説明

家禽類の飼育方法

【課題】コストを低く抑えつつ、容易に死亡率を改善することのできる家禽類の飼育方法を提供することを目的とする。
【解決手段】家禽類の飼育方法は、温泉水を与えて家禽類を飼育することを特徴とするものである。また、前記構成において、温泉水が重曹泉水である構成にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽類を飼育する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏などの家禽類は、脂肪肝、腹水症、ウィルスの感染等の各種病気、熱死又は囲いの中の家禽類の密集によるストレス等様々な原因によって、飼育期間中に全飼育数の約1割程度が死亡している。特に、死亡する家禽のうち約70%は生後1ヶ月乃至2ヶ月までの雛鳥であり、残りの約30%は3ヶ月乃至6ヶ月の家禽である。生後6ヶ月を過ぎると殆ど死亡することがないというのが一般的である。
【0003】
このような家禽類の死亡率の改善及び肉質の改善を目的として、各種の有益な物質を添加剤として飼料に配合する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素及びロイペプチン等のプロテアーゼ阻害剤を添加した飼料が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、飼料に配合する改善剤として、焼成炭化物粉末と、抗酸化物質(ポリフェノール化合物)と、木酢成分と、海藻粉末と、タンニン成分とからなり、前記焼成炭化物は熱履歴温度が摂氏800度以上の木炭であり、前記木酢成分は精製木酢液を前記木炭又はゼオライトその他の吸着材に吸着保持させて粉末化したものを使用する技術が開示されている。
【0005】
与える飼料を改良するのではなく、飲用水の改良に関し、下記特許文献3には、豚等の家畜に飲用水として与える水をオゾン発生機により発生するオゾンを水と共にオゾン溶解槽に導入してオゾン水を製造し、該オゾン水を紫外線処理した飲用水を用い、これにより、家畜の腸内の病原性原虫等の活動が抑えられるために下痢が減った結果、子供の家畜の死亡率を減少させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−283034号公報
【特許文献2】特開2005−341828号公報
【特許文献3】特開2002−306086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載のように有効成分として新たに有益な物質を添加配合する方法では、高価な物質を使用することによりコストが増大する。また、死亡率の飛躍的な改善がみられていない。
【0007】
また、上記特許文献3に記載の飼育方法では、オゾンそのものに非常に毒性があり、作業環境におけるオゾンガス濃度は、日本産業衛生学会の作業環境基準で0.1ppm以下にするよう規制されている。よって、作業者の安全性を確保することが困難であり、また、オゾン発生装置及び、生成したオゾン水を貯留する貯留槽が必要となり、設備コスト及び運転コストが増大するという問題が生じている。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、コストを低く抑えつつ、容易に死亡率を改善することのできる家禽類の飼育方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る家禽類の飼育方法は、温泉水を与えて家禽類を飼育することを特徴とするものである。
【0010】
また、前記構成において、温泉水が重曹泉水である構成にしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の家禽類の飼育方法によれば、温泉水を与えて家禽類を飼育することにより、各種の薬理効果を有し家禽類の育成に好ましく家禽類の死亡率を改善することができる。
【0012】
また、温泉水が重曹泉水である場合には、重曹泉水はナトリウムイオン及び炭酸水素イオンを多く含むので、胃液分泌又は胃腸運動促進などの薬理作用を有し、家禽類の育成により好ましく、家禽類の死亡率をより低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の実施形態を説明する。本実施形態に係る家禽類の飼育方法に用いられる温泉水の種類は特に制限されず、例えば、単純泉水 、食塩泉水、重曹泉水、石膏泉水、単純炭酸泉水、硫酸塩泉水、鉄泉水、硫黄泉水、重炭酸土類泉水、明礬泉水、酸性泉水、及び放射能泉水等が挙げられる。
【0014】
これら、各種温泉水の中でも、特に、重曹泉なる泉質を有する温泉水を含有することが好ましい。これにより、陽イオン成分として、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はマグネシウムイオン、陰イオンとして、塩素イオン、又は炭酸水素イオンなどの成分による、胃液分泌、又は胃腸運動促進などの薬理作用を有する。よって、家禽類の育成により好ましく、家禽類の死亡率をより低減することが可能となる。
【0015】
温泉水は飲用可能な成分よりなるものであれば、そのまま家禽類に与えることができる。従って、従来のようなオゾン発生装置等の特別な装置や貯留槽などが不要であり、コストを低く抑えることができる。また、飲用可能な温泉水を用いるので安全性が確保されており、危険な或いは複雑な工程を経て飲用水を生成しなければならないといったことがなく、非常に作業性がよい。
【0016】
温泉水は、市販のミクロフィルター等の除菌用フィルターを用い除菌濾過した上で与えてもよく、また、例えば85℃で30分間といった加熱殺菌等を行った後に与えてもよい。これらの処理により、温泉水に含まれる細菌を除去することが可能である。これらは、化学的に何ら調製することがないので、単純な作業により容易に安全性を確保することができる。
【0017】
家禽類への温泉水の与え方は、特に制限されず、飲用水として連続的に又は所定時間毎に与えてもよく、家禽に与える飼料に混合し、粉状又は粒状の飼料に温泉水を含ませた状態で与えてもよい。
【0018】
家禽類としては、特に限定されず、例えば、各地で飼育される地鶏や烏骨鶏等の鶏、七面鳥、アヒル、ウズラ、カモ、キジ、ダチョウ、ガチョウ等が挙げられる。また、これらの家禽類は採卵鶏、食肉用のいずれであってもよい。
【0019】
このように、温泉水を与えて家禽類を飼育することにより、死亡率の改善及び肉質の改善をすることができる。よって、有益であるが高価な物質を添加した配合飼料を与えて家禽類を飼育するといったことがないのでコストを低く抑えることができる。また、薬剤を添加しないので薬剤耐性菌の生起の恐れもなく、環境に対しても、家禽中に薬剤が残留する恐れもない極めて安全な方法である。
【0020】
更に、オゾン水や他の特殊な成分を有する水を生成する装置を設置して、家禽類に与えるための特別な水を製造するといったことが不要であり、コストを抑えることが可能となる。
【実施例1】
【0021】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明する。家禽類として秋田、名古屋、徳島及び和歌山で産まれた地鶏60羽乃至300羽を用い、平成16年より平成18年までの3年間に毎年飼育し、飼育数及び死亡数を計測した。
【0022】
その際、温泉水は自由摂取として供給し、餌は1日1回30羽に対して飼料10kg程度を与えた。飼料は市販の配合飼料75体積%、ぬか10体積%、麦5体積%、おから5体積%、こごめ3体積%及び魚のあら(すり潰したもの)2体積%からなるものを用いた。尚、市販の配合飼料とは日清丸紅飼料株式会社製、成鶏用配合飼料、20kgであり、配合割合は穀類59体積%、植物性油かす類28体積%、動物質飼料1体積%、そうこう類1体積%、その他11体積%からなる。飼育期間は8〜10ヶ月とした。
【0023】
温施水は、重曹泉である観音湯とおしどり湯の混合湯(所在地:和歌山県西牟婁郡上富田町朝来大内谷1822番地)を用いた。表1に本実施例で用いた温泉水1kg中に含まれる陽イオン成分を、表2に陰イオン成分を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【実施例2】
【0026】
家禽類として地鶏に替えて烏骨鶏30羽乃至120羽を用いた以外は、実施例1と同一条件で飼育を行った。
【0027】
(比較例1)
比較例1として、温泉水に替えて水道水を与え、平成14年から平成18年にかけ、30羽乃至40羽の家禽類を飼育した。他の飼育条件は実施例1と同様に行った。
【0028】
(比較例2)
比較例2として、温泉水に替えて水道水を与え、平成14年から平成18年にかけ、30羽乃至50羽を飼育した。他の飼育条件は実施例2と同様に行った。
【0029】
実施例1及び比較例1の結果を表3に示す。
【表3】

