説明

容器に切込みを入れることができる器具

【課題】 解決しようとする問題点は、牛乳パックなどの容器に切込みを入れてから底部を切断するための従来の器具では、形状やサイズの異なる紙パックやペットボトルなどの容器の底部を切断するために切込みを入れるときに、安全、確実且つ容易に切込みを入れることができない点である。
【解決手段】 当て板部14と切込刃8を有し、当て板部14は容器の表面に当接可能な当接面33を有し、切込刃8はその切込刃8を容器表面に切り込ませるための刃先15を有し、刃先15は当て板部14の当接面33で構成される面に対し間隔を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳パックなどの容器に切込みを入れることができる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
量販店などで販売される牛乳やジュース類は、紙パックやペットボトルの容器に入れられている。そして、使用後の容器の再利用のために多くの量販店の店頭で使用後の牛乳パックの回収ボックスを設置しているが、その際牛乳パックを開いた状態にすることが要件とされることが多い。また、資源ゴミとして容器を廃棄する場合、そのまま廃棄したのでは嵩張るため切断して平面状にすることが好ましい。さらに、牛乳パックは切り開くことにより使い捨ての即席俎板として使用することもできる。
【0003】
ところで、牛乳パックなどの紙パックや飲料用ペットボトルなどの容器はその形状を維持するために、特に底部が堅固に形成されている。したがって、容器を平面状にするためには、最初に底部を切り離すと容易に行うことができる。底部を切り離せば、容易に胴部を切り開いて平面状にすることができるし、あるいは容易に胴部を押し潰して容器を平面状にすることもできる。
【0004】
鋏で容器の底部を切り離すときは、最初に底部付近の側面に切込みを入れ、その切込みに鋏の一方の切断刃を差し込めば容易に切断することができる。容器に切込みを入れてから切断する器具として、容器に切込みを入れるための爪部を取り付けた鋏が提案されている。この鋏は、爪部を鋏の側方から突出させ、鋏を手に持って爪部を容器に押し付けて切込みを入れた後、その切込みに鋏の刃を差し込んで容器を切断していく構成である。容器を形成している紙や樹脂は一定以上の強度を有しているので、爪部を容器の表面に垂直に宛がって少しの力を加えただけでは爪部はすぐに容器表面に差し込まれず、大きな力を加えることが必要である。そのときに、爪部は不安定な状態にあるから、大きな力を加えたときに爪部が鋏と一緒に斜めに傾いてしまうことがあり、迅速に切込みを入れることができないばかりか指先などを傷付ける虞がある。また、爪部で切込みを入れるときに、その爪部の位置決め手段がないので切込み箇所を一定させることができず、予定した場所から離れた位置に切込みを入れてしまう虞もある。
【0005】
容器の底部を切り離す他の器具として、高さの低い円筒形の容器の内面に切断ナイフを取り付けた牛乳パック解体器が提案されている。この切断ナイフは切込みを入れると共に切断作用もなす構成である。この使用方法は、解体器に牛乳パックを底部から嵌め込み、解体器を一回転させて牛乳パックを切断する構成である。牛乳パックを底部から解体器に嵌め込むときに、切断ナイフの先端が牛乳パックに触れてしまうとそこで引っ掛かって嵌め込むことができない。したがって、切断ナイフが牛乳パックの側面に対して垂直の状態にあるときに、切断ナイフの先端は牛乳パックの側面に届かない構成でなければならない。しかし、このような構成であると、解体器を一回転させても切断ナイフが届かない側面の部分は切断されないので、作業後にさらに牛乳パックの底部を切り離す手間が必要であるから、特に迅速に切り離す効果は得られない。そればかりか、所定の解体器に容器を嵌め込む構造であるから、使用できる紙パックのサイズは限られ、容器が円筒形であるときは適切に切断することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2543022号公報
【特許文献2】特開2004−290636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、従来の器具では、形状やサイズの異なる紙パックやペットボトルなどの容器の底部を切断するために切込みを入れるときに、安全、確実且つ容易に切込みを入れることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は、当て板部と切込刃を有し、当て板部は容器の表面に当接可能な当接面を有し、切込刃はその切込刃を容器表面に切り込ませるための刃先を有し、その刃先は当て板部の当接面で構成される面に対し間隔を有している構成である。
