説明

家庭用電気製品用の器具及び潤滑剤

本発明は、互いに対して移動することができ、転動要素によって互いに対して摺動する2つのレールを備える器具、例えば、家庭用電気製品の引出しスライドに関する。そのプロセスにおいて、転動要素(4)の走行路(6、8)は、レール(2、3)の少なくとも一部の領域で窒化ホウ素及び/又はポリシロキサンを含有する潤滑剤(7)によって潤滑される。これにより、高温でも安定な潤滑剤(7)の効率的な使用が促進される。本発明は、600℃超の温度で安定であり、湿った領域で使用することができる、特に家庭用電気製品の器具のための潤滑剤にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、互いに対して移動することができ、転動要素によって互いに対して摺動する少なくとも2つのレールを備える器具、例えば、特にオーブン用の引出しスライド、及び潤滑剤に関する。
【0002】
高温域で使用される引出しスライドの分野において、知られている潤滑剤の多くは、材料強度の限界に達するであろう。知られている流体潤滑剤の多く、例えばポリフルオロ化化合物などは、顕著な摺動及び潤滑性を有するにもかかわらず、もはや高温域で使用することはできない。
【0003】
そのため、室温未満、さらには最大で600℃の温度で良好な潤滑及び摺動性を絶えずもたらす、対応する器具、特に引出しスライドを提供することは技術的な課題である。さらに、耐薬品性のコーティング並びに該コーティングを製造及び適用する費用効果の高い方法を実現する必要がある。
【0004】
欧州特許出願公開第1589291号は、転動要素保持器に取り付けられた転動要素を備える一般的な引出しスライドを開示している。転動要素保持器は、とりわけラッカーへの窒化ホウ素の組込みを実現する潤滑剤層を有する。窒化ホウ素は、その特別な材料性質が絶対的に必要な分野においてコスト的な理由でのみ使用されているため、この化合物の使用における最も重要な側面は、特に費用が最適化された、可能な限り最良の適用である。欧州特許出願公開第1589291号のような大きな表面積にわたるコーティングは、したがって適切ではない。
【0005】
長時間にわたって低温及び高温の両方で使用されたときにレールを円滑にガイドすることを可能にする器具、特に引出しスライド及び潤滑剤を提供することが本発明の目的である。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する引出しスライド、請求項16の特徴を有する潤滑剤及び請求項27の特徴を有する器具により達成される。
【0007】
本発明による解決により、窒化ホウ素及び/又はポリシロキサンを含有する潤滑剤は、走行路の相当に小さい領域の少なくとも一部の領域に適用することができる。これにより、材料の消費を少なくすると同時に意図した潤滑が可能となる。
【0008】
六方晶系窒化ホウ素は、高温での適用において最適な潤滑剤及び摺動剤であると立証されている。溶融アルカリ及びアルカリ性溶液を除いて、六方晶系窒化ホウ素は化学的に不活性であり、耐酸化性である。窒化ホウ素の構造は、グラファイトの構造と実質的に同様であり、窒化ホウ素は900℃以上の温度で立方β−窒化ホウ素に変換する。
【0009】
潤滑剤の適用は、潤滑剤ペースト、懸濁液の形態で、又は粉末として実施することが好ましい。したがって、潤滑剤は、工業的連続生産に使用することができる。さらに、これらの適用により、適用領域の非常に正確な選択及びコーティングが可能となる。
【0010】
好ましい実施形態によると、潤滑剤混合物は、窒化ホウ素、グラファイト及び高温グリースの混合物であり、5%と30%の間の質量分率w(窒化ホウ素)、好ましくは10%と20%の間の質量分率w(窒化ホウ素)を有する。さらなる潤滑剤成分としての比較的安価なグラファイトの使用及びマトリックスおよび担体物質としての高温グリースの使用の両方は、窒化ホウ素の摺動及び潤滑性をさらに維持する。長い加熱期間の間にグラファイトが組み込んだ水分子を排出してその潤滑作用を一時的に低減させるのに対して、潤滑作用は、窒化ホウ素において高温、特に200℃超でも維持される。
【0011】
