説明

家畜の発育改善剤

【課題】嗜好性が良く、かつ発育改善効果の優れた家畜の発育改善剤を提供することを目的とする。
【解決手段】蟻酸、乳酸およびプロピオン酸を含有し、かつ当該蟻酸1に対し、重量比で乳酸が3.95〜100、プロピオン酸が0.1〜5配合されていることを特徴とする家畜の発育改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜に給与する嗜好性の良好な発育改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機酸を添加した飼料によって、家畜を飼育して生産性を向上させることは知られている。一方、有機酸のなかでも特に蟻酸を用いた場合は嗜好性が悪いことから、極めて少量の配合量の場合には若干のプラス効果が認められるが、配合量が増大するにつれて逆に体重増加が悪くなることも知られている。
このような蟻酸の嗜好性を改善する方法として蟻酸カルシウムまたは蟻酸マグネシウムからなる、若い成長期の豚および鶏における生産性増進剤が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、この生産性増進剤においても未だ満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開昭63−52846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明者等は、従来から嗜好性の悪い蟻酸を用いて嗜好性が良好で、かつ優れた発育効果を有する発育改善剤について種々研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、蟻酸および乳酸を含有する家畜の発育改善剤に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の発育改善剤は、極めて嗜好性が良く、かつ発育改善効果にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の発育改善剤の有効成分である蟻酸と乳酸との配合割合は、蟻酸1に対して乳酸を0.1〜100(重量比)、特に0.3〜10(重量比)の範囲配合することが好ましい。また本発明の発育改善剤は、蟻酸および乳酸にプロピオン酸を併用することによってさらに嗜好性が向上する。このプロピオン酸の配合割合は特に制限されるものではないが、好ましくは蟻酸1に対し0.1〜5(重量比)の範囲が好適である。
さらに本発明の発育改善剤は、所望によりクエン酸、フマル酸、酪酸、リンゴ酸、酢酸等の他の有機酸を配合することもできる。
本発明の発育改善剤を調製する場合、ケイ酸等の賦形剤を適宜用いることもできる。
【0007】
本発明の発育改善剤を家畜に給与する方法としては溶液として給与する方法、粉末状の発育改善剤を飼料と混合して給与する方法等が挙げられるが、特に飲水による不断給与が好ましい。給与する家畜としては、豚、牛、鶏等が挙げられる。
【0008】
本発明の発育改善剤の給与量としては、蟻酸および乳酸の合計量として0.05〜2重量%、特に0.1〜1重量%の範囲が好ましい。
【実施例】
【0009】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を掲げるが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0010】
実施例1
蟻酸75.0重量部および乳酸25.0重量部を均一に混合して発育改善剤を調製した。
【0011】
実施例2
蟻酸25.0重量部および乳酸75.0重量部を均一に混合して発育改善剤を調製した。
【0012】
実施例3
蟻酸16.7重量部、乳酸66.6重量部およびプロピオン酸16.7重量部を均一に混合して発育改善剤を調製した。
【0013】
次に本発明の発育改善剤の嗜好性について試験を行った。
【0014】
試験例1
豚(LW種、体重7kg)8頭を1区として設け、これらの豚に基礎飼料として人工乳前期飼料(「ハーブソフト」日清飼料株式会社製商品名)と実施例1〜3の発育改善剤を用いて有機酸の合計量としての濃度が0.2%になるように調整した飲水を7日間不断給与してその飲水量を調べた。なお比較のために飲水として水道水あるいは蟻酸水溶液(濃度0.2%)のみの場合を対照例として示す。その試験結果を示せば表1のとおりである。
【0015】
【表1】

【0016】
試験例2
鶏(レイヤー)10羽を1区として設け、これらの鶏に基礎飼料として表2に示す無薬レイヤー用飼料を給与して孵化直後から4週間飼育した。その間試験開始から3週間後にサルモネラ エンテリティディス(SE)(Salmonella Enteritidis)を1羽あたり107CFU経口投与した。またこの試験期間中実施例3で調製した発育改善剤を飲水に溶かして0.2%濃度に調整し、この飲水を不断給与した。
なお比較のために飲水のみを与え、他は前記と同様に試験した結果を対照例として示す。
4週間飼育後に解剖・採材し、肝臓中および盲腸内のSE検出率および盲腸内容物中のSE菌数を調べた。
次にその試験結果を示せば表3のとおりである。
【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
実施例4
蟻酸37.5重量部、乳酸12.5重量部およびケイ酸50.0重量部を均一に混合して粉末状の発育改善剤を調製した。この粉末状の発育改善剤を基礎飼料とする無薬人工乳前期飼料(「無薬前期」日清飼料株式会社製商品名)に0.2%および0.4%濃度(蟻酸および乳酸の合計量としての濃度)になるように添加した。
【0020】
実施例5
蟻酸37.5重量部および乳酸12.5重量部を水50.0重量部に溶解して液状の発育改善剤を調製した。この液状の発育改善剤を飲水に溶かして0.2%および0.4%濃度(蟻酸および乳酸の合計量としての濃度)の飲水に調整した。
【0021】
実施例6
蟻酸8.4重量部、乳酸33.2重量部およびプロピオン酸8.4重量部を水50.0重量部に溶解して液状の発育改善剤を調製した。この液状の発育改善剤を水に加えて0.2%および0.4%濃度(蟻酸、乳酸およびプロピオン酸の合計量としての濃度)の飲水を調製した。
【0022】
次に実施例4〜6で調製した発育改善剤を用いて豚の飼育試験を行った。
【0023】
試験例3
豚(マイティーLWD)8頭を1区として設け、これらの豚に基礎飼料として無薬人工乳前期飼料(「無薬前期」日清飼料株式会社製商品名)と本発明の発育改善剤を有機酸の合計量としての濃度が0.2%および0.4%になるように基礎飼料および飲水を調整して、それぞれ不断給与を行い、21日間飼育した。なお比較のために飲水として水道水を用いた場合を対照例として示す。その試験結果を示せば表4のとおりである。
【0024】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蟻酸、乳酸およびプロピオン酸を含有し、かつ当該蟻酸1に対し、重量比で乳酸が3.95〜100、プロピオン酸が0.1〜5配合されていることを特徴とする家畜の発育改善剤。
【請求項2】
請求項1に記載の改善剤に水を加え、蟻酸及び乳酸の合計含有量を0.05〜2重量%とした飲水を給与することを特徴とする家畜の飼育方法。

【公開番号】特開2008−29359(P2008−29359A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273347(P2007−273347)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【分割の表示】特願2002−376341(P2002−376341)の分割
【原出願日】平成14年12月26日(2002.12.26)
【出願人】(399106505)日清丸紅飼料株式会社 (25)
【Fターム(参考)】