【0009】
請求項2は、当接面の少なくとも一部を容器の所定の表面に当接させた状態で、当接面が当接している前記所定の表面に対して角度を有する他の表面に切込みを入れるために、切込刃の刃先を前記他の表面に切り込ませるように切込刃を動かすことができる構成である。
【0010】
請求項3は、切込刃が当て板部に対して相対的に可動である構成である。
【0011】
請求項4は、一対の部材が支軸を中心に相対的に回転可能になるように前記支軸により結合され、各部材はそれぞれハンドルを有し、一方の部材に当て板部が設けられ、双方の部材のハンドルを開いた状態から閉じていくときに、切込刃が当て板部に対して相対的に動く構成である。
【0012】
請求項5は、当て板部と切込刃が共に一方の部材に設けられ、双方の部材のハンドルを開いた状態から閉じていくときに、切込刃が他方の部材に押圧されて一方の部材に対して相対的に動く構成である。
【0013】
請求項6は、それぞれハンドルを有する一対の部材が支軸を中心に相対的に回転可能になるように支軸により結合され、器具は当て板部と切込刃を有し、切込刃は当て板部に対して相対的に可動であり、当て板部は容器の表面に当接可能な当接面を有し、切込刃はその切込刃を容器表面に切り込ませるための刃先を有し、刃先は前記当て板部の当接面で構成される面に対し間隔を有しており、各部材のハンドルと反対方向に延びる延長部分が支軸よりも先方に延び、その延長部分は切断刃に形成され、器具が鋏に形成されている構成である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1は、当て板部が、容器の表面に当接可能な当接面を有しており、切込刃はその切込刃を容器表面に切り込ませるための刃先を有しており、その刃先は当て板部の当接面で構成される面に対し間隔を有している。したがって、刃先が当て板部の当接面に対し間隔を有しているので、刃先を当接面が当接する容器表面からその間隔だけ離れた位置に位置決めした後、切込みを入れることができるから、切り込み位置がずれる虞がない。
【0015】
請求項2は、当接面の少なくとも一部を容器の所定の表面に当接させた状態で、当接面が当接している前記所定の表面に対して角度を有する他の表面に切込みを入れるために、切込刃の刃先を前記他の表面に切り込ませるように切込刃を動かすことができる。したがって、容器に切込みを入れるときに、当て板部を容器表面に当接させながら切り込むことができるので、器具を容器に対して安定させることができる。これにより、切込刃が容器表面に対して傾いたりせず、安全且つ確実に切込みを入れることができる。
【0016】
請求項3は、切込刃が当て板部に対して相対的に可動である。したがって、切込みを入れるときに、当て板部を容器に対して固定させた状態で切込刃を動かして切り込むことができるから、さらに器具を容器に対して安定させることができる。
【0017】
請求項4は、それぞれハンドルを有する一対の部材が支軸を中心に相対的に回転可能になるように前記支軸により結合され、一方の部材に当て板部が設けられ、双方の部材のハンドルを開いた状態から閉じていくときに、切込刃は当て板部に対して相対的に動く。ハンドルの操作によって切込刃を動かして刃先を容器に切り込ませるので、刃先を容器に対して強く押し当てることができる。したがって、容易に切込みを入れることができる。
【0018】
請求項5は、当て板部と切込刃は共に一方の部材に設けられ、双方の部材のハンドルを開いた状態から閉じていくときに、切込刃は他方の部材に押圧されて一方の部材に対して相対的に動く。したがって、切り込みはハンドルを閉じながら行わるので、ハンドルを開きながら切り込みを行う構成あるいはハンドルを回転させながら切り込みを行う構成に比べて操作しやすい。さらに、ハンドルを持っている手も安定して操作しやすい。切込刃は一方の部材と別体に形成されているので、鋭利な刃とするために部材と異なる材料を用いることができる。例えば、部材をステンレス鋼としたときに、切込刃は焼き入れしたステンレス鋼として切れ味を良くすることができる。また、別体に形成するから製造しやすい。
【0019】