さらに、潤滑剤は、シリコーンペースト、シリコーングリース及び/又はシリコーン油を、有利なことには、300℃超の温度、すなわち、例えばオーブンの熱分解操作で灰化しないポリシロキサン化合物として含有できることが好ましい。これらの実施形態の間のコンシステンシーは、混合することにより変動させることができる。
【0012】
請求項8〜9によると、潤滑剤混合物は、特に300℃未満での適用において潤滑作用をサポートするために、硫化モリブデン及びポリテトラフルオロエチレンを含有することができる。
【0013】
バレル研磨による潤滑剤の適用後の後処理により、金属の基板に対する潤滑剤及び摺動剤のより良好な分布及び付着が可能となる。
【0014】
有利な実施形態において、潤滑剤は、600℃超の耐温度性を有し、それにより、調理オーブン及び例えば熱分解によるその洗浄の分野における適用が可能となる。
【0015】
潤滑剤がチキソトロピーを示し、そのようなペースト中で、機械的作用下でその粘度が低下し、元来の粘度が長時間の放置後にのみ再び戻るならば、さらに有利である。このように、ペーストは、引出しスライドの表面全体に圧力を加えながら比較的容易に広げることができる。これは、例えばBNCペーストの場合である。
【0016】
固体を添加していない潤滑剤の粘度は、有利なことには、毎秒50〜1500mmの間、好ましくは毎秒100〜1000mmの範囲内である。これにより、走行路の端で潤滑剤を流出させることなく低粘性及び中粘性の化合物を適用することが可能となる。
【0017】
細菌又は真菌による潤滑剤の汚染が防止される程度に潤滑剤が疎水性であるならば、さらに有利である。
【0018】
25℃で20〜22mN/m、好ましくは20.9〜21.2mN/mの顕著な表面活性と関連する表面張力の低さにより、潤滑剤の粘度が高いにもかかわらず、適用の間に大きく平坦な基板を完全に浸潤することが可能となる。
【0019】
潤滑剤は、担体物質に応じて、熱分解の間に主に水及び二酸化炭素中で分解する。使用者による使用の間の引出しスライドの作動により、潤滑剤混合物中の窒化ホウ素及びグラファイト分は、担体材料に支援されながら引出しスライドの走行路に均一に分布する。熱分解の間の担体物質の分解後、少なくとも窒化ホウ素は引出しスライドの走行路に残留し、それにより引出しスライドの円滑な操作が可能となり、したがって引出しスライドを潤滑し続ける。熱分解の前の機械的負荷により、該混合物中の窒化ホウ素及びグラファイト分は引出しスライドの走行路に入り込む。
【0020】
本発明による潤滑剤は、その約−50℃〜約600℃の適用範囲により、オーブン又は冷蔵庫などの家庭用電気製品の器具の潤滑に特に適している。潤滑剤の適用は、他の分野、特に食料品への適性が必要とされる分野においても検討することができる。引出しスライドの他に、特に家庭用電気製品における蝶番、折り畳み機構又は他の可動部品を潤滑することも可能である。
【0021】
その食料品への適性に関して担体物質に課される全ての要件を満たすために、FDAガイドライン21CFR178.3570(米国食品医薬品局)を満たす潤滑剤を使用することが好ましい。
【0022】
さらに、潤滑剤は、NSF(米国衛生基金)によりH1カテゴリーに登録されるべきである。本明細書においてISO21469も参照する。
【0023】
米国において、US−DA(米国農務省30)によるUS−DA−H1に従った承認も必要とされ得る。指導規定がガイドライン21CFR178.3570であるべきことに留意しなければならない。
【0024】
利用する潤滑剤は、ドイツ版のDIN EN ISO21469:2006に従った衛生要求も満たすことが好ましい。
【0025】
本発明は、図面に示す実施形態を参照しながらより詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は格納した状態の引出しスライドの透視図である。
【図2】図2は引き出した状態の図1の引出しスライドの透視図である。
【図3】図3は図1の引出しスライドの分解図である。
【図4】図4は図1の引出しスライドの断面図である。
【図5】図5は図1の引出しスライドの断面図である。
【図6】図6は本発明により引き起こされる引出しスライドに対する作用を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
引出しスライド1は、ガイドレール2と、該ガイドレールに対して移動可能な走行レール3とを備える。ガイドレール2及び走行レール3は、曲げ鋼板から作られている。
