄することができない汚れであった。しかしながら、電解水にアルコールを混合する本発明による家庭用洗浄剤では、この特異なキッチン周りの油汚れに対しても容易に洗浄することができるものである。
【0017】
さらに、アルコールの混合する比率を50〜90%の範囲内にすることで、電解水による殺菌力にアルコールによる殺菌力が加わって、極めて高い殺菌力と即効性を有するようになり、これによって、家庭用洗浄剤にあっては、優れた洗浄力と共に優れた殺菌力を同時に有するものにすることができる。
【0018】
一方、アルコールの混合する比率を60〜80%の範囲内にすると、より一層、洗浄力及び殺菌力を高めることができ、これにより、極めて良好に洗浄することができと共に、殺菌も極めて良好に行うことができる。
【0019】
また、界面活性剤を使用しないことで、泡立ちやべたつきが残らず、洗浄作業時、当該家庭用洗浄剤を使用して、汚れを拭き取るだけで良く、汚れを拭き取った後、濡れたタオル等で残留洗剤(界面活性剤)成分を拭き取る二度拭き作業等を行う必要がまったくなく、一度の拭き取り作業のみで良く、洗浄作業を極めて容易なものにすることができる。
【0020】
なお、本発明による家庭用洗浄剤にあっては、従来の家庭用洗浄剤として一般的に良く用いられていた界面活性剤を一切用いていないので、使用時、使用者が直接これに触れていても皮膚等に悪影響を受けることがなく、人体にやさしく、しかも、環境に対してもやさしい、要するに、家庭用洗浄剤として、環境面等に配慮した商品にすることができる。
【0021】
次に、本発明による家庭用洗浄剤についての各種の試験を行ったので、これらについてそれぞれ説明する。
【0022】
第一の試験は、強力な汚れに対する洗浄効果についての試験であり、その試験方法は、まず、タバコのヤニ(タール等)を付着させた汚れサンプルを多数作製する。この汚れサンプルの作製は、12リットル用シリンダー内に白色のアクリル板を置いて、この12リットル用シリンダー内にタバコの煙を充満させて、アクリル板の表面が黄土色になるまでタバコのヤニ(タール等)を付着させる。そして、タバコのヤニが付着したアクリル板を12リットル用シリンダー内より取り出して、次に1時間、80℃で焼成する。このようにして作製した汚れサンプルを使用する。
【0023】
そして、家庭用洗浄剤における試験品として、電解水の比率が100%でアルコールの比率が0%である試験品A、電解水の比率が90%でアルコールの比率が10%である試験品B、電解水の比率が70%でアルコールの比率が30%である試験品C、電解水の比率が50%でアルコールの比率が50%である試験品D、電解水の比率が45%でアルコールの比率が55%である試験品E、電解水の比率が40%でアルコールの比率が60%である試験品F、電解水の比率が30%でアルコールの比率が70%である試験品G、電解水の比率が20%でアルコールの比率が80%である試験品H、電解水の比率が10%でアルコールの比率が90%である試験品I、電解水の比率が0%でアルコールの比率が100%である試験品J、それぞれを用意する。なお、この電解水にあっては、電気伝導率が11.5mS/cm、水酸化ナトリウム換算値が0.21g/l、pHが12.71である。また、アルコールにあっては、エチルアルコール(発酵アルコール)である。
【0024】
これら用意した試験品A〜試験品Jを、それぞれの汚れサンプルに200μl滴下して30秒間放置した後、ウエス等の布を押し当てて、各試験品をウエス等の布で吸い取るようにする。そして、これによる汚れサンプルに付着したタバコのヤニの除去状態を目視にて観察して、試験品A〜試験品Jの洗浄力についての評価を行う。
【0025】
この評価の結果を、以下の表1に示す。なお、評価としては、各試験品を滴下した部分の輪郭がはっきりと現れて、タバコのヤニが完全に落ちた状態のものを◎、各試験品を滴下した部分において、タバコのヤニがほぼ落ちた状態のものを○、各試験品を滴下した部分において、タバコのヤニが少し落ちた状態のものを△、各試験品を滴下した部分の輪郭がはっきりせず、タバコのヤニが落ちていない状態のものを×とする。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、試験品A、試験品B、試験品Cは、評価が△であり、タバコのヤニが少ししか落ちなかった。また、試験品Jも、評価が△であり、タバコのヤニが少ししか落ちなかった。これらに対して、試験品D、試験品E、試験品Iは、評価が○であり、タバコのヤニがほぼ落ちた。さらに、試験品F、試験品G、試験品Hは、評価が◎であり、タバコのヤニが完全に落ちた。
【0028】
以上の結果より、アルコールの混合する比率が50〜90%のものでは他のもの比べて洗浄力が高く、良好に汚れを落とすことができ、さらに、アルコールの混合する比率が60〜80%のものでは洗浄力が極めて高く、極めて良好に汚れを落とすことができることがわかった。
【0029】