請求項6は、それぞれハンドルを有する一対の部材が支軸を中心に相対的に回転可能になるように支軸により結合され、器具は当て板部と切込刃を有し、切込刃は当て板部に対して相対的に可動であり、当て板部は容器の表面に当接可能な当接面を有し、切込刃はその切込刃を容器表面に切り込ませるための刃先を有し、刃先は前記当て板部の当接面で構成される面に対し間隔を有しており、各部材のハンドルと反対方向に延びる延長部分が支軸よりも先方に延び、その延長部分は切断刃に形成され、器具全体が鋏に形成されている。したがって、一つの器具としての鋏で容器に切り込みを入れることができると共に、その切り込みに切断刃を差し込んで容器を切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はハンドルを閉じた状態の本発明の斜視図
【図2】図2はハンドルを開いた状態の本発明の斜視図
【図3】図3はハンドルを閉じた状態の本発明の正面図
【図4】図4はハンドルを開いた状態の本発明の斜視図
【図5】図5はハンドルを閉じた状態の本発明の背面図
【図6】図6は牛乳パックの一部斜視図
【図7】図7は牛乳パックを切断する状態を示す図
【図8】図8は使用済みの牛乳パックを展開する前の図
【図9】図9は展開した牛乳パックの図
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。実施形態は、牛乳パックの底部を容易に切り離すことを目的の一つとした器具としての鋏である。鋏1は、一対の部材2,3が第一の支軸4を中心に相対的に回転可能になるように第一の支軸4により結合されている。
【0022】
一方の部材2は、ハンドル6と柄部5と切断刃7を有し、柄部5の後端に指環状に形成されたハンドル6が取り付けられている。また、柄部5の前端から切断刃7が一体に延びている。切断刃7は柄部5に対しほぼ垂直の方向に延びている。図1又は図3に示すように、柄部5の内面に切込刃8が第二の支軸9により取り付けられている。切込刃8は第二の支軸9を中心に柄部5に対して回転可能である。また、柄部5にはバネ取付け突起10が設けられている。このバネ取付け突起10と、切込刃8に設けられたバネ孔11の間で、第二の支軸9を介して線バネ12が掛け渡されている。この線バネ12の作用により、切込刃8は第二の支軸9を中心に反時計回りの方向に弾性的に付勢されている。鋏1を徐々に開くと切込刃8が弾性的に反時計回りの方向に回転し、鋏1を所定の角度以上に開いたときに、図4に示すように切込刃8の刃先15付近の外縁16がハンドル6の先端部に当たり、切込刃8はここで回転が規制される。図4は、切込刃8の回転が規制されている状態を示しているが、この状態において、切込刃8の刃先15及び切断縁31は柄部5に沿っているので露出せず安全である。また、切込刃8が反時計回りの方向に付勢されているので、不使用時にハンドル6,17が開いたままになることを防止するために、双方の切断刃7,19が互いに押し合う刃圧及び支軸4の締め付け力による抵抗を、線バネ12の付勢力よりも大きくすることにより、不使用時にハンドル6,17を閉じておくことができる構成が好ましい。双方の切断刃7,19が互いに押し合う刃圧及び支軸4の締め付け力による抵抗が、線バネ12の付勢力よりも小さいときは、ハンドル6,17のいずれか一方にリング状止め金具を回転可能に取り付け、他方のハンドルにその金具の掛け止め溝を形成し、金具を掛け止め溝に掛けてハンドル6,17が開くことを防止できるようにしてもよい。
【0023】
ハンドル6と柄部5と切断刃7とから成る一方の部材2は、その全体形状がクランク状をなしている。柄部5の外縁は、柄部5とハンドル6との境界から前方に直線状に延びる直線部分13を有している。柄部5の外面に当て板14が取り付けられている。当て板14は、柄部5の直線部分13からほぼ半円形をなして上方に突き出ている。当て板14は、第二の支軸9及びバネ取付け突起10により柄部5に固着されている。溶接による固着でもよい。前述したように、柄部5の内面に切込刃8が取り付けられ、柄部5の外面に当て板14が取り付けられている。したがって、切込刃8と当て板14は柄部5の厚みの分だけ間隔をあけて取り付けられている。柄部5の厚みは2.5mmであるがこの数値に限定されない。また、間隔は柄部5の厚み以下でもよく、厚み以上であってもよい。
【0024】