【0028】
ガイドレール2は、オーブンの側壁に固定することができ、食品支持台は、それぞれの方法で走行レール3に配置することができる。走行レール3は、転動要素4を介してガイドレール2に変位可能に保持される。この目的のために、ガイドレール2は、転動要素保持器5に保持された、球状の転動要素4のための複数の走行路6を備えている。
【0029】
潤滑剤7は、走行レール3を確実に円滑にガイドするために、走行路6の一部分に適用する。潤滑剤7を適用した部分を転動要素4が転動すると、潤滑剤7は、ガイドレール2の走行路6全体にわたって広がり、走行レール3に設けられた走行路8に広がる。
【0030】
図示の実施形態は、走行レール3及びガイドレール2を有する引出しスライドについて記載している。完全に引き出し可能な引出しスライドとして引出しスライドを設けること、及びガイドレール2と走行レール3の間の中間レールを設けることも明らかに可能である。
【0031】
窒化ホウ素及び/又はグラファイトを有する潤滑剤の適用は、以下の方法で実施することができる。
・窒化ホウ素摺動ラッカーによる走行路のコーティング
・摺動ペースト又は懸濁液としての窒化ホウ素の適用
・バレル研磨による粉末の形態の窒化ホウ素の適用
・窒化ホウ素及び高温グリースの混合(窒化ホウ素は熱分解後に固体潤滑剤として走行路に残留する)
・窒化ホウ素と硫化モリブデン、グラファイト及びPTFEとの混合が可能である
・窒化ホウ素とポリシロキサンとの混合
・グラファイト、ポリシロキサン及び水の混合
・グラファイトとポリシロキサンとの混合
・グラファイト、窒化ホウ素及びポリシロキサンの混合
【0032】
潤滑剤及び摺動剤は、例えば窒化ホウ素及びグラファイトであり、その六方晶系構造により、摩擦によって表面に非常に容易に広がると見込まれ、したがって摩擦を防止すると見込まれる。
【0033】
10%BN/90%C〜80%BN/20%Cの質量比の窒化ホウ素BN及びグラファイトCから作られた粉末の混合により、様々なグレースケールの粉末が生じる。BNC混合物は、家庭用電気製品の分野において吸湿性を有する乾燥潤滑剤としての使用を可能にする摩擦学的並びに他の物理的及び化学的性質を有する。
【0034】
該粉末は、熱分解操作(約600℃のオーブン中での自己洗浄プロセス)において発生し得る高温に付された後、さらには冷蔵庫中の凍結温度で十分な摺動性を有する。混合物質に対する熱応力は、様々な作用を有する。例えば、オーブン中での関連温度であれば、摺動摩擦は両方の物質によるものと仮定される。最大で100℃の蒸気含有範囲、さらには空気の湿度が高いと、主な潤滑作用は、湿気の存在下でその潤滑作用を最も発揮するグラファイトに起因する。潤滑作用は、凍結温度範囲及び400℃の温度で主にBNに起因する。
【0035】
BNC混合物は、様々な方法によりさらに処理することもできる。可能な適用法は、場合によってキャリヤーガスを用いて表面に粉末として吹き付けること、湿潤担体を用いた噴霧、ブラシ及び湿潤担体を用いたコーティング、転動技法を介した混合又は湿潤担体中での浸漬である。該混合物がペースト状のコンシステンシーを有する場合でさえ、ノズルによる噴霧法も検討することができる。
【0036】
BNC粉末を水、アルコール又は食品グレードの油又はグリースなどの湿潤担体と混合するならば、湿潤担体に応じて、懸濁液(不均一な固体/流体混合物)、分散液(均一な固体/流体混合物)又はエマルジョン(不均一な流体/流体混合物)が得られる。その後の混合物は、固体/流体又は流体/流体又は気体/流体物質からなることができ、次いで、上述の方法によりさらに処理される。
【0037】
窒化ホウ素並びに炭素の両方は、その結晶性構造の六方晶系、さらには立方晶系の変種を有し、炭素の六方晶系の変種はグラファイトとして知られており、立方晶系の変種はダイヤモンドとして知られている。グラファイトと同様、六方晶系窒化ホウ素は、層構造を有し、積み重なった層は互いに対して比較的容易に変位可能であり、したがって摺動及び潤滑作用を引き起こす。グラファイトと窒化ホウ素の間のこれらの相乗効果により、上述した比での混合が可能となる。
【0038】