なお、第一の試験は、ヤニ汚れに対する洗浄効果についての試験で、その使用したタバコのヤニ(タール等)は油状のものであり、キッチン周りにおけるガスレンジ、レンジフード、その周辺に付着する気体状の油が付着したことによる油汚れに近い成分ともいえる。よって、キッチン周りのガス化した油に起因する油汚れに対する洗浄効果も、同様と考えられる。
【0030】
また、比較するための試験として、第二の試験を行う。この第二の試験は、従来の家庭用洗浄剤として一般的に知られている界面活性剤を用いた洗浄剤におけるヤニ汚れに対する洗浄効果についての試験であり、試験方法は、第一の試験と同様である。そして、比較品として、界面活性剤の一種であるポリオキシエチレンアルキルエーテル2%を用いたものを比較品A、界面活性剤の一種であるアルキルアミンオキシド1%を用いたものを比較品B、それぞれを用意して、これら用意した比較品Aと比較品Bの洗浄力についての評価を行う。この評価の結果を、以下の表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2から明らかなように、比較品Aと比較品Bは、評価が△であり、タバコのヤニが少ししか落ちなかった。
【0033】
次に、本発明による家庭用洗浄剤の実施品を使用して、キッチン周りの油汚れに対する洗浄についての第三の試験と、室内のヤニ汚れに対する洗浄についての第四の試験をそれぞれ行う。なお、この実施品は、電解水の比率が40%でエチルアルコールの比率が60%である。また、実施品との比較として、第二の試験で使用したポリオキシエチレンアルキルエーテル2%を用いた比較品A、アルキルアミンオキシド1%を用いた比較品Bを、それぞれ用意する。
【0034】
第三の試験は、日本清浄紙綿類工業会の拭き取り試験方法を参考に拭き取り条件を設定した。まず、キッチン周りの油を想定した油汚れサンプルを作製する。この油汚れサンプルとしては、使用済みの粘性の高い調理用植物性油をオイルレッドで着色して使用した。この油は酸化重合が進んだ変性油であり、実際のキッチン周りの油跳ねによって付着した油が酸化したことに起因するベタベタになった油汚れに非常に近いものである。この油を樹脂プレートに0.03g均一に塗布して、キッチン周りの油汚れを想定した油汚れサンプルを作製する。そして、この油汚れサンプルそれぞれに、実施品、比較品A、比較品Bを噴霧(1ml/スプレー1回分)する。そして、その後、均一の加重(拭き取り試験用の重り150g)を加えて、キッチンペーパーを用いて拭き取る(片道1回のみ)。拭き取り後(処理後)のそれぞれの油汚れサンプルにおける樹脂プレート上の油汚れの重量を計測して、それぞれの油汚れの残存率を算出する。この油汚れの残存率の結果を、以下の表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3から明らかなように、拭き取り後(処理後)の油汚れの残存率は、実施品が12.7%で、比較品Aが29.6%、比較品Bが47.6%である。よって、比較品Aでは約70%除去、比較品Bでは約52%除去するのに対し、実施品では約87%除去する。このように実施品が油汚れを極軽い力で約87%除去でき、極めて良好に油汚れを除去していることがわかる。
【0037】
第四の試験は、ヤニ汚れに対する洗浄効果についての試験であり、その試験方法は、まず、室内のヤニ汚れを想定したヤニ汚れサンプルを作製する。このヤニ汚れサンプルとしては、第一の試験と同様に樹脂プレートにヤニ汚れを焼き付けて(1時間、80℃での焼成)作製する。そして、このヤニ汚れサンプルそれぞれに、実施品、比較品A、比較品Bを1滴(200μl)垂らして、30秒間放置した後、垂らした実施品、比較品A、比較品Bを布にてそれぞれ吸い取り処理を行う。ヤニ汚れの程度は色彩色差計(ミノルタ社製、CT−210)で測定する。吸い取り処理前後のヤニ汚れの色差を測定し、吸い取り処理前のヤニ汚れの色差を100%として、処理後のそれぞれのヤニ汚れの色差を、処理前に対する比率で、すなわち、残存率(%)として示す。そのヤニ汚れの残存率の結果を、以下の表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
表4から明らかなように、拭き取り後(処理後)のヤニ汚れの残存率は、実施品が7%で、比較品Aが48%、比較品Bが42%である。よって、比較品Aでは52%除去、比較品Bでは58%除去するのに対し、実施品では93%除去する。このように実施品がヤニ汚れを93%という極めて高い比率で除去していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の家庭用洗浄剤における洗浄時の作用状態の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭内における汚れを洗浄する家庭用洗浄剤において、
電解水にアルコールを混合すると共に、そのアルコールの混合する比率を50〜90%の範囲内にしたことを特徴とする家庭用洗浄剤。
【請求項2】
前記アルコールの混合する比率を60〜80%の範囲内にしたことを特徴とする請求項1記載の家庭用洗浄剤。

【図1】
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