他方の部材3は、ハンドル17と柄部18と切断刃19とを有し、柄部18の後端に指環状に形成されたハンドル17が取り付けられている。また、柄部18の前端から切断刃19が一体に延びている。図2あるいは図4に示すように双方のハンドル6,17を一杯に開いた状態において、切込刃8の反時計回りの方向への回転は規制されているから、柄部18の上縁20と切込刃8のやや角張った擦れ部21との間に間隔があいている。この状態からハンドル6,17を徐々に閉じていくと、柄部18の上縁20が切込刃8の擦れ部21に当たり、さらに擦れ部21が上縁20上を擦れながら移動して切込刃8が柄部5に対して時計回りの方向に回転する。図3は、ハンドル6,17を一杯に閉じた状態を示しており、この状態において、切込刃8の刃先15及び切断縁31は当て板14及び柄部5に沿っているので露出せず、刃先15が当て板14の外縁から突出することがなく安全である。なお、ハンドル6,17を一杯に閉じたときの鋏1のサイズは、全長が約175mmで上下方向の最大幅は約95mmであるが、このサイズに限定されないことは勿論である。また、ハンドル6,17は合成樹脂で形成されているが、他の材料で形成してもよい。例えば、金属でもよく表面に皮革などを巻き付けたものであってもよい。柄部5,18、切込刃8及び切断刃7,19はステンレス鋼で形成されているが他の材料を用いてもよい。例えば、チタン合金やニューセラミックスであってもよい。切込刃8及び切断刃7,19がステンレス鋼である場合、切れ味を持続させるために焼き入れを行うことが好ましい。さらには、刃先強化のために例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)を成膜してもよい。DLCは従来からカミソリや包丁や医療用刃物の刃先強化のために利用されている表面処理技術である。近年、DLCは真空装置なしで成膜することができるようになった。基板温度を200℃に制御し、大気圧下で電極間の約3mmの隙間にメタンガスを流し、プラズマで分解しながら対象物の表面にDLCを成膜する。
【0025】
次に、本発明の使用方法を牛乳パックについて使用した場合を例にとって説明する。最初に、牛乳パック22に切込みを入れる。切込みを入れるときの鋏1の持ち方は、図4に示した状態でこの紙面の裏側から手前側に向かって指をハンドル6,17に挿し入れて持つ。この場合、親指をハンドル17に挿し入れ、他方の指をハンドル6に挿し入れる。切断刃7,19を使用する通常の鋏をしての切断時には、親指をハンドル6に挿し入れ、他方の指をハンドル17に挿し入れるので、いずれの場合でも指の挿し入れが可能なようにハンドル6,17は形成されている。次に、牛乳パック22を横倒しにしてから、ハンドル6,17を開いた状態で牛乳パック22の底面23に当て板14の内面である当接面33を宛がう。このとき、切込刃8の刃先15は柄部5の直線部分13よりも突出していない。柄部5の直線部分13が当て板14の当接面33に対して直交する面を形成しているので、この直線部分13を横倒しになった牛乳パックの上側にある側面24に宛がう。当て板部14及び直線部分13の牛乳パック22に対して宛がう位置は一定している。すなわち、横倒しにした牛乳パック22の底面23と上側の側面24との折り曲げ稜線25の手前側端部26にハンドル6が当たった位置で切り込み作業を行う。ハンドル6が折り曲げ稜線25の手前側端部26に当たるので鋏1が安定するからである。切込みは上側にある側面24の角部29に切込刃8の刃先15が差し込まれるが、その角部29は折り曲げ稜線25と直交する折り曲げ稜線28に囲まれているので撓みづらく切込みを入れ易い。
【0026】
当て板14を牛乳パック22の底面23に宛がった後に、双方のハンドル6,17を閉じながら切込刃8の刃先15を牛乳パック22の上側にある側面24に差し込み、切込みを入れる。切込刃8は、回転しながら牛乳パック22に切れ込んでいく方向と反対方向に弾性的に付勢されている。ハンドル6,17を閉じていくときに、切込刃8の擦れ部21が柄部18の上縁20上を擦れながら移動して切込刃8が線バネ12の付勢力に抗して時計回りの方向に回転する。切込刃8の切断縁31は、切込刃8の時計周りの方向の前側に形成されているから、あたかも切断を容易にするために包丁を前後に移動させながらパンを切るときと同様に、切込刃8が牛乳パック22の上側にある側面24に対して独自に移動しながら切断して行く。したがって、切込みを円滑容易に入れることができる。また、牛乳パック22の底部は紙が折り畳まれているので他の面よりも厚みがあるが、切込刃8と当て板14は柄部5の厚みの分だけ間隔をあけて取り付けられているので、牛乳パック22の底部の厚みによる影響を受けることなく切り込みを行うことができる。
【0027】