適用するBNC−Si潤滑剤の性能は、スライド及び蝶番での使用に対する物理的及び摩擦化学的作用に基づく。該性能は、特に有利なことには、−50℃〜+220℃の範囲で発生する。一定の高い機械的負荷下における上述した温度範囲内で実質的に一定の粘度が得られる。BNC−Si潤滑剤の粘度は、毎秒100〜1000mmの間の範囲内であり、DIN51562に従って25℃で測定され、BNC−Si潤滑剤を低〜中粘性物質のカテゴリーに分類する。疎水性が高いため、潤滑剤は腐食に対する保護を形成し、長時間にわたっても該温度範囲で流出せず、油も排出しない。粘度データは、固体を添加していない潤滑剤に関する。
【0039】
以下の性質は、BNC−Siの耐温度性と関連して述べる必要がある。
・粘度温度係数は、0.5と0.7の間、好ましくは0.6と0.62の間である。
・蒸発熱は、最大で200℃で150と300J/gの間、好ましくは220と240J/gの間である。
・0.5mbarでの沸点は、100と300℃の間、好ましくは150と230℃の間である。
・DIN51583に従った流動点は、−50と10℃の間、好ましくは−30と−10℃の間である。
・DIN51376に従った引火点は、230と370℃の間、好ましくは275と321℃の間である。
・DIN51794に従った発火点は、400℃超、好ましくは420℃超である。
・AST−D−445に従った滴点は、−80℃と−30℃の間、好ましくは−65℃と−50℃の間である。
【0040】
BNC−Si潤滑剤の使用によりきしみなどのさらなる騒々しいノイズは発生しない。この場合、高圧吸収能が関係する。したがって、BNCシリコーン潤滑剤を適用した引出しスライドは、例えば食品支持台により高い質量負荷をかけられても、常に一貫して良好な摺動性を示す。
【0041】
BNCペーストの熱分解処理後に、該スライドの機能性を確保する潤滑膜が残る。
【0042】
BNC−Si潤滑剤の適用は、シリコーンペースト、シリコーングリース及びシリコーン油により実施することができる。25℃での20〜22mN/m、好ましくは20.9〜21.2mN/mの顕著な表面活性に関連する表面張力の低さにより、適用後に大きな表面の基板を完全に浸潤することが可能となる。BNC−Si潤滑剤の粘度を変動させるために、さらなる溶媒を潤滑剤に添加することができる。
【0043】
BNC−Si潤滑剤層は撥水性が高く、植物油、鉱油、ガス、希酸及び灰汁、並びに大部分の水溶液に対して化学的に不活性である。細菌又は真菌による潤滑剤の汚染は、その疎水性が高いため防止される。さらに、BNC−Si潤滑剤は耐放射線性であり、耐酸化性であり、毒性ではなく、不燃性であり、生理学的に不活性であり無臭である。
【0044】
潤滑剤の色は、BNC比により設定することができる。
【0045】
BNC−Si潤滑剤の全ての成分はUSDA及びFDA規制に対応し、したがって食品分野での使用に適している。
【0046】
さらに、食料品及び消費財に関するドイツの法律(German Act on Foodstuffs and Consumer Goods)(1974年8月15日の§5、第1節、第1項、Federal Law Gazette 1945)に従って、20℃で≧100mm/sの粘度を有するシリコーン担体及びフェニルメチルシリコーン油の食品分野における使用に異論はない。
【実施例】
【0047】
図6は、図表の形態で測定値を示し、電気めっきアルミニウム表面に潤滑剤として適用したBNC−Si潤滑剤の性質を記述することができる。
【0048】
結果を図表に記入してある試験走行の間、BNC−Si潤滑剤を適用した引出しスライドを引出しスライドの頻繁な作動により以下の性質について試験した。
a)引出しスライドの引き出し時に加えられたN単位の力(Fa)
b)引出しスライドの押し込み時に加えられたN単位の力(Fe)
c)訓練された試験官により順序尺度で評価された走行特性
d)訓練された試験官により順序尺度で評価されたノイズ
【0049】
試験の間、引出しスライドの引き出し及び押し込みを意味する15000回の往復ストロークにより、引出しスライドを摩耗及び断裂について試験した。測定の開始時に、引出しスライドに500℃の熱分解サイクルを複数回施し、750回の往復ストローク毎に繰り返した。これは、熱分解操作を有するオーブン中で引出しスライドが曝される条件をシミュレートするために実施した。
【0050】
この試験の間、引出しスライドに11kgの重量を負荷し、合計で100回の熱分解シーケンスを施した。