【0030】
表3より、比較例1において水道水を与えた場合には死亡率が7.1%乃至16.0%と約1割前後の地鶏が死亡したのに対し、実施例1において温泉水を与えた場合には地鶏が全く死亡しなかった。よって、温泉水を与えることにより地鶏の死亡率を著しく改善することができることが分かる。また、この実施例1に係る地鶏は、適度な歯ごたえがあり、柔らかい肉質を有し、比較例1にかかる水道水を与えた地鶏に比較して肉質も改善されていた。
【0031】
実施例2及び比較例2の結果を表4に示す。
【表4】

【0032】
表4より、比較例2にかかる水道水を与えた烏骨鶏では死亡率が6.7%乃至13.3%とやはり約1割前後の地鶏が死亡したのに対し、実施例2にかかる温泉水を与えた烏骨鶏は平成17年に1羽死亡したのみであり、これ以外にはまったく死亡しなかった。よって、温泉水を使用した場合の死亡率は0%乃至3.3%となった。これより、温泉水を与えることにより地鶏だけでなく烏骨鶏においても死亡率を著しく改善することができることが分かった。また、実施例2に係る烏骨鶏は、地鶏と同様に、適度な歯ごたえがあり、柔らかい肉質を有し、比較例2にかかる水道水を与えた烏骨鶏に比較して肉質も改善されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温泉水を与えて家禽類を飼育することを特徴とする家禽類の飼育方法。
【請求項2】
温泉水が重曹泉水であることを特徴とする請求項1に記載の家禽類の飼育方法。

【公開番号】特開2008−193900(P2008−193900A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29241(P2007−29241)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(302060801)株式会社清本組 (3)
【Fターム(参考)】