図4に示すように、両ハンドル6,17を開いた状態で切込刃8の刃先15はハンドル6に近接した位置にあり、当て板14の左側端部とほぼ一致している。したがって、牛乳パック22の上側にある側面24に入れる切込みは、その側面24と隣接する側面30との折り曲げ稜線28に近接した位置に入れられる。ハンドル6,17を一杯に閉じたときに、切込刃8の刃先15及び切断縁31は当て板14及び柄部5に沿っているので露出せず、刃先15が当て板14の外縁から突出することがなく安全である。上側にある側面24に切込みを入れた後、切込刃8を引き抜く。次に、鋏1を持ち変えて図4において紙面の手前側から裏側方向に指をハンドル6,17に挿し入れる。そして、切断刃7を切込みに差し込んで牛乳パック22の側面を一周に亘って切断する。このとき、切込みは前述したように隣接する側面30との折り曲げ稜線28に近接した位置に入れられるので、切断は上側にある側面24の端部から始まる。この端部から4つの側面を順次切断していくことによって牛乳パック22の底部を切り離すことができる。仮に、切込みが側面の中央付近に入れられると、最初に切断する側面は半分だけ切断されて2番目の側面に切断刃が移る。このために、4番目の側面を切断した後に、さらに切り残した最初の側面を再度切断する必要があるので手間がかかるが、上側にある側面24の端部から切断することによってそのような手間を省くことができる。なお、切断刃7,19を使用する鋏としての切断時に、中指、薬指及び小指はハンドル17に挿し入れ、人差し指をハンドル17の前部に形成された指当て部32に宛がって使用することもできる。そのときに、切込刃8の刃先1
5で人差し指を傷付けることを防止するために切込刃8は一方の柄部5に取り付けられている。牛乳パック22の底部を切り離すことにより、牛乳パック22を潰して容易に平面状とすることができ、牛乳パック22を廃棄するときに嵩張らない。本発明は、牛乳パック以外の紙パック、ペットボトルあるいはティッシュペーパーの箱など、他の容器に利用することも可能である。
【0028】
図7は、牛乳パック22を切断する状態を示す図である。切込刃8と当て板14は柄部5の厚みの分だけ間隔をあけて取り付けられている。それによって、牛乳パック22に切込みを入れた際、牛乳パック22の底面23から柄部5の厚み分だけ離れた位置に切込みができる。また、切断刃7,19の厚みは柄部5の厚みと等しい。したがって、切断刃7を切込みに入れてから切断作業を始めると、切断刃19は切断刃7と稜線25の間に位置するから、切断刃19は稜線25に沿って切り進んでいく。このようにして切断刃19を他の稜線についても沿わせた状態で牛乳パック22の側面一周を切断すれば、最初に切断刃7を入れた切込みで切断を終えることができ、牛乳パック22の底部をきれいに切り離すことができる。また、図7から明らかなとおり、切断刃7はそれが取り付けられている柄部5に対して柄部5の厚み分だけ図7における左側に偏倚し、切断刃19はそれが取り付けられている柄部18に対して柄部18の厚み分だけ図7における左側に偏倚している。したがって、切断刃7,19が左側に寄っているから切断刃19の右側が見やすくなる。これにより、牛乳パック22を切断するときに切断刃19に隣接する稜線25を見ながら稜線25に沿って切断するのであるが、切断刃19が稜線25を見るときの視界の邪魔になることなく稜線25を見ることができる。これにより、稜線25をたどりながら牛乳パック22の底部をきれいに切り離すことができる。
【0029】
図8は、本実施形態の鋏1によって使用済みの牛乳パック22を展開する方法を示した図である。まず、使用済みの牛乳パック22に切込み34を開ける。次に、注ぎ口以外は閉じられていた開口部35を完全に開く。次に、切断刃7,19で稜線28に沿って開口部35側端部から矢印Aの方向に牛乳パック22を切断する。切込み34まで切断したら鋏1の方向を矢印Bの方向に向ける。そのとき、切断刃7,19の刃縁の交点が切込み34の内部にあるので、鋏1の方向を容易に変更することができる。次に、稜線25に沿って牛乳パック22を矢印Bの方向に切断する。さらに、稜線36に沿って牛乳パック22を切断し、稜線36に繋がる図6に示す下側の稜線37に沿って牛乳パック22を切断する。この切断作業により、牛乳パック22は図9に示すように展開することができる。この展開した牛乳パック22を即席の俎板として使用することもできる。