【0051】
引出しスライドの引き出し時に加えられた力は、3.5と6.5Nの間の範囲内であり、5.0Nの平均値で比較的一定の変動が発生し、平均して、加えられた力の増減は観察されなかった。
【0052】
引出しスライドを押し込むために加える必要がある力に関連して同様の観察をすることができる。2.3Nの平均値周辺での同程度の高い変動が1.5〜4.0Nの範囲で発生する。
【0053】
測定結果は、加えられた力が小さいと走行が静かな一定の走行特性を示す(分類1〜7、1は円滑に走行する最高の走行特性に該当し、7は引っかかって震動しながら走行する最低の走行特性に該当する)。
【0054】
測定結果は、静かにがたがたしながら走行する一定の可動性をさらに示す(分類1〜7、1は穏やかなノイズ発生に該当し、7は騒々しくとどろくノイズ発生に該当する)。
以下の図表は材料試験から得た。
【0055】
【表1】

【0056】
表で述べた組成は、パーセント単位の質量分率に関する。Siは、シリコーン油又はシリコーンペーストのパーセント単位の質量分率を表す。NOは、天然油のパーセント単位の質量分率を表す。PFPEは、ペルフルオロエチルオキシド油のパーセント単位の質量分率を表す。
【0057】
試験番号2及び6の組成が特に好ましい。この配合物は、試験番号6によると、100回の洗浄サイクル後でさえ、走行性質又は走行特性において変化を示さない。
【0058】
この例示の組成において、適用したシリコーン油は、実質的にポリジメチルシロキサンからなる。さらに、利用する六方晶系窒化ホウ素の粒径は約5μmであり、利用するグラファイトの粒径も約5μmである。約5μmの粒径は特に良好な潤滑性を示す。0.1μm〜8μmの範囲の粒径を試験した。
【0059】
摩擦要素の粒径及び粗度により、窒化ホウ素及びグラファイト粒子は転動して表面に入り込む。転動して入り込んだBNC粒子は、100回の往復ストローク後で、食器洗浄器内の引出しスライドからもはや除去することはできない。強力な洗浄プログラムにおける25回の洗浄の適用後、引出しスライドは依然として完全に機能している。したがって、食器洗浄器耐性は実現される。食器洗浄器耐性の試験において、家庭用及び産業用食器洗浄器を使用した。
【0060】
窒化ホウ素並びにグラファイトの両方の粒径は、一定の変動範囲内にある。さらに、粒径は、混合物の組成に応じて0.1〜500μmの間で変動することができる。
【0061】
合成グラファイトは、その構造及び粒子寸法分布においてより一様であるため、その使用が有利であると立証されている。約5μmの粒径を有する画分を使用することが好ましかった。
【0062】
高温域における潤滑剤の複数の可能な組成(質量分率w単位で)を以下に述べる。
【0063】
第1の混合物:
グラファイト 20〜50%、好ましくは30〜40%
シリコーン油 0.5〜5%、好ましくは1〜3%
水 45〜79.5%、好ましくは57〜69%
【0064】
第2の混合物:
窒化ホウ素 10〜40%、好ましくは20〜30%
グラファイト 10〜40%、好ましくは20〜30%
シリコーン油 20〜80%、好ましくは40〜60%
(この場合、実現される粘度は1000mm/s)
【0065】
第3の混合物:
窒化ホウ素 10〜40%、好ましくは20〜30%
グラファイト 10〜40%、好ましくは20〜30%
ペルフルオロエチルオキシド油 20〜80%、好ましくは40〜60%
【0066】
第4の混合物:
窒化ホウ素 10〜40%、好ましくは20〜30%
グラファイト 10〜40%、好ましくは20〜30%
オリーブ油 20〜80%、好ましくは40〜60%
(この場合、実現される粘度は100mm/s)
【0067】
第5の混合物:
窒化ホウ素 30〜70%、好ましくは40〜60%
グラファイト 30〜70%、好ましくは40〜60%
オリーブ油 1〜10%、好ましくは1〜5%
【0068】
第6の混合物:
窒化ホウ素 15〜35%、好ましくは20〜30%
グラファイト 15〜35%、好ましくは20〜30%
ペルフルオロエチルオキシド油 30〜70%、好ましくは40〜60%
【0069】
第7の混合物:
グラファイト 30〜70%、好ましくは40〜60%
シリコーン油 30〜70%、好ましくは40〜60%
【0070】
第8の混合物:
窒化ホウ素 30〜70%、好ましくは40〜60%
ペルフルオロエチルオキシド油 30〜70%、好ましくは40〜60%
【0071】
第9の混合物:
窒化ホウ素 30〜70%、好ましくは40〜60%
シリコーン油 30〜70%、好ましくは40〜60%
【0072】
高い割合の不飽和脂肪酸を有する他の油及び他の天然油をオリーブ油の代替として使用することができる。
【0073】
流体潤滑剤の粘度は、本発明の理念から逸脱することなく変動させることができる。
【0074】
ガイドライン21CFR178.3570に従って米国食品医薬品局のFDA純度要求を満たすさらなる潤滑グリースも使用することができる。さらにISO21469を参照すると、NSF(米国衛生基金(National Sanitary Foundation))によりH1カテゴリーに登録された潤滑グリースに同じことが当てはまる。
【0075】
したがって、潤滑剤は、食品グレードの潤滑剤としてのDIN21469:2006の試験基準を満たす。
【符号の説明】
【0076】
1 引出しスライド
2 ガイドレール
3 走行レール
4 転動要素
5 転動要素保持器
6 走行路
7 潤滑剤
8 走行路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して移動することができ、転動要素(4)によって互いに摺動する少なくとも2つのレール(2、3)を備える、特にオーブン用の引出しスライド(1)において、転動要素(4)の走行路(6、8)がレール(2、3)の少なくとも一部の領域で窒化ホウ素及び/又はポリシロキサンを含有する潤滑剤(7)によって潤滑されることを特徴とする引出しスライド。
【請求項2】
潤滑剤(7)が摺動ペースト、分散液又は懸濁液として適用されることを特徴とする、請求項1に記載の引出しスライド。
【請求項3】
潤滑剤(7)が粉末状であることを特徴とする、請求項1に記載の引出しスライド。
【請求項4】
潤滑剤(7)が窒化ホウ素及びグラファイトの混合物を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項5】
窒化ホウ素が5%と30%の間の質量分率w(窒化ホウ素)、好ましくは10%と20%の間の質量分率w(窒化ホウ素)で含有されることを特徴とする、請求項4に記載の引出しスライド。
【請求項6】
潤滑剤(7)が高温グリースを含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項7】
潤滑剤(7)が食品グレードのグリースを含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項8】
潤滑剤(7)がシリコーン化合物としてシリコーンペースト、シリコーングリース及び/又はシリコーン油を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項9】
潤滑剤(7)が硫化モリブデンを含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項10】
潤滑剤(7)がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項11】
潤滑剤(7)が振動研磨により組み込まれることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項12】
潤滑剤(7)が600℃超の耐温度性を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項13】
潤滑剤(7)がチキソトロピーであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項14】
潤滑剤(7)が50〜1500mm/s、好ましくは100〜1000mm/sの粘度を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項15】
潤滑剤(7)が25℃で20〜22mN/m、好ましくは20.9〜21.2mN/mの表面張力を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の引出しスライド。
【請求項16】