【0030】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、図3においてハンドル6の切込刃8に最も近い部分、すなわちハンドル6の先端部分にハンドル6の先端から出没可能になるように係止部材(図示せず。)を前後方向に摺動可能に取り付け、係止部材をハンドル6の先端から突出させたときに、その突出した係止部材を受ける切り欠き部(図示せず。)を切込刃8に設けることにより切込刃8の回転をロックできるようにしてもよい。ロックした場合は、例えば錠剤を入れたガラス瓶の口を塞いでいる薄いシールを一周に亘って切ることができる。ガラス瓶の口は比較的小さいのでむしろ切込刃8がロックされていた方が扱いやすい。この場合、切込刃8はシールに切込みを入れると共に切断刃としてシールの切断も行う。このほか、切込刃8と当て板14を同じ柄部に取り付けず、切込刃を他方の柄部に固着して取り付けてもよい。あるいは、切込刃を他方の柄部と一体に形成してもよい。また、ハンドル6,17を閉じたときに切込刃8は当て板14に沿うので安全であるが、さらに安全性を高めるために切込刃8や当て板14を覆うことのできるキャップを着脱自在に取り付ける構成としてもよい。本発明の器具は鋏に限定されるものでなく、本発明が実施できるいかなる器具であってもよい。したがって、部材についても鋏の部品としての部材に限定されるものでなく、本発明が実施できるいかなる部材であってもよい。一対の部材は本実施形態のように部材の中央付近で支軸を中心に回転可能に結合された構成に限定されるものでなく、本発明が実施できるいかなる構成であってもよい。例えば、一対の部材の端部同士を支軸で回転可能に結合してもよい。ハンドルは指環状に形成されたものに限定されるものでなく、双方のハンドルが棒状であってもよく、一方のハンドルのみ指環状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
切込刃と当て板により、牛乳パックなどの容器に安全且つ確実に切込みを入れることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 鋏
2 部材
3 部材
4 第一の支軸
5 柄部
6 ハンドル
7 切断刃
8 切込刃
9 第二の支軸
10 バネ取付け突起
11 バネ孔
12 線バネ
13 直線部分
14 当て板
15 刃先
16 外縁
17 ハンドル
18 柄部
19 切断刃
20 上縁
21 擦れ部
22 牛乳パック
23 底面
24 上側にある側面
25 折り曲げ稜線
26 手前側端部
27 反対側の端部
28 折り曲げ稜線
29 角部
30 隣接する側面
31 切断縁
32 指当て部
33 当接面
34 切込み
35 開口部
36 稜線
37 下側の稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に切込みを入れることができる器具であって、当て板部と切込刃を有し、前記当て板部は容器の表面に当接可能な当接面を有し、前記切込刃はその切込刃を容器表面に切り込ませるための刃先を有し、該刃先は前記当て板部の当接面で構成される面に対し間隔を有していることを特徴とする器具。
【請求項2】
当接面の少なくとも一部を容器の所定の表面に当接させた状態で、前記当接面が当接している前記所定の表面に対して角度を有する他の表面に切込みを入れるために、切込刃の刃先を前記他の表面に切り込ませるように切込刃を動かすことができる請求項1記載の器具。
【請求項3】
切込刃は、当て板部に対して相対的に可動である請求項1又は請求項2記載の器具。
【請求項4】
一対の部材が支軸を中心に相対的に回転可能になるように前記支軸により結合され、各部材はそれぞれハンドルを有し、一方の部材に当て板部が設けられ、双方の部材のハンドルを開いた状態から閉じていくときに、切込刃は当て板部に対して相対的に動く請求項3記載の器具。
【請求項5】
当て板部と切込刃は共に一方の部材に設けられ、双方の部材のハンドルを開いた状態から閉じていくときに、切込刃は他方の部材に押圧されて一方の部材に対して相対的に動く請求項4記載の器具。
【請求項6】
容器に切込みを入れることができる器具であって、それぞれハンドルを有する一対の部材が支軸を中心に相対的に回転可能になるように支軸により結合され、器具は当て板部と切込刃を有し、該切込刃は当て板部に対して相対的に可動であり、前記当て板部は容器の表面に当接可能な当接面を有し、前記切込刃はその切込刃を容器表面に切り込ませるための刃先を有し、該刃先は前記当て板部の当接面で構成される面に対し間隔を有しており、各部材のハンドルと反対方向に延びる延長部分が支軸よりも先方に延び、その延長部分は切断刃に形成され、器具が鋏に形成されていることを特徴とする器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−217953(P2011−217953A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90425(P2010−90425)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】