特に家庭用電気製品の器具用の潤滑剤において、潤滑剤(7)が窒化ホウ素及び/又はポリシロキサンを含有し、−50℃〜600℃超の耐温度性を有することを特徴とする、潤滑剤。
【請求項17】
潤滑剤(7)が粉末状であることを特徴とする、請求項16に記載の潤滑剤。
【請求項18】
潤滑剤(7)が摺動ペースト、分散液又は懸濁液として適用されることを特徴とする、請求項16に記載の潤滑剤。
【請求項19】
潤滑剤(7)が窒化ホウ素及びグラファイトの混合物を含有することを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項20】
窒化ホウ素が5%と30%の間の質量分率w(窒化ホウ素)、好ましくは10%と20%の間の質量分率w(窒化ホウ素)で含有されることを特徴とする、請求項16〜19のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項21】
潤滑剤(7)がシリコーン化合物としてシリコーンペースト、シリコーングリース及び/又はシリコーン油を含有することを特徴とする、請求項16〜20のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項22】
潤滑剤(7)がポリジメチルシロキサンを含有することを特徴とする、請求項16〜21のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項23】
潤滑剤が0.1μm〜8μmの寸法範囲の窒化ホウ素及び/又はグラファイト粒子を含むことを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項24】
潤滑剤が実質的に窒化ホウ素、グラファイト及びシリコーン油及び/又はシリコーンペースト及び/又はシリコーングリースの混合物であることを特徴とする、請求項16〜23のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項25】
窒化ホウ素が20%と30%の間の質量分率w(窒化ホウ素)、好ましくは25%の質量分率w(窒化ホウ素)で含有され、グラファイトが20%と30%の間の質量分率w(グラファイト)、好ましくは25%の質量分率w(グラファイト)で含有され、シリコーン油が45%と55%の間の質量分率w(シリコーン油)、好ましくは50%の質量分率w(シリコーン油)で含有されることを特徴とする、請求項24に記載の潤滑剤。
【請求項26】
窒化ホウ素及び/又はグラファイト粒子が摩擦要素の表面に入り込んだ後に家庭用及び産業用食器洗浄器に対する耐性を有することを特徴とする、請求項23〜25のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項27】
窒化ホウ素及び/又はポリシロキサンを含有し、−50℃〜600℃超の耐温度性を有する潤滑剤(7)で潤滑されることを特徴とする特に家庭用電気製品用の器具。
【請求項28】
請求項16〜26のいずれか一項に記載の潤滑剤(7)で潤滑されることを特徴とする請求項27に記載の器具。
【請求項29】
例えば家庭用電気製品の扉用の蝶番であることを特徴とする請求項27又は28に記載の器具。
【請求項30】
例えば家庭用電気製品の蝶番用の折り畳み機構であることを特徴とする請求項27又は28に記載の器具。
【請求項31】
食品調理用電気製品の食品支持台用又は食品貯蔵装置の引出し用の引出しスライドであることを特徴とする、請求項27又は28に記載の器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−506527(P2012−506527A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532640(P2011−532640)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063933
【国際公開番号】WO2010/046456
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(504467554)ポール ヘティッヒ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー. カーゲー (62)
【Fターム(